(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】軽量耐熱構造体およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
C04B 38/00 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
C04B38/00 303Z
C04B38/00 304B
(21)【出願番号】P 2020022019
(22)【出願日】2020-02-13
【審査請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】津田 統
(72)【発明者】
【氏名】高橋 真一
【審査官】末松 佳記
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-298674(JP,A)
【文献】特開平01-264967(JP,A)
【文献】特開2002-193685(JP,A)
【文献】特開2002-187774(JP,A)
【文献】特開2006-306970(JP,A)
【文献】国際公開第2013/145863(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 38/00-38/10
C04B 35/00-35/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミックス粒子と、樹脂炭化物から成り、前記セラミック
ス粒子は前記樹脂炭化物により結着しており、前記樹脂炭化物の炭化度が0.90以上、0.99以下であり、構造がポーラス体であ
り、
前記セラミックス粒子は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素又は炭化ケイ素である
ことを特徴とする、軽量耐熱構造体。
【請求項2】
前記樹脂炭化物はフェノール樹脂の炭化物であることを特徴とする、請求項1記載の軽量耐熱構造体。
【請求項3】
セラミックス粒子を型に充填する工程と、前記型に充填されたセラミック
ス粒子に、樹脂成分を含む溶液を含浸する工程と、前記
溶液中の溶媒を除去し、前記樹脂成分を硬化させ、中間体を得る工程と、前記中間体を不活性ガス雰囲気内で200℃以上、800℃以下の温度で加熱
し、前記樹脂成分を炭化させて樹脂炭化物とする工程とを有する軽量耐熱構造体の製造方法
であって、
前記樹脂炭化物の炭化度が0.90以上、0.99以下であり、
前記軽量耐熱構造体がポーラス体であり、
前記セラミックス粒子は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素又は炭化ケイ素である、製造方法。
【請求項4】
樹脂成分を含む溶液とセラミック
ス粒子を混合して混合溶液を得る工程と、前記混合溶液を型に充填する工程と、前記混合溶液中の溶媒を除去し、前記樹脂成分を硬化させ、中間体を得る工程と、前記中間体を不活性ガス雰囲気内で200℃以上、800℃以下の温度で加熱
し、前記樹脂成分を炭化させて樹脂炭化物とする工程とを有する軽量耐熱構造体の製造方法
であって、
前記樹脂炭化物の炭化度が0.90以上、0.99以下であり、
前記軽量耐熱構造体がポーラス体であり、
前記セラミックス粒子は、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素又は炭化ケイ素である、製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は軽量耐熱構造体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、耐熱性のある構造体の材料としてセラミックが使用されている。特許文献1には、フィルター用途や通気性が必要な用途のポーラス構造体を作製する方法として、高温処理により焼失する有機材などの三次元構造体に、セラミックスラリーを含浸させた後、所要形状に成形し、高温雰囲気中で焼成することを特徴とするポーラス構造体が提案されている。
また、各種のポーラスセラミックは、以下のような方法で製造されている。
(1)造粒されたセラミック顆粒と、有機物等の顆粒あるいは繊維を混ぜて加圧成形した後、高温で焼成して、有機物等の顆粒あるいは繊維を焼失させてポアを得る。
(2)セラミックの原料粉を用いて、適当な粘度のスラリーを調整する。これに発泡剤を添加し、スラリーを発泡させ、ポアを得た後、乾燥焼成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のポーラス構造体は、一般的なセラミックスよりも更に脆く、わずかな衝撃で欠けが生じ、崩壊する場合があった。このような傾向は、特許文献1の方法で作製されたポーラス構造体においても生じる場合があった。また、従来のポーラス構造体の製造には、1350℃以上の高温熱処理が必要であった。
【0005】
そこで、本発明は、上記のような、問題を解決することを目的とする。すなわち、本発明は欠けや崩壊が生じ難く、比較的低温の熱処理で作製できる、軽量耐熱構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記課題を解決するため鋭意検討し、本発明を完成させた。
本発明は以下の(1)~(5)である。
(1)セラミックス粒子と、樹脂炭化物から成り、前記セラミック粒子は前記樹脂炭化物により結着しており、前記樹脂炭化物の炭化度が0.90以上、0.99以下であり、構造がポーラス体であることを特徴とする、軽量耐熱構造体。
(2)前記樹脂炭化物がフェノール樹脂の炭化物であることを特徴とする、上記(1)に記載の軽量耐熱構造体。
(3)前記セラミックス粒子がアルミナ粒子であることを特徴とする、上記(1)、又は(2)に記載の軽量耐熱構造体。
(4)セラミックス粒子を型に充填する工程と、前記型に充填させたセラミック粒子に、樹脂成分を含む溶液を含浸する工程と、前記溶液中の溶媒を除去し、前記樹脂成分を硬化させ、中間体を得る工程と、前記中間体を不活性ガス雰囲気内で200℃以上、800℃以下の温度にて加熱する工程を有する軽量耐熱構造体の製造方法。
(5)樹脂成分を含む溶液とセラミック粒子を混合して、混合溶液を得る工程と、前記混合溶液を型に充填する工程と、前記溶液中の溶媒を除去し、前記樹脂成分を硬化させ、中間体を得る工程と、前記中間体を不活性ガス雰囲気内で200℃以上、800℃以下の温度で加熱する工程を有する軽量耐熱構造体の製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ポーラスセラミックの有するもろさを改善し、ハンドリング強度が高く、低温の熱処理で作製できるポーラス構造体を有する軽量耐熱構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の一実施形態の軽量耐熱構造体のSEM写真である。
【
図3】
図1の実施形態の軽量耐熱構造体の断面観察写真である。
【
図4】実施例1の軽量耐熱構造体のレーザーラマン分光測定の結果を示すチャートである。
【
図5】実施例2の軽量耐熱構造体のレーザーラマン分光測定の結果を示すチャートである。
【
図6】実施例3の軽量耐熱構造体のレーザーラマン分光測定の結果を示すチャートである。
【
図7】比較例1の軽量耐熱構造体のレーザーラマン分光測定の結果を示すチャートである。
【
図8】炭素粒子のレーザーラマン分光測定の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明する。
本発明の軽量耐熱構造体は、セラミックス粒子と、樹脂炭化物から成り、前記セラミックス粒子は、前記樹脂炭化物により結着しており、前記樹脂炭化物の炭化度が0.90以上、0.99以下であり、構造がポーラス体であることを特徴とする。
【0010】
本発明に係わるセラミック粒子としては、アルミナ、窒化アルミ、窒化ケイ素、炭化ケイ素などが挙げられるが、これらの中でも、汎用性、価格の面からアルミナ粒子が好ましい。
【0011】
セラミック粒子の形状は、球形、異形、繊維形状などが挙げられるが、特に形状に限定されるものではない。しかしながら、軽量耐熱構造体を作製する工程で、欠けや崩壊が生じ難い点から、粒子形状であることが好ましい。なお、軽量耐熱構造体の強度や密度を調整するために、粒子径の異なるセラミック粒子を混合して使用することもできるが、より軽量化を求める場合は、粒子径の揃った粒子を用いることが好ましい。
【0012】
セラミックス粒子の平均粒子径は、特に限定されないが、0.001~5mmであることが好ましく、0.01~1mmであることがより好ましい。
なお、セラミックス粒子の平均粒子径は、例えば、レーザー回折法や動的光散乱法で測定した任意の20個の粒子における垂直断面の断面積を公知の計算方法で算出し、当該断面積と同一面積を有する真円の直径を算出することにより導かれた面積径の相加平均値である。
【0013】
本発明に係わる樹脂炭化物は、硬化させた樹脂成分が炭化したものである。樹脂成分としては、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらの中でも、汎用性、価格の面から、フェノール樹脂が好ましい。
【0014】
樹脂炭化物の炭化度は0.90以上、0.99以下であり、0.92以上、0.99以下であることがより好ましい。すなわち、樹脂炭化物は、樹脂成分が完全に炭化したものではない。また、樹脂炭化物の炭化度が、0.90以上、0.99以下であれば耐熱性が充分に得られ、欠けや崩壊が生じ難いという効果を奏する。
なお、前記炭化度は、1000℃にて加熱した軽量耐熱構造体のCatom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)を求め、この値に対する、各温度で加熱した軽量耐熱構造体のCatom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)の比率を指す。詳細は後述する。
【0015】
ポーラス体の気孔率は、特に限定されないが、15~60%であり、20~50%であることがより好ましい。ポーラス体の気孔率が15~60%であれば、ポーラス体の通液性や通気性が充分に得られるとともに、ポーラス体に欠けや崩壊が生じ難い。
なお、気孔率は、軽量構造体の体積のうち空隙が占める割合を指す。
【0016】
次に、本発明の軽量耐熱構造体の構造について、図を用いて説明する。
図1、
図2、及び
図3は、型に充填したセラミック粒子に、メタノールで希釈したフェノール樹脂溶液を含浸し、メタノールを乾燥により除去し、フェノール樹脂を硬化させた後、窒素雰囲気下で600℃、1時間の条件で加熱して得られた本発明の軽量耐熱構造体の拡大写真である。
【0017】
セラミック粒子1同士は、フェノール樹脂の一部が炭化した樹脂炭化物2で結着されている。結着部はセラミック粒子同士をつなぐように、粒子間接点部分に主に樹脂炭化物が存在している。このような態様をとることで、欠けや崩壊を生じ難い軽量耐熱構造体を得やすい。
【0018】
次に、本発明の軽量耐熱構造体を製造する方法について詳細に説明する。
【0019】
本発明の軽量耐熱構造体を製造する方法は、セラミック粒子を型に充填する工程と、溶媒に溶解した樹脂成分を含む溶液を前記型に充填する工程と、前記溶媒を除去し、前記樹脂を硬化させ、中間体を得る工程と、前記中間体を不活性ガス雰囲気内で200℃以上、800℃以下の温度で加熱する工程とを有する。
【0020】
<セラミック粒子充填工程>
本工程は、準備した耐熱型にセラミック粒子を充填する工程である。セラミック粒子以外に樹脂粒子、樹脂繊維等を充填してもよい。
【0021】
<樹脂成分を含む溶液の充填工程>
本工程は、型に詰めたセラミック粒子に樹脂成分を含む溶液を含浸する工程である。樹脂成分を含む溶液は、樹脂成分(有機物)を溶媒で希釈して得られるものである。なお、有機物含有溶液とセラミック粒子を混合して得られる、セラミック粒子-樹脂成分混合溶液を型に流し込んでも良い。
【0022】
溶媒で希釈される樹脂成分は、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、フラン樹脂、メラミン樹脂などが挙げられるが、これらの中でも、汎用性、価格の面から、フェノール樹脂が好ましい。また、これらを希釈する溶媒は、前記樹脂成分が溶解可能な溶媒であれば、特に限定されるものではない。
【0023】
樹脂成分の溶解濃度は、特に限定されないが、5~20質量%であることが好ましい。樹脂成分の溶解濃度が5~20質量%であれば、セラミック粒子同士を結着するごとができ、欠けや崩壊が生じ難くなるとともに、結着させる樹脂の量が多くなりすぎず、耐熱性において十分な効果を奏する。
【0024】
<溶媒除去、及び樹脂硬化工程>
本工程は、溶媒で希釈した樹脂成分を含む溶液から溶媒を除去し、樹脂成分を硬化させ、中間体を得る工程である。溶媒除去の手段は限定されるものではないが、例えば50~120℃に調整された乾燥器内に0.5~2時間放置し、樹脂成分を含む溶液から溶媒を除去することができる。その後、例えば200~250℃に調整された乾燥器内に0.5~2時間放置し、樹脂成分を硬化させることができる。
なお、前記中間体とは、型に詰めたセラミック粒子同士が、硬化した樹脂成分により結着した状態をいう。
【0025】
このようにして、樹脂成分を含む溶液から溶媒が除去されると、その過程において、有機物含有溶液の表面張力や粘度上昇等の影響で、セラミック粒子同士が近接する。そして、それら近接点において、有機物の架橋が徐々に進行するので、ゆるやかに硬化することになる。そのために、
図1に示したように、セラミック粒子同士の結着部分は粒子同士の接点に滑らかに追従していたり、粒子同士を抱え込むように接合したりして、特徴的な態様となっていると考えられる。また、完全にセラミック粒子同士を覆っていないためにポーラス構造を有し、その結着部分は柔軟性に優れるため、結果として本発明の軽量耐熱構造体は、欠けや崩壊が生じ難くなると考えられる。
【0026】
<中間体加熱工程>
本工程は、前工程で溶媒が除去された中間体を加熱して軽量耐熱構造体を得る工程である。加熱工程は、不活性ガス雰囲気下で200℃以上、800℃以下の温度域、好ましくは200℃以上、600℃以下の温度域で実施される。不活性ガス雰囲気下の温度が200℃以上、800℃以下であれば、耐熱性が充分に得られるとともに、欠けや崩壊が生じ難いという効果を奏する。
中間体を加熱させるための手段は、特に限定されないが、不活性ガスが満たされた加熱炉内に0.5~10時間放置することで、樹脂成分の一部が炭化した樹脂炭化物を得ることができる。
加熱炉内で使用される不活性ガスは、窒素、アルゴン等が挙げられるが、樹脂成分の炭化を妨げるものでない限り、特に限定されるものではない。
このようにして、セラミック粒子と、樹脂炭化物から成り、セラミック粒子が樹脂炭化物により結着された軽量耐熱構造体を得ることができる。
【0027】
このようにして樹脂成分の一部を炭化すると、炭化による質量減少は限定的であり、樹脂炭化物は、ひび割れ等が発生し難い。そのため、セラミック粒子同士を結着している樹脂炭化物を構成する非炭化成分は、柔軟性を保つことができると考えられる。結果として、
図1に示したように、セラミック粒子1同士を結着する樹脂炭化物は滑らかな状態で存在すると考えられる。
【0028】
また、その結着部分は非炭化成分を有し、柔軟性に優れるため、結果として本発明の軽量耐熱構造体は欠けや崩壊が生じ難くなると考えられる。
【実施例】
【0029】
以下、本発明を実施例、及び比較例により更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
なお、各種サンプルの作製、及び測定・評価は以下の方法で行った。
【0030】
<評価サンプルの作製>
アルミナ粒子(平均粒子径 3μm)を金属型(縦10mm X 横40mm X 深さ2mm)に充填したものを4つ用意し、メタノールで希釈したフェノール樹脂溶液(触媒含む、20質量%)を含浸した後、80℃に調整された恒温槽で1時間保持することによりメタノールを除去し、220℃に調整された恒温槽で1時間保持することより樹脂成分を硬化させ、中間体を得た。その後、各々を、窒素雰囲気下で200℃、600℃、800℃、1000℃にて1時間加熱して、実施例1~3、及び比較例1の軽量耐熱構造体を得た。
【0031】
<レーザーラマン分光装置による炭化度の確認>
実施例1~3、及び比較例1の軽量耐熱構造体を用いて、レーザーラマン分光装置により炭化度の測定を行った。そして、炭素粒子単体(完全に炭化されている粒子)の測定結果と、アルミナ粒子同士を結着する樹脂炭化物の測定結果を比較することで、樹脂炭化物の炭化度を測定した。
得られたチャートを
図4~
図8に示す。
図4は実施例1の軽量耐熱構造体、
図5は実施例2の軽量耐熱構造体、
図6は実施例3の軽量耐熱構造体、
図7は比較例1の軽量耐熱構造体、
図8は炭素粒子単体の測定チャートを示す。
【0032】
以下に、レーザーラマン分光測定の測定条件を示す。
・機器:顕微レーザーラマン分光装置 Nicolet Almega XR(サーモフィッシャーサイエンティフィック株式会社製)
・レーザー波長:532nm
・レーザー出力:50%
・露光時間:0.50sec
・露光回数:15回
・分光器パーチャ:25μmピンホール
【0033】
図7に示される1000℃で加熱した場合では、
図8に示されるカーボン粒子のピークとほぼ同じ形状の波形になっている。
【0034】
このような測定結果より、200℃、600℃、800℃で加熱した場合は、樹脂成分の一部のみが炭化しており、一方で、1000℃で加熱した場合は、樹脂成分の全てが炭化していると推定される。
【0035】
次に、本願発明者は、上記レーザーラマン分光測定の場合と同様に、実施例1~3、及び比較例1の軽量耐熱構造体を作製するとともに、窒素雰囲気下で150℃にて1時間加熱して作製した比較例2を加えて、XPS分析(X線光電子分光分析)に供した。
【0036】
<XPS分析による測定結果>
加熱条件の異なる各サンプルを用いて、XPS分析(X線光電子分光分析)にて測定を行った。
【0037】
以下に、XPS分析(X線光電子分光分析)の測定条件を示す。
・分析装置:Quantera SXM(アルバック・ファイ社製)
・X線源:単色化AlKα
・X線出力、X線照射径:25.0W、φ100μm
・測定領域:Point 100μm
・光電子取り込み角:45deg
・Wide Scan:280.0eV,1.000eV/step
・Narrow Scan:69.0eV;0.125eV/step
【0038】
その結果、実施例1の軽量耐熱構造体の1s原子軌道のC(炭素)量が73.1atom%、O(酸素)量が19.8atom%、Al量が7.1atom%と求められた。
実施例2の軽量耐熱構造体の1s原子軌道のC(炭素)量が81.9atom%、O(酸素)量が14.1atom%、Al量が4.0atom%と求められた。
実施例3の軽量耐熱構造体の1s原子軌道のC(炭素)量が81.5atom%、O(酸素)量が13.8atom%、Al量が4.7atom%と求められた。
比較例1の軽量耐熱構造体の1s原子軌道のC(炭素)量が81.1atom%、O(酸素)量が13.6atom%、Al量が5.3atom%と求められた。
比較例2の軽量耐熱構造体の1s原子軌道のC(炭素)量が70.1atom%、O(酸素)量が23.4atom%、Al量が6.5atom%と求められた。
【0039】
ここで、各実施例、比較例の軽量耐熱構造体に含まれるO(酸素)は、Cと結合しているものと、Alと結合しているものに概ね分かれると考えられる。そして、AlとOとが結合したものはAl2O3の態様で存在していると考えると、各実施例、比較例の軽量耐熱構造体においてCと結合しているO量を算出することができる。
このような考えに基づいて計算すると、実施例1の軽量耐熱構造体に含まれるCと結合しているO(酸素)量は9.2atom%と算出される。
実施例2の軽量耐熱構造体に含まれるCと結合しているO(酸素)量は8.1atom%と算出される。
実施例3の軽量耐熱構造体に含まれるCと結合しているO(酸素)量は6.8atom%と算出される。
比較例1の軽量耐熱構造体に含まれるCと結合しているO(酸素)量は5.7atom%と算出される。
比較例2の軽量耐熱構造体に含まれるCと結合しているO(酸素)量は13.7atom%と算出される。
【0040】
<XPS分析による炭化度の評価結果>
前述のレーザーラマン分光測定による炭化度の確認から、1000℃で加熱した樹脂炭化物は完全に炭化しているのに対して、200℃、600℃、800℃、150℃で加熱した樹脂炭化物は、部分的に炭化していると考えた。
これから、XPS分析では、比較例1(1000℃で加熱した樹脂炭化物)の軽量耐熱構造体のCatom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)を求め、この値に対する、実施例1~3、比較例2の軽量耐熱構造体のCatom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)の比率を、本発明に関わる炭化度とした。
【0041】
実施例1~3、比較例1、2について、Catom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)を算出した。
Catom%/(Catom%+Cと結合しているOatom%)の値は、実施例1の軽量耐熱構造体が0.888、実施例2の軽量耐熱構造体が0.910、実施例3の軽量耐熱構造体が0.924、比較例1の軽量耐熱構造体が0.940、比較例2の軽量耐熱構造体が0.837となった。
この考えに基づいて炭化度を計算すると、次のようになる。
実施例1の軽量耐熱構造体の炭化度:0.888÷0.940=0.945
実施例2の軽量耐熱構造体の炭化度:0.910÷0.940=0.968
実施例2の軽量耐熱構造体の炭化度:0.924÷0.940=0.982
比較例2の軽量耐熱構造体の炭化度:0.837÷0.940=0.890
結果を表1に示す。
【0042】
<強度の測定結果>
実施例1~3、及び比較例1、2の軽量耐熱構造体を用いて、軽量耐熱構造体の両端を支持し、サンプルの中央に圧子で荷重をかけて、3点曲げ強度の測定を行った。
【0043】
以下に、3点曲げ強度の測定条件を示す。
・試験機:テンシロン万能材料試験機 RTC-1210A(オリエンテック社製)
・曲げ試験速度:2m/min
・圧子の半径:5mm
・支点の半径:2mm
・支点間距離:15mm
また、以下の評価基準にて強度を評価した。
◎:40MPa以上
〇:10MPa以上、40MPa未満
×:10MPa未満
結果を表1に示す。
【0044】
<難燃性の評価結果>
実施例1~3、及び比較例1、2の軽量耐熱構造体を用いて、難燃性の評価を行った。
【0045】
以下に、難燃性の評価方法を示す。
各実施例、比較例の軽量構造体の先端にガスバーナーの火を5秒間あてた後に、火から離して、火が燃え広がるか確認を行った。
また、以下の評価基準にて難燃性を評価した。
〇:点火しても、延焼反応を起こさず。
×:点火すると、延焼反応を起こす。
結果を表1に示す。
【0046】
<総合評価>
総合評価は、強度と難燃性の結果に基づき、以下の基準に従って行った。
〇:全ての結果が、「◎」又は「〇」の場合
×:「×」を1つでも含む場合。
結果を表1に示す。
【0047】
【0048】
表1の結果から、実施例1~3の軽量耐熱構造体は、欠けや崩壊が生じ難くいことがわかる。一方、比較例1の軽量耐熱構造体は、強度が劣り、比較例2の軽量耐熱構造体は、耐熱性(難燃性)が劣ることがわかる。
【符号の説明】
【0049】
1 セラミック粒子
2 樹脂炭化物