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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】セグメント
(51)【国際特許分類】
   E21D 11/08 20060101AFI20240131BHJP
   E21D 11/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E21D11/08
E21D11/04 A
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020139129
(22)【出願日】2020-08-20
(65)【公開番号】P2022035064
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-06-06
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年8月23日 日本シールドセグメント技術協会RCセグメント部会にて公開 令和元年9月11日 株式会社クボタ東京本社にて公開 令和元年9月12日 電子メールアドレス「mizutani.koji@ad-hzmkg.co.jp」を通じて公開
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(73)【特許権者】
【識別番号】000198307
【氏名又は名称】株式会社IHI建材工業
(73)【特許権者】
【識別番号】000231110
【氏名又は名称】JFE建材株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000230010
【氏名又は名称】ジオスター株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592094586
【氏名又は名称】都築コンクリート工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000112749
【氏名又は名称】フジミ工研株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 勇希
(72)【発明者】
【氏名】土屋 雅義
(72)【発明者】
【氏名】小林 一博
(72)【発明者】
【氏名】長岡 省吾
(72)【発明者】
【氏名】尾上 聡
(72)【発明者】
【氏名】船木 暁啓
(72)【発明者】
【氏名】弥永 隆治
(72)【発明者】
【氏名】奥川 昌行
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-60488(JP,A)
【文献】特開2001-280082(JP,A)
【文献】特開2005-264672(JP,A)
【文献】特開2005-16235(JP,A)
【文献】特開2013-133617(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/00-19/06
E21D 23/00-23/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメント本体と、
曲面で構成されている第1側面を含み、前記セグメント本体の軸方向に沿って延びている筒状部を有する雌型連結具と、
前記第1側面に貼付されている緩衝シートとを備え、
前記雌型連結具は、前記第1側面が前記緩衝シートを介在させて前記セグメント本体に覆われるように前記セグメント本体中に埋め込まれており、
前記緩衝シートには、前記軸方向に沿って延びている第1スリットが形成されている、セグメント。
【請求項2】
前記第1スリットは、前記軸方向において複数の部分に分割されている、請求項1に記載のセグメント。
【請求項3】
前記雌型連結具は、基部と、前記筒状部と前記基部とを接続している首部とを有し、
前記筒状部は、前記軸方向において、第1端と、前記第1端の反対側の端である第2端とを含み、
前記緩衝シートは、前記軸方向に沿っている第1辺と、前記軸方向に沿っており、かつ前記第1辺よりも前記基部の近くにある第2辺と、前記軸方向に交差している第3辺と、前記軸方向に交差しており、かつ前記第3辺よりも前記第1端の近くにある第4辺とを有し、
前記緩衝シートには、前記第2辺から前記第1辺側に向かって延びている少なくとも1以上の縦スリットが形成されている、請求項1又は請求項2に記載のセグメント。
【請求項4】
前記首部は、前記第1側面に連なっている第2側面を含み、
前記緩衝シートは、前記第1側面及び前記第2側面に貼付されており、
前記首部は、前記第1端側にある第1部分と、前記第1部分よりも前記第2端側にある第2部分とにより構成されており、
前記軸方向に直交している断面視において前記第1部分の幅が前記第2部分の幅よりも大きくなっていることにより、前記第1部分と前記第2部分との境界にある前記第2側面には、段差が形成されており、
前記少なくとも1以上の縦スリットには、前記境界に沿って配置されている第2スリットが含まれる、請求項3に記載のセグメント。
【請求項5】
前記筒状部は、前記第2端側において、前記首部から突出している突出部を有し、
前記少なくとも1以上の縦スリットには、前記突出部にある前記第1側面に配置されている第3スリットが含まれる、請求項4に記載のセグメント。
【請求項6】
前記軸方向における前記第2スリットと前記第4辺との距離は、前記軸方向における前記第3スリットと前記第3辺との間の距離と等しい、請求項5に記載のセグメント。
【請求項7】
前記雌型連結具は、前記筒状部に接続されているアンカー部と、前記アンカー部上及び前記第1側面上に跨がって配置されているリブとを有し、
前記リブと前記第1側面との境界には、段差が形成されており、
前記緩衝シートには、前記境界に沿って配置されている第4スリットが形成されている、請求項1に記載のセグメント。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1(特開平9-60488号公報)には、複数のセグメントを有するセグメントリングが記載されている。以下においては、周方向において隣り合う2つのセグメントを、それぞれ、第1セグメント及び第2セグメントとする。
【0003】
第1セグメントは、第1セグメント本体と、第1セグメント本体に固定されている雄型連結具とを有している。雄型連結具は、第1アンカー部と、第1本体部とを有している。第1本体部は、第1セグメント本体の軸方向に沿って延びている柱状形状を有している。雄型連結具は、第1アンカー部が第1セグメント本体に埋設されることにより、第1セグメント本体に固定されている。
【0004】
第2セグメントは、第2セグメント本体と、第2セグメント本体に固定されている雌型連結具とを有している。雌型連結具は、第2アンカー部と、第2本体部とを有している。第2本体部には、第2セグメント本体の軸方向に沿って延びている嵌合穴が形成されている。雌型連結具は、第2アンカー部が第2セグメント本体に埋設されることにより、第2セグメント本体に固定されている。なお、第2本体部の側面の一部は、第2セグメント本体に覆われており、第2アンカー部の側面と第2セグメント本体との間には、緩衝シートが介在されている。
【0005】
第1セグメントと第2セグメントは、第1本体部を第2本体部に形成されている嵌合穴に挿入することにより、連結されている。これにより、第1セグメントと第2セグメントとが連結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-60488号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
雄型連結具と雌型連結具とを連結する際、雄型連結具と雌型連結具との間には、引張荷重が作用することがある。第2本体部の変形が第2セグメント本体により拘束されている場合、このような引張荷重は、第2セグメント本体に割れを生じさせる原因となる。緩衝シートが第2本体部の側面と第2セグメント本体との間に介在していると、雄型連結具と雌型連結具との間に引張荷重が作用した際に、第2本体部の変形が緩衝シートにより吸収されるため、第2セグメント本体における割れの発生が抑制される。
【0008】
しかしながら、第2本体部の側面は、曲面により構成されている。緩衝シートは、曲げられた状態で第2本体部の側面に貼付されるため、曲げられた状態から平坦な状態に戻ろうとする復元力により、雌型連結具を第2セグメント本体に埋設する際に、第2本体部の側面から剥がれてしまうおそれがある。また、雌型連結具を第2セグメントに埋設する際以外にも、雌型連結具の運搬等により緩衝シートの貼付後に時間が経過した際にも、緩衝シートが第2本体部の側面から剥がれてしまうおそれがある。緩衝シートが剥がれてしまうと、上記のような変形吸収機能は発揮されない。
【0009】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、緩衝シートの剥がれを抑制することができるセグメントを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様に係るセグメントは、セグメント本体と、第1側面を含み、セグメント本体の軸方向に沿って延びている筒状部を有する雌型継手部材と、第1側面に貼付されている緩衝シートとを備える。雌型継手部材は、第1側面が緩衝シートを介在させてセグメント本体に覆われるようにセグメント本体中に埋め込まれている。緩衝シートには、軸方向に沿って延びている第1スリットが形成されている。
【発明の効果】
【0011】
本発明の一態様に係るセグメントによると、緩衝シートの剥がれを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】セグメント100の正面図である。
図2図1の方向IIから見たセグメント100の側面図である。
図3図1の方向IIIから見たセグメント100の側面図である。
図4】雄型連結具20の斜視図である。
図5】雌型連結具30の正面図である。
図6】雌型連結具30の側面図である。
図7図6のVII-VIIにおける断面図である。
図8図6のVIII-VIIIにおける断面図である。
図9】セグメント本体10の軸方向に直交する断面視におけるセグメント100の断面図である。
図10】緩衝シート60及び緩衝シート70が貼付された状態の雌型連結具30の背面図である。
図11】緩衝シート60の平面図である。
図12】緩衝シート60が貼付された雌型連結具30の側面図である。
図13】変形例に係る雌型連結具30の側面図である。
図14】変形例に係る雌型連結具30の正面図である。
図15】変形例に係る雌型連結具30に用いられる緩衝シート60の平面図である。
図16】緩衝シート60が貼付された変形例に係る雌型連結具30の側面図である。
図17】セグメント100を用いてトンネルの壁を構築する際の模式的な説明図である。
図18図17の領域XVIIIにおける拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面においては、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さない。
【0014】
(実施形態に係るセグメントの構成)
以下に、実施形態に係るセグメント(以下「セグメント100」とする)の構成を説明する。
【0015】
<概略構成>
図1は、セグメント100の正面図である。図2は、図1の方向IIから見たセグメント100の側面図である。図3は、図1の方向IIIから見たセグメント100の側面図である。図1~3に示されるように、セグメント100は、セグメント本体10と、雄型連結具20と、雌型連結具30と、アンカー筋40及びアンカー筋50(図1~3において図示せず)と、緩衝シート60及び緩衝シート70(図1~3において図示せず)とを有している。雄型連結具20の数及び雌型連結具30の数は、それぞれ2である。雄型連結具20の数及び雌型連結具30の数は、それぞれ1であってもよく、それぞれ4であってもよい。
【0016】
<セグメント本体10>
セグメント本体10は、円弧状の形状を有している。但し、セグメント本体10の形状は、これに限られない。セグメント本体10は、例えば、矩形形状を有していてもよい。セグメント本体10は、主としてコンクリートにより形成されている。セグメント本体10は、第1端面10aと、第2端面10bと、第3端面10cと、第4端面10dとを有している。
【0017】
第1端面10a及び第2端面10bは、周方向におけるセグメント本体10の端面を構成している。第1端面10a及び第2端面10bは、周方向において隣り合う2つのセグメント100を連結する際の連結面となる(図13参照)。第3端面10c及び第4端面10dは、軸方向におけるセグメント本体10の端面を構成している。
【0018】
第1端面10aには、溝10aaが形成されている。溝10aaは、第3端面10cから第4端面10d側に向かって、セグメント本体10の軸方向に沿って延びている。第2端面10bには、溝10baが形成されている。溝10baは、第4端面10dから第3端面10c側に向かって、セグメント10本体の軸方向に沿って延びている。
【0019】
<雄型連結具20及び雌型連結具30>
雄型連結具20及び雌型連結具30は、例えばダクタイル鋳鉄(球状黒鉛鋳鉄)により形成されている。
【0020】
2つの雄型連結具20は、第1端面10a及び第2端面10bにそれぞれ配置されている。2つの雌型連結具30は、第1端面10a及び第2端面10bにそれぞれ配置されている。第1端面10aに配置されている雄型連結具20は、第1端面10aに配置されている雌型連結具30よりも、セグメント本体10の軸方向において、第4端面10dに近い位置にある。第2端面10bに配置されている雄型連結具20は、第2端面10bに配置されている雌型連結具30よりも、セグメント本体10の軸方向において、第3端面10cに近い位置にある。
【0021】
図4は、雄型連結具20の斜視図である。図4に示されるように、雄型連結具20は、基部21と、首部22と、先端部23とを有している。基部21には、アンカー筋40が挿入されている。アンカー筋40は、例えば鉄筋コンクリート用棒鋼により形成されている。首部22は、第1端面10a(第2端面10b)と交差している方向に沿って、基部21から突出している。先端部23は、首部22の先端(首部22の基部21とは反対側の端)に配置されている。先端部23は、セグメント本体10の軸方向に沿って延びている柱状形状を有している。セグメント本体10の軸方向に直交する断面における先端部23の断面積は、一方端側から他方端側に向かうにしたがって小さくなっていてもよい。雄型連結具20は、首部22において、くびれている。
【0022】
雄型連結具20は、アンカー筋40、基部21及び首部22の一部がセグメント本体10に埋設されることにより、セグメント本体10に固定されている。このことを別の観点から言えば、首部22の残部及び先端部23は、セグメント本体10の外部に位置している。
【0023】
図5は、雌型連結具30の正面図である。図6は、雌型連結具30の側面図である。図5及び6に示されるように、雌型連結具30は、筒状部31と、基部32と、首部33とを有している。
【0024】
筒状部31は、セグメント本体10の軸方向に沿って延びている。筒状部31は、セグメント本体10の軸方向において、第1端31aと、第2端31bとを有している。第2端31bは、第1端31aの反対側の端である。筒状部31は、第1端31aにおいて開口しており、第2端31bにおいて閉塞されている。筒状部31の外径は、第1端31aと第2端31bに向かうにしたがって小さくなっている。筒状部31の外径は、第1端31aと第2端31bとの間で一定であってもよく、第1端31aと第2端31bとの間で変化していてもよい。
【0025】
筒状部31は、内周面31cと、側面31d及び側面31eと、先端面31fとを有している。内周面31cは、曲面で構成されている。なお、「内周面31cが曲面で構成されている」には、内周面31cが曲面のみで構成されている場合と、曲面及び平面で構成されている場合の双方が含まれる。側面31d及び側面31eは、セグメント本体10の軸方向に交差する方向において、互いに対向している。側面31d及び側面31eは、第1端31aから第2端31bに向かって延びている。側面31d及び側面31eは、曲面により構成されている。なお、側面31d(側面31e)に部分的に平面が含まれている場合も、「側面31d(側面31e)が曲面により構成されている」に含まれる。より具体的には、側面31d及び側面31eは、セグメント本体10の軸方向に直交している断面視において(図7及び8を参照)、筒状部31の外部に向かって凸の曲面(側面31d(側面31e)に部分的に平面が含まれている場合は略凸の曲面)である。先端面31fは、雌型連結具30の先端に位置している。先端面31fは、例えば平面により構成されている。先端面31fは、側面31d及び側面31eに連なっている。先端面31fは、第1端31aから第2端31bに向かって延びている。
【0026】
筒状部31には、挿入穴31gが形成されている。挿入穴31gは、筒状部31の内部において、第1端31aから第2端31bに向かって延びている。挿入穴31gは、内周面31cにより画されている。セグメント本体10の軸方向に直交する断面における挿入穴31gの断面積は、第1端31a側から第2端31b側に向かって小さくなっていてもよい。
【0027】
筒状部31には、挿入スリット31hが形成されている。挿入スリット31hは、先端面31fから内周面31cに向かって筒状部31を貫通しており、挿入穴31gに連通している。挿入スリット31hは、第1端31aから第2端31bに向かって延びている。筒状部31は、第2端31b側において、首部33から突出している突出部31iを有していてもよい。筒状部31は、突出部31iにおいて首部33から突出しているため、突出部31iにおいて首部33に接続されていない。
【0028】
基部32には、アンカー筋50が挿入されている。アンカー筋50は、例えば鉄筋コンクリート用棒鋼により形成されている。首部33は、筒状部31と基部32とを接続している。雌型連結具30は、首部33において、くびれている。首部33は、第1部分33aと、第2部分33bとを有している。第1部分33aは、第1端31a側にあり、第2部分33bは、第1部分33aよりも第2端31b側にある。
【0029】
首部33は、側面33cと、側面33dとを有している。側面33cは側面31dに連なっており、側面33dは側面31eに連なっている。側面33c及び側面33dは、セグメント本体10の軸方向に沿って延びている。側面33c及び側面33dは、例えば曲面により構成されている。より具体的には、側面33c及び側面33dは、セグメント本体10の軸方向に直交している断面視において(図7及び8を参照)、首部33の内部に向かって凸の曲面である。
【0030】
図7は、図6のVII-VIIにおける断面図である。図8は、図6のVIII-VIIIにおける断面図である。図7及び8に示されるように、第1部分33aは、セグメント本体10の軸方向に直交している断面視において幅W1を有している。幅W1は、側面31dと側面31eとの間の距離の最小値である。第2部分33bは、セグメント本体10の軸方向に直交している断面視において幅W2を有している。幅W2は、側面33cと側面33dとの間の距離の最小値である。幅W1は、幅W2よりも大きい。これにより、第1部分33aと第2部分33bとの境界にある側面33c及び側面33dには、段差が形成されている。
【0031】
図9は、セグメント本体10の軸方向に直交する断面視におけるセグメント100の断面図である。図9に示されるように、側面31dには緩衝シート60が貼付されており、側面31eには緩衝シート70が貼付されている。筒状部31は、セグメント本体10に埋設されている。側面31dは、緩衝シート60を介在させてセグメント本体10に覆われている。側面31eは、緩衝シート70を介在させてセグメント本体10に覆われている。
【0032】
筒状部31は、セグメント本体10に完全に埋設されていなくてもよい。このことを別の観点から言えば、先端面31f側にある側面31d及び側面31eの一部は、セグメント本体10から露出していてもよい。先端面31f側にある側面31dの一部とセグメント本体10との間には、緩衝シート60が介在されていなくてもよい。先端面31f側にある側面31eの一部とセグメント本体10との間には、緩衝シート70が介在されていなくてもよい。先端面31fは、溝10aa(溝10ba)から露出している。
【0033】
基部32、首部33及びアンカー筋50も、セグメント本体10に埋設されている。これにより、雌型連結具30がセグメント本体10に固定されている。緩衝シート60は、側面31d及び側面33cに跨って貼付されていてもよく、緩衝シート70は、側面31e及び側面33dに跨って貼付されていてもよい。すなわち、側面33cとセグメント本体10との間には、緩衝シート60が介在されていてもよく、側面33dとセグメント本体10との間には、緩衝シート70が介在されていてもよい。すなわち、緩衝シート60及び緩衝シート70は、雄型連結具20と雌型連結具30との間に引張荷重が作用した際に雌型連結具30が変形する箇所に貼付されていればよい。
【0034】
なお、突出部31iにおいて、緩衝シート60(緩衝シート70)は、側面31d及び側面33c(側面31e及び側面33d)に跨って貼付されていない。すなわち、突出部31iにおいて、緩衝シート60(緩衝シート70)は、側面31d(側面31e)にのみ貼付されている。図10は、緩衝シート60及び緩衝シート70が貼付された状態の雌型連結具30の背面図である。図10に示されるように、突出部31iでは、緩衝シート60及び緩衝シート70がそれぞれ側面31d及び側面31eに直接貼付させて密着力を改善するために、緩衝シート60は、第2辺60b側において、緩衝シート70と重なり合っていないことが好ましい。但し、突出部31iでは、緩衝シート60は、第2辺60b側において、緩衝シート70に重なり合っていてもよい。
【0035】
上記のとおり、先端面31fは、溝10aa(溝10ba)から露出しているため、溝10aa(溝10ba)からは、挿入スリット31hが露出している。また、第3端面10c(第4端面10d)に直交する方向から見た正面視において、挿入穴31gは、溝10aa(溝10ba)に露出している。これにより、首部22及び先端部23が挿入スリット31h及び挿入穴31gにそれぞれに挿入された状態で、セグメント本体10の軸方向に沿って雄型連結具20を雌型連結具30に対してスライドさせることができる。
【0036】
緩衝シート60及び緩衝シート70は、例えば発泡ポリエチレンシートである。図11は、緩衝シート60の平面図である。図12は、緩衝シート60が貼付された雌型連結具30の側面図である。図12中において、緩衝シート60は、点線により示されている。図11及び12に示されるように、緩衝シート60は、矩形形状を有している。但し、緩衝シート60の形状は、これに限られない。緩衝シート60は、例えば、台形形状を有していてもよい。
【0037】
緩衝シート60は、第1辺60aと、第2辺60bと、第3辺60cと、第4辺60dとを有している。第1辺60a及び第2辺60bは、セグメント本体10の軸方向に沿っている。第2辺60bは、第1辺60aよりも基部32の近くにある。より具体的には、第2辺60bは、首部33に位置している。第3辺60c及び第4辺60dは、セグメント本体10の軸方向に交差している。第4辺60dは、第3辺60cよりも第1端31aの近くにある。第3辺60cは第2端31bの近傍にあり、第4辺60dは第1端31aの近傍にある。
【0038】
緩衝シート60には、第1スリット61が形成されている。第1スリット61は、セグメント本体10の軸方向に沿って延びている。第1スリット61は、厚さ方向に沿って緩衝シート60を貫通している。なお、第1スリット61は、緩衝シート60を厚さ方向に沿って貫通していなくてもよい。第1スリット61は、セグメント本体10の軸方向において、複数の部分(例えば、第1部分61a及び第2部分61b)に分割されていてもよい。第1部分61a及び第2部分61bは、セグメント本体10の軸方向において、互いに離間している。なお、この例においては、第1スリット61の分割数が2である場合を示したが、第1スリット61の分割数は、2に限られない。第1スリット61は、第1辺60aから第2辺60bに向かう方向に沿って間隔を空けて複数形成されていてもよい。なお、第1スリット61には、第2スリット62及び第3スリット63よりも第1辺60a側に配置されるもの(第1スリット61c)、第2スリット62と第3スリット63との間に配置されるもの(第1スリット61d)及び第2スリット62又は第3スリット63に接続されているもの(第1スリット61e)が含まれていてもよい。
【0039】
緩衝シート60には、第2辺60bから第1辺60a側に向かって延びている少なくとも1以上の縦スリットが形成されていてもよい。この縦スリットは、緩衝シート60を厚さ方向に貫通している。なお、この縦スリットは、緩衝シート60を厚さ方向に沿って貫通していなくてもよい。この縦スリットには、例えば、第2スリット62及び第3スリット63が含まれている。
【0040】
第2スリット62は、第1部分33aと第2部分33bとの境界に沿って配置されている。第3スリット63は、突出部31iにある側面31dに配置されている。第2スリット62は、第3スリット63よりも第4辺60dに近い位置にある。
【0041】
セグメント本体10の軸方向における第4辺60dと第2スリット62との間の距離を距離L1とし、セグメント本体10の軸方向における第3辺60cと第3スリット63との間の距離を距離L2とする。距離L1及び距離L2は、互いに等しいことが好ましい。
【0042】
なお、緩衝シート70は、例えば、緩衝シート60と同一の形状を有している。そのため、ここでは、緩衝シート70の形状に関する詳細な説明は、省略する。但し、緩衝シート70においては、第3辺60cが第4辺60dに相当する辺となり、第4辺60dに第3辺60cに相当する辺となる。
【0043】
<変形例>
図13は、変形例に係る雌型連結具30の側面図である。図14は、変形例に係る雌型連結具30の正面図である。図13及び14に示されるように、変形例に係る雌型連結具30は、基部32及び首部33を有していない。変形例に係る雌型連結具30は、アンカー部34を有している、アンカー部34は、筒状部31に接続されている。アンカー部34は、セグメント本体10の軸方向(第1端31aから第2端31bに向かう方向)に交差する方向に延びている。アンカー部34は、セグメント本体10に埋設される。図13及び14に示される例においては、アンカー部34の数は2であるが、アンカー部34の数はこれに限られるものではない。2つのアンカー部34は、筒状部31とは反対側において、互いに接続されていてもよい。
【0044】
変形例に係る雌型連結具30は、さらに、リブ35を有している。リブ35は、アンカー部34上及び側面31d上に跨がるように配置されている。リブ35と側面31dとの境界には、段差が形成されている。変形例に係る雌型連結具30は、さらに、リブ36を有していてもよい。リブ36は、アンカー部34上及び側面31e上に跨がるように配置されている。リブ36と側面31eとの境界にも、段差が形成されている。
【0045】
図15は、変形例に係る雌型連結具30に用いられる緩衝シート60の平面図である。図16は、緩衝シート60が貼付された変形例に係る雌型連結具30の側面図である。図15及び図16に示されるように、緩衝シート60の縦スリットには、第4スリット64が含まれている。第4スリット64は、側面31dとリブ35との境界に沿って形成されている。第4スリット64により、リブ35と側面31dとの間の段差に沿わせて緩衝シート60を貼付しやすくなる。
【0046】
<セグメント100の組み立て>
図17は、セグメント100を用いてトンネルの壁を構築する際の模式的な説明図である。図18は、図17の領域XVIIIにおける拡大図である。図15及び16に示されるように、シールド工法を用いてトンネルを掘る場合、切羽側から坑口側に向かってセグメントリング200を順次配置していくことにより、当該トンネルの壁が構築される。
【0047】
セグメントリング200は、複数のセグメント100を連結することにより、構築される。セグメントリング200は、新たなセグメント100(以下「セグメント100a」とする)を、切羽側から坑口側に向かって既設のセグメント100(以下「セグメント100b」とする)に対してスライドさせることにより、構築される。
【0048】
より具体的には、セグメント100aをセグメント100bに対してスライドさせることにより、セグメント100aの第1端面10aにある雄型連結具20の先端部23がセグメント100bの第2端面10bにある雌型連結具30の挿入穴31gに挿入されるとともに、セグメント100bの第2端面10bにある雄型連結具20の先端部23がセグメント100aの第1端面10aにある雌型連結具30の挿入穴31gに挿入されることになり、セグメント100aとセグメント100bとが連結される。この動作が繰り返されることにより、セグメントリング200が完成する。
【0049】
(実施形態に係るセグメントの効果)
以下に、セグメント100の効果を説明する。
【0050】
セグメント100aをセグメント100bに連結する際、雄型連結具20と雌型連結具30との間に、引張荷重が加わることがある。このような引張荷重は、筒状部31の変形がセグメント本体10により拘束されている場合、セグメント本体10に割れが生じる原因となるおそれがある。
【0051】
セグメント100においては、側面31d(側面31e)が緩衝シート60(緩衝シート70)を介在させてセグメント本体10に覆われているため、筒状部31は、セグメント本体10に拘束されずに変形することが可能である。そのため、セグメント100においては、上記の引張荷重が生じた際の筒状部31の変形が緩衝シート60(緩衝シート70)により吸収され、セグメント本体10に割れが生じにくい。
【0052】
雌型連結具30は、緩衝シート60(緩衝シート70)が側面31d(側面31e)に貼付された状態で、セグメント本体10に埋設される。側面31d(側面31e)は曲面により構成されているため、緩衝シート60(緩衝シート70)に第1スリット61を形成することなく側面31d(側面31e)に貼付された場合、緩衝シート60(緩衝シート70)が曲がった状態から平坦な状態に戻ろうとする復元力により、一旦貼付された緩衝シート60(緩衝シート70)が、側面31d(側面31e)から剥がれてしまうことがある。緩衝シート60(緩衝シート70)が剥がれてしまうと、上記の変形吸収機能は発揮されない。
【0053】
セグメント100においては、緩衝シート60(緩衝シート70)に第1スリット61が形成されているため、緩衝シート60(緩衝シート70)に曲がった状態から平坦な状態に戻ろうとする復元力が作用しにくくなる結果、緩衝シート60(緩衝シート70)が側面31d(側面31e)から剥がれにくくなる。
【0054】
セグメント100において、第1スリット61がセグメント本体10の軸方向に沿って長く形成されている場合、雌型連結具30をセグメント本体10に埋設する際に、セグメント本体10を構成しているコンクリートが、第1スリット61の間に入り込みやすくなる。その結果、側面31d(側面31e)がセグメント本体10と直接接触することになり、緩衝シート60(緩衝シート70)による変形吸収機能が低減されるおそれがある。
【0055】
他方で、第1スリット61がセグメント本体10の軸方向において互いに離間されている複数の部分に分割されている場合、第1スリット61を構成している各々の部分の長さが短くなるため、雌型連結具30をセグメント本体10に埋設する際に、セグメント本体10を構成しているコンクリートが、第1スリット61の間に入り込みにくくなる。
【0056】
セグメント100においては、筒状部31の外径が第1端31aと第2端31bとの間において変化していることがある。この場合、緩衝シート60(緩衝シート70)を側面31d(側面31e)に沿わせて貼付しにくい。しかしながら、緩衝シート60(緩衝シート70)に縦スリットが形成されていれば、筒状部31の外径が第1端31aと第2端31bとの間で変化していても、緩衝シート60(緩衝シート70)を側面31d(側面31e)に沿わせて貼付しやすい。
【0057】
セグメント100においては、第1部分33aと第2部分33bとの境界にある側面33c(側面33d)に段差が形成されているため、緩衝シート60(緩衝シート70)を当該段差に沿わせて貼付しにくい。しかしながら、緩衝シート60(緩衝シート70)に第2スリット62が形成されている場合、第1部分33aと第2部分33bとの境界にある側面33c(側面33d)に段差があっても、緩衝シート60(緩衝シート70)を当該段差に沿わせて貼付しやすい。
【0058】
筒状部31は、突出部31i以外において首部33に接続されている一方、突出部31iにおいて首部33に接続されていないため、緩衝シート60(緩衝シート70)を突出部31iにある側面31d(側面31e)に沿わせて貼付しにくい。しかしながら、緩衝シート60(緩衝シート70)に第3スリット63が形成されている場合、緩衝シート60(緩衝シート70)を突出部31iにある側面31d(側面31e)に沿わせて貼付しやすくなる。
【0059】
距離L1及び距離L2が互いに等しい場合、側面31dに貼付する緩衝シート(緩衝シート60)及び側面31eに貼付する緩衝シート(緩衝シート70)として、同一のものを用いることが可能となる。
【0060】
以上のように本発明の実施形態について説明を行ったが、上述の実施形態を様々に変形することも可能である。また、本発明の範囲は、上述の実施形態に限定されるものではない。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更を含むことが意図される。
【符号の説明】
【0061】
10 セグメント本体、10a 第1端面、10aa 溝、10b 第2端面、10ba 溝、10c 第3端面、10d 第4端面、20 雄型連結具、21 基部、22 首部、23 先端部、30 雌型連結具、31 筒状部、31a 第1端、31b 第2端、31c 内周面、31d,31e 側面、31f 先端面、31g 挿入穴、31h 挿入スリット、31i 突出部、32 基部、33 首部、33a 第1部分、33b 第2部分、33c,33d 側面、34 アンカー部、35,36 リブ、40,50 アンカー筋、60 緩衝シート、60a 第1辺、60b 第2辺、60c 第3辺、60d 第4辺、61,61c,61d,61e 第1スリット、61a 第1部分、61b 第2部分、62 第2スリット、63 第3スリット、64 第4スリット、70 緩衝シート、100 セグメント、100a,100b セグメント、200 セグメントリング、L1,L2 距離、W1,W2 幅。
図1
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