(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】異方性光学フィルムを用いた導光積層体、及び、それを用いた表示装置用面状照明装置
(51)【国際特許分類】
G02B 5/02 20060101AFI20240131BHJP
G02B 5/00 20060101ALI20240131BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20240131BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240131BHJP
F21V 8/00 20060101ALI20240131BHJP
F21Y 115/10 20160101ALN20240131BHJP
【FI】
G02B5/02 B
G02B5/00 A
G02F1/13357
F21S2/00 435
F21S2/00 453
F21V8/00 100
F21Y115:10
(21)【出願番号】P 2020548101
(86)(22)【出願日】2019-08-06
(86)【国際出願番号】 JP2019030991
(87)【国際公開番号】W WO2020066312
(87)【国際公開日】2020-04-02
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2018185015
(32)【優先日】2018-09-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000153591
【氏名又は名称】株式会社巴川コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100105315
【氏名又は名称】伊藤 温
(72)【発明者】
【氏名】加藤 昌央
(72)【発明者】
【氏名】杉山 仁英
【審査官】植野 孝郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-23163(JP,A)
【文献】特開2004-103335(JP,A)
【文献】国際公開第2015/111523(WO,A1)
【文献】特開2012-42820(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/00- 5/136
F21S 2/00
G02F 1/13357
F21V 8/00
F21Y115/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導光板と、少なくとも1つの異方性光学フィルムとを、含む導光積層体であって、
前記導光板は、光を前記導光板の内部に入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光が、前記導光板内で反射及び屈折して出射する出射面とを、有しており、
前記異方性光学フィルムは、光が前記異方性光学フィルムに入射する角度により、入射した光の直線方向の透過光量/入射した光の光量である、直線透過率が変化するフィルムであり、
前記異方性光学フィルムは、前記出射面に、直接または他の層を介して積層されており、
前記異方性光学フィルムは、マトリックス領域と、複数の構造体を含む構造領域とを、含み、
前記出射面からの光の出射強度が最大となる方向において出射した光が、前記異方性光学フィルムに対して入射した際の前記異方性光学フィルムの直線透過率が30%超であ
り、
前記異方性光学フィルムの複数の構造体の散乱中心軸方向と、前記導光板の光の出射強度が最大となる方向とがなす角度が、20°超であることを特徴とする、導光積層体。
【請求項2】
前記出射面から出射する光の出射強度が最大となる方向と、前記出射面の法線方向とがなす角度が20°未満であることを特徴とする、請求項
1に記載の導光積層体。
【請求項3】
前記導光板の、前記出射面とは反対側の面である光偏向面に、大きさ50μm以下、深さ50μm以下である複数の凹型の光偏向要素を有していることを特徴とする、請求項
1または2に記載の導光積層体。
【請求項4】
前記導光板の、前記出射面とは反対側の面である光偏向面に、大きさ50μm以下、高さ50μm以下である複数の凸型の光偏向要素を有していることを特徴とする、請求項1
または2に記載の導光積層体。
【請求項5】
前記他の層が、偏光板、位相差板のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする、請求項1~
4のいずれか1項に記載の導光積層体。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の導光積層体と、光源とを、含むことを特徴とする、表示装置用面状照明装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透過型表示装置、反射型表示装置等に用いられる、異方性光学フィルムを用いた導光積層体と、前記導光積層体を用いた表示装置用面状光源照明装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明装置を内蔵する表示装置は、薄型、軽量、低消費電力であることが、強く求められている。そのような表示装置として、光源からの照明光を表示パネル面内での輝度や照射方向を均一にするための導光板を備えるタイプの普及が進んでいる。
【0003】
光源と、導光板とを、組み合わせた表示装置用照明装置のうち、光源を表示パネル(導光板を含む)の端面部に備え、表示パネルの照明光とする表示装置用照明装置は、エッジ型ライト方式と呼ばれ、薄型化、軽量化が容易である。さらに、消費電力削減を目的として、光源の数量を減らしても、光源間の暗部が表示パネルの表示面内の暗部とならないという長所がある。このような長所を有するエッジ型ライト方式は、液晶表示装置の表示装置用照明装置として多用されている。
【0004】
また、エッジ型ライト方式には、エッジ型フロントライトと、エッジ型バックライトがある。エッジ型フロントライトは、導光板が、表示パネルの視認側に配置されており、エッジ型バックライトは、導光板が、表示パネルの背面側(表示パネルの視認側とは反対側)に配置されている。
【0005】
エッジ型ライト方式の表示装置用照明装置は、透明なアクリル樹脂等からなる導光板の端面にLED等の光源、導光板の光の出射面(表示パネルと対向する面)とは反対側の面(光偏向面)に光反射フィルム、出射面に、光拡散フィルムと集光フィルムを設けている。導光板の端面に入射し、導光板内を伝播する光は、 光偏向面に形成された光偏向要素によって、光の伝播方向を変えることによって、光出射面から取り出されている。
【0006】
前記光偏向要素は、白色のインキをドット状に印刷する方法(特許文献1)、インクジェット法によってマイクロレンズを形成する方法(特許文献2)、レーザーアブレーション法を用いてくぼみを形成する方法(特許文献3)、金型を用いて凹凸を形成する方法(特許文献4)等により形成されることが知られている。
【0007】
線状光源から導光板内部に入射された光は、(1)出射面から直接出射する光、(2)光偏向要素によって反射し、出射面から出射する光、(3)光偏向要素により反射せず、前記光反射フィルムにより反射され、再び導光板内に戻った後、出射面から出射する光となる。このうち(2)及び(3)の光は、乱反射となって表示パネルの輝度むらの原因となる。
【0008】
前記輝度むらを、光の散乱と拡散により緩和し、表示パネル表面の光の照度を均一化する目的で、光拡散フィルムが設けられている。さらに導光板表面の法線方向(表示パネルの正面方向)の正面輝度を向上させるため、集光シートが用いられている。前記集光シートは、表面に、多数のプリズム構造、ウエーブ構造、ピラミッド構造等の凹凸構造が形成された透明シートであり、1層、または、2層用いられている。
【0009】
エッジ型ライト方式の表示装置用照明装置の輝度向上と、小型軽量化を図るため、導光板表面に光拡散フィルムを積層する方法が提案されている(特許文献5)。
【0010】
また、反射型表示装置においては、視野角の拡大のために光拡散フィルムが用いられることが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】特開平1-241590号公報
【文献】特開2013-185040号公報
【文献】国際2015/178391号公報
【文献】特開平5-210014号公報
【文献】特開平8-227273号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
例えば、反射型表示装置に対して、暗所での視認性を確保するためにエッジ型フロントライトを表示装置用面状照明装置として用いた場合、反射型表示装置に一般的に用いられている等方性の光拡散フィルムによって、導光板本来の出射特性が変化してしまうという問題があった。
【0013】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、特定の光学特性を有する導光板と、特定の光学特性を有する異方性光学フィルムとを組み合わせることで、(1)周囲環境が暗い場合には、光源を用いて、導光板単独のときと変わらない出射特性(拡散性)を有し、(2)周囲環境が明るい場合には、光源を用いずとも、外光のみで十分に明るい(視認性の高い)特性を有する導光積層体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題について、本発明者らが鋭意検討を行ったところ、入射面及び出射面を有した導光板と、前記出射強度が最大となる方向の光が入射した際の直線透過率が30%超である異方性光学フィルムとを、直接または他の層を介して積層した導光積層体が、前記課題を解決することを発見し、本発明を完成するに至った。
即ち、
本発明(1)は、
導光板と、少なくとも1つの異方性光学フィルムとを、含む導光積層体であって、
前記導光板は、光を前記導光板の内部に入射させる入射面と、
前記入射面から入射した光が、前記導光板内で反射及び屈折して出射する出射面とを、有しており、
前記異方性光学フィルムは、光が前記異方性光学フィルムに入射する角度により、入射した光の直線方向の透過光量/入射した光の光量である、直線透過率が変化するフィルムであり、
前記異方性光学フィルムは、前記出射面に、直接または他の層を介して積層されており、
前記異方性光学フィルムは、マトリックス領域と、複数の構造体を含む構造領域とを、含み、
前記出射面より光の出射強度が最大となる方向において出射した光が、前記異方性光学フィルムに対して入射した際の前記異方性光学フィルムの直線透過率が30%超であることを特徴とする、導光積層体である。
本発明(2)は、
前記複数の構造体の散乱中心軸方向と、前記光の出射強度が最大となる方向とがなす角度が20°超であることを特徴とする、前記発明(1)の導光積層体である。
本発明(3)は、
前記出射面から出射する光の出射強度が最大となる方向と、前記出射面の法線方向とがなす角度が20°未満であることを特徴とする、前記発明(1)または(2)の導光積層体である。
本発明(4)は、
前記出射面とは反対側の面である光偏向面に、大きさ50μm以下、深さ50μm以下である複数の凹型の光偏向要素を有していることを特徴とする、前記発明(1)~(3)の導光積層体である。
本発明(5)は、
前記出射面とは反対側の面である光偏向面に、大きさ50μm以下、高さ50μm以下である複数の凸型の光偏向要素を有していることを特徴とする前記発明(1)~(3)の導光積層体である。
本発明(6)は、
前記他の層が、偏光板、位相差板のうち少なくともいずれかを含むことを特徴とする、前記発明(1)~(5)の導光積層体である。
本発明(7)は、
前記発明(1)~(6)のいずれかの導光積層体と、光源とを、含むことを特徴とする、表示装置用面状照明装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、周囲環境が暗い場合には、光源を用いて、導光板単独のときと変わらない出射特性(拡散性)を有し、周囲環境が明るい場合には、光源を用いない場合であっても、十分に明るい(視認性の高い)特性を有する導光積層体、及び、それを用いた表示装置用面状照明装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明にかかる導光積層体の構造例を示す断面図である。
【
図4】凹型ドット構造の形状を例示した上面図及び断面図である。
【
図5】導光板におけるドット構造の分布例を示す模式図である。
【
図6】ピラー構造及びルーバー構造の複数の各構造体を有する異方性光学フィルムの構造と、これらの異方性光学フィルムに入射した透過光の様子の一例を示す模式図である。
【
図7】異方性光学フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図である。
【
図8】
図6に示したピラー構造及びルーバー構造の異方性光学フィルムへの入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフである。
【
図9】異方性光学フィルムにおける拡散領域と非拡散領域を説明するためのグラフ(光学プロファイル)である。
【
図10】異方性光学フィルムにおける散乱中心軸を説明するための3次元極座標表示である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
1.主な用語の定義
本明細書において、「出射面から出射する光の出射強度が最大となる方向と、前記出射面の法線方向とがなす角度」とする表現を、何の断りもなく、「出射強度が最大となる角度」と表現する場合がある。
【0018】
また、本明細書において、「異方性光学フィルムに含まれる複数の構造体」及び「異方性光学フィルムに含まれる複数の構造体を含む構造領域」とする表現を、それぞれ何の断りもなく、「複数の構造体」、「構造領域」と表現する場合がある。
【0019】
「直線透過率」とは、一般に、異方性光学フィルムに対して入射した光の直線透過性に関し、光がある入射光角度から入射した際に、入射した光の直線方向の透過光量と、入射した光の光量との比率であり、下記式で表される。
直線透過率(%)=(直線透過光量/入射光量)×100
【0020】
「ピラー構造」とは、異方性光学フィルムにおける複数の構造体の断面形状の長径(長軸)と、短径(短軸)との比であるアスペクト比が、1以上2未満のものを示す。なお、前記断面形状とは、前記複数の構造体の配向方向と直交する平面による前記複数の構造体の断面形状である。
なお、本発明においては、断面形状が長径(長軸)及び短径(短軸)を有する場合、長径/短径をアスペクト比とし、断面形状がほぼ円形であって、有意に長径及び短径を規定できない場合、長径及び短径が、いずれも円の直径に該当するものとし、この場合のアスペクトを1とする。
【0021】
「ルーバー構造」とは、異方性光学フィルムにおける複数の構造体の断面形状の長径(長軸)と、短径(短軸)との比であるアスペクト比が、2以上のものを示す。なお、前記断面形状とは、「ピラー構造」の場合と同様である。
【0022】
2.導光積層体
2-1.導光積層体の構成
本発明にかかる導光積層体は、導光板と、少なくとも1つの異方性光学フィルムを含む。前記導光積層体の光学特性を調整するため光拡散性の異なる複数の異方性光学フィルムを組み合わせて用いることができる。
【0023】
前記異方性光学フィルムは、後述する前記導光板の出射面に、直接または他の層を介して積層される。
【0024】
前記他の層とは、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。前記他の層は、例えば、導光板と異方性光学フィルムとを接合するための粘着剤層、偏光板、位相差板等を挙げることができ、それらを単独または複数組み合わせて用いることができる。導光積層体の構造例を
図1(a)~(e)に示した。なお、粘着剤層は図示を省略したが、各層間に積層することができる。
【0025】
前記粘着材層の材質や厚さは、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、特に限定されない。導光板2や異方性光学フィルム3等が固定できればよく、導光板等の被着体に合ったものを選択することができる。また、前記粘着剤層は、接着剤であってもよい。
【0026】
偏光板4は、導光板2から出射された出射光を、特定方向に偏光、または偏波した光だけに限って通過させる板であり、例えば本発明による導光積層体を用いた液晶表示装置用面状照明装置として用いられる場合に利用される。本発明に用いられる偏光板4は、特に限定されず、所望する導光積層体1の光学特性に合わせて選択することができる。
【0027】
位相差板5は、例えば、液晶ディスプレイの光学補償用に用いられる材料であり、複屈折性による光学的な歪みや視角方向による変調が原因で起こる表示の着色等、視角依存性の発生を防止する目的で利用される。本発明に用いられる位相差板5は、特に限定されず、所望する導光積層体1の光学特性に合わせて選択することができる。
【0028】
また、導光板2の出射面の反対側の表面である光偏向面25には、封止層6や反射板等を積層することができる。
【0029】
前記封止層6は、例えば光偏向面の表面の光偏向要素22を封止する。前記封止層6は、光偏向要素22が損傷したり、ゴミ等が付着したりすることで、導光積層体1の光学特性が低下することを防ぐことができる。
【0030】
2-1-1.導光板
2-1-1-1.導光板の構造
本発明にかかる導光板は、少なくとも1つの光源から発した光を、導光板内部に入射させる1つ以上の入射面を有している。また、入射した光が、導光板内を伝播し、導光板から出射する少なくとも1つの出射面を有している。エッジ型ライト方式の場合、前記入射面は、導光板の端面である。
【0031】
前記入射面は、単数に限られず、複数有していてもよく、導光板の出射強度を高める目的で、光源を複数配置することが可能となる。
【0032】
前記導光板と、光源とは、隣接して配置されてもよく、間隔をあけて配置してもよい。光源から発した光が減衰しにくいこと、また、表示装置の小型化の観点から、光源と導光板とは隣接して配置されることが好ましい。
【0033】
また、光源を発した光は、導光板に直接入射してもよいし、ミラーや導光材などを介して間接的に入射してもよい。
【0034】
前記導光板は、光源から入射した光を、その内部で反射して、導光板外に出射する出射面と、導光板内部を伝播する光を、出射面方向に反射、屈折させ、出射面から出射させるための光偏向要素と、を有する。前記導光板内部を伝播する光は、光偏向要素により出射面方向に反射・屈折され、出射面から出射される。
【0035】
前記光偏向要素を設ける位置は、導光板内を伝播する光を出射面方向に反射させ、導光板としての機能を阻害しない限りにおいて、限定されない。導光板が用いられる液晶表示装置の場合、広い出射面全体の出射光の強度が均一であることが好ましいため、光偏向要素は、出射面とは対向する反対側の導光板表面である光偏向面に設けられることが好ましい。
【0036】
図2(a)に、導光板に用いられる材質の透明板7の端面に光源10を隣接させ、光を入射させた場合の板内の光の進行を示した。板内に入射した光は、透明板7の内部を全反射によって反射されながら進行し、光源10とは反対側の端面から出射される。光は板内面で全反射されるため、導光板における主面71から出射することはできない。
【0037】
続いて
図2(b)を用いて、光偏向要素22に関する説明を行う。
導光板側面(
図2(b)の導光板端面26)に設置された光源10から導光板2に入射した光は、導光板内面で全反射を繰り返しながら導光板内を進む。導光板2には、光が全反射する際に、反射角度を変える光偏向要素22が複数設けられており(
図2(b)では、光偏向要素22の一例として、凹型の構造である光偏向要素が設けられている)、前記光偏向要素22で反射角度を変えられた光は、出射面21から外部に出射される。前記光偏向要素22は、導光板2の主面の一方、即ち、出射面とは反対側の面である光偏向面25に設けられる。
【0038】
導光板は、板、フィルムなどの透明部材、または、それら部材の積層物で構成されている。導光板の材質は、透明部材であればよく、例えば、透明樹脂やガラスなどが挙げられるが、透明樹脂が好ましく、透明性の高い熱可塑性樹脂がより好ましい。透明性の高い熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン系樹脂、ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリウレタン系樹脂、ポリエーテル系樹脂などが挙げられる。なかでも透明性の見地から可視光領域に波長の吸収領域がない、ポリカーボネート樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂が好ましい。
【0039】
前記導光板内の光の反射角度を変える光偏向要素の構造は、特に限定されないが、凹型または凸型の構造であるドット構造を複数有していることが好ましく、凹型ドット構造であることがより好ましい。これらの構造は単独で用いられてもよく、複数の構造を組み合せて用いてもよい。なお、凹型とは、導光板表面に対して、凹型形状であることを示し、凸型とは、導光板表面に対して、凸型形状であることを示す。
図3(a)は、凹型ドット構造を示す例であり、導光板2の出射面21とは反対側の面である、光偏向面25表面に対し、半球状の凹型光偏向要素23が複数形成されている。
図3(b)は、凸型ドット構造を示す例であり、導光板2の光偏向面25表面に対し、半球状の凸型光偏向要素24が複数形成されている。
【0040】
前記光偏向要素は、大きさが50μm以下、高さまたは深さが50μm以下である凹型または凸型のドット構造であることが好ましく、大きさ及び深さが50μm以下である凹型のドット構造であることがより好ましい。このようにすることで、本発明にかかる導光積層体がフロントライトとして使用された場合において、前記光偏向要素構造が視認されることを防止できる。
【0041】
導光板の光偏向面の面積に対する光偏向要素の面積の割合は、30%以下であることが好ましく、20%以下であることがより好ましく、10%以下であることがさらに好ましい。上記光偏向要素の面積の割合が30%以下であれば、表示装置用面状照明装置とした際の視認性を妨げない。
【0042】
以下に、前記光偏向要素の構造を好適例である凹型ドット構造とした場合について詳細に記載する。
【0043】
上述したように前記凹型ドット構造は、大きさ及び深さが50μm以下であることが好ましい。
【0044】
前記凹型ドット構造の形状例を
図4(a)~(g)に示した。前記凹型ドット構造は、これらに限られるものではない。前記凹型ドット構造をこのようにすることで、光を拡散しやすくすることができるため、出射面内の光の均一性を高めることができる。これらの形状、大きさ及び深さは、一種類に統一されていてもよく、複数を組み合せてもよい。
【0045】
図4(a)~(g)に示した前記凹型ドット構造は、導光板光偏向面が、凹型ドット構造であるが、凸型ドット構造としてもよい。
【0046】
ここで、凹型ドット構造の大きさは、
図4(a)~(g)に示した長さである、Xとすることができる。Xは、光の進行方向に面する凹型ドット構造の長さを示し、凹型ドット構造の光に対する性能に寄与する。また、凹型ドット構造の深さは、凹型ドット構造を有する平面A-Aから、凹型ドット構造の最も深い位置までの距離とすることができる。
【0047】
ここで、上記凸型ドット構造の場合、凹型ドット構造の「深さ」は「高さ」となる。この場合、高さは、凸型ドット構造を有する平面から凸型ドット構造の最も高い位置までの距離、とすることができる。
【0048】
また、前記凹型ドット構造の大きさ及び深さは各50μmを上限に、光源からの距離に応じて変化させることができる。例えば、前記凹型ドット構造の大きさ及び深さを、光源から離れるに従い連続的に大きくすることができる。この場合、光源から近く光が強い位置では出射面より射出される光量が小さく、光源部材から遠ざかるにつれて射出される光量が大きくなるため、出射する光の光量の均等性を高くすることができる。
【0049】
また、より強く光を出射したい部分のみに大きいサイズの凹型ドット構造としてもよいし、一部のみが異なる外観を呈するように、一部のみ異なる構造のドット構造としてもよい。
【0050】
前記ドット構造は、導光板表面にランダムかつ複数に配置することができ、または、導光板2の光源10に近い側から遠い側に離れるに従い、ドット構造の分布密度が高くなるように配置することができる{
図5(a)}。例えば、前記分布密度は、光源10に最も近い領域では50個/mm
2程度とし、光源から最も離れた領域では300個/mm
2程度とすることができる。このようにすることで出射面内の光の出射均一性を向上することができる。
なお、導光板2の別の側部にも光源11を設置する場合{
図5(b)}には、前記出射面内の光の出射均一性が向上できるため、上述したドット構造の配置や分布密度は適宜調整することができる。
【0051】
2-1-1-2.導光板の特性
一般的な表示装置においては、表示装置の視認側表面の法線方向より視認することを想定しているため、本発明における導光板の出射面内における導光板からの出射光の出射強度が最大となる方向と、出射面の法線方向とがなす角度θLGmaxは、20°未満であることが好ましい。
【0052】
2-1-1-3.導光板の製造方法
導光板のいずれかの面には、光の反射角度を変える光偏向要素が形成されている。前記光偏向要素の作製方法としては、特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば超音波加工、加熱加工、レーザー加工、切削加工、ナノインプリントによる加工等の加工方法が挙げられる。例えば、凹型ドット構造を超音波加工によって作製する場合には、先端面に凹型ドット構造を反転させた形状を有する凸型ドット構造が配列されている超音波加工ホーンを、導光板材料に対して垂直に押圧することによって、ドット構造の形状が転写され凹型ドット構造を形成することができる。
【0053】
また、ドット構造は、スクリーン印刷やシルク印刷等によっても作製することができる。
【0054】
なお、ドット構造は、ドット構造を成形することができるように作製しておいた金型等を使用して導光板の成形時、同時に凹型形状または凸型形状を成形してもよい。
【0055】
2-1-2.異方性光学フィルム
2-1-2-1.異方性光学フィルムの構造
本発明による異方性光学フィルムは、前記導光板の出射面に直接または他の層を介して積層されており、前記導光板から出射された光を、特定の入射光角度において拡散させる働きを有する。つまり、前記異方性光学フィルムは、入射光角度により光の拡散性が変化することを特徴とする。
【0056】
本発明にかかる異方性光学フィルムの拡散性は、光が前記異方性光学フィルムに入射する角度により、入射した光の直線方向の透過光量/入射した光の光量である、直線透過率として示すことができる。即ち、直線透過率が高い場合には、異方性光学フィルムに入射した光は直線的に透過する光の成分が多く、拡散性は低い。直線透過率が低い場合には、前記入射した光は直線的に透過する成分が少なく、拡散性が高くなる。
【0057】
本発明にかかる異方性光学フィルムは、マトリックス領域と、複数の構造体を含む構造領域とを、含む。以下に
図6~
図9を参照しながら、その構造体について詳述する。
【0058】
図6は、ピラー(略柱状)構造及びルーバー(略板状)構造の複数の構造体よりなる構造領域を有する異方性光学フィルムの構造と、これらの異方性光学フィルムに入射した透過光の様子の一例を示す模式図である。
図7は、異方性光学フィルムの光拡散性の評価方法を示す説明図である。
図8は、
図6に示したピラー構造及びルーバー構造を有する異方性光学フィルムへの入射光角度と直線透過率との関係を示すグラフである。
図9は、拡散領域と非拡散領域を説明するためのグラフ(光学プロファイル)である。
【0059】
異方性光学フィルムは、フィルムの膜厚方向に、フィルムのマトリックス領域とは屈折率の異なる複数の構造体よりなる構造領域が形成されたフィルムである。
【0060】
前記構造領域は、前記異方性光学フィルムの一方の表面から他方の表面にかけての領域すべてにわたって形成されてもよく、部分的に、または、断続的に形成されてもよい。
【0061】
前記構造体の断面形状は、特に制限されるものではないが、例えば、
図6(a)に示すように、マトリックス領域31a中に、長径と短径のアスペクト比の小さな略柱状(例えば、棒状)に形成された、マトリックス領域とは屈折率の異なるピラー構造体32aが形成された異方性光学フィルム(ピラー構造の異方性光学フィルム3a)や、
図6(b)に示すように、マトリックス領域31b中に、アスペクト比の大きな略板状に形成された、マトリックス領域とは屈折率の異なるルーバー構造体32bが形成された異方性光学フィルム(ルーバー構造の異方性光学フィルム3b)がある。
【0062】
これら構造領域の形状は、単一の形状のみで構成されていてもよく、複数の形状を組み合せて用いてもよい。例えば、前記ピラー構造体と前記ルーバー構造体が混在するようにしてもよい。そのようにすることで、光学フィルムの光学特性、特に直線透過率や拡散性が幅広く調整できる。
【0063】
2-1-2-2.異方性光学フィルムの特性
上述した構造を有する異方性光学フィルムは、当該フィルムへの入射光角度により光拡散性が異なる光拡散フィルム、すなわち入射光角度依存性を有する光拡散フィルムである。この異方性光学フィルムに所定の入射角度で入射した光は、屈折率の異なる領域の配向方向(例えば、ピラー構造におけるピラー構造体32aの延在方向(配向方向)やルーバー構造におけるルーバー構造体32bの高さ方向)と略平行である場合には拡散が優先され、当該方向に平行でない場合には透過が優先される。
【0064】
ここで、
図7及び
図8を参照しながら、異方性光学フィルムの光拡散性についてより具体的に説明する。ここでは、上述したピラー構造の異方性光学フィルム3aと、ルーバー構造の異方性光学フィルム3bの光拡散性を例に挙げて説明する。
【0065】
光拡散性の評価方法は、以下のようにして行う。まず、
図7に示すように、異方性光学フィルム3a、3bを、光源40と検出器41との間に配置する。本形態においては、光源40からの照射光Iが、異方性光学フィルム3a、3bの法線方向から入射する場合を入射光角度0°とした。また、異方性光学フィルム3a、3bは直線Lを中心として、任意に回転させることができるように配置され、光源40及び検出器41は固定されている。すなわち、この方法によれば、光源40と検出器41との間にサンプル(異方性光学フィルム3a、3b)を配置し、サンプル表面の直線Lを中心軸として角度を変化させながらサンプルを直進透過して検出器41に入る直線透過光量を測定することにより、入射角ごとの直線透過率を算出することができる。
【0066】
異方性光学フィルム3a、3bを、それぞれ、
図6のTD方向(異方性光学フィルムの幅方向)を
図7に示す回転中心の直線Lに選んだ場合における光拡散性を評価し、得られた光拡散性の評価結果を
図8に示した。
【0067】
図8は、
図7に示す方法を用いて測定した
図6に示す異方性光学フィルム3a、3bが有する光拡散性(光散乱性)の入射光角度依存性を示すものである。
図8の縦軸は、散乱の程度を示す指標である直線透過率{本形態では、所定の光量の照射光を異方性光学フィルム3a、3bの法線方向から入射させたときに、入射方向と同じ方向に出射された光の光量の割合、より具体的には、直線透過率=(異方性光学フィルム3a、3bがある場合の検出器41の検出光量である直線透過光量/異方性光学フィルム3a、3bがない場合の検出器41の検出光量である入射光量)×100}を示し、横軸は異方性光学フィルム3a、3bへの入射光角度を示す。
【0068】
図8中の実線は、ピラー構造の異方性光学フィルム3aの光拡散性を示し、破線は、ルーバー構造の異方性光学フィルム3bの光拡散性を示している。なお、入射光角度の正負は、異方性光学フィルム3a、3bを回転させる方向が反対であることを示している。
【0069】
図8に示すように、異方性光学フィルム3a、3bは、入射光角度によって直線透過率が変化する光拡散性の入射光角度依存性を有するものである。ここで、
図8のように光拡散性の入射光角度依存性を示す曲線を、「光学プロファイル」と称する。
光学プロファイルは、光拡散性を直接的に表現しているものではないが、直線透過率が低下することで逆に拡散透過率が増大していると解釈すれば、概ね光拡散性を示していると言える。
【0070】
また、光学プロファイルにおいて、異方性光学フィルムへの入射光角度を変化させた際に光拡散性(直線透過性)が、その入射光角度を境に略対称性を有する光の入射光角度と一致する方向を「散乱中心軸方向」と称し、この対称軸を「散乱中心軸」と称する。なお、「略対称性を有する」としたのは、散乱中心軸が異方性光学フィルムの法線方向に対して傾きを有する場合には、光学特性である光学プロファイルが、厳密には対称性を有しないためである。なお、このときの入射光角度は、異方性光学フィルムの光学プロファイルを測定し、光学プロファイルにおける極小値に挟まれた略中央部(拡散領域の中央部)となる。
【0071】
構造領域の複数の構造体の配向方向(延在方向)は、散乱中心軸方向と平行になるように形成することが好ましく、異方性光学フィルムが、所望の直線透過率や拡散性を有するよう、適宜定めることができる。なお、散乱中心軸方向と、柱状領域の配向方向とが平行であるとは、屈折率の法則(Snellの法則)を満たすものであればよく、厳密に平行である必要はない。
【0072】
Snellの法則は、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質の界面に対して光が入射する場合、その入射光角度θ1と屈折角θ2との間に、n1sinθ1=n2sinθ2の関係が成立するものである。例えば、n1=1(空気)、n2=1.51(異方性光学フィルム)とすると、入射光角度が30°の場合、構造領域の配向方向(屈折角)は約19°となるが、このように入射光角度と屈折角が異なっていてもSnellの法則を満たしていれば、本発明においては平行の概念に包含される。
【0073】
次に、
図10を参照しながら、異方性光学フィルムにおける散乱中心軸Pについてさらに説明する。
図10は、異方性光学フィルムにおける散乱中心軸Pを説明するための3次元極座標表示である。
【0074】
上記散乱中心軸は、
図10に示すような3次元極座標表示によれば、異方性光学フィルムの表面をxy平面とし、法線をz軸とすると、極角θと方位角φとによって表現することができる。つまり、
図10中のPxyが、上記異方性光学フィルムの表面に投影した散乱中心軸Pの長さ方向ということができる。
【0075】
ここで、異方性光学フィルムの法線(
図10に示すz軸)と、前記複数の構造体の配向方向(配向方向が、散乱中心軸方向と上記で述べた平行の概念に包含されている場合)とのなす極角θ(-90°<θ<90°)を本発明における散乱中心軸角度と定義する。複数の構造体の配向方向は、これらを製造する際に、シート状の光重合性化合物を含む組成物に照射する光線の方向を変えることで、所望の角度に調整することができる。
【0076】
本発明にかかる異方性光学フィルムに複数の散乱中心軸が含まれる場合には、複数の散乱中心軸のそれぞれと、配向方向とが上記平行の関係である前記複数の構造体を含むことが好ましい。
【0077】
光学プロファイルに対し、通常の等方的な光拡散フィルムでは、0°付近をピークとする山型の光学プロファイルを示す。一方、異方性光学フィルム3a、3bでは、
図8に示す様に、ピラー構造体32a、ルーバー構造体32bの異方性光学フィルムの法線方向に対する散乱中心軸方向の角度を0°(この場合、
図6より、複数の構造体の配向方向も0°)とすると、0°付近(-20°~+20°)の入射光角度で直線透過率が小さく、入射光角度(の絶対値)が大きくなるにつれて直線透過率が大きくなる谷型の光学プロファイルを示す。
【0078】
このように、異方性光学フィルムは、入射光が散乱中心軸に近い入射光角度範囲では強く拡散されるが、それ以上の入射光角度範囲では拡散が弱まり直線透過率が高まるという性質を有する。以下、最大直線透過率と最小直線透過率との中間値の直線透過率に対する2つの入射光角度の角度範囲を拡散領域と称し、それ以外の入射光角度範囲を非拡散領域(透過領域)と称する。
【0079】
ここで、
図9を参照しながら、ルーバー構造の異方性光学フィルム3aを例に挙げて拡散領域と非拡散領域について説明する。
図9は、
図8のルーバー構造の異方性光学フィルム3bの光学プロファイルを示したものであるが、
図9に示すように、最大直線透過率(
図9の例では、直線透過率が約78%)と最小直線透過率(
図9の例では、直線透過率が約6%)との中間値の直線透過率(
図9の例では、直線透過率が約42%)に対する2つの入射光角度の間(
図9に示す光学プロファイル上の2つの黒点の位置の2つの入射光角度の内側)の入射光角度範囲が拡散領域となり、それ以外(
図9に示す光学プロファイル上の2つの黒点の位置の2つの入射光角度の外側)の入射光角度範囲が非拡散領域となる。
【0080】
なお本発明においては、異方性光学フィルムは導光板と組み合わせて用いるため、直線透過率が30%以下となる入射光の角度範囲(光学プロファイル上で2つの直線透過率が30%以下となる各入射光角度値間の範囲)を、拡散性が高い範囲である、「拡散範囲」として取り扱うこととする。即ち、本発明における異方性光学フィルムは、導光板の出射面における出射強度が最大となる方向から入射があった場合に、その直線透過率が30%超となるため、前記導光板の出射面における出射強度が最大となる方向からの光に対して、低拡散性であると言える。
【0081】
ピラー構造の異方性光学フィルム3aでは、
図6(a)の透過光の様子を見ればわかるように、透過光は略円形状となっており、MD方向とTD方向とで略同一の光拡散性を示している。すなわち、ピラー構造の異方性光学フィルム3aでは、光の拡散は等方性を有する。
【0082】
また、
図8の実線で示すように、入射光角度を変えても光拡散性(特に、非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が比較的緩やかであるため、輝度の急激な変化やギラツキを生じないという効果がある。
【0083】
しかしながら、異方性光学フィルム3aでは、
図8の破線で示されたルーバー構造の異方性光学フィルム3bの光学プロファイルと比較すればわかるように、非拡散領域における直線透過率が低いため、表示特性(輝度やコントラスト等)がやや低下してしまうという問題もある。
【0084】
また、ピラー構造の異方性光学フィルム3aは、ルーバー構造の異方性光学フィルム3bと比較して、拡散領域の幅も狭い、という問題もある。
【0085】
他方、ルーバー構造の異方性光学フィルム3bでは、
図6(b)の透過光の様子を見ればわかるように、透過光は、略針状となっており、MD方向とTD方向とで光拡散性が大きく異なる。すなわち、ルーバー構造の異方性光学フィルム3bでは、光の拡散は異方性を有する。
【0086】
具体的には、
図6に示す例では、MD方向ではピラー構造の場合よりも拡散が広がっているが、TD方向ではピラー構造の場合よりも拡散が狭まっている。
【0087】
また、
図8の破線で示すように、入射光角度を変えると、(本形態の場合、TD方向において)光拡散性(特に、非拡散領域と拡散領域との境界付近における光学プロファイル)の変化が極めて急峻であるため、異方性光学フィルム3bを表示装置に適用した場合、輝度の急激な変化やギラツキとなって現れ、視認性を低下させるおそれがあった。
【0088】
さらに、ルーバー構造の異方性光学フィルムは光の干渉(虹)が生じやすい、という問題もある。
【0089】
一方、異方性光学フィルム3bでは、非拡散領域における直線透過率が高く、表示特性を向上させることができるという効果がある。
【0090】
上述したように、異方性光学フィルム内の複数の構造体のアスペクト比によって、異方性光学フィルムの光学特性は変化する。即ち、前記アスペクト比を調整することで、異方性光学フィルムの光学特性を調整することができる。
【0091】
ここで、前記アスペクト比は、複数の構造体における、複数の構造体の配向方向を法線方向とする平面における断面形状が長径(長軸)及び短径(短軸)を有する場合、長径/短径をアスペクト比とし、断面形状がほぼ円形であって、有意に長径及び短径を規定できない場合、長径及び短径が、いずれも円の直径に該当するものとし、この場合のアスペクトを1とする。
【0092】
前記径の測定方法は、公知の方法で測定することができる。測定方法としては、例えば、走査型電子顕微鏡などで、無作為に選んだ構造体10個の断面形状を観察して各径を測定し、その各平均径より、アスペクト比とすることができる。
【0093】
前記アスペクト比は、特に限定されないが、アスペクト比が大きくなるにつれ、輝度の急激な変化やギラツキを生じるおそれがあるため、1以上50未満であることが好ましく、1以上10以下であることがより好ましく、1以上5以下であることがさらに好ましい。上記アスペクト比をこのような範囲とすることで、輝度の急激な変化やギラツキを抑制し、光の拡散性・集光性により優れることとなる。
【0094】
また、前記異方性光学フィルムは、前記導光板の出射面内の出射強度が最大となる角度における入射光に対し、その直線透過率が30%超である。即ち、拡散性が低く、入射光の直線透過率を高い状態で通過させることができるため、導光板出射方向の照度を保持することができる。これにより、本発明の導光積層体を表示装置のフロントライトとして用いた際に、周囲環境が暗い場合には、光源を用いて、導光板単独のときと変わらない出射特性(拡散性)を有することが可能となる。
【0095】
さらに前記異方性光学フィルムの複数の構造体の散乱中心軸方向は、前記導光板の出射強度が最大となる方向とがなす角度が20°超であることが好ましい。このようにすることで、主な導光板出射面からの出射光が、異方性光学フィルム内ではより拡散されず、導光板の出射特性(拡散性)を損ないにくくする。
また、前記角度が20°以下の導光板出射光の入射角度範囲では、拡散性が高まり、直線透過率が低下してしまう恐れがある。
【0096】
そして前記異方性光学フィルムの複数の構造体の配向方向は、前記導光板の出射強度が最大となる方向とがなす角度が13°超であることが好ましい。このようにすることで、主な導光板出射面からの出射光が、異方性光学フィルム内ではより拡散されず、導光板の出射特性(拡散性)を損ないにくくする。
また、前記角度が13°以下の導光板出射光の入射角度範囲では、拡散性が高まり、直線透過率が低下してしまう恐れがある。
【0097】
2―1-2-3.異方性光学フィルムの製造方法
本発明にかかる異方性光学フィルムは、公知の方法で製造することができ、特に限定されない。本発明にかかる異方性光学フィルムの好適な製造方法としては、例えば、ピラー構造の異方性光学フィルムについては国際公開WO2015/111523号公報を、ルーバー構造の異方性光学フィルムについては特開2015-127819号公報に開示された製造方法を用いることができる。
【0098】
2-1-2-4.導光積層体の製造方法
本発明にかかる導光積層体は、上述した導光板と、異方性光学フィルムを、直接または他の層を介して積層する。積層方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、平板上で行うローラーによる貼合方法や二つのローラーの隙間を通す貼合方法などを挙げることができる。粘着剤層等を含む場合等には、必要に応じて加熱して貼り合わせる方法等を用いることができる。
【0099】
2-1-2-5.導光積層体の用途
前記導光積層体は、導光板の側面部(端面)に光源を設置することでエッジ型ライト方式の表示装置用面状照明装置として用いることができる。光源は、導光板の一つまたは、複数の側面部(端面)に設置することができる。複数の側面部に光源を設置する場合には、上述したように導光板表面のドット構造の分布密度を調整することができる。装置の省サイズ化の観点から光源は一つの側面部に設置することが好ましい。
【0100】
前記光源は公知のものが使用でき、特に限定されない。例としては棒状の冷陰極管やLEDなどが挙げられる。省サイズ化や消費電力の観点からLED光源が好ましい。
【0101】
前記面状照明装置は、表示装置用のフロントライトとして用いることができる。
【0102】
前記表示装置用面状照明装置は、透過型表示装置、反射型表示装置に用いられる。
【0103】
2-1-2-6.表示装置用面状照明装置とした際の導光積層体による光学作用
本発明の導光積層体は、光源を設置して表示装置用面状照明装置とした際、太陽光や照明等の外光により周囲環境が明るい場合には、表示装置用面状照明装置は光源を用いる必要がないが、外光が導光板の光偏向面側より入射した後、異方性光学フィルム内で、異方性光学フィルムの散乱中心軸方向及び複数の構造体の配向方向を中心とする、光の拡散及び集光が起こるため、外光のみの場合であっても、十分に明るい(視認性の高い)特性を有する導光積層体、及び、それを用いた表示装置用照明装置とすることができる。
【0104】
また、周囲環境が暗い場合には、光源を用いることとなるが、導光板出射面からの光の出射強度が最大となる方向において出射した光が、異方性光学フィルムに対して入射した際の異方性光学フィルムの直線透過率が30%超であるため、異方性光学フィルムの散乱中心軸方向及び複数の構造体の配向方向と、導光板の出射方向との差が大きい。したがって導光板出射強度最大光の異方性光学フィルム内での拡散性が低く、導光板から異方性光学フィルム内に入射した入射光を、直線透過率が高い状態で通過させて出射することができるので、導光板出射方向の照度を保持することができ、導光板単独のときと変わらない出射特性(拡散性)とすることができる。
【実施例】
【0105】
次に、本発明を実施例及び比較例により、さらに具体的に説明するが、本発明は、これらの例によって何ら限定されるものではない。
【0106】
(導光板の作製)
本発明で用いられる導光板は、公知のナノインプリント技術を用い、主面が130mm×90mm、厚みが2mmのPMMAのシートに、大きさが縦横共に約10μm、深さが約10μmの
図4(f)に示す形状の凹型ドット構造が、約100個/mm
2の密度で存在するものを作製し、導光板1とした。
また、凹型ドット構造が
図4(a)に示す形状である他は、導光板1と同様に作製したものを、導光板2とした。
【0107】
(導光板面状照明装置の作製)
上記で作製した導光板出射面側に、透明性シリコン粘着フィルム(NSA-50、株式会社ニッパ製)を介して光学PETフィルム(A4100、東洋紡株式会社製)を貼り合わせた。
続いて導光板の90mm辺端部に対し、15mmの間隔で5個のLED光源(200mW)を設置して、導光板面状照明装置とした。
【0108】
(導光板面状照明装置の光学特性評価)
導光板面状照明装置のLED光源を点灯し、導光板の光出射側の出射面、または光偏向面の中心付近より出射される光の照度(出射強度)を、変角光度計ゴニオフォトメータ(株式会社ジェネシア製)にて測定することで、導光板の光学特性を評価した。なお、照度測定時、測定する面とは反対側の面(出射面または光偏向面)からの光の影響を避けるため、反対側の面に対し、厚み2mmの黒色フェルトシート(FU-714、和気産業株式会社製)を密着させて測定した。
本測定により、出射面における光の照度の最大値(出射強度の最大値)を示す出射光方向と、出射面の法線方向とがなす角度をθLGmaxとした。
続いて出射面における光の照度測定値のグラフ(出射光プロファイル)でのHWHM(Half Width Half Maximum)を、光拡散性の指標である拡散幅とした(ただし本実施例において、出射強度が最大となる出射光角度が、出射面の法線方向である0°から大きく離れているため、グラフの測定範囲内で、出射強度の1/2となる出射光角度が1点しか確認できない場合、出射強度が最大となる出射光角度と、出射強度が1/2となる出射光角度の確認可能な1角度との差の絶対値を、HWHMである拡散幅とした)。
以上、導光板面状照明装置とした際の、光学特性の評価結果を表1に示す。
【0109】
【0110】
(異方性光学フィルムの作製)
異方性光学フィルム(LCF1~13)の作製方法は、まず、ピラー構造の異方性光学フィルムについては国際公開WO2015/111523を、続いてルーバー構造の異方性光学フィルムについては特開2015-127819を、参考として各種条件を振ることにより、表2に記載の構造体を有する厚み40μmの異方性光学フィルム(LCF1~13)を作製した。
【0111】
【0112】
(異方性光学フィルムの特性評価)
作製した異方性光学フィルム(LCF1~13)の特性評価は、以下のようにして実施した。
【0113】
(異方性光学フィルムの厚み)
異方性光学フィルム(LCF1~13)の厚みは、異方性光学フィルムの厚み方向断面を、光学顕微鏡で観察することにより測定した。
【0114】
(アスペクト比)
異方性光学フィルム(LCF1~13)の表面(製造時の紫外線照射側)を、光学顕微鏡で観察し、任意の10個の構造の径(径または長径及び短径)を測定し、各々の平均値を算出した後、算出された径に基づき、アスペクト比(長径及び短径を有する場合には、平均長径/平均短径、径のみの場合には1とする)を算出した。
【0115】
(配向角)
異方性光学フィルム(LCF1~13)の複数の構造体の配向方向の角度(配向角)は、異方性光学フィルムの厚み方向断面を観察することにより測定した。
【0116】
(散乱中心軸角度、直線透過率)
図7に示すような、変角光度計ゴニオフォトメータ(株式会社ジェネシア製)を用いて、実施例及び比較例の異方性光学フィルムの光学特性の評価を行った。固定した光源からの直進光を受ける位置に検出器を固定し、その間のサンプルホルダーに異方性光学フィルム(LCF1~13)のサンプルをセットした。
図7に示すように直線(L)を回転軸としてサンプルを回転させてそれぞれの入射光角度(直進光が異方性光学フィルム平面の法線方向となる0°を含む)に対応する直線透過光量を測定し、直線透過率を出した。ここで
図7に示されている直線(L)は、
図6に示される各構造におけるTD方向と同じ軸である。なお、直線透過光量の測定は、視感度フィルターを用いた可視光領域の波長において測定した。
上記直線透過率に基づき光学プロファイルを作成し、当該光学プロファイルより、略対称性を有する入射光角度を散乱中心軸角度(θ
LCF)とし、導光板の光学特性評価で得られた、出射強度の最大値(-5°と+55°)を示す出射光角度における直線透過率を得た。
【0117】
以上、作製した異方性光学フィルム(LCF1~13)の特性評価結果を表2に示す。
【0118】
(等方性散乱体の作製)
比較用等方性散乱体を、以下のようにして作製した。
下記屈折率1.47のアクリル系粘着剤組成物100質量部に対し、粘着剤組成物とは屈折率の異なる微粒子として、シリコーン樹脂微粒子(トスパール145、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製)を適宜添加して希望とするヘイズ値に調整した。その際、アジターにて30分間の撹拌を行い微粒子分散塗液とした。当該塗液を、コンマコーターを用いて、離型PETフィルム1(セラピール BX8A、東レフィルム加工株式会社製)上に、溶剤乾燥後の膜厚が40μmとなるように塗工し、乾燥させて、PET付きの等方性散乱体を作製した。さらに、散乱体表面に対し、離型PETフィルム1よりも剥離力の高い、厚さ38μmの離型PETフィルム2(セラピール BXE、東レフィルム加工株式会社製)をラミネートし、両面PET付きの等方性の拡散粘着層である等方性散乱体(DA1)を作製した。
アクリル系粘着剤組成物
・アクリル系粘着剤(全固形分濃度18.8%、溶剤:酢酸エチル、メチルエチルケトン) 100質量部
(綜研化学社製、商品名:SKダインTM206)
・イソシアネート系硬化剤 0.5質量部
(綜研化学社製、商品名:L-45)
・エポキシ系硬化剤 0.2質量部
(綜研化学社製、商品名:E-5XM)
【0119】
(等方性散乱体のヘイズ値の評価)
ヘイズ値の測定は、日本電色社工業株式会社製のヘイズメーター、NDH-2000を用いて、JIS K7136に準拠して測定した。
以上、作製した等方性散乱体(DA1)のヘイズ値の評価結果を表3に示す。
【0120】
【0121】
(導光積層体の作製)
上記得られた導光板(導光板1及び2)の出射面に対し、透明性シリコン粘着フィルム(NSA-50、株式会社ニッパ製)を貼り合わせた後、貼り合わせた粘着フィルムの表面に対し、異方性光学フィルム(LCF1~13)または等方性散乱体(DA1)を貼り合わせることにより、表4に示す導光積層体(積層体1~5、比較積層体1~10)を得た。
作製した各導光積層体に対し、使用した導光板と、導光板の出射強度が最大値を示す出射光角度(θLGmax)と、使用した異方性光学フィルム及び等方性散乱体名と、異方性光学フィルムの散乱中心軸角度(θLCF)と、導光板出射強度の最大値を示す出射光角度における異方性光学フィルムの直線透過率と、θLGmaxとθLCFとの差の絶対値であるθLGmax-θLCFとをまとめ、表4に示した。
【0122】
【0123】
(導光積層体面状照明装置の作製と導光積層体面状照明装置の光学特性評価)
導光積層体面状照明装置の作製は、上記導光板面状照明装置の作製における導光板及び透明性シリコン粘着フィルムの代わりに、上記で作製した導光積層体(積層体1~5、比較積層体1~10)を用いた他は同様にして、表5に示す導光積層体面状照明装置(実施例1~5、比較例1~10)を得た。
また、導光積層体面状照明装置の光学特性評価も、導光板面状照明装置の代わりに、上記で作製した導光積層体面状照明装置(実施例1~5、比較例1~10)を用い、上記導光板面状照明装置での出射面における評価は、導光積層体面状照明装置では、異方性光学フィルムまたは等方性散乱体側の表面に置き換えて評価することの他は、上記導光板面状照明装置の光学特性評価と同様に行い、評価した。
【0124】
(反射輝度の評価)
導光積層体面状照明装置の異方性光学フィルムまたは等方性散乱体側表面に、透明粘着層を介して、平滑な鏡面反射板(反射率約90%)を貼り合わせたものを作製し、反射輝度評価用サンプルとした。
変角光度計ゴニオフォトメータ(株式会社ジェネシア製)を用いて、前述の反射輝度評価用サンプルの反射輝度を測定した(その際、面状照明装置の光源は評価中点灯させないものとした)。具体的には、ハロゲンランプ光源からコリメート・レンズを介してコリメート光を、評価用サンプルの法線方向に対して-30°の入射角で光偏向面側より照射した。この際、異方性光学フィルムを用いたサンプルの場合は、散乱中心軸の方位角方向とは180°異なる方位角方向(反対の方位角)からコリメート光を照射した。尚、異方性光学フィルムを用いていないサンプルの場合の方位角方向は任意である。検出器をサンプルの法線方向に設置して(測定角を+15°とする)、反射輝度を測定した。予め、入射角-30°、測定角+30°において、標準白色板で反射輝度を測定し、下記式にて反射輝度ゲインを算出した。
反射輝度ゲイン=(サンプルの反射輝度÷標準白色板の反射輝度)×100
【0125】
以上、導光積層体面状照明装置に用いた導光積層体の関係と、導光積層体面状照明装置とした際の光学特性及び反射輝度の評価結果を以下表5に示した。さらに拡散幅及び反射輝度においては、以下評価基準により、評価し、表5に示した。
【0126】
(拡散幅評価基準)
○:拡散幅が、使用した各導光板面状照明装置の拡散幅に対し、-10%~+10%の範囲内の値であるもの
×:拡散幅が、使用した各導光板面状照明装置の拡散幅に対し、-10%より小さい、または+10%よりも大きい値であるもの
【0127】
(反射輝度評価基準)
○:反射輝度が10以上、反射輝度が十分である(明るく、視認性が良い)
×:反射輝度が10未満、反射輝度が不十分である(暗く、視認性が悪い)
【0128】
【0129】
(評価結果)
表5に示されるとおり、本発明実施例1~5は、比較例1~10に対し、導光板面状照明装置の拡散幅に近い(-10%~+10%の範囲内)拡散幅を保持しつつ、反射輝度が十分良好である、つまり、表示装置用面状照明装置とした際、周囲環境が暗く、光源を用いた際でも、導光板単独のときと変わらない出射特性を(拡散性)有することができ、周囲環境が明るく、光源を用いない場合であっても、十分に明るい(視認性の高い)特性を有するものであることが分かる。
これに対し、ヘイズ値が85%の等方性散乱体DA1を用いた比較例1及び9や、導光板の光の出射強度が最大となる出射光角度での異方性光学フィルムの直線透過率が30%以下である、LCF4~10及び13を用いた比較例2~8、10は、導光板面状照明装置の拡散幅と差が大きい値(-10%より小さい、または+10%よりも大きい値)であり、導光板の有する特性を損なってしまっていることが分かる。これは、導光板の光の出射強度が最大となる出射光角度での等方性散乱体による等方性の光拡散性や、異方性光学フィルムの拡散性の高さによるものであるものと推測された。
さらに比較例3では、上記導光板の有する特性を損なってしまっていることに加えて、異方性光学フィルムの散乱中心軸角度及び配向角が0°であるLCF5を用いているため、外光のみの光に対する反射輝度値も低く、視認性も悪いという結果となった。
【0130】
以上、本発明は、周囲環境が暗い場合には、光源を用いて、導光板単独のときと変わらない出射特性(拡散性)を有し、周囲環境が明るい場合には、光源を用いない場合であっても、十分に明るい(視認性の高い)特性を有する導光積層体、及び、それを用いた表示装置用面状照明装置を提供することができるものである。
【符号の説明】
【0131】
1 :導光積層体
2 :導光板
3 :異方性光学フィルム
3a :ピラー構造の異方性光学フィルム
3b :ルーバー構造の異方性光学フィルム
4 :偏光板
5 :位相差板
6 :封止層
7 :透明板
10,11 :光源
21 :出射面
22 :光偏向要素
23 :凹型光偏向要素
24 :凸型光偏向要素
25 :光偏向面
26 :導光板端面
31a,31b :マトリックス領域
32a :ピラー構造体
32b :ルーバー構造体
40 :光源
41 :検出器
71 :主面