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特許7429002ライニング材用硬化性樹脂組成物、ライニング材及びこれを用いた管路補修方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ライニング材用硬化性樹脂組成物、ライニング材及びこれを用いた管路補修方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 63/26 20060101AFI20240131BHJP
   C08F 283/01 20060101ALI20240131BHJP
   F16L 55/164 20060101ALI20240131BHJP
   B29C 63/28 20060101ALI20240131BHJP
   B29C 63/30 20060101ALI20240131BHJP
   B29K 33/04 20060101ALN20240131BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20240131BHJP
   B29K 1/00 20060101ALN20240131BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
B29C63/26
C08F283/01
F16L55/164
B29C63/28
B29C63/30
B29K33:04
B29K67:00
B29K1:00
B29L23:00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019173809
(22)【出願日】2019-09-25
(65)【公開番号】P2021049697
(43)【公開日】2021-04-01
【審査請求日】2022-09-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000219358
【氏名又は名称】東亜グラウト工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】595053777
【氏名又は名称】吉佳エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】大岡 太郎
(72)【発明者】
【氏名】張 満良
(72)【発明者】
【氏名】森岡 真弓
【審査官】▲高▼村 憲司
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-250548(JP,A)
【文献】特開2004-210815(JP,A)
【文献】特開2004-156032(JP,A)
【文献】特開平07-126365(JP,A)
【文献】特開2012-025833(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0171439(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103370190(CN,A)
【文献】特開2007-077218(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0141281(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00 - 63/48
C08F283/01
C08F290/00 -290/14
C08F299/00 -299/08
F16L 51/00 - 55/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
管路の内壁面を被覆するためのライニング材に含まれる硬化性樹脂組成物であって、
(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、
(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)重合開始剤、及び
(D)数平均繊維径が1~1000nmであり、そのアスペクト比が100~500であるセルロースナノファイバー
を含み、
前記(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~25質量部であり、そして、
前記(D)セルロースナノファイバーの含有量が、(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部である、ライニング材用硬化性樹脂組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のライニング材用硬化性樹脂組成物を含むライニング材。
【請求項3】
管路の内壁面を請求項に記載のライニング材で被覆し、その状態で前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を含む、管路の補修方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管路の内壁面を被覆するためのライニング材用硬化性樹脂組成物、ライニング材及びこれを用いた管路補修方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下水道管などの管路は、長年の使用により腐食やひび割れなどが生じるため、所定の時期に補修を行う必要がある。補修方法には様々な方法が存在するが、一般的な手法として、管路の内壁面を樹脂製のライニング材で被覆する手法が補修効果及び作業効率の点から用いられている。この手法では、硬化前のライニング材で構造物内面を被覆し、その状態で光照射または加熱によりライニング材に含まれる硬化性樹脂組成物を硬化させることにより、既設の管路の内側に樹脂製の更生管を形成する。
【0003】
このようなライニング材用の硬化性樹脂組成物として、従来では、不飽和ポリエステル樹脂やビニルエステル樹脂などの重合性樹脂、スチレン及び重合開始剤を含む硬化性樹脂組成物が使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2007-291179号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
スチレンは臭気や有害性の問題があることから、近年ではスチレンを含まないいわゆるノンスチレンのライニング材用硬化性樹脂組成物の需要が高まっており、実際に開発されている。しかしながら、スチレンを含まない場合、硬化後の架橋密度(強度)が低下するという問題がある。また、従来のスチレンを使用したライニング材用硬化性樹脂組成物は、強度に優れるものの、柔軟性が不十分であり、地震などに由来する揺れに対する性能が不十分であった。
【0006】
したがって、本発明の目的は、強度が高く、柔軟性に優れるノンスチレンのライニング剤用硬化性樹脂組成物を提供することにある。また、本発明の目的は、この硬化性樹脂組成物を含むライニング材、及びそのライニング材を使用する管路の補修方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は、管路の内壁面を被覆するためのライニング材に含まれる硬化性樹脂組成物であって、
(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、
(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、
(C)重合開始剤、及び
(D)数平均繊維径が1~1000nmであり、そのアスペクト比が100~500であるセルロースナノファイバー
を含み、
前記(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~25質量部であり、そして、
前記(D)セルロースナノファイバーの含有量が、(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部である、ライニング材用硬化性樹脂組成物により達成される。

【0009】
好ましくは、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの含有量が、(A)ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~25質量部である。
【0010】
好ましくは、(D)セルロースナノファイバーの含有量が、(A)ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂100質量部に対して、0.1~5質量部である。
【0011】
また、上記目的は、本発明のライニング材用硬化性樹脂組成物を含むライニング材により達成される。
【0012】
さらに、上記目的は、管路の内壁面を本発明のライニング材で被覆し、その状態で前記硬化性樹脂組成物を硬化させる工程を含む、管路の補修方法により達成される。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、架橋密度が高く、柔軟性に優れるノンスチレンのライニング剤用硬化性樹脂組成物を提供することができる。したがって、作業効率がよく、信頼性の高い管路の補修方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を詳細に説明する。本発明のライニング材用硬化性樹脂組成物は、上述したように、(A)不飽和ポリエステル樹脂またはビニルエステル樹脂、(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー、(C)重合開始剤、及び(D)数平均繊維径が1~1000nmであり、そのアスペクト比が100~500であるセルロースナノファイバーを含み、更に必要に応じて、他の添加剤を含む。以下、各成分を詳細に説明する。
【0015】
[(A)不飽和ポリエステル樹脂]
不飽和ポリエステルは、どのような不飽和ポリエステルを使用することができる。例えば、不飽和ポリエステルは、α、β-不飽和カルボン酸と多価アルコールとのエステル化反応、続いて脱グリコール反応によって得られる。α、β-不飽和カルボン酸以外にも飽和カルボン酸を含んでもよい。
【0016】
通常、オルソ系は1段反応、イソ系は2段反応、テレ系はエステル交換反応後にエステル化することができる。エステル化の際の反応温度は190~220℃の範囲が望ましい。高反応性エステルを得るためには、200℃以下が望ましい。窒素ガスを流入しながら、常法によりエステル化を進めることができる。
【0017】
得られる不飽和ポリエステルの酸価は特に限定されないが、例えば、5~30KOHmg/gであり、特に15~30KOHmg/gが好ましい。酸価が低いので、熱可塑性樹脂粉末による増粘が特に有効である。また得られる不飽和ポリエステルの水酸基価は特に限定されないが、例えば10~200KOHmg/gであり、さらに15~170KOHmg/g、特に15~30KOHmg/gが好ましい。
【0018】
α、β-不飽和カルボン酸の例としては、フマル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、クロロマレイン酸、又はこれらのジメチルエステル類等を挙げることができる。これらのα、β-不飽和カルボン酸は、それぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。また、飽和カルボン酸としては、例えばフタル酸、無水フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ヘット酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、アジピン酸、セバチン酸等を使用することができる。これらの飽和カルボン酸はそれぞれ単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
一方、多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、1、3-ブタンジオール、1、4-ブタンジオール、2-メチル-1、3-プロパンジオール、1、6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2、2、4-トリメチル-1、3-ペンタンジオール、1、4-シクロヘキサンジメタノール、水素化ビスフェノールA、水素化ビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのトリオール類、ペンタエリスリトール等のテトラオール類等を挙げることができる。これらの多価アルコール類はそれぞれ単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0020】
また、ジシクロペンタジエンを添加し、上記α、β-不飽和カルボン酸、飽和カルボン酸及び多価アルコールと共に反応して得られるジシクロペンタジエン系不飽和ポリエステルも使用することができる。
【0021】
また、回収ポリエチレンテレフタレート(以下、PETと略記)と多価アルコールを高温で反応させたグリコール分解物を主たる原料として、上記α、β-不飽和カルボン酸及び多価アルコールと共に反応して得られるPET系不飽和ポリエステルも本発明の不飽和ポリエステルとして使用することができる。
【0022】
(A)不飽和ポリエステルの数平均分子量(Mn)は、特に限定されないが、取扱い良好な粘度の観点から、例えば、500~4000の範囲であり、500~3000の範囲が好ましい。
【0023】
(A)不飽和ポリエステルの使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、30~70質量%、好ましくは35~65質量%である。
【0024】
[(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマー]
本発明で使用される(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーはどのようなものでもよいが、具体的には、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)クリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ジペンタエリスルトールペンタアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタメタクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサメタクリレート、ジペンタエリスリトールポリアクリレート、エトキシ化ポリグリセリンポリアクリレート、エトキシ化ソルビトールポリアクリレートなどが挙げられる。(B)成分は4~7官能が好ましく、更に5~7官能が好ましく、特に5~6官能が好ましい。
【0025】
(B)3官能以上の(メタ)アクリレートモノマーの含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、一般に0.1~25質量%、好ましくは5~15質量%である。
【0026】
[(C)重合開始剤]
重合開始剤は従来から使用されているものでよく、光重合開始剤や有機過酸化物が用いられる。光重合開始剤としては、公知の紫外線重合開始剤及び/又は硬化性複合材料が厚膜でも硬化できる可視光重合開始剤を使用できる。紫外線重合開始剤の例としては、ベンゾインエーテル系のイソプロピルベンゾインエーテル、イソブチルベンゾインエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンジルケタール系のヒドロシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジメチルケタール、ケトンベンゾフェノン系のベンジル、メチル-O-ベンゾインベンゾエート、2-クロロチオキサントン、メチルチオキサントン、ベンゾフェノン系のベンゾフェノン/第3級アミン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、α-ヒドロキシイソブチルフェノン、アシロホスフィンオキサイド、ビスアシルホスフィンオキサイド、カンファーキノン等を代表例として挙げることができる。本発明に用いられる光硬化性の管状ライニング材の場合は管内部に紫外線を挿入して、紫外線を照射して速硬化する被覆方法がとられる。紫外光波長領域の250nmから可視光波長領域の450nmの吸収をもつ光重合開始剤が好ましい。2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド、ベンジルメチルケタールが好ましく、単独使用又は併用してもよい。
【0027】
また,可視光重合開始剤としては、アシルホスフィンオキサイド化合物が有効である。その例としては,ビス(2,6-ジクロルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジクロルベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジクロルベンゾイル)-4-エトキシフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジクロルベンゾイル)-4-プロピルフェニルホスフィンオキサイド、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキサイド等を挙げることができる。単独使用又は併用してもよい。
【0028】
光重合開始剤の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、例えば、0.01~5質量%の範囲である。
【0029】
有機過酸化物としては、ケトンパーオキサイド類、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド等;ハイドロパーオキサイド類、例えばクメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルハイドロパーオキサイド等;パーオキシエステル類、例えばt-ブチルパーオキシオクトエート、t-ブチルパーオキシベンゾエート等;ジアルキルパーオキサイド類、例えばジクミルパーオキサイド等;ジアシルパーオキサイド類、例えばラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等を挙げることができる。
【0030】
有機過酸化物の使用量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、例えば、0.01~5質量%の範囲である。
【0031】
[(D)セルロースナノファイバー]
セルロースナノファイバーとは、木材などから得られる木材繊維をナノオーダーのサイズまで微細化したバイオマス素材をいう。セルロースナノファイバーの数平均繊維径は、例えば、1~1000nm、好ましくは5~500nm、特に10~100nmであり、アスペクト比、例えば、100~500である。セルロースナノファイバーは化学的に修飾されたものでもよいし、修飾されていないものでもよい。

【0032】
(D)セルロースナノファイバーの含有量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、一般に0.01~5質量%、好ましくは0.1~2質量%、更に好ましくは0.1~1質量%、特に好ましくは0.1~0.5質量%である。
【0033】
[他の成分]
本発明で用いられる樹脂組成物は、その組成物単独でも使用できるが、シックハウス問題及び化学物質排出把握管理移動登録法(PRTR法)等によるスチレン排出濃度規制を考慮して、以下の架橋用重合性ビニルモノマーを併用して蒸気圧の高い架橋用重合性モノマーを大幅に削減した樹脂組成物として使用することもできる。
【0034】
架橋用重合性ビニルモノマーの例としては、スチレン、ビニルトルエン及びα-メチルスチレン等の芳香族ビニルモノマー;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n-ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート等のメタクリレート系モノマーを挙げることができる。これら架橋用重合性モノマーは、単独使用でも2種以上併用でもよい。一般的にはスチレンが使用される。架橋性重合性モノマーの配合量は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、30質量%(架橋用重合性モノマー含有率23%以下)以下が好ましい。
【0035】
本発明の樹脂組成物の成分のみで乾燥性に優れたことが特徴であるが、より乾燥性を向上させる目的でパラフィン及び/又はワックス類を併用してもよい。
【0036】
本発明の硬化性樹脂組成物に用いられるパラフィン及び/又はワックス類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックスス等のパラフィン類;ステアリン酸、1、2-ヒドロキシステアリン酸等の高級脂肪酸等を挙げることができるが、パラフィンワックスが好ましい。このパラフィン及び/又はワックス類は、塗膜表面における硬化反応中の空気遮断作用、耐汚染性の向上を目的として添加される。添加率としては本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、0.1~5質量%、好ましくは0.2~2質量%である。
【0037】
本発明で用いられる不活性な微粒子状及び/又は粒状の無機骨材材料としては、砂、シリカ粉末、粉砕岩石、炭酸カルシウム、アルミナ粉、クレー、珪石粉、タルク、ガラス粉、シリカパウダー、水酸化アルミニウム、珪砂、珪酸アルミニウム、珪酸マグネシウム、セメント等を使用することができる。
【0038】
不活性な微粒子状及び/又は粒状の無機質骨材材料を使用する際、その使用量は、熱硬化性樹脂組成物を繊維質筒状体に含浸した管体ライニング材の場合は、本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、30質量%以下が好ましい。これは、多量に混合した場合、含浸性が低下する一方、熱伝導率が高くなり、加温熱源の温風、熱水による硬化時間が長くなるためである。また、無機質骨材材料を混合した光硬化性樹脂組成物を用いた管状ライニング材では、紫外線が透過しにくくなるため特定のフィラーを少量しか混合できない。この場合、配合量は本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、10質量%以下が好ましい。
【0039】
さらに、本発明の硬化性樹脂組成物には、鱗片状無機充填材としてガラスフレーク、マイカフレーク等を使用することができる。鱗片状無機充填材の平均粒子径は一般に10~4000μmの範囲であるが、樹脂組成物の繊維質筒状体への含浸性を維持と防食耐久性を維持するためには、平均粒子径100~3000μm、配合量は本発明の硬化性樹脂組成物の全重量を基準として、10質量%以下が好ましい。なお、鱗片状無機充填材としては、吸水重量安定性よりガラスフレークを用いることが好ましい。
【0040】
また、これらの熱硬化性樹脂組成物又は光硬化性樹脂組成物には、さらに顔料、酸化防止剤、流動制御剤、チキソトロピ-剤、可塑剤、収縮防止剤、消泡剤、着色剤、重合禁止剤等を必要に応じて添加することも可能である。
【0041】
[ライニング材]
硬化性樹脂組成物を含むライニング材はどのような構成でもよいが、一般的には内側保護フィルム/ガラス繊維などの線維性補強材等を含む硬化性樹脂組成物/外側保護フィルムの順でこれらを積層した構成を使用することができる。ライニング材の形状は、補修対象の管路の形状に応じて、シート状や管状などに適宜成形される。繊維性補強材と硬化性樹脂組成物との重量比は4:6~6:4の割合であることが好ましい。
【0042】
[管路補修方法]
本発明のライニング材を使用して管路を補修する方法は従来から使用されている方法で行うことができる。例えば、管路内に本発明の管状に成形したライニング材を導入した後、そのライニング材内側に空気を入れ、ライニング材の外面と管路内面を密着させた状態で、加熱または紫外線を含む光などの電磁波を照射することによりライニング材に含まれる硬化性樹脂組成物を硬化させる。その後、端部処理などの後処理を行うことで管路が補修される。補修対象の管路としては、下水道本管、取付管、マンホールなどが挙げられ、また、下水道だけでなく、老朽化したあらゆる管路に適用可能である。
【0043】
本発明によれば、上述したように、架橋密度が高く、柔軟性に優れるノンスチレンのライニング剤用硬化性樹脂組成物を提供することができる。したがって、作業効率がよく、信頼性の高い管路の補修方法を提供することができる。