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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】防水通気建材
(51)【国際特許分類】
   E04D 5/12 20060101AFI20240131BHJP
   E04D 5/06 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E04D5/12 H
E04D5/06 G
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023111656
(22)【出願日】2023-07-06
【審査請求日】2023-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595177316
【氏名又は名称】株式会社ケー・エス・ティー
(73)【特許権者】
【識別番号】506330977
【氏名又は名称】株式会社 照和樹脂
(74)【代理人】
【識別番号】110002251
【氏名又は名称】弁理士法人眞久特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】塚越 壮
(72)【発明者】
【氏名】大川 康夫
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-144491(JP,A)
【文献】特開2010-184451(JP,A)
【文献】特開2005-113678(JP,A)
【文献】特許第7317305(JP,B1)
【文献】特開2019-014072(JP,A)
【文献】特開2009-275415(JP,A)
【文献】特開2010-043450(JP,A)
【文献】特開2011-219918(JP,A)
【文献】特開2015-169038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 5/12
E04D 5/04
E04D 5/06
E04D 5/10
E04D 5/14
E04B 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材のシート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在し及び/又は列在しつつ窪んだ凹み部と、前記開口部同士の間で、前記シート上面から突き出た非輪状凸部及び/又は輪状凸部と、前記開口部を取り囲みつつ前記シート上面から突き出た環状凸部とから選ばれる少なくとも何れかの滑り止めの凸部を有してなる滑り止め部とを、備えた樹脂製及び/又はゴム製の非透湿性防水シートから成り、前記凸部が、変形復元性を有し、又は変形非復元性を有し、且つ、前記凹み部が、潰れない強度を有しており、前記非透湿性防水シートが、ロール状に巻き取り可能な可撓性である防水通気材と、
透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔の開いた金属箔層により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層で付されているもので、前記防水通気材及び野地板との間に配置するための透湿防水シートと
からなることを特徴とする防水通気建材。
【請求項2】
前記透湿防水シート中、前記不織布層が、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、又はポリプロピレン製の前記透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記不織布とからなり、又は、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記スパンボンド不織布からなることを特徴とする請求項1に記載の防水通気建材。
【請求項3】
前記金属箔層が、アルミニウム製であり、前記透湿性多孔が、開口率を1.2以上7.0%以下とし、及び/又は直径乃至空隙を平均径で0.5~2000μmとし、及び/又は開口数を10万/m以上100万個/m以下とするものであり、
前記透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層が、透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し前記ホットメルト接着剤による接着性を有する透湿接着層の両面に、不織シートが前記透湿接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであり、
前記スパンボンド不織布が、繊維径を1.5デニール以上4デニール以下とするものを有するものであり、
前記粘着剤層が、前記不織布層の空隙を塞ぐことなく前記下面側で露出した不織布繊維上に付着されつつ、目付を30~75g/mとすることを特徴とする請求項1又は2に記載の防水通気建材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、屋根や壁の施工に用いられる防水通気建材に関する。
【背景技術】
【0002】
木造家屋のような木造建造物において、雨水の浸入によってこれの躯体である木材を腐朽させないように、雨水の浸入を防止する防水性のアスファルト含有シートやポリオレフィン製のシートが、屋根下地及び壁下地として屋根を構成する野地板や壁板に敷設される。これらの下地シートはロール状に巻かれて保管されている。
【0003】
野地板等への敷設の際、下地シートはロールから繰り出されて所望の長さに裁断される。野地板等をすべて覆うように順次ロールの繰り出しと裁断と敷設とが繰り返される。雨水の浸入を防止するのにシート間に隙間が形成されないよう、下地シートの端部同士は僅かに重ねつつ並べられる。それにより野地板の全体が隙間なく下地シートで覆われる。下地シートは、釘又はステープルのような留め具によって野地板等へ固定される。そのためこれらの下地シートには、雨水を浸入させない防水性に加えて、釘やステープルの貫通によってもその釘やステープルの留め穴から雨水を遺漏させない留め穴止水性が求められる。そのような下地シートとして、例えばアスファルトシート及び透湿防水シートが挙げられる。
【0004】
アスファルトシートとして、例えば特許文献1に砂粒層とアスファルト層と基材層とアスファルト系自己粘着層と熱可塑性合成樹脂フィルム層とが積層された改質アスファルトルーフィングが記載されている。このようなアスファルトシートによれば、柔軟性及び弾性に富むアスファルトがこれを貫通している釘やステープルに密着するので高い留め穴止水性を発現する。ここで、木造家屋内における人の呼吸や暖房・風呂・調理の際に生じた水蒸気や湿気に起因して野地板や壁板に結露が発生し、木造家屋の躯体である木材を腐朽させることが知られている。アスファルトシートは高い防水性と留め穴止水性を有するものの十分な透湿性を有しないので、アスファルト含浸不織シートと野地板等との間に生じた結露が解消されない。この結露の所為で、野地板等が腐朽してしまう。
【0005】
一方、特許文献2に、100~2000μmの孔を有する金属膜材と不織布とが接着剤を介して一体化している透湿防水シートである建材用シートに連続フィラメントが不規則に交差してなる立体網状体が付された建材用複合材料が記載されている。この建材用複合材料は、透湿性を有する不織布と雨水を透過せず水蒸気や湿気を透過するように孔径を一定範囲とした金属膜材とが一体化していることにより透湿性及び防水性を兼ね備えているとともに、立体網状体が建材シート材料と野地板又は瓦のような屋根材との間に通気部を形成して換気を促し、水蒸気や湿気の滞留を抑止することにより、結露に起因する野地板等の腐朽を効果的に防止している。
【0006】
野地板や壁板に固定する際に使用される釘が建材用シートを貫通するとそこに穴が開く。特許文献2の建材用シート中、金属膜材は柔軟性及び弾性に乏しく、不織布は透湿性を付与するために厚さ方向に連結した多くの空隙を有している。そのため金属膜材と不織布とを接着剤で一体化しただけの建材用シートと釘との間に隙間が生じてしまう。それによりその隙間から雨水が浸入することがあるので、この建材用シートは釘穴止水性に乏しい。一方で十分な釘穴止水性を付与するのに、連通した空隙を有しなかったり、厚さを増したりした不織布を用いた建材用シートとすると、透湿性が損なわれたり低下したりする。この場合、野地板に発生した結露である水蒸気や湿気が不織布を透過し難くなって立体網状体にまで到達せず、結露に起因する野地板の不朽を防止できなくなってしまう。
【0007】
またこの建材用シートに立体網状体を付した建材用複合材料は、野地板等への敷設の際、立体網状体の所為で建材用複合材料の端部同士をそのまま重ねて敷設することができない。そのため建材複合材料間に隙間が形成されないように端部同士を重ねるには、建材用複合材料の端部に存在する立体網状体をその都度、切断したり除去したりしなければならない。このことは敷設作業を煩雑化させている。
【0008】
さらにこれら建材用シートは、屋根、特に切妻造りのような傾斜のある屋根に施工する際に、露出上面が平坦なため歩行中に滑ったり転んだりし易いという問題がある。
【0009】
本出願人らは、特許出願(特願2022-131216:特許文献3)において、基材のシート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在し及び/又は列在しつつ窪んだ凹み部と、前記開口部同士の間で、前記シート上面から突き出た非輪状凸部及び/又は輪状凸部と、前記開口部を取り囲みつつ前記シート上面から突き出た環状凸部とから選ばれる少なくとも何れかの滑り止めの凸部を有してなる滑り止め部とを、備えた樹脂製及び/又はゴム製の非透湿性防水シートから成り、前記凸部が、変形復元性を有し、又は変形非復元性を有し、且つ、前記凹み部が、潰れない強度を有しており、前記非透湿性防水シートが、ロール状に巻き取り可能な可撓性である防水通気材について、既に特許査定となっている。
防水通気材は、非透湿性防水シートを有して成るので防水性に優れ、屋根側や外壁側からの漏水を防ぎ、また家屋内で生じた水蒸気や湿気を非透湿性防水シートの凹み部同士の空隙である通気部を通じて屋内側から屋外へ排出させて野地板や壁板に結露を生じさせず、凹み部に水が溜まらないようにして、水分を屋外へ排出させることができるというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平11-336266号公報
【文献】特開2013-76210号公報
【文献】特願2022-131216
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、高い留め穴止水性を有するとともに、野地板や壁板に生じた結露を速やかに解消することにより、野地板や壁板のような木造建造物を構成する木材を腐朽させず、滑り止めによって滑り難い防水通気材と、簡便に野地板等の全面に貼付して敷設でき透湿性を有し湿気を通気させることができるが防風性を有し水滴のような液状水分を透過させない透湿防水シートとからなる防水通気建材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記の目的を達成するためになされた防水通気建材は、基材のシート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在し及び/又は列在しつつ窪んだ凹み部と、前記開口部同士の間で、前記シート上面から突き出た非輪状凸部及び/又は輪状凸部と、前記開口部を取り囲みつつ前記シート上面から突き出た環状凸部とから選ばれる少なくとも何れかの滑り止めの凸部を有してなる滑り止め部とを、備えた樹脂製及び/又はゴム製の非透湿性防水シートから成り、前記凸部が、変形復元性を有し、又は変形非復元性を有し、且つ、前記凹み部が、潰れない強度を有しており、前記非透湿性防水シートが、ロール状に巻き取り可能な可撓性である防水通気材と、透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔の開いた金属箔層により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層で付されているもので、前記防水通気材及び野地板との間に配置するための透湿防水シートとからなることを特徴とする。
【0013】
この防水通気建材は、例えば、前記透湿防水シート中、前記不織布層が、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、又はポリプロピレン製の前記透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記不織布とからなり、又は、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる前記スパンボンド不織布からなるというものである。
【0014】
この防水通気建材は、透湿防水シートにより0.0004μm程度の水蒸気粒子を透過するが、100μm程度の霧雨~2000μm程度の雨を透過しないもので、例えば、前記金属箔層が、アルミニウム製であり、前記透湿性多孔が、開口率を1.2以上7.0%以下とし、及び/又は直径乃至空隙を平均径で0.5~2000μm、例えば0.5~3μmであってもよいし、0.2mm以上2.0mm以下であってもよいものとし、及び/又は開口数を10万/m以上100万個/m以下とするものであり、
前記透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層が、透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し前記ホットメルト接着剤による接着性を有する透湿接着層の両面に、不織シートが前記透湿接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであり、
前記スパンボンド不織布が、繊維径を1.5デニール以上4デニール以下とするものを有するものであり、
前記粘着剤層が、前記不織布層の空隙を塞ぐことなく前記下面側で露出した不織布繊維上に付着されつつ、目付を30~75g/mとするというものである。
【0015】
前記の目的を達成するためになされた防水通気建材施工用の透湿防水シートは、透湿性防水樹脂フィルムと不織布とからなる透湿性の不織布層、又はスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層が、上面側で透湿性多孔の開いた金属箔層により覆われつつ、下面側で透湿性の粘着剤層で覆われているものであって、前記防水通気建材及び野地板との間に配置するためのものであることを特徴とする。
【0016】
この防水通気建材は、防水通気材中、例えば前記凸部の複数が、前記基材の平面板部上で、前記凹み部の縦列間及び/又は横列間に、並んでいるというものである。
【0017】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記滑り止め部が、前記滑り止めの凸部、及び前記シート上面に付された滑り止めの層を有してなるものであってもよい。
【0018】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記非輪状凸部が、長方体状、円柱状、楕円柱状、多角錐台状、半球状、球弧状、多角柱状、十字立体状、及びX字立体状から選ばれる少なくとも何れかの形状であるものであってもよい。
【0019】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記非輪状凸部の複数が夫々、前記凹み部の前記縦列間で縦列方向に平行し間隔を空けて並んでいる凸部列と、その凸部列内の隣り合う凸部同士の間隙を挟みつつ前記凹み部の行方向に平行して並んでいる凸部対とからなる間欠十字ユニットを有しており、又は
前記非輪状凸部の複数が夫々、前記凹み部の前記縦列間で縦列方向の斜め方向に間隙を空けて並んでいる第一凸部対と、その第一凸部対内の前記間隙を挟みつつ前記縦列方向の別な斜め方向に並んでいる第二凸部対とからなる間欠X字ユニットを有している
というものであってもよい。
【0020】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記輪状凸部が、繋がり又は間欠しており、クレーター状である前記凹み部の外輪であるというものであってもよい。
【0021】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記外輪の内側が外側よりも浅くなっているというものであってもよい。
【0022】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凸部の天面が、前記シート上面に対して傾斜しているというものであってもよい。
【0023】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記環状凸部が、間欠していることが好ましい。
【0024】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記環状凸部が、二つ~八つに間欠しているとより好ましい。
【0025】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凹み部と前記凸部とからなる凹凸部の複数から成る列が、複数列並んでいるというものであってもよい。
【0026】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記環状凸部が間欠している前記凹凸部の複数から成る列が、複数列並んでおり、前記列内の隣り合う前記凹凸部の前記環状凸部の間欠方向が、互いにずれ、及び/又は隣り合う前記列間の前記凹凸部の前記環状凸部の間欠方向が、互いにずれていると、一層好ましい。
【0027】
この防水通気建材は、防水通気材中、凹み部が、又は前記凹み部と前記凸部とが、ランダム又は均等に並んで配置されているとなお一層好ましい。
【0028】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凹み部と前記凸部とからなる凹凸部での最薄部位の厚さが、2mm~6mmとするものであってもよい。
【0029】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記基材が、ポリエチレン(PE)樹脂、ポリプロピレン(PP)樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリアミド(PA)樹脂、ポリエステル(PEs)樹脂、ポリスチレン(PS)樹脂、ポリ塩化ビニル(PVC)樹脂、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS)から選ばれる前記樹脂製であるというものである。
【0030】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凹み部が、又は前記凹み部と前記凸部とが、好ましくは板状原材からの成型形成部であるというものである。
【0031】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凹み部に水分排出穴が設けられているというものであってもよい。
【0032】
この防水通気建材は、防水通気材上に付された滑り止めの層が、例えばポリエチレン(PE)樹脂、ブチラール(ビニルブチラール:PVB)樹脂(ポリ、ブチルゴム(イソブチレン-イソプレンゴム:IIR)、エチレンプロピレンジエン(EPDM)ゴム、クロロプレン(CR)ゴム、スチレンブタジエン(SBR)ゴム、及びアクリロニトリルブタジエン(NBR)ゴムから選ばれる少なくとも何れかの発泡体層、膜層、又は積層体層であるというものである。
【0033】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記滑り止めの層が、前記基材のシート上面に、貼付され、接着され、溶着され、一体成型されていることが好ましい。
【0034】
この防水通気建材は、防水通気材中、前記凹み部が、例えば非メッシュ地又はメッシュ地のコルゲート波状部、若しくは非メッシュ地又はメッシュ地のプリーツひだ折部で形成されているというものである。
【0035】
この防水通気建材は、前記防水通気材の複数が、前記凸部同士の入れ子状の嵌まり合いによって連結し、及び/又は前記非透湿性防水シート同士で、テープで貼付され、接着剤で接着され、ステープル、タッカー、針、釘、鋲、割鋲、又はフックで打設され、ボルト及びナット、又は螺子で螺合され、若しくは連結具で結合されていることによって連結しているというものである。
【0036】
この防水通気建材は、前記透湿防水シート中、不織布の素材が、例えばポリオレフィンシート、ポリウレタンシート、ポリビニルブチラールシート、熱可塑性エラストマーシート、ポリビニルアセテートシート、ゴムシート、及びアスファルトルーフィングフェルトから選ばれる少なくとも一種であるというものである。
【発明の効果】
【0037】
本発明の防水通気建材は、防水通気材が非透湿性防水シートからなるので防水性に優れ、屋根側や外壁側からの漏水を防ぎ、また家屋内で生じた水蒸気や湿気を非透湿性防水シートの凹み部同士の空隙である通気部を通じて屋内側から屋外へ排出させて野地板や壁板に結露を生じさせない。さらに防水通気建材は、防水通気材の凹み部に水が溜まらないようにして、水分を屋外へ排出させることができる。また、防水通気建材は、透湿防水シートを有しているので、簡便に野地板等の全面に貼付によって敷設して透湿性を有し湿気を通気させることができるが防風性を有し液状水分特に水滴を透過させないという背反する効果を両立させつつ、野地板に貼付して敷設できるというものである。
【0038】
防水通気建材の設置は、先ず、野地板に透湿防水シートを貼付しながら敷設し、次いでその上に防水通気材を敷設し両面テープや釘等で野地板へ固定することにより行われ、これにより簡便かつ速やかに施工することができる。
【0039】
防水通気建材は、防水通気材と透湿防水シートとにより、防水で非透湿性であるが通気できるという効果と、防水性・防風性(液滴遺漏性)・留め穴止水性であって透湿性であるという効果とを、夫々発現する。
【0040】
さらに加えてこの防水通気建材は、防水通気材の非透湿性防水シートの非輪状凸部若しくは輪状凸部、及び/又は環状凸部である各種形状の滑り止めの凸部、若しくは滑り止めの層が基材に在ることによって滑り止めとなっているので、野地板等に設置した時に、踏んで歩いても滑らなくなり安全に作業ができる。
【0041】
しかもこの防水通気建材は、防水通気材の凹み部及び/又は凸部同士の入れ子状の嵌まり合いによって、若しくは樹脂製及び/又はゴム製であることにより片面又は両面テープで貼付され、接着剤で接着され、ステープル等で打設され、ボルト及びナット等で螺合され、又は連結具で結合し易く、釘やステープル等やボルト及びナット等や連結具で結合されることによって、速やかにかつ簡単に連結したりでき、家屋の屋根や壁の形状に合わせて仮組し、屋根下地として敷設したり、壁下地として設置できる。
【0042】
そのうえ、この防水通気建材は、防水通気材が樹脂製及び/又はゴム製であることにより、とりわけ滑り止めの凸部又はさらに滑り止めの層、好ましくは滑り止め層を有してなる滑り止め部を有することにより、テープで貼付され、接着剤で接着され、釘やステープル等で打設され、ボルト及びナット等で螺合され、若しくは連結具で結合し易くステープル等やボルト及びナット等や連結具で結合されて、穴が開けられても、樹脂及び/又はゴムの可撓性によってその穴に密着することにより留め穴止水性を発現することができる。一方、透湿防水シートが、単に不織布だけでは透湿性や通気性を発現するが防水性・防風性・留め穴止水性に劣るところ、不織布の上面に透湿性多孔の開いた金属箔層が付され、不織布の下面に透湿性の粘着剤層が付されて、粘着剤層の量、範囲等が調節されることにより、不織布の空隙を確保して透湿性や通気性を確保したまま、防水性・防風性・留め穴止水性を確保し液状水分、特に水滴を透過させないように調整している。
【0043】
この防水通気建材は、透湿性・防風性・防水性、及び留め穴止水性が、透湿防水シートとしての規格(JIS A6111)を満たすというものである。
【0044】
この防水通気建材によれば、非透湿性防水シートからなる防水通気材の防水性と留め穴止水性とによって屋外からの漏水を防ぐと共に、透湿防水シートの防水性と防風性と留め穴止水性とによって屋外からの漏水を防ぎつつ屋内の水蒸気や湿気を通過させ、その水蒸気や湿気を非透湿性防水シートの凹み部同士の空隙である通気部を介して屋外に排出して結露を防止するという相乗効果により、野地板等を腐朽させない。
【0045】
この防水通気建材は、非透湿性防水膜や滑り止め膜を別途設けても設けなくても、簡素な構成にしても、必要不可欠な機能を発揮できるばかりか、簡便に製造でき、迅速かつ簡易に施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1-1】本発明を適用する防水通気建材の一形態を一部取り出した、平面図、正面断面図、左右側面図である。
図1-2】本発明を適用する防水通気建材の一形態を一部取り出した底面図である。
図1-3】本発明を適用する防水通気建材を連結している状態を示す概要正面図である。
図2】本発明を適用する防水通気建材中の防水通気材の非輪状凸部の例を示す概要斜視図である。
図3】本発明を適用する防水通気建材中の防水通気材の非輪状凸部の例と輪状凸部の例とを示す概要斜視図である。
図4】本発明を適用する防水通気建材中の透湿防水シートの模式断面図である。
図5-1】本発明を適用する別な防水通気建材の一形態を一部取り出した、平面図、正面断面図、左右側面図である。
図5-2】本発明を適用する別な防水通気建材の一形態を一部取り出した底面図である。
図6】本発明を適用する別な防水通気建材の一形態一部取り出した斜視図である。
図7】本発明を適用する別な防水通気建材の別な一態様を一部取り出した、平面図である。
図8】本発明を適用する別な防水通気建材の別な一態様を一部取り出した、平面図である。
図9】本発明を適用する防水通気建材の使用方法を示す一部切欠き斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
以下、本発明を実施するための形態を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0048】
本発明の防水通気建材100の一形態を図1-1及び図1-2に示す。この形態の防水通気建材100は、基材のシート上面で開口部12を有しつつシート下面へ散在しつつ窪んだ凹み部22と、前記開口部12同士の間で前記シート上面から突き出た非輪状凸部11aからなる凸部である滑り止め部とを、備えた樹脂製の非透湿性防水シート1、及びスパンボンド不織層52aで挟まれた不織布からなる透湿性のメルトブローン不織層が52b、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層53で付されている透湿防水シート50(図4(b)参照)から成るものである。図1-1(a)は、長尺の防水通気建材100の一部を切り欠いて取り出した平面図であり、同図(b)はそれの正面断面図であり、同図(c)はそれの左側面図であり、同図(d)はそれの右側面図であり、図1-2(e)はそれの底面図である。なお、背面断面図は、正面断面図と対称であるため、省略する。
【0049】
防水通気建材100は、図4(a)で示すように、非透湿性防水シートからなる防水通気材1、及び透湿性多孔55の開いた金属箔層51とスパンボンド不織層52aで挟まれたメルトブローン不織層52bからなるスパンボンドの不織布である透湿性の不織布層52と粘着剤層53からなる透湿防水シート50を備えてなるもので、木造家屋を構成する木材、例えば野地板40に固定される屋根下地材である。防水通気建材100は、防水通気材1と透湿防水シート50とが共に可撓性を有し、長尺方向L-L’(上下方向)に連続して延びた巻取可能な長尺物であるというものである。
【0050】
防水通気建材100中の防水通気材1は、端帯辺部4bと端辺部5aとの間の平面板部6に、シート上面3aで開口部12を有しつつシート下面へ窪んだ凹み部22が縦横に整然と並んでおり、凹み部22の縦列(長尺方向L-L’に沿う凹み部列を便宜的に縦列という)に沿って、凹み部22の横列(長尺方向L-L’と垂直方向に並ぶ凹み部列を便宜的に横列という)の間で、シート上面3aから突き出た非輪状凸部である複数で同型の凸部11aが整然と等間隔で間欠して並んでいるものである。この凹み部22と、凸部11aとが、凹凸部10を成している。
【0051】
凸部11aは、下方でやや膨らんだ略直方体状であり、凹み部22の横列中、隣り合う凹み部22の真中で、凹み部22の縦列に沿って、形成されている。凸部11aは、直方体状に盛り上がっていることにより、内部が空洞になっている。
【0052】
凸部11aは、変形復元性を有し、又は変形非復元性を有していることにより、踏み付けたときに滑らないように滑り止めとなっている。
【0053】
凹み部22は、シート下面3bから下方へ突き出し、野地板40に向かって漸次縮径した円錐台形をなしつつ、底部15を有している。凹み部22の底部15に又は底部15と側面との境目近傍に、水分が溜まらないように水分排出穴(不図示)が設けられていてもよい。
【0054】
凹凸部10は、樹脂製の非透湿性防水シート原材を、凹凸部10へと転写する金型中で熱加圧して成形されたものである。
【0055】
防水通気建材100中の透湿防水シート50は、透湿性多孔の開いた金属箔層51とスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層52と粘着剤層53からなる透湿防水シート50が順に積層されてなる例を示した(図4(a)参照)が、不織布層52がポリエステル製等スパンボンド不織布からなることが好ましい。
【0056】
防水通気建材100中の透湿防水シート50は、図4(b)に示すように、透湿性多孔55の開いた金属箔層51と不織布からなる不織層52dと透湿性防水樹脂フィルム52c及び必要に応じて不織布からなる別な不織層52dとからなる透湿性の不織布層52と粘着剤層53が順に積層されていてもよい。
【0057】
この透湿防水シート50は、例えば透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位を有し前記ホットメルト接着剤による接着性を有する透湿接着層の両面に、不織シートが前記透湿接着層の一部の前記融着部位で夫々融着しているものであり、不織布が0.1デニール以上4デニール以下で、不織布層52bが、ポリエチレンテレフタレート製、又はポリアミド(ナイロン)製、及びポリプロピレン例えば二軸延伸ポリプロピレン(OPP)製の透湿性防水樹脂フィルム52cと、ポリエチレンテレフタレート製、ポリエチレン製、及びポリプロピレン製から選ばれる透湿性防水樹脂フィルムと、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、ポリエチレンテレフタレート製、ポリブチレンテレフタレート製、ポリアミド製、レーヨン製、ポリエステル製、アクリル樹脂製、ビニロン樹脂製、及びアラミド樹脂製から選ばれる不織布からなるものであってもよい。
【0058】
透湿防水シート50中、主として粘着剤層53を調整することによって、透湿性を有し湿気を通気させることができるが防風性を有し液状水分特に水滴を透過させないという背反する効果を両立させることができる。粘着剤層53が、不織布層52の空隙を塞ぐことなく下面側で露出した不織布繊維上に付着されつつ、目付を20~100g/m、好ましくは30~75g/m、より好ましくは30~50g/mとするものとすることにより、透湿防水シート50が湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができるようになる。
【0059】
透湿防水シート50中、金属箔層51が、例えば、アルミニウム製であって、厚さを5μm以上30μm以下とし、アルミニウム箔の表面積に対する透湿性多孔の開口面積の割合である開口率が1.2%以上7.0%以下であり、それの透湿性多孔1つあたりの孔の直径が0.5~2000μm、例えば0.5~3μm又は3μm~0.2mmであると好ましく、0.2mm以上2.0mm以下であってもよく、上記開口率の範囲であれば特に限定されないが10万/m以上100万個/m以下であることが好ましく、厚みが5.0μm以上30.0μm以下であってもよい。これらの範囲であると、透湿防水シート50が湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができる。直径が、この範囲を下回ると湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。
【0060】
透湿防水シート50中、図4(a)に示すように、メルトブローン不織層52bの両面にスパンボンド不織層52aが積層されており、前記メルトブローン層は、例えば密度が0.26g/cm以上0.7g/cm以下であり、厚さが20μm以上60μm以下であり、構成する繊維が互いに融着していないものが好ましいが、融着していてもよい。一方、スパンボンド不織層52aの厚さは、特に限定されないが、不織布全体の厚みである100μm以上300μm以下の範囲内であれば、メルトブローン不織層52bの厚みに従って適宜調整して用いることができる。スパンボンド不織層52aの厚さは、例えば、好ましくは1層あたり40μm以上140μm以下の範囲である。なお、スパンボンド不織層52aの厚みは、メルトブローン不織層52bの両面で、それぞれの厚さが異なっていてもよい。また、スパンボンド不織層52aの密度は、特に制限されないが、好ましくは0.1g/cm以上0.8g/cm以下である。
【0061】
透湿防水シート50中、不織布は、全体の目付量として特に限定されないが、例えば目付量30g/m以上120g/m以下の不織布を用いると、耐水圧が最小でも100cm w.c.であるため、不織布単体でも透湿防水シートの規格であるJISA6111に定める100cmw.c.以上の規定値を満たすことができる。より好ましくは、不織布の目付量が50g/m以上80g/m以下であると、透湿性と強度と耐水圧のバランスがよい。
【0062】
透湿防水シート50中、スパンボンド不織層52aに用いられる繊維は1.5デニール以上4デニール以下、メルトブローン不織層52bに用いられる繊維は0.1デニール以上0.3デニール以下であるとより好ましい。
【0063】
スパンボンド不織層52a及びメルトブローン不織層52bが繊維径や密度等を前記のようにしていると、湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができる。これらの範囲を下回ると、粘着剤層53の未付着面積や目付等を調整したとしても、湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。
【0064】
透湿防水シート50中、メルトブローン不織層52bの両面のスパンボンド不織層52aは、同種及び同厚であってもよいし、異なる種類や異なる厚みであってもよい。
【0065】
不織布は、ポリエチレンテレフタレート繊維、ポリブチレンテレフタレート繊維、ポリアミド(ナイロン)繊維、レーヨン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維(ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維等)、アクリル樹脂、ビニロン繊維、及びアラミド繊維から選択される少なくとも1種の繊維を含んでもよい。
【0066】
メルトブローン不織層52bの両面にスパンボンド不織層52aが積層されていればよく、スパンボンド不織層52aは複数の層となっていてもよい。具体的には、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMS)、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMMS)、スパンボンド不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-メルトブローン不織層-スパンボンド不織層(SMMMS)からなる群から選択される不織布を用いることができる。より好ましくは、不織布はSMS(中間のメルトブローン層(M)が1層),SMMS(中間のメルトブローン層(M)が2層),SMMMS(中間のメルトブローン層(M)が3層)であると、安定した性能が得られるため好ましい。
【0067】
透湿防水シート50中、スパンボンド不織層52aは、例えば、透湿性樹脂を含むホットメルト接着剤で形成された不織繊維による水滴非透過性で透湿性の間隙、多孔及び/又は融着部位56bを有しホットメルト接着剤による接着性を有する透湿ホットメルト接着層の両面に、不織シートが透湿ホットメルト接着層の一部の融着部位56bで夫々融着しているものである。このスパンボンド不織布52aは、例えば、スパンボンド不織層52aに挟まれたメルトブローン不織層52bからなる積層シートであってもよい。スパンボンド不織布52aと粘着剤層53とにより、メルトブローン積層された繊維と粘着剤層とが水蒸気を透過する間隙を形成しつつ、ねじ釘に絡んで密着するので、透湿性と優れた防風性とさらに釘穴止水性である留め穴止水性とを有している。ホットメルト接着剤は、塗布量が、例えば5g/m以上75g/m以下、上限が好ましくは50g/m以下、より好ましくは30g/m以下、より一層好ましくは20g/m以下であり、下限が好ましくは5g/m以上である。
【0068】
透湿防水シート50中、スパンボンド不織層52aは、図4(a)の部分拡大模式断面図に示されるように、無数の不織繊維56の集合体である。不織繊維56は、透湿性樹脂を含有するホットメルト接着剤をメルトブローン法によって紡糸された後、熱圧着ロールによって押し潰されて形成されている(不図示)。それにより、スパンボンド不織層52aは、繊維形状を保持している不織繊維56が不規則に重なり合ったり絡み合ったりしている線条部位56aと、不織繊維56の一部が押し潰しにより繊維形状を失って互いに融着した融着部位56bとを、有している。
【0069】
透湿防水シート50中、不織布は、無数の微細孔を有していることが好ましい。これらの微細孔は0.1~0.3μmの平均径を有しているとより好ましい。接着剤からなるウェブの構成が上記範囲であると、nmオーダー径の水蒸気粒子を透過するが、数百μm~数mmオーダー径の雨水を透過しない。その結果、接着剤からなるウェブは、強固な接着性に加えて、透湿性及び防水性をも有することができる。
【0070】
融着部位56bの不織繊維56は、熱圧着加工を経ることにより、未硬化の軟化状態で押し潰されて広がり、一部で繊維形状を失って互いに融着してシートのような形態をなしている。そのため、メルトブローン不織層52bとベース層となる底面側のスパンボンド不織層52a及び表面層となるおもて面側のスパンボンド不織層52aとの界面に存在する融着部位56bは、両スパンボンド不織層52aの繊維に面接触してそれを覆いつつ融着している。その結果スパンボンド不織層52a・メルトブローン不織層52b同士が強固に融着するので、スパンボンド不織層52aを有する透湿防水シート50は、JIS A6111(2016)に規定された耐久性における8kPa以上の水圧に耐えうる防風性・防水性を示す。
【0071】
しかもホットメルト接着剤によって形成されているメルトブローン不織層52bは、透湿性樹脂を含有するので、シート状の融着部位56bを有していても透湿性を損なわない。融着部位56bは、不織布層52中に無数に点在している。それにより不織布層52の引張強度や引裂強度は、単に繊維形状を維持したまま重なり合ったり絡み合ったりしているだけの繊維の集合体に比較して遥かに高い。
【0072】
線条部位56a中、不織繊維56は、重なり合いや絡み合いによって、それらの間で微細な間隙や多孔を形成している。さらにスパンボンド不織層52a・メルトブローン不織層52bとの界面に存在する線条部位56aは、それの材料であるホットメルト接着剤の接着力によってスパンボンド不織層52a・52aの繊維に、点接触して接着している。
【0073】
この線条部位56a中の間隙や多孔の幅は、10~80μmであることが好ましく、10~50μmであることがより好ましく、10~30μmであることがより好ましい。それによりこの間隙や多孔は、例えば、100~500μmの径を有する霧雨や、500μmを超える径を有する雨滴を透過させずに防水性を発現するとともに、ナノメートルオーダーの径を有する水蒸気粒子や湯気を透過するという透湿性をも発現する。
【0074】
また、透湿防水シート50中、図4(b)に示すようにしていると、透湿性防水樹脂フィルム52cと不織層52dと粘着剤層53とにより、湿気や水蒸気を透過させる透湿性を発現しつつ、液体状の水分を透過させない防風性・防水性を発現することができる。透湿性防水樹脂フィルム52cのフィルム厚や、不織層52dの繊維径が、この範囲を下回ると、粘着剤層53の未付着面積や目付等を調整したとしても、湿気や水蒸気を透過させ難くなり、一方、この範囲を上回ると液体状の水分を透過させ易くなってしまう。またこの透湿防水シート50は、透湿防水フィルムが積層されているので、防風性・防水性・留め穴止水性をも有している。
【0075】
このように防水通気建材100は、スパンボンド不織層52aとメルトブローン不織層52bからなる透湿性の不織布層52、又は透湿性防水樹脂フィルム52cと不織層52dとからなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層53で付されていることによって、優れた防風性と透湿性及び防風性と防水性と釘穴止水性とを兼ね備えているので、屋根や壁から家屋内に雨水が浸入することを確実に防ぐと同時に、家屋内の水蒸気を透過させて結露の発生を防ぐことができる。
【0076】
防水通気建材100を使用する際には、以下のような構成とすることにより、簡便に施工することができるようになる。
【0077】
防水通気建材100中、透湿防水シート50は、粘着剤層53に離型紙54が付されており(図4(a)及び(b)参照)、ロール状に巻かれたものであると、施工現場で離型紙54を剥ぎ取りながら、透湿防水シート50を繰り出し、野地板40に簡便に貼付することができる。透湿防水シート50は、透湿性多孔55を塞がないように金属箔層51上に離型剤層を設けてから、ロール状に巻かれたものであると(不図示)、透湿防水シート50を繰り出すだけで、離型紙の剥離を必要とせずに、野地板40に簡便に貼付することができる。なお、透湿防水シート50は、長尺のまま所期の長さに貼付できるが、短尺方向(長尺方向に対して垂直方向)では隣り合う透湿防水シート50の短尺端部を重ねるようにして貼付される。
【0078】
防水通気建材100中、非透湿性防水シート2からなる防水通気材1は、長尺方向L-L’の一辺側に厚さ程の段差5bを介して接続され、金型成型時の耳として形成される端辺部5aと、他辺側に厚さ程の段差4aを介して接続され、金型成型時の耳として形成される端帯辺部4bとを有している。金型は、熱可塑性樹脂製の非透湿性防水シート2の原材を、凹み部22や凹凸部10に対応するキャビティを有する雄型金型と雌型金型とで加熱下で挟んでプレス加工して、非透湿性防水シート2を形成するものであってもよく、熱可塑性樹脂製の非透湿性防水シート2の原材を、凹み部22や凹凸部10に対応するキャビティを有する金型で加熱下で挟んで加熱下で金型へ密着するように真空吸引して、非透湿性防水シート2を形成するものであってもよい。
【0079】
これら複数の防水通気材1同士を一部を重ね合わせて屋根へ設置する際に、防水通気材1の端辺部5a寄りの凹凸部20の最端列と、別な防水通気材の端帯辺部4b寄りの最端列とで、凹凸部20同士が、嵌り合い又は咬み合うようにしてもよい。
【0080】
図1-1(b)に示すように、防水通気材1の下面側に、透湿防水シート50を設けた組み合わせにより、防水通気建材100とする。
【0081】
防水通気建材100は、例えば図1-1(b)に示すように、野地板40上に透湿防水シート50を貼付し、その上へ、同一の構成・形状を有する複数の防水通気材1を連結して、防水通気建材100として敷設され、釘80によって防水通気材1を湿防水シート50ごと野地板40に固定される。防水通気材1は次のように施工されて作用する。
【0082】
具体的には、図1-3に示すように、非透湿性防水シート2の端辺部5aと、他の非透湿性防水シート2の端帯辺部4bとを重ね合わせて、防水通気建材100を屋根に施工する際に野地板40上に直接又は透湿防水シート50を介して設置する。このとき、防水通気材1の複数が、凸部同士の入れ子状の嵌まり合いによって連結し、及び/又は、非透湿性防水シート同士で、テープで貼付され、接着剤で接着され、ステープル、タッカー、針、釘、鋲、割鋲、又はフックのような打設器で打設され、ボルト及びナット、又は螺子のような螺合具で螺合され、若しくは針金、又は紐のような連結具で結合されていることによって連結されている。
【0083】
防水通気建材100において、それを構成する防水通気材1やその連結体は、非透湿性防水シート2のシート下面側3bで、凹み部22の底部15が直接又は透湿防水シート50を介して野地板40に当接している。防水通気材1やその連結体のシート下面3bと、透湿防水シート50ないし野地板40との間で、複数の凹み部22の外形の周囲に、空隙の通気部31が形成されている。通気部31は、非透湿性防水シート2の長尺方向に沿う端辺部5aと端帯辺部4b、及び非透湿性防水シート2の長尺方向の切断端部から、外界に連通している。
【0084】
木造家屋60(図9参照)内で生じて野地板40を透過した水蒸気や湿気は、透湿防水シート50を透過して、防水通気材1である非透湿性防水シート2のシート下面3b側で、この通気部31を通じて木造家屋60内から外界へ放出される。その結果、通気部31に水蒸気や湿気が滞留しないので、野地板40における結露発生が抑止される。水蒸気や湿気の一部が結露したとしても、次第に気化し、外界へ放出される。
【0085】
一方、防水通気建材100を構成する防水通気材1やその連結体において、非透湿性防水シート2のシート上面3a側で、凹凸部10のうちの凸部11aが上方向に突き出していることによって、非透湿性防水シート2の長尺方向に沿う端辺部5aと端帯辺部4b、及び非透湿性防水シート2の長尺方向の切断端部から、外界に連通している。
【0086】
木造家屋60(図9参照)内の屋根材70の裏で、水蒸気や湿気は、透湿防水シート50を透過して、防水通気材1である非透湿性防水シート2のシート上面3a側で、この通気部31を通じて木造家屋60内から外界へ放出される。水蒸気や湿気の一部が結露し、防水通気材1である非透湿性防水シート2のシート上面3aに付着したり凹み部22に僅かに溜まったりしたとしても、次第に気化し、外界へ放出される。
【0087】
そのため、非透湿性防水シート2を用いた防水通気材1によれば、それのシート上面3a側・シート下面3b側で通気性がよく、結露が残存し難いので、結露水が野地板40に垂れ落ちず、野地板40への結露発生を効果的に抑止でき、野地板40を腐朽させないばかりか、桟木61aや屋根材70を腐朽させない。また、防水通気材1である非透湿性防水シート2を固定するステープルや釘80等を腐食させない。
【0088】
防水通気建材100を野地板40に固定する釘80は、防水通気材1を貫通している。釘80は、鋭く尖った先端部と、胴部と、胴部よりも拡径した頭部とを有している。防水通気材1である非透湿性防水シート2は上記範囲の厚さ及び伸び率を有していることによって、十分な強度と柔軟性及び弾性と兼ね備えている。それにより非透湿性防水シート2は、貫通した釘80によって穴が開いていても、釘80の胴部に密着してそれとの間に空隙を形成させない。その結果、防水通気材1は高い防風性・防水性・留め穴止水性を発現し、水分を野地板40へ浸入させない。
【0089】
防水通気建材100によれば、複数の防水通気材1が、非透湿性防水シート2の端辺部5aと、他の非透湿性防水シート2の端帯辺部4bとを重ね合わせているので、屋根材70から雨水が漏れたとしても非透湿性防水シート2の存在によって非透湿性防水シート2のシート上面3a側から屋内に侵入できない。また、屋内の水蒸気や湿気が非透湿性防水シート2のシート下面3b側から侵入したとしても非透湿性防水シート2の存在によって外界に放出できるので、結露させない。
【0090】
さらに、防水通気建材100によれば、透湿防水シート50が、透湿性多孔の開いた金属箔層51と不織布層52と粘着剤層53とにより、防風性・防水性・留め穴止水性と透湿性とを発現し、外界から水分を野地板40へ浸入させずに屋内の湿気・水蒸気を外界に放出させる。
【0091】
この防水通気建材100は、屋根の施工の際に、例えば次のようにして野地板40上に敷設される。作業者は、透湿防水シート50を巻き取ったロールから繰り出し、野地板40の全面を覆うようにして、貼付する。次に、防水通気材1を巻き取ったロールを、繰り出し、軒先63側から、野地板40に載せた透湿防水シート50上に軒先63に沿って載置し、このロールから防水通気材1を繰り出しながら野地板40の一端から他端までを一様に覆って裁断する。このとき防水通気材1は、凹み部22の底部25外面が野地板40に透湿防水シート50を介して野地板40に当接する向きで敷設される。必要に応じて、ステープルや釘等で固定する。
【0092】
次いで、順次、軒先63側から棟64側に、先の防水通気材1の非透湿性防水シート2の端帯辺部4bと、同様にして別途繰り出し裁断し平行に設置した別な防水通気材1の非透湿性防水シート2の端辺部5aと重ね合わせ、必要に応じて釘80ステープルや等で固定したり防水テープで繋ぎ目に貼付したりする。
【0093】
この防水通気建材100を用いれば、簡素な操作だけで、透湿防水シートを貼り付け、複数の防水通気材1を連結して仮組し、家屋の屋根の形状に合わせて防水通気建材100として敷設できる。その結果、屋根下地材の敷設作業時間を従来よりも短縮できるとともに、作業者の負担を軽減することができる。
【0094】
その後、桟木61aを設置して釘80等で固定し、屋根材を被覆して屋根61を形成する。
【0095】
なお雨天時に、防水通気建材100の敷設作業が行われる場合、非透湿性防水シート2の凹み部22に雨水が溜ることがあるが、既に説明した通り、屋根を形成した後に、自然に気化して屋外に排出されるので、溜まった雨水を逐一排出するという面倒な操作を必要とせず、作業工程が簡略化される。
【0096】
防水通気建材100の製造方法を説明する。
先ず、スパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層53で付されている透湿防水シート50(図4(a)参照)は、スパンボンド法又はメルトブロースパンボンド法によりスパンボンド不織層52a・メルトブローン不織層52b・スパンボンド不織布52aが積層したスパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層52を作製し、不織布層52の上面に、透湿性多孔55の開いた金属箔層51を接着剤により接着し又は熱溶融し、一方、不織布層52の下面に粘着剤を塗布(例えば、好ましくはスプレー加工)することにより、防水通気建材100が製造される。
又は、透湿性防水樹脂フィルム52cと不織層52dとからなる透湿性の不織布層が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層で付されている透湿防水シート50(図4(b)参照)は、透湿性防水樹脂フィルム52cに、不織布を接着剤により接着し又は熱溶融して不織布層52を作製し、不織布層52の上面に、透湿性多孔55の開いた金属箔層51を接着剤により接着し又は熱溶融し、一方、不織布層52の下面に粘着剤を塗布(例えば、好ましくはスプレー加工)することにより、防水通気建材100が製造される。
なお、金属箔層11は蒸着により付した後に、透湿性多孔15を開けてもよい。
一方、防水通気材1は、樹脂製原材板のロールから繰り出し、防水通気材1の凹凸形状を成す雄金型と雌金型とで加熱しながら非透湿性防水シート2を成型した後、ロール状に巻き取ることによって、作製される。
【0097】
防水通気建材100が木造家屋60に敷設されている様子の一部切欠き斜視図を図9に示す。防水通気建材100は、野地板40の上に一様に敷かれている屋根下地である。桟木61aが防水通気建材100とともに釘80によって、野地板40に固定されている。屋根材30として、ガルバリウム鋼板(日本製鉄株式会社の登録商標)に例示される金属屋根材が桟木61aに固定されている。
【0098】
屋根61は、冬季に寒冷な屋外と暖房などによって温暖な木造家屋60内とを仕切っているので、その温度差と木造家屋60内で生じた水蒸気や湿気との所為で野地板40に結露が発生し易い。しかし上述のように、防水通気材からなる防水通気建材100と野地板40との間、屋外へ連通した通気部31が形成されていることにより、野地板40を透過した水蒸気が透湿防水シート50を透過し、防水通気材1の下側の通気部31を通って屋外へ排出されるので、野地板40や桟木61aに結露を生じさせない。それによりこれらの腐朽が防止されている。
【0099】
しかも防水通気材1である樹脂製非透湿性防水シート2と透湿防水シート50とが木造家屋60内で生じた水蒸気や湿気を透過さず、かつ非透湿性防水シート2が高い防風性・防水性・留め穴止水性を有するので、この水蒸気や湿気は金属屋根材である屋根材30に到達しない。その結果、防水通気建材100は、野地板40の腐朽だけでなく金属製の屋根材30の腐食をも防止している。
【0100】
さらに屋根61は、時として強雨に曝される。このとき雨水が複数の屋根材30の継ぎ目から浸入し、防水通気建材100の上面にまで到達することがある。防水通気建材100は、柔軟性及び弾性に富む非透湿性防水シート2がこれを貫通した釘80の胴部の表面に密着して高い留め穴止水性を示すので、木造家屋60内に雨水を浸入させない。
【0101】
防風性・透湿性・防水性は、JIS A6111:2016に準じて測定されるもので、水密性に関わるものである。スパンボンド不織布からなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層53で付されている透湿防水シート50(図4(a)参照)は、透湿性・防水性がJIS A6111:2016の規格に適合し、防風性にも優れている。また、透湿性防水樹脂フィルム52dと不織層52dとからなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われつつ、下面側にて透湿性の粘着剤層53で付されている透湿防水シート50(図4(b)参照)も、透湿性・防水性がJIS A6111:2016の規格に適合し、防風性にも優れている。
【0102】
図1-1~図1-3中、凸部11aは、凹み部の縦列間に並んだ例を示したが、縦列間に代えて又は縦列間と共に、横列間に並んでいてもよい(不図示)。
【0103】
凹み部22の縦列間で縦列方向に平行し間隔を空けて並んでいる凸部列中の凸部11aは、複数の非輪状凸部の形状として、図1-1~図1-2でL-L’方向に沿う略直方体状の凸部11a図2(a)参照)の例を示したが、同じくL-L’方向に沿って並ぶもので、直方体状の中でも立方体状の凸部11a図2(b)参照)、円柱状の凸部11a(同図(c)参照)、楕円柱状の凸部11a(同図(d)参照)、四角錐体状の凸部11a(同図(e)参照)、半球状の凸部11a(同図(f)参照)、球冠状の凸部11a(同図(g)参照)、六角柱状のような四角柱状の凸部11a(同図(h)参照)であってもよい。十文字中の一方の一文字が同じくL-L’方向に沿う十文字立体状の凸部11a(同図(i)参照)、X文字中の一文字が同じくL-L’方向と斜交いにあるX文字立体状の凸部11a11(同図(j)参照)であってもよい。若しくは、凸部11aは、同図(k)のように、その列方向である縦列方向(L-L’方向と垂直方向)での凸部列内の隣り合う凸部11a11及び11a11’の対同士の間隙を挟みつつ凹み部の行方向である横列方向(L-L’方向)に平行して並んでいる凸部11b11及び11b11’の対とからなる間欠十字ユニットを有していてもよい。凸部11aは、同図(l)のように凹み部22の縦列間で縦列方向の斜め方向に間隙を空けて並んでいる第一凸部11b12及び11b12’の対と、その第一凸部11a12及び11a12’の対内の間隙11cを挟みつつ縦列方向の別な斜め方向に並んでいる第二凸部11b12及び11b12’の対とからなる間欠X字ユニットを有していてもよい。また、同図(m)のように、凸部11aは、T文字立体形状の凸部11a13が、同じ向き又は、交互に反対向きにL-L’方向に沿って並んでいてもよい。さらに同図(o)のように、凸部11aは、星形形状の凸部11a14が、同じ向き又は、交互に反対向きにL-L’方向に沿って並んでいてもよい。
【0104】
図3(a)に示すように、非輪状凸部11として凸部11eの天面11eが、シート上面3aに対して、例えば切妻屋根の棟側(図9参照)が高くなるように、傾斜していてもよい。
【0105】
凸部11として非輪状凸部の例を示したが、図3(b)に示すように、輪状凸部11dであって、繋がり又は間欠しているクレーター状の外輪11dを有するものであってもよい。外輪11d内側が外側よりも浅くなっていることによって、外輪内底11dを有するものであってもよい。
【0106】
本発明の別な防水通気建材100の一形態を図5-1及び図5-2に示す。図5-1(a)は、長尺の防水通気材1の一部を切り欠いて取り出した平面図であり、同図(b)はそれの正面断面図であり。同図(c)はそれの左側面図であり、同図(d)はそれの右側面図であり、図5-2(e)はそれの底面図である。なお、背面断面図は、正面断面図と対称であるため、省略する。以下、図1-1~図1-3等を参照して示した防水通気材1との相違点について主に説明することとする。
【0107】
防水通気材1は木造家屋を構成する木材、例えば野地板40に固定される屋根下地材である。防水通気材1は可撓性を有し、非透湿性防水シートからなるもので、長尺方向L-L’(上下方向)に連続して延びた巻取可能な長尺物である。
【0108】
防水通気材1は、端辺部5aと端帯辺部4bとの間の平面板部6に、複数の凹凸部20が縦横に整然と並んでいるものである。凹凸部20は、シート上面3aで開口縁を有しつつ開口縁からシート下面へ窪んだ凹み部22と、開口縁を取り囲みつつシート上面3aから突き出た円弧状凸部23a~23dからなる環状凸部23及びその円弧状凸部23a~23dの隣同士を間欠部21で間欠して区切る間欠部24a~24dからなる環状間欠24とを有する。凹凸部20は、長尺方向L-L’に沿いつつ各列毎に等間隔に並ぶ5列に配列されて長尺方向とそれに垂直な左右方向とに等間隔で同方向に設けられたものである。
【0109】
凹凸部20は、シート上面3a側(おもて面側:屋外側)で、環状凸部23を成す四つの円弧状凸部23a~23dと、環状間欠24を成す四つの間欠部24a~24dとが交互に、丸く環状に並んでいるものである。
【0110】
円弧状凸部23aは、円弧状に盛り上がっていることによって内部が空洞となっている。円弧状凸部23aは、円弧の内外で内側法面23aと外側法面23aとにより、また隣り合う円弧状凸部23b・23dに対向する間欠部側法面23a及び23aとにより、盛り上がり、盛り上がった天端面23aを形成したものである。外側法面23aと間欠部側法面23a及び23aとは平面板部6から盛り上がっているのに対し、内側法面23aは、円錐台状に窪んだ凹み部22の傾斜面へと延びている。
【0111】
円弧状凸部23b~23dも、円弧状に45°ずつ、ずれていること以外は、円弧状凸部23aと同様に、なっている。
【0112】
環状間欠24を成す四つの間欠部24a~24dは、平面板部6上に形成されている。
【0113】
環状凸部23と環状間欠24とにより、踏み付けたときに滑らないように滑り止めとなっている。
【0114】
なお、四つの円弧状凸部23a~23dでなす環状凸部23と、四つの間欠部24a~24dでなす環状間欠24の例を図示したが、それらは夫々、二つ乃至三つでもよく、五つ乃至八つであってもよい。環状凸部23と環状間欠24とは、均等間隔で環状を形成していることが好ましい。
【0115】
凹み部22は、シート下面3bから下方へ突き出し、野地板40に向かって漸次縮径した円錐台形をなしつつ、底部25を有している。
【0116】
凹み部22と、環状間欠24を成す四つの間欠部24a~24dとの境目が、シート上面で開口縁となっている。
【0117】
これら複数の防水通気材1同士を一部を重ね合わせて屋根へ設置する際に、防水通気材1の端辺部5a寄りの凹凸部20の最端列と、別な防水通気材の端帯辺部4b寄りの最端列とで、凹凸部20同士が、嵌り合い又は咬み合うようにしてもよい。
【0118】
防水通気材1は、例えば図5-1(b)に示すように作用するが、図1-1(b)と同様である。
【0119】
図1-1~図1-3、図2図4図5-1~図5-3、及び図6~9に共通する防水通気材1及びそれを用いた防水通気建材100について、以下に説明する。
【0120】
非透湿性防水シート2は、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、及びアクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体から選ばれる少なくとも何れかの前記樹脂製の硬質又は軟質の樹脂製板であり、雨水を透過しないという防水性を示すとともに、水蒸気・湿気も透過させないから実質的に透湿性を有しない。非透湿性防水シート2は、樹脂製原材板を、防水通気材1の凹凸形状を成す雄金型と雌金型とで成型したものである。非透湿性防水シート2は、これらの樹脂製板が、無機フィラー、タルク、炭酸カルシウム、石英、各種添加材を含有するものであってもよい。前記樹脂は、所謂リサイクル樹脂品であってもよく、リサイクル樹脂品と未加工樹脂品との混合物であってもよい。
【0121】
非透湿性防水シート2は、特に強度については限定しないが、例えばJIS K6767(1999)に準拠した伸び率を少なくとも30%としている。具体的に、この伸び率の下限値を好ましくは30%、より好ましくは35%、より一層好ましくは40%のいずれかとし、かつその上限値を好ましくは100%、より好ましくは95%、より一層好ましくは80%としている。このような非透湿性防水シート2は柔軟性及び弾性に富むので、これを貫通した釘80(図5-1参照)の胴部の表面にしっかりと密着してそれとの間に隙間を生じない。
【0122】
凹凸部10・20は、防水通気材1を屋根へ設置する際に、作業者が乗ったり踏み付けたり、ハンマーで釘等を打ち込んで固定したりしても、潰れない程度の強度を有していることが好ましい。そのためには、非透湿性防水シートの樹脂製原材板の厚さを1~10mmにして、金型成型したときに凹凸部10・20の最薄部位の厚さを最低でも2mm好ましくは2~6mm、より好ましくは3~5mmにする。また、凹凸部10は、凹み部22の最大外径が10~100mmで凸部11aの長辺長・短辺長が10~100mmであり、凹凸部20は、環状凸部23の最大外径を10~100mm、環状凸部23の最大内径を5~95mm、底部25の外径を1~90mmにする。さらに、凹凸部20が、円弧凸部23aを平面板部6のシート上面3aからの高低差(高さ)で3~10mm、好ましくは5mmにする。また凹み部22が、凹み部22を平面板部6のシート下面3bからの高低差(低さ)で5~10mm、好ましくは8mmにする。隣り合う凹凸部20同士の外形の最も近い箇所では、5~20mmの距離にする。輪状凸部11dの場合、外輪11dの高さが前記凸部と同様であり、内側底がシート上面3aよりも1~2mm高くなっている。
【0123】
非透湿性防水シート2が樹脂製であり、かつこの範囲の厚さ・径を有していると、一定の間隔で並んだ複数の凹凸部20が非透湿性防水シート2の厚さ方向に掛かる荷重を均一に分散することと相俟って、非透湿性防水シート2は、防水通気材1の敷設時に作業者がその上に乗っても潰れないという高い耐荷重性を発現する。
【0124】
防水通気材1の幅(端辺部5aから端帯辺部4bまでの距離)は、特に限定されないが、ロール状に巻き易く、繰り出し易く、かつ100~1000mmとする。防水通気材1は、長尺方向へ数10m最大で20mとなるように延びており、ロールに巻き取られている(不図示)。凹凸部10・20が5列の例を図示しているが、防水通気材1の幅に応じて、3~4列又は6~10列にしてもよい。
【0125】
一方、凹凸部20は、シート下面3b側(うら面側:屋内側)から見ると、シート上面3a側と凹凸が逆になっている。即ち円弧状凸部23a~23dでなす環状凸部23はシート下面3bからシート上面3a側へ窪んでいるように看取され、凹み部22はシート下面3bから突き出ているように看取される。
【0126】
複数の凹凸部20は、すべて同一の大きさ(寸法)を有している。
【0127】
凹凸部20の夫々の角は、アールが設けられて、内側に又は外側に丸められていてもよい。
【0128】
凹凸部20の底部25は、シート下面3b側で、直接又は透湿防水シート50を介して、野地板40に当接する。
【0129】
防水通気材1の凹み部22の底部25が、透湿防水シート50又は野地板40に接触することによって、シート下面3b側で、夫々の凹み部22の周りが、防水通気材1と透湿防水シート50又は野地板40との間で、空隙の通気部31となっている。
【0130】
凹凸部20は、各列・列間で、同方向に向いた例を示したが、図7に示すように、平面上にて各例で45°ずつ回転した状態で配置されていてもよい。または、図8に示すように、平面上にて各例及び列間で45°ずつ回転した状態で配置されていてもよい。凹凸部20はランダムに設けられていてもよい(不図示)。
【0131】
なお、屋根材30は金属屋根材に限られず、例えばJIS A5423(2013)に規定されるスレートであってもよいスレート屋根材であってもよい。スレート屋根材は、セメントを押し固めた後に乾燥養生することにより製造される。スレート屋根材は水分の吸収と乾燥とを繰り返すとひび割れを生じ易い。防水通気建材100を屋根下地としてスレート屋根材を葺くと、木造家屋60内で生じた水蒸気や湿気が防水通気材1によってスレート屋根材にまで到達しないので、特に乾燥期(太平洋側は冬季、日本海側は夏季)にスレート屋根材に結露による吸水を生じさせない。それによりスレート屋根材の吸水・乾燥の繰返しが生じることを防止して、それのひび割れを抑止できる。
【0132】
一方、防水通気建材100について、屋根を施工する例について説明したが、壁を施工する際に用いることもできる。
【0133】
防水通気建材100は、壁板62aを覆うように固定されることにより、外壁62の下地としても使用することができる。この場合、防水通気材1の上にラス62b、モルタル62c及び塗装膜62dが施工されることにより、外壁62が形成される。防水通気材1は外壁62に使用されても、屋根61の下地に使用されるのと同様に、優れた留め穴止水性と防水性とによって外壁62内に雨水を浸入させず、さらに通気部31によって結露を発生させない。それにより野地板40や壁板62aのような木造家屋60の躯体である木材を、雨水浸入や結露によって腐朽させない。
【0134】
凹凸部20の凹み部22が円錐台状の例を挙げたが、多角錐台状であってもよい。その多角錐として具体的に、三角錐、四角錐、五角錐、六角推、七角錐、及び八角錐が挙げられる。
【0135】
透湿防水シート50として、例えば、nmオーダー径の水蒸気粒子を透過する一方で、数百μm~数mmオーダー径の雨水を透過しない径の孔を有する樹脂製不織布からなるシートや、このような孔径を有する多孔フィルムの両面又は片面に接着層を介して樹脂製不織布を積層させた多層シートが挙げられる。透湿防水シートは、JIS A6111(2016)の規定を満たす透湿性、防水性、及び留め穴止水性を兼ね備えている。透湿防水シート50は、合成高分子系シートとして、ポリエチレンやポリ塩化ビニルのようなポリオレフィンシート;ポリウレタンシート;ポリビニルブチラールシート;熱可塑性エラストマーシート;エチレン-ビニルアセテートコポリマーやビニルアセテートホモポリマーやそれらの一部乃至全部加水分解ポリマーのようなポリビニルアセテートシート;加硫ゴムや非加硫ゴムのようなゴムシートが挙げられ、またアスファルト系シートとしてアスファルトルーフィングフェルトが挙げられる。合成高分子系シートは、JIS A6008:2002合成高分子系ルーフィングシート適合品であり、アスファルト系シートは、JIS A 6013:2005 改質アスファルトルーフィングシート適合品であることが好ましい。
【0136】
上記の規定を満たす透湿防水シートとして、例えば、ルーフエアテックス及びスーパーエアテックスKD(フクビ化学工業株式会社製、「エアテックス」、「ルーフエアテックス」、及び「スーパーエアテックス」はフクビ化学工業株式会社の登録商標)、ラミテクトHi・S(セーレン株式会社製、「ラミテクト」はセーレン株式会社の登録商標)、タイベック(デュポン社製、「タイベック」はデュポン社の登録商標)、並びにイーストルーフシルバー(株式会社ナガイ製、「イースト」は株式会社ナガイの登録商標)のような市場で入手可能なものを挙げることができる。または、金属膜材及び/又は樹脂膜と不織布とが接着・接合した積層体、好ましくはアルミ蒸着したポリエチレン樹脂フィルムに前記のような多孔を開けポリエチレン製不織布に熱融着又は接着剤で接着した積層体であってもよい。
【0137】
防水通気材1として、図1-1~図8の通り、非透湿性防水シート2が樹脂製の単一部材である例を示したが、基材3のシート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在して凹んだ凹み部及び必要に応じて前記開口部同士の間で前記シート上面から突き出た滑り止めの凸部を有しつつ支持体を兼ねる基材3と、基材3のシート上面に付された滑り止めの層27を有する複合部材であってもよい。
【0138】
具体的には、防水通気材1として、図1-1~図8のように、シート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在して窪んだ凹み部22が設けられつつ、非輪状又は輪状凸部11a・11c・11d若しくは環状凸部23がシート上面に設けられた基材3と、図1-1~図8には不図示であるが基材3のシート上面側に付されたものでこれら凸部ごと覆う滑り止めの層27とを、非透湿性防水シート2とするものであってもよい。
【0139】
別な具体例として、防水通気材1は、図9(a)に示すように、シート上面で開口部を有しつつシート下面へ散在して窪んだ凹み部22が設けられるがシート上面に凸部を有しない基材3と、基材3のシート上面側に付されたものでこれら凸部ごと覆う滑り止めの層27とを、非透湿性防水シート2とするものであってもよい。同図(b)に示すように、防水通気材1は、釘、若しくはステープル、タッカー、針、鋲、割鋲、又はフックで打設されたとき、比較的硬質な基材3の弾性よりも柔軟で弾性のある滑り止めの層27によって、優れた止水性が発現される。
【実施例
【0140】
以下、本発明を適用した実施例を示す。
【0141】
(実施例1)
厚さ0.3mm、0.5mm、0.7mm及び1.0mmの各ポリプロピレン(PP)樹脂製の基板原材から、図5-1に示すような防水通気材1を以下のようにして、作製した。この基板原材を230℃で加熱しながら、平面部6上に、深さ8mmだけシート下面3bから窪みつつ基材シート上面側で開口径18mmで底面径8mmの凹み部22と、その凹み部22を取り囲むように基材シート上面から突き出た防水通気材1中、基材シート上面側で外径30mmで内径22mmでかつ間欠部が5mm間隔を有し高さが1mm、2mm及び3mmの各輪状凸部23とを成し5mmの間隔を開けた凹凸部20、段差5b・4a、及び端辺部5aの端から端帯辺部4bの端までが1000mmを成す真空成型用金型で減圧しながら、縦方向(L-L’)に15mの長尺の非透湿性防水シート2からなる防水通気材1を成型し、ロール状に巻き取った。
30μm厚の多孔質ポリエチレンフィルムで被覆して積層した厚さ0.8mmで目付180g/mで繊維径を50、100及び200μmとしつつ目付を65g/mとするポリエチレン製不織布とし、1.22μmの多孔を496,000個/mの密度で開けた蒸着アルミニウムからなる金属箔層51が不織布へ付され、目付を30~50g/mとする粘着剤層53と、必要に応じてその粘着剤層53を覆う剥離紙とからなる透湿防水シート50を作製し、ロール状に巻き取った(図4(b)参照)。
この防水通気材1のロールから防水通気材1を繰り出し、透湿防水シート50のロールから透湿防水シート50を繰り出し、これらを組み合わせて、基板原材の厚さ4種類で輪状凸部の高さ3種類である計12種類の実施例1の防水通気建材100の試作品を作成し、屋根や壁の施工に供した。
【0142】
(比較例1)
実施例1中、輪状凸部23を有しないこと以外は、実施例1と同様にして、基板原材の厚さ4種類の比較例の建材の試作品を作成し、屋根や壁の施工に供した。
【0143】
(滑り止め確認試験)
実施例1で得た防水通気建材100の試作品、及び比較例1で得た建材の試作品について、1寸勾配(底辺10に対し高さ1となる勾配:角度θ=約5.7°)、3寸勾配(底辺10に対し高さ3となる勾配:角度θ=約16.7°)、5寸勾配(底辺10に対し高さ5となる勾配:角度θ=約26.5°)、及び6寸勾配(底辺10に対し高さ6となる勾配:角度θ=約31°)の疑似屋根に取り付け、標準体重約70kgの成人男性が、や根取付作業を行う安全靴で踏んだところ、滑り止めが効き滑らなかったものを〇、滑り止めが効いたが滑り易くなったものを△、滑ってしまったものを×とする3段階で評価した。その結果を、表1に示す。
【0144】
【表1】
【0145】
表1から明らかな通り、実施例1の結果のように、基材原材の厚さが0.3mmと薄いと、3寸勾配でも輪状凸部の高さが1mm以上はないと滑ってしまい、5寸勾配でも輪状凸部の高さが3mm以上ないと滑ってしまった。これは、基材原材の厚さが薄すぎると、勾配が緩いときに踏み付けた時に輪状凸部が潰れ易く滑り止めとなる反面、勾配が急だと踏み付けた時に輪状凸部が潰れ過ぎて滑り止めとなり難いからであるようである。
基材原材の厚さが0.5mmと比較的厚いと1寸勾配から6寸勾配まで実用的な勾配で何れも滑り止めとなった。これは基材原材にある程度の厚さがあることにより、輪状凸部が多少潰れでも潰れ過ぎないために滑り止めとして十分に機能したためである。
基材原材の厚さが0.7mm~1mmとさらに厚くなると、5寸勾配や6寸勾配で輪状凸部の高さが低いほど滑ってしまった。これは、基材原材の厚さが厚すぎると踏み付けた時に輪状凸部が潰れ難くなって滑り止めとして機能し難いためである。
一方、輪状凸部の高さが0mmであると、1寸勾配では傾斜が緩すぎて辛うじて滑り止めとなったが、3寸勾配以上では最早滑り止めとならなかった。
【0146】
(実施例2)
実施例1と同様にして、非透湿性防水シート2からなる防水通気材1を成型し、ロール状に巻き取った。
ポリエチレンペレットから紡糸して、メルトブローン法により、厚さ499mmで目付75g/mで約499μm厚の市販のSMMMS(坪量比は、順にS41%、M6%、M6%、M6% S41%)ポリエチレン製不織布とし、平均0.62mmの多孔を444,444個/mの密度で開けた7μmのアルミニウム箔からなり不織布へ蒸着によって付され金属箔層51が、目付を30~50g/mとする粘着剤層53と、必要に応じてその粘着剤層53を覆う剥離紙とからなる透湿防水シート50を作製し、ロール状に巻き取った(図4(a)参照)。
この防水通気材1のロールから防水通気材1を繰り出し、透湿防水シート50のロールから透湿防水シート50を繰り出し、これらを組み合わせて、基板原材の厚さ4種類で輪状凸部の高さ3種類である計12種類の実施例1の防水通気建材100の試作品を作成し、屋根や壁の施工に供した。
実施例1と同様に、滑り止め確認試験を行ったところ、実施例1と同等の結果を示した。
【産業上の利用可能性】
【0147】
本発明の防水通気建材は、家屋の屋根や外壁の下地に用いられる。
【符号の説明】
【0148】
1は防水通気材、2は非透湿性防水シート、3は基材、5aは端辺部、5bは段差、4bは端帯辺部、4aは段差、3aはシート上面、3bはシート下面、6は平面板部、10は凹凸部、11a、11a~11a10・11a11・11a11’・11b11・11b11’・11a12・11b12’・11b12・11b12’は凸部(非輪状凸部)、11cは間隙、11dは凸部(輪状凸部)、11dは外輪、11dは外輪内底、12は開口部、15は底部、20は凹凸部、21は間欠部、22は凹み部、23は環状凸部、23a~23dは円弧状凸部、23aは間欠部側法面、23aは内側法面、23aは間欠部側法面、23aは外側法面、23aは天端面、24は環状間欠、24a~24dは間欠部、25は底部、27は滑り止めの層、30は釘、31は通気部、32は空隙部、40は野地板、50は透湿防水シート、51は金属箔層、52は不織布層、52aはスパンボンド不織層、52bがメルトブローン不織層、52cが透湿性防水樹脂フィルム、52dが不織層、53は粘着剤層、54は離型紙、55は透湿性多孔、56は不織繊維、56aは線条部位、56bは融着部位、60は木造家屋、61は屋根、61aは桟木、62は外壁、62aは壁板、62bはラス、62cはモルタル、62dは塗装膜、63は軒先、64は棟、70は屋根材、80は釘、100は防水通気建材、L-L’は長尺方向、A-A’は矢視方向である。
【要約】
【課題】高い留め穴止水性を有するとともに、野地板や壁板に生じた結露を速やかに解消することにより、野地板や壁板のような木造建造物を構成する木材を腐朽させず、滑り止めによって滑り難く、簡便に野地板等に敷設できる防水通気建材を提供する。
【解決手段】防水通気建材100は、基材3のシート上面で開口部を有しつつ窪んだ凹み部22と前記シート上面から突き出た非輪状凸部11a及び/又は輪状凸部11dを有してなる滑り止め部とを備えた非透湿性防水シート2から成る防水通気材1と、透湿性防水樹脂フィルム52cと不織層52dとからなる透湿性の不織布層52、又はスパンボンド不織層52a・52bからなる透湿性の不織布層52が、上面側にて透湿性多孔55の開いた金属箔層51により覆われ下面側にて透湿性の粘着剤層53で付され、防水通気材1及び野地板40との間に配置するための透湿防水シート50とからなる。
【選択図】図1-1
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2
図3
図4
図5-1】
図5-2】
図6
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図8
図9