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  • 特許-張力調整装置の取付部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】張力調整装置の取付部材
(51)【国際特許分類】
   B60M 1/26 20060101AFI20240131BHJP
   H02G 7/02 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B60M1/26 B
H02G7/02
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020022199
(22)【出願日】2020-02-13
(65)【公開番号】P2021126972
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-12-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】303059071
【氏名又は名称】独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構
(73)【特許権者】
【識別番号】000001890
【氏名又は名称】三和テッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】中村 琢
(72)【発明者】
【氏名】大石 真歩
(72)【発明者】
【氏名】早坂 高雅
(72)【発明者】
【氏名】奈良場 勇人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 大輔
【審査官】清水 康
(56)【参考文献】
【文献】実開昭49-149405(JP,U)
【文献】特開2013-238072(JP,A)
【文献】実公昭45-014332(JP,Y1)
【文献】特開昭59-184033(JP,A)
【文献】特開2007-245933(JP,A)
【文献】実開昭50-046179(JP,U)
【文献】実公昭49-002334(JP,Y1)
【文献】特開2007-253632(JP,A)
【文献】特開2009-166583(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2006-0069672(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60M 1/26
H02G 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電車線に接続される張力調整装置及び前記張力調整装置を支持する吊りロッドを支柱に取り付ける取付部材であって、
前記取付部材は、前記支柱に取り付けられた一対の支柱バンドのそれぞれに取り付けられると共に、前記支柱と略平行に延びて配置される棒状の第1の部材と、前記張力調整装置または前記吊りロッドに取り付けられる第2の部材とを有し、
前記第1の部材と前記第2の部材は水平方向と交差する方向に延びる回動軸によって互いに回動自在に組み付けられることを特徴とする取付部材。
【請求項2】
請求項1に記載の取付部材において、
前記吊りロッドは、延設方向の入力を減衰する減衰機構を備えることを特徴とする取付部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の取付部材において、
前記吊りロッドを取り付ける取付部材の回動軸は、前記張力調整装置を取り付ける取付部材の回動軸と同軸に配置されることを特徴とする取付部材。
【請求項4】
請求項1又は2に記載の取付部材において、
前記吊りロッドを取り付ける取付部材の回動軸は、前記張力調整装置を取り付ける取付部材の前記回動軸よりも前記張力調整装置の延設方向に沿って前記吊りロッドの前記張力調整装置との取付部側に配置されることを特徴とする取付部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両に電力を供給するために必要な電車線の張力を調整する張力調整装置を支柱に取り付ける取付部材に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電車線は張力が変化するとパンタグラフから離線したり、応力が増大するという問題があり、これを防止するためにパンタグラフとの接触状態を維持するために適切な張力で架設されている必要がある。また、電車線の張力の変動の要因として、外気温などの変化による電車線の伸縮による張力の変動が考えられている。
【0003】
このような電車線の張力を調整する手段として、電車線の引き留め箇所に張力調整装置を設けることが行われており、当該張力調整装置によって、電車線の張力が適切となるように維持されている。このような張力調整装置は種々の形態が知られているが、例えば特許文献1に記載されているように、滑車式やばね式といった形式の張力調整装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平6-144088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ばね式の張力調整装置は、滑車式に比べると保守性に優れる一方、支柱の上部に重量物が配置される構造であるため、地震時に電車線や支柱にかかる荷重の増大による設備破損が懸念される。これは張力調整装置が地震荷重で水平方向に動揺したことで、支柱に取り付ける支柱バンドに過大な荷重がかかることで設備破損に繋がることが考えられる。このような荷重が伝達する理由としては、従来の取付金具は、略三角形状の板状の部材を用いていることが考えられる。
【0006】
また、張力調整装置は、取付金具と当該取付金具よりも上方に取り付けられた吊りロッドによって固定されており、地震時には、当該吊りロッドに曲げ荷重がかかると吊りロッド自体が破断する可能性があるという問題があった。
【0007】
さらに、張力調整装置が動揺した場合に、架線などの減衰による振動集束しか期待できず、地震などで大きく張力調整装置が動揺した場合に、張力調整装置の動揺を積極的に制振することが出来ないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決するためになされたものであり、地震時に張力調整装置が動揺した場合に、支柱バンド及び吊りロッドに荷重が伝達しないようにして支柱バンド及び吊りロッドの破損を防ぐと共に、張力調整装置が動揺した場合の対策としてより重量増加を抑え、積極的に制振することができる取付部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る取付部材は、電車線に接続される張力調整装置及び前記張力調整装置を支持する吊りロッドを支柱に取り付ける取付部材であって、前記取付部材は、前記支柱に取り付けられた一対の支柱バンドのそれぞれに取り付けられると共に、前記支柱と略平行に延びて配置される棒状の第1の部材と、前記張力調整装置または前記吊りロッドに取り付けられる第2の部材とを有し、前記第1の部材と前記第2の部材は水平方向と交差する方向に延びる回動軸によって互いに回動自在に組み付けられることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る取付部材において前記吊りロッドは、延設方向の入力を減衰する減衰機構を備えると好適である。
【0011】
また、本発明に係る取付部材において、前記吊りロッドを取り付ける取付部材の回動軸は、前記張力調整装置を取り付ける取付部材の回動軸と同軸に配置されると好適である。
【0012】
また、本発明に係る取付部材において、前記吊りロッドを取り付ける取付部材の回動軸は、前記張力調整装置を取り付ける取付部材の前記回動軸よりも前記張力調整装置の延設方向に沿って前記吊りロッドの前記張力調整装置との取付部側に配置されると好適である。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、張力調整装置が取付部材と吊りロッドによって支柱に取り付けられ、取付部材と吊りロッドは、第1の部材と第2の部材とによって水平方向と交差する方向に延びる回動軸によって互いに回動自在に組み付けられるので、地震などによって張力調整装置が動揺した場合に、支柱バンドや吊りロッドに荷重が伝達しないようにして支柱バンド及び吊りロッドの破損を防ぐと共に、重量増加を抑えることができる。
【0014】
また、本発明によれば、吊りロッドに延設方向の入力を減衰する減衰機構を備えているので、張力調整装置が動揺した場合に、積極的な制振が可能となる。
【0015】
また、本発明によれば、張力調整装置及び吊りロッドの取付部材は、回動軸が互いに略同軸に配置されているので、張力調整装置と吊りロッドが動揺した場合に、張力調整装置が水平姿勢のまま維持され、吊りロッドに不要な外力が働くことがない。
【0016】
また、本発明によれば、吊りロッドの取付部材の回動軸が張力調整装置の取付部材の回動軸よりも張力調整装置との取付部側に配置されているので、張力調整装置と吊りロッドが動揺した場合に、張力調整装置の先端が上側を向く姿勢となり、この姿勢での張力によるモーメントは、吊りロッドを引っ張る方向にかかることから、吊りロッドの座屈を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の実施形態に係る取付部材の取り付け状態を示す図。
図2】本発明の実施形態に係る取付部材の拡大図。
図3】本発明の実施形態に係る取付部材の変形例を示す図。
図4】本発明の実施形態に係る取付部材の拡大図。
図5】本発明の他の実施形態に係る吊りロッドの構成を示す図。
図6】本発明の実施形態に係る取付部材の動作を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る取付部材の取り付け状態を示す図であり、図2は、本発明の実施形態に係る取付部材の拡大図であり、図3は、本発明の実施形態に係る取付部材の変形例を示す図であり、図4は、本発明の実施形態に係る取付部材の拡大図であり、図5は、本発明の他の実施形態に係る吊りロッドの構成を示す図であり、図6は、本発明の実施形態に係る取付部材の動作を示す図である。
【0020】
図1に示すように、張力調整装置1は、同軸状に配置された3つ筒部材である外側筒部材2、図示しない中央筒部材及び内側筒部材3とを備えている。
【0021】
外側筒部材2と中央筒部材との径方向の隙間には、圧縮された状態にある第1のコイルばねが収められている。第1のコイルばねの一端は、中央筒部材に形成された外側フランジ部に接触し、第1のコイルばねの他端は、外側筒部材2に形成された内側フランジ部に接触している。
【0022】
中央筒部材と内側筒部材3との径方向の隙間には、圧縮された状態にある第2のコイルばねが収納されている。第2のコイルばねの一端は、内側筒部材3に形成された外側フランジ部に接触し、第2のコイルばねの他端は、中央筒部材に形成された内側フランジ部に接触している。第1のコイルばねと第2のコイルばねが、筒部材と接触する部分には、両者間の相対的な滑りを阻害しないように潤滑剤であるグリスが塗布あるいは充填されている。潤滑剤は、潤滑機能を有するものであればグリスに限定されない。
【0023】
図1における内側筒部材3の端面には、電車線取付部材を介して電車線10が取り付けられる。電車線としては、鉄道用の架線が挙げられるが、他の用途の電力用架空線、信号伝送用の架空線、支持用の架空線等であってもよい。
【0024】
また、張力調整装置1は、支持部6によって支柱11に支持されている。すなわち、支持部6のフランジ部が支柱11に支柱バンド12によって取り付けられた取付部材20に固定されている。
【0025】
さらに、外側筒部材2の上部には、棒状の吊りロッド7の一端が取り付けられ、吊りロッド7の他端は、支柱11の上部に支柱バンド12によって取付部材20を介して固定されている。
【0026】
図2に示すように、本実施形態に係る取付部材20は、支柱に取り付けられる第1の部材21と、電車線10に接続される張力調整装置または吊りロッド7に取り付けられる第2の部材22とを備えている。第1の部材21と第2の部材22は、水平方向に交差する方向(図1における鉛直方向)に沿って延びる回動軸23または吊りロッド回動軸24によって互いに回動自在に組み付けられている。
【0027】
第1の部材21は、支柱11と略平行に延びる棒状の部材であり、その両端部は支柱バンド12によって挟持されて固定される。なお、回動軸23は、第1の部材21の中心軸と重畳している。
【0028】
支柱バンド12は、支柱11の外周と接する一対の外周部15,15と、当該外周部15の両端から水平方向に延びる取付部14を備えている。取付部14は、略中央に取付孔が形成されており、第1の部材21を取り付けた状態で、当該取付孔が回動軸23の延長線上に配置されている。
【0029】
第2の部材22は、第1の部材21の回動軸23まわりに回動自在に取り付けられており、第1の部材21を挿通する貫通孔27と、支持部6に固定される固定部25を備えている。
【0030】
このように取付部材20を構成すると、回動軸23を支柱11と略平行に配置すると共に、支柱11の近傍に回動軸23を配置することができるので、地震などで張力調整装置1が動揺した場合でも、支柱バンド12に生じる曲げモーメントを最小化して支柱バンド12の破損を防止することができる。
【0031】
また、本実施形態に係る取付部材は、吊りロッド7も張力調整装置1に取り付けた取付部材20と同様の取付部材20によって取り付けられている。このように吊りロッド7を取り付けた取付部材20の回動軸は、吊りロッド回動軸24として作用するので、張力調整装置1が動揺した場合に張力調整装置1の動揺に伴って吊りロッド7自体も動揺することができるので、吊りロッド7の破断を防止することができる。
【0032】
また、取付部材20の形態は、上述した形態に限らず、例えば、図3および4に示すように構成しても構わない。具体的には、図3に示すように、張力調整装置1は、支柱バンド12´に回動軸23周りに回動可能な回動部13´を形成し、取付部材20´の第2の部材としての本体部22´に第1の部材としてのコッタボルト26を挿通することによって取り付けられる。同様に、吊りロッド7も回動部13´を有する支柱バンド12´によって吊りロッド回動軸24を有するように取り付けられる。
【0033】
吊りロッド7は、図5に示すように、減衰機構30を備えていても構わない。減衰機構30は、吊りロッド7の延設方向に入力された外力を減衰することができれば、従来周知の種々の減衰機構を採用することが出来るが、例えば、油圧式又はバネ式の減衰機構を採用すると好適である。
【0034】
このとき、吊りロッド7を取り付ける取付部材の吊りロッド回動軸24は、張力調整装置1の取付部材の回動軸23と同軸に配置せず、張力調整装置1の支柱バンド12に対する回動に伴い、吊りロッド7の長さが変化するように配置することで、当該長さ変化によって減衰機構をより効果的に機能させると好適である。
【0035】
なお、吊りロッド7に減衰機構30を設けない場合、回動軸23と吊りロッド回動軸24は、略同軸又は、吊りロッド回動軸24が回動軸23よりも張力調整装置1側となるように配置されると好適である。具体的には、図6(a)に示すように、回動軸23と吊りロッド回動軸24とが互いに同軸に配置されると、張力調整装置1と吊りロッド7が動揺し、支柱バンド12に対して回動した場合に、張力調整装置1が水平姿勢を保つこととができる。
【0036】
また、吊りロッド回動軸24が張力調整装置1側に配置されている場合には、図6(b)に示すように、吊りロッド7の回転半径が張力調整装置1の回転半径よりも小さくなることから、張力調整装置1が上向きとなる姿勢となり、電車線10による張力が吊りロッド7に引っ張り荷重として作用する。
【0037】
これに対し、吊りロッド回動軸24が回動軸23よりも支柱11側に配置されると、吊りロッド7の回転半径が張力調整装置1の回転半径よりも大きくなり、張力調整装置1が下向きの姿勢となる。この場合、電車線10の張力が吊りロッド7に圧縮荷重として作用するため、当該圧縮荷重によって吊りロッド7を座屈させる可能性が生じる。
【0038】
このように、吊りロッド7の動揺による吊りロッド7へ負荷される荷重を考慮すると、回動軸23と吊りロッド回動軸24は、同軸に配置されることが好ましいが、同軸に配置することが出来ない場合には、吊りロッド回動軸24を張力調整装置1側に配置することが施工精度を考慮すると望ましい。
【0039】
なお、上述した実施形態において、吊りロッド7は支柱11に固定した場合について説明を行ったが、トンネル内などでは、トンネルの壁面に吊りロッド7を固定するように構成しても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0040】
1 張力調整装置
2 外側筒部材
3 内側筒部材
6 支持部
7 吊りロッド
10 電車線
11 支柱
12 支柱バンド
20 取付部材
21 第1の部材
22 第2の部材
23 回動軸
24 吊りロッド回動軸
30 減衰機構
図1
図2
図3
図4
図5
図6