(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ガラス板の製造方法および砥石装置用工具
(51)【国際特許分類】
B24B 45/00 20060101AFI20240131BHJP
B24B 9/10 20060101ALI20240131BHJP
B24D 5/16 20060101ALI20240131BHJP
C03C 19/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B24B45/00 A
B24B9/10 Z
B24D5/16
C03C19/00 Z
(21)【出願番号】P 2020538298
(86)(22)【出願日】2019-08-07
(86)【国際出願番号】 JP2019031212
(87)【国際公開番号】W WO2020039940
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2018155414
(32)【優先日】2018-08-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107423
【氏名又は名称】城村 邦彦
(74)【代理人】
【識別番号】100120949
【氏名又は名称】熊野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100168550
【氏名又は名称】友廣 真一
(72)【発明者】
【氏名】太和田 佑
(72)【発明者】
【氏名】奥 隼人
(72)【発明者】
【氏名】星野 愛信
(72)【発明者】
【氏名】伊吹 真澄
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第203542512(CN,U)
【文献】特開2005-212066(JP,A)
【文献】特開2014-091208(JP,A)
【文献】特許第6267043(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 45/00
B24B 9/10
B24D 5/16
C03C 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンドルと、前記スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、前記スピンドルと前記砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、前記砥石保持具に装着された状態で前記スピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、前記スピンドルから前記砥石保持具および前記砥石を取り外す工程を含んだガラス板の製造方法であって、
前記取り外す工程が、前記固定具による前記スピンドルと前記砥石保持具との固定を解除する固定解除工程と、固定が解除された状態にある前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を砥石装置用工具により解除する嵌合解除工程とを含み、
前記砥石装置用工具が、前記中空部に固定可能であ
り、
前記中空部が、前記孔部と連なり且つ前記孔部の孔軸方向に沿って形成され、
前記砥石装置用工具が、前記中空部に固定可能な第一部材と、前記第一部材に対して前記スピンドルの軸心方向に相対移動可能な第二部材とを有し、
前記第一部材に対する前記第二部材の相対移動は、送り移動によって行われ、
前記嵌合解除工程では、前記砥石保持具と前記第一部材とを固定した状態で且つ前記スピンドルの先端と前記第二部材とを当接させた状態で、前記第一部材と前記第二部材とを相対移動させることに伴って、前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を解除することを特徴とするガラス板の製造方法。
【請求項2】
前記嵌合解除工程では、前記中空部の内周面に形成された雌ネジと、前記第一部材の外周面に形成された雄ネジとの噛み合いを利用して、前記砥石保持具と前記第一部材とを固定することを特徴とする請求項
1に記載のガラス板の製造方法。
【請求項3】
前記第一部材に孔が形成されると共に、前記第二部材が前記スピンドルの軸心方向に延びる丸棒状の棒状部を有し、
前記嵌合解除工程では、前記第一部材の前記孔の内周面に形成された雌ネジと、前記第二部材の前記棒状部の外周面に形成された雄ネジとの噛み合いを利用して、前記第一部材に対して前記第二部材を送り移動させることを特徴とする請求項
1又は
2に記載のガラス板の製造方法。
【請求項4】
前記第二部材が、前記棒状部と連結され且つ前記棒状部の径方向に延びたハンドル部を有することを特徴とする請求項
3に記載のガラス板の製造方法。
【請求項5】
スピンドルと、前記スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、前記スピンドルと前記砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、前記砥石保持具に装着された状態で前記スピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、前記スピンドルから前記砥石保持具および前記砥石を取り外す工程を含んだガラス板の製造方法であって、
前記取り外す工程が、前記固定具による前記スピンドルと前記砥石保持具との固定を解除する固定解除工程と、固定が解除された状態にある前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を砥石装置用工具により解除する嵌合解除工程とを含み、
前記砥石装置用工具が、前記中空部に固定可能であり、
前記砥石装置用工具が、前記中空部に固定可能な第一棒部材と、前記第一棒部材の長手方向に沿ってスライド可能な錘と、前記錘のスライドの範囲を規制する規制部材とを有し、
前記嵌合解除工程では、前記錘と前記規制部材とを衝突させることに伴って、前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を解除することを特徴とす
るガラス板の製造方法。
【請求項6】
前記規制部材が、前記第一棒部材に連結され且つ前記第一棒部材の径方向に延びた第二棒部材であることを特徴とする請求項
5に記載のガラス板の製造方法。
【請求項7】
前記第二棒部材が、前記第一棒部材の端部に連結されると共に、前記第一棒部材および前記第二棒部材でT字状をなすことを特徴とする請求項
6に記載のガラス板の製造方法。
【請求項8】
前記砥石装置用工具がステンレス鋼で構成されることを特徴とする請求項1~
7のいずれかに記載のガラス板の製造方法。
【請求項9】
スピンドルと、前記スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、前記スピンドルと前記砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、前記砥石保持具に装着された状態で前記スピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、前記スピンドルから前記砥石保持具および前記砥石を取り外すに際し、前記固定具による固定が解除された状態にある前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を解除するための砥石装置用工具であって、
前記中空部に固定可能であ
り、
前記中空部が、前記孔部と連なり且つ前記孔部の孔軸方向に沿って形成され、
前記中空部に固定可能な第一部材と、前記第一部材に対して前記スピンドルの軸心方向に送り移動可能で且つ前記スピンドルの先端と当接可能な第二部材とを有することを特徴とする砥石装置用工具。
【請求項10】
スピンドルと、前記スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、前記スピンドルと前記砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、前記砥石保持具に装着された状態で前記スピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、前記スピンドルから前記砥石保持具および前記砥石を取り外すに際し、前記固定具による固定が解除された状態にある前記スピンドルと前記砥石保持具との嵌合を解除するための砥石装置用工具であって、
前記中空部に固定可能であり、
前記中空部に固定可能な第一棒部材と、前記第一棒部材の長手方向に沿ってスライド可能な錘と、前記錘のスライドの範囲を規制する規制部材とを有することを特徴とす
る砥石装置用工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、回転砥石装置に備わったスピンドルから砥石保持具(例えば砥石フランジ)および砥石を取り外す工程を含んだガラス板の製造方法、及び、取り外しにあたってスピンドルと砥石保持具との嵌合を解除するための砥石装置用工具に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、ガラス板の製造工程は、ガラス板の端面に対して砥石により研削加工や研磨加工を施す端面加工工程を含む場合が多い。端面加工工程の実行には、砥石を備えた回転砥石装置を用いることが通例となっている。ここで、ガラス板の端面ではなく、ウェーハの端面を加工の対象としたものであるが、回転砥石装置の一例が特許文献1に開示されている。
【0003】
同文献に開示された装置は、先端部がテーパ形状に形成されたスピンドル(モータ回転軸40)と、スピンドルと嵌合するテーパ形状の孔部(孔18)が形成された砥石フランジ(フランジ本体12)と、スピンドルと砥石フランジとを嵌合させた状態で固定する固定具(六角キャップボルト34)と、砥石フランジの軸部(軸部17)の外周面に装着された状態でスピンドル周りを回転する環状の砥石(砥石50)とを備えている。
【0004】
ところで、砥石は、加工の対象となるガラス板の品種(寸法、材質、面取り形状、要求品質)に応じて使い分ける必要があり、そのために砥石フランジおよび砥石を交換する場合がある。特許文献1では、砥石フランジおよび砥石を交換する際に、まず、砥石フランジの軸部から砥石を取り外し、その状態で固定具によるスピンドルと砥石フランジとの固定を解除する。次いで、固定が解除された状態にあるスピンドルと砥石フランジとの嵌合を解除する。ここで、スピンドルと砥石フランジは強固に嵌り合って密着しているので、嵌合の解除には、砥石装置用工具が用いられる。この砥石装置用工具の一例が特許文献1に開示されている。
【0005】
同文献に開示された工具は、砥石フランジの軸部の外周面に形成された雄ネジと噛み合う雌ネジが形成されると共に、両ネジの噛み合いを利用して軸部の外周面に対して固定可能な第一部材(円盤44)と、第一部材の貫通孔の内周面に形成された雌ネジと噛み合う雄ネジが形成されると共に、両ネジの噛み合いを利用してスピンドルの軸心方向に送り移動可能な第二部材(抜きボルト46)とを備えている。
【0006】
上記の工具を用いてスピンドルと砥石フランジとの嵌合を解除する際には、砥石フランジの軸部の外周面に対して第一部材を固定すると共に、第一部材の貫通孔に第二部材を回転させながら挿通してスピンドルの先端と第二部材とを当接させる。この状態で、第二部材をさらに回転させることにより、第一部材に対して第二部材をスピンドルに向かって送り移動させる。これに伴って第一部材と共に砥石フランジがスピンドルから遠ざかるように移動するので、砥石フランジの孔部からスピンドルの先端部が押し出され、スピンドルと砥石フランジとの嵌合が解除される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記の工具を用いてスピンドルと砥石フランジ(砥石保持具)との嵌合を解除した場合には、下記のような解決すべき問題があった。
【0009】
すなわち、上記の工具を用いて嵌合を解除する場合には、第一部材と砥石との干渉を防止する観点から、第一部材を砥石フランジの軸部の外周面に対して固定する前に、軸部の外周面から砥石を取り外しておくことが必要となる。従って、スピンドルから砥石フランジおよび砥石を取り外す度に、逐一砥石を砥石フランジから取り外すことが要求される。ここで、砥石は、芯出しされた状態で砥石フランジに装着する必要があるので、この砥石を再び使用するためには、砥石フランジを砥石に装着すると共に芯出し作業が必要になるという不具合があった。
【0010】
このような状況から、スピンドルから砥石フランジおよび砥石の両者を取り外すにあたり、その作業を効率的に行うことができる技術の確立が期待されていた。上記の事情に鑑みなされた本発明は、回転砥石装置に備わったスピンドルから砥石保持具および砥石を取り外すに際し、その作業の効率化を図る事を技術的な課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記の課題を解決するために創案された本発明は、スピンドルと、スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、スピンドルと砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、砥石保持具に装着された状態でスピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、スピンドルから砥石保持具および砥石を取り外す工程を含んだガラス板の製造方法であって、取り外す工程が、固定具によるスピンドルと砥石保持具との固定を解除する固定解除工程と、固定が解除された状態にあるスピンドルと砥石保持具との嵌合を砥石装置用工具により解除する嵌合解除工程とを含み、砥石装置用工具が、中空部に固定可能であることを特徴とするものである。
【0012】
本方法では、砥石保持具の中空部に砥石装置用工具を固定することが可能であるので、嵌合解除工程の実行にあたり、砥石装置用工具が、砥石と干渉する虞を確実に排除できる。従って、嵌合解除工程の実行に際して、砥石保持具から砥石を取り外す必要性を当然になくすことが可能となる。その結果、スピンドルから砥石保持具および砥石を取り外すための作業(取り外す工程)の効率化を図ることができる。
【0013】
上記の方法では、中空部が、孔部と連なり且つ孔部の孔軸方向に沿って形成され、砥石装置用工具が、中空部に固定可能な第一部材と、第一部材に対してスピンドルの軸心方向に相対移動可能な第二部材とを有し、第一部材に対する第二部材の相対移動は、送り移動によって行われ、嵌合解除工程では、砥石保持具と第一部材とを固定した状態で且つスピンドルの先端と第二部材とを当接させた状態で、第一部材と第二部材とを相対移動させることに伴って、スピンドルと砥石保持具との嵌合を解除してもよい。
【0014】
ここで、嵌合解除工程で砥石保持具、又は、砥石に衝撃が加わると、砥石保持具と砥石との間に位置ずれが生じる。この状態の砥石保持具と砥石を再びスピンドルに取り付けて端面加工工程を実行すると、加工された端面にうねりが生じ、端面の性状が悪化してしまうおそれがある。上記構成では、スピンドルの先端と第二部材とを当接させた状態で、第一部材と第二部材とを相対移動させることに伴って、スピンドルと砥石保持具との嵌合を解除する。この第一部材に対する第二部材の相対移動は、送り移動によって行われる。つまり、スピンドルの先端と第二部材とが当接した状態の下、送り移動に伴い、スピンドルの先端部を砥石保持具の孔部から離脱させることになる。そのため、嵌合解除工程の実行にあたり、砥石装置用工具(第一部材および第二部材)、砥石保持具、及び、砥石のいずれに対しても衝撃を加える必要性を排除できる。その結果、嵌合解除工程の実行に際して、砥石保持具と砥石との間におけるずれの発生を防止することが可能となる。従って、これら砥石保持具および砥石を再びスピンドルに取り付けてガラス板の端面を加工した場合でも、加工された端面にうねりが生じることを回避でき、端面の性状の悪化を防止することが可能になる。
【0015】
上記の方法では、嵌合解除工程では、中空部の内周面に形成された雌ネジと、第一部材の外周面に形成された雄ネジとの噛み合いを利用して、砥石保持具と第一部材とを固定することが好ましい。
【0016】
このようにすれば、簡易な機構であるネジ機構を利用するだけで、砥石保持具と第一部材との固定、及び、その解除を行うことが可能となる。また、簡易な機構を採用することで、砥石装置用工具の作製に掛かるコストを削減することもできる。
【0017】
上記の方法では、第一部材に孔が形成されると共に、第二部材がスピンドルの軸心方向に延びる丸棒状の棒状部を有し、嵌合解除工程では、第一部材の孔の内周面に形成された雌ネジと、第二部材の棒状部の外周面に形成された雄ネジとの噛み合いを利用して、第一部材に対して第二部材を送り移動させることが好ましい。
【0018】
このようにすれば、簡易な機構であるネジ機構を利用するだけで、第一部材と第二部材とを相対移動させることが可能となる。また、砥石装置用工具の作製に掛かるコストを削減する上で更に有利となる。加えて、工具に作用させたトルクをスピンドルの軸心方向に作用する力に変換できるため、可及的に小さな力を工具に作用させるだけで、スピンドルと砥石保持具との嵌合を解除させることができる。
【0019】
上記の方法では、第二部材が、棒状部と連結され且つ棒状部の径方向に延びたハンドル部を有することが好ましい。
【0020】
このようにすれば、ハンドル部の存在により、第二部材の棒状部に対して回転のためのトルクを加えやすくなる。そのため、容易に棒状部を回転させて第二部材をスピンドルの軸心方向に送ることができる。
【0021】
上記の方法では、砥石装置用工具が、中空部に固定可能な第一棒部材と、第一棒部材の長手方向に沿ってスライド可能な錘と、錘のスライドの範囲を規制する規制部材とを有し、嵌合解除工程では、錘と規制部材とを衝突させることに伴って、スピンドルと砥石保持具との嵌合を解除してもよい。
【0022】
このようにすれば、錘と規制部材とを衝突させるだけで、その際に発生する衝撃を利用してスピンドルと砥石保持具との嵌合を解除できる。そのため、スピンドルから砥石保持具および砥石を取り外すための作業を容易に行うことが可能となる。
【0023】
上記の方法では、規制部材が、第一棒部材に連結され且つ第一棒部材の径方向に延びた第二棒部材であることが好ましい。
【0024】
このようにすれば、砥石装置用工具の構造を簡易にできるため、砥石装置用工具の作製に掛かるコストを削減することが可能となる。
【0025】
上記の方法では、第二棒部材が、第一棒部材の端部に連結されると共に、第一棒部材および第二棒部材でT字状をなすことが好ましい。
【0026】
このようにすれば、第一部材の長手方向に沿ってスライドする錘について、スライドの範囲を簡便且つ確実に規制することが可能となる。
【0027】
上記の方法では、砥石装置用工具がステンレス鋼で構成されることが好ましい。
【0028】
このようにすれば、回転砥石装置によりガラス板の端面を加工する際に用いる研削液や研磨液等に起因して、砥石装置用工具に錆が発生することを好適に防止できる。
【0029】
また、上記の課題を解決するために創案された本発明は、スピンドルと、スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有する砥石保持具と、スピンドルと砥石保持具とを嵌合させた状態で固定する固定具と、砥石保持具に装着された状態でスピンドル周りを回転する環状の砥石とを備えた回転砥石装置について、スピンドルから砥石保持具および砥石を取り外すに際し、固定具による固定が解除された状態にあるスピンドルと砥石保持具との嵌合を解除するための砥石装置用工具であって、中空部に固定可能であることを特徴とするものである。
【0030】
本工具によれば、上記のガラス板の製造方法に係る説明で既述の作用・効果と同一の作用・効果を得ることが可能となる。
【0031】
上記の構成では、中空部が、前記孔部と連なり且つ前記孔部の孔軸方向に沿って形成され、中空部に固定可能な第一部材と、第一部材に対してスピンドルの軸心方向に送り移動可能で且つスピンドルの先端と当接可能な第二部材とを有していてもよい。
【0032】
このようにすれば、上記のガラス板の製造方法に係る説明で既述の作用・効果と同一の作用・効果を得ることが可能となる。
【0033】
上記の構成では、中空部に固定可能な第一棒部材と、第一棒部材の長手方向に沿ってスライド可能な錘と、錘のスライドの範囲を規制する規制部材とを有していてもよい。
【0034】
このようにすれば、上記のガラス板の製造方法に係る説明で既述の作用・効果と同一の作用・効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、回転砥石装置に備わったスピンドルから砥石保持具および砥石を取り外すに際し、その作業の効率化を図る事ができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図2】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法における固定解除工程を示す縦断正面図である。
【
図3】本発明の第一実施形態に係る砥石装置用工具を示す縦断正面図である。
【
図4】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法における嵌合解除工程を示す縦断正面図である。
【
図5】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法における嵌合解除工程を示す縦断正面図である。
【
図6】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法における嵌合解除工程を示す縦断正面図である。
【
図7】本発明の第一実施形態に係るガラス板の製造方法における嵌合解除工程を示す縦断正面図である。
【
図8】本発明の第二実施形態に係る砥石装置用工具を示す正面図である。
【
図9】本発明の第二実施形態に係るガラス板の製造方法における嵌合解除工程を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施形態に係るガラス板の製造方法、及び、砥石装置用工具について添付の図面を参照しながら説明する。なお、添付の図面において、極太線で示した箇所はネジが形成されていることを表している。
【0038】
<第一実施形態>
本実施形態に係るガラス板の製造方法は、後述のように、回転砥石装置に備わったスピンドルから砥石保持具および砥石を取り外す工程を含んでいる。はじめに、回転砥石装置の構成について説明する。
【0039】
図1に示すように、回転砥石装置1は、スピンドル2と、スピンドル2と嵌合する孔部3aが形成された砥石フランジ3(砥石保持具)と、スピンドル2と砥石フランジ3とを嵌合させた状態で固定する固定具としてのボルト4および押え板5と、砥石フランジ3に装着された状態でスピンドル2の周りを回転する環状の砥石6とを備えている。
【0040】
スピンドル2は、テーパ形状に形成された先端部2aを有する。先端部2aは、下方側から上方側(基端側から先端側)に移行するほど外径が縮小するように形成されている。先端部2aの内部には、ボルト4に形成された雄ネジ(図示省略)と噛み合う雌ネジ(図示省略)が形成されている。スピンドル2は、モーター等の駆動装置(図示なし)からの動力伝達に伴い、砥石フランジ3及び砥石6と共に回転する。
【0041】
砥石フランジ3は、砥石6を下方から支持するフランジ部3bと、フランジ部3bの上方に連なった軸部3cとを有する。
【0042】
フランジ部3bに形成された孔部3aは、スピンドル2の先端部2aと嵌合するテーパ形状に形成されており、下方側から上方側に移行するほど内径が縮小するように形成されている。なお、本実施形態では、孔部3aの上端とスピンドル2の先端とが面一となっているが、孔部3aの上端位置(後述の中空部3dの底面位置)がスピンドル2の先端位置よりも高くてもよい。この孔部3aの孔軸は、スピンドル2の軸心と一致している。
【0043】
軸部3cには、孔部3aと連なる中空部3dが形成されている。これにより、軸部3cが筒状に形成されている。中空部3dは、孔部3aの孔軸方向に沿って形成されると共に、開口形状が円形となるように形成されている。この開口がなす円の内径は、孔部3aの上端(テーパの上端)における内径よりも大きくなっている。また、中空部3dの孔軸は、孔部3aの孔軸と同様にして、スピンドル2の軸心と一致している。さらに、中空部3dの内周面には雌ネジ3eが形成されている。
【0044】
ボルト4は、押え板5に形成された孔(図示省略)を貫通すると共に、その頭部が押え板5をスピンドル2側に押え付けた状態で、スピンドル2の先端部2aに締め付けられている。このボルト4の締め付けにより、スピンドル2と砥石フランジ3とが固定される。
【0045】
砥石6は、当該砥石6がなす環(円環)の中心が、スピンドル2の軸心と一致するように砥石フランジ3に装着されている。砥石6の砥石フランジ3への装着は、ボルト(図示省略)によりなされている。砥石6の外周面には、上下複数段に亘ってガラス板の端面加工用の溝(図示省略)が形成されている。
【0046】
次に、上述の取り外す工程について説明する。
【0047】
取り外す工程は、ボルト4および押え板5によるスピンドル2と砥石フランジ3との固定を解除する固定解除工程(
図2)と、固定が解除された状態にあるスピンドル2と砥石フランジ3との嵌合を砥石装置用工具7(
図3)により解除する嵌合解除工程(
図4~
図7)とを含んでいる。
【0048】
固定解除工程では、
図2に示すように、スピンドル2の先端部2aに締め付けられていたボルト4を緩めて取り外すと共に、押え板5を取り除く。これにより、固定解除工程が完了する。固定解除工程が完了した後のスピンドル2と砥石フランジ3とは、未だ強固に嵌り合って相互に密着した状態にある。
【0049】
固定解除工程が完了すると、次いで、嵌合解除工程を実行する。ここで、嵌合解除工程に用いる砥石装置用工具7の構成について説明する。
【0050】
図3に示すように、砥石装置用工具7は、ボルト状に形成された第一部材8と、T字状に形成された第二部材9とを有する。この砥石装置用工具7の材質は特に限定されるものではないが、本実施形態では材質としてステンレス鋼を採用している。
【0051】
第一部材8は、本体部8aと、本体部8aの一端に連なった頭部8bとを有する。また第一部材8には自身を貫通する孔8cが形成されており、孔8cの内周面には雌ネジ8dが形成されている。一方、本体部8aの外周面には雄ネジ8eが形成されており、この雄ネジ8eは砥石フランジ3の中空部3dの内周面に形成された雌ネジ3eと噛み合うようになっている。頭部8bは、本体部8aよりも外径が一回り大きく形成されており、頭部8bの外径は、砥石フランジ3の中空部3dの開口がなす円の内径よりも大きくなっている。また、頭部8bの外径は、砥石6がなす環(円環)の内径よりも小さくなっている。
【0052】
第二部材9は、丸棒状の棒状部9aと、棒状部9aと連結され且つ当該棒状部9aの径方向に延びたハンドル部9bとを有する。棒状部9aの外径は、砥石フランジ3の孔部3aの上端における内径よりも小さくなっている。棒状部9aの外周面には雄ネジ9cが形成されており、この雄ネジ9cは第一部材8の孔8cの内周面に形成された雌ネジ8dと噛み合うようになっている。これにより、第一部材8の孔8cの内周面に形成された雌ネジ8dと、第二部材9の棒状部9aの外周面に形成された雄ネジ9cとを噛み合わせた状態で、ハンドル部9bを操作して棒状部9aを回転させると、第一部材8に対して第二部材9が棒状部9aの長手方向に沿って送り移動する構成となっている。
【0053】
上記の砥石装置用工具7を用いた嵌合解除工程では、まず、
図4に示すように、砥石6を砥石フランジ3に装着したままで、砥石フランジ3の中空部3dに第一部材8を固定する。具体的には、砥石フランジ3の中空部3dの内周面に形成された雌ネジ3eと、第一部材8の本体部8aの外周面に形成された雄ネジ8eとを噛み合わせながら相対回転させることにより、第一部材8を砥石フランジ3に取り付け、第一部材8の頭部8bが砥石フランジ3の軸部3cに当接した状態とする。
【0054】
次に、
図5に示すように、第一部材8の孔8cの内周面に形成された雌ネジ8dと、第二部材9の棒状部9aの外周面に形成された雄ネジ9cとを噛み合わせる。このとき、第二部材9の棒状部9aがスピンドル2の軸心方向に延びた状態となる。そして、両ネジ8d,9cを噛み合わせながら、第二部材9のハンドル部9bを操作して棒状部9aを回転させる。これに伴い、第一部材8に対して棒状部9aがスピンドル2(下側)に向かって送られて移動する。
【0055】
上述のように棒状部9aをスピンドル2に向かって送っていくと、やがて
図6に示すように、棒状部9aがスピンドル2の先端に当接し、それ以上棒状部9aが下方に移動できない状態となる。この状態から更に第二部材9のハンドル部9bを操作して棒状部9aを回転させることにより、第一部材8に対して棒状部9aをスピンドル2に向かって送り移動させる。この場合、棒状部9aが下側に移動できないので、
図7に示すように、第一部材8がスピンドル2から遠ざかるよう(上側)に移動する。このとき、第一部材8と固定された状態にある砥石フランジ3もまた上側に移動する。これに伴い、砥石フランジ3の孔部3aがスピンドル2の先端部2aから浮き上がり、スピンドル2と砥石フランジ3との嵌合が解除される。
【0056】
以上により嵌合解除工程が完了すると共に、取り外す工程に含まれた全工程が終了する。これにより、回転砥石装置1に備わったスピンドル2から砥石フランジ3および砥石6が取り外された状態となる。
【0057】
以下、上記のガラス板の製造方法による主たる作用・効果について説明する。
【0058】
上記の方法では、嵌合解除工程の実行にあたり、砥石フランジ3の中空部3dに第一部材8(砥石装置用工具7)を固定することから、砥石6と干渉する虞を確実に排除できる。従って、嵌合解除工程の実行に際して、砥石フランジ3から砥石6を取り外す必要性を当然になくすことが可能となる。その結果、スピンドル2から砥石フランジ3および砥石6を取り外すための作業の効率化を図ることができる。
【0059】
以下、第二実施形態について説明する。なお、第二実施形態の説明において、上記の第一実施形態で説明済みの要素と実質的に同一の要素については、第二実施形態の説明で参照する図面に同一の符号を付すことで重複する説明を省略し、第一実施形態との相違点についてのみ説明する。
【0060】
<第二実施形態>
図8及び
図9に示すように、第二実施形態が、上記の第一実施形態と相違している点は、嵌合解除工程に用いる砥石装置用工具7の構成、及び、嵌合解除工程の実行の態様である。
【0061】
砥石装置用工具7は、砥石フランジ3の中空部3d(図示省略)に固定が可能な第一棒部材としての鉛直棒10と、鉛直棒10の長手方向に沿って上下にスライドが可能な錘11と、錘11のスライドの範囲を規制する規制部材(第二棒部材)としての水平棒12とを有する。
【0062】
鉛直棒10の上端部は水平棒12の中央部と連結されており、両者10,12によりT字状をなしている。なお、水平棒12は鉛直棒10の径方向に延びている。ここで、本実施形態の変形例として、鉛直棒10と水平棒12とを交差させて両者10,12により十字状をなすようにしてもよい。本実施形態では、鉛直棒10の下端部10aの外周面には雄ネジ10bが形成されており、水平棒12を操作して鉛直棒10を回転させることに伴い、砥石フランジ3の中空部3dの内周面に形成された雌ネジ3e(図示省略)と噛み合せることが可能である。これにより、砥石フランジ3の中空部3dと鉛直棒10とが固定される。また、錘11は、図示しない貫通孔が形成されており、その貫通孔には、鉛直棒10の下端部10aと上端部の間の中間部が挿通されている。このため、錘11は、鉛直棒10の長手方向に沿って上下にスライドが可能である。錘11の貫通孔の内径は、鉛直棒10の中間部の外径よりも大きく、鉛直棒10の下端部10aの外径よりも小さい。このため、錘11がスライドできる範囲は、鉛直棒10の下端部10aと上端部(水平棒12)との相互間に規制される。
【0063】
上記の砥石装置用工具7を用いた嵌合解除工程では、
図9に矢印Aで示すように、鉛直棒10に沿ってスライドさせた錘11を水平棒12に衝突させる。この衝突は一回のみの場合もあるし、複数回に亘る場合もある。この際の衝撃を利用して嵌合を解除する。この第二実施形態によっても、上記の第一実施形態と同様の主たる作用・効果を得ることが可能である。
【0064】
ここで、本発明に係るガラス板の製造方法および砥石装置用工具は、上記の実施形態で説明した態様や構成に限定されるものではない。例えば、上記の実施形態では、第一部材、或いは、鉛直棒を砥石フランジに固定するためにネジ機構を利用しているが、この限りではない。ネジ機構に代えて爪等を有するチャック機構を利用することで、第一部材、或いは、鉛直棒を砥石フランジに固定してもよい。
【0065】
また、上記の第一実施形態では、第一部材に対して第二部材を送り移動させるためにネジ機構を利用しているが、これに限定されるものではない。ネジ機構に代えてラック・アンド・ピニオン機構を利用することで、第一部材と第二部材とを送り移動させてもよい。この場合、第一部材にピニオンを設けると共に第二部材にラックを設け、ピニオンの回転に伴い、第一部材に対して第二部材を送り移動させればよい。
【0066】
また、上記の実施形態では、砥石が装着される砥石保持具として砥石フランジを用いているが、これに限定されるものではない。スピンドルと嵌合する孔部に加えて中空部を有していれば、砥石フランジに代えて他の形状の砥石保持具を用いてもよい。また、上記の第二実施形態では、中空部は、第一棒部材(鉛直棒10)が固定可能であればよく、孔部と連なっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1 回転砥石装置
2 スピンドル
2a 先端部
3 砥石フランジ(砥石保持具)
3a 孔部
3d 中空部
3e 雌ネジ
4 ボルト
5 押え板
6 砥石
7 砥石装置用工具
8 第一部材
8c 孔
8d 雌ネジ
8e 雄ネジ
9 第二部材
9a 棒状部
9b ハンドル部
9c 雄ネジ
10 鉛直棒
11 錘
12 水平棒