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特許7428989液化ガス運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法
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  • 特許-液化ガス運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】液化ガス運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法
(51)【国際特許分類】
   F02M 21/02 20060101AFI20240131BHJP
   B63H 21/38 20060101ALI20240131BHJP
   F02M 31/125 20060101ALI20240131BHJP
   F02M 31/20 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F02M21/02 U
B63H21/38 B
F02M31/125 D
F02M31/125 L
F02M31/20 E
F02M31/20 J
F02M31/20 L
【請求項の数】 17
(21)【出願番号】P 2023511893
(86)(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-09-06
(86)【国際出願番号】 KR2020018578
(87)【国際公開番号】W WO2022050513
(87)【国際公開日】2022-03-10
【審査請求日】2023-02-16
(31)【優先権主張番号】10-2020-0112189
(32)【優先日】2020-09-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】517430897
【氏名又は名称】ハンファ オーシャン カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】キム,ドゥ ヒョク
(72)【発明者】
【氏名】リー,ヒョン シク
(72)【発明者】
【氏名】リー,キョ スン
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-349084(JP,A)
【文献】特開2011-106469(JP,A)
【文献】特開2019-048509(JP,A)
【文献】特表2019-500258(JP,A)
【文献】特表2020-507703(JP,A)
【文献】特表2021-526106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 21/02
F02M 31/125
F02M 31/20
B63H 21/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のデッキに設けられる燃料供給タンクから船内エンジンに液化ガスを供給する燃料供給ライン;と、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記燃料供給タンクから前記船内エンジンに供給される液化ガスを搬送する搬送ポンプ;と、
前記燃料供給ラインに設けられて、前記液化ガスを前記船内エンジンが必要とする圧力まで加圧する加圧ポンプ;と、
前記液化ガスのうち前記船内エンジンで使用されずに残った液化ガスを、前記船内エンジンの上流に再循環させるリターンライン;と、
前記リターンラインに設けられて、再循環する前記液化ガスが供給されて液化ガスを気液分離するセパレータ;と、
前記セパレータで分離された液状の液化ガスを、前記燃料供給ラインの前記搬送ポンプの下流に供給するリキッドライン;と、
前記燃料供給ラインの前記リキッドラインとの合流ポイントの下流に設けられて、前記液化ガスを冷却するクーラー;と、
前記搬送ポンプと前記リキッドラインの合流ポイントとの間で、前記燃料供給ラインから分岐して前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスの全部または一部を前記クーラーに冷媒として供給する冷媒供給ライン:とを備える、
液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項2】
前記冷媒供給ラインは前記燃料供給タンクに接続されて、前記クーラーで冷媒として使用された液化ガスが前記燃料供給タンクに回収されることを特徴とする、
請求項1記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項3】
前記冷媒供給ラインに設けられる温度調整バルブ;と、
前記冷媒供給ラインのクーラーの上流から分岐して前記燃料供給タンクに接続される分岐ライン;と、
前記分岐ラインに設けられる流量調整バルブ:とをさらに備え、
前記搬送ポンプが必要とする最小流量よりも前記クーラーが必要とする冷媒流量が少ない場合に、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスのうち、前記クーラーが必要とする冷媒流量を超える液化ガスを、前記分岐ラインを介して前記燃料供給タンクに回収することを特徴とする、
請求項2記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項4】
前記燃料供給ラインの前記クーラーの上流に設けられて、液化ガスを加熱する燃料ヒーター;と、
前記燃料供給ラインの前記クーラーの下流に設けられて、前記加圧ポンプに供給される液化ガスの温度を検知する第1温度検知部;とをさらに備える、
請求項3記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項5】
前記燃料供給ラインの前記加圧ポンプの下流に設けられて、前記加圧ポンプを経由して前記船内エンジンに供給される液化ガスの温度を検知する第2温度検知部;をさらに備え、
前記第1温度検知部で検知された液化ガスの温度が25℃未満であれば、前記燃料ヒーターに蒸気を供給して、前記液化ガスを加熱し、
前記第1温度検知部で検知された液化ガスの温度が33℃以上であれば、前記温度調整バルブを開放して、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスを前記冷媒供給ラインを介して前記クーラーに供給して、
前記第2温度検知部で検知される液化ガスの温度が26~44℃の範囲に維持されることを特徴とする、
請求項4記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項6】
前記セパレータで分離された気体を前記燃料供給タンクに回収するベイパーライン;と、
前記ベイパーラインに設けられる圧力調整バルブ;とをさらに備えることを特徴とする、
請求項1記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項7】
前記搬送ポンプの下流の圧力を検知して、検知された圧力に応じて前記圧力調整バルブの開度を調整し、前記セパレータ内の圧力が前記搬送ポンプの下流の圧力よりも0.5~2bar高く維持されることを特徴とする、
請求項6記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項8】
前記リターンラインの前記セパレータの上流に設けられて、再循環する前記液化ガスを減圧する減圧部;をさらに備えることを特徴とする、
請求項1記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項9】
前記リターンラインは、
前記船内エンジンから前記セパレータに接続される第1リターンライン;と、
前記加圧ポンプの下流の燃料供給ラインから前記セパレータに接続される第2リターンライン:とを備えることを特徴とする、
請求項8記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項10】
前記減圧部は、
前記第1リターンラインに設けられて、前記船内エンジンから回収された液化ガスを減圧する第1減圧装置;と、
前記第2リターンラインに設けられる第2減圧装置:とを備えることを特徴とする、
請求項9記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項11】
前記船舶に設けられて、輸送される液化ガスを貯蔵するカーゴタンクから発生する蒸発ガスが供給されて蒸発ガスを再液化する再液化部;と、
前記再液化部から前記燃料供給タンク内を経由して前記カーゴタンクに接続される冷却ライン;とをさらに備え、
前記再液化部で再液化された液化ガスが、前記冷却ラインを通過することで前記燃料供給タンク内を冷却して前記カーゴタンクに戻されることを特徴とする、
請求項1~10のいずれか1項に記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項12】
前記搬送ポンプ及び前記加圧ポンプが、サイドチャネルポンプ(side channel pump)であることを特徴とする、
請求項11記載の液化ガス運搬船の燃料供給システム。
【請求項13】
船舶のデッキに設けられる燃料供給タンクから、燃料供給ラインを介して、液化ガスを搬送ポンプ及び加圧ポンプで加圧した後、船内エンジンに燃料として供給し、
前記船内エンジンで使用されずに残った液化ガスを、リターンラインを介して前記船内エンジンの上流に再循環させて、前記リターンラインに設けられるセパレータで再循環液化ガスを気液分離し、
前記セパレータで分離された液状の液化ガスを、リキッドラインを介して前記搬送ポンプの下流の燃料供給ラインに供給し、
前記燃料供給ラインの前記リキッドラインとの合流ポイントの下流にクーラーを設け、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスの全部または一部を前記リキッドラインの合流ポイントの上流から分岐させて、前記クーラーに冷媒として供給して前記燃料供給ラインの液化ガスを冷却することを特徴とする、
液化ガス運搬船の燃料供給方法。
【請求項14】
前記クーラーで冷媒として使用された液化ガスは前記燃料供給タンクに回収され、
前記搬送ポンプが必要とする最小流量よりも前記クーラーが必要とする冷媒流量が少ない場合に、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスのうち、前記クーラーが必要とする冷媒流量を超える液化ガスを、前記クーラーの上流から分岐させて、前記クーラーを迂回させて前記燃料供給タンクに回収することを特徴とする、
請求項13記載の液化ガス運搬船の燃料供給方法。
【請求項15】
前記燃料供給ラインの前記クーラーの上流に燃料ヒーターを設け、
前記クーラーの下流で前記加圧ポンプに供給される液化ガスの温度を検知し、
検知された液化ガスの温度が25℃未満であれば、前記燃料ヒーターに蒸気を供給して前記液化ガスを加熱し、
検知された液化ガスの温度が33℃以上であれば、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスを前記リキッドラインの合流ポイントの上流から分岐させて、前記クーラーに冷媒として供給して前記液化ガスを冷却し、
前記加圧ポンプの下流で前記船内エンジンに供給される液化ガスの温度を26~44℃の範囲に維持することを特徴とする、
請求項14記載の液化ガス運搬船の燃料供給方法。
【請求項16】
前記船内エンジンで使用されずに前記リターンラインを介して再循環される液化ガスは、減圧されて冷却された後、前記セパレータで気液分離されることを特徴とする、
請求項15記載の液化ガス運搬船の燃料供給方法。
【請求項17】
前記搬送ポンプ及び前記加圧ポンプとして、サイドチャネルポンプ(side channel pump)を用いることを特徴とする、
請求項16記載の液化ガス運搬船の燃料供給方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液化ガス運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法に関する。より詳細には、LPGなどの液化ガスを燃料として使用する船舶において、エンジンに過剰量が供給されて残った液化ガスを回収して、再循環させながらエンジンへ効果的に燃料を供給する、液化ガス運搬船の燃料供給システム及び燃料供給方法に関する。
【背景技術】
【0002】
LNG(Liquefied Natural Gas)やLPG(Liquefied Petroleum Gas)などの液化ガスの消費量が世界的に急増している。液化ガスは、陸上または海上のガス配管を介して気体状態で供給されるか、または液化状態で液化ガス運搬船に貯蔵されて遠距離の消費先に運搬される。LNGやLPGなどの液化ガスは、天然ガスまたは石油ガスを極低温(LNGの場合は約-163℃)に冷却して得られるもので、気体状態と比べて体積が大幅に減少するため、海上の遠距離運送に非常に適している。
【0003】
石油ガスの液化温度は大気圧で約-42℃の低温であり、18barでは約45℃の温度まで、7barでは20℃の温度まで液体状態で貯蔵することができる。LPGは大気圧で-42℃より高温になると蒸発することから、船舶のLPG貯蔵タンクには断熱処理が施されている。しかし、外部熱がLPGまで絶えず伝達されるため、LPG輸送過程では、LPG貯蔵タンク内で連続的にLPGが気化し、LPG貯蔵タンク内で蒸発ガス(Boil-Off Gas、ボイルオフガス)が発生する。
【0004】
LPG運搬船は、LPG貯蔵タンク内で蒸発ガスが蓄積することで、LPG貯蔵タンク内の圧力が過度に上昇する。このため、LPG貯蔵タンクは耐圧構造を有し、さらに、LPG運搬船には、LPG貯蔵タンク内で発生する蒸発ガスを処理するための蒸発ガス再液化装置が設けられている。
【0005】
ところで、従来のLPG運搬船などでは、船舶の推進燃料として、比較的低価格のバンカーC油などの重油を使用する重油燃料供給システムが採用される。しかし、このような重油燃料供給システムは、重油燃料の使用に対する国際的な排ガス排出規制強化によって、硫黄成分の少ない重油燃料タンク(LSHFO tank)を追加設置する必要があり、国際的な環境規制基準に見合う環境に優れた燃料供給システムへの要求が高まっている。
【0006】
近年、LPG運搬船やLNG運搬船は、LPGやLNG及びそれらから発生する蒸発ガスを推進燃料として使用する燃料供給システムを適用したものが増え、国際的な排ガス排出規制の強化に伴って、LPG運搬船やLNG運搬船以外の一般の船舶でもLNGなどを推進燃料として使用する船舶が増加している。
【0007】
特にLPGは、極低温で液化するLNGと比べて貯蔵が容易である。また、従来のHFOと比べて比エネルギー(specific energy)やエネルギー密度(energy density)の面で大きく低下せず、従来のHFOと比べてSOx、NOx、CO、PMなどの低減効果に優れるという利点がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
LPGを燃料として使用する船舶において、エンジンに燃料として供給されるLPGは、燃料供給タンクから加圧用ポンプ、ヒーターなどを備える燃料供給部(Fuel Supply System)を経由し、エンジンの燃料供給条件に調整されて船舶のエンジンに供給される。
【0009】
非圧縮性流体であるLPGは、エンジン負荷変動に直ちに対応できるように、エンジンが必要とする燃料量よりも過剰量の燃料を供給し、過剰量が供給された燃料のうち使用されずに残ったLPG、エンジンの負荷変動による燃料消費率の変化で残ったLPGや、エンジンが停止した時にエンジン及び配管に残っているLPGが、エンジンの上流に回収される。
【0010】
ここで、回収されたLPGをそのまま排出して焼却させると、燃料を浪費してしまうという問題がある。一方で、回収されたLPGをカーゴタンクに送ると、エンジンで混入した潤滑油によって、貨物であるLPGが汚染されてしまう虞がある。また、回収されたLPGは、エンジンの燃料供給条件に応じて加圧及び加熱された高温高圧の状態であり、これを燃料供給タンクに送ると燃料供給タンク内の圧力及び温度を上昇させてしまうという不具合がある。
【0011】
本発明は、これらの問題を解決し、エンジンから回収されるLPGを効果的に処理しながら、燃料を効果的に供給することができる燃料供給システム及び燃料供給方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため本発明の一の形態では、船舶のデッキに設けられる燃料供給タンクから船内エンジンに液化ガスが供給される燃料供給ラインと、前記燃料供給ラインに設けられて、燃料供給タンクから船内エンジンに供給される液化ガスを搬送する搬送ポンプと、前記燃料供給ラインに設けられて、前記液化ガスを船内エンジンが必要とする圧力まで加圧する加圧ポンプと、前記液化ガスのうちエンジンで消費されていない液化ガスを、前記船内エンジンの上流に再循環させるリターンラインと、前記リターンラインに設けられて、再循環する前記液化ガスが供給されて液化ガスを気液分離するセパレータと、前記セパレータで分離された液状の液化ガスを、前記燃料供給ラインの前記搬送ポンプの下流に供給するリキッドラインと、前記燃料供給ラインの前記リキッドラインとの合流ポイントの下流に設けられて、前記液化ガスを冷却するクーラーと、前記搬送ポンプと前記リキッドラインの合流ポイントとの間で、前記燃料供給ラインから分岐して前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスの全部または一部を前記クーラーに冷媒として供給する冷媒供給ラインとを備える、液化ガスを運搬船の燃料供給システムが提供される。
【0013】
好ましくは、前記冷媒供給ラインは前記燃料供給タンクに接続され、前記クーラーで冷媒として使用された液化ガスが前記燃料供給タンクに回収される。
【0014】
好ましくは、前記冷媒供給ラインに設けられる温度調整バルブと、前記冷媒供給ラインでクーラーの上流から分岐して前記燃料供給タンクに接続される分岐ラインと、前記分岐ラインに設けられる流量調整バルブとをさらに備え、前記搬送ポンプが必要とする最小流量よりも前記クーラーが必要とする冷媒流量が少ない場合に、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスのうち、前記クーラーが必要とする冷媒流量を超える液化ガスを、前記分岐ラインを介して前記燃料供給タンクに回収する。
【0015】
好ましくは、前記燃料供給ラインの前記クーラーの上流に設けられて、液化ガスを加熱する燃料ヒーターと、前記燃料供給ラインの前記クーラーの下流に設けられて、前記加圧ポンプに供給される液化ガスの温度を検知する第1温度検知部とをさらに備える。
【0016】
好ましくは、前記燃料供給ラインの前記加圧ポンプの下流に設けられて、前記加圧ポンプを経由して前記船内エンジンに供給される液化ガスの温度を検知する第2温度検知部をさらに備え、前記第1温度検知部で検知された液化ガスの温度が25℃未満であれば、前記燃料ヒーターに蒸気を供給して前記液化ガスを加熱し、前記第1温度検知部で検知された液化ガスの温度が33℃以上であれば、前記温度調整バルブを開放して、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスを前記冷媒供給ラインを介して前記クーラーに供給して、前記第2温度検知部で検知される液化ガスの温度が26~44℃の範囲に維持される。
【0017】
好ましくは、前記セパレータで分離された気体を前記燃料供給タンクに回収するベイパーラインと、前記ベイパーラインに設けられる圧力調整バルブとをさらに備える。
【0018】
好ましくは、前記搬送ポンプの下流の圧力を検知し、検知された圧力に応じて前記圧力調整バルブの開度を調整し、前記セパレータ内の圧力が前記搬送ポンプの下流の圧力よりも0.5~2bar高く維持される。
【0019】
好ましくは、前記リターンラインの前記セパレータの上流に設けられて、再循環する前記液化ガスを減圧する減圧部をさらに備える。
【0020】
好ましくは、前記リターンラインは、前記船内エンジンから前記セパレータに接続される第1リターンラインと、前記加圧ポンプの下流の燃料供給ラインから前記セパレータに接続される第2リターンラインとを備える。
【0021】
好ましくは、前記減圧部は、前記第1リターンラインに設けられて、前記船内エンジンから回収された液化ガスを減圧する第1減圧装置と、前記第2リターンラインに設けられる第2減圧装置とを備える。
【0022】
好ましくは、前記船舶に設けられて、輸送される液化ガスを貯蔵するカーゴタンクから発生する蒸発ガスを供給されて蒸発ガスを再液化する再液化部と、前記再液化部から前記燃料供給タンク内を経由して前記カーゴタンクに接続される冷却ラインとをさらに備え、前記再液化部で再液化された液化ガスが、前記冷却ラインを通過することで前記燃料供給タンク内を冷却して前記カーゴタンクに戻される。
【0023】
好ましくは、前記搬送ポンプ及び前記加圧ポンプが、サイドチャネルポンプ(side channel pump)である。
【0024】
本発明の他の形態では、船舶のデッキに設けられる燃料供給タンクから、燃料供給ラインを介して、液化ガスを搬送ポンプ及び加圧ポンプで加圧した後、船内エンジンに燃料として供給し、前記船内エンジンで使用されずに残った液化ガスを、リターンラインを介して前記船内エンジンの上流に再循環させて、前記リターンラインに設けられるセパレータで再循環液化ガスを気液分離し、前記セパレータで分離された液状の液化ガスを、リキッドラインを介して前記搬送ポンプの下流の燃料供給ラインに供給し、前記燃料供給ラインの前記リキッドラインとの合流ポイントの下流にクーラーを設け、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスの全部または一部を前記リキッドラインの合流ポイントの上流から分岐させて、前記クーラーに冷媒として供給して前記燃料供給ラインの液化ガスを冷却することを特徴とする、液化ガス運搬船の燃料供給方法が提供される。
【0025】
好ましくは、前記クーラーで冷媒として使用された液化ガスは前記燃料供給タンクに回収され、前記搬送ポンプが必要とする最小流量よりも前記クーラーが必要とする冷媒流量が少ない場合に、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスのうち、前記クーラーが必要とする冷媒流量を超える液化ガスを、前記クーラーの上流から分岐させて、前記クーラーを迂回させて前記燃料供給タンクに回収される。
【0026】
好ましくは、前記燃料供給ラインの前記クーラーの上流に燃料ヒーターを設け、前記クーラーの下流で前記加圧ポンプに供給される液化ガスの温度を検知し、検知された液化ガスの温度が25℃未満であれば、前記燃料ヒーターに蒸気を供給して前記液化ガスを加熱し、検知された液化ガスの温度が33℃以上であれば、前記搬送ポンプでポンピングされた液化ガスを前記リキッドラインの合流ポイントの上流から分岐させて、前記クーラーに冷媒として供給して前記液化ガスを冷却し、前記加圧ポンプの下流で前記船内エンジンに供給される液化ガスの温度を26~44℃の範囲に維持する。
【0027】
好ましくは、前記船内エンジンで使用されずに前記リターンラインを介して再循環される液化ガスは、減圧されて冷却された後、前記セパレータで気液分離される。
【0028】
好ましくは、前記搬送ポンプ及び前記加圧ポンプとして、サイドチャネルポンプ(side channel pump)を用いる。
【発明の効果】
【0029】
本発明では、エンジンで使用されずに残った液化ガスを、リターンラインを介してエンジンの上流に再循環させ、リターンラインに設けられるセパレータで再循環液化ガスを気液分離し、分離された液化ガスを搬送ポンプの下流の燃料供給ラインに供給して再循環させる。
【0030】
特に燃料供給ラインのリキッドラインとの合流ポイントの下流にクーラーを設け、搬送ポンプでポンピングされた燃料供給タンクの液化ガスをクーラーに冷媒として供給して、再循環液化ガスを冷却することで、別途冷媒を設ける必要がなく、燃料供給ラインの液化ガスの温度を効果的に調整することができる。
【0031】
また、エンジンから回収された再循環液化ガスを、セパレータを経由させて燃料供給ラインに再循環させるため、エンジンを経由することで燃料に混入した潤滑油が燃料供給タンクに混入することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1】本発明の実施形態の液化ガス運搬船の燃料供給システムを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の作動上の利点及び実施によって達成する目的を説明するため、本発明の実施形態を例示した添付図面及び添付図面に記載された内容を参照する。
【0034】
以下、添付した図面を参照して、本発明の実施形態の構成及び作用を詳細に説明する。ここで、各図面の構成要素に付した参照符号について、同一の構成要素には、他の図面上に表示されているものにも可能な限り同一の符号で表記している。
【0035】
後述する本発明の実施形態では、船舶は、液化石油ガスを推進用エンジンの燃料としてまたは発電用エンジンの燃料として使用できるエンジンが設置される、あらゆる種類の船舶であり得る。船舶としては、例えば、LPG運搬船、LNG運搬船(LNG Carrier)、液体水素運搬船、LNG RV(Regasification Vessel)などの自走能力を備える船舶をはじめ、LNG-FPSO(Floating Production Storage Offloading)、LNG-FSRU(Floating Storage Regasification Unit)などの推進能力を有しない海上浮遊式の海上構造物も含まれる。
【0036】
また、本実施形態は、低温で液化して輸送することができ、貯蔵状態で蒸発ガスが発生し、エンジンに燃料として使用可能なすべての種類の液化ガスの燃料供給システムに適用することができる。このような液化ガスは、例えば、LNG(Liquefied Natural Gas)、LEG(Liquefied Ethane Gas)、LPG(Liquefied Petroleum Gas)、液化エチレンガス(Liquefied Ethylene Gas)、液化プロピレンガス(Liquefied Propylene Gas)などの液化石油ガスやアンモニアなどがある。ただし、後述する実施形態では、代表的な液化ガスの1つであるLPGを例に説明する。
【0037】
図1に、本発明の実施形態の液化ガス運搬船の燃料供給システムを概略的に示す。
【0038】
図1に示すように、本実施形態の燃料供給システムは、船舶のデッキに設けられて、燃料供給タンクDTから船内エンジンE(以下、単に「エンジンE」ともいう)に液化ガスを供給する燃料供給ラインSLと、燃料供給ラインSLに設けられて、燃料供給タンクDTからエンジンEに供給される液化ガスを搬送する搬送ポンプ100と、燃料供給ラインSLに設けられて、液化ガスをエンジンEが必要とする圧力まで加圧する加圧ポンプ110と、液化ガスのうちエンジンEで使用されずに残った液化ガスをエンジンEの上流に再循環させるリターンラインRL1と、リターンラインRL1に設けられて、再循環する液化ガスが供給されて液化ガスを気液分離するセパレータ200と、セパレータ200で分離された液状の液化ガスを燃料供給ラインSLの搬送ポンプ100の下流に供給するリキッドラインLLと、燃料供給ラインSLのリキッドラインLLとの合流ポイントの下流に設けられて、液化ガスを冷却するクーラー120bと、搬送ポンプ100とリキッドラインLLとの合流ポイントとの間で、燃料供給ラインSLから分岐して搬送ポンプ100でポンピングされた液化ガスの全部または一部をクーラー120bに冷媒として供給する冷媒供給ラインBLとを備える。冷媒供給ラインBLは燃料供給タンクDTに接続される。また、クーラー120bで冷媒として使用された液化ガスが燃料供給タンクDTに回収される。
【0039】
本実施形態のシステムは、エンジンEで使用されずに残った液化ガスを、リターンラインRL1を介してエンジンEの上流に再循環させる。再循環液化ガスは、リターンラインRL1に設けられるセパレータ200で気液分離される。分離された液化ガスを搬送ポンプ100の下流の燃料供給ラインSLに供給して再循環させる。この場合、燃料供給ラインSLとリキッドラインLLとの合流ポイントの下流にクーラー120bが設けられる。搬送ポンプ100でポンピングされた燃料供給タンクDTの液化ガスを、クーラー120bに冷媒として供給することで、別途冷媒を設けることなく、燃料供給ラインSLの液化ガスの温度を効果的に調整することができる。本実施形態の燃料供給システムでは、以下のようにエンジンEへの燃料供給が行われる。
【0040】
本実施形態の船舶は液化ガス運搬船であり、液化ガス、例えばLPGを貯蔵して輸送するためのカーゴタンク(図示せず)が設けられる。また、カーゴタンクとは別に、船舶で燃料として使用する液化ガスを貯蔵する燃料供給タンクDTが船舶のデッキに設けられる。燃料供給タンクDTは1~8bargの圧力範囲、例えば約4bargの運転圧力に設定され、LPGを貯蔵しながら燃料供給ラインSLを介してエンジンEに燃料が供給される。
【0041】
燃料供給タンクDTに貯蔵された液化ガスは、搬送ポンプ100により搬送され、加圧ポンプ110でエンジンEの燃料供給圧力に加圧された後、エンジンEに供給される。本実施形態では、搬送ポンプ100及び加圧ポンプ110としては、例えばサイドチャネルポンプ(side channel pump)が設けられる。
【0042】
燃料供給ラインSLの各ポンプ100,110で加圧された液化ガスは、燃料中の異物をろ過するフィルタ130とサービスバルブ部SVTとを介してエンジンEに供給される。サービスバルブ部SVTは、エンジンEにLPGを供給し、エンジンEの燃料油切替やLPGモード停止、トリップなどでLPG燃料供給が中断される際に、バルブによって各配管を二重遮断して配管内の圧力を解消する。
【0043】
このように加圧及び加熱されたLPGを燃料として使用可能なエンジンEとして、例えば、MAN Disel&Turbo社のME-LGIPエンジンがある。この場合、LPGは搬送ポンプ100にて約15bargの圧力で搬送される。そして、加圧ポンプ110で約53barg、約35℃の高圧液体状態となり、約2~4m/hの流量でエンジンEに供給される。エンジンEでは、油圧600~700barの圧力でノズルに噴射されて、エンジンEが始動する。搬送ポンプ100及び加圧ポンプ110としてサイドチャネルポンプを適用する場合、20%程低いポンプ効率及び加圧でLPGを一部加熱することができる。
【0044】
本実施形態のエンジンEには、加圧及び加熱された燃料が液体状態でエンジンEに供給される。しかし、圧力変化による体積変化が大きい圧縮性流体、すなわちガス燃料が供給されるエンジンと異なり、圧力を加えても殆ど体積が変化しない非圧縮流体である液体状態のLPGをエンジン燃料として供給する場合には、エンジンEの負荷が変動しても十分な燃料を供給することで即時に対応し、キャビテーションを防止するために過剰のLPGをエンジンEに供給する。エンジンEに供給されたLPGのうち、燃料として使用されずに残ったLPGは、エンジンEからリターンラインRL1を介して排出されて再循環される。しかし、加圧及び加熱されたLPGを、そのまま再循環または燃料供給タンクDTに供給すると、加圧ポンプ110の吸引部(suction)でベイパー(vapor)が発生する虞があり、燃料供給タンクDT内の圧力や温度が上昇することで、タンクや船舶の安全を脅かすことになる。
【0045】
本実施形態では、このような問題を解決するため、リターンラインRL1,RL2に液化ガスを減圧する減圧部210,220とセパレータ200とを設けて、エンジンEから排出される液化ガスを減圧して気液分離した後、再循環できるように構成した。加圧された液化ガスは、減圧過程で断熱膨張または等エントロピー膨張し、ジュールトムソン効果によって冷却される。
【0046】
本実施形態では、リターンラインRL1,RL2は、エンジンEからセパレータ200に接続される第1リターンラインRL1と、加圧ポンプ110の下流の燃料供給ラインSLからセパレータ200に接続される第2リターンラインRL2とを備える。減圧部210,220は、第1リターンラインRL1に設けられて、エンジンEから回収される液化ガスを減圧する第1減圧装置210と、第2リターンラインRL2に設けられる第2減圧装置220とを備える。第1及び第2減圧装置210,220は、加圧された液化ガスを断熱膨張または等エントロピー膨張させて冷却する膨張機またはジュールトムソンバルブなどの膨張バルブで構成される。
【0047】
第1リターンラインRL1の第1減圧装置210の上流には、リターンバルブ部RVT及びフィルタ230が設けられ、エンジンEから排出される液化ガスはリターンバルブ部RVT及びフィルタ230を経由して第1減圧装置210に供給される。フィルタ230は、エンジンEから排出される液化ガスに混入した潤滑油などをろ過する。
【0048】
エンジンEからリターンラインRL1を介して再循環する加圧された液化ガスは、第1減圧装置210で減圧及び冷却された後、セパレータ200に供給されて気液分離される。セパレータ200で分離された液状の液化ガスは、リキッドラインLLを介して燃料供給ラインSLの搬送ポンプ100の下流に合流され、再びエンジンEに供給される。セパレータ200で分離された気体は、ベイパーラインGLを介して燃料供給タンクDTに回収される。ベイパーラインGLには、燃料供給タンクDTに供給される気体の圧力を調整するための圧力調整バルブV3が設けられる。
【0049】
搬送ポンプ100の下流の圧力を検知し、検知された圧力に応じて圧力調整バルブV3の開度を調整して、セパレータ200から気体を燃料供給タンクDTに供給する。これにより、セパレータ200の圧力は、搬送ポンプ100の下流の圧力よりも0.5~2bar高く維持される。このようにセパレータ200の圧力を調整することで、リキッドラインLLを介してセパレータ200で分離された再循環液化ガスが、搬送ポンプ100の下流の燃料供給ラインSLに供給される。
【0050】
第1リターンラインRL1及び第1減圧装置210は、エンジンEから排出される液化ガスを、第2リターンラインRL2及び第2減圧装置220は、加圧ポンプ110で加圧された液化ガスを、フィルタ130の上流で減圧してセパレータ200に供給する。
【0051】
これにより、エンジンEのLPGモード停止時やトリップなどでLPG燃料供給が中断された際、エンジンE及び燃料供給ラインSLに残存するLPGも減圧により冷却させて、セパレータ200に供給される。また、加圧ポンプ110が必要とする最小流量よりもエンジンEに供給される液化ガスの燃料量が少ない場合、加圧ポンプ110が必要とする最小流量により液化ガスを加圧ポンプ110でポンピングして、加圧ポンプ110でポンピングされた液化ガスのうちエンジンEが必要とする流量で燃料が供給される。これを超えて供給された液化ガスは、第2リターンラインRL2及び第2減圧装置220を経由してセパレータ200に回収されて再循環する。
【0052】
LPG燃料供給が中断された際には、セパレータ200からLPGを燃料供給ラインSLに再循環させる必要がない。このため、セパレータ200から回収された液化ガスを搬送ライン(図示せず)を介して燃料供給タンクDTに送ることもできる。
【0053】
本実施形態では、搬送ポンプ100と加圧ポンプ110との間の燃料供給ラインSLに、液化ガスの温度を調整する温度調整部120が設けられている。温度調整部120は、燃料ヒーター120aとクーラー120bとを備える。
【0054】
本実施例のエンジンEには、一定の圧力及び温度の液化ガスが燃料として供給される。例えばME-LGIPエンジンの場合、約53barg、約35℃の燃料が供給される。LPGは、大気圧で約-42℃、7barでは約20℃である。このため、燃料供給タンクDTの運転圧力を約4bargに設定する場合、燃料供給タンクDTから搬送された液化ガスを搬送ポンプ100及び加圧ポンプ110で加圧しても、エンジンEが必要とする温度で燃料を供給するためには、追加加熱が必要となる場合がある。さらに、セパレータ200の運転圧力を、約15bargである搬送ポンプ100の下流の圧力よりも、0.5~2bar高く維持しつつ、リターンラインRL1,RL2を介してエンジンEなどから再循環される液化ガスの量が多く、減圧部210,220及びセパレータ200を経由してリキッドラインLLを介して搬送ポンプ100の下流に供給される再循環液化ガスの量が多い場合、エンジンEが必要とする温度を維持するために燃料供給ラインSL内の液化ガスの冷却が必要となる場合がある。本実施形態の燃料供給システムでは、燃料ヒーター120aとクーラー120bとを備える温度調整部120が、搬送ポンプ100と加圧ポンプ110との間に設けられている。これにより、状況に応じて液化ガスを加熱または冷却することで、燃料として供給される液化ガスの温度が調整される。
【0055】
燃料供給ラインSLの搬送ポンプ100の下流で且つリキッドラインLLとの合流ポイントの下流に、燃料ヒーター120a及びクーラー120bが設けられている。燃料ヒーター120aには蒸気が熱源として供給され、クーラー120bには燃料供給タンクDTの液化ガスが搬送ポンプ100から冷媒供給ラインBLを介して供給されて、冷媒として利用される。
【0056】
冷媒供給ラインBLには温度調整バルブV1が設けられている。また、冷媒供給ラインBLからクーラー120bの上流で分岐して燃料供給タンクDTに接続される分岐ラインBLaが設けられ、分岐ラインBLaには流量調整バルブV2が設けられている。冷媒供給ラインBLのクーラー120bの下流には背圧調整バルブV4が設けられており、背圧(back pressure)が維持される。
【0057】
搬送ポンプ100が必要とする最小流量よりも、クーラー120bが必要とする冷媒流量が少ない場合、搬送ポンプ100が必要とする最小流量で液化ガスを搬送ポンプ100でポンピングする。また、温度調整バルブV1を調整して、搬送ポンプ100でポンピングされた液化ガスのうちクーラー120bが必要とする流量をクーラー120bに供給する。また、流量調整バルブV2を調整して、クーラー120bが必要とする冷媒流量を超える液化ガスは、分岐ラインBLaを介して燃料供給タンクDTに回収される。
【0058】
エンジンEの負荷(load)が小さく、リターンラインRL1,RL2及びセパレータ200を経由して再循環する液化ガスの量が多い場合、例えばエンジンEの負荷が約10%の場合、クーラー120bに供給される冷媒供給ラインBL内の冷媒の温度は、LPGの組成や燃料供給タンクDTの運転圧力などによって変化する。冷媒の温度が約-26~24℃の範囲であり、クーラー120bに供給される燃料供給ラインSL内の液化ガスの温度が約44℃であれば、クーラー120bで約32℃まで冷却できることをシミュレーションによって確認した。
【0059】
一方、液化ガスの加熱または冷却は、クーラー120bの下流で検知した液化ガスの温度に応じて調整される。燃料供給ラインSLのクーラー120bの下流には、第1温度検知部T1が設けられて、第1温度検知部T1により加圧ポンプ110に供給される液化ガスの温度が検知される。第1温度検知部T1で検知された液化ガスの温度が25℃未満であれば、燃料ヒーター120aに蒸気を供給して液化ガスを加熱する。一方、第1温度検知部T1で検知された液化ガスの温度が33℃以上であれば、温度調整バルブV1を開放して搬送ポンプ100でポンピングされた液化ガスを、冷媒供給ラインBLを介してクーラー120bに供給して液化ガスを冷却する。
【0060】
燃料供給ラインSLの加圧ポンプ110の下流には第2温度検知部T2が設けられている。第2温度検知部T2で加圧ポンプ110を経由してエンジンEに供給される液化ガスの温度を検知し、液化ガスを加熱または冷却することで、第2温度検知部T2で検知される液化ガスの温度が26~44℃の範囲に維持される。
【0061】
このように本実施形態の燃料供給システムでは、リターンラインRL1,RL2を介して回収されて再循環する液化ガスの量が多い場合でも、燃料供給タンクDTで貯蔵された液化ガスを搬送ポンプ100で搬送して、クーラー120bで冷媒として利用することができる。このため、別途冷媒を設けることなく、燃料として供給される液化ガスの温度を適切に調整することができる。また、エンジンEから回収された再循環液化ガスを、セパレータ200を経由させて燃料供給ラインSLに再循環させることにより、エンジンEで燃料に混入した潤滑油が燃料供給タンクDTに混入することを防止することができる。
【0062】
本実施形態の船舶は液化ガス運搬船であり、液化ガスを貯蔵して輸送するためのカーゴタンク(図示せず)が設けられている。また、船舶には再液化部RSが設けられており、カーゴタンク内の貨物としての液化ガスから発生する蒸発ガスを再液化部RSに供給して再液化する。
【0063】
再液化部RSから燃料供給タンクDTを経由してカーゴタンクに接続される冷却ラインCLが設けられている。再液化部RSで再液化された液化ガスは、冷却ラインCLを通過して燃料供給タンクDTを冷却し、カーゴタンクへ戻されて再貯蔵される。
【0064】
すなわち、燃料供給タンクDTは、LPGを8barg以下の圧力で貯蔵しながらエンジンEに燃料を供給する。しかし、燃料供給タンクDTは船舶のデッキ上に設けられるため、外気やセパレータ200から供給される液化ガスの温度によって燃料供給タンクDT内の温度及び圧力が上昇する虞がある。このため、本実施形態では、カーゴタンクで発生した蒸発ガスを再液化部RSで再液化させた後、これを燃料供給タンクDTを経由させてカーゴタンク(図示せず)に回収する。これにより、再液化された液化ガスの冷熱を利用して燃料供給タンクDTを冷却することで、このような問題を解決することができる。
【0065】
本発明は、上記実施形態に限定されない。本発明の技術的要旨を逸脱しない範囲内で様々な形態で修正または変更できることは、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明である。
図1