(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置
(51)【国際特許分類】
E03D 1/35 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
E03D1/35
(21)【出願番号】P 2020033607
(22)【出願日】2020-02-28
【審査請求日】2022-12-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000010087
【氏名又は名称】TOTO株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100088694
【氏名又は名称】弟子丸 健
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松下 満
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100123630
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】林 信宏
(72)【発明者】
【氏名】北浦 秀和
(72)【発明者】
【氏名】志牟田 晃大
(72)【発明者】
【氏名】黒石 正宏
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-102568(JP,A)
【文献】特開2009-257061(JP,A)
【文献】特開2011-012537(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1220840(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03D 1/00-7/00;11/00-13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、
上記水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を上記水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、
上記排水口を開閉し、上記水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、
供給された水道水の給水圧を利用して、上記排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部と、
上記排水弁と上記排水弁水圧駆動部を連結して上記排水弁水圧駆動部の駆動力により上記排水弁を引き上げると共に、所定のタイミングで切断され、上記排水弁を降下させるクラッチ機構と、
上記水洗便器を洗浄するための第1の洗浄水量と、この第1の洗浄水量よりも少ない第2の洗浄水量を選択可能な洗浄水量選択手段と、
上記貯水タンク内の水位に応じて移動される第1フロート、及びこの第1フロートの移動と連動し、上記排水弁と係合して上記排水弁を保持する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能な第1係合部材を備えた第1フロート装置と、
上記貯水タンク内の水位に応じて移動される第2フロート、及びこの第2フロートの移動と連動し、上記排水弁と係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能な第2係合部材を備え、上記第1フロートが上記第1係合部材を非係合位置に移動させる高さとは異なる高さで上記第2係合部材を非係合位置に移動させる第2フロート装置と、
上記洗浄水量選択手段によって第2の洗浄水量が選択された場合において、上記第1フロートを駆動して、上記第1係合部材を非係合位置に移動させるフロート駆動機構と、を有し、
上記第2フロート装置の上記第2係合部材が、上記第2フロートの移動と連動して非係合位置に移動される上記貯水タンク内の水位は、上記第1フロート装置の上記第1係合部材が、上記第1フロートの移動と連動して非係合位置に移動される上記貯水タンク内の水位よりも高く設定され、
上記第1フロート装置の上記第1係合部材が非係合位置に移動されることにより、上記排水弁が上記第2フロート装置の上記第2係合部材と係合することを特徴とする洗浄水タンク装置。
【請求項2】
上記第1フロート装置は、上記第2フロート装置が上記排水弁を保持する高さよりも高い位置に上記排水弁を保持するように構成され、上記フロート駆動機構は、上記第2フロートに連動して上記第2係合部材が非係合位置に移動される前に、上記第1フロートを駆動して、上記第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている請求項1記載の洗浄水タンク装置。
【請求項3】
上記クラッチ機構は、上記第1フロート装置の上記第1係合部材と上記排水弁が係合する高さよりも高い位置で切断されるように構成され、上記フロート駆動機構は、上記第1係合部材と上記排水弁が係合する高さまで上記排水弁が下降する前に、上記第1フロートを駆動して、上記第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている請求項2記載の洗浄水タンク装置。
【請求項4】
上記クラッチ機構は上記排水口から上記排水弁を引き上げるように構成され、上記フロート駆動機構は、上記第1フロート装置の上記第1係合部材と上記排水弁が係合する高さまで上記排水弁が引き上げられる前に、上記第1フロートを駆動して、上記第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている請求項3記載の洗浄水タンク装置。
【請求項5】
上記フロート駆動機構は、上記クラッチ機構が切断された後、上記第1フロート装置の上記第1係合部材と上記排水弁が係合する高さよりも下方に上記排水弁が下降するまで、上記第1係合部材を非係合位置に維持するように構成されている請求項4記載の洗浄水タンク装置。
【請求項6】
上記フロート駆動機構は、供給された水道水を利用して上記第1フロートを駆動するように構成されている請求項1乃至5の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置。
【請求項7】
洗浄水量の異なる複数の洗浄モードを備えた水洗便器装置であって、
水洗便器と、
この水洗便器への洗浄水の供給を行う、請求項1乃至6の何れか1項に記載の洗浄水タンク装置と、
を有することを特徴とする水洗便器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洗浄水タンク装置に関し、特に、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特開2009-257061号公報(特許文献1)には、ロータンク装置が記載されている。このロータンク装置においては、排水弁を備えたロータンクの内部に、ピストンと水抜き部を有する水圧シリンダ装置が配置され、ピストンと排水弁が連結部により連結されている。また、ロータンク内の洗浄水を排出する際には、電磁弁を開弁することにより、水圧シリンダ装置に水を供給して、ピストンを押し上げる。ピストンは連結部により排水弁に接続されているため、ピストンの移動により排水弁が引き上げられて、排水弁が開弁され、ロータンク内の洗浄水が排出される。なお、水圧シリンダ装置に供給された水は、水抜き部から流出して、ロータンク内に流入する。
【0003】
さらに、排水弁を閉弁させる場合には、電磁弁を閉弁させることにより、水圧シリンダ装置への水の供給を停止させる。これにより、押し上げられていたピストンが下降し、これに伴って排水弁は自重により閉弁位置に復帰する。この際、水圧シリンダ装置内の水は水抜き部から少しずつ流出するため、ピストンはゆっくりと下降し、排水弁も緩やかに閉弁位置に復帰する。また、特許文献1記載のロータンク装置においては、電磁弁を開弁させておく時間を調節することにより、排水弁が開弁されている時間を変化させ、大洗浄、小洗浄等の、洗浄水量の異なる洗浄を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1記載のロータンク装置では、排出される洗浄水の量を精密に設定することが難しいという問題がある。即ち、特許文献1記載のロータンク装置においては、排水弁を閉弁させるために電磁弁を閉じた後、水圧シリンダ装置内の水は水抜き部から少しずつ流出するため、ピストンの下降は緩やかであり、排水弁の開弁時間を短く設定することは困難である。また、ピストンの下降速度は、水抜き部からの水の流出流量や、ピストンの摺動抵抗に依存するため、バラツキが生じる可能性があり、また、経時変化が発生する可能性がある。従って、特許文献1記載のロータンク装置において、排出される洗浄水の量を精密に設定することは困難である。
【0006】
従って、本発明は、供給された水の水圧を利用して排水弁の開弁を行いながら、排出される洗浄水の量を精密に設定することができる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明は、水洗便器への洗浄水の供給を行う洗浄水タンク装置であって、水洗便器に供給すべき洗浄水を貯留すると共に、貯留した洗浄水を水洗便器へ排出するための排水口が形成された貯水タンクと、排水口を開閉し、水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う排水弁と、供給された水道水の給水圧を利用して、排水弁を駆動する排水弁水圧駆動部と、排水弁と排水弁水圧駆動部を連結して排水弁水圧駆動部の駆動力により排水弁を引き上げると共に、所定のタイミングで切断され、排水弁を降下させるクラッチ機構と、水洗便器を洗浄するための第1の洗浄水量と、この第1の洗浄水量よりも少ない第2の洗浄水量を選択可能な洗浄水量選択手段と、貯水タンク内の水位に応じて移動される第1フロート、及びこの第1フロートの移動と連動し、排水弁と係合して排水弁を保持する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能な第1係合部材を備えた第1フロート装置と、貯水タンク内の水位に応じて移動される第2フロート、及びこの第2フロートの移動と連動し、排水弁と係合する係合位置と係合しない非係合位置に移動可能な第2係合部材を備え、第1フロートが第1係合部材を非係合位置に移動させる高さとは異なる高さで第2係合部材を非係合位置に移動させる第2フロート装置と、洗浄水量選択手段によって第2の洗浄水量が選択された場合において、第1フロートを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させるフロート駆動機構と、を有し、第1フロート装置の第1係合部材が非係合位置に移動されることにより、排水弁が第2フロート装置の第2係合部材と係合することを特徴としている。
【0008】
このように構成された本発明においては、排水口が形成された貯水タンクに、水洗便器に供給すべき洗浄水が貯留されている。排水弁水圧駆動部は、供給された水道水の給水圧を利用して、排水弁を駆動し、水洗便器への洗浄水の供給、停止を行う。クラッチ機構は、排水弁と排水弁水圧駆動部を連結して、排水弁水圧駆動部の駆動力により排水弁を引き上げる。また、クラッチ機構は、所定のタイミングで切断され、これにより、排水弁は降下される。水洗便器を洗浄する洗浄水量は、洗浄水量選択手段によって、第1の洗浄水量と、これよりも少ない第2の洗浄水量が選択される。さらに、第1フロート装置の第1係合部材は、係合位置と非係合位置に移動され、係合位置では排水弁と係合して排水弁を保持する。また、第2フロート装置の第2係合部材は第1フロート装置とは異なる高さに排水弁を保持するように構成されている。フロート駆動機構は、第2の洗浄水量が選択された場合に、第1フロートを駆動して第1係合部材を非係合位置に移動させる。この結果、排水弁は第2フロート装置の第2係合部材と係合される。
【0009】
このように構成された本発明によれば、排水弁と排水弁水圧駆動部がクラッチ機構によって連結され、所定のタイミングで切断されるので、排水弁水圧駆動部の作動速度に関わらず排水弁を移動させることが可能になり、排水弁を閉弁させることができる。これにより、仮に、排水弁を降下させる際に排水弁水圧駆動部の作動速度にバラツキがあったとしても、バラツキに左右されずに排水弁を閉弁させるタイミングを制御することが可能になる。また、フロート駆動機構が第1フロートを駆動して第1係合部材を非係合位置に移動させるので、選択された洗浄水量に応じて第1フロート装置又は第2フロート装置を選択的に作動させることができる。これにより、クラッチ機構を使用しながら、第1、第2の洗浄水量を設定することができる。
【0010】
本発明において、好ましくは、第1フロート装置は、第2フロート装置が排水弁を保持する高さよりも高い位置に排水弁を保持するように構成され、フロート駆動機構は、第2フロートに連動して第2係合部材が非係合位置に移動される前に、第1フロートを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている。
【0011】
このように構成された本発明によれば、第1フロート装置は、第2フロート装置よりも高い位置に排水弁を保持するように構成され、フロート駆動機構は第1フロートを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させる。このため、フロート駆動機構が正常動作しない場合には、排水弁は第1フロート装置によって保持され、第2の洗浄水量よりも多い第1の洗浄水量が排出される。この結果、フロート駆動機構に動作不良があった場合でも、水洗便器が洗浄水量不足に陥ることがなく、水洗便器を洗浄することができる。
【0012】
本発明において、好ましくは、クラッチ機構は、第1フロート装置の第1係合部材と排水弁が係合する高さよりも高い位置で切断されるように構成され、フロート駆動機構は、第1係合部材と排水弁が係合する高さまで排水弁が下降する前に、第1フロートを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている。
【0013】
このように構成された本発明によれば、フロート駆動機構が、第1係合部材と排水弁が係合する高さまで排水弁が下降する前に、第1係合部材を非係合位置に移動させる。このため、クラッチ機構によって切り離された排水弁は、第1フロート装置と係合することなく、第2フロート装置まで下降して、第2フロート装置によって保持される。これにより、第2の洗浄水量が選択された場合に、排水弁を円滑且つより確実に第2フロート装置によって保持させることができる。
【0014】
本発明において、好ましくは、クラッチ機構は排水口から排水弁を引き上げるように構成され、フロート駆動機構は、第1フロート装置の第1係合部材と排水弁が係合する高さまで排水弁が引き上げられる前に、第1フロートを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させるように構成されている。
【0015】
このように構成された本発明によれば、排水弁が、第1フロート装置の第1係合部材と排水弁が係合する高さまで引き上げられる前に、第1係合部材が非係合位置に移動される。このため、排水弁がクラッチ機構によって排水口から引き上げられる際も、排水弁と第1係合部材が接触することはなく、より確実に排水弁を第2フロート装置によって保持させることができる。
【0016】
本発明において、好ましくは、フロート駆動機構は、クラッチ機構が切断された後、第1フロート装置の第1係合部材と排水弁が係合する高さよりも下方に排水弁が下降するまで、第1係合部材を非係合位置に維持するように構成されている。
【0017】
このように構成された本発明によれば、第1フロート装置の第1係合部材と排水弁が係合する高さよりも下方に排水弁が下降するまで、第1係合部材が非係合位置に維持される。このため、クラッチ機構が切断された後、排水弁は、第1係合部材と係合することなく、第1フロート装置よりも下方に降下することができ、円滑且つより確実に排水弁を第2フロート装置に保持させることができる。
【0018】
本発明において、好ましくは、フロート駆動機構は、供給された水道水を利用して第1フロートを駆動するように構成されている。
このように構成された本発明によれば、フロート駆動機構が、供給された水道水を利用して第1フロートを駆動するので、第1フロートを駆動するための動力源を別途設けることなく、フロート駆動機構を作動させることができる。
【0019】
また、本発明は、洗浄水量の異なる複数の洗浄モードを備えた水洗便器装置であって、水洗便器と、この水洗便器への洗浄水の供給を行う本発明の洗浄水タンク装置と、を有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、排水弁水圧駆動部による排水弁の開弁を行いながら、排出される洗浄水の量を精密に設定することができる洗浄水タンク装置、及びそれを備えた水洗便器装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【
図3】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置に備えられているクラッチ機構の構成及び作用を模式的に示す図である。
【
図4】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置に備えられている排水弁、及び第1フロート装置、第2フロート装置の部分を拡大して示す図である。
【
図5】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける作用を示す図である。
【
図6】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける作用を示す図である。
【
図7】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の大洗浄モードにおける作用を示す図である。
【
図8】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける作用を示す図である。
【
図9】本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の小洗浄モードにおける作用を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
次に、添付図面を参照して、本発明の実施形態による水洗便器装置を説明する。
図1は、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置を備えた水洗便器装置全体を示す斜視図である。
図2は、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置の概略構成を示す断面図である。
【0023】
図1に示すように、本発明の実施形態による水洗便器装置1は、水洗便器である水洗便器本体2と、この水洗便器本体2の後部に載置された、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置4から構成されている。本実施形態の水洗便器装置1は、使用後に、壁面に取り付けられたリモコン装置6を操作するか、便座に設けられた人感センサ8が使用者の離座を検知した後、所定時間経過することにより、水洗便器本体2のボウル部2aの洗浄が行われるように構成されている。本実施形態による洗浄水タンク装置4は、リモコン装置6又は人感センサ8からの指示信号に基づいて、内部に貯留されている洗浄水を水洗便器本体2に排出し、この洗浄水によりボウル部2aを洗浄するように構成されている。
【0024】
また、ボウル部2aを洗浄するための「大洗浄」又は「小洗浄」は、使用者がリモコン装置6の押しボタン6aを押すことにより実行される。従って、本実施形態において、リモコン装置6は、水洗便器本体2を洗浄するための第1の洗浄水量と、この第1の洗浄水量よりも少ない第2の洗浄水量を選択可能な洗浄水量選択手段として機能する。なお、本実施形態では人感センサ8は便座に設けられているが、本発明はこの形態に限るものではなく、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できる位置に設けられていればよく、例えば、水洗便器本体2や洗浄水タンク装置4に設けることもできる。また、人感センサ8は、使用者の着座、離座や接近、離脱、手をかざす動作を検知できるものであればよく、例えば、赤外線センサやマイクロ波センサを人感センサ8として使用することができる。
【0025】
図2に示すように、洗浄水タンク装置4は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留する貯水タンク10と、この貯水タンク10に設けられた排水口10aを開閉するための排水弁12と、この排水弁12を駆動する排水弁水圧駆動部14と、を有する。また、洗浄水タンク装置4は、排水弁水圧駆動部14及び貯水タンク10内への給水を制御する給水制御弁16と、給水制御弁16に取り付けられた電磁弁18と、を内部に有する。さらに、洗浄水タンク装置4は、洗浄水量を制御するために洗浄水を噴出する制御用噴出部20と、この制御用噴出部20に洗浄水を供給するための洗浄水量制御弁22と、洗浄水量制御弁22に取り付けられた電磁弁24と、を内部に有する。また、洗浄水タンク装置4は、引き上げられた排水弁12を第1の位置に保持するための、第1フロート装置26と、排水弁12を第1の位置よりも低い第2の位置に保持するための第2フロート装置28と、を有する。さらに、洗浄水タンク装置4はクラッチ機構30を有し、このクラッチ機構30は、排水弁12と排水弁水圧駆動部14を連結して、排水弁12を排水弁水圧駆動部14の駆動力により引き上げる。
【0026】
貯水タンク10は、水洗便器本体2に供給すべき洗浄水を貯留するように構成されたタンクであり、その底部には貯留した洗浄水を水洗便器本体2へ排出するための排水口10aが形成されている。また、貯水タンク10内において、排水口10aの下流側にはオーバーフロー管10bが接続されている。このオーバーフロー管10bは、排水口10aの近傍から垂直に立ち上がり、貯水タンク10内に貯留されている洗浄水の止水水位WLよりも上方まで延びている。従って、オーバーフロー管10bの上端から流入した洗浄水は、排水口10aをバイパスして、水洗便器本体2へ直接流出する。
【0027】
排水弁12は、排水口10aを開閉するように配置された弁体であり、排水弁12が上方に引き上げられることにより開弁され、貯水タンク10内の洗浄水が水洗便器本体2に排出されて、ボウル部2aが洗浄される。また、排水弁12は、排水弁水圧駆動部14の駆動力により引き上げられ、所定の高さまで引き上げられると、クラッチ機構30が切断され、自重により降下する。排水弁12が降下する際、排水弁12は第1フロート装置26又は第2フロート装置28によって所定時間保持され、排水弁12が排水口10aに着座するまでの時間が調整される。
【0028】
排水弁水圧駆動部14は、水道から供給された洗浄水の給水圧を利用して、排水弁12を駆動するように構成されている。具体的には、排水弁水圧駆動部14は、給水制御弁16から供給された水が流入するシリンダ14aと、このシリンダ14a内に摺動可能に配置されたピストン14bと、シリンダ14aの下端から突出して排水弁12を駆動するロッド32と、を有する。
【0029】
さらに、シリンダ14aの内部にはスプリング14cが配置されており、ピストン14bを下方に向けて付勢している。また、ピストン14bにはパッキン14eが取り付けられ、シリンダ14aの内壁面とピストン14bの間の水密性が確保されている。さらに、ロッド32の下端にはクラッチ機構30が設けられており、このクラッチ機構30により、ロッド32と排水弁12の弁軸12aが連結・解除される。
【0030】
シリンダ14aは円筒形の部材であり、その軸線を鉛直方向に向けて配置されると共に、内部にピストン14bを摺動可能に受け入れている。また、シリンダ14aの下端部には、駆動部給水路34aが接続されており、給水制御弁16から流出した水がシリンダ14a内に流入するようになっている。このため、シリンダ14a内のピストン14bは、シリンダ14aに流入した水により、スプリング14cの付勢力に抗して押し上げられる。
【0031】
一方、シリンダ14aの上部には流出孔が設けられ、駆動部排水路34bは、この流出孔を介してシリンダ14aの内部と連通している。従って、シリンダ14a下部に接続された駆動部給水路34aからシリンダ14a内に水が流入すると、ピストン14bは、第1の位置であるシリンダ14aの下部から上方へ押し上げられる。そして、ピストン14bが、流出孔よりも上方の第2の位置まで押し上げられると、シリンダ14aに流入した水は流出孔から駆動部排水路34bを通って流出する。即ち、駆動部給水路34aと駆動部排水路34bは、ピストン14bが第2の位置まで移動されると、シリンダ14aの内部を介して連通される。また、シリンダ14aから延びる駆動部排水路34bの先端部には排水路分岐部34cが設けられている。排水路分岐部34cにおいて分岐した駆動部排水路34bは、その一方が貯水タンク10内に水を流出させ、他方がオーバーフロー管10bの中に水を流出させるように構成されている。従って、シリンダ14aから流出した水の一部は、オーバーフロー管10bを通って水洗便器本体2に排出され、残りは貯水タンク10内に貯留される。
【0032】
ロッド32は、ピストン14bの下面に接続された棒状の部材であり、シリンダ14aの底面に形成された貫通孔14fを通って、シリンダ14aの中から下方に突出するように延びている。また、シリンダ14aの下方から突出するロッド32と、シリンダ14aの貫通孔14fの内壁との間には、隙間14dが設けられ、シリンダ14aに流入した水の一部は、この隙間14dから流出する。隙間14dから流出した水は、貯水タンク10内に流入する。なお、この隙間14dは比較的狭く、流路抵抗が大きいため、隙間14dから水が流出する状態であっても、駆動部給水路34aからシリンダ14aに流入する水によりシリンダ14a内の圧力が上昇し、スプリング14cの付勢力に抗してピストン14bが押し上げられる。
【0033】
次に、給水制御弁16は、電磁弁18の作動に基づいて排水弁水圧駆動部14への給水を制御すると共に、貯水タンク10への給水、停止を制御するように構成されている。即ち、給水制御弁16は、主弁体16aと、この主弁体16aによって開閉される主弁口16bと、主弁体16aを移動させるための圧力室16cと、この圧力室16c内の圧力を切り替える2つのパイロット弁16d、16eと、を備えている。
【0034】
主弁体16aは、給水制御弁16の主弁口16bを開閉するように構成され、主弁口16bが開弁されると、給水管38から供給された水道水が排水弁水圧駆動部14に流入する。圧力室16cは、給水制御弁16の筐体内に、主弁体16aに隣接して設けられている。この圧力室16cには、給水管38から供給された水道水の一部が流入し、内部の圧力が上昇するように構成されている。圧力室16c内の圧力が上昇すると、主弁体16aが主弁口16bに向けて移動され、主弁口16bが閉弁される。
【0035】
パイロット弁16d、16eは、圧力室16cに設けられたパイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。パイロット弁によってパイロット弁口(図示せず)が開弁されると圧力室16c内の水が流出して内部の圧力が低下する。圧力室16c内の圧力が低下すると主弁体16aが主弁口16bから離座し、給水制御弁16が開弁される。圧力室16cには、2つのパイロット弁16d、16eが設けられているため、これら2つのパイロット弁16d、16eの両方が閉弁されたとき、圧力室16c内の圧力が上昇し、給水制御弁16が閉弁される。
【0036】
パイロット弁16dは、パイロット弁16dに取り付けられた電磁弁18により移動され、パイロット弁口(図示せず)を開閉する。電磁弁18はコントローラ40に接続され、コントローラ40からの指令信号に基づいてパイロット弁16dを移動させる。具体的には、リモコン装置6や人感センサ8からの信号をコントローラ40が受信し、コントローラ40は電磁弁18に電気信号を送り、これを作動させる。
【0037】
一方、パイロット弁16eには、フロートスイッチ42が接続されている。フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の水位に基づいてパイロット弁16eを制御し、パイロット弁口(図示せず)を開閉するように構成されている。即ち、フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の水位が所定の水位に到達するとパイロット弁16eに信号を送り、パイロット弁口(図示せず)を閉弁させる。即ち、フロートスイッチ42は、貯水タンク10内の貯水水位を所定の止水水位WLに設定するように構成されている。フロートスイッチ42は貯水タンク10内に配置されており、貯水タンク10の水位が止水水位WLまで上昇すると、給水制御弁16から排水弁水圧駆動部14への給水を停止させるように構成されている。
【0038】
また、給水制御弁16と排水弁水圧駆動部14の間の駆動部給水路34aには、バキュームブレーカ36が設けられている。このバキュームブレーカ36により、給水制御弁16側が負圧になった場合には、給水制御弁16側への水の逆流が防止される。
【0039】
次に、洗浄水量制御弁22は、電磁弁24の作動に基づいて制御用噴出部20への給水を制御するように構成されている。この洗浄水量制御弁22は、給水制御弁16を介して給水管38に接続されているが、給水制御弁16の開閉に関わらず、給水管38から供給された水道水は常に洗浄水量制御弁22に流入するようになっている。また、洗浄水量制御弁22には、主弁体22a、圧力室22b、及びパイロット弁22cが備えられ、電磁弁24によりパイロット弁22cが開閉される。電磁弁24によりパイロット弁22cが開弁されると、洗浄水量制御弁22の主弁体22aが開弁され、給水管38から流入した水道水が制御用噴出部20に供給され、貯水タンク10内に下方に向けて噴出される。また、電磁弁24はコントローラ40に接続され、コントローラ40からの指令信号に基づいてパイロット弁22cを移動させる。具体的には、リモコン装置6の操作に基づいてコントローラ40は電磁弁24に電気信号を送り、これを作動させる。
【0040】
また、洗浄水量制御弁22と制御用噴出部20の間の管路には、バキュームブレーカ44が設けられている。このバキュームブレーカ44により、洗浄水量制御弁22側が負圧になった場合には、洗浄水量制御弁22側への水の逆流が防止される。
【0041】
また、水道から供給された水は、貯水タンク10の外側に配置された止水栓38a、この止水栓38aの下流側の、貯水タンク10の中に配置された定流量弁38bを介して給水制御弁16及び洗浄水量制御弁22に夫々供給される。止水栓38aは、メンテナンス時等に洗浄水タンク装置4への水の供給を停止させるために設けられており、通常は開栓された状態で使用される。定流量弁38bは、水道から供給された水を、所定流量で給水制御弁16、洗浄水量制御弁22に流入させるために設けられており、水洗便器装置1の設置環境に関わらず一定流量の水が供給されるように構成されている。
【0042】
次に、
図3を新たに参照して、クラッチ機構30の構成及び作用を説明する。
図3は、クラッチ機構30の構成を模式的に示すと共に、排水弁水圧駆動部14によって引き上げられた際の作動を示している。
【0043】
まず、
図3の(a)欄に示すように、クラッチ機構30は、排水弁水圧駆動部14から下方に延びるロッド32の下端に設けられ、ロッド32の下端と、排水弁12の弁軸12aの上端を連結・解除するように構成されている。クラッチ機構30は、ロッド32の下端に取り付けられた回転軸30aと、この回転軸30aによって支持された鈎部材30bと、弁軸12aの上端に設けられた係合爪30cと、を有する。
【0044】
回転軸30aは、ロッド32の下端に水平方向に向けて取り付けられ、鈎部材30bを回動可能に支持している。鈎部材30bは板状の部材であり、その中間部が回転軸30aによって回動可能に支持されている。また、鈎部材30bの下端は鈎状に折り曲げられ、鈎部が形成されている。排水弁12の弁軸12aの上端に設けられた係合爪30cは、直角三角形状の爪である。係合爪30cの底辺はほぼ水平に向けられ、側面は下方に向けて傾斜するように形成されている。
【0045】
図3の(a)欄に示す状態では、排水弁12は排水口10aに着座しており、排水口10aは閉塞されている。また、この状態では、排水弁水圧駆動部14と排水弁12は連結されており、この連結状態においては、鈎部材30bの鈎部が係合爪30cの底辺と係合しており、排水弁12をロッド32によって引き上げることが可能である。
【0046】
次に、
図3の(b)欄に示すように、排水弁水圧駆動部14に洗浄水が供給されると、ピストン14bが上方へ移動し、これに伴い排水弁12がロッド32によって引き上げられる。さらに、
図3の(c)欄に示すように、排水弁12が所定位置まで引き上げられると、鈎部材30bの上端が排水弁水圧駆動部14の底面に当接し、鈎部材30bは回転軸30aを中心に回動される。この回動により、鈎部材30bの下端の鈎部は、係合爪30cから外れる方向に移動され、鈎部材30bと係合爪30cの係合が解除される。鈎部材30bと係合爪30cの係合が解除されると、
図3の(d)欄に示すように、排水弁12は、貯水タンク10内に貯留された洗浄水の中を、排水口10aに向けて降下する。(なお、後述するように、降下した排水弁12は、排水口10aに着座する前に、第1フロート装置26又は第2フロート装置28によって、一時的に所定の高さに保持される。)
【0047】
さらに、
図3の(e)欄に示すように、排水弁水圧駆動部14に供給されている洗浄水が停止されると、スプリング14cの付勢力により、ロッド32が降下する。ロッド32が降下すると、
図3の(f)欄に示すように、ロッド32の下端に取り付けられた鈎部材30bの鈎部の先端が、係合爪30cに当接する。ロッド32が更に降下すると、
図3の(g)欄に示すように、鈎部材30bの鈎部が係合爪30cの傾斜面によって押され、鈎部材30bが回動される。ロッド32が更に降下すると、
図3の(h)欄に示すように、鈎部材30bの鈎部が係合爪30cを乗り越え、鈎部材30bは重力により元の位置まで回動され、鈎部材30bの鈎部と、係合爪30cが再び係合し、
図3の(a)欄に示す状態に復帰する。
【0048】
次に、
図4を新たに参照して、第1フロート装置26及び第2フロート装置28の構成、及び作用を説明する。
図4は、
図2における排水弁12、及び第1フロート装置26、第2フロート装置28の部分を拡大して示した図である。
図4の(a)欄には、排水弁12が閉弁された状態が示され、(b)欄には、排水弁12が開弁され、第1フロート装置26によって保持されている状態が示されている。
【0049】
図4に示すように、第1フロート装置26は、第1フロート26aと、この第1フロート26aを回動可能に支持する第1保持機構46と、を有する。
第1フロート26aは、中空の直方体状の部材であり、貯水タンク10内に貯留された洗浄水から浮力を受けるように構成されている。この浮力により、貯水タンク10内の水位が所定水位以上である場合には、第1フロート26aは、
図4の(a)欄の実線に示す状態になる。
【0050】
第1保持機構46は、第1フロート26aを回動可能に支持する機構であり、支持軸46aと、この支持軸46aに支持されたアーム部材46b及び第1係合部材46cを有する。支持軸46aは、任意の部材(図示せず)により、貯水タンク10に対して固定された回転軸であり、アーム部材46b及び第1係合部材46cを回動可能に支持している。一方、排水弁12の弁軸12aの基端部には、第1係合部材46cと係合可能に形成された保持爪12bが形成されている。この保持爪12bは直角三角形状の突起であり、弁軸12aの基端部から第1係合部材46cに向けて延びており、その底辺は水平方向に向けられ、側面は下方に向けて傾斜するように延びている。
【0051】
支持軸46aは、
図4の紙面に直交する方向に延びる軸であり、任意の部材(図示せず)により、その両端部が貯水タンク10に対して固定され、中間部が弁軸12aから遠ざかるように湾曲して形成されている。また、アーム部材46bは、折れ曲がった梁状の部材であり、その下端部が2つに枝分かれするように構成されている。これらの枝分かれしたアーム部材46bの下端が、夫々、支持軸46aの両端部で回動可能に支持されている。このため、排水弁12が鉛直方向に移動された場合でも、支持軸46a及びアーム部材46bが、排水弁12の弁軸12aに設けられた保持爪12bと干渉することはない。
【0052】
一方、アーム部材46bの上端部は、第1フロート26aの底面に固定されている。このため、第1フロート26aが浮力を受けている状態では、第1フロート26aは、
図4の(a)欄の実線に示す状態に保持される。また、貯水タンク10内の水位が低下すると、第1フロート26a及びアーム部材46bは自重により、支持軸46aを中心に
図4の(a)欄の想像線に示す状態まで回動される。なお、第1フロート26a及びアーム部材46bの回動は、
図4の(a)欄の実線に示す第1保持機構46の保持状態から想像線に示す非保持状態までの間に制限されている。
【0053】
さらに、第1係合部材46cは、支持軸46aに対して回動可能に取り付けられた部材であり、その基端部が支持軸46aの両端部において回動可能に支持されている。また、第1係合部材46cは、その先端部が、排水弁12の弁軸12aに向けて湾曲するように延びている。このため、第1フロート26aが
図4の(a)欄の実線に示す位置へ回動された状態では、第1係合部材46cは係合位置に位置する。これに対して、第1フロート26aが
図4の(a)欄の想像線に示す位置へ回動された状態では、第1係合部材46cは非係合位置に位置する。
【0054】
また、第1係合部材46cは、支持軸46aを中心に、アーム部材46bと連動して回動されるように構成されている。即ち、第1フロート26a及びアーム部材46bが
図4の(a)欄の実線に示す状態から、想像線に示す状態まで回動すると、アーム部材46bと連動して、第1係合部材46cも実線に示す係合位置から想像線に示す非係合位置まで回動される。しかしながら、
図4の(a)欄の実線に示す状態において、第1係合部材46cの先端が、排水弁12の保持爪12bによって上方に向けて押された場合には、第1係合部材46cのみが空回りして、回動することができる。即ち、第1係合部材46cの先端部が、保持爪12bによって上方に向けて押された場合には、第1フロート26a及びアーム部材46bが実線に示す位置を保持したまま、第1係合部材46cのみが
図4の想像線に示す位置まで回動することができる。
【0055】
一方、
図4の(b)欄の実線に示すように、排水弁12が上方に引き上げられ、保持爪12bが第1係合部材46cよりも上方に位置する状態では、係合位置にある第1係合部材46cと保持爪12bが係合して、排水弁12の降下が阻止され、排水弁12が保持される。即ち、第1保持機構46を構成する第1係合部材46cが、排水弁12と係合して、排水弁12を所定の高さに保持する。従って、排水弁水圧駆動部14に接続されたロッド32(
図3)によって排水弁12が引き上げられ、その後、クラッチ機構30が切り離されると、排水弁12は降下する。この降下の途中で、排水弁12の保持爪12bと、係合位置にある第1係合部材46cが係合し、排水弁12は所定の高さに保持される。
【0056】
次いで、貯水タンク10内の水位が低下すると、第1フロート26aの位置が下がり、第1フロート26a及びアーム部材46bは、
図4の(b)欄の想像線に示す位置まで回動する(後述するように、この状態では、第2フロート装置28も想像線に示す位置まで回動されている。)。この回動に連動して、第1係合部材46cも
図4の(b)欄の想像線に示す非係合位置まで回動されるため、保持爪12bと第1係合部材46cの係合が解除される。これにより、排水弁12が降下し、排水口10aに着座して、排水口10aが閉塞される。
【0057】
また、
図4の(a)欄に示すように、第1フロート26aの上方には、制御用噴出部20が設けられている。この制御用噴出部20は、第1フロート26aに向けて、鉛直下方に洗浄水を噴出するように構成されたノズルであり、その下端には洗浄水を噴出する噴出口20aが設けられている。また、制御用噴出部20の下端部には、円筒形の直管部20bが設けられており、噴出口20aに連通している。制御用噴出部20から噴出される洗浄水は、断面積一定の、円形断面の直管部20b内を流れることにより、乱れが抑制される。なお、貯水タンク10内が止水である場合には、第1フロート26a及び制御用噴出部20の先端部は、洗浄水の中に水没した状態にある。このため、水没した制御用噴出部20の噴出口20aから、水没した第1フロート26aに向けて洗浄水が噴出される。
【0058】
さらに、制御用噴出部20から噴出された洗浄水は、噴出口20aに対向するように向けられた第1フロート26aの上面26bに当たり、第1フロート26aを押し下げるように作用する。このため、第1フロート26aの上面26bは、制御用噴出部20から噴出された洗浄水が当たる受水面として機能する。制御用噴出部20から洗浄水を噴出させ、第1フロート26aの受水面に当てることにより、第1フロート装置26の第1係合部材46cは、貯水タンク10内の水位に関わらず、
図4に想像線で示す非係合位置に移動される。従って、制御用噴出部20は、第1係合部材46cを非係合位置に移動させるフロート駆動機構として機能する。また、噴出口20aの面積は、受水面である第1フロート26aの上面26bの面積よりも小さく形成されているため、噴出口20aから噴出された水の運動エネルギーが散逸することなく、上面26bによって受け止められる。
【0059】
また、第1フロート26aの上面26bの外周縁には、壁面26cが設けられている。この壁面26cは、制御用噴出部20から噴出された洗浄水が上面26bに当たる衝突点Pを取り囲むように設けられている。これにより、第1フロート26aの上面26bに当たった洗浄水が、上面26bから逃げにくくなり、洗浄水の運動エネルギーを、より効果的に上面26bに伝達することができる。また、洗浄水が上面26bに当たる衝突点Pは、第1フロート26aの中心線Cに対し、支持軸46aから離間した側に位置している。このように、制御用噴出部20から噴出された洗浄水が、第1フロート26aの中心線Cに対し、支持軸46aから離間した側に衝突するので、洗浄水が衝突することによって作用する、支持軸46aを中心とした力のモーメントを大きくすることができる。
【0060】
次に、
図4を参照して、第2フロート装置28を説明する。
図4に示すように、第2フロート装置28は、第2フロート28aと、この第2フロート28aを回動可能に支持する第2保持機構48と、を有し、排水弁12の弁軸12aを挟んで第1フロート装置26の反対側に配置されている。
第2フロート28aは、中空の直方体状の部材であり、貯水タンク10内に貯留された洗浄水から浮力を受けるように構成されている。この浮力により、貯水タンク10内の水位が所定水位以上である場合には、第2フロート28aは、
図4の(a)欄の実線に示す保持状態になる。
【0061】
第2保持機構48は、第2フロート28aを回動可能に支持する機構であり、支持軸48aと、この支持軸48aに支持されたアーム部材48b及び第2係合部材48cを有する。この第2保持機構48の構成及び作動は、第1保持機構46と同様であるが、第2保持機構48を構成する第2係合部材48cは、排水弁12の弁軸12aに設けられた保持爪12cと係合するように配置されている。この保持爪12cも、第1保持機構46の第1係合部材46cが係合する保持爪12bと同様に、直角三角形状の突起であり、排水弁12の弁軸12aに、保持爪12bと同じ高さに形成されている。また、第2フロート28a及びアーム部材48bが
図4の実線に示す状態にあるときは、第2係合部材48cは係合位置に位置し、想像線に示す状態にあるときは、第2係合部材48cは非係合位置に位置する。
【0062】
また、第2保持機構48の支持軸48aは、第1保持機構46の支持軸46aよりも低い位置に配置されている。このため、第2フロート装置28は、第1フロート装置26とは異なる位置に、第1フロート装置26よりも低い位置に排水弁12を保持する。さらに、第2保持機構48のアーム部材48bは、第1保持機構46のアーム部材46bよりも長く形成されているため、第2フロート28aは、第1フロート26aよりも高い位置に支持される。これにより、貯水タンク10内の水位が低下しているときは、第2フロート28aの方が、第1フロート26aよりも先に、
図4の想像線に示す非保持状態の位置へ回動される。
【0063】
次に、
図5乃至
図9を新たに参照して、本発明の実施形態による洗浄水タンク装置4、及びそれを備えた水洗便器装置1の作用を説明する。
まず、
図2に示す便器洗浄の待機状態においては、貯水タンク10内の水位は所定の止水水位WLにあり、この状態では、給水制御弁16及び洗浄水量制御弁22は何れも閉弁されている。また、第1フロート装置26及び第2フロート装置28は、
図4の(a)欄に実線で示す保持状態にされている。次に、使用者がリモコン装置6(
図1)の大洗浄ボタンを押すと、リモコン装置6は、大洗浄モードを実行するための指示信号をコントローラ40(
図2)に送信する。また、小洗浄ボタンが押されると、小洗浄モードを実行するための指示信号がコントローラ40に送信される。このように、本実施形態において、水洗便器装置1は、洗浄水量の異なる大洗浄モードと小洗浄モードの2つの洗浄モードを備え、リモコン装置6は、洗浄水量を選択する洗浄水量選択手段として機能する。
【0064】
なお、本実施形態の水洗便器装置1においては、人感センサ8(
図1)によって使用者の離座が検知された後、リモコン装置6の洗浄ボタンが押されることなく、所定時間経過した場合にも、便器洗浄の指示信号がコントローラ40に送信される。また、コントローラ40は、使用者が水洗便器装置1に着座してから離座するまでの時間が所定時間未満であった場合には、使用者が小便をしたと判断し、小洗浄モードを実行する。一方、着座してから離座するまでの時間が所定時間以上であった場合には、コントローラ40は、大洗浄モードを実行する。従って、この場合には、第1の洗浄水量で洗浄を行う大洗浄と、第1の洗浄水量よりも少ない第2の洗浄水量で洗浄を行う小洗浄は、コントローラ40によって選択されるので、コントローラ40は洗浄水量選択手段として機能する。
【0065】
次に、
図5乃至
図7を参照して、大洗浄モードの作用を説明する。
大洗浄をすべき指示信号を受信すると、コントローラ40は、給水制御弁16に備えられた電磁弁18(
図2)を作動させ、電磁弁側のパイロット弁16dをパイロット弁口から離座させる。これにより、圧力室16c内の圧力が低下し、主弁体16aが主弁口16bから離座して、主弁口16bが開弁される。なお、大洗浄が選択された場合には、洗浄水量制御弁22は常に閉弁状態にされ、制御用噴出部20から洗浄水が噴出されることはない。即ち、大洗浄が選択された場合には、フロート駆動機構である制御用噴出部20によって第1フロート26aが駆動されることはない。給水制御弁16が開弁されると、
図5の上段に示すように、給水管38から流入した洗浄水が、給水制御弁16を介して排水弁水圧駆動部14に供給される。これにより、排水弁水圧駆動部14のピストン14bが押し上げられ、ロッド32を介して排水弁12が引き上げられ、貯水タンク10内の洗浄水が排水口10aから水洗便器本体2へ排出される。
【0066】
排水弁12が引き上げられる際、排水弁12の弁軸12aに設けられた保持爪12cが第2保持機構48の第2係合部材48cを押し上げて回動させ、保持爪12cは第2係合部材48cを越える。さらに排水弁12が引き上げられると、保持爪12bが第1保持機構46の第1係合部材46cを押し上げて回動させ、保持爪12bは第1係合部材46cを越える(
図4の(a)欄→(b)欄)。次に、
図5の下段に示すように、更に排水弁12が引き上げられると、クラッチ機構30が切断される。即ち、排水弁12が所定の高さに到達すると、クラッチ機構30の鈎部材30bの上端が、排水弁水圧駆動部14の底面に当たり、クラッチ機構30が切断される(
図3の(b)欄→(c)欄)。
【0067】
クラッチ機構30が切断されると、排水弁12は、自重により排水口10aに向けて降下し始める。ここで、排水弁12が開弁された直後は、貯水タンク10内の水位が高いため、第1フロート装置26の第1係合部材46c、及び第2フロート装置28の第2係合部材48cは、何れも、
図4の(b)欄に実線で示す係合位置にされている。このため、降下してきた排水弁12の保持爪12bが、第1保持機構46の第1係合部材46cと係合し、排水弁12は第1フロート装置26によって所定の高さに保持される。排水弁12が第1フロート装置26によって保持されることにより、排水口10aは開弁状態に維持され、貯水タンク10内の洗浄水の水洗便器本体2への排出が維持される。
【0068】
次いで、
図6の上段に示すように、貯水タンク10内の水位が低下すると、貯水タンク10内の水位を検出しているフロートスイッチ42がオフになる。フロートスイッチ42がオフになると、給水制御弁16に備えられたフロートスイッチ側のパイロット弁16e(
図2)が開弁される。一方、パイロット弁16eが開弁されると、コントローラ40は電磁弁18を作動させ、電磁弁側のパイロット弁16dを閉弁させる。上述したように、給水制御弁16の主弁体16aは、フロートスイッチ側のパイロット弁16e及び電磁弁側のパイロット弁16dの両方が閉弁されたとき、閉弁されるように構成されている。このため、電磁弁側のパイロット弁16dが閉弁された後も、給水制御弁16の開弁状態は維持され、貯水タンク10への給水は継続される。
【0069】
なお、本実施形態においては、フロートスイッチ42の検出信号に基づいてパイロット弁16eが開閉されているが、変形例として、フロートスイッチ42の代わりにボールタップにより機械的にパイロット弁16eが開閉されるように本発明を構成することもできる。この変形例においては、パイロット弁16eは貯水タンク10内の水位に応じて上下動するフロートに連動して開閉される。一方、この変形例においては、電磁弁側のパイロット弁16dは、洗浄開始後に貯水タンク10内の水位が低下し、パイロット弁16eが開弁されるに十分な時間が経過した後、閉弁される。
【0070】
また、
図6の上段に示すように、貯水タンク10内の水位が、所定水位WL
2まで低下すると、第2保持機構48によって支持されている第2フロート28aの位置が低下する。これにより、第2フロート装置28の第2係合部材48cは、
図4の(b)欄に想像線で示す非係合位置に移動する。一方、第1フロート26aは、第2フロート28aよりも低い位置に支持されているため、この状態においても、第1フロート装置26の第1係合部材46cは係止位置に維持され、貯水タンク10内の洗浄水は排出され続ける。
【0071】
貯水タンク10内の水位が更に低下し、所定水位WL
2よりも低い所定水位WL
1まで低下すると、
図6の下段に示すように、第1保持機構46によって支持されている第1フロート26aの位置も低下する。これにより、第1フロート装置26の第1係合部材46cも、
図4の(b)欄に想像線で示す非係止位置に移動し、第1係合部材46cと排水弁12の保持爪12bとの間の係合が解除される。第1係合部材46cが非係止位置に移動することにより、排水弁12は再び下降し始める。
【0072】
これにより、
図7の上段に示すように、排水弁12が排水口10aに着座し、排水口10aが閉塞される。このように、大洗浄モードが実行された場合には、貯水タンク10内の水位が、止水水位WLから所定水位WL
1に低下するまで排水弁12が保持され、第1の洗浄水量が水洗便器本体2に排出される。
【0073】
一方、フロートスイッチ42は依然としてオフ状態であるため、給水制御弁16の開弁状態が維持され、貯水タンク10への給水が継続される。貯水タンク10に供給された洗浄水は、排水弁水圧駆動部14を通って排水路分岐部34c(
図2)へ至り、排水路分岐部34cにおいて分岐された洗浄水の一部がオーバーフロー管10bに流入し、残りが貯水タンク10内に貯留される。オーバーフロー管10bに流入した洗浄水は、水洗便器本体2に流入し、ボウル部2aのリフィルに使用される。排水弁12が閉弁された状態で、貯水タンク10内に洗浄水が流入することにより、貯水タンク10内の水位が上昇する。
【0074】
図7の下段に示すように、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位WLまで上昇すると、フロートスイッチ42がオンになる。フロートスイッチ42がオンにされると、フロートスイッチ側のパイロット弁16e(
図2)が閉弁される。これにより、フロートスイッチ側のパイロット弁16e及び電磁弁側のパイロット弁16dの両方が閉弁された状態となるので、圧力室16c内の圧力が上昇し、給水制御弁16の主弁体16aが閉弁され、給水が停止される。排水弁水圧駆動部14への給水が停止されると、排水弁水圧駆動部14のピストン14bがスプリング14cの付勢力により押し下げられ、これと共にロッド32が低下する。これにより、クラッチ機構30が接続され(
図3の(e)欄~(h)欄)、便器洗浄が開始される前の待機状態に復帰する。
【0075】
次に、
図8及び
図9を参照して、小洗浄モードの作用を説明する。
小洗浄をすべき指示信号を受信すると、コントローラ40は、給水制御弁16に備えられた電磁弁18を作動させ、給水制御弁16を開弁させる。さらに、コントローラ40は、洗浄水量制御弁22に備えられた電磁弁24(
図2)を作動させ、洗浄水量制御弁22も開弁させる。給水制御弁16が開弁されると、
図8の上段に示すように、給水管38から流入した洗浄水が、給水制御弁16を介して排水弁水圧駆動部14に供給される。これにより、排水弁水圧駆動部14のピストン14bが押し上げられ、ロッド32を介して排水弁12が引き上げられ、貯水タンク10内の洗浄水が排水口10aから水洗便器本体2へ排出される。なお、排水弁12が引き上げられる際、排水弁12の弁軸12aに設けられた保持爪12c(
図4の(a)欄)が第2保持機構48の第2係合部材48cを押し上げて回動させ、保持爪12cは第2係合部材48cを越える。
【0076】
また、洗浄水量制御弁22が開弁されると、給水管38から流入した洗浄水が、洗浄水量制御弁22を通って制御用噴出部20から下方に向けて噴出される。なお、制御用噴出部20の先端(下端)は、貯水タンク10の止水水位WLよりも下側に位置するため、制御用噴出部20は水没した噴出口20a(
図4)から洗浄水を噴出する。噴出口20aから噴出された洗浄水は、噴出口20aに対向するように配置された、受水面である第1フロート26aの上面26bに当たり、第1フロート26aを下方に駆動する。このため、制御用噴出部20の噴出口20aから洗浄水が噴出されている間は、貯水タンク10内の水位に関わらず、第1フロート26aは、
図4の(a)欄に想像線で示す位置に押し下げられる。このように、フロート駆動機構である制御用噴出部20は、供給された水道水を利用して第1フロート26aを駆動する。
【0077】
即ち、
図8の上段に示すように、制御用噴出部20から噴出された洗浄水により、第1フロート装置26の第1係合部材46cは、貯水タンク10内の水位に関わらず非係合位置に移動される。なお、第1フロート装置26の第1係合部材46cと排水弁12の保持爪12bが係合する高さまで、排水弁12が引き上げられる前に、制御用噴出部20からの洗浄水の噴出によって第1フロート26aが駆動され、第1係合部材46cは非係合位置に移動される。
【0078】
次に、
図8の下段に示すように、排水弁12が所定位置まで引き上げられると、クラッチ機構30が切断される。即ち、クラッチ機構30は、第1フロート装置26の第1係合部材46cと排水弁12が係合する高さよりも高い位置で切断される。また、上述したように、第1フロート26aは制御用噴出部20から噴出された洗浄水によって既に移動されて(押し下げられて)おり、第1係合部材46cと排水弁12の保持爪12bが係合する高さまで排水弁12が下降する前に、第1係合部材46cは非係合位置に移動されている。
【0079】
クラッチ機構30が切断されると、排水弁12は、自重により排水口10aに向けて降下し始める。ここで、排水弁12が開弁された直後は、貯水タンク10内の水位が高いため、第2フロート装置28の第2係合部材48cは、
図4の(b)欄に実線で示す係合位置にされている。一方、第1フロート装置26の第1係合部材46cは、上記のように、制御用噴出部20からの洗浄水の噴出により、
図4の(b)欄に想像線で示す非係合位置に移動され、その状態が維持されている。換言すれば、クラッチ機構30が切断された後、第1フロート装置26の第1係合部材46cと排水弁12の保持爪12bが係合する高さよりも下方に排水弁12が下降するまで、制御用噴出部20からの洗浄水の噴出により、第1係合部材46cは非係合位置に維持される。このため、降下してきた排水弁12の保持爪12cは、第2保持機構48の第2係合部材48cと係合し、排水弁12は第2保持機構48によって所定の高さに保持される。
【0080】
ここで、排水弁12が第2保持機構48によって保持される場合には、第1保持機構46によって保持される場合よりも低い位置に保持される。排水弁12が第2保持機構48によって保持されることにより、排水口10aは開弁状態に維持され、貯水タンク10内の洗浄水の水洗便器本体2への排出が維持される。また、コントローラ40は、排水弁12が降下し、排水弁12の保持爪12bが第1保持機構46の第1係合部材46cを通り過ぎた後、所定のタイミングで電磁弁24(
図2)に信号を送り、洗浄水量制御弁22を閉弁させる。これにより、制御用噴出部20からの洗浄水の噴出は停止される。
【0081】
次いで、
図9の上段に示すように、貯水タンク10内の水位が低下すると、貯水タンク10内の水位を検出しているフロートスイッチ42がオフになる。フロートスイッチ42がオフになると、給水制御弁16に備えられたフロートスイッチ側のパイロット弁16e(
図2)が開弁される。一方、パイロット弁16eが開弁されると、コントローラ40は電磁弁18を作動させ、電磁弁側のパイロット弁16dを閉弁させる。これにより、電磁弁側のパイロット弁16dが閉弁された後も、給水制御弁16の開弁状態は維持され、貯水タンク10への給水は継続される。
【0082】
また、
図9の上段に示すように、貯水タンク10内の水位が低下すると、第2保持機構48によって支持されている第2フロート28aの位置が低下する。これにより、第2フロート装置28の第2係合部材48cは、
図4の(b)欄に想像線で示す非係合位置に移動する。これにより、第2係合部材48cと排水弁12の保持爪12cとの間の係合が解除される。換言すれば、第2フロート28aに連動して第2係合部材48cが非係合位置に移動される前に、制御用噴出部20から噴出される洗浄水により第1フロート26aが駆動され、第1係合部材46cは非係合位置に移動されている。このため、排水弁12は第1係合部材46cとは係合せず、その下方の第2係合部材48cと係合する。次いで、第2フロート装置28の第2係合部材48cが非係合位置に移動することにより、排水弁12は再び下降し始める。
【0083】
次いで、
図9の下段に示すように、排水弁12が排水口10aに着座し、排水口10aが閉塞される。このように、小洗浄モードが実行された場合には、貯水タンク10内の水位が、止水水位WLから所定水位WL
2に低下するまで排水弁12が保持され、第2の洗浄水量が水洗便器本体2に排出される。ここで、大洗浄モードにおいては、貯水タンク10内の水位が、所定水位WL
2よりも低い所定水位WL
1に低下するまで、排水弁12が保持されていた。このため、小洗浄モードにおいて貯水タンク10から排出される第2の洗浄水量は、大洗浄モードにおいて排出される第1の洗浄水量よりも少なくなる。換言すれば、小洗浄モードにおいては、制御用噴出部20が第1フロート26aに洗浄水を当てることにより、第1保持機構46が非保持状態にされ、排水弁12は第1保持機構46によって保持されることなく、第2保持機構48によって保持される。この結果、小洗浄モードにおいては、大洗浄モードよりも、排水弁12は早期に降下され、洗浄水量が少なくなる。
【0084】
一方、
図9の下段の状態において、フロートスイッチ42は依然としてオフ状態であるため、給水制御弁16の開弁状態が維持され、貯水タンク10への給水が継続される。排水弁12が閉弁された状態で、貯水タンク10内に洗浄水が流入することにより、貯水タンク10内の水位が上昇する。
【0085】
さらに、貯水タンク10内の水位が所定の止水水位WLまで上昇すると、フロートスイッチ42がオンになり、フロートスイッチ側のパイロット弁16e(
図2)が閉弁される。これにより、フロートスイッチ側のパイロット弁16e及び電磁弁側のパイロット弁16dの両方が閉弁された状態となるので、給水制御弁16の主弁体16aが閉弁され、給水が停止される。排水弁水圧駆動部14への給水が停止されると、排水弁水圧駆動部14のピストン14bが押し下げられ、これと共にロッド32が低下する。これにより、クラッチ機構30が接続され(
図3の(e)欄~(h)欄)、便器洗浄が開始される前の待機状態に復帰(
図7の下段の状態に戻る)して、小洗浄モードを終了する。
【0086】
本発明の実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、排水弁12と排水弁水圧駆動部14がクラッチ機構30によって連結され、所定のタイミングで切断される(
図3)ので、排水弁水圧駆動部14の作動速度に関わらず排水弁12を移動させることが可能になり、排水弁12を閉弁させることができる。また、フロート駆動機構である制御用噴出部20が第1フロート26aを駆動して第1係合部材46cを非係合位置に移動させるので、選択された洗浄水量に応じて第1フロート装置26(大洗浄の場合)又は第2フロート装置28(小洗浄の場合)を選択的に作動させることができる。これにより、クラッチ機構30を使用しながら、第1、第2の洗浄水量を設定することができる。
【0087】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、第1フロート装置26は、第2フロート装置28よりも高い位置に排水弁12を保持する(
図4)ように構成され、制御用噴出部20は第1フロート26aを駆動して、第1係合部材を非係合位置に移動させる(
図8の上段)。このため、制御用噴出部20が正常動作せず、第1フロート26aを押し下げられない場合には、排水弁12は大洗浄の場合と同様に第1フロート装置26によって保持される(
図6の上段)。この結果、制御用噴出部20が正常動作しない場合には、第2の洗浄水量よりも多い第1の洗浄水量が排出される。これにより、制御用噴出部20に動作不良があった場合でも、水洗便器本体2が洗浄水量不足に陥ることがなく、水洗便器本体2を確実に洗浄することができる。
【0088】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、制御用噴出部20からの洗浄水が、第1係合部材46cと排水弁12が係合する高さまで排水弁12が下降する前に、第1係合部材46cを非係合位置に移動させる(
図8の上段)。このため、クラッチ機構30によって切り離された排水弁12は、第1フロート装置26と係合することなく、第2フロート装置28まで下降して、第2フロート装置28によって保持される(
図8の下段)。これにより、第2の洗浄水量が選択された場合に、排水弁12を円滑且つ確実に第2フロート装置28によって保持させることができる。
【0089】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、排水弁12が、第1フロート装置26の第1係合部材46cと排水弁12が係合する高さまで引き上げられる前に、第1係合部材46cが非係合位置に移動される(
図8の上段)。このため、排水弁12がクラッチ機構30によって排水口10aから引き上げられる際も、排水弁12と第1係合部材46cが接触することはなく、より確実に排水弁12を第2フロート装置28によって保持させることができる。
【0090】
さらに、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、第1フロート装置26の第1係合部材46cと排水弁12が係合する高さよりも下方に排水弁12が下降するまで、第1係合部材46cが非係合位置に維持される(
図8の下段)。このため、クラッチ機構30が切断された後、排水弁12は、第1係合部材46cと係合することなく、第1フロート装置26よりも下方に降下することができ、円滑且つ確実に排水弁を第2フロート装置28に保持させることができる。
【0091】
また、本実施形態の洗浄水タンク装置4によれば、フロート駆動機構である制御用噴出部20が、供給された水道水を利用して第1フロート26aを駆動するので、第1フロート26aを駆動するための動力源を別途設けることなく、フロート駆動機構として作動させることができる。
【0092】
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態に種々の変更を加えることができる。
ここで、上述した実施形態においては、第1フロート装置26と、第2フロート装置28を備え、小洗浄モードが実行された場合には、制御用噴出部20が第1フロート26aに向けて洗浄水を噴出し、第1フロート装置26の第1係合部材46cを強制的に非係合位置に移動させていた。これに対し、第1の変形例として、第1フロート26aの上方に、供給された洗浄水の圧力により駆動されるフロート駆動用の部材、例えばピストンを設け、このピストンにロッドを取り付けておく。そして、このロッドによって第1フロート26aが押し下げられるように、本発明を構成することもできる。
【0093】
即ち、小洗浄モードが実行された場合において、フロート駆動用のピストンを移動させ、これによりロッドを介して第1フロート26aを押し下げて第1係合部材46cを強制的に非係合位置に移動させる。これにより、クラッチ機構30が切断され、降下する排水弁12の保持爪12bは、第1フロート装置26の第1係合部材46cとは係合せず、保持爪12cと第2フロート装置28の第2係合部材48cが係合する。一方、大洗浄モードが実行された場合には、フロート駆動用のピストンを移動させず、排水弁12の保持爪12bを、第1フロート装置26の第1係合部材46cと係合させる。これにより、小洗浄モードが選択された場合には、第2フロート装置28によって洗浄水量が設定され、大洗浄モードが選択された場合には、第1フロート装置26によって洗浄水量が設定される。この変形例においては、フロート駆動用のピストン及びこれに取り付けられたロッドがフロート駆動機構として機能する。
【0094】
また、第2の変形例として、第1変形例におけるフロート駆動用のピストンの代わりに水錘を使用することもできる。即ち、貯水タンク10内に、鉛直方向に移動可能な小型のタンクを配置すると共に、この小型のタンクの底面に下方に延びるロッドを設けておく。さらに、小型のタンクから延びるロッドの下端を第1フロート26aの上面に当接させておく。
【0095】
小洗浄モードが選択された場合には、小型のタンク内に洗浄水を流入させて水錘とし、この水錘の重量により第1フロート26aを強制的に押し下げて、第1フロート装置26の第1係合部材46cを非係合位置に移動させる。これにより、クラッチ機構30が切断され、降下する排水弁12の保持爪12bは、第1フロート装置26の第1係合部材46cとは係合せず、保持爪12cと第2フロート装置28の第2係合部材48cが係合する。なお、小型のタンクの下部には小穴を設けておき、所定時間が経過すると小型のタンク内の洗浄水が全て流出するようにしておく。一方、大洗浄モードが実行された場合には、小型のタンクに洗浄水を流入させず、排水弁12の保持爪12bを、第1フロート装置26の第1係合部材46cと係合させる。これにより、小洗浄モードが選択された場合には、第2フロート装置28によって洗浄水量が設定され、大洗浄モードが選択された場合には、第1フロート装置26によって洗浄水量が設定される。この変形例においては、小型のタンク及びこれに取り付けられたロッドがフロート駆動機構として機能する。
【0096】
さらに、第3の変形例として、第1変形例におけるフロート駆動用のピストンの代わりに、小型のタンク及びその中で浮力を受ける第3フロートを使用することもできる。即ち、貯水タンク10内に小型のタンクを固定しておくと共に、この小型のタンク内に鉛直方向に移動可能な第3フロートを配置しておく。さらに、第3フロートにはリンク機構を接続しておき、小型のタンク内で第3フロートが浮き上がると、第1フロート26aが下方に押し下げられるようにリンク機構を構成しておく。
【0097】
小洗浄モードが選択された場合には、小型のタンク内に洗浄水を流入させて第3フロートを浮き上がらせ、この浮力により、リンク機構を介して第1フロート26aを強制的に押し下げて、第1フロート装置26の第1係合部材46cを非係合位置に移動させる。これにより、クラッチ機構30が切断され、降下する排水弁12の保持爪12bは、第1フロート装置26の第1係合部材46cとは係合せず、保持爪12cと第2フロート装置28の第2係合部材48cが係合する。なお、小型のタンクの下部には小穴を設けておき、所定時間が経過すると小型のタンク内の洗浄水が全て流出し、第3フロートが下降するようにしておく。一方、大洗浄モードが実行された場合には、小型のタンクに洗浄水を流入させず、排水弁12の保持爪12bを、第1フロート装置26の第1係合部材46cと係合させる。これにより、小洗浄モードが選択された場合には、第2フロート装置28によって洗浄水量が設定され、大洗浄モードが選択された場合には、第1フロート装置26によって洗浄水量が設定される。この変形例においては、小型のタンク、第3フロート及びこれに接続されたリンク機構がフロート駆動機構として機能する。
【符号の説明】
【0098】
1 水洗便器装置
2 水洗便器本体(水洗便器)
2a ボウル部
4 洗浄水タンク装置
6 リモコン装置(洗浄水量選択手段)
6a 押しボタン
8 人感センサ
10 貯水タンク
10a 排水口
10b オーバーフロー管
12 排水弁
12a 弁軸
12b 保持爪
12c 保持爪
14 排水弁水圧駆動部
14a シリンダ
14b ピストン
14c スプリング
14d 隙間
14e パッキン
14f 貫通孔
16 給水制御弁
16a 主弁体
16b 主弁口
16c 圧力室
16d パイロット弁
16e パイロット弁
18 電磁弁
20 制御用噴出部(フロート駆動機構)
20a 噴出口
20b 直管部
22 洗浄水量制御弁
22a 主弁体
22b 圧力室
22c パイロット弁
24 電磁弁
26 第1フロート装置
26a 第1フロート
26b 上面(受水面)
28 第2フロート装置
28a 第2フロート
30 クラッチ機構
30a 回転軸
30b 鈎部材
30c 係合爪
32 ロッド
34a 駆動部給水路
34b 駆動部排水路
34c 排水路分岐部
36 バキュームブレーカ
38 給水管
38a 止水栓
40 コントローラ(洗浄水量選択手段)
42 フロートスイッチ
44 バキュームブレーカ
46 第1保持機構
46a 支持軸
46b アーム部材
46c 第1係合部材
48 第2保持機構
48a 支持軸
48b アーム部材
48c 第2係合部材