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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】肌接触シート
(51)【国際特許分類】
   A41D 31/00 20190101AFI20240131BHJP
   A41B 11/00 20060101ALI20240131BHJP
   A41D 19/015 20060101ALI20240131BHJP
   A41D 27/00 20060101ALI20240131BHJP
   A43B 13/14 20060101ALI20240131BHJP
   A43B 17/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A41D31/00 502G
A41B11/00 J
A41D19/015 210A
A41D27/00 B
A43B13/14 B
A43B17/00 A
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021545001
(86)(22)【出願日】2019-09-10
(86)【国際出願番号】 JP2019035499
(87)【国際公開番号】W WO2021048915
(87)【国際公開日】2021-03-18
【審査請求日】2022-08-04
(73)【特許権者】
【識別番号】512249755
【氏名又は名称】有限会社コスモケア
(73)【特許権者】
【識別番号】512313632
【氏名又は名称】神栄化工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091834
【弁理士】
【氏名又は名称】室田 力雄
(72)【発明者】
【氏名】勝谷 利信
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/190647(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/038886(WO,A1)
【文献】特開平4-150801(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0020079(US,A1)
【文献】特表2008-527196(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41B11/00-11/14
A41D19/00-19/04、27/00-27/28、31/00-31/32
A43B1/00-23/30
A43C1/00-19/00
A43D1/00-999/00
B29D35/00-35/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
足裏や掌等、人体の肌の一部に対して接触させて用いる肌接触シートであって、
該肌接触シートは、肌に接触する表表面から裏表面に至る通気通路を備えた多数の連続気泡を主たる発泡気泡とした通気性のある発泡弾性体を用いて構成されており、
且つ前記発泡弾性体の連続気泡は、肌からの押圧を表表面に受けることで圧縮変形する構成とすると共に、その一部の連続気泡は、前記圧縮変形により前記通気通路の途中を閉塞して真空吸着穴となる構成とし
且つ前記発泡弾性体の表表面から裏表面に至る通気通路を構成する多数の連続気泡は、表表面に開口する表表面気泡セルと内部にある内部気泡セルと裏表面にある裏表面気泡セル、それらの気泡セル間を連通する連通孔とからなり、前記表表面気泡セルは表表面に対して30~70%の総面積比で表表面に分散し、且つ前記気泡セル間に連通する連通孔は、少なくとも表表面近傍においては、気泡セルの内壁に対して10~50%の総面積比で気泡セルの内壁に開口するように構成されていることを特徴とする肌接触シート。
【請求項2】
表表面気泡セルは、そのセル径が数十~数百ミクロンであることを特徴とする請求項1に記載の肌接触シート。
【請求項3】
肌接触シートの発泡弾性体の表表面を良滑性表面に構成していることを特徴とする請求項1又は2に記載の肌接触シート。
【請求項4】
肌接触シートの発泡弾性体の表表面の良滑性表面は、発泡弾性体の表面加工若しくは表面印刷により構成していることを特徴とする請求項3に記載の肌接触シート。
【請求項5】
肌の一部に接面される肌パッド、若しくは肌パッドの一部となることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の肌接触シート。
【請求項6】
靴下の内底部に取り付けられて靴下の一部となることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の肌接触シート。
【請求項7】
手袋の掌側の内面に取り付けられて手袋の一部となることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の肌接触シート。
【請求項8】
靴の中敷き若しくは中敷きの上面に取り付けられて中敷きの一部となることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の肌接触シート。
【請求項9】
履物の足と接する部分に取り付けられて履物の一部となることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の肌接触シート。
【請求項10】
発泡弾性体は軟質発泡ウレタンで構成してあることを特徴とする請求項1~9の何れかに記載の肌接触シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肌パッド、フットウエア、ハンドウエア等、人体の肌部分に接触する部分に用いる肌接触シートに関する。
【背景技術】
【0002】
運動やスポーツをすると、足と靴とが接する部分に擦れが生じて足にマメや炎症を起こしたり、また地面等から靴を通じて衝撃が体に加わり、疲労や不快感を起こす場合がある。
靴下や手袋の場合も同様に、激しい動作を行う等によって、足と靴下との間に、或いは手と手袋の間に生じる擦れにより、足や手にマメができる等の問題があった。
また肌パッド等、肌の一部に接面して使用する場合は、皮膚が肌パッドに擦れて炎症を起こす等の問題があった。
以上のような問題を解決する方法として、足の裏や掌等の肌との接触部分に、擦れ等が生じ難く、炎症等を起こし難いようにした従来技術が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2006-37282号公報
【文献】国際公開第2013/190647号
【文献】国際公開第2019/038886号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、靴下の裏側に発泡ポリウレタンからなる補強材(2、3)が設けられた靴下が開示されている。
しかしながら上記特許文献1に開示するものは、滑り止め材料を設けることで足等の滑り止めを行うことが可能となるのではあるが、その一方、足等を靴下や靴に入れる際には、滑り止め材料があるために、足を靴や靴下にスムーズに入れることができない問題があった。
【0005】
特許文献2は、特許文献1等の従来技術の問題点を解決するものとして、本件発明者が提供した技術である。難滑性のクッション材(11)の上に良滑性のネット体(12)を張り巡らせる構造とし、履き易さを確保した上で、足や手等の接触部が生地との間で摩擦(擦れ)を受けるのを防止し、マメや炎症の発生を防ぐようにしたものである。
しかしながら特許文献2に示す技術の場合、ネット体(12)をクョン材(11)に張り巡らせて取り付ける構造とするため、次のような問題がある。
第1に、ネット体(12)をクッショ材(11)に縫い付ける縫製工程が別途必要となる。このため作製に人手と時間を多く必要とする。
第2に、ネット体(12)を縫製したクッションシートを足型等にカットして製品を得る場合には、カット縁でネット体(12)がほつれるので、そのような簡便な方式を採用できない。即ち、カットしたネット体(12)の縁端部はほつれ易いので、予めクッション材(11)を製品形状にカットした上で、ネット体(12)を縫製し、且つ縁かがりをする必要がある。
第3に、ネット体(12)の全体をクッション材(11)に対して全面に、確実に接面させるには、縫製の縫い目を細かくする必要がある。縫製の縫い目を粗くすると、クッション材(11)に対するネット体(12)の接面が粗くなり、機能が発揮し難くなる。
【0006】
特許文献3は、特許文献2の問題点を解消するものとして、本件発明者が提供した技術で、人体部分との接触用表面が良滑性の第1表面(10a)と、小段差で低位に構成される難滑性の第2表面(10b)とからなる肌接触シート(10)である。装着するときは、人体部分が良滑性の第1表面(10a)上を容易に滑って装着し易く、その後に圧力が加わると、人体部分が難滑性の第2表面(10b)に接面して不動化される。足や手を靴や靴下や手袋に出し入れする際、これをスムーズに難なく行わせることができると共に、一旦挿入された後は、足裏や掌を靴や靴下や手袋に対してピッタリと不動状態に接面させることができる。
しかしながら特許文献3に示す技術の場合、良滑性の第1表面(10a)と難滑性の第2表面(10b)とを小段差で構成することは、印刷以外の方法ではなかなか難しい面がある。また印刷による場合は、該印刷で構成される良滑性の第1表面(10a)の耐久性が課題となる。
【0007】
そこで本発明は上記従来技術の問題を解消し、押圧接触下において肌に対する真空吸着性を備えた新たな肌接触シートの提供を課題とする。即ち、単に軽く接触するだけでは吸着性が生じないが、ある程度以上の押圧力を持って肌がシート面に接面すると、真空吸着性が発揮され、使用中に肌との摩擦(擦れ)が生じない接面状態を得ることができる新たな肌接触シートの提供を課題とする。また肌との摩擦(擦れ)による炎症やマメ等が生じることのない肌パッドとしての肌接触シートの提供を課題とする。更に足や手を靴や靴下や手袋に出し入れする際にも、その挿入等がそれほど難しくならずに行えると共に、挿入後に押圧力が加わることで、足裏や掌或いは肌の一部が靴下や手袋、肌パッド等に対してピッタリと接面させることができ、よって肌パッド、靴下、手袋、靴の中敷き、その他の製品の一部として用いられて、通気性を確保しながら、摩擦(擦れ)によるマメや炎症の発生を確実に防止することができる新たな肌接触シートの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を達成するため本発明の肌接触シートは、足裏や掌等、人体の肌の一部に対して接触させて用いる肌接触シートであって、
該肌接触シートは、肌に接触する表表面から裏表面に至る通気通路を備えた多数の連続気泡を主たる発泡気泡とした通気性のある発泡弾性体を用いて構成されており、
且つ前記発泡弾性体の連続気泡は、肌からの押圧を表表面に受けることで圧縮変形する構成とすると共に、その一部の連続気泡は、前記圧縮変形により前記通気通路の途中を閉塞して真空吸着穴となる構成とし、
且つ前記発泡弾性体の表表面から裏表面に至る通気通路を構成する多数の連続気泡は、表表面に開口する表表面気泡セルと内部にある内部気泡セルと裏表面にある裏表面気泡セル、それらの気泡セル間を連通する連通孔とからなり、前記表表面気泡セルは表表面に対して30~70%の総面積比で表表面に分散し、且つ前記気泡セル間に連通する連通孔は、少なくとも表表面近傍においては、気泡セルの内壁に対して10~50%の総面積比で気泡セルの内壁に開口するように構成されていることを第1の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1の特徴に加えて、表表面気泡セルは、そのセル径が数十~数百ミクロンであることを第2の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1又は第2の特徴に加えて、肌接触シートの発泡弾性体の表表面を良滑性表面に構成していることを第3の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第3の特徴に加えて、肌接触シートの発泡弾性体の表表面の良滑性表面は、発泡弾性体の表面加工若しくは表面印刷により構成していることを第4の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、肌の一部に接面される肌パッド、若しくは肌パッドの一部となるころを第5の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、靴下の内底部に取り付けられて靴下の一部となることを第6の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、手袋の掌側の内面に取り付けられて手袋の一部となることを第7の特徴としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、靴の中敷き若しくは中敷きの上面に取り付けられて中敷きの一部となることを第8の特徴としている。
また本は発明の肌接触シートは、上記第1~第4の何れかの特徴に加えて、履物の足と接する部分に取り付けられて履物の一部となることを第9の極超としている。
また本発明の肌接触シートは、上記第1~第9の何れかの特徴に加えて、発泡弾性体は軟質発泡ウレタンで構成してあることを第10の特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の肌接触シートによれば、該肌接触シートは、人体の肌の一部に対して接触させて用いる肌接触シートであって、連続気泡を主たる発泡気泡とした通気性のある発泡弾性体を用いて構成されている。主たる発泡気泡を連続気泡とした発泡弾性体で構成されることで、シートの表表面から裏表面の間で通気性が確保される。
そして前記連続気泡の内の一部は、接面する肌からの押圧を受けることで、表表面から裏表面へ至る通気通路の途中で閉塞され、接面する肌に対する真空吸着穴となるように構成されている。
従って肌接触シートが肌と接触していても押圧を受けない場合は、肌接触シートによる真空吸着作用が生じないが、接面する肌からの押圧を受けることで、押圧を受けた領域にある連続気泡の一部が、圧縮変形により、通気通路の上流から下流方向への空気の追い出しと、それに続く通路閉塞を経て真空吸着穴となり、真空吸着作用を発揮して接面する肌に吸い付くこととなる。これにより肌と肌接触シートとが両者の接触面において不動状態に真空吸着保持され、摩擦(擦れ)の発生が防止される。これにより摩擦(擦れ)による肌の炎症やマメの発生を確実に防止することができる。
勿論、肌接触シートは、肌と接面している場所においても、その接面場所にある全ての連続気泡が圧縮変形により閉塞されるわけではなく、引き続き多くの連続気泡が十分な通気性を保持した状態を維持する。従って、肌から発せられる湿気や熱気は、引き続き肌接触シートを介して良好に放散、排除させることができる。
【0010】
請求項1に記載の肌接触シートによれば、更に肌接触シートに用いられる発砲弾性体の連続気泡は、表表面に開口する表表面気泡セルと、内部にある内部気泡セルと、裏表面に開口する裏表面気泡セルと、気泡セル間に連通する連通孔とからなる。
そして前記表表面気泡セルは表表面に対して30~70%の総面積比で表表面に分散するようにしている。
総面積比が70%を上回る場合には、表表面気泡セル同士が隣接間で大きく合併した状態となり易く、真空吸着穴となる可能性が低くなる。
一方、総面積比が30%未満では、表表面気泡セルの数が過少となり、例え連続気泡を構成する場合であっても、十分な通気性を確保できない。しかも、肌接触シートが圧縮変形を受けた場合の発泡弾性体の連続気泡から真空吸着穴へ変化する確率も過剰となり、むしろ通気性が大きく悪化する弊害が生じる。
総面積比を30~70%とすることで、表表面気泡セルの数量と大きさが、十分な通気性を保つことができる条件と、連続気泡から真空吸着穴への変更の確率が十分な真空吸着性を発揮することができる条件との両条件を満たす範囲となる。
更に気泡セル間に連通する連通孔は、少なくとも表表面近傍においては、気泡セルの内壁に対して10~50%の総面積比で気泡セルの内壁に開口するようにしている。
気泡セルの内壁に対する連通孔の開口の総面積比を50%以下とすることで、肌接触シートがその表表面において押圧を受けて圧縮状態とされた際に、表表面気泡セルやそれに続く内部気泡セルの連通孔が圧縮により閉塞され易くなり、よって通気通路が閉塞されることで、表表面に開口する表表面気泡セルが真空吸着穴となる可能性を保持することができる。総面積比が50%を超える場合は、気泡セルの連通孔が押圧によってもなかなか閉塞され難くなり、真空吸着穴となる可能性が低くなり過ぎる。
一方、内壁に対する連通孔の開口の総面積比が10%未満では、連通孔が閉塞され易くなり過ぎ、連続気泡の割合が過少となって、肌と接触している肌接触シートの通気性が十分確保し難くなる。
【0011】
請求項2に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1に記載の構成による作用効果に加えて、表表面気泡セルは、そのセル径が数十~数百ミクロンとすることで、
発泡弾性体の表表面に分散する表表面気泡セルが相互に合併するまでは至らないが、それなりに大きい気泡セルとなって、上記30~70%の総面積比となり易く、十分な通気性を備え易くなる。勿論、表表面気泡セルのセル径を数十~数百ミクロンとすることで、連通孔の大きさも適当な大きさとなって、内壁に対する総面積比が10~50%になり易くなり、肌接触シートが肌からの押圧で圧縮変形した際に、連続気泡から真空吸着穴に変化する割合を過不足のない適当な割合となる。これによって通気性と真空吸着性の両機能を適切に備えた肌接触シートを提供することができる。
表表面気泡セルのセル径が数十ミクロン未満の場合は、小さ過ぎて通気性が十分でない上に、圧縮変形を受けた際に一層通気性が悪化することになり、好ましくない。
一方、セル径が数百ミクロンを超える場合は、表表面気泡セル同士が合併した状態となり易く、また連通孔の開口も大きくなり過ぎる傾向となり、通気通路が閉塞状態となり難く、真空吸着穴となる割合が過少となる。
【0012】
請求項3に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1又は2に記載の構成による作用効果に加えて、肌接触シートの発泡弾性体の表表面を良滑性表面に構成しているので、
肌と肌接触シートとを位置決めする際には容易に滑走させて、目的の位置に正確に位置決めすることができる。そして接面する肌からの押圧が加わると、肌接触シートが肌に真空吸着し、不動状態に保持する。よって肌が接面部で摩擦(擦れ)を受けるのを防止することができる。
【0013】
請求項4に記載の肌接触シートによれば、上記請求項3に記載の構成による作用効果に加えて、肌接触シートの発泡弾性体の表表面の良滑性表面は、発泡弾性体の表面加工若しくは表面印刷により構成しているので、
連続気泡を主たる発泡気泡とした発泡弾性体は、その表表面が製造時から良滑性表面である必要はなくなり、発泡弾性体の製造条件を広げることができる。そして発泡弾性体は製造後に、その表表面を後処理として表面化工し、若しくは表面印刷することで、所望の良滑性表面に仕上げることができる。
【0014】
請求項5に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、肌接触シートは、肌の一部に接面される肌パッド、若しくは肌パッドの一部となるので、
使用時においては、肌接触シートをその表表面で滑らせながら、目的の肌位置に正確に位置決めしてあてがうことができる。そして肌と肌接触シートとの間で押圧が加わると、接触シートに真空吸着作用が生じ、肌面と肌接触シートが真空吸着して、肌面が不動状態に保持される。よって肌パッド、若しくは肌パッドの一部として、摩擦(擦れ)による炎症を確実に防止することができる。
【0015】
請求項6に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、靴下の内底部に取り付けられて靴下の一部となるので、
足を靴下に挿入する際には、足は未だ真空吸着作用が生じていない肌接触シートの表表面を滑走してスムーズに挿入することができる。そしてその後、体重が加わって足裏が肌接触シートを押圧すると、肌接触シートに真空吸着作用が生じ、足裏を不動状態に保持する。これによって足裏が摩擦(擦れ)を受けるのを防ぎ、運動等による炎症の発生、マメ等の発生を十分に防止できる靴下を提供できる。
また請求項7に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、手袋の掌側の内面に配置されて手袋の一部となることにより、
手を手袋に挿入する際には、未だ真空吸着作用が生じていない肌接触シートの表表面を滑走して手をスムーズに挿入することができる。挿入後において、掌から肌接触シートの表表面への押圧が加わると、肌接触シートに真空吸着作用が生じ、掌を真空吸着して不動化させることができる。よって掌に摩擦(擦れ)が生じるのを防ぎ、炎症の発生、マメ等の発生を十分に防止できる手袋の提供が可能となる。
【0016】
また請求項8に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、靴の中敷き若しくは中敷きの上面に取り付けられて中敷きの一部となることにより、
足の靴への挿入時においては、中敷きの肌接触シートに未だ真空吸着作用が生じていないので、足を靴内にスムーズに挿入することができ、一方、挿入後において足に自重が加わると、肌接触シートに真空吸着作用が生じ、足裏を中敷きにピッタリと接面した状態に不動化させることができる。よって足裏と中敷きとの摩擦(擦れ)を十分に減じて、炎症の発生、マメ等の発生を十分に防止できる中敷きの提供が可能となる。
また請求項9に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~4の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、履物の足と接する部分に取り付けられて履物の一部となることにより、
履物に足を挿入する際は、未だ肌接触シートに真空吸着作用が生じていないので、足を履物にスムーズに挿入することができ、一方、挿入後において足に自重が加わると、肌接触シートに真空吸着作用が生じ、足の接触する部分をピッタリと接面した状態に不動化させることができる。よって足と履物との摩擦(擦れ)を十分に減じて、炎症の発生、マメ等の発生を十分に防止できる。
【0017】
また請求項10に記載の肌接触シートによれば、上記請求項1~9の何れかに記載の構成による作用効果に加えて、発泡弾性体は軟質発泡ウレタンで構成してあるので、
材料としてのウレタンが本来持つ強度と弾力性を十分に発揮させ、肌接触シートとして強度、耐久性がよく、また接面する肌からの押圧によるソフトな圧縮変形とその復帰弾性をもって、連続気泡による通気性と、連続気泡の一部の真空吸着穴への良好な変更による良好な真空吸着性とを備えた肌接シートを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係る肌接触シートの斜視図である。
図2】本発明の実施形態に係る肌接触シートを拡大視した状態を模式的に示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る肌接触シートに形成される発泡気泡の構造を模式的に示す図である。
図4】本発明の実施形態に係る肌接触シートに形成される発泡気泡の個々の構造を模式的に示す図である。
図5】本発明の実施形態に係る肌接触シートの特徴を説明する図で、肌接触シートが未だ肌からの押圧を受けていない状態を示す。
図6】本発明の実施形態に係る肌接触シートの特徴を説明する図で、肌接触シートが接面する肌からの押圧を受けている状態を示す。
図7】未だ肌からの押圧を受けていない状態にある肌接触シートにおける気泡の状態を模式的に示す厚み方向の端面図である。
図8】接面する肌からの押圧を受けている状態にある肌接触シートにおける気泡の状態を模式的に示す厚み方向の端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
先ず図1を参照して、本発明の実施形態に係る肌接触シート10について、その構成を説明する。
肌接触シート10は、通気性のある発泡弾性体11で構成されている。発泡弾性体11は、所定の厚みを有し、表表面11aと裏表面11bとを有し、通常は帯状の長尺シート、或いは一定の長さと幅を備えたバッチシートとして供給される。この長尺シートやバッチシートから、例えば切断加工や型抜加工等によって、足裏や掌、その他、人体の肌の部分と接触する様々な用途に応じた形状の肌接触シート10が構成される。図1では靴下の内底部に取り付けられ、足裏と接面するように用いられる靴下内底用肌接触シート100となる場合を想定した肌接触シート10が示されている。
肌接触シート10の発泡弾性体11の厚みは、具体的な用途に応じてそれぞれ適切な厚みとなされるが、例えば0.5mm~5mm程度、より一般的には1mm~数mmの厚みで用いる場合が多い。
前記発泡弾性体11の表表面11aと裏表面11bとは、何れが表表面で何れが裏表面であるという区別はないが、本発明においては、肌と接触する側の表面を表表面11aとすることとする。
【0020】
図2図4も参照して、前記肌接触シート10の発泡弾性体11は、発泡気泡20を表表面11a、裏表面11b、及び内部11cに分散させた発泡体で、且つ弾性体で構成されている。
この発泡弾性体11は、素材的には弾性を備えた軟質の発泡プラスチックで構成することができる。軟質の発泡プラスチックとしては、例えば軟質発泡ポリウレタンフォームを好ましく用いることが可能である。また軟質発泡アクリルフォーム、軟質発泡EVA、その他の樹脂エラストマー系或いはゴム系の連続気泡型スポンジを採用することもできる。但し、原料割合や発泡剤割合等の配合条件や、製造条件を調整して、肌接触シートとしてその用途に応じたより好ましい弾性状態、及び後述する真空吸着穴VSHへの適切な変更が可能な連続気泡OCを備えたものとする必要がある。
そして肌接触シート10としての発泡弾性体11は、少なくとも通気性を備えることが条件となっている。通気性を備えることで、接面する肌からの湿気や汗を放散させる機能を持たせるためである。
この通気性の条件を満たすため、発泡弾性体11は、その表表面11a、裏表面11b、及び内部11cに発泡気泡20(20a、20b、20c)を分散させた構造とすると共に、それら発泡気泡20が連通孔30を介して相互に連通して連続気泡OCを構成し、表表面11aと裏表面11bとの間において通気性を保有する構造となるように構成している。
勿論、この発泡弾性体11は、他の気泡と連通しない独立気泡CC(図3参照)が多少存在する場合も許容するが、連続気泡OCを主たる発泡気泡20とすることで、肌と接面する表表面11aと反対側の裏表面11bとの間で通気性が確保された構成になされている。
【0021】
前記肌接触シート10の発泡弾性体11の発泡気泡20は、発泡弾性体11の表表面11aに開口する表表面気泡セル20aと、発泡弾性体11の裏表面11bに開口する裏表面気泡セル20bと、発泡弾性体11の内部11cに存在する内部気泡セル20cとからなる。
そして各気泡セル20a、20b、20cには連通孔30が開口されている。
この連通孔30は隣接する気泡セル20a、20b、20c同士等を連通させるもので、この連通孔30の介在により表表面11aから表表面気泡セル20a、内部気泡セル20c、裏表面気泡セル20bを介して裏表面11bに至る通気通路Wが多数構成され、表表面気泡セル20aと内部気泡セル20cと裏表面気泡セル20bとが連なった多数の連続気泡OCが構成された発泡弾性体11となる。
連通孔30は、個々の気泡セル20a、20b、20cに対して、その内壁に1乃至複数の連通孔30がランダムに開口する。
傾向として、気泡セル20a、20b、20cのセル径が大きくなるほど連通孔30の開口も大きく、また1つの気泡セル20a、20b、20cの内壁に開口する連通孔30の数も多くなる。
また発泡気泡20の気泡セル20a、20b、20cは、発泡弾性体11の表裏面にある表表面気泡セル20aや裏表面気泡セル20bに比べて、発泡弾性体11の厚み方向の中心部に位置する内部気泡セル20cのセル径が大きくなる傾向となる。例えば表表面11aに開口する表表面気泡セル20aが相互に独立して表表面11aに開口する場合においても、発泡弾性体11の中心付近では隣接する気泡セル20c同士が大きく合併した状態となる場合が生じる。
このような気泡セル20a、20b、20cが大きく合併しているところでは、通気性は良好に保持される一方、気泡セル20a、20b、20c間での通気性の遮断については容易には出来難くなる。
【0022】
図5図7も参照して、上記の様に構成された発泡弾性体11からなる肌接触シート10においては、更に肌接触シート10が人等の肌と接面して肌からの押圧を受けることで、発泡弾性体11の表表面11aに開放する多数の連続気泡OC(20a)の内の一部が真空吸着穴VSH(20a)に変わり、吸着作用を奏するように構成している。
図5においては、人の足の裏(肌)が肌接触シート10の発泡弾性体11に接面する前の状態を示している。この段階では、肌接触シート10の発泡弾性体11は、未だ押圧を受けておらず、本来の状態にあって、連続気泡OCが大半を占めており、真空吸着穴VSHは生じていない。
一方、図6においては、人の足の裏(肌)が肌接触シート10の上に接面し、肌接触シート10を押圧した状態を示す。この状態になると、肌接触シート10は、その発泡弾性体11が足裏(肌)によって表表面11aから押圧され、圧縮変形を受ける。この圧縮変形により、表表面11aに多数分散する連続気泡OC(表表面気泡セル20a)は、その一部が、通気通路Wの途中で閉塞される。そしてこの場合、表表面11aから押圧されることにより、連続気泡OC(表表面気泡セル20a)内の空気が下方に押し出された状態となって通気通路Wが閉塞される。
よって通気通路Wが閉塞された連続気泡OC(表表面気泡セル20a)は、発泡弾性体11の弾性復帰作用により、内部に負圧が発生し、真空吸着穴VSHとなる。
真空吸着穴VSHとなった表表面気泡セル20aは多数分散して、その個々の真空吸着穴VSHがそれぞれ足裏をミクロ的に吸着する。
発泡弾性体11の表表面11aに微細な表表面気泡セル20aを多数、分散させて存在させることで、真空吸着穴VSHも多数、ランダムに発生し、足裏の接面部に対して万遍無く分散して吸着する。これにより足裏を不動に吸着保持することができる。
勿論、前記真空吸着穴VSHとなることなく、連続気泡OCを構成したままの表表面気泡セル20aも多数、ランダムに残留するように構成することで、引き続き連続気泡OCによる通気性も確保される。
【0023】
図6は、肌接触シート10が未だ肌からの押圧を受けていない状態にある肌接触シート10における発泡気泡20(20a、20b、20c)及び連通孔30の状態を模式的に示す厚み方向の端面図である。この状態では、連通孔30を介して表表面気泡セル20a、内部気泡セル20c、裏正面気泡セル20bが連通され、表表面11aから裏表面11bに至る通気通路Wがほぼ全て表表面気泡セル20aで成立しており、ほぼ全ての表表面気泡セル20aが内部気泡セル20c及び裏表面気泡セル20bを伴って連続気泡OCとなっている。
【0024】
図7は、接面する肌からの押圧を受けている状態にある肌接触シート10における気泡の状態を模式的に示す厚み方向の端面図である。この状態では、表表面気泡セル20aから内部気泡セル20cや裏正面気泡セル20bを介して裏表面11bに至る通気通路Wが、その途中で一部閉塞されており、連続気泡OCを構成する多数の表表面気泡セル20aの内、その半分くらいがランダムに真空吸着穴VSH化している。
【0025】
連続気泡OSを構成する多数の表表面気泡セル20aの内、その一部が真空吸着穴VSHに変化するためには、気泡セル20a、20b、20cの大きさ、密度、連通孔30の大きさ、密度等を適切にする必要があることを、発明者は本発明を完成するにあたって知見している。
【0026】
気泡セル20a、20b、20cの個々の大きさが大きくなり過ぎる場合は、それに伴って連通孔30の孔径も大きく、且つ各気泡セル20a、20b、20cに開口する連通孔30の数も多くなり過ぎる傾向となる。
気泡セル20a、20b、20cが大き過ぎると、隣接する気泡セル20a、20b、20c同士が密接し、且つ気泡セル20a、20b、20cが占める密度も大きくなって、相互に合併し易くなり、独立した気泡セルとしては存在し難くなる傾向となる。勿論、連通孔30も大きくなり、その連通孔30が閉塞され難い傾向となる。
この場合は、発泡弾性体11が押圧を受けて圧縮変形することがあっても、存在する連続気泡OCが真空吸着穴VSHに変化することはほとんど期待できない。よって肌からの押圧を受けて圧縮変形することが有っても、発泡弾性体11には真空吸着作用が殆ど発生しない。
【0027】
一方、気泡セル20a、20b、20cの個々の大きさが小さ過ぎる場合は、各気泡セル20a、20b、20cが隣接する気泡セル20a、20b、20cと離れ過ぎた状態となる。また気泡セル20a、20b、20cが占める密度も小さくなり、表表面11aに対する表表面気泡セル20aの開口の総面積比が小さくなる。そして各気泡セル20a、20b、20cに開口する連通孔30の孔径も小さく、数も少なくなって、気泡セル20a、20b、20cの内壁に占める総面積比が小さくなる。
よってこの場合は、発泡弾性体11に元々存在する連続気泡OCの割合が不十分となって、通気性が低下した状態になると共に、発泡弾性体11が押圧を受けて圧縮変形することで、その連続気泡OCの大半が真空吸着穴VSHに変化する傾向となり、吸着性は発生しても、逆に十分な通気性が確保できなくなる。
【0028】
発泡弾性体11の表表面11aが接面する肌からの押圧を受け圧縮変形する際に、表表面11aに開口する連続気泡OCの一部が、適切な割合、例えば連続気泡OCが30~70%の割合で真空吸着穴VSHとなる条件としては、
先ず、表表面11aに開口する表表面気泡セル20aの表表面11aに対する開口総面積比が30~70%の範囲にある必要がある。
そして、気泡セル20a、20b、20c間に連通する連通孔30は、少なくとも表表面11aの近傍において、気泡セル20a、20cの内壁に対して10~50%の総面積比にある必要がある。
前記表表面気泡セル20aの開口総面積比が70%を超え、且つ表表面11aの近傍にある気泡セル20a、20cの内壁に対する連通孔30の開口総面積比が50%を超える場合は、表表面気泡セル20aが連続気泡OCのまま残る割合が70%を超え、真空吸着穴VSHの割合が30%未満となって、真空吸着機能が発揮し辛くなる。
表表面気泡セル20aの開口面積比が70%を超える場合は、表表面気泡セル20aはセル径が大きくなっており、隣接する表表面気泡セル20aと近接し、また大径となった内部気泡セル20cと近接した状態となる。そして表表面11a近傍にある連通孔30の気泡セル20a、20cの内壁に対する開口総面積が50%を超える場合は、気泡セルの内壁に占める連通孔30の開口面積が大きく、気泡セルが圧縮変形を受けても、その開口する連通孔30が閉塞することが殆どなくなる。
なお、発泡弾性体11は、一般に、その厚み方向の中央部における気泡セル(内部気泡セル20cの内、厚み方向の中央部にある気泡セル)が一番大きな気泡となり易いことから、厚み方向の中央部においては通気通路W(連通孔30)が閉塞されることは少ない。
従って表表面気泡セル20aが連続気泡OCから真空吸着穴VSHになるためには、表表面11aに近いところでの通気通路W(連通孔30)の閉塞があることが条件となる。例えば発泡弾性体11の厚みの表表面11a側1/3の範囲における閉塞の有無が実際には重要となる。
表表面11a近傍とは、発泡弾性体11の厚みの表表面11a側1/3の範囲内である。より好ましくは表表面11a側1/4の範囲内である。更に別の見方をすると、連続気泡OCが真空吸着穴VSHになって十分な真空吸着機能を発揮するためには、通気通路Wの閉塞が表表面気泡セル20aから厚み方向に5~6個の気泡セル20cまでの間に閉塞するのが好ましいので、前記表表面11a近傍とは表表面11aから5~6個の気泡セルが存在する範囲と言うことができる。
【0029】
一方、表表面気泡セル20aの開口面積比が30%未満で、且つ表表面11aの近傍にある気泡セル20a、20cに対する連通孔30の気泡セルの内壁に対する開口総面積比が10%未満となる場合は、表表面気泡セル20aが連続気泡OCのまま残る割合が30%未満となり、真空吸着穴VSHの割合が70%を超えて、真空吸着機能は発揮するも、通気性の機能が十分発揮できなくなる。
表表面気泡セル20aの開口面積比が30%未満の場合は、表表面気泡セル20aはセル径が小さく、且つ隣接する表表面気泡セル20aとの距離が離れた状態となり易い。また表表面気泡セル20aとその下にある内部気泡セル20cも小径となり、相互に離間した状態となり易い。
そして連通孔30の気泡セル内壁に対する開口総面積が10%未満の場合は、気泡セル20a、20cの内壁面積に占める連通孔30の開口面積がかなり小さくなり、発泡弾性体11が圧縮変形を受けると、表表面11a近傍の連通孔30が容易に閉塞してしまう。よって当初は連続気泡OCであった表表面気泡セル20aの大半が真空吸着穴VSHになってしまい、真空吸着性は発揮されるものの通気性が損なわれる。
【0030】
表表面11aに開口する表表面気泡セル20aの表表面11aに対する開口総面積比を30~70%の範囲とし、また気泡セル20a、20b、20c間に連通する連通孔30の気泡セル20a、20cの内壁に対する総面積比を10~50%とすることで、発泡弾性体11が接面する肌により圧縮変形を受けたときに、連続気泡OCである表表面気泡セル20aの一部が真空吸着穴VSHに変化し、適切な割合、即ち連続気泡OCに対する真空吸着穴VSHの割合が30~70%となる。
連続気泡OCに対する真空吸着穴VSHの割合が30~70%に変更されることで、肌接触シート10に接面する肌に対する真空吸着力が適切に発揮され、接面する肌を不動状態に吸着保持することができる。同時に接面する肌に対する通気性も確保することができる。
連続気泡OCに対する真空吸着穴VSHの割合は、より好ましくは40~60%である。そのためには、表表面11aに開口する表表面気泡セル20aの表表面11aに対する開口総面積比を40~60%の範囲とし、また気泡セル20a、20b、20c間に連通する連通孔30の気泡セル20a、20cの内壁に対する総面積比を20~40%の範囲に調整するのが良い。
【0031】
なお、多数の表表面気泡セル20aの内のどれが連続気泡OCから真空吸着穴VSHに変わるかは、予め決まっているわけではない。肌からの押圧力の微妙な変化による発泡弾性体11の圧縮変形の微妙な変化に応じて、多数分散する表表面気泡セル20aのどれが連続気泡OCから真空吸着穴VSHに変化するかは、その都度変わる。
勿論、一度真空吸着穴VSHに変わっても、状況に応じて途中で元の連続気泡OCに戻る。このようにして表表面11aに多数分散して構成された表表面気泡セル20aは、時間経過と共に連続気泡OCと真空吸着穴VSHとの間でランダムに変化し、全体として、相互に均一的に分散して存在することとなる。
勿論、連続気泡OCと真空吸着穴VSHとの間の変化、変更は主として発泡弾性体11の圧縮変形に起因するものであるが、肌から出た湿気や汗の状態に起因して、連通孔30等が開放されたり閉塞されたりすることで、連続気泡OCから真空吸着穴VSHに変化したり、或いはその逆に真空吸着穴VSHから連続気泡OCへと元に戻ることが繰り返される。
即ち全体としてみれば、多数の表表面気泡セル20aが、真空吸着穴VSHに変化したり、また元の連続気泡OCに戻ったりすることを、ランダムに繰り返しながら、肌からの湿気を肌接触シートの裏表面11b側に逃がし、且つ接触する肌面に真空吸着して肌面の摺れを防止している、
【0032】
表表面気泡セル20aの連続気泡OCが、接面する肌からの押圧により、その適当割合30~70%が真空吸着穴VSHに変わるためには、表表面気泡セル20aのセル径が、少なくとも数十~数百ミクロンであることが好ましい。
このような大きさに表表面気泡セル20aを調整することで、表表面11aに実際に開口する表表面気泡セル20aの総面積比が30~70%の範囲に収まり、表表面11aに過密ではなく、また過疎でもない状態で表表面気泡セル20aを分散開口させることができる。と同時に、表表面気泡セル20aや表表面11aの近傍にある内部気泡セル20cの内壁に連通して開口する連通孔30の数、開口径も適度で、気泡セル20a、20cの内壁に対する連通孔30の開口総面積比が10~50%の範囲に収まる。
【0033】
なお、上記した本実施形態においては、発泡弾性体11として実際には軟質発泡ポリウレタンフォームを用いた。これにより材料としてのウレタンが本来持つ強度と弾力性を十分に発揮させることができる。即ち、肌接触シート10として強度、耐久性がよく、また接面する肌からの押圧によるソフトな圧縮変形とその復帰弾性を備え、連続気泡OCによる通気性と、連続気泡OCの一部の真空吸着穴VSHへの良好な変更による良好な真空吸着性とを備えることができる。
【0034】
肌接触シート10を肌に装着させる際に、肌表面を良好に滑って目的の位置まで移動させるのが良い場合には、発泡弾性体11の表表面を良滑性表面とするのがよい。
例えば肌接触シート10を靴下の内底に張り付けた状態で使用する場合は、発泡弾性体11の表表面11aが難滑性であると、足を靴下内に入れる際に引っ掛かり易く、スムーズな挿入が難しくなる。手袋の場合も同じである。
発泡弾性体11の表表面11aを良滑性にする手段としては、例えば発泡弾性体11の素材表面を、表面粗度の小さい良滑性表面に表面加工する手段がある。また発泡弾性体11の素材表面を、表面印刷により良滑性表面にするようにしても良い。
勿論、前記表面加工、表面印刷による場合、発泡弾性体11の通気性を損なわないようにする必要がある。
【0035】
肌接触シート10は肌の一部に接面されて使用される肌パッド、若しくは肌パッドの一部として構成することができる。即ち、肌接触シート10が100%で、そのまま肌パッドとなる場合、また肌と接面する側が肌接触シート10で肌と接面しない側は別の生地で裏打ちされた状態で用いられるような場合、また肌パッドの一部分だけに限定されて用いられるような場合である。
【0036】
肌接触シート10は靴下の内底部に取り付けられて靴下の一部となる構成とすることができる。
同様に、肌接触シート10は手袋の掌側の内面に取り付けられて手袋の一部となる構成とすることができる。
靴下の内底部に肌接触シート10を施すことで、靴下内に足を入れた状態で、足裏から肌接触シート10に押圧力が加わると、肌接触シート10の表表面11aに開口する多数の表表面気泡セル20aが、連続気泡OCから真空吸着穴VSHに変わり、連続気泡OCと真空吸着穴VSHとが混ざり合った状態となる。これによって肌接触シート10は通気機能と真空吸着機能との両方を備えたシートとなって、足裏面を不動状態に保持してその摩擦(擦れ)を防止すると共に、足裏面からの湿気を肌接触シート10の裏表面11b側に放出してその足裏に湿気が溜まるのを防止する。従って足裏での摩擦(擦れ)が無くなり、摩擦熱の発生、炎症の発生、マメや水ぶくれを生じなくすることができる。
手袋の場合も上記靴下の場合と同様である。
【0037】
肌接触シート10は靴の中敷き若しく中敷きの上面に取り付けられて中敷き一部となる構成とすることができる。
即ち、肌接触シート10が100%で、そのまま中敷きとなる場合、また肌と接面する側が肌接触シート10で肌と接面しない側は別の材料で裏打ちされた中敷きとされる場合、また中敷きの一部分だけに限定されて足裏の一部にだけに接触するように肌接触シート10を用いた中敷きとされる場合が相当する。素足で靴を履く場合に、足裏を中敷きの表表面で不動状態に保持し、且つ通気性も保持する。この場合も足裏での摩擦(擦れ)が無くなり、炎症の発生、マメや水ぶくれの発生を防止することができる。
【0038】
肌接触シート10は履物の足と接する部分に取り付けられて履物の一部となる構成とすることができる。
靴、サンダル、草履、スリッパ等の履物の一部に肌接触シート10が取り付けられて、足と接面することで、その取り付けられた脱接触シート10が肌から押圧を受けると、該肌を真空吸着により不動状態に保持し、且つ通気性も保持することができる。よって足がそれと接面する部分から摩擦(擦れ)を受けて炎症を起したり、マメや水ぶくれを起したりするのを無くすことができる履物を提供することができる。
【0039】
前記肌接触シート10は、靴下内底用肌接触シート100や掌形接触シートを含め、必ずしも平坦なシートである必要はない。
立体的に湾曲した肌接触シート10は、例えば足底(掌)から足側面(手の側面)、場合によっては足の甲部(手の甲部)にも及ぶ肌接触シートとして、機能を発揮させる必要性に対応させることが可能になる。
【符号の説明】
【0040】
10 肌接触シート
11 発泡弾性体
11a 表表面
11b 裏表面
11c 内部
20 発泡気泡
20a 表表面気泡セル
20b 裏表面気泡セル
20c 内部気泡セル
30 連通孔
100 靴下内底用肌接触シート
OC 連続気泡
CC 独立気泡
VSH 真空吸着穴
W 通気通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8