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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
H01R13/56
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020161944
(22)【出願日】2020-09-28
(65)【公開番号】P2022054752
(43)【公開日】2022-04-07
【審査請求日】2023-02-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】吉田 裕太郎
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-185771(JP,A)
【文献】特開2016-207414(JP,A)
【文献】特開2001-015207(JP,A)
【文献】特開2002-075526(JP,A)
【文献】特開2014-053167(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジングの後面を覆うように前記ハウジングに組み付けられるカバーと、を備え、
前記ハウジングは、前記後面の周縁部の、背面視で点対称となる位置に配置された、複数の係合部と、前記後面から後方に突出して配置された突部と、端子金具を収容可能なキャビティと、を有し、
前記カバーは、前記係合部と係合して保持される被係合部と、前記ハウジングに正規に組み付けられた状態で、内側に前記突部を位置させる空間部と、前記ハウジングに対し、前記カバーが前記正規とは逆向きの姿勢をとる場合に、前記突部と干渉する干渉部と、を有し
前記突部は、前記キャビティを包囲する筒状をなしている、コネクタ。
【請求項2】
前記カバーは、キャップ状をなし、高さ方向で対向する一対の対向壁と、一対の前記対向壁の後端部間を塞ぐ背壁と、を有し、
前記対向壁は、内面に、前後方向に延びるリブを有し、
前記干渉部は、前記リブに構成される、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記カバーは、前記カバーの幅方向の一端部において側方に開口する開口部と、前記幅方向の他端部を塞ぐ端壁と、を有し、
前記リブは、前記対向壁の内面において、前記幅方向の中央部と前記端壁との間に設けられている、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記リブの、前記対向壁の内面からの突出寸法は、筒状をなす前記突部の、径方向の厚みよりも、小さい、請求項2または請求項3に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記リブの前端は、前記対向壁の前端よりも後方に配置されている、請求項2から請求項4のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に記載されたコネクタは、ハウジング(コネクタハウジング)と、ハウジングの後面を覆うようにハウジングに組み付けられるカバーと、を備えている。ハウジングは、後面の周縁部に、高さ方向に対をなす側壁を有し、各側壁の幅方向の両側に、一対ずつの係合部を有している。カバーは、各係合部と対応する位置に、一対ずつの係止突起部を有している。各係止突起部が各係合部と係合することにより、カバーのハウジングからの抜け出しが規制される。ハウジングとカバーとを備えたコネクタは、特許文献2および特許文献3にも開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-294359号公報
【文献】特開2007-115443号公報
【文献】特開2017-142922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の場合、各係合部は、各側壁において、ハウジングを背面視したときに点対称となる位置に配置されている。このため、カバーを特許文献1に開示された状態から高さ方向に反転しても、各係合部と各係止突起部とを係合させることができ、カバーをハウジングに組み付けることができる。このようにカバーにリバーシブル性を付与することで、電線の引き出し方向を変更することが可能となる。
【0005】
これに対し、電線の引き出し方向を一方向に規定し、カバーのリバーシブル性を喪失させることにより、カバーの誤組み付けを阻止する構成が求められることもある。しかし、特許文献1に開示されたものは、リバーシブル性が求められるカバーには対応することができるものの、誤組み付けを阻止する一定の組み付け性が求められるカバーには対応することができないという問題がある。
【0006】
そこで、本開示は、誤組み付けを阻止する一定の組み付け性が求められるカバーにも対応することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のコネクタは、ハウジングと、前記ハウジングの後面を覆うように前記ハウジングに組み付けられるカバーと、を備え、前記ハウジングは、前記後面の周縁部の、背面視で点対称となる位置に配置された、複数の係合部と、前記後面から後方に突出して配置された突部と、を有し、前記カバーは、前記係合部と係合して保持される被係合部と、前記ハウジングに正規に組み付けられた状態で、内側に前記突部を位置させる空間部と、前記ハウジングに対し、前記カバーが前記正規とは逆向きの姿勢をとる場合に、前記突部と干渉する干渉部と、を有している。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、誤組み付けを阻止する一定の組み付け性が求められるカバーにも対応することが可能なコネクタを提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、本実施形態のコネクタをカバーの開口部側から見た側面図である。
図2図2は、相手コネクタと嵌合状態にあるコネクタの平面図である。
図3図3は、カバーがハウジングに対して初期位置にセットされた状態を示す断面図である。
図4図4は、カバーがハウジングに対して組付完了位置に組み付けられた状態を示す断面図である。
図5図5は、カバーがハウジングに対して正規とは逆向きの姿勢をとる場合に、カバーのハウジングへの組み付けが規制される状態を示す一部破断斜視図である。
図6図6は、ハウジングの背面図である。
図7図7は、カバーを上側から見た斜視図である。
図8図8は、カバーを下側から見た斜視図である。
図9図9は、カバーの正面図である。
図10図10は、カバーがハウジングに対して正規とは逆向きの姿勢をとる場合に、カバーのハウジングへの組み付けが規制される状態を示す一部破断正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)ハウジングと、前記ハウジングの後面を覆うように前記ハウジングに組み付けられるカバーと、を備え、前記ハウジングは、前記後面の周縁部の、背面視で点対称となる位置に配置された、複数の係合部と、前記後面から後方に突出して配置された突部と、を有し、前記カバーは、前記係合部と係合して保持される被係合部と、前記ハウジングに正規に組み付けられた状態で、内側に前記突部を位置させる空間部と、前記ハウジングに対し、前記カバーが前記正規とは逆向きの姿勢をとる場合に、前記突部と干渉する干渉部と、を有している。
【0011】
上記の構成によれば、カバーの被係合部がハウジングの係合部と係合し、空間部の内側に突部が位置した状態で、カバーがハウジングに正規に組み付けられる。これに対し、カバーが正規と逆向きの姿勢をとる場合には、干渉部が突部と干渉し、カバーの組み付け動作が規制される。このように、カバーは、空間部および干渉部を有することにより、一定の姿勢で組み付けられる状態を実現することができ、ハウジングに対して誤組み付けされるのを阻止することができる。
【0012】
一方、例えば、干渉部を有しないカバーは、突部との干渉を回避でき、背面視で点対称位置に配置された係合部に被係合部を係合させることができるため、高さ方向の上下を区別なくハウジングに組み付けられ得る。このため、上記の構成のコネクタは、誤組み付けを阻止する一定の組み付け性が求められるカバーと、リバーシブル性が求められるカバーと、のいずれにも対応することが可能となる。
【0013】
(2)前記ハウジングは、端子金具を収容可能なキャビティを有し、前記突部は、前記キャビティを包囲する筒状をなしているのが好ましい。これによれば、突部がカバーの誤組み付けを阻止する機能とキャビティを形成する機能とを兼備することができ、ハウジングの構造が複雑化するのを回避することができる。
【0014】
(3)前記カバーは、キャップ状をなし、前記高さ方向で対向する一対の対向壁と、一対の前記対向壁の後端部間を塞ぐ背壁と、を有し、前記対向壁は、内面に、前後方向に延びるリブを有し、前記干渉部は、前記リブに構成されると良い。これによれば、干渉部がカバーの誤組み付けを阻止する機能とカバーを補強する機能とを兼備することができ、カバーの構造が複雑化するのを回避することができる。
【0015】
(4)前記カバーは、前記カバーの幅方向の一端部において側方に開口する開口部と、前記幅方向の他端部を塞ぐ端壁と、を有し、前記リブは、前記対向壁の内面において、前記幅方向の中央部と前記端壁との間に設けられていると良い。これによれば、リブが端壁寄りの位置に設けられることになるため、各対向壁が開くように変形するのを効果的に抑えることができる。
【0016】
(5)前記リブの、前記対向壁の内面からの突出寸法は、筒状をなす前記突部の、径方向の厚みよりも、小さいと良い。これによれば、カバーが逆向きの姿勢をとる場合に、リブの端部が突部の厚み範囲内に干渉することができる。このため、リブが突部のキャビティ内から突出する電線やゴム栓などと干渉するのを回避することができる。その結果、電線やゴム栓などが損傷するのを抑えることができる。
【0017】
(6)前記リブの前端は、前記対向壁の前端よりも後方に配置されていると良い。これによれば、カバーが逆向きの姿勢をとる場合に、突部が一対の対向壁間に進入した状態からリブと干渉することができる。その結果、リブが突部と干渉する前に、リブと突部の相対位置を干渉可能な位置に配置させることができる。その結果、カバーが逆向きの姿勢をとる場合に、リブが突部と干渉する状態を信頼性良く実現することができる。
【0018】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
本実施形態のコネクタ10は、図1および図2に示すように、ハウジング20と、ハウジング20に回動可能に支持されるレバー50と、ハウジング20に組み付けられるカバー70と、を備えている。図2に示すように、ハウジング20は、相手コネクタ100と嵌合可能とされている。なお、以下の説明において、前後方向については、ハウジング20が嵌合開始時に相手コネクタ100と対向する面側を前側とする。具体的には、図1の右側が前側となる。高さ方向は、上下方向と同義であり、図2および図8を除く各図の上下方向が基準となる。幅方向は、左右方向と同義であり、図1を除く各図の左右方向が基準となる。
【0020】
(ハウジング)
ハウジング20は合成樹脂製であって、矩形ブロック状をなし、図6に示すように、背面視において幅方向に長い矩形状を呈している。ハウジング20は、前後方向に貫通する複数のキャビティ21を有している。各キャビティ21は、ハウジング20において、高さ方向および幅方向に整列して配置されている。各キャビティ21のうち、ハウジング20の幅方向の一端側(図6の右端側)に配置された2つのキャビティ21は、他の各キャビティ21よりも開口径が特に大きい大径キャビティ21Aとして構成される。
【0021】
ハウジング20の各キャビティ21内には、図6に示すように、金属製の端子金具11が挿入されて収容される。端子金具11は電線12の端末部に接続される。図3図5に示すように、電線12にはゴム製のゴム栓13が嵌め付けられている。
【0022】
ハウジング20は、後面の幅方向の一端側から後方に突出する一対の突部22を有している。各突部22は、円筒状をなし、高さ方向に並んで配置されている。上側の突部22の下端と下側の突部22の上端とは互いに連結されている。各突部22は、大径キャビティ21Aの後部を包囲している。図5に示すように、各突部22の後端(開口端であって、後述する後方を向く端面33)は、ハウジング20の最後端に位置している。なお、他の各キャビティ21の後部は、各突部22よりも小径でかつ突出寸法の小さい筒状部23によって包囲されている。大径キャビティ21Aの後部には、ゴム栓13が挿入される。各突部22の内周面には、ゴム栓13が密着する。電線12は、各突部22の後端から後方に引き出される。
【0023】
ハウジング20は、図6に示すように、後面における4つの角側の端部から後方に突出する角壁部24を有している。各角壁部24は、対応する角に沿うように背面視において湾曲して延びる形状になっている。ハウジング20の幅方向の一端側において、上側の角壁部24は、上側の突部22の上端に連結され、下側の角壁部24は、下側の突部22の下端に連結されている。
【0024】
ハウジング20は、後面を挟んだ上下端部に、一対の板壁部25を有している。各板壁部25は、ハウジング20の幅方向に沿った板状をなし、各突部22および各角壁部24との間に、カバー70を装着可能な嵌合空間26を形成している。
【0025】
図6に示すように、各板壁部25の内面(上側の板壁部25の下面および下側の板壁部25の上面)には、背面視台形状の係合部27が突出して設けられている。各係合部27は、各板壁部25の後端部における幅方向の中央を挟んだ両側の対称位置に配置されている。特に、上下の各係合部27は、背面視においてハウジング20の後面の中央を中心として点対称の位置に配置されている。
【0026】
また、各板壁部25の内面には、各係合部27よりも幅方向の外側の端部に、背面視矩形状の外側係合部28が突出して設けられている。各外側係合部28は、各板壁部25の後端部における幅方向の中央を挟んだ両側の対称位置に配置されている。特に、上下の各外側係合部28は、背面視においてハウジング20の後面の中央を中心として点対称の位置に配置されている。
【0027】
ハウジング20は、各係合部27および各外側係合部28よりも前方に、幅方向に延びる通路29を有している。また、ハウジング20は、各係合部27と各外側係合部28との間に、後方に開放された受入口31を有している。カバー70の後述する抜止部81~84は、カバー70の組み付け時に、受入口31から通路29内に挿入される(図3を参照)。
図6に示すように、ハウジング20は、幅方向の両側の端面に、一対の軸部32を有している。各軸部32は、円柱状をなし、レバー50を回動可能に支持する部分となる。
【0028】
(レバー)
レバー50は合成樹脂製であって、図2に示すように、幅方向に長く延びる操作部51と、操作部51の幅方向の両端部から互いに対向して突出する一対の側板部52と、を有している。各側板部52は、図1に示すように、軸受孔53を有している。レバー50は、各軸受孔53に各軸部32を嵌合させた状態で、各軸部32を中心として回動可能とされている。作業者は、操作部51を摘んでレバー50の回動操作を行うことができる。図2に示すように、各側板部52には、カム溝55が形成されている。各側板部52のカム溝55が相手コネクタ100の図示しないカムフォロアと係合し、レバー50が回動されることにより、両コネクタ10、100が互いに嵌合される。操作部51は、幅方向の中央部に、両コネクタ10、100の嵌合時に、カバー70にロックされるレバー側ロック部54を有している。
【0029】
(カバー)
カバー70は合成樹脂製であって、図7図9に示すように、前方に開放されたキャップ状を呈している。カバー70は、ハウジング20の後面を覆うようにハウジング20に組み付けられる。具体的には、カバー70は、高さ方向の上下に対向して配置される一対の対向壁71A、71Bと、各対向壁71A、71Bの後端部間を塞ぐように配置される背壁72と、カバー70の幅方向の一端部において側方に開口する開口部73と、カバー70の幅方向の他端部においてこの他端部を塞ぐように配置される端壁74と、を有している。図3および図4に示すように、一対の対向壁71A、71Bのうち、上側の対向壁71Aは、ハウジング20の上面側に取り付けられ、下側の対向壁71Bは、ハウジング20の下面側に取り付けられる。図7に示すように、上側の対向壁71Aの上面(外面)には、レバー側ロック部54に係止可能なカバー側ロック部75が突出して設けられている。なお、カバー側ロック部75は、下側の対向壁71Bには設けられていない。
【0030】
カバー70内の前部は、後部よりも各対向壁71A、71Bの内面(上側の対向壁71Aの下面および下側の対向壁71Bの上面)間の幅方向間隔を大きくした間隔拡大部76になっている。カバー70の間隔拡大部76は、後述する第2リブ88と開口部73との間に、図1に示すように、各突部22が嵌合可能に配置される空間部77を有している。
【0031】
また、カバー70は、図2に示すように、幅方向の一端部において、背壁72から後方に突出する突壁部78を有し、さらに開口部73と連通して後方に開放された電線導出口79を有している。電線導出口79は、突壁部78によって仕切られる。ハウジング20の各筒状部23および各突部22から延びる各電線12は、カバー70内で屈曲して電線導出口79内にまとめられる。そして、各電線12は、タイバンドなどの結束バンド80を介して突壁部78に固定され、その状態でカバー70の後方に導出される。
【0032】
図7および図8に示すように、各対向壁71A、71Bは、前端部に、ハウジング20の各係合部27と係合可能な被係合部81~85を有している。被係合部81~85は、各対向壁71A、71Bの前端部の外面(上側の対向壁71Aの上面および下側の対向壁71Bの下面)から突出する正面視矩形の複数の抜止部81~84を有している。各抜止部81~84は、各対向壁71A、71Bの前端部の端縁において幅方向の一端側(開口部73側)から他端側にかけて、間隔を置いて順次配置される、第1抜止部81、第2抜止部82、第3抜止部83および第4抜止部84により構成される。
【0033】
また、被係合部81~85は、各対向壁71A、71Bの前端部における幅方向の中央側に、一対の係止部85を有している。各係止部85は、各第2抜止部82よりも後方(図7の奥側)において、各対向壁71A、71Bに形成された切り込み間に撓み変形可能に形成されている。各係止部85は、幅方向の一端側に向けて片持ち状に延び、延び方向の先端部に、外側に突出する爪状の係止突起86を有している。図4に示すように、各係止部85の係止突起86は、各係合部27の幅方向の一端側における端面に係止可能とされている。
また、図7および図8に示すように、各対向壁71A、71Bの外面には、係止部85よりも後方に、幅方向に延びる突条部89が設けられている。カバー70がハウジング20に組み付けられたときに、突条部89と各抜止部81~84との間には、各係合部27(図3を参照)および各外側係合部28(図1を参照)が挟まるように配置される。
【0034】
図7図9に示すように、カバー70の内面には、各対向壁71A、71Bから背壁72にまたがって連続して延びるリブ87および第2リブ88が突出して設けられている。リブ87および第2リブ88は、互いに平行に配置されている。リブ87は、幅方向において第2リブ88と端壁74との間に配置されている。
【0035】
リブ87および第2リブ88の突出寸法は、各突部22の径方向の厚みよりも小さく設定されている。図7および図8に示すように、リブ87および第2リブ88のそれぞれの前端(延び方向の両端)は、各対向壁71A、71Bの端縁よりも後方(奥側)に位置している。第2リブ88の前端は、各係止部85と隣接し、各係止部85よりも後方(奥側)に位置している。リブ87は、後述するように、カバー70が正規とは逆向きの姿勢をとる場合に各突部22と干渉する干渉部として構成される。
【0036】
(カバーのハウジングへの組み付け構造)
カバー70がハウジング20に組み付けられていない状態で、各端子金具11がハウジング20の各キャビティ21内に後方から挿入される。各端子金具11に接続された電線12は、各突部22および各筒状部23のそれぞれの後端から後方に延びるように配置される。また、各ゴム栓13は各突部22内および各筒状部23内に嵌め込まれる。各突部22および各筒状部23と各電線12との間は、各ゴム栓13によって液密にシールされる。図5に示すように、各ゴム栓13の後端部は、各突部22の後端から後方に一部露出している。
【0037】
続いて、カバー70がハウジング20に対して後方から被せられ、図3に示すように、初期位置にセットされる。初期位置では、各対向壁71A、71Bが嵌合空間26に進入し、第1抜止部81および第3抜止部83が受入口31を通して通路29内に挿入されるとともに、第2抜止部82および係止突起86が各係合部27間を通して通路29内に挿入される。また、第4抜止部84はハウジング20の側方において通路29内に進入可能に臨むように配置される。
【0038】
続いて、カバー70は、ハウジング20の幅方向の一側(図3の右側)に向けて押し込まれ、初期位置から組付完了位置へと移動させられる。カバー70が組付完了位置に至る直前に、係止突起86が図3の右側の係合部27と干渉し、係止部85が撓み変形させられる。カバー70が組付完了位置に至ると、係止部85が弾性復帰し、図4に示すように、係止突起86が係合部27の端面に対して係止可能に配置される。これにより、カバー70がハウジング20に対して初期位置に戻る方向に移動するのが規制される。また、カバー70が組付完了位置に至ると、第1抜止部81および第4抜止部84が外側係合部28の前方に対向して配置されるととともに、第2抜止部82が係合部27の前方に対向して配置される。これにより、カバー70がハウジング20に対して後方へ抜け出る方向に移動するのが規制される。
【0039】
図1に示すように、カバー70が組付完了位置にあるときに、各突部22は、カバー70の空間部77内に全高にわたって挿入される。各突部22は、空間部77内において各対向壁71A、71Bの内面に接触可能に配置される。各突部22の後端から露出する各ゴム栓13および各突部22の後端から延びる各電線12は、カバー70の開口部73を通して側方から視認することができる。
【0040】
相手コネクタ100との嵌合に際し、まずハウジング20が相手コネクタ100と浅く嵌合される。次いで、レバー50が回動され、操作部51がハウジング20の上方前側から上方後側に向けて変位させられる(図1および図2を参照)。その後、レバー側ロック部54がカバー側ロック部75に係止され、両コネクタ10、100が嵌合状態に保持される。図2に示すように、各電線12は、カバー70の電線導出口79を通してハウジング20の幅方向の一端側から後方に導出させられる。
【0041】
これに対し、カバー70が高さ方向に関して上記とは逆向きの姿勢をとってハウジング20に組み付けられようとする場合、開口部73が幅方向の他端側(図2の右側)に向けられるものの、第1抜止部81および第3抜止部83が受入口31に挿入可能に配置される。その状態で、カバー70の組み付け動作が進むと、各突部22が各対向壁71A、71Bの内面に沿いつつカバー70内に挿入される。ここで、各突部22はリブ87の前方に対向して配置される。このため、カバー70の組み付け動作が進むと、図5および図10に示すように、各突部22の後端(図10に示す後方を向く端面33)が各リブ87の前端(図5に示す前方を向く端面91)に突き当たり、カバー70のそれ以上の組み付け動作が規制される。
図10に示すように、カバー70の間隔拡大部76の上下寸法は、各突部22の上下寸法と同一または同一に近い寸法(リブ87と突部22の厚み範囲内の寸法差)で構成されている。このため、カバー70の間隔拡大部76の入口に各突部22が嵌まり込んだ状態から、各突部22と各リブ87が干渉する状態を確実に実現することができる。
このように、本実施形態によれば、カバー70がハウジング20に対して誤組み付けされるのを阻止することができる。特に、リブ87の前端(前方を向く端面91)は、各突部22の後端(後方を向く端面33)の厚み範囲内に突き当たる。このため、リブ87は、各突部22の後端から露出する各ゴム栓13および各電線12と干渉するのを回避することができる。
【0042】
一方、図2に示す態様とは逆に、各電線12をハウジング20の幅方向の他端側から後方に導出させたい場合、上記カバー70からリブ87を有しないカバーを用意すれば良い。リブ87を有しないカバーであれば、図5に示す状態から第1抜止部81および第3抜止部83が受入口31を通して通路29内に挿入可能であり、カバーをハウジング20に対して組み付けることができる。この場合のカバーは、上下両面にそれぞれカバー側ロック部を有していると良い。
【0043】
このように、本実施形態のコネクタ10は、反転使用可能なリバーシブル性が要求されるカバーに対しても、誤組み付けを阻止する一定の組み付け性が要求されるカバー70に対しても、いずれにも対応することが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、カバー70の被係合部81~85がハウジング20の各係合部27と係合し、空間部77の内側に各突部22が位置した状態で、カバー70がハウジング20に正規に組み付けられる。これに対し、カバー70が組み付け時に正規とは逆向きの姿勢をとる場合には、リブ87が各突部22と干渉し、カバー70の組み付け動作が規制される。これにより、カバー70がハウジング20に対して誤組み付けされるのを阻止することができる。
【0045】
また、各突部22がカバー70の誤組み付けを阻止する機能とキャビティ21の一部を形成する機能とを兼備することができるため、ハウジング20の構造が複雑化するのを回避することができる。さらに、リブ87がカバー70の誤組み付けを阻止する機能とカバー70を補強する機能とを兼備することができるため、カバー70の構造が複雑化するのを回避することができる。特に、リブ87が各対向壁71A、71Bの内面においてカバー70の幅方向の中央部と端壁74との間に設けられ、第2リブ88よりも端壁74寄りに配置されているため、各対向壁71A、71Bが開くように変形するのを効果的に抑えることができる。
【0046】
また、リブ87の前端が各突部22の後端の厚み範囲内に干渉するため、各突部22から露出する各電線12および各ゴム栓13がリブ87によって損傷するのを抑えることができる。
さらに、リブ87の前端が各対向壁71A、71Bの前端よりも後方に配置されているため、リブ87が各突部22と干渉する前に、各突部22が各対向壁71A、71B間に進入し、リブ87と干渉可能な位置に至ることができる。その結果、リブ87が各突部22と確実に干渉させることができ、カバー70の誤組み付けを阻止する信頼性を高めることができる。
【0047】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、各係合部はハウジングの背面視において点対称の同一形状となるように形成されていたが、他の実施形態としては、各係合部はハウジングの背面視において点対称となる位置に配置されていれば良く、同一形状である必要はない。
上記実施形態の場合、リブはカバーの内面において各対向壁から背壁にまたがって延びるように形成されていたが、他の実施形態としては、リブは各対向壁の少なくとも一方の内面のみに延びるように形成されていても良い。
上記実施形態の場合、干渉部はリブで構成されていたが、他の実施形態としては、干渉部は単なる凸部または凹状の段差面で構成されていても良い。
上記実施形態の場合、被係合部は抜止部(第1抜止部、第2抜止部、第3抜止部および第4抜止部)と係止部とによって構成されていたが、他の実施形態としては、被係合部は抜止部と係止部のいずれか一方によって構成されていても良い。また、被係合部は複数の係合部と対応する位置毎に設けられている必要もない。
【符号の説明】
【0048】
10…コネクタ
11…端子金具
12…電線
13…ゴム栓
20…ハウジング
21…キャビティ
21A…大径キャビティ
22…突部
23…筒状部
24…角壁部
25…板壁部
26…嵌合空間
27…係合部
28…外側係合部
29…通路
31…受入口
32…軸部
33…後方を向く端面
50…レバー
51…操作部
52…側板部
53…軸受孔
54…レバー側ロック部
55…カム溝
70…カバー
71A…上側の対向壁(対向壁)
71B…下側の対向壁(対向壁)
72…背壁
73…開口部
74…端壁
75…カバー側ロック部
76…間隔拡大部
77…空間部
78…突壁部
79…電線導出口
80…結束バンド
81…第1抜止部(抜止部、被係合部)
82…第2抜止部(抜止部、被係合部)
83…第3抜止部(抜止部、被係合部)
84…第4抜止部(抜止部、被係合部)
85…係止部(被係合部)
86…係止突起
87…リブ(干渉部)
88…第2リブ
89…突条部
91…前方を向く面
100…相手コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10