(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】高靭性高圧相窒化ホウ素基固結体(焼結体)及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 35/5831 20060101AFI20240131BHJP
C04B 35/5833 20060101ALI20240131BHJP
B23B 27/14 20060101ALN20240131BHJP
B23B 27/20 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
C04B35/5831
C04B35/5833
B23B27/14 B
B23B27/20
(21)【出願番号】P 2020027059
(22)【出願日】2020-02-20
【審査請求日】2022-10-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000147811
【氏名又は名称】トーメイダイヤ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】520060818
【氏名又は名称】荒木 正任
(72)【発明者】
【氏名】荒木 正任
(72)【発明者】
【氏名】細見 暁
(72)【発明者】
【氏名】石塚 良彰
(72)【発明者】
【氏名】石塚 博
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-322454(JP,A)
【文献】特開昭63-210072(JP,A)
【文献】特開昭62-052183(JP,A)
【文献】特開平02-199069(JP,A)
【文献】特開平02-252660(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/58-35/599
B23B 27/14-27/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1) 質量比にて全体の30乃至90%の高圧相窒化ホウ素粒子と、残部がホウ化物及び/又は窒化物を形成し得る結合材形成金属の粉末との混合粉末からなる出発材料を爆縮加工容器に封入し、
(2) 上記容器を衝撃超高圧に供して出発材料全体を理論密度の90%以上の密度とし、
(3) 次いで加熱温度に保持して熱処理する
ことにより、衝撃加圧によって新たに生じた表面を有する粒子を含む高圧相窒化ホウ素粒子を相互に、熱処理においてその場で生成した金属窒化物及び/又は金属ホウ化物を介して結合一体化する、高靭性の高圧相窒化ホウ素固結体の製造方法。
【請求項2】
前記出発材料がさらに、予め形成された結合材形成金属種のホウ化物、窒化物、炭化物、酸化物から選ばれる一種類以上を含有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記結合材形成金属種がAl、Si、Ti、Zr、Hfから選ばれる一種類以上を含む、請求項
2記載の方法。
【請求項4】
前記衝撃超高圧が1GPa以上である、請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記爆縮加工容器が軸方向に延伸した筒状であり、出発材料は該容器の外周に沿って配置した爆薬の爆轟(爆発)によって半径方向及び軸方向に加圧される、請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記爆縮加工容器の軸に垂直な断面が円形又は多角形である、請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
出発材料を爆縮加工容器内に収納(装填)して対向する一対の平板間に挟装乃至封入し、該平板の一方または両方の背面で爆薬を爆発させることによって出発材料を衝撃圧縮する、請求項
1に記載の高圧相窒化ホウ素焼結体の製造方法。
【請求項8】
出発材料を複数個の爆縮加工容器内に収納(装填)して、対向する一対の平板間に積層挟装し、平板の背面で爆薬を爆発させて出発材料を衝撃圧縮する、請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記爆縮加工容器の軸上に耐圧性の板状体を配置し、爆薬の爆轟(爆発)によって該板状体を軸方向に高速で飛翔移動させて出発材料を加圧する、請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
前記出発材料が(粉末の)成型体であり、該成型体の軸方向に垂直な断面が軸に沿って変化している、請求項
1に記載の方法。
【請求項11】
前記加熱温度が800℃以上1800℃以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項12】
前記加熱温度が1000℃以上1500℃以下である、請求項
1に記載の方法。
【請求項13】
前記出発材料を成型された支持材原料と隣接して容器内に配置し、爆薬爆発による衝撃負荷によって両者を接合する、請求項
1に記載の方法。
【請求項14】
前記支持材原料が超硬合金組成の混合粉末成型体である、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、cBN(立方晶型窒化ホウ素)またはwBN(ウルツ鉱型窒化ホウ素)或いはその両者を含む焼結体とその製造法に関する。
【背景技術】
【0002】
高圧相の窒化ホウ素(立方晶型窒化ホウ素(cBN)ならびにウルツ鉱型窒化ホウ素(wBN))は、ダイヤモンドに次ぐ硬さを有し、赤熱状態の高温でも安定であり、特にダイヤモンドとは異なり、高温においても鉄との反応性がないことから、高硬度の鋼材を高能率で、切削・旋削できる切削工具材料として広く用いられている。
【0003】
cBNは低圧相の窒化ホウ素(hBN)を出発原料とし、プレスを用いた静的高圧・高温合成方法によって製造されており、wBNはhBNに爆薬を用いた衝撃圧力と、その際に生じる高温とを同時に付加する動的高圧合成方法によって製造されている。得られた高圧相BNはいずれも粉末状ないし粒状であって、切削工具材料として用いるためには、粉末状ないし粒状の高圧相BNを焼き固めた固結体(焼結体)を得る工程を必要とする。
【0004】
高圧相BNを焼き固める方法は公知であって、例えばcBNを遷移金属の炭化物や窒化物の結合材で固めた焼結体(特開昭54‐046211号)、wBNを遷移金属の炭化物や窒化物の結合材で固めた焼結体(特開昭54‐066909号)、cBNとwBNとの混合物を金属、セラミックスと共に固めた焼結体(特開昭59-064737号)などが知られている。
【0005】
これらはいずれも粉状ないし粒状の高圧相BNを、結合材と共にカプセルへ充填し、低圧相のhBNから高圧相のcBNを得る際に用いられるのと同様の高圧・高温装置内に収容し、超高圧-高温を付加する、静的高圧・高温処理によって一体化した焼結体を得る操作によって製造されている。
【0006】
従って焼結原料の高圧相BNに、焼結に必要な1000℃を超える高温と、その温度において高圧相BNが熱力学的に安定相として存在しうる4GPa以上の高圧力とを一定時間同時に加えることが要求される高圧・高温装置は、処理容積に制限があり、被処理焼結材料の寸法、数量が限られることから、生産性の向上が困難である。
【0007】
加えて焼結に用いられる高圧・高温装置は、耐久力の限界に近い条件で繰り返し高い圧力と温度とが付加されることから寿命が短く、高価な装置の短寿命が製品コストを高める要因の一つとなっている。
【0008】
高圧・高温装置を用いる静的手法に固有の上記諸問題、特に処理サイズの制限、製造装置の短寿命に伴うコストアップを回避する手法として、爆発衝撃或いは衝撃的加圧を用いる動的高圧・高温処理方法による焼結体の製造が試みられてきた。しかし高い衝撃圧力による出発材料の混合粉末の緻密化は達成されるものの、粉末同士を結合させて一体化した焼結体を得ることは出来なかった。
【0009】
この理由としては、爆発衝撃を付加する動的加圧方式における、有効加圧付加時間がマイクロ秒のごく短時間であり、断熱圧縮によって一瞬温度も上昇するが、圧力の低下と共に温度も低下することから、溶融や拡散による粉体粒子の接合には至らなかったと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開昭54‐046211号公報
【文献】特開昭54‐066909号公報
【文献】特開昭59‐064737号公報
【非特許文献】
【0011】
【文献】R. G. McQueen 他 (1970) "The equation of state of solids from shock wave studies" in High-Velocity Impact Phenomena (ed. R. Kinslow) Academic Press、 New York、 pp. 293-300.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、従来の静的及び動的手法に基づく高圧・高温工程に伴う上記の各問題、特に製品サイズについての制限を排除し、あらゆるサイズ・形状の高圧相BN焼結体の製造を可能とする、画期的な手法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明においては、焼結体の製造工程を前段と後段とに分割し、前段工程において動的加圧方式による出発材料としての混合粉末の緻密化を行い、後段工程で、前段で緻密化された混合粉末の加熱処理によって混合粉末間の接合を実施する。このように加圧処理と加熱処理とを別工程で実施することによって、高圧相BN焼結体の大型品の製作、大量処理を可能とし、高価な静的高圧・高温装置が不要となることによるコストダウンも含めて、低価格の高圧相BN焼結体の供給を可能にすることとした。
【0014】
本発明品は、衝撃超高圧により出発材料が理論密度の90%以上に圧縮され、さらに加熱処理が施された固結体であって、30乃至90質量%の高圧相(高密度相)窒化ホウ素粒子を含有する。該窒化ホウ素粒子は、実質的に窒化ホウ素の構成成分である窒素及びホウ素と、出発材料中に含有された結合材形成金属との反応によって形成される、金属窒化物及び金属ホウ化物を介して結合一体化され、高靭性高圧相窒化ホウ素基固結体となる。
【0015】
前記固結体は、以下の方法により達成される。即ち、
(1) 高圧相窒化ホウ素粒子が質量比にて全体の30乃至90%、残部がホウ化物及び/又は窒化物を形成し得る結合材形成金属の粉末である出発材料を爆縮加工容器に封入し、
(2) 上記容器を衝撃超高圧に供して全体の理論密度の90%以上の密度とし、
(3) 次いで加熱温度に保持して熱処理する
ことにより、高圧相窒化ホウ素粒子表面と、衝撃加圧によって新たに生じた粒子表面とを、熱処理においてその場で生成した金属窒化物及び/又は金属ホウ化物を介して結合一体化する。
【発明の効果】
【0016】
即ち本発明においては、1GPa以上の爆発衝撃或いは衝撃的加圧を出発材料の混合粉末に加えて高密度体とし、これを800℃から1800℃、好ましくは1000℃から1500℃の温度に加熱維持する。この操作によって出発材料中の高圧相BN粉末に添加混合されているAl、Si、ならびに周期表4a、5a、6a族金属から選ばれる一種類以上の結合材形成金属、および/または予め形成された結合材形成金属種のホウ化物、窒化物、炭化物、酸化物のセラミックスから選ばれる一種類以上、特にAl、Si、Ti、Zr、Hfから選ばれる一種類以上の金属等の高圧相BN粉末粒子間への拡散、濡れを促進し、高圧相BN粉末粒子との化学結合、融液相の出現による粒子の再配列等により、緻密一体化した焼結体が得られる。
【0017】
本発明において、高圧相BNと金属等、或いは金属等同士の結合機構は、高圧相BN粉末粒子間への固相または液相金属の拡散、濡れによって生じた化合物を介した接合と考えられる。また、出発材料の混合粉末に爆発衝撃を加えるため、必然的に高硬度脆性材料である高圧相BN等に亀裂が入るが、加熱によって金属等が亀裂の間隙に入り込み、接合して亀裂を埋めるため、本来の高圧相BN等の表面積より広い面積で高圧相BN粒子等を接合することとなり、高い強度が得られる。
【0018】
また、高圧相BNは高硬度である反面、衝撃によって破砕され易いという脆い性質があるが、硬度は高圧相BNより低いものの、高い靱性を有する窒化物及び/またはホウ化物によって結合されるため、圧縮後の加熱処理によって得られた高圧相BN焼結体は高圧相BNのみからなる焼結体よりも高い靱性を有している。
【0019】
出発材料中に添加される予め形成された結合材形成金属種のホウ化物、窒化物、炭化物、酸化物等のセラミックスは、高圧相BN粉末粒子との直接結合は期待できないものの、結合相の物性改善、特に靭性付与への寄与という効果が期待できる。
【0020】
出発材料の緻密化を達成するために加えるべき爆発衝撃或いは衝撃的加圧を1GPa以上と規定する理由は、経験的に1GPa未満では必要な密度まで圧縮することができないためである。
【0021】
爆薬によって生じる爆発圧力は数式1)から算出される。
P= ρ0DUp・・・・・・・・・・ 1)
ここで、Pは爆発圧力、ρ0は充填時における爆薬の密度、Dは爆発速度、Upは爆発生成物の流速である。
【0022】
Up = D/4 ・・・・・・・・・・・ 2)
で近似できることが知られているので、数式1)は次式に変形することができる。
P= ρ0D2/4 ・・・・・・・・・・ 3)
【0023】
高速で衝突する金属体が金属容器に負荷する圧力は、金属体と、爆縮加工容器を構成する金属材が等しい場合、次式から求められる。
P= ρ0UsUp ・・・・・・・・・・ 4)
Up = Ufs/2 ・・・・・・・・・・ 5)
ここでUfsは衝突速度である。
【0024】
衝突速度Ufsの測定は比較的容易であるが、衝撃波速度Usの測定は困難である。そこで、例えば金属容器と衝突する金属体の材質が等しく鋼である場合、UsとUpとの関係は知られていて、
Us = 3.574 + 1.920Up - 0.068Up
2 ・・・・・・・・・・ 6)
上記においてUsとUpとの単位はkm/sである。
【0025】
金属容器と金属体の材質が鋼以外であったり、異なる材質のものが衝突する場合に発生する圧力の計算方法は、非特許技術文献1によって求めることができる。
【0026】
本発明によってcBN等と金属等からなる粉体の混合体(以後混合体)を衝撃によって圧縮し、構成材料の密度を集計した値の90%を超える密度にまで圧縮する必要がある理由は、それ以下の密度では、熱処理によってcBN等と金属等を一体に接合しても、cBN等を含む高硬度焼結体としての必要な硬度と強度とが得られないためである。
【0027】
圧縮された状態での密度の計算方法としては、構成する材料の理論密度を集計した密度と圧縮されて一体となった材料の密度との比を用いる。現実には、セラミック材料の理論密度と現実の密度とは、そのセラミックを構成する実際の原子比率が理論原子比率から多少異なるため僅かに異なるが、実用上の問題はないため、計算には各材料の理論密度を用いる。
【0028】
本発明の固結体は、目的・用途に応じて様々な形状や構成を取り得、それに応じて爆発衝撃圧縮の適用においても多くの態様が可能である。以下にその中のいくつかの例を、添付図面を参照して詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】本発明の第一の実施例において、円筒形金属容器に収めた出発材料の混合粉末を爆発衝撃圧縮加工するための、構成全体の概略及び典型的部分の詳細を示す断面図である。
【
図2】
図1の構成を収容して爆発衝撃圧縮加工を実施するための爆発構成の概略を示す断面図である。
【
図3】本発明の第二の実施例において、立体形状の焼結体物品を同時に多量製造するための構成例を示す、下記
図4のB-B面における縦断面図である。
【
図4】上記
図3のA-A面における平面断面図である。
【
図5】本発明の第三の実施例において、別の立体形状の焼結体品(レースセンター)を同時に多量製造するための構成例を示す縦断面図である。
【
図6】本発明の第四の実施例において、従来の静的高圧装置では製造不可能な大面積の板状焼結体材を製造するための構成例を示す、下記
図7のB-B面における縦断面図である。
【
図7】上記
図6のA-A面における平面断面図である。
【
図8】本発明の第五の実施例において、爆発圧力によって飛翔する金属板の衝撃によって出発材料の混合粉末等を加圧するための構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1、2及び
図3、4はそれぞれ、出発材料の高圧相BN含有混合粉末成型体11、33と、この高圧相BN含有焼結層を補強する支持材原料としての粉末成型体12、34とを組み合わせて複合成型体とし、複数の複合成型体を並列して円筒軸方向に加圧するための配置図(
図1、2)、または、全体を衝撃加圧用の対向する金属平板に重ねて型枠に装填し(
図3、4)、爆薬18、45を配置した状態を示している。
【0031】
図1及び2において、それぞれの粉末成型体11、12は目的に応じて多様に組成されて円筒形の金属容器(爆縮加工容器)16に収容され、全体はさらに爆薬容器17内に装填されて周囲に爆薬18を充填配置される。補強支持材を形成するための混合粉末としては例えばWC-Co系超硬合金、その他各種のサーメット原料の粉末を用いることが可能である。なお
図1及び
図2とも、容器の円筒軸に沿って切断した断面図として示されている。
【0032】
両成型体11、12は部分詳細図に示すように、重ねて一組の複合成型体として金属製の爆縮加工容器16に収容、同時に圧縮・焼結の操作が加えられ、強固に接合した一体品(複合材)として取り出される。複合成型体は単独でも圧縮・焼結処理可能であるが、特に
図1に示すように複数個を爆縮加工容器内に並置して同時に処理することによって、多量生産を図ることが可能である。
【0033】
なお複合成型体11、12を金属容器に収容する際、複合成型体と容器16壁との間、また複数個の複合成型体を同時に処理する場合には隣接複合成型体間にも、相互の接合を防止する目的で、それぞれ板状または層状の分離材20、21を配置するのが効果的である。分離材の材質としてはグラファイト、六方晶系窒化ホウ素、セラミック粉末など、本発明の操作において焼結しない耐熱材料を用いることができる。
【0034】
金属容器16の両端には金属製の栓22、23を配置して内容物を密封する。これらの栓の内側にはさらに、衝撃加圧の際に金属栓材による内容物への影響を抑制するために緩衝材24、25が配置されるが、これは上記分離材20、21と同じ材質で構成することができる。
【0035】
複合成型体11、12を収容した金属容器16はさらに爆縮加工のために、金属、プラスチック、紙などで形成された爆薬容器17に装填され、周囲には爆薬18が充填される。爆薬は所要の加圧力に応じて、ダイナマイト、ANFO(アンホ=硝安油剤爆薬)、化合爆薬など、爆薬の全ての種類及びグレードが適宜選択使用される。爆薬容器17には起爆用の電気雷管26が、また爆縮加工容器内を排気するための真空引きパイプ27が連結されている。
【0036】
図3及び
図4には、本発明による別の態様として、大面積平板状の金属製型枠31を用い、型枠内に多数設けた円筒状の出発材料収容孔32に、上記のように出発材料33及び支持材原料の粉末成型体34を重ねた複合成型体として充填保持し、立体形状の焼結体を多量同時に製造するための構成例を、それぞれ縦断面図及び平面断面図として示す。
【0037】
各複合成型体はその上下両面に出発材料と同径の加圧用金属円板35、36を分離材37、38を介して積層し、型枠31の上下全面を、金属同士の爆着防止材を兼ねた緩衝材シ-ト(例えばグラファイトシート製)39、40で覆い、加圧板41、42で挟んで爆縮構成とする。全体を気密性のプラスチック袋43中に収め、真空引きパイプ44を介して袋43内を十分に排気してから、パイプ44を圧し潰して真空密封する。これを爆薬45で包み込み、起爆用の電気雷管46を取り付ける。
【0038】
図5は立体形状の焼結体工具例としてレースセンターを製造するための一構成例を示す。円筒形の爆縮加工容器51内に、レースセンター素材として、超硬合金混合粉末からなる円筒形部分52、先端の円錐台形部分53に配置された高圧相BN含有混合粉末からなる複合成型体54が、グラファイト等製の成型型55に保持されて円筒容器軸心に6個直列配置されている。容器両端はアルミナ等の剛性緩衝材56、57を介して金属栓58、59で密封されている。
【0039】
容器51を爆薬容器(図示せず)に収納して円筒軸方向に爆縮する方式は
図1の場合と同じである。なお
図1、2及び
図5において、爆縮容器は円筒形の構成を示したが、処理される被圧縮物に応じて四角形、六角形、非対称形など任意の形状とすることができる。
【0040】
図6及び
図7は大面積の板状焼結体の製造に適用可能な構成例を示す図であって、爆縮方式及び組み立てはそれぞれ、
図3及び
図4の場合と類似である。
金属製型枠61の厚み方向に切りとった矩形の空間内に、平板状の出発材料62及び支持材原料の粉末成型体63を重ねて充填する。さらに上記と同様に、その上下両面に分離材64、65を介して出発材料と同一平面寸法の加圧用の金属板66、67を積層し、金属製の型枠61上下両面を爆着防止兼緩衝材(例えばグラファイトシート製)68、69で覆い、外側に衝撃加圧板70、71を配置する。
【0041】
この構成を複数段(図では二段)積み重ね、全体を気密性のプラスチック袋72中に収め、真空引きパイプ73を介して袋72内を十分に排気してから、パイプ73を圧し潰して真空密封する。これを爆薬74で挟み、起爆用の電気雷管75を取り付ける。
【0042】
図8は、紙筒等の柔軟な材質製容器81に収納された爆薬82の爆発によって、爆薬の下面に置いた金属板(飛翔板)83を高速で飛翔させ、出発材料の混合粉末成型体84を収納した金属製受台85の金属製蓋86に衝突させて衝撃圧力を負荷させる。爆薬82及び飛翔板83は紙等低強度材の筒体87によって支持されており、電気雷管88によって起爆される。
以下実施例によって本発明の実施態様を説明する。
【実施例1】
【0043】
図1に略示した円筒衝撃加圧方式を用いて、円形の高圧相BN焼結体が超硬合金支持材上に接合された、切削工具素材の多量製作を行った。
出発材料の混合粉末として、平均粒径5μmのcBN40%(質量比。以下同様)、粒径1μm以下のwBN5%、粒径1~2μmの炭化チタンTiC1-2(以後TiC-日本新金属(株)製)28%、平均粒径2μmの窒化チタンTiN-02(以後TiN-日本新金属(株)製)18%、粒径44μm以下のアルミニウム粉スーパーファインNo.22000(以後Al-大和金属粉工業(株)製)9%を秤取し、アセトンを用いた湿式ボールミルで2時間混合した。アセトンを分離してから真空中で600℃、2時間熱処理して酸素を始めとする吸着ガスの除去を行った。
【0044】
熱処理後の混合粉は弱く接合した塊体となっていたため、窒素雰囲気中で粉砕してから、同じく窒素雰囲気中でプレス成型し、外径18.9mm、厚さ1.0mmの混合粉末の成型体、円板状ペレットとした。成型したペレットの質量は平均0.9gであった。この値は構成材料の密度から算出したペレットの質量1.169gに対して理論密度の77%に相当する。
【0045】
別に支持材用混合粉として、平均粒径2μmの炭化タングステン粉末WC-25(日本新金属(株)製)95%と、粒径1.0~1.5μmのコバルト粉末(Freeport Cobalt Oy製)5%とを湿式ボールミルで2時間混合し、乾燥後プレス成型して外径18.9mm、厚さ3.0mmの支持材粉末成型体、ペレットを製作した。
【0046】
上記の混合粉末ペレットと支持材用ペレットとを重ね合わせた切削工具出発材料を36組用意し、外径25.0mm、内径21.0mm、長さ250mmの衝撃加圧用の鋼管(爆縮加工用鋼管)内へ装填した。各出発材料間の隔離には、緩衝材として厚さ1mmのフレキシブルグラファイトシートを用い、出発材料と爆縮加工用鋼管との隔離にもグラファイトシートを用いた。
【0047】
出発材料の充填を終えた爆縮加工用鋼管の両端には、粒径15μmのアルミナ粉末を緩衝材として厚さ10mmずつ充填し、外径21.1mm、厚さ25mmの鋼栓を圧入して密封した。但し一方の鋼栓を貫通して真空引き用の外径10mm、肉厚1mmの銅製の真空引きパイプをろう付けし、爆縮加工用鋼管内を十分に真空引きした後、真空引きパイプを圧し潰して切削工具出発材料を真空封入した。
【0048】
この爆縮加工用鋼管を長さ300mm、外径101.6mm、内径93.2mmの鋼管製爆薬容器の軸中心に合わせて、真空引きパイプ側の鋼栓端部を爆薬容器の端末に揃えて固定し、爆縮加工用鋼管と、爆薬容器との間に1945gの粉状爆薬を充填した。爆薬の充填密度は1.04g/cm3であった。
【0049】
爆薬の末端に電気雷管(26)を設置して起爆させたところ、爆薬は爆発速度2410m/sで爆発した。この数値を上記数式3)に適用すると、衝撃加圧力の概算値は1.51GPaと見積もられた。
【0050】
爆発処理後に回収した爆縮加工用鋼管の鋼栓部分以外の外径は、平均して21mmに収縮していた。内容物を含んだままの爆縮加工用鋼管を、加熱炉で1300℃に加熱し、2時間保持してから1時間かけて徐冷し、旋盤を用いた旋削加工によって内容物を取り出した。
【0051】
高圧相BNを含有した混合粉末ペレット(11)とWC-Co支持材用ペレット(12)とは冶金的に接合されており、共に強固な焼結体と見受けられた。表面を研磨した高圧相BN含有焼結体部のビッカース硬度は32.3GPaであった。更に、超硬合金層を研削除去して、高圧相BN含有焼結体のみからなる層とし、アルキメデス法によって密度を測定したところ、4.08g/cm3で、理論密度の4.17g/cm3に対して97.8%であった。
【0052】
X線回折による高圧相BN含有焼結層の同定から、cBN、wBN、TiC、TiN、窒化アルミニウム(以後AlN)、二硼化チタン(以後TiB2)に加えてアルミニウム硼化物AlB2も検出され、熱処理によって合成された化合物によって、各構成粒子が強固に接合されたと認められた。
【0053】
前記の測定密度の理論密度に対する比率は、理論密度として用いた値が処理前の原材料状態での値であり、処理後は化学反応による組成変化があるので、必ずしも適切な値ではない。しかし事実上それぞれの量を知ることができないので、やむを得ず、処理前の組成から求めたものである。
【0054】
回収した高圧相BN焼結体が超硬合金支持材上に接合された、円形の切削工具素材の両面を研削加工によって平滑に仕上げ、厚さ2.5mmに調整したものから、頂角が90゜、二辺が4mmの三角形のチップを切り出し、台座の一角に銀ロウ付けしたSNGN120404形状のスローアウェイチップとして、切削試験を実施した。被削材としてHRC61に熱処理したSKD61を用意し、切り込み0.5mm、送り0.1mm/rev、周速182m/minの条件で30分間切削した場合のフランク摩耗量は0.23mmであった。
【0055】
比較のために同様な組成を有する市販のcBN焼結体を同形状のスローアウェイチップに加工し、同条件で切削試験を実施したところ、同時間の切削によって生じたフランク摩耗量は0.26mmであり、本発明による焼結体の性能は、従来の静的高圧・高温装置で焼結したcBN焼結体と比較して遜色ないことが立証された。
【実施例2】
【0056】
図3及び4に示す平面衝撃加圧方式を用いて切削工具素材の製作を行った。混合粉末及び支持材用の混合粉末成型体(ペレット)はそれぞれ実施例1で用意したものと同材質を用い、直径18.9mmの円板状に成型した。混合粉末成型体はさらに厚さ1.0mm、理論密度比72%にプレス成型し、これを同径で厚さ4.0mm、理論密度比73%の支持材用超硬合金成型体と組み合わせ、図に示すような構成の複合成型体を多数作製した。
【0057】
金属製型枠に貫通孔を複数個設け、複合成型体をこれらの孔内に装填し、その上下に加圧用の軟鋼製プラグを配置した。さらにその外方に、本発明による爆着作業条件下で焼結しない材料からなる分離材料として厚さ0.5mmのグラファイトシートを配置して、処理された複合成型体が加圧用の金属板と接合するのを防止し、処理時の複合成型体への衝撃を緩和した。
【0058】
上記各要素は一緒に気密なプラスチック製袋に入れ、周囲に爆薬を配置した。プラスチック袋には内部を真空引きするための排気管を接続した。
【0059】
金属製型枠は縦224mm、横116mm、厚さ8mmの四角形鋼板製で、直径20mmの貫通孔を4列×8行、間隔7mmで設けた。各貫通孔内壁に厚さ0.5mmのグラファイトシートを巻き、焼結材料の混合粉末ペレットと支持材用ペレットとを重ね合わせて装填し、上下に厚さ0.5mmのグラファイトシートを介して厚さ2mm、同直径の軟鋼製プラグで塞いだ。出発材料等を装入した金属製型枠の上下を同平面寸法で厚さ1mmのグラファイトシートの分離材で覆い、更にその上下面に同平面寸法で厚さ1mmの衝撃加圧用軟鋼板を置き、全体を気密プラスチック製袋に封入し、真空引きパイプを介して真空引きをした。
【0060】
上記組み合わせ体の上下面を厚さ10mmの膠質ダイナマイトで覆い、一端から電気雷管で起爆した。爆薬は3200m/sで爆発し、爆発前の密度が1.15g/cm3であったので、数値を数式3に当てはめると、爆発圧力の概算値は2.94GPaに相当した。爆発処理後の上記組み合わせ体を、処理温度を1320℃としたことと、衝撃処理後の材料が気密状態でなかったため真空炉中で処理したこと以外は、実施例1と同様の熱処理を行い、超硬合金層の支持材と接合した工具素材の焼結体を得た。
【0061】
得られた焼結体の高圧相BN層の研磨面のビッカース硬度は31.6GPaであった。次いで超硬合金層を研削除去して、cBN等のみからなる層とし、アルキメデス法によって密度を測定したところ、3.88g/cm3で、理論密度の4.17g/cm3に対して93.0%であった。
【0062】
実施例1で製作したのと同様な切削工具を調製し、同様な切削試験を実施したところ、30分間切削後のフランク摩耗は0.29mmで、十分に実用性があることがわかった。また、焼結後の組成は、実施例1と同様であることが認められた。
【実施例3】
【0063】
図5に示すレースセンター部材をcBN含有焼結体で製作した。出発材料を収容するグラファイト製の型は外径25.5mm長さ30mmであつて、型内のサイズは円筒部の直径20mm、長さ13mm、円錐台部は長さ14mm、先端平坦部の直径6mm、傾斜角度60゜であって、負荷が加わる円錐台部はcBN系材料、支持材の円筒部はWC系材料とした。
【0064】
cBN系材料の混合粉末(53)は質量%において、平均粒径10μmのcBN:50、平均粒径3μmのcBN:8、平均粒径5μmのTiB2:15、平均粒径3μmのTiC0.7:13、粒径44μm以下のAl:9、粒径10μm以下のSi:5を湿式ボールミルで2時間混合し、600℃2時間の真空乾燥で調製した。支持材の円筒部材料の混合粉末(52)は、WC粉95質量%と、Co粉5質量%とを湿式ボールミルで2時間混合し、600℃、2時間の真空乾燥で調製した。
【0065】
グラファイト製の型を補強金型で保護しながら、型の先端円錐台部にcBN系材料の混合粉末5.4gを突き固めて充填し、次いでWC系材料45gを充填し、理論密度の71~72%まで加圧成型した。
【0066】
爆縮加工用鋼管は外径30.0mm、内径26.0mm、長さ250mmであって、成型品6ケを鋼管の軸心に直列に配置した。両端に9mmのアルミナ層を挟んで鋼栓で封じ、真空引き銅管経由で排気し、鋼管内を真空密封した。なおアルミナ層に接する円筒部の底については、0.5mmのグラファイトシートを介して厚さ1.6mmの軟鋼板で仕切った。
【0067】
この爆縮加工用鋼管を紙筒に収容した外径120mm、長さ330mmの爆薬筒の軸心に設置した。爆薬は粉状で、一端から起爆したところ、爆発速度2340m/sで爆発した。充填密度は0.92g/cm3であって、数値を数式3)に当てはめると、爆発圧力の概算値は1.26GPaに相当した。
【0068】
爆発処理後に回収した鋼栓部分を除く金属管の外径は、平均で25mmに収縮していた。内容物を含んだままの金属管を、加熱炉で1350℃に加熱し、2時間保持してから1時間かけて徐冷し、旋盤旋削によって爆縮加工用鋼管を取り除いた。
【0069】
取出した焼結品は直径が約15mm、全長約26mm、対理論密度約96%の緻密品であって、外周部をダイヤモンド砥石によって軽く修正することで実用に供することができた。
【実施例4】
【0070】
図6に示す形状の構成で平板状の焼結体を製作した。混合粉末成型体の組成は、質量%において、cBN:65、wBN:10、Al:5、Hf:10、Ti:5、SiC:5であって、いずれも平均粒径10μm以下の粉末を用いた。これを平均厚さ0.9mm、幅39mm、長さ79mmにプレス成型し、充填密度が理論密度に対して75%の混合粉末成型体とした。混合粉末成型体に重ねた支持材の粉末成型体は95.5%WC-4.5%Coの組成で、厚さを4.5mmとし、充填密度は対理論密度70%であった。
【0071】
衝撃加圧用の金属製型枠は、幅55mm、長さ90mm、厚さ10mmであって、内部に設けた幅40mm、長さ80mmの切り取り部分に、上記の混合粉末成型体とWC-Co粉末成型体とを重ねて収納し、上下に同寸法で厚さ0.5mmのグラファイトシートを介して、当て板として2mmの軟鋼板を嵌め込んだ。この当て板の上下に厚さ3mmで型枠と同寸法のグラファイトシート(68)を置き、厚さ3.2mmの衝撃加圧用軟鋼板で挟んだ。金属製型枠と混合粉末成型体との間には、厚さ0.5mmのグラファイトシートを配置した。
【0072】
上記のように構成した組み立て体を2組用意して積み重ね、全体をプラスチック袋に収容し、真空引き用パイプ(73)経由で排気し、袋内を真空密封した。
【0073】
以上の構成の上下面に厚さ25mmの膠質ダイナマイトを設置し、一端から電気雷管により起爆した。その際の爆発速度は4100m/秒であり、爆薬の密度は1.38g/cm3、発生圧力は数式3)から5.8GPaと推定された。高圧相BN含有層とWC-Co層とは、それぞれ型枠の中に収まって、上下面を軟鋼板に挟まれた状態で回収された。
【0074】
爆縮工程からの上記回収物はこの状態で真空炉中1380℃に3時間加熱し、放冷して100℃以下で取り出した。高圧相BN含有層とWC-Co層とを両面から挟んでいる軟鋼板を研削によって除去したところ、両層は強固に接合されており、切断面観察から、両層間に若干の波打ちが認められた。回収した接合板は研削による平坦化の結果、高圧相BN含有層の厚さが0.6~0.7mm、超硬合金層が3.0~3.5mmであった。一方平面寸法は周辺部の欠落箇所を除去した結果、幅41mm、長さ82mmであった。
【0075】
この接合板からワイヤーカットにより、所望の形状、サイズの切削チップ素材を切り出すことができた。
【0076】
なお、高圧相BN含有層のマイクロビッカース硬度は、中央部と周辺部との10点ずつの測定の結果36~37GPaの範囲に収まり、実用上問題ないことが確認された。
また、X線回折による同定から、cBN、wBN、AlN、HfN、TiB2、TiN、AlB2、SiCの存在が認められた。
【0077】
更に、段落0054の手法によって実施例1と同様の三角形のチップを切り出し、同様な切削試験を実施したところ、同様な結果が得られ、本発明による方法で、静的高圧装置によって焼結した場合と同様な焼結体が作れることがわかった。
【実施例5】
【0078】
金属製の飛翔体を用いる
図8の構成により、保持された混合粉末成型体を衝撃加圧処理し、焼結体を製造した。
図中粉状爆薬の充填密度は1.08g/cm
3、電気雷管経由で起爆した。出発材料(84)の混合粉末は、質量比において平均粒径5μmのcBN:32%、平均粒径6μmのHfC:29%、平均粒径1.5μmのZrN:29%、平均粒径13μmのTi:6%、平均粒径0.5μmのSi:4%の組成とした。粉状爆薬(82)は14gを、内径20mm、高さ40mmの紙製円筒に詰めた。直径30mm、高さ13mmの鋼製受台の中央に、深さ8mm、直径20mmの成型体収容窪みを設け、内壁および底部に厚さ0.5mmのグラファイトシートを介して、内部に直径18.9mm、厚さ6mmの混合粉末の成型ペレットを充填した。紙製円筒容器の底面に、また成型体収容窪みの上面に、厚さ2mm、直径20mmの銅円板を配置して覆った。鋼製受台と爆薬円筒との間に紙製円筒を配置して高さ10mmの間隔を取って支え、爆発時に銅板が飛翔する距離を確保した。
【0079】
上記構成において電気雷管(88)によって粉状爆薬(82)を爆発させ、銅円板(83)を秒速420m/sでペレット(84)を覆っている銅円板(86)に衝突させた。衝突によって発生した圧力は、数式4)、1)及び6)によって求めた結果、7.98GPaと見積もられた。銅円板(86)で覆われた部分は、衝突圧力によって鋼製受台の窪み内部に沈み込んでいた。
【0080】
その状態のまま、窒素雰囲気中で1350℃に加熱し、2時間半保持してから炉中で徐冷し、取り出して旋削によって焼結した混合体を取り出した。混合体の外周から約2mm程度は圧縮度が低かったため、研削によって除去し、上下面も平滑に仕上げて、直径16mm、厚さ4mmの強固な焼結体を得た。
【0081】
焼結体のビッカース硬度は、8点測定の平均値として30GPaであった。X線回折により、cBN、HfC、ZrN、TiB2、TiN、Si3N4の回折線が認められた。
【0082】
実施例1と同様の切削工具を製作し、HRC48に調質したSNCM439鋼を切り込み0.5mm、送り0.1mm/rev、周速189m/minで30分間切削した際のフランク摩耗量は0.24mmであった。
【0083】
対比用として市販の同様組成、同形状のcBNスローアウェイチップを用いて同条件で切削試験を実施したところ、生じたフランク摩耗量は0.23mmであって、本発明による焼結体の性能は、従来の静的高圧装置で焼結したcBN焼結体と比較して遜色ないことが立証された。
【実施例6】
【0084】
表1に示した各種組成の混合物を直径18.9mm、厚さ6mmのペレットに成型し、実施例5と同様の加圧方法によって調製した焼結体の組成と硬度とを示す。いずれの焼結体も、実施例1と同様な方法による切削試験で実用に耐える切削性能を示した。
【0085】
【符号の説明】
【0086】
11 高圧相BN含有混合粉末成型体
12 支持材原料の粉末成型体
16 金属容器/爆縮加工容器
17 爆薬容器
18 爆薬
20 分離材
21 分離材
22 金属製栓
23 金属製栓
24 緩衝材
25 緩衝材
26 起爆用電気雷管
27 真空引きパイプ
31 金属製型枠
32 出発材料収容孔
33 出発材料粉末成型体
34 支持材原料粉末成型体
35 加圧用金属円板
36 加圧用金属円板
37 分離材
38 分離材
39 緩衝材シ-ト
40 緩衝材シ-ト
41 加圧板
42 加圧板
43 プラスチック製袋
44 真空引きパイプ
45 爆薬
46 電気雷管
51 爆縮加工容器
52 円筒形部分
53 円錐台形先端部分
54 複合成型体
55 成型型
56 剛性緩衝材
57 剛性緩衝材
61 金属製型枠
62 平板状出発材料
63 支持材原料の粉末成型体
64 分離材
65 分離材
66 加圧用金属板
67 加圧用金属板
68 爆着防止兼緩衝材
69 爆着防止兼緩衝材
70 衝撃加圧板
71 衝撃加圧板
72 プラスチック袋
73 真空引きパイプ
74 爆薬
75 電気雷管
81 容器
82 爆薬
83 金属板(飛翔板)
84 混合粉末成型体
85 金属製受台
86 金属製蓋
87 筒体
88 電気雷管