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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/73 20060101AFI20240131BHJP
   H01R 12/71 20110101ALI20240131BHJP
【FI】
H01R13/73 Z
H01R12/71
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020141741
(22)【出願日】2020-08-25
(65)【公開番号】P2022037548
(43)【公開日】2022-03-09
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】増本 拓也
【審査官】松原 陽介
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-151191(JP,A)
【文献】実開平05-031124(JP,U)
【文献】登録実用新案第3078520(JP,U)
【文献】特開2012-256477(JP,A)
【文献】特開2018-190500(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/00,12/50-12/91
H01R 24/00-24/86
H01R 13/73
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板に設置されるハウジングを備え、
前記ハウジングは、複数の係止部を有し、
前記複数の係止部は、それぞれ、前記回路基板の表面側から裏面側に突出する弾性変形可能な脚部と、前記脚部から前記脚部の突出方向と交差する方向である外側に張り出す係止本体と、を有し、
前記係止本体は、前記回路基板に係止可能な係止面を有し、
前記複数の係止部は、前記突出方向における前記係止面の高さを異にする複数種で構成され、且つ、
前記複数の係止部は、前記回路基板の係止孔に挿入されるロック部に設けられ、
前記複数の係止部における前記脚部の外面は、前記脚部が弾性変形していない自然状態にあるときに、前記係止孔への前記ロック部の挿入方向である上下方向に対し、前記係止面側へ向けて外側に傾斜している、コネクタ。
【請求項2】
前記複数種の前記係止部は、第1係止部と第2係止部とを有し、
前記第2係止部の前記係止面は、前記第1係止部の前記係止面よりも前記突出方向の先端側に位置しており、
前記第1係止部の前記係止面と前記第1係止部の前記突出方向の軸との間の傾斜角度をαとし、前記第2係止部の前記係止面と前記第2係止部の前記突出方向の軸との間の傾斜角度をβとしたときに、少なくとも前記αは鈍角であり、前記αと前記βは、β<αの関係が成り立つ、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記回路基板に対する位置決め用の突起を有し、
前記複数の係止部と前記突起は、それぞれ組になって前記ロック部を形成し、前記ロック部の中心を通る軸心の周りに分割して配置されている、請求項1または2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ロック部は、前記ハウジングの幅方向の両端側に対をなして配置され、
前記複数種の前記係止部は、第1係止部と第2係止部とを有し、
前記第2係止部の前記係止面は、前記第1係止部の前記係止面よりも前記突出方向の先端側に位置しており、
前記第1係止部は、前記ハウジングにおいて、前記第2係止部よりも前記幅方向の外側に位置し、前記幅方向の外側に張り出している、請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記ハウジングは、前方に開口するフード部と、前記フード部から後方に突出する突出壁と、を有し、前記ロック部は、前記突出壁に設けられ、前記突起は、前記複数の係止部に対して前側に位置している、請求項3または請求項4に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ロック部は、前記脚部の外面の付け根に鋭角に連なって前記回路基板の表面に当接可能な段差面を有している、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたコネクタは、回路基板に設置されるハウジングを備えている。ハウジングの底面には、複数のロック部が突出して設けられている。各ロック部は、それぞれ回路基板のロック取付部に係止される。これにより、コネクタは、回路基板の表面上に取り付けられる。なお、特許文献2および特許文献3に開示された技術は、回路基板に対してハウジング以外の部材が取り付けられる構造を特徴とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-204312号公報
【文献】特開2007-42626号公報
【文献】実開平5-45919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、例えば、回路基板の板厚が公差の範囲内で小さくなったときに、ロック取付部に対するロック部の係止が緩くなり、ハウジングが回路基板に対して傾く懸念があった。
【0005】
そこで、本開示は、回路基板に対するハウジングの傾きの発生を抑制することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、回路基板に設置されるハウジングを備え、前記ハウジングは、複数の係止部を有し、前記複数の係止部は、それぞれ、前記回路基板の表面側から裏面側に突出する弾性変形可能な脚部と、前記脚部から前記脚部の突出方向と交差する方向に張り出す係止本体と、を有し、前記係止本体は、前記回路基板に係止可能な係止面を有し、前記複数の係止部は、前記突出方向における前記係止面の高さを異にする複数種で構成されている、コネクタである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、回路基板に対するハウジングの傾きの発生を抑制することが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施例1において、コネクタが回路基板に設置された状態を示す断面図である。
図2図2は、ハウジングの背面図である。
図3図3は、ハウジングの一端側におけるロック部を示す拡大底面図である。
図4図4は、第1係止部および第2係止部が自然状態に配置された状態を示す拡大断面図である。
図5図5は、回路基板の板厚が公差の範囲内で小さい場合に、第1係止部および第2係止部のそれぞれの係止面が回路基板の裏面側に係止可能に配置される状態を示す拡大断面図である。
図6図6は、回路基板の板厚が公差の範囲内で大きい場合に、第1係止部および第2係止部のそれぞれの係止面が回路基板の裏面側に係止可能に配置される状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)回路基板に設置されるハウジングを備え、前記ハウジングは、複数の係止部を有し、前記複数の係止部は、それぞれ、前記回路基板の表面側から裏面側に突出する弾性変形可能な脚部と、前記脚部から前記脚部の突出方向と交差する方向に張り出す係止本体と、を有し、前記係止本体は、前記回路基板に係止可能な係止面を有し、前記複数の係止部は、前記突出方向における前記係止面の高さを異にする複数種で構成されている。
【0010】
この構成によれば、回路基板の板厚が公差の範囲内で変化したときに、いずれかの係止部の係止面が回路基板に係止可能な状態を実現することができる。その結果、係止部が回路基板に適正に係止され、ハウジングが回路基板に対して傾くのを抑制することができる。
【0011】
(2)前記複数種の前記係止部は、第1係止部と第2係止部とを有し、前記第2係止部の前記係止面は、前記第1係止部の前記係止面よりも前記突出方向の先端側に位置しており、前記第1係止部の前記係止面と前記第1係止部の前記突出方向の軸との間の傾斜角度をαとし、前記第2係止部の前記係止面と前記第2係止部の前記突出方向の軸との間の傾斜角度をβとしたときに、少なくとも前記αは鈍角であり、前記αと前記βは、β<αの関係が成り立つことが好ましい。
【0012】
この構成によれば、例えば、回路基板の板厚が公差の範囲内で小さい場合には、第1係止部の係止面が回路基板に効果的に係止される。また、回路基板の板厚が公差の範囲内で大きい場合には、第2係止部の係止面が回路基板に効果的に係止される。
【0013】
特に、β<αの関係が成り立つため、回路基板の板厚が大きい場合に、第2係止部の係止面が回路基板の裏面に強固に係止される状態を実現することができる。また、回路基板の板厚が公差の範囲内で変化したときに、第1係止部の係止面が回路基板の裏面側に臨む状態を実現することができる。その結果、係止部が回路基板に適正に係止される状態をより良好に実現することができる。
【0014】
(3)前記ハウジングは、前記回路基板に対する位置決め用の突起を有し、前記複数の係止部と前記突起は、それぞれ組になってロック部を形成し、前記ロック部の中心を通る軸心の周りに分割して配置されていると良い。
【0015】
この構成によれば、複数の係止部が回路基板に係止される際に、突起が回路基板に対する係止部の位置ずれを規制することができる。
【0016】
(4)前記ロック部は、前記ハウジングの幅方向の両端側に対をなして配置され、前記複数種の前記係止部は、第1係止部と第2係止部とを有し、前記第2係止部の前記係止面は、前記第1係止部の前記係止面よりも前記突出方向の先端側に位置しており、前記第1係止部は、前記ハウジングにおいて、前記第2係止部よりも前記幅方向の外側に位置し、前記幅方向の外側に張り出していると良い。
【0017】
この構成によれば、例えば、回路基板の板厚が公差の範囲内で小さい場合に、回路基板が外力を受けて湾曲したとしても、第1係止部の係止面が回路基板に係止される状態を維持することができる。
【0018】
(5)前記ハウジングは、前方に開口するフード部と、前記フード部から後方に突出する突出壁と、を有し、前記ロック部は、前記突出壁に設けられ、前記突起は、前記複数の係止部に対して前側に位置していると良い。
【0019】
この構成によれば、フード部が回路基板の前端よりも前方に突出する構成をとり得るが、位置決め用の突起が各係止部に対して前側に位置しているため、フード部が前下がりに傾くのを効果的に抑制することができる。
【0020】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0021】
<実施例1>
実施例1のコネクタ10は、図1に示すように、複数の端子金具90と、各端子金具90が装着されるハウジング11と、を備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、図1の左側を前側とする。上下方向は、図3を除く各図の上下方向を基準とする。左右方向は、幅方向と同義であって、図1を除く各図の左右方向を基準とする。ハウジング11は、前方から図示しない相手側ハウジングに嵌合可能とされている。
【0022】
(端子金具)
端子金具90は導電金属製であって、ピン状またはタブ状の雄端子金具として構成される。図1に示すように、端子金具90は、側面視L字形をなし、前後方向に延びる水平部91と上下方向に延びる垂直部92とを有している。水平部91の前端部は、ハウジング11が相手側ハウジングに嵌合されたときに、相手側ハウジングに装着された図示しない相手側端子金具に接続される。垂直部92の下端部は、回路基板80に設けられた接続孔81に挿入され、回路基板80に半田付けして接続される。
【0023】
(ハウジング)
ハウジング11は合成樹脂製であって、図1に示すように、前方に開口するフード部12を有している。フード部12は、左右方向を長手とする角筒状をなし、内部に、相手側ハウジングを嵌合させる。フード部12の背壁13には、複数の装着孔14が貫通して設けられている。端子金具90の水平部91は、装着孔14に圧入して挿通される。水平部91の前端部は、フード部12内に突出して配置される。
【0024】
フード部12の上下壁の外面には、一対のカムフォロア部15が突設されている。両カムフォロア部15は、それぞれ円柱状をなし、相手側ハウジングに組み付けられる図示しないレバーと係合し、ハウジング11と相手側ハウジングの嵌合を進める。
【0025】
ハウジング11は、図2に示すように、フード部12の背壁13における幅方向の両端側から後方に突出する一対の突出壁16を有している。両突出壁16は、上下方向に沿った板状の形態になっている。両突出壁16は、フード部12の背壁13から引き出された各端子金具90を側方から覆うように配置される。つまり、両突出壁16は、各端子金具90を側方から保護する。両突出壁16の下面は、前後方向に沿って配置される。図1に示すように、突出壁16の下面は、フード部12の下面よりも上方に配置されている。
【0026】
ハウジング11は、両突出壁16の後方に、一対のロック部17を有している。両ロック部17は、それぞれ回路基板80に設けられた係止孔82に挿入されて係止される。係止孔82は、回路基板80に円形に開口している。両ロック部17は、コネクタ10の最後端部においてハウジング11から後方に離れて配置される。
【0027】
ロック部17は、全体として円柱状をなし、図1に示すように、上下方向に関して突出壁16と重なる範囲に本体部25を有している。本体部25は、突出壁16に上下方向に沿って一体に連結されている。ロック部17は、本体部25より下方に先端部26を有している。
【0028】
ロック部17の先端部26には、第1係止部21、第2係止部22および突起23が設けられている。図3に示すように、第1係止部21、第2係止部22および突起23は、ロック部17の径方向中心を通る軸心Cの周りに周方向に並んで設けられている。第1係止部21、第2係止部22および突起23は、底面視で扇状をなし、スリット24を介して互いに分割されている。スリット24は、周方向に120度(2π/3ラジアン)の間隔を置いて形成され、ロック部17の軸心Cを介して連通している。図1および図2に示すように、スリット24は、本体部25から先端部26にかけて上下方向に長く設けられている。
【0029】
第1係止部21および第2係止部22は、互いに共通する構造を有している。具体的には、図4に示すように、第1係止部21および第2係止部22は、本体部25から下向きに突出する脚部27、28と、脚部27、28の下部から径方向外側(脚部27、28の突出方向と交差する側)に張り出す係止本体31、32と、を有している。
【0030】
脚部27、28の付け根は、段差面29を介して本体部25より小径になっている。段差面29は、図1に示すように、ハウジング11が回路基板80に取り付けられたときに、回路基板80の表面に沿って配置される。脚部27、28はその付け根を支点として径方向(幅方向)に弾性変形可能とされている。
【0031】
図2に示すように、両ロック部17は、ハウジング11において、幅方向の両端側に対をなして配置されている。両ロック部17の第1係止部21は、第2係止部22に対してハウジング11の幅方向の外側に配置されている。両ロック部17の第2係止部22は、第1係止部21に対してハウジング11の幅方向の内側に配置されている。図3に示すように、第1係止部21と第2係止部22は、ロック部17の径方向中心を通る前後軸FRに対して線対称に配置されている。
【0032】
図4に示すように、第1係止部21の脚部27および第2係止部22の脚部28が自然状態にあるときに、脚部27および脚部28のそれぞれの外周面は、段差面29との間に鋭角をなし、上下方向に対して傾斜している。脚部27、28の内面は、上下方向に沿って配置され、スリット24を区画している。端的には、脚部27、28は下方に向けて拡幅された形状になっている。脚部27、28の下面は、幅方向に沿った平坦であって、第1係止部21と第2係止部22のそれぞれで互いに同じ高さ位置に配置されている。
【0033】
図4に示すように、係止本体31、32は、脚部27、28の外面に連なる係止面33、34を有している。係止面33、34は、上下方向および径方向と交差する方向に配置される、上向き傾斜のテーパ状の斜面である。
ここで、第1係止部21と第2係止部22は、上下方向(脚部27、28の突出方向)における係止面33、34の高さを異にして構成される。具体的には、第1係止部21の係止面33は、第2係止部22の係止面34よりも上方に配置されている。
【0034】
係止面33が、脚部27の上下方向の軸S1に対し、脚部27の付け根側から開く傾斜角度αは、鈍角である。係止面34が、脚部28の上下方向の軸S2に対し、脚部28の付け根側から開く傾斜角度βも、鈍角である。そして、本実施例1の場合、傾斜角度αと傾斜角度βは、β<αの関係を満たすように構成されている。係止面33の傾斜方向の長さは、係止面34の傾斜方向の長さよりも長い。
【0035】
係止本体31、32の外面は、上下方向に沿った外面部35、36として構成される。図3に示すように、外面部35、36は、底面視において弧状、詳細には四半円弧状をなしている。第1係止部21の外面部35の、上下方向の長さは、第2係止部22の外面部36の、上下方向の長さよりも短い。外面部35、36と脚部27、28の下面との間には、下向きに傾斜する斜面部37、38が設けられている。第1係止部21の斜面部37の、傾斜方向の長さは、第2係止部22の斜面部38の、傾斜方向の長さよりも長い。
【0036】
図3に示すように、突起23は、第1係止部21および第2係止部22に対して相対的に前側に位置するように設定されている。突起23の外面は、全体がロック部17の軸心Cを同心とする円弧に沿って配置される。突起23の外面は、ロック部17が係止孔82に挿入された状態で、回路基板80の係止孔82の内面に沿って配置される。突起23の下面と脚部27、28の下面は上下方向に関して同じ高さ位置に配置されている(図2を参照)。
【0037】
(ハウジングの回路基板への設置方法および設置構造)
ハウジング11は、上方から回路基板80の表面に取り付けられる。ハウジング11の下降過程で、両ロック部17の各係止本体31、32が回路基板80の表面における係止孔82の開口縁に摺接することで、第1係止部21および第2係止部22が脚部27、28の付け根を支点としてロック部17の軸心C側に弾性変形させられる。この間、突起23の外面が係止孔82の内面に摺接し、ロック部17の軸心Cがぶれるのを抑制する。突起23は係止孔82の内部の前側に挿入され、第1係止部21および第2係止部22は係止孔82の内部の後側に挿入される(図1を参照)。
【0038】
両突出壁16の下面と両ロック部17の段差面29が回路基板80の表面に当接する位置に至り、両突出壁16が回路基板80の表面に載ることで、ハウジング11の下降が停止される。このとき、第1係止部21および第2係止部22がロック部17の軸心Cから離れる弾性復帰方向に変位し、図5および図6に示すように、外面部35、36の全体が回路基板80の裏面側に臨むように配置される。第1係止部21および第2係止部22は完全には弾性復帰せず、脚部27、28は弓なりに撓み変形した状態になる。
【0039】
例えば、図5に示すように、回路基板80の板厚が公差の範囲内で最小値を示す大きさであると、第1係止部21および第2係止部22のそれぞれの係止面33、34は、全体が回路基板80の裏面に対向して係止可能に配置される。第1係止部21および第2係止部22のそれぞれの脚部27、28は、同じ撓み量で撓み変形し、回路基板80に弾性力を付与する。そして、第1係止部21の係止面33は、第2係止部22の係止面34よりも、回路基板80の裏面近くに配置される。
【0040】
これに対し、例えば、図6に示すように、回路基板80の板厚が公差の範囲内で最大値を示す大きさであると、第1係止部21の係止面33は、回路基板80の裏面における係止孔82の開口縁に接触して係止可能に配置される。そして、第2係止部22の係止面34は、回路基板80の裏面に対向して係止可能に配置される。第1係止部21の脚部27は第2係止部22の脚部28よりも大きく撓み変形する。このため、第1係止部21は、回路基板80に対し、係止面33を介してハウジング11が上方へ抜け出るのを規制する大きな弾性力を付与する。第2係止部22は、回路基板80に弾性力を付与しつつ、係止面34全体を回路基板80の裏面に対向させる。
【0041】
このように、本実施例1の場合、回路基板80の板厚が公差の範囲内で如何に変化しても、第1係止部21および第2係止部22が回路基板80に対する係止作用を発揮することができる。その結果、ハウジング11は、第1係止部21および第2係止部22の係止作用を得て、回路基板80に抜け止めされた状態に信頼性良く取り付けられることになる。
【0042】
ハウジング11が回路基板80に取り付けられた状態において、図1に示すように、フード部12は回路基板80よりも前方に浮いた状態に配置される。仮に、回路基板80に対する第1係止部21および第2係止部22の係止が緩いと、フード部12が前下がりの状態となるようにして、ハウジング11が傾くおそれがある。しかるに本実施例1の場合、回路基板80の板厚が公差の範囲内で変化しても、上述したように、第1係止部21および第2係止部22の係止作用を発揮することができるため、ハウジング11が回路基板80に対して傾いた状態になるのを抑制することができる。特に、位置決め用の突起23が第1係止部21および第2係止部22に対して前側に位置しているため、フード部12が前下がりの状態になるのを効果的に抑制することができる。
【0043】
また、本実施例1によれば、第1係止部21の係止面33の傾斜角度αが第2係止部22の係止面34の傾斜角度βよりも大きいため、回路基板80の板厚が変化したときに、第1係止部21の係止面33が回路基板80の裏面における係止孔82の開口縁に接触して係止される状態を実現することができる。そして、回路基板80の板厚が大きい場合には、第2係止部22の係止面34が回路基板80の裏面に強固に係止される状態を実現することができる。
【0044】
また、本実施例1の場合、第1係止部21、第2係止部22および位置決め用の突起23がそれぞれ組になってロック部17を形成し、ロック部17の径方向中心を通る軸心Cの周りに分割して配置されている。このため、第1係止部21および第2係止部22が回路基板80の係止孔82に挿入される過程で、第1係止部21および第2係止部22が突起23によって回路基板80に対して位置ずれするのを抑制することができる。
【0045】
さらに、本実施例1の場合、第1係止部21は、ハウジング11において、第2係止部22よりも幅方向の外側に位置し、幅方向の外側に張り出す形態になっている。このため、回路基板80の板厚が公差の範囲内で小さい場合に、例えば、回路基板80が外力を受けて湾曲したとしても、第1係止部21の係止面33が回路基板80に係止される状態を良好に維持することができる。
【0046】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
実施形態の実施例1の場合、第1係止部および第2係止部からなる2種類の係止部を備えていたが、他の実施形態としては、第1係止部および第2係止部に加え、上下方向(脚部の突出方向)に関する係止面の高さを異にする別の係止部が設けられ、3種類以上の係止部を備えていても良い。
実施形態の実施例1の場合、第1係止部、第2係止部および突起が組になってロック部を構成していたが、他の実施形態としては、ロック部から突起を省略しても良い。また、第1係止部および第2係止部がロック部を構成せずに互いに大きく離れて配置されていても良い。
実施形態の実施例1の場合、第2係止部の係止面が脚部の軸に対して傾斜する傾斜角度βを鈍角としていたが、他の実施形態としては、傾斜角度βを直角または鋭角としても良い。
実施形態の実施例1の場合、回路基板の接続孔に挿入されて半田接続されるスルーホール型の端子金具を備えていたが、他の実施形態としては、回路基板の表面に半田接続される表面実装型の端子金具を備えていても良い。
実施形態の実施例1の場合、フード部の後方にロック部を設けていたが、他の実施形態としては、フード部の側方にロック部を設けても良い。
【符号の説明】
【0047】
α、β…傾斜角度
C…軸心
FR…前後軸
S1、S2…軸
10…コネクタ
11…ハウジング
12…フード部
13…背壁
14…装着孔
15…カムフォロア部
16…突出壁
17…ロック部
21…第1係止部
22…第2係止部
23…突起
24…スリット
25…本体部
26…先端部
27、28…脚部
29…段差面
31、32…係止本体
33、34…係止面
35、36…外面部
37、38…斜面部
80…回路基板
81…接続孔
82…係止孔
90…端子金具
91…水平部
92…垂直部
図1
図2
図3
図4
図5
図6