(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】電源システム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/38 20060101AFI20240131BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20240131BHJP
H02J 3/32 20060101ALI20240131BHJP
H02J 7/35 20060101ALI20240131BHJP
H02J 9/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H02J3/38 180
H02J3/38 110
H02J3/38 130
H02J3/46
H02J3/32
H02J7/35 K
H02J9/06 120
(21)【出願番号】P 2020532222
(86)(22)【出願日】2019-06-21
(86)【国際出願番号】 JP2019024661
(87)【国際公開番号】W WO2020021925
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-06-16
(31)【優先権主張番号】P 2018141122
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003942
【氏名又は名称】日新電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】柏原 弘典
【審査官】赤穂 嘉紀
(56)【参考文献】
【文献】特許第6338131(JP,B1)
【文献】特開2017-070130(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00-7/12
H02J 7/34-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
商用電力系統から重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、
前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられた開閉スイッチと、
前記電力線において前記開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、
前記商用電力系統の異常を検出する系統異常検出部と、
前記商用電力系統の異常が検出された場合に前記開閉スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とを前記インピーダンス素子を介して接続するスイッチ制御部とを備え、
前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、前記分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するものであり、
前記分散型電源は、前記電力線に接続される回転発電装置と、前記電力線に接続されるエネルギー貯蔵装置とを有しており、
前記エネルギー貯蔵装置は、エネルギー貯蔵部と、当該エネルギー貯蔵部の充放電を行う双方向電力変換器と、当該双方向電力変換器を制御して、前記回転発電装置の慣性力を模擬した動作を行わせる変換器制御部とを有し
、
前記変換器制御部は、前記商用電力系統の正常時において、前記エネルギー貯蔵装置が慣性力を持った電圧源となるように、前記双方向電力変換器を電圧振幅及び周波数を可変とするドループ制御を行い、前記系統異常検出部により異常が検出されると、前記エネルギー貯蔵装置に慣性力を持たせたまま前記ドループ制御から電圧振幅及び周波数が固定の指令値制御に移行する、電源システム。
【請求項2】
前記分散型電源は、太陽光発電パネル及び電力変換器を備える太陽光発電装置を有する、請求項1記載の電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、蓄電池の高性能化等により、特に大容量(500kW容量クラス以上)の蓄電池システムにおいて、無停電電源機能及び負荷平準化機能を両立するものが考えられつつある。例えば、特許文献1に示すように、無停電電源機能及び負荷平準化機能を両立した二次電池システムが考えられている。このシステムは、停電や瞬低に対しては解列して重要負荷に電力を供給するように構成されている。
【0003】
ところで、商用電力系統に連系される分散型電源が増大しており、瞬低時にそれらの分散型電源を一斉に解列してしまうと、商用電力系統全体の電圧や周波数の維持に大きな影響を与える可能性がある。このため、瞬低時においても分散型電源を商用電力系統から解列することなく継続運転することが求められている(事故時運転継続(FRT)要件)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、本願発明者は、特許文献1に示すように、電力線において分散型電源よりも商用電力系統側に開閉スイッチを設けるとともに、当該開閉スイッチに対してインピーダンス素子を並列接続した構成を有する電源システムの開発を進めている。この電源システムは、系統異常時に開閉スイッチを開放して、分散型電源をインピーダンス素子を介して商用電力系統と連系した状態とする。ここで、分散型電源としては、発電機、蓄電装置、太陽光発電装置等が用いられている。
【0006】
しかしながら、上述した電源システムでは、系統異常時に、重要負荷が変動した場合には、発電機の慣性力により変動に追従できずに発電機が脱落してしまう。また、分散型電源として太陽光発電装置が接続されている場合には、当該太陽光発電装置の出力変動によっても、同様の理由により発電機が脱落してしまう。その結果、系統異常時において重要負荷への電力供給を安定して行うことが難しいという問題がある。
【0007】
そこで本発明は、上記問題点を解決すべくなされたものであり、FRT要件を満たしつつ、系統異常時においても重要負荷への電力供給を安定して行うことをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明に係る電源システムは、商用電力系統から重要負荷に給電するための電力線に接続された分散型電源と、前記電力線において前記分散型電源よりも前記商用電力系統側に設けられた開閉スイッチと、前記電力線において前記開閉スイッチに並列接続されたインピーダンス素子と、前記商用電力系統の異常を検出する系統異常検出部と、前記商用電力系統の異常が検出された場合に前記開閉スイッチを開放し、前記分散型電源と前記商用電力系統とを前記インピーダンス素子を介して接続するスイッチ制御部とを備え、前記分散型電源と前記商用電力系統とが前記インピーダンス素子を介して接続された状態で、前記分散型電源が逆潮流を含む運転を継続するものであり、前記分散型電源は、前記電力線に接続される回転発電装置と、前記電力線に接続されるエネルギー貯蔵装置とを有しており、前記エネルギー貯蔵装置は、エネルギー貯蔵部と、当該エネルギー貯蔵部の充放電を行う双方向電力変換器と、当該双方向電力変換器を制御して、前記回転発電装置の慣性力を模擬した動作を行わせる変換器制御部とを有していることを特徴とする。
【0009】
このような電源システムであれば、電力線において分散型電源よりも商用電力系統側に開閉スイッチを設けるとともに、当該開閉スイッチに対してインピーダンス素子を並列接続しており、商用電力系統の異常が検出された場合に開閉スイッチを開放するので、系統異常時においても分散型電源はインピーダンス素子を介して商用電力系統と連系された状態となる。これにより、分散型電源のFRT要件を満たしつつ、系統異常時における重要負荷への電圧低下を防止することができる。その結果、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源を用いて両立することができる。ここで、電力線にインピーダンス素子と開閉スイッチの並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチに電流が流れるのでリアクトル等のインピーダンス素子に生じる損失を無くすことができる。
特に本発明では、分散型電源として用いられたエネルギー貯蔵装置において、当該エネルギー貯蔵装置の双方向電力変換器を制御して、回転発電装置の慣性力を模擬した動作を行わせるので、回転発電装置の慣性力を補うことができるので、重要負荷の変動に対して発電機が脱落してしまうことを防ぐことができる。その結果、系統異常時においても重要負荷への電力供給を安定して行うことができる。
【0010】
前記分散型電源は、太陽光発電パネル及び電力変換器を備える太陽光発電装置を有することが考えられる。この場合、回転発電装置の脱落の要因となるのは、重要負荷の変動だけでなく、太陽光発電装置の出力変動も含まれる。本発明では、エネルギー貯蔵装置が回転発電装置の慣性力を模擬した動作を行うので、太陽光発電装置の出力変動が生じた場合でも重要負荷への電力供給を安定して行うことができる。
【0011】
前記変換器制御部は、前記商用電力系統の正常時は、前記双方向電力変換器を電流制御するものであり、前記商用電力系統の異常時は、前記双方向電力変換器を電圧制御するものであることが望ましい。一方、変換器制御部が前記双方向電力変換器を常時電圧制御するものであれば、回転発電装置の運転停止中であっても、重要負荷への電力供給を安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0012】
このように構成した本発明によれば、FRT要件を満たしつつ、系統異常時においても重要負荷への電力供給を安定して行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の電源システムの構成を示す模式図である。
【
図2】同実施形態の変換器制御部の制御ブロック図である。
【
図3】同実施形態の通常時の電源システムの状態を示す模式図である。
【
図4】同実施形態の瞬低時の電源システムの状態を示す模式図である。
【
図5】インピーダンス素子を挿入しない電源システムにおいて慣性力制御を行わない場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値である。
【
図6】インピーダンス素子を挿入する電源システムにおいて慣性力制御を行わない場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値である。
【
図7】インピーダンス素子を挿入する電源システムにおいて慣性力制御を行った場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値である。
【符号の説明】
【0014】
100・・・電源システム
10 ・・・商用電力系統
30 ・・・重要負荷
L1 ・・・電力線
2 ・・・分散型電源
21 ・・・太陽光発電装置
211・・・太陽光発電パネル
212・・・電力変換器
22 ・・・エネルギー貯蔵装置
221・・・蓄電池(エネルギー貯蔵部)
222・・・双方向電力変換器
223・・・変換器制御部
23 ・・・回転発電装置
231・・・同期発電機
232・・・発電機制御部
3 ・・・開閉スイッチ
4 ・・・インピーダンス素子
5 ・・・系統異常検出部
6 ・・・スイッチ制御部
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明に係る電源システムの一実施形態について、図面を参照して説明する。
本実施形態の電源システム100は、
図1に示すように、商用電力系統10と重要負荷30との間に設けられ、商用電力系統10の異常時に重要負荷30に電力を供給する無停電電源システムとしての機能(無停電電源機能)と、商用電力系統に対して順潮流及び逆潮流することで負荷平準化する分散型電源システムとしての機能(負荷平準化機能)を発揮するものである。
【0016】
ここで、商用電力系統10は、電力会社(電気事業者)の電力供給網であり、発電所、送電系統及び配電系統を有するものである。また、重要負荷20は、停電や瞬低などの系統異常時においても電力を安定して供給すべき負荷であり、
図1では1つであるが、複数あっても良い。
【0017】
具体的に電源システム100は、分散型電源2と、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とを接続する開閉スイッチ3と、開閉スイッチ3に並列接続されたインピーダンス素子4と、開閉スイッチ3よりも商用電力系統10側の異常(以下、系統異常)を検出する系統異常検出部5と、系統異常が検出された場合に開閉スイッチ3を開放するスイッチ制御部6とを備えている。
【0018】
分散型電源2は、商用電力系統10から重要負荷30に給電するための電力線L1に接続されている。本実施形態では、分散型電源2として、太陽光発電装置21と、二次電池(蓄電池)等のエネルギー貯蔵装置22と、同期発電機などを有する回転発電装置23とを備えている。これら分散型電源2は、それぞれ商用電力系統10に連系されている。
【0019】
太陽光発電装置21は、太陽光発電パネル211と、電力変換器212と、当該電力変換器212を電流制御する変換器制御部213とを備えている。また、回転発電装置23は、同期発電機231と、当該同期発電機231をドループ(Droop)制御する制御部232とを備えている。なお、エネルギー貯蔵装置22については後述する。
【0020】
開閉スイッチ3は、電力線L1において分散型電源2の接続点よりも商用電力系統10側に設けられて電力線L1を開閉するものであり、例えば半導体スイッチ、又は、半導体スイッチと機械式スイッチとを組み合わせたハイブリッドスイッチなどの高速切り替えが可能な開閉スイッチを用いることができる。例えば半導体スイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断することができる。また、ハイブリッドスイッチを用いた場合には、切替時間を2m秒以下にすることができ、ゼロ点関係なく遮断できるだけでなく、通電損失をゼロにすることができる。なお、この開閉スイッチ3は、スイッチ制御部6により開閉制御される。
【0021】
インピーダンス素子4は、電力線L1において開閉スイッチ3に並列接続されたものであり、本実施形態では、限流リアクトルである。
【0022】
系統異常検出部5は、本実施形態では、商用電力系統の系統電圧の瞬低を含む電圧低下を検出するものである。具体的に系統異常検出部5は、電力線L1において開閉スイッチ3よりも商用電力系統10側の電圧を検出して、当該検出電圧と所定の整定値とを比較することにより電圧低下を検出するものである。ここで、電圧低下を検出するための整定値は、瞬低を検出するための電圧値であり、例えば残電圧20%である。
【0023】
スイッチ制御部6は、系統異常検出部5により検出された検出信号に基づいて、開閉スイッチ3に制御信号を出力して開閉スイッチ3を開放するものである。このようにスイッチ制御部6が開閉スイッチ3を開放させることにより、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とはインピーダンス素子4を介して接続された状態となる。この状態で、分散型電源2は逆潮流を含む運転を継続する。
【0024】
そして、本実施形態のエネルギー貯蔵装置22は、
図1に示すように、エネルギー貯蔵部である二次電池などの蓄電池221と、当該蓄電池221の充放電を行う双方向電力変換器222と、当該双方向電力変換器222を制御する変換器制御部223とを有している。双方向電力変換器222は、半導体スイッチ素子を用いて構成されたインバータ回路である。
【0025】
変換器制御部223は、系統異常時において双方向電力変換器222を電圧制御して、同期発電機231の慣性力を模擬した動作を行わせるものである。具体的に変換器制御部223は、エネルギー貯蔵装置22に同期発電機231の特性を持たせる仮想同期発電機(VSG)制御を行うものである。本実施形態の変換器制御部223は、スイッチ制御部6が開閉スイッチ3を開放させると同時に、エネルギー貯蔵装置22が慣性力を持った電圧源として負荷電圧及びその周波数を一定に保つように、双方向電力変換器222を制御する。なお、
図1における符号224は、エネルギー貯蔵装置22の出力電流を計測するための電流計測器であり、符号225は、エネルギー貯蔵装置22の出力電圧を計測するための電圧計測器である。これらの計測された値は、変換器制御部223に取得されて、双方向電力変換器222の制御も用いられる。
【0026】
ここで、系統正常時において、変換器制御部223は、エネルギー貯蔵装置22が慣性力を持った電圧源となるように、双方向電力変換器222をドループ制御(電圧振幅V、周波数fは可変)する。
【0027】
一方、系統異常検出部5により系統異常が検出されると、変換器制御部223は、エネルギー貯蔵装置22に慣性力を持たせたままドループ制御から指令値制御(電圧振幅V、周波数fは固定)に移行する。
【0028】
ここで、指令値制御にする理由は、仮に系統事故がすぐに排除された場合には、分散型電源はFRT要件に従って一定時間(例えば0.1~1.0秒)以内に商用電力系統に対して元の出力に戻すためである。即ち、系統復帰後は素早く開閉スイッチ3を再投入するためである。
インピーダンス素子4の挿入によって一時的に系統-分散型電源間の電流潮流を抑制しているが、インピーダンス挿入中に系統-分散型電源間で位相がずれてしまうと、電圧振幅が復帰していても開閉スイッチ3を投入した瞬間に過電流が発生する。特にドループ制御は電圧振幅V、周波数fが可変であり、上記の位相ずれが発生しやすい。
したがって、復電検出後になるべく早く系統電圧と電圧振幅及び位相を合わせて開閉スイッチ3を投入するために、系統異常検出時はエネルギー貯蔵装置22を指令値制御に移行して分散型電源側の電圧振幅V、周波数fを事故直前の値で維持するようにコントロールすることで、系統-分散型電源間の位相ずれを最小限に抑えて、同期時間を短縮させることができる。なお、停電である場合には、開閉スイッチ3を開放したまま、ドループ制御に戻す。
【0029】
具体的に変換器制御部223は、
図2に示す制御ブロック図に基づいて、双方向電力変換器222の電圧出力指令値を算出して、双方向電力変換器222を制御する。より詳細には、変換器制御部223は、内部位相基準値を算出する第1の制御ブロックB1と、内部電圧基準値を算出する第2の制御ブロックB2と、算出された内部位相基準値及び内部電圧基準値と同期発電機231の慣性力を模擬するための仮想インピーダンス設定値とを用いて電圧出力指令値を算出する第3の制御ブロックB3とを有している。
【0030】
第1の制御ブロックB1は、系統電圧異常検出信号を取得して、有効電力のドループ制御と、周波数指令値に対するフィードバック制御とを切り替えて、内部位相基準値を算出する。また、第2の制御ブロックB2は、系統電圧異常検出信号を取得して、無効電力のドループ制御と、電圧振幅指令値に対するフィードバック制御とを切り替えて、内部電圧基準値を算出する。第3の制御ブロックB3は、算出された内部位相基準値及び内部電圧基準値と、電圧計測値と、電流計測値と、仮想インピーダンス設定値とを用いて、電圧出力指令値を算出する。変換器制御部223は、この電圧出力指令値を用いて双方向電力変換器222を制御する。
【0031】
次に、本実施形態の電源システム100の動作(通常時及び瞬低時)について説明する。
【0032】
電源システム100は、通常時には、
図3に示すように、開閉スイッチ3を閉じており、分散型電源2及び重要負荷30は開閉スイッチ3を介して商用電力系統10に接続された状態である。なお、リアクトル4は開閉スイッチ3に並列接続されているが、開閉スイッチ3のインピーダンスは、リアクトル4のインピーダンスよりも小さいため、商用電力系統10と分散型電源2及び重要負荷30とは開閉スイッチ3側で電力をやり取りする。分散型電源2による逆潮流によってピークカット・ピークシフトを実現することができる。
【0033】
一方、商用電力系統10側で短絡事故(例えば三相短絡)が発生すると、商用電力系統10側の電圧が低下する。この電圧低下は、系統異常検出部5により検出される。スイッチ制御部6は、系統異常が検出された場合に開閉スイッチ3を開放する。
【0034】
図4に示すように、開閉スイッチ3を開放すると、分散型電源2及び重要負荷30はリアクトル4を介して商用電力系統10に接続された状態となる。この状態で、分散型電源2から短絡事故点に流れる電流はリアクトル4により限流されて、短絡事故点に流れる事故電流が抑制されるとともに、重要負荷30の電圧低下を防止する。また、この状態で、分散型電源2は逆潮流を含む運転を継続しており、発電出力を継続する。
【0035】
また、開閉スイッチ3が開放されると同時に、エネルギー貯蔵装置22の変換器制御部223は、エネルギー貯蔵装置22が慣性力を持った電圧源として負荷電圧及びその周波数を一定に保つように、双方向電力変換器222を制御する。
【0036】
なお、系統異常検出部5は、開閉スイッチ3の開閉に関係なく、商用電力系統10側の電圧を検出しており、スイッチ制御部6は、検出電圧が所定の復帰電圧以上となった場合、例えば商用電力系統の残電圧が80%以上となった場合に、開閉スイッチ3を閉じる。
【0037】
次に、電源システムによる瞬低発生時の補償動作のシミュレーション結果を
図4~
図6に示す。
【0038】
図5は、インピーダンス素子を挿入しない電源システムにおいてVSG制御を行わない場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値を示すグラフである。
図6は、インピーダンス素子を挿入する電源システムにおいてVSG制御を行わない場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値を示すグラフである。
図7は、インピーダンス素子を挿入する電源システムにおいてVSG制御を行った場合の瞬低前後における各電流値及び電圧値を示すグラフである。
【0039】
図6に示すように、エネルギー貯蔵装置22の双方向電力変換器222をVSG制御することなく電流制御した場合には、太陽光発電装置21の出力変動が生じると、発電機電流が変動して、負荷電圧の実効値及び負荷周波数が低下してしまう。一方、
図7に示すように、エネルギー貯蔵装置22の双方向電力変換器をVSG制御した場合には、太陽光発電装置の出力変動が生じても、負荷電圧の実効値及び周波数は一定となる。
【0040】
このように構成した本実施形態の電源システム100によれば、電力線L1において分散型電源2よりも商用電力系統10側に開閉スイッチ3を設けるとともに、当該開閉スイッチ3に対してリアクトル4を並列接続しており、商用電力系統10側の電圧が整定値以下となった場合に開閉スイッチ3を開放するので、瞬低時においても分散型電源2及び重要負荷30はリアクトル4を介して商用電力系統10に接続された状態となる。このように電源システム100は、通常時及び瞬低時の何れであっても分散型電源2及び重要負荷30を商用電力系統10から切り離さないので、分散型電源2のFRT要件を満たしつつ、瞬低時における重要負荷30への電圧低下を防止することができる。その結果、FRT要件を満たしつつ、無停電電源機能及び負荷平準化機能を共通の分散型電源2を用いて両立することができる。ここで、電力線L1にリアクトル4と開閉スイッチ3の並列回路部を設けるだけで良いので、装置の回路構成を簡単にすることができるとともに、通常運用時には開閉スイッチ3に電流が流れるのでリアクトル4に生じる損失を無くすことができる。
【0041】
特に本実施形態では、分散型電源2として用いられたエネルギー貯蔵装置22において、当該エネルギー貯蔵装置22の双方向電力変換器222を制御して、同期発電機231の慣性力を模擬した動作を行わせるので、同期発電機231の慣性力を補うことができるので、重要負荷30の変動に対して同期発電機231が脱落してしまうことを防ぐことができる。その結果、系統異常時においても重要負荷30への電力供給を安定して行うことができる。
【0042】
<その他の変形実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0043】
例えば、前記実施形態の系統異常検出部は、瞬時電圧低下を含む電圧低下を検出するものであったが、周波数変動、電圧上昇、位相変動、電圧不平衡、高調波異常又はフリッカの少なくとも1つである系統異常を検出するものであっても良い。
【0044】
また、インピーダンス素子4としてコンデンサを用いても良いし、リアクトル、抵抗又はコンデンサの何れかを組み合わせたものであっても良い。
【0045】
さらに、前記実施形態のエネルギー貯蔵部は、二次電池などの蓄電池であったが、その他、揚水発電方式のもの、圧縮空気貯蔵方式のもの、超電導電力貯蔵方式のもの、フライホイール、電気二重層キャパシタ等であっても良い。
【0046】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明によれば、FRT要件を満たしつつ、系統異常時においても負荷への電力供給を安定して行う電源システムを提供することができる。