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特許7428977ディスプレイの製造方法及びディスプレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ディスプレイの製造方法及びディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   H10K 50/30 20230101AFI20240131BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20240131BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240131BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20240131BHJP
   H10K 59/10 20230101ALI20240131BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20240131BHJP
【FI】
H10K50/30
G02B5/20 101
G09F9/00 338
G09F9/30 338
G09F9/30 349A
G09F9/30 365
H10K59/10
H10K71/60
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021015505
(22)【出願日】2021-02-03
(65)【公開番号】P2022118783
(43)【公開日】2022-08-16
【審査請求日】2023-06-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】勝井 宏充
【審査官】辻本 寛司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-183971(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0262531(US,A1)
【文献】特開2008-066385(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0155980(US,A1)
【文献】国際公開第2009/017339(WO,A2)
【文献】韓国公開特許第10-2005-0098333(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第107170748(CN,A)
【文献】Mitchell A. MCCARTHY et al.,“P-206L:Late-News Poster: QVGA AMOLED Displays Using the Carbon Nanotube Enabled Vertical Organic Light Emitting Transistor”,SID Symposium Digest of Technical Papers,2016年05月,Vol. 47, No. 1,p.1796-1798,DOI: 10.1002/sdtp.11071
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/30
G02B 5/20
G09F 9/00
G09F 9/30
H10K 59/10
H10K 71/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイの製造方法であって、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と、前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層に接続される薄膜トランジスタの通電電極層の一方とが、同一層で一体的に形成され
基台となる表面層が形成された後に、前記表面層の主面上の一部に電流供給ラインが形成され、
前記表面層と前記電流供給ラインとが形成された後に、前記表面層と前記電流供給ラインとを跨ぐように導電性材料が積層されて前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が形成されることを特徴とするディスプレイの製造方法。
【請求項2】
少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が、同一層で一体的に形成されることを特徴とする請求項1に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項3】
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層は、導電性と、光に対する透過性とを示す金属酸化物からなる材料で形成されることを特徴とする請求項1又は2に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項4】
各層が積層される方向から見たときの前記薄膜トランジスタの外側に前記縦型有機発光トランジスタから出射される光のうちの一部の波長帯域の光を透光させるカラーフィルタ層を形成することを含むことを特徴とする請求項に記載のディスプレイの製造方法。
【請求項5】
基台となる表面層の主面上の一部に形成された導電性材料からなるソース電極層を有する縦型有機発光トランジスタと、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層に、通電電極層の一方が接続される薄膜トランジスタと、
前記表面層の主面上の一部に形成された、前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層に電流を給する電流供給ラインとを備え、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と、前記薄膜トランジスタの前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と接続される前記通電電極層の一方が同一層で一体的に形成されており、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層は、前記表面層と前記電流供給ラインとを跨ぐように形成されていることを特徴とするディスプレイ。
【請求項6】
少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が、同一層で一体的に形成されていることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ。
【請求項7】
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層は、導電性と、光に対する透過性とを示す金属酸化物からなる材料で形成されていることを特徴とする請求項5又は6に記載のディスプレイ。
【請求項8】
各層が積層される方向から見たときの前記薄膜トランジスタの外側に、前記縦型有機発光トランジスタから出射される光のうちの一部の波長帯域の光を透光させるカラーフィルタ層を備えることを特徴とする請求項に記載のディスプレイ。
【請求項9】
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層と有機半導体層の間に樹脂層を備え、
前記樹脂層は、ディスプレイのアクティブエリア内において、各層が積層される方向から見たときに、前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層とゲート電極層が重畳している領域に開口部が形成されていることを特徴とする請求項のいずれか一項に記載のディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイの製造方法及びディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、有機半導体発光素子による光源素子の実用化が進み、有機半導体発光素子を光源素子としたディスプレイが市販されるようになっている。そして、有機半導体発光素子を光源素子としたディスプレイの開発においては、今もなお、さらなる性能向上に向けて、高輝度化、高精細化、低消費電力化、長寿命化といった検討が継続して行われている。
【0003】
従来の、有機半導体発光素子を発光素子としたディスプレイの画素は、有機発光ダイオード(「OLED」とも称される。)と有機発光ダイオードに流す電流の制御を行うトランジスタで構成される。有機発光ダイオードは、アノード電極とカソード電極の間に挟まれた有機EL層に、基板上に形成された薄膜トランジスタ(「TFT」とも称される。)から入力される電流に応じて発光するデバイスである。
【0004】
ところが、当該構成に対して下記特許文献1には、制御素子の数を減らし、発光面積を大きくして高輝度化させるための素子として、ゲート電極に印加する電圧を制御することで、流れる電流を調整するトランジスタであって、かつ、当該トランジスタ自体に流れる電流量に応じて発光する縦型有機発光トランジスタ(「VOLET」とも称される。)が記載されている。また、下記特許文献2は、縦型有機発光トランジスタを用いたディスプレイが記載されており、上記のような素子によるディスプレイの大幅な高輝度化が期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2009/036071号
【文献】特表2014-505324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
有機ELを利用したディスプレイは、家庭用テレビやスマートフォンはもちろん、駅などの柱に表示する広告用ディスプレイ等への適用も期待されている。このため、有機ELディスプレイは、使用態様に応じての輝度や解像度等の性能や品質の向上と共に、より安価に提供できることが求められている。
【0007】
ところが、縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイは、従来の有機発光ダイオードを備えるディスプレイと比較すると製造工程が増加し、製造コストが高くなってしまう。
【0008】
縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイは、従来の有機発光ダイオードを備えるディスプレイと比較して、薄膜トランジスタの数を削減できるという利点がある。しかしながら、各薄膜トランジスタは、同一層において異なる位置に同時に形成されるため、数が増えることによる製造工程数や製造コストへの影響は小さい。
【0009】
また、縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイは、単純に有機発光ダイオードを備えるディスプレイに比べて、追加的に必要となるゲート電極やゲート絶縁膜層を形成するために製造工程が多くなってしまう。このため、有機発光ダイオードを備えるディスプレイの製造工程において、有機発光ダイオードを形成する工程を、縦型有機発光トランジスタに置き換えるだけでは、製造にかかる時間とコストが増加してしまう。
【0010】
本発明は、上記課題に鑑み、製造時間、及び製造コストを抑制すると共に、より広い発光領域が確保された縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明のディスプレイの製造方法は、
縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイの製造方法であって、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と、前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層に接続される薄膜トランジスタの通電電極層の一方とが、同一層で一体的に形成されることを特徴とする。
【0012】
本明細書において、薄膜トランジスタの通電電極層とは、薄膜トランジスタのソース電極層、ドレイン電極層を総称する意味で用いられる。ディスプレイの構成要素として形成される薄膜トランジスタの多くは、ソース電極層とドレイン電極層が同一層においてチャネル長分だけ離間して形成される。薄膜トランジスタの通電電極層は、接続される配線やノード等に応じてソース電極層かドレイン電極層に区別される。
【0013】
有機半導体発光素子と薄膜トランジスタとによって画素を構成するディスプレイは、下層側に薄膜トランジスタや、画素ごとの薄膜トランジスタに信号を伝達するゲートラインや、有機半導体発光素子に電流を供給する電流供給ライン等が形成される。そして、薄膜トランジスタや電流供給ライン等よりも上層側に有機半導体発光素子が形成される。なお、以下説明においても、説明の便宜のために、基板側から各層が積層されていく方向を上層側として構成を説明する。
【0014】
有機発光ダイオードを発光素子とするディスプレイは、一つの有機発光ダイオードを駆動制御する構成として、電流制御用と、供給切替用の少なくとも二つ薄膜トランジスタが必要であった。これに対し、縦型有機発光トランジスタを発光素子とするディスプレイは、一つの縦型有機発光トランジスタを駆動制御する構成として、縦型有機発光トランジスタのゲート電極層に通電電極層(以下の説明においては、ドレイン電極層であることを想定して説明される。)が接続される薄膜トランジスタ一つで構成することができる。
【0015】
また、縦型有機発光トランジスタのゲート電極層は、縦型有機発光トランジスタのソース電極層とドレイン電極層との間の電界を制御する端子であるため、薄膜トランジスタの通電電極層以外のノードと低インピーダンスで接続されることがない。このため、縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と、当該ゲート電極層に接続される薄膜トランジスタの一方の通電電極層は一体的に構成しても、他のノードとの分圧や分流が問題となることはない。
【0016】
そこで、上記製造方法とすることで、縦型有機発光トランジスタのゲート電極層を形成する工程と、薄膜トランジスタの通電電極層を形成する工程とを同時に行うことができる。このため、それぞれ別々の工程で形成していた場合と比べて、工程数が削減される。
【0017】
また、上記製造方法によって製造されるディスプレイは、縦型有機発光トランジスタのゲート電極層を形成する工程と、薄膜トランジスタの通電電極層との間にコンタクトホールを必要としないため、より広い発光領域を確保することができる。
【0018】
上記製造方法は、
少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が、同一層で一体的に形成されても構わない。
【0019】
上記製造方法とすることで、各発光領域が備える縦型有機発光トランジスタのソース電極層及び電流供給ラインの間を、別の配線によって接続する必要がなくなる。つまり、各縦型有機発光トランジスタのソース電極層に電流を供給する電流供給ラインの本数や面積が削減される。
【0020】
従来、電流供給ラインは、アレイ状に形成された縦型有機発光トランジスタの間をディスプレイ全体にわたって格子状に形成される。しかしながら、上記製造方法によれば、縦型有機発光トランジスタを駆動する電流を供給するドライバと、少なくとも一つの縦型有機発光トランジスタとが接続されれば、残りの縦型有機発光トランジスタは、一体的に構成されたソース電極を介して電流が供給される。つまり、ソース電極層に電流を供給する電流供給ラインの本数や面積が削減され、電流供給ラインを形成する面積が大幅に小さくなり、電流供給ラインの形成に必要な材料が大幅に削減される。
【0021】
電流供給ラインが縦型有機発光トランジスタのゲート絶縁膜上に形成され、縦型有機発光トランジスタのソース電極を、複数の縦型有機発光トランジスタに跨るように一体的に形成する場合は、接続用のコンタクトホールの形成は不要であって、複雑なパターンを形成する必要がないため、製造時間や製造コストが大幅に増加することもない。
【0022】
また、同一層で一体的に形成された縦型有機発光トランジスタのソース電極層は、電流供給ラインを流れる電流を分担する働きがあることから、寄生抵抗等による電圧降下の影響も抑制される。また、電流供給ラインが削減された領域は、発光領域を拡張することに利用できる。
【0023】
上記製造方法において、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層は、基台となる表面層が形成された後、前記表面層の主面上に導電性材料が積層されて形成されても構わない。
【0024】
上記製造方法とすることで、例えば、カーボン材料等の単独で電極層を固着形成させることが難しい導電性材料によって縦型有機発光トランジスタのソース電極層を形成することができる。また、例えば、複数の縦型有機発光トランジスタを跨ぐように表面層を形成し、そのうちの一部の縦型有機発光トランジスタを跨ぐようにソース電極を形成することができる。このような構成を採用することで、電流供給ラインの配線インピーダンスの影響を考慮したソース電極層の構成を形成することで、材料費を抑えることもできる。
【0025】
ここで、表面層の主面上に積層される導電性材料としては、例えば、カーボンナノチューブ、グラフェン、グラファイト、金属ナノワイヤ等が採用され得る。
【0026】
上記製造方法は、
前記表面層が形成された後に、前記表面層の主面上の一部に前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層に電流を供給する電流供給ラインが形成され、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層は、前記電流供給ラインが形成された後に、前記表面層と前記電流供給ラインとを跨ぐように前記導電性材料によって形成されても構わない。
【0027】
上記製造方法とすることで、電流供給ラインを縦型有機発光トランジスタに挟まれた領域に形成することができる。これにより、縦型有機発光トランジスタの下層に、電流供給ラインを形成するため領域を確保する必要がなくなる。当該構成は、特に上述したボトムエミッション形式が採用されるディスプレイにおいて、より広い発光領域を確保することができる。
【0028】
上記製造方法において、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層は、導電性と、光に対する透過性とを示す金属酸化物からなる材料で形成されても構わない。
【0029】
また、上記製造方法は、
前記縦型有機発光トランジスタから出射される光のうちの一部の波長帯域の光を透光させるカラーフィルタ層を形成することを含んでいても構わない。
【0030】
本発明のディスプレイは、
縦型有機発光トランジスタと、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層に、通電電極層の一方が接続される薄膜トランジスタとを備え、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層と、前記薄膜トランジスタの前記通電電極層の一方が同一層で一体的に形成されていることを特徴とする。
【0031】
上記ディスプレイは、
少なくとも二以上の前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が、同一層で一体的に形成されていても構わない。
【0032】
上記ディスプレイにおいて、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層は、基台となる表面層の主面上に形成された導電性材料からなるものであっても構わない。
【0033】
上記ディスプレイは、
前記表面層の主面上の一部に、前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層に電流を供給する電流供給ラインが形成され、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層が、前記表面層と前記電流供給ラインとを跨ぐように前記導電性材料によって形成されていても構わない。
【0034】
上記ディスプレイは、
各層が積層される方向から見たときの前記薄膜トランジスタの外側に、前記縦型有機発光トランジスタから出射される光のうちの一部の波長帯域の光を透光させるカラーフィルタ層を備え、
前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層は、導電性と、光に対する透過性とを示す金属酸化物からなる材料で形成されていても構わない。
【0035】
ここでの「各層を積層する方向から見たときの薄膜トランジスタの外側」とは、当該方向から見たときに、薄膜トランジスタのゲート電極層と、ソース電極層及びドレイン電極層とが重なっている領域、さらに、ソース電極層とドレイン電極層とによって挟まれた領域、すなわち、薄膜トランジスタのチャネルが形成される領域の外側をいう。
【0036】
上記ディスプレイは、
前記縦型有機発光トランジスタのソース電極層と有機半導体層の間に樹脂層を備え、
前記樹脂層は、ディスプレイのアクティブエリア内において、各層が積層される方向から見たときに、前記縦型有機発光トランジスタのゲート電極層とソース電極層とが重なる領域に開口部が形成されていても構わない。
【0037】
なお、ここでの「アクティブエリア」とは、各層が積層される方向から見たときの発光領域をいう。具体的には、「発明を実施するための形態」の項目において、図1を参照しながら説明される。
【発明の効果】
【0038】
本発明によれば、製造時間、及び製造コストを抑制すると共に、より広い発光領域が確保された縦型有機発光トランジスタを備えるディスプレイの製造方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】ディスプレイの一実施形態の一部の模式的な構成図である。
図2図1のディスプレイの領域A1における発光部の回路図である。
図3A】発光部とその周辺の一実施形態の模式的な素子構成の上面図である。
図3B図3Aから電流供給ライン12を取り除いた状態の図面である。
図4図3AのA-A´断面図である。
図5A】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5B】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5C】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5D】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5E】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5F】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図5G】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図6】発光部とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。
図7】発光部とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。
図8】カラーフィルタ層を備える発光部とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。
図9A図8の薄膜トランジスタ周辺の拡大図である。
図9B図9Aの薄膜トランジスタの酸化物半導体層が形成される前の状態を示す図面である。
図10A】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
図10B】製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
以下、本発明のディスプレイの製造方法及び当該方法によって製造されるディスプレイの構成について、図面を参照して説明する。なお、以下の各図面は、いずれも模式的に図示されたものであり、図面上の寸法比や個数は、実際の寸法比や個数と必ずしも一致していない。
【0041】
図1は、ディスプレイ1の一実施形態の一部の模式的な構成図である。図1に示すように、本実施形態のディスプレイ1は、アレイ状に配列された、後述される縦型有機発光トランジスタ20を含む発光部10と、データライン11と、電流供給ライン12と、ゲートライン13と、補助ライン14とを備える。
【0042】
また、ディスプレイ1は、外縁部において、データライン11に縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極に表示する画像データに応じた電圧を印加するソースドライバ15aと、電流供給ライン12に電流を供給し、縦型有機発光トランジスタ20のソース電極に電流を供給する電流供給部15b、ゲートライン13に薄膜トランジスタ21の制御信号を出力するゲートドライバ15cを備える。ここで、図1に示すように、ディスプレイ1において、各ドライバ(15a,15b,15c)等が配置された領域を除く、発光部10が配列された領域A2がアクティブエリアに相当する。
【0043】
図2は、図1のディスプレイ1の領域A1における発光部10の詳細回路図である。図2に示すように、発光部10は、縦型有機発光トランジスタ20と、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極への電圧印加を制御する薄膜トランジスタ21と、縦型有機発光トランジスタ20のソース電極とゲート電極の間に形成されるコンデンサ23を備える。なお、図1及び図2の説明においては、電流供給ライン12が配線されている方向をX方向、補助ライン14が配線されている方向をY方向として説明する。
【0044】
データライン11は、表示する画像に応じて、縦型有機発光トランジスタ20の発光輝度を調整するために、ソースドライバ15aから出力された電圧を、薄膜トランジスタ21を介して縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極に印加する配線である。本実施形態において、データライン11は、X方向に形成されているが、Y方向に形成されていても構わない。
【0045】
電流供給ライン12は、X方向に配列されている複数の縦型有機発光トランジスタ20からなる群に接続されるように、縦型有機発光トランジスタ20の外側において、X方向に複数配線されている。各電流供給ライン12は、縦型有機発光トランジスタ20群に含まれるそれぞれの縦型有機発光トランジスタ20のソース電極に、電流供給部15bから出力された電流を供給する。
【0046】
ゲートライン13は、薄膜トランジスタ21のゲート電極に接続され、ゲートドライバ15cから出力された制御信号を薄膜トランジスタ21のゲート電極に向かって伝送し、薄膜トランジスタ21のオン/オフを切り替えることで、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極とデータライン11との通電を制御する。本実施形態においては、ゲートライン13は、Y方向に形成されているが、X方向に形成されていても構わない。
【0047】
補助ライン14は、X方向に配列されている発光部10の間でY方向に配線されて、複数の電流供給ライン12を接続している。なお、補助ライン14は、X方向に配列されている全ての発光部10間に形成されていなくても構わない。本実施形態においては、電流供給ライン12がX方向、補助ライン14がY方向に形成されているが、電流供給ライン12がY方向、補助ライン14がX方向に形成されていても構わない。
【0048】
コンデンサ23は、薄膜トランジスタ21がオフ状態である間、表示している画像を所定の時間維持するために配置されている、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極とソース電極との間の電圧保持用素子である。
【0049】
次に、基板上に形成される各素子の構造について説明する。図3Aは、発光部10とその周辺の一実施形態の模式的な素子構成の上面図であり、図3Bは、図3Aから電流供給ライン12を取り除いた状態の図面である。図4は、図3AのA-A´断面図である。図3B及び図4に示すように、縦型有機発光トランジスタ20と薄膜トランジスタ21は、データライン11、ゲートライン13によって区分けされた領域に一組形成されている。
【0050】
また、図3A及び図3Bで図示される縦型有機発光トランジスタ20は、上述したように、一部の領域を切り抜いて図示されているが、本実施形態の縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20dや発光層(有機半導体層20a、有機EL層20c)、ソース電極層20s等は、図4に示すように、複数の縦型有機発光トランジスタ20に跨って形成されている。
【0051】
基板30は、光に対して透過性を備え、縦型有機発光トランジスタ20から放射された光を外部に出射する。具体的な材料については後述する。
【0052】
以下の説明において、データライン11と電流供給ライン12が配線される方向をX方向、ゲートライン13が配線される方向をY方向、これらと直交する方向をZ方向(第三方向)として説明する。そして、方向を表現する際に、正負の向きを区別する場合には、「+Z方向」、「-Z方向」のように、正負の符号を付して記載され、正負の向きを区別せずに方向を表現する場合には、単に「Z方向」と記載される。
【0053】
縦型有機発光トランジスタ20の構成は、+Z側の層からカソード電極に相当するドレイン電極層20d、発光層を形成する有機EL層20cと有機半導体層20a、表面層31の表面に導電性材料(本実施形態においては、カーボンナノチューブ)によって構成されたソース電極層20s、さらに-Z側に誘電体で構成されるゲート絶縁膜層20hを介してゲート電極層20gが形成されている。
【0054】
上記構成の縦型有機発光トランジスタ20は、ゲート電極層20gに電圧が印加されると、有機半導体層20aとソース電極層20sの間のショットキー障壁が変化し、所定の閾値を超えたところでソース電極層20sから有機半導体層20aと有機EL層20cに対して電流が流れることで発光する。
【0055】
図4においてX方向が図示されていないが、ソース電極層20sは、表面層31上に形成された電流供給ライン12の+Z側にも塗布されて、電流供給ライン12と直接接触するように形成されている。そして、縦型有機発光トランジスタ20の有機半導体層20aとソース電極層20sとの間には、これらを電気的に絶縁するために、Z方向において、ゲート電極層20gとソース電極層20sとが重なる領域に開口部24aが設けられたバンク層24が形成されている。なお、図4に示すように、開口部24aが形成される領域は、重なりのマージンを確保する観点から、ゲート電極層20gとソース電極層20sとが重なる領域よりも内側に形成されることが好ましい。
【0056】
本実施形態のディスプレイ1は、基板30が、可視光に対して透過性を有する素材で構成され、ゲート電極層20gとソース電極層20sは、可視光が通過できるような間隙を有するように構成される。このような構成とすることで、有機EL層20cから出射した光が、基板30を通過して外に出射されることで画像を表示する。なお、このような光の出射方式は、「ボトムエミッション方式」と称される。
【0057】
薄膜トランジスタ21は、酸化物半導体層21aを介してソース電極層21sとドレイン電極層21dが接続され、酸化物半導体層21aの下層に、絶縁膜層又は誘電体層を介してゲート電極層21gが形成されている。それぞれ、ゲート電極層21gに電圧が印加されると、酸化物半導体層21aにチャネルが形成され、通電電極層であるソース電極層21sとドレイン電極層21dが通電する。
【0058】
薄膜トランジスタ21は、ソース電極層21sがデータライン11に接続される。薄膜トランジスタ21のドレイン電極層21dは、図4に示すように、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gと一体的に形成されている。
【0059】
図3Bに示すように、縦型有機発光トランジスタ20は、高輝度化のために、データライン11、ゲートライン13によって区分けされた領域のほぼ全体を埋め尽くすように形成される。薄膜トランジスタ21は、縦型有機発光トランジスタ20の発光領域に対して影響が小さいように、区分けされた当該領域の角に、できる限り小さく形成される。
【0060】
図3A図4において、コンデンサ23は図示されていないが、図3Aに示すように、本実施形態の縦型有機発光トランジスタ20は、ソース電極層20sとゲート電極層20gがゲート絶縁膜層20hを介して対向するように配置される。これにより、縦型有機発光トランジスタ20は、寄生素子としてのコンデンサ23を有し、当該コンデンサ23で電圧維持の機能を果たすこともできる。このような寄生素子のコンデンサ23では、容量値が足りない場合は、追加で別のコンデンサを形成しても構わない。
【0061】
以下、各層に用いられる材料を例示列挙する。
【0062】
ゲートライン13及び補助ライン14は、アルミニウム(Al)、チタン(Ti)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ニオブ(Nb)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、銅(Cu)及びその組み合わせによる合金等を採用し得る。
【0063】
基板30は、ガラス材、又はPET(Poly Ethylene Terephthalate)、PEN(Poly Ethylene Naphthalate)、ポリイミドといったプラスチック材等を採用し得る。
【0064】
縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20dは、単層又は多層、カーボンナノチューブ、グラフェン、アルミニウム(Al)、フッ化リチウム(LiF)、酸化モリブデン(MoXY)、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化亜鉛(ZnO)、マグネシウム(Mg)、銀(Ag)、金(Au)そのほかの組み合わせによる合金等を採用し得る。
【0065】
縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gは、光に対する透過性と導電性とを示す金属酸化物材料であるITO、IGZO等を採用し得る。また、ゲート電極層20gとは反対側から光を出射させるような構成(例えば、トップエミッション方式)では、光に対する透過性を有しない材料が採用されてもよく、例えば、アルミニウム(Al)、スズ(Sn)、イットリウム(Y)、スカンジウム(Sc)、ガリウム(Ga)等の金属でドープされた酸化亜鉛(ZnO)、酸化インジウム(In23)、二酸化スズ(SnO2)、酸化カドミウム(CdO)等の金属ドープ、非ドープ透明導電性酸化物及びこれらの組み合わせを含む材料、又は、アルミニウム(Al)、金(Au)、銀(Ag)、プラチナ(Pt)、カドミウム(Cd)、ニッケル(Ni)及びタンタル(Ta)、及びこれらの組み合わせ、さらにはp又はnドープのケイ素(Si)やガリウムヒ素(GaAs)等を採用し得る。
【0066】
縦型有機発光トランジスタ20の表面層31とゲート電極層20gの間のゲート絶縁膜層20hは、酸化ケイ素(SiOX)、酸化アルミニウム(Al23)、窒化ケイ素(Si34)、酸化イットリウム(Y23)、チタン酸鉛(PbTiOX)、チタン酸アルミニウム(AlTiOX)、ガラス及びパリレンポリマー、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルフェノール、ポリメチルメタクリレート、フルオロポリマー等の有機化合物等を採用し得る。
【0067】
縦型有機発光トランジスタ20の有機半導体層20aは、ナフタレン、アントラセン、ルブレン、テトラセン、ペンタセン、ヘキサセン、及びこれらの誘導体のような線形縮合多環芳香族化合物(又はアセン化合物)と、例えば銅フタロシアニン(CuPc)系化合物、アゾ化合物、ペリレン系化合物、及びこれらの誘導体のような顔料と、例えばヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン系化合物、ジフェニルメタン系化合物、スチルベン系化合物、アリルビニル化合物、ピラゾリン系化合物、トリフェニルアミン誘導体(TPD)、アリルアミン化合物、低分子量アミン誘導体(a-NPD)、2,2’,7,7’-テトラキス(ジフェニルアミノ)-9,9’-スピロビフルオレン(スピロ-TAD)、N,N’-ジ(1-ナフチル)-N,N’-ジフェニル-4,4’-ジアモノビフェニル(スピロ-NPB)、4,4’、4”-トリス[N-3-メチルフェニル-N-フェニルアミノ]トリフェニルアミン(mMTDATA)、2,2’,7,7’-テトラキス(2,2-ジフェニルビニル)-9,9-スピロビフルオレン(スピロ-DPVBi)、4,4’-ビス(2,2-ジフェニルビニル)ビフェニル(DPVBi)、(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq)、トリス(8-キノリノラト)アルミニウム(Alq3)、トリス(4-メチル-8キノリノラト)アルミニウム(Almq3)、及びこれらの誘導体のような低分子化合物と、例えば、ポリチオフェン、ポリ(p-フェニレンビニレン)(PPV)、ビフェニル基含有ポリマー、ジアルコキシ基含有ポリマー、アルコキシフェニルPPV、フェニルPPV、フェニル/ジアルコシキPPVコポリマー、ポリ(2-メトキシ-5-(2’-エチルヘキシルオキシ)-1,4-フェニレンビニレン)(MEH-PPV)、ポリ(エチレンジオキシチオフェン)(PEDOT)、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、ポリ(アニリン)(PAM)、ポリ(N-ビニルカルバゾール)、ポリ(ビニルピレン)、ポリ(ビニルアントラセン)、ピレンホルムアルデヒド樹脂、エチルカルバゾールホルムアルデヒドハロゲン化樹脂、及びこれらの変性物のようなポリマー化合物と、例えば、5,5_-ジパーフルオロヘキシルカルボニル-2,2_:5_,2_:5_,2_-クアテルチオフェン(DFHCO-4T)、DFH-4T、DFCO-4T、P(NDI2OD-T2)、PDI8-CN2、PDIF-CN2、F16CuPc、及びフラーレン、ナフタレン、ペリレン、並びにオリゴチオフェン誘導体のようなn型輸送有機低分子、オリゴマー、若しくはポリマー、さらには、チエノ[3,2-b]チオフェン、ジナフチル[2,3-b:2’,3’-f]チエノ[3,2-b]チオフェン(DNTT)、2-デシル-7-フェニル[1]ベンゾチエノ[3,2-b][1]ベンゾチオフェン(BTBT)等のチオフェン環を有する芳香族化合物等を採用し得る。
【0068】
ここで、縦型有機発光トランジスタ20は、エネルギー準位が適合する有機半導体を適切に選定することによって、有機発光ダイオードを備えるディスプレイに標準的に用いられる、正孔注入層・正孔輸送層・有機EL層・電子輸送層・電子注入層などを好適に用いることができる。そして、外部に出射する光の色は、上述の有機EL層20cを構成する材料を選択することによって赤、緑、青といった色の光を出射するように調整される。また、別実施形態として後述されるが、縦型有機発光トランジスタ20は、白色光を出射する構成とすることもでき、同じ縦型有機発光トランジスタ20を用いて、カラーフィルタ層で所望の色の光を選択して出射するといった構成とすることもできる。
【0069】
表面層31は、ソース電極層20sの固着を目的としてゲート絶縁膜層20hの上に形成される層である。表面層31を形成する材料としては、シランカップリング材料、アクリル樹脂等から形成されるバインダー樹脂を含む組成物を塗布することで形成することができる。
【0070】
バンク層24は、酸化ケイ素(SiO)、窒化ケイ素(Si34)、酸化アルミニウム(Al23)、窒化アルミニウム(AlN)等の無機絶縁性材料、ポリイミド樹脂、シロキサン樹脂、アクリル樹脂、ノボラック樹脂等の有機絶縁材料等を採用し得る。
【0071】
薄膜トランジスタ21に構成される酸化物半導体層21aは、In-Ga-Zn-O系半導体、Zn-O系半導体(ZnO)、In-Zn-O系半導体(IZO(登録商標))、Zn-Ti-O系半導体(ZTO)、Cd-Ge-O系半導体、Cd-Pb-O系半導体、CdO(酸化カドミウム)、Mg-Zn-O系半導体、In-Sn-Zn-O系半導体(例えばIn23-SnO2-ZnO)、In-Ga-Sn-O系半導体等を採用し得る。
【0072】
本実施形態において、薄膜トランジスタ21は、酸化物半導体による薄膜トランジスタとしたが、アモルファスシリコン、又は低温ポリシリコン(LTPS)、高温ポリシリコン(HTPS)による薄膜トランジスタであっても構わない。また、p型とn型のいずれであっても構わない。さらに、具体的な構成として、スタガード(staggerd)型、インバーテッド・スタガード(inverted staggerd)型、コープレーナ(coplanar)型、インバーテッド・コープレーナ(inverted coplanar)型等のいずれの構成をも採用し得る。
【0073】
なお、縦型有機発光トランジスタ20としては、上記特許文献1及び2にも記載されている縦型有機発光トランジスタ20も採用することができ、さらには、上記特許文献3の構成を採用することもできる。
【0074】
次に、各層の製造工程を簡単に説明する。図5A図5Gは、製造工程の途中のディスプレイ1の一の縦型有機発光トランジスタ20周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。以下、図面を参照しながら各工程を説明する。
【0075】
また、隣接する縦型有機発光トランジスタ20との位置関係や、縦型有機発光トランジスタ20同士の間の構造、すなわち、縦型有機発光トランジスタ20の外側の構造がわかるように、Y方向に三つ並んだ縦型有機発光トランジスタ20が形成される図面で説明する。
【0076】
なお、図示される領域の外側は、同じパターンで繰り返されるものでなくても構わない。例えば、図5D等に示すように、薄膜トランジスタ21は、(+X、-Y)側に形成されているが、ディスプレイ1全体において、X方向における中央部よりも-X側では、(-X、+Y)側に形成する等、任意のパターンで形成してもよい。また、ディスプレイ1において、ピクセルの大きさは、異なる色を表示するピクセルごとに任意に変えてもよい。
【0077】
図5Aに示すように、最初は、基板30を準備する(ステップS1)。
【0078】
ステップS1の後、図5Bに示すように、基板30上に薄膜トランジスタ21のゲート電極層21gと、ゲート電極層21gに接続されるゲートライン13が形成される(ステップS2)。
【0079】
ステップS2の後、図示しない絶縁膜が全体にわたって形成されて、その上に図5Cに示すように、薄膜トランジスタ21のゲート電極層21gの+Z側に酸化物半導体層21aが形成される(ステップS3)。
【0080】
ここでの「全体にわたって形成」とは、縦型有機発光トランジスタ20が形成される画像表示領域全体にわたって形成されることをいい、ドライバが配置された外縁部全体まで形成されることをいうものではない。このことは、以下の説明においても同様である。
【0081】
ステップS3の後、図5Dが示すように、薄膜トランジスタ21の酸化物半導体層21a上に、Y方向に離間してドレイン電極層21dとデータライン11が形成される(ステップS4)。データライン11は、酸化物半導体層21aとZ方向において重複する部分で薄膜トランジスタ21のソース電極層21sを構成する。なお、本実施形態では、ステップS4が、ハーフトーン露光による2段階の形成工程が行われるため、図5Eに示すような形状となっているが、ステップS4は、ハーフトーン露光による形成工程でなくても構わない。
【0082】
ステップS4の後、パッシベーション膜が全体にわたって形成された後、表面層31が全体にわたって形成される(ステップS5)。なお、パッシベーション膜、及び表面層31は、説明の便宜のために図示されていない。
【0083】
ステップS5の後、図5Fに示すように、電流供給ライン12がX方向に形成され、各電流供給ライン12をY方向に接続するように補助ライン14が形成される(ステップS6)。本実施形態では、電流供給ライン12と補助ライン14は、異なる層に形成されるため、層間を接続するコンタクトホール14cも形成されている。なお、コンタクトホール14cの形成箇所や構成は、それぞれ任意の箇所に、適した形状や個数で形成して構わない。
【0084】
ステップS6の後、ステップS4で形成された表面層31の主面上及びステップS5で形成された電流供給ライン12上に、表面層31の全体にソース電極層20sが、X方向に配列された複数の縦型有機発光トランジスタに跨って、一体的に形成される(ステップS7)。ソース電極層20sは、表面層31と同様に、説明の便宜のために図示されていない。
【0085】
ステップS7の後、図5Gが示すように、樹脂層であるバンク層24が形成される(ステップS8)。バンク層24は、Z方向から見たときに、ゲート電極層20gとソース電極層20sとが重畳している領域に、開口部24aが形成される。なお、バンク層24は、上述したように、無機絶縁性材料で形成されても構わない。
【0086】
ステップS8の後は、発光層となる有機半導体層20a、有機EL層20c及びドレイン電極層20dが全体にわたって形成されて、図3A図4に示す構成が形成される。
【0087】
以上のような製造工程は、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gと、薄膜トランジスタ21のドレイン電極層21dとが、同時に形成される。このため、従来の製造工程よりも少ない工程でディスプレイを製造することができる。
【0088】
なお、本実施形態においては、縦型有機発光トランジスタ20のドレイン電極層20d、有機半導体層20a、有機EL層20c、ソース電極層20sのいずれもが、複数の縦型有機発光トランジスタ20に跨るように形成されているが、いずれも、縦型有機発光トランジスタ20毎に形成されていても構わない。
【0089】
[別実施形態]
以下、別実施形態につき説明する。
【0090】
〈1〉 図6及び図7は、発光部10とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。図6に示すように、電流供給ライン12は、表面層31よりも-Z側の層に形成されていても構わない。また、図7に示すように、電流供給ライン12よりもさらに-Z側の層において、補助ライン14が形成しても構わない。
【0091】
図6の発光部10を構成する場合は、例えば、電流供給ライン12は、ステップS4において、ハーフトーン露光によって形成される。また、図7の発光部10を構成する場合は、例えば、補助ライン14は、ステップS2において、薄膜トランジスタ21のゲート電極層21gと同時に形成される。
【0092】
図6のような構成の発光部10は、薄膜トランジスタ21の各電極層が形成される際に、電流供給ライン12を同時に形成することができ、その際には、コンタクトホール12cを形成する工程を必要とすることになる。しかしながら、これらのコンタクトホール12cを形成する工程は従来の発光ダイオードディスプレイの製造工程においてもディスプレイ周辺部の電極層間の接続のために元から実施されている工程であり、工程数の増加要因とはならない。このため、従来の製造方法と比較すると工程数が削減される。
【0093】
図7のような構成の発光部10は、薄膜トランジスタ21の各電極層が形成される際に、同時に形成することができ、その際には図6の構成に対して、さらにコンタクトホール14cを形成する工程を必要とすることになる。ただし、コンタクトホール14cを形成する工程は、電流供給ライン12を上層に新たに作成する工程数よりは少なく、工程数を抑えながら補助ライン14の形成が可能となる上に、コンタクトホール14cを形成する工程を配線間の接続として別途活用することも可能であるため、従来の製造方法と比較して工程数が削減される。このため、図6及び図7に示す構成はどちらも、図5A図5Gを参照して説明した製造工程と比較すると低コストでの製造が可能となる。
【0094】
〈2〉 図8は、カラーフィルタ層80を備える発光部10とその周辺の別実施形態の模式的な素子構成をYZ平面で切断したときの断面図である。図9Aは、図8の薄膜トランジスタ21周辺の拡大図であって、図9Bは、図9Aの薄膜トランジスタ21の酸化物半導体層21aが形成される前の状態を示す図面である。図8及び図9Aに示すように、縦型有機発光トランジスタ20のゲート電極層20gの-Z側にカラーフィルタ層80を形成しても構わない。カラーフィルタ層80を形成する工程は、ステップS3の、薄膜トランジスタ21の酸化物半導体層21aが形成される前に行われる。
【0095】
この際、薄膜トランジスタ21が形成される位置の周辺部にはカラーフィルタ層80に開口部80aを作成し、カラーフィルタ層80を形成せず、かつ、図9Bに示すように、カラーフィルタ層80の開口部80aのテーパーを、基板30に近づくにつれて徐々に狭くなるような順テーパーとすることにより、薄膜トランジスタ21の形成と動作を行うことができる。なお、カラーフィルタ層80は、例えば、感光性を持つカラーフィルタ材料に対してフォトマスクによる露光、および現像処理を行い、所定のパターンにカラーフィルタを形成する方法や、一旦全体にわたってカラーフィルタ層80が形成された後、エッチング処理を行う方法や、薄膜トランジスタ21を形成すル領域にマスキング処理を行った状態で形成する方法等を採用し得る。
【0096】
図10A及び図10Bは、カラーフィルタ層80を形成する場合の、製造工程の途中のディスプレイの一の縦型有機発光トランジスタ周辺を+Z側から見たときの模式的な図面である。図10Aは、ステップS2の後、全体にわたってカラーフィルタ層80を形成して、開口部80aを形成する場合、図10Bは、発光部10ごとに、カラーフィルタ層80を個別に形成する場合の、それぞれの一例を示している。
【0097】
図8に示す構成は、カラーフィルタ層80を通して基板30側から光を出射するボトムエミッション方式が採用される場合の一例である。縦型有機発光トランジスタ20から出射された光のうち、一部の波長帯域の光がカラーフィルタ層80によってフィルタリングされて、残りの波長帯域の光が基板30から出射される。
【0098】
なお、当該構成の場合、縦型有機発光トランジスタ20の有機EL層20cから出射された光が、基板30にまで到達するように、ゲート電極層20gが光に対して透過性を示す材料で形成されていることが好ましく、例えば、上述したような、金属酸化物材料であるITOやIGZO等を採用し得る。
【0099】
〈3〉 上述の各実施形態は、ボトムエミッション方式を前提としてそれぞれ説明したが、基板30とは反対側から光を出射する「トップエミッション方式」を採用する構成としても構わない。この場合、縦型有機発光トランジスタ20は、有機EL層20cから出射された光が取り出されるように、ドレイン電極層20dが、光に対して透過性を示す材料で形成される。
【0100】
〈4〉 各実施形態において上述したディスプレイ1が備える構成、材料及び製造工程は、あくまで一例であり、本発明は、上述された各構成、図示された各工程に限定されない。
【符号の説明】
【0101】
1 : ディスプレイ
10 : 発光部
11 : データライン
12 : 電流供給ライン
12c : コンタクトホール
13 : ゲートライン
14 : 補助ライン
14c : コンタクトホール
15a : ソースドライバ
15b : 電流供給部
15c : ゲートドライバ
20 : 縦型有機発光トランジスタ
20a : 有機半導体層
20c : 有機EL層
20d : ドレイン電極層
20g : ゲート電極層
20h : ゲート絶縁膜層
20s : ソース電極層
21 : 薄膜トランジスタ
21a : 酸化物半導体層
21c : コンタクトホール
21d : ドレイン電極層
21g : ゲート電極層
21s : ソース電極層
23 : コンデンサ
24 : バンク層
24a : 開口部
30 : 基板
31 : 表面層
80 : カラーフィルタ層
80a : 開口部
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図5C
図5D
図5E
図5F
図5G
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B