(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】カンナビジオールの新しい固体形態およびその使用
(51)【国際特許分類】
C07C 39/23 20060101AFI20240131BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/08 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20240131BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20240131BHJP
A61P 39/02 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240131BHJP
A61P 9/10 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/20 20060101ALI20240131BHJP
A61P 1/12 20060101ALI20240131BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20240131BHJP
A61P 37/06 20060101ALI20240131BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20240131BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20240131BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20240131BHJP
A61P 21/04 20060101ALI20240131BHJP
A61P 25/18 20060101ALI20240131BHJP
A61P 27/06 20060101ALI20240131BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240131BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20240131BHJP
A61P 7/06 20060101ALI20240131BHJP
A61K 31/05 20060101ALI20240131BHJP
C07D 241/12 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C07C39/23 CSP
A61P25/00
A61P9/00
A61P35/00
A61P35/04
A61P25/08
A61P25/16
A61P17/06
A61P39/02
A61P25/28
A61P9/10
A61P25/20
A61P1/12
A61P1/16
A61P37/06
A61P1/04
A61P37/02
A61P19/02
A61P21/04
A61P25/18
A61P27/06
A61P27/02
A61P29/00 101
A61P7/06
A61P29/00
A61K31/05
C07D241/12
(21)【出願番号】P 2020550056
(86)(22)【出願日】2018-12-10
(86)【国際出願番号】 US2018064773
(87)【国際公開番号】W WO2019118360
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-12-10
(32)【優先日】2017-12-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520204113
【氏名又は名称】アーテロ バイオサイエンシズ,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001656
【氏名又は名称】弁理士法人谷川国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エマニュエル,アール.マーチン
(72)【発明者】
【氏名】シャトック-ゴードン,タニセ
(72)【発明者】
【氏名】ウィリフォード, タビサ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ,パトリシア
【審査官】安藤 倫世
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/030158(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/040419(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0349518(US,A1)
【文献】特表2006-518713(JP,A)
【文献】国際公開第2007/114475(WO,A1)
【文献】特表2011-510933(JP,A)
【文献】特表2007-507554(JP,A)
【文献】国際公開第2004/026802(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/126501(WO,A1)
【文献】国際公開第2012/116349(WO,A1)
【文献】国際公開第2011/049191(WO,A1)
【文献】Crystal Growth & Design,2009年,9(2),1106-1123
【文献】Crystal Growth & Design,2016年,16(9),5418-5428
【文献】日薬理誌,2017年,150,36-40
【文献】Netsu Sokutei,2015年,42(1),17-24
【文献】向田睦,博士論文(高崎健康福祉大学)共結晶子交換反応を用いたin Silico 共結晶形成予測モデルの評価,2016年
【文献】He, Hongyan et al.,Zwitterionic Cocrystals of Flavonoids and Proline: Solid-State Characterization, Pharmaceutical Prop,Crystal Growth & Design,2016年,(2016), 16(4), 2348-2356
【文献】Veverka, Miroslav et al.,Cocrystals of quercetin: synthesis, characterization, and screening of biological activity,Monatshefte fuer Chemie,2015年,(2015), 146(1), 99-109
【文献】He, Hongyan et al.,Modulating the Dissolution and Mechanical Properties of Resveratrol by Cocrystallization,Crystal Growth & Design,2017年,(2017 ), 17(7), 3989-3996
【文献】Tilborg, Anaelle et al.,On the influence of using a zwitterionic coformer for cocrystallization: structural focus on naproxe,CrystEngComm,2013年,(2013), 15(17), 3341-3350
【文献】NING SHAN,IMPACT OF PHARMACEUTICAL COCRYSTALS: THE EFFECTS ON DRUG PHARMACOKINETICS,EXPERT OPINION ON DRUG METABOLISM & TOXICOLOGY,英国,2014年08月04日,VOL:10, NR:9,PAGE(S):1255 - 1271,http://dx.doi.org/10.1517/17425255.2014.942281
【文献】Qiao, Ning et al.,Pharmaceutical cocrystals: An overview,International Journal of Pharmaceutics,2011年,(2011), 419(1-2), 1-11
【文献】平山令明,有機化合物結晶作製ハンドブック,2008年,p.17-23,37-40,45-51,57-65
【文献】Pharm Tech Japan,2009年,Vol. 25, No.12,p.155-66
【文献】薬剤学,2010年,vol. 70, no. 3,pp.193-197
【文献】Crystal Growth & Design,2009年,Vol.9, No.6,p.2950-67
【文献】高田則幸,創薬段階における原薬Formスクリーニングと選択,PHARM STAGE,Vol.6, No.10,2007年01月15日,p.20-25
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
A61K
C07D
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
カンナビジオールと、コフォーマーテトラメチルピラジンと、を含み、9.1、14.6、18.3、および19.6度2θ±0.2
にピークを含むX線回折パターンを有する、固体形態。
【請求項2】
カンナビジオール対テトラメチルピラジンのモル比が、1:1である、請求項1に記載の固体形態。
【請求項3】
結晶性である、請求項1に記載の固体形態。
【請求項4】
共結晶である、請求項1に記載の固体形態。
【請求項5】
89.9℃のピーク開始または92.8℃でピーク最大値を有するDSCサーモグラムを有する、請求項1に記載の固体形態。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項に記載の固体形態を含む、医薬組成物。
【請求項7】
薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む、請求項
6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
請求項
6又は
7記載の医薬組成物から成る、カンナビジオールによる治療に適した疾患または状態の治療剤。
【請求項9】
前記疾患または状態が、中枢神経系障害、心血管障害、神経血管障害、癌、多発性硬化症、多発性硬化症に関連する筋けいれん、パーキンソン病、精神病、早期発症てんかんによって引き起こされる発作を含むてんかん(けいれんおよび発作)、精神障害、炎症、疼痛、線維筋痛症、肝炎、表皮水疱症、神経変性疾患における痙性、悪液質および拒食症、緑内障における高眼圧症、運動障害、神経筋障害、プラダーウィリ症候群、トゥレット症候群のけいれん、疑似球の影響、薬物依存の軽減、喫煙、中毒の治療、糖尿病、グラフト対宿主病(GVHD)、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス(SLE)、皮膚エリテマトーデス、乾癬、自己免疫疾患、後天性免疫不全症候群、サルコイドーシス、関節リウマチ、間質性肺疾患(ILD)、強皮症、皮膚炎、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、墓眼症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびALSに関連する症状、原発性胆汁性肝硬変、回腸炎、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、過敏性腸症候群、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、脂肪肝、不眠症(発症および維持)および他の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、にきび、大麻離脱症状、OCD、外傷後ストレス症候群、吐き気、癌治療に関連する吐き気、嘔吐(vomiting)、嘔吐(emesis)、乗り物酔い、ならびに低酸素虚血(急性脳卒中)から選択される1又は2種以上である、請求項
8記載の治療剤。
【請求項10】
前記疾患または状態が、中枢神経系障害、心血管障害、神経血管障害、神経筋障害、がん、自己免疫疾患、外傷後ストレス症候群、吐き気及び低酸素虚血からから選択される1又は2種以上である、請求項
8又は
9記載の治療剤。
【請求項11】
前記疾患または状態が、固形腫瘍、癌転移、多発性硬化症、多発性硬化症に関連する筋けいれん、パーキンソン病、パーキンソン病、精神病、てんかん、治療抵抗性てんかん、結節性硬化症複合体におけるてんかん、ドラベート症候群、急性および慢性期の熱性感染症関連てんかん症候群(ファイアーズ)、スタージウェーバー症候群、てんかん重積、悪性移動性部分発作、脳腫瘍関連てんかん、レノックス・ガストー症候群、精神障害、認知機能障害、統合失調症における認知障害、不安、うつ病、双極性障害、線維筋痛症、肝炎、表皮水疱症、神経変性疾患における痙性、悪液質、拒食症、緑内障における高眼圧症、運動障害、神経筋障害、プラダーウィリ症候群、トゥレット症候群のけいれん、中毒、喫煙中毒、オピオイド中毒、糖尿病、グラフ対宿主病(GVHD)、アテローム性動脈硬化、炎症性腸疾患、クローン病、潰瘍性大腸炎、全身性エリテマトーデス、皮膚エリテマトーデス、乾癬、自己免疫性ブドウ膜炎、自己免疫性肝炎、過敏性肺疾患、過敏性肺炎、遅延型過敏症、シェーグレン病、後天性免疫不全症候群、サルコイドーシス、関節リウマチ、間質性肺疾患、強皮症、皮膚炎、虹彩炎、結膜炎、角結膜炎、特発性両側進行性感音難聴、再生不良性貧血、赤芽球癆、特発性血小板減少症、多発性軟骨炎、墓眼症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびALSに関連する症状、原発性胆汁性肝硬変、回腸炎、慢性炎症性腸疾患、セリアック病、過敏性腸症候群、アルツハイマー病、プリオン関連疾患、脂肪肝、不眠症(発症および維持)、パーキンソン病の睡眠障害、心的外傷後ストレス障害、にきび、大麻離脱症状、OCD、吐き気、癌治療に関連する吐き気、嘔吐、乗り物酔い、及び低酸素虚血(急性脳卒中)から選択される1又は2種以上である、請求項
8又は
9記載の治療剤。
【請求項12】
前記がんが、未分化上衣腫、DIPG、多形性膠芽腫、膀胱、乳房、頭頸部、前立腺、神経内分泌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺、結腸、直腸、膵臓及び卵巣のがんである、請求項
8又は
9記載の治療剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2017年12月11日に出願された米国特許出願第62/597,307号への優先権の利益を主張する。
【0002】
本開示は、医療用大麻の分野におけるものである。特に、本開示は、固体形態のカンナビジオール、そのような固体形態を作製する方法、そのような固体形態の医薬組成物、および様々な医療のためのそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0003】
カンナビジオール(CBD)は、薬学的に有効な、大麻から識別された化合物である。それは、植物カンナビノイドであり、大麻抽出物の最大40%を占める。(Borgelt LM,et al.,(2013),Pharmacotherapy,33(2):195-209、Aizpurua-Olaizola,Oier,et al.,(2016),Journal of Natural Products,79(2):324-331、Campos AC,et al.,(2012),Philos.Trans.R.Soc.Lond.B Biol.Sci.,367(1607):3364-78)。CBDは、例えば、麻などの他の植物からも発見され、単離される。CBDは、酵母の生成を含む他の生成方法によっても生成および単離され得る(WO2016/010827を参照)。CBDは、現在、多発性硬化症に関連した神経障害性症状の治療のための(-)-トランス-Δ9-テトラヒドロカンナビノール(Δ9-THC)と組み合わせて臨床的に使用されている(Morales et al.,(2017)Front.Pharmacol.8:1-18)。CBDは、低酸素性虚血イベント、依存症の神経保護の治療としての使用、ならびに抗不安薬、抗精神病薬、鎮痛薬、抗炎症薬、抗喘息薬、抗てんかん薬、および抗癌剤として使用するための単剤としても調査されている(Fasinu et al.,(2016)Pharmacotherapy 36(7):781-796;Fanelli et al.,(2017)J.Pain Res.10:1217-1224;Morales et al.,(2017)Front.Pharmacol.8:1-18、およびDevinsky et al.,(2017)N Engl J Med 376(21):2011-20)。
【0004】
共結晶は、非イオン性相互作用によって結晶格子内で一緒に結合された2つ以上の不揮発性化合物の結晶性分子複合体である。医薬共結晶は、治療用化合物、例えば、活性医薬成分(API)と1つ以上の不揮発性化合物(複数可)(本明細書ではコフォーマーと呼ばれる)との共結晶である。医薬共結晶中のコフォーマーは、典型的には、例えば、食品添加物、保存剤、薬学的賦形剤、または他のAPIなどの非毒性の薬学的に許容される分子である。APIの共結晶は、APIおよびコフォーマー(複数可)の異なる化学組成物であり、一般に、APIおよびコフォーマー(複数可)の結晶構造特性と個別に比較すると、異なる結晶学的特性および分光特性を持つ。結晶形態の結晶学的特性および分光学的特性は、典型的には、他の技法の中でも、X線粉末回折(XRPD)および単結晶X線結晶学によって測定される。共結晶はまた、異なる熱挙動を示すことがよくある。熱挙動は、毛細管融点、熱重量分析(TGA)、および示差走査熱量測定(DSC)などの技術によって実験室で測定される。結晶形態として、共結晶は、より好ましい固体状態、物理的、化学的、薬学的、および/または薬理学的特性を持つ可能性があるか、またはAPIの知られている形態もしくは製剤よりも処理が容易な場合がある。例えば、共結晶は、APIとは異なる分解特性および/または溶解特性を有する可能性があり、したがって、治療的送達においてより効果的であり得る。共結晶はまた、貯蔵安定性、圧縮性および密度(製剤および製品の製造に有用)、透過性、ならびに親水性または親油性などの他の医薬パラメーターに影響を与える可能性がある。したがって、所与のAPIの共結晶を含む新しい医薬組成物は、その自然の状態または既存の薬物製剤と比較して魅力的または優れた特性を有する可能性がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本開示は、カンナビジオールと、コフォーマーL-プロリンと、を含む固体形態に関する。
【0006】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン固体形態は、約1:1のカンナビジオール対L-プロリンのモル比を有する。
【0007】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリンの固体形態は、結晶性である。
【0008】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリンの固体形態は、共結晶である。
【0009】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン共結晶は、無水である。
【0010】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン共結晶は、カンナビジオールL-プロリン形態Aである。
【0011】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン形態Aは、5.3、5.8、9.4、10.7、11.1、11.4、11.7、12.3、15.4、15.8、16.4、17.3、18.7、19.2、19.4、20.0、20.8、21.3、23.1、および24.5度2θ±0.2に1つ以上のピークを含むX線回折パターン(XRPD)を有する。
【0012】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン形態Aは、
図2と実質的に同様のX線粉末回折パターンを有する。
【0013】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン形態Aは、約146.4℃のピーク開始または約147.8℃でピーク最大値を有するDSCサーモグラムを有する。
【0014】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリン形態Aは、
図3のDSCサーモグラムと実質的に同様のDSCサーモグラムを有する。
【0015】
本開示の別の実施形態は、カンナビジオールL-プロリンの前述の固体形態を含む医薬組成物を含む。
【0016】
別の実施形態では、カンナビジオールL-プロリンの固体形態の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0017】
本開示の別の態様は、カンナビジオールと、コフォーマーD-プロリンと、を含む固体形態を含む。
【0018】
この態様の実施形態では、カンナビジオールとコフォーマーD-プロリンとの固体形態は、約1:1であるカンナビジオール対D-プロリンのモル比を有する。
【0019】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリンの固体形態は、結晶性である。
【0020】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリンの固体形態は、共結晶である。
【0021】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリンの共結晶形態は、カンナビジオールD-プロリン共結晶形態Aである。
【0022】
別の実施形態では、共結晶は、無水である。
【0023】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリン形態Aは、5.2、5.8、9.4、10.6、11.2、11.5、12.4、12.7、15.3、15.7、16.4、17.4、18.7、19.2、19.4、20.2、20.7、21.2、23.3、24.0、24.6、25.6、および26.2度2θ±0.2に1つ以上のピークを含むX線回折パターンを有する。
【0024】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリン形態Aは、
図7と実質的に同様のX線粉末回折パターンを有する。
【0025】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリン形態Aは、約154.3℃のピーク開始または約155.5℃でピーク最大値を有するDSCサーモグラムを有する。
【0026】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリン形態Aは、
図8のDSCサーモグラムと実質的に同様のDSCサーモグラムを有する。
【0027】
本開示の別の実施形態は、カンナビジオールD-プロリンの前述の固体形態を含む医薬組成物を含む。
【0028】
別の実施形態では、カンナビジオールD-プロリンの固体形態の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0029】
本開示の別の態様は、カンナビジオールと、コフォーマーテトラメチルピラジンと、を含む固体形態である。
【0030】
この態様の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン固体形態は、結晶性である。
【0031】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン固体形態は、約1:1であるカンナビジオール対テトラメチルピラジンのモル比を有する。
【0032】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン固体形態は、共結晶である。
【0033】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶は、約9.1、14.6、18.3、および19.6度2θ±0.2で1つ以上のピークを含むX線回折パターンを有する。
【0034】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶は、
図12と実質的に同様のX線粉末回折パターンを有する。
【0035】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶は、約89.9℃のピーク開始または約92.8℃でピーク最大値を有するDSCサーモグラムを有する。
【0036】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶は、
図13のDSCサーモグラムと実質的に同様のDSCサーモグラムを有する。
【0037】
本開示の別の実施形態は、カンナビジオールテトラメチルピラジンの前述の固体形態を含む医薬組成物を含む。
【0038】
別の実施形態では、カンナビジオールテトラメチルピラジンの固体形態の医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0039】
本明細書に開示される別の態様は、カンナビジオールと、コフォーマー4,4’ジピリジルと、を含む固体形態である。
【0040】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル固体形態は、結晶性である。
【0041】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル固体形態は、共結晶である。
【0042】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル固体形態は、約1:1であるカンナビジオール対4,4’ジピリジルのモル比を有する。
【0043】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶は、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶物質Aである。
【0044】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶物質Aは、約4.4、7.7、8.9、9.2、12.0、15.0、15.5、16.3、17.9、18.4、18.6、18.9、19.6、20.3、20.6、21.6、22.6、および25.6度2θ±0.2に1つ以上のピークを含むX線回折パターンを有する。
【0045】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶物質Aは、
図16と実質的に同様のX線粉末回折パターンを有する。
【0046】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶物質Aは、約139.6℃のピーク開始または約140.7℃でピーク最大値を有するDSCサーモグラムを有する。
【0047】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル共結晶物質Aは、
図17のDSCサーモグラムと実質的に同様のDSCサーモグラムを有する。
【0048】
本明細書に開示される別の態様は、固体形態カンナビジオール4,4’ジピリジル物質Bである。
【0049】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル物質Bは、約7.7、9.2、10.6、11.1、11.9、15.2、16.2、18.3、19.6、20.4、20.8、22.1、22.3、24.1度2θ±0.2度2θ±0.2にピークを含むX線回折パターンを有する。
【0050】
いくつかの実施形態では、カンナビジオール4,4’ジピリジル物質Bは、
図21と実質的に同様のX線粉末回折パターンを有する。
【0051】
本開示の別の実施形態は、カンナビジオール4,4’ジピリジルの前述の固体形態を含む医薬組成物を含む。
【0052】
別の実施形態では、固体形態のカンナビジオール4,4’ジピリジルの医薬組成物は、薬学的に許容される賦形剤または担体をさらに含む。
【0053】
本開示の別の態様は、治療を必要とする対象にカンナビジオールの前述の固体形態のうちの1つ以上を投与することを含む、カンナビジオールによる治療に適した疾患または状態を治療する方法を含む。
【0054】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、中枢神経系障害;心血管障害;神経血管障害、癌(単独または他の癌剤とともに)、例えば、これらに限定されないが、固形腫瘍、例えば、未分化上衣腫、びまん性内在性膠腫(DIPG)、多形性膠芽腫、膀胱、乳房、頭頸部、前立腺、神経内分泌、非ホジキンリンパ腫、非小細胞肺、結腸直腸膵臓、卵巣;他の癌治療の副作用の軽減、癌転移;自己免疫;多発性硬化症;多発性硬化症関連の筋けいれん;パーキンソン病;精神病;これらに限定されないが、治療抵抗性てんかん、結節性硬化症複合体におけるてんかん、ドラベート症候群、急性および慢性期の熱性感染症関連てんかん症候群(ファイアーズ)、スタージウェーバー症候群、てんかん重積、悪性移動性部分発作、脳腫瘍関連てんかん、レノックス・ガストー症候群などの早期発症てんかんによって引き起こされる発作を含むてんかん(けいれんおよび発作);精神障害;これに限定されないが、統合失調症における認知障害を含む認知機能障害;不安;うつ病;双極性障害;炎症;疼痛;線維筋痛症;肝炎;表皮水疱症;神経変性疾患における痙性;悪液質および拒食症;緑内障における高眼圧症;これに限定されないが、ジストニー障害などの運動障害;神経筋障害;プラダーウィリ症候群;トゥレット症候群のけいれん;疑似球の影響;これらに限定されないが、喫煙、およびオピオイド中毒などの薬物依存の軽減;糖尿病;グラフ対宿主病(GVHD);アテローム性動脈硬化;炎症性腸疾患;これらに限定されないが、甲状腺疾患、クローン病などの自己免疫疾患;潰瘍性大腸炎;全身性エリテマトーデス(SLE);皮膚エリテマトーデス;乾癬;自己免疫性ブドウ膜炎;自己免疫性肝炎;関節リウマチ、過敏性肺疾患;過敏性肺炎;遅延型過敏症;シェーグレン病;後天性免疫不全症候群、サルコイドーシス;間質性肺疾患(ILD);強皮症;皮膚炎;抗酸化剤としての使用;抗精神病薬としての使用;虹彩炎;結膜炎;角結膜炎;特発性両側進行性感音難聴;再生不良性貧血;赤芽球癆;特発性血小板減少症;多発性軟骨炎;墓眼症;筋萎縮性側索硬化症(ALS)およびALSに関連する症状;原発性胆汁性肝硬変;回腸炎;慢性炎症性腸疾患;セリアック病;過敏性腸症候群;アルツハイマー病;プリオン関連疾患;脂肪肝;睡眠障害、例えば、これらに限定されないが、不眠症、パーキンソン病における睡眠維持睡眠障害、心的外傷後ストレス障害(PTSD)に関連する睡眠障害;にきび;大麻離脱症状;OCD;PTSD;吐き気、癌治療に関連する吐き気;嘔吐(vomiting);嘔吐(emesis);乗り物酔い;および低酸素虚血(急性脳卒中)から選択される。
【0055】
開示のいくつかの実施形態では、特許請求の範囲は、態様または実施形態を「含む」ことができる。他の態様または実施形態では、特許請求の範囲は、態様または実施形態「からなる」ことができる。さらに他の実施形態では、特許請求の範囲は、態様または実施形態から「本質的になる」ことができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【
図1】カンナビジオールのXRPDパターンを示す。
【
図2】カンナビジオールL-プロリン形態AのXRPDパターンを示す。
【
図3】カンナビジオールL-プロリン形態Aの示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【
図4】カンナビジオールL-プロリン形態Aの熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図5】カンナビジオールL-プロリン形態Aの赤外スペクトルを示す。
【
図6】カンナビジオールL-プロリン形態Aのプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【
図7】カンナビジオールD-プロリン共結晶カンナビジオールL-プロリン形態AのXRPDパターンを示す。
【
図8】カンナビジオールD-プロリン共結晶形態Aの示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【
図9】カンナビジオールD-プロリン共結晶形態Aの熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図10】カンナビジオールD-プロリン共結晶形態Aの赤外スペクトルを示す。
【
図11】カンナビジオールD-プロリン共結晶形態Aのプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【
図12】カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶のXRPDパターンを示す。
【
図13】カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶の示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【
図14】カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶の赤外スペクトルを示す。
【
図15】カンナビジオールテトラメチルピラジン共結晶のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【
図16】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶物質AのXRPDパターンを示す。
【
図17】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶の示差走査熱量測定サーモグラムを示す。
【
図18】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶の熱重量測定サーモグラムを示す。
【
図19】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶の赤外スペクトルを示す。
【
図20】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶のプロトン核磁気共鳴スペクトルを示す。
【
図21】カンナビジオール4,4’-ジピリジル共結晶物質BのXRPDパターンを示す。
【発明を実施するための形態】
【0057】
カンナビジオール(CBD)は、式Iの構造を有する化合物である。
【化1】
【0058】
カンナビジオールの共結晶形態であって、コフォーマーが、炭素原子および窒素原子からなる5~6員環を含み、環が飽和または不飽和であり得、環が環あたり1または2個の窒素原子を含有する、共結晶形態が本明細書に開示される。環は、飽和または不飽和であり得る。
【0059】
約1:1のカンナビジオール:L-プロリン(形態A)のモル比でのカンナビジオール:L-プロリンの共結晶が本明細書に開示される。L-プロリンの構造を式IIに示す。
【化2】
【0060】
別の実施形態では、カンナビジオール:L-プロリン共結晶は、2:1の比が使用される場合、CBDとの混合物として生成される。
【0061】
別の実施形態では、カンナビジオール:L-プロリン形態A共結晶は、無水である。
【0062】
本明細書で使用されるカンナビジオール出発物質に対応するXRPDパターンを
図1に示す。
【0063】
カンナビジオールL-プロリン(形態A)に対応するXRPDパターンを
図2に示す。判断できるように、
図2のXPRDパターンは、
図1に示されるカンナビジオール出発物質のXRPDパターンとは異なる。
【0064】
図2のパターンと実質的に同じXRPDパターンを使用して、カンナビジオールL-プロリン形態Aを特徴付けることができる。
【0065】
図2で識別されたピークのより小さいサブセットを使用して、カンナビジオール:L-プロリン形態Aを特徴付けることができる。例えば、約
o2θで識別されるピークのうちのいずれか1つ以上を使用して、カンナビジオール:L-プロリン形態Aを特徴付けることができる。例えば、約5.3、5.8、9.4、10.7、11.1、11.4、11.7、12.3、15.4、15.8、16.4、17.3、18.7、19.2、19.4、20.0、20.8、21.3、23.1、または24.5度2θ±0.2でのピークのうちのいずれか1つ以上。
【0066】
本明細書で使用される場合、「約」という用語は、X線粉末回折パターンのピーク位置に関して使用される場合、例えば、使用される器具類に応じて、使用される機器の較正、多形を生成するために使用されるプロセス、結晶化した物質の年代などに依存するピークの固有の変動性を指す。この場合、器具の測定値の変動は、約±0.2度2θであった。本開示の恩恵を受ける当業者は、この文脈における「約」の使用を理解するであろう。他の定義されたパラメーター、例えば含水量、DSC、TGA、IR、NMR、固有溶解速度、温度、および時間を参照すると、「約」という用語は、例えば、パラメーターの測定またはパラメーターの達成における固有の変動性を示す。本開示の恩恵を受ける当業者は、約という言葉の使用によって暗示されるようなパラメーターの変動性を理解するであろう。
【0067】
本明細書で使用される場合、例えば、XRPDパターン、IRスペクトル、ラマンスペクトル、DSCサーモグラム、TGAサーモグラム、NMR、SSNMRなどに類似した特徴を示す形態を参照すると、「実質的に同じ」とは、物質が、例えば、使用される器具、時刻、湿度、季節、気圧、室温などを含む実験変動により、当業者によって予測される変動を伴う方法によって識別される限り、共結晶は、その方法によって識別可能であり、類似から実質的に同じまでの範囲であり得る。
【0068】
カンナビジオールL-プロリン形態Aは、その熱特性によって特徴付けることができる。例えば、
図3は、カンナビジオールL-プロリン形態AのDSCサーモグラムであり、約146.4℃で開始し、約147.8℃でピーク最大値を有する単一の急激な吸熱を示す。融融までのTGAサーモグラムでは、有意な重量損失は観察されない(
図4)。カンナビジオールL-プロリン形態Aは、DSC単独で、または
図2のそのXRPD回折パターンもしくは本明細書に記載されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて特徴付けることができる。
【0069】
カンナビジオールL-プロリン形態Aは、
図5のFT-IRスペクトルによって特徴付けることができる。赤外線分光法のみを検討する場合、FT-IRスペクトル全体を使用して、形態Aまたはそのサブセットを特徴付けることができる。例えば、約3450もしくは2900、または他でのピークのうちのいずれか1つを単独または組み合わせて使用して、カンナビジオールL-プロリン形態Aを特徴付けることができる。
【0070】
約1:1のカンナビジオール:D-プロリンのモル比でのカンナビジオール:D-プロリンの共結晶が本明細書に開示される。D-プロリンの構造を式IIIに示す。
【化3】
【0071】
コフォーマーD-プロリンに対応するXRPDパターンを
図7に示す。判断できるように、
図7のカンナビジオール:D-プロリンのXPRDパターンは、
図1のカンナビジオール出発物質およびカンナビジオールL-プロリン形態A(
図2)とは異なる。
【0072】
図7に示されるようなカンナビジオールD-プロリンのXRPDパターンと実質的に同じパターンを使用して、カンナビジオールD-プロリン形態Aの共結晶を特徴付けることができる。
図7で識別されたピークのより小さいサブセットを使用して、カンナビジオールD-プロリン形態Aの共結晶を特徴付けることができる。例えば、約
o2θで識別されたピークのうちのいずれか1つ以上を使用して、カンナビジオールD-プロリン形態Aを特徴付けることができる。例えば、約5.2、5.8、9.4、10.6、11.2、11.5、12.4、12.7、15.3、15.7、16.4、17.4、18.7、19.2、19.4、20.2、20.7、21.2、23.3、24.0、24.6、25.6、および26.2度2θ±0.2でのピークのうちのいずれか1つ以上。
【0073】
カンナビジオールD-プロリン形態Aは、その熱特性によって特徴付けることができる。例えば、
図8は、カンナビジオールD-プロリン形態AのDSCサーモグラムであり、約154.3℃で開始し、約155.5℃でピーク最大値を有する単一の急激な吸熱を示す。融解までのTGAサーモグラムでは、有意な重量損失は観察されない(
図9)。カンナビジオールD-プロリン形態Aは、DSC単独で、または
図7のXRPD回折パターンもしくは本明細書に記載されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて特徴付けることができる。
【0074】
カンナビジオールD-プロリン形態Aは、
図10のFT-IRスペクトルによって特徴付けることができる。赤外線分光法のみを検討する場合、FT-IRスペクトル全体を使用して、カンナビジオールD-プロリン形態Aまたはそのサブセットを特徴付けることができる。
【0075】
約1:1のカンナビジオールテトラメチルピラジンのモル比でのカンナビジオールテトラメチルピラジンの共結晶が本明細書に開示される。テトラメチルピラジンの構造を式IVに示す。
【化4】
【0076】
コフォーマーテトラメチルピラジンに対応するXRPDパターンを
図12に示す。判断できるように、
図12のカンナビジオールテトラメチルピラジンのXPRDパターンは、
図1に示されるようなカンナビジオールとは異なる。
【0077】
図12に示されるカンナビジオールテトラメチルピラジンのパターンと実質的に同じパターンを使用して、カンナビジオールテトラメチルピラジンの共結晶を特徴付けることができる。カンナビジオールテトラメチルピラジンについて
図12で識別されたピークのより小さいサブセットを使用して、カンナビジオールテトラメチルピラジンの共結晶を特徴付けることができる。例えば、約9.1、14.6、18.3、および19.6度2θ±0.2でのピークのうちのいずれか1つ以上。
【0078】
カンナビジオール:テトラメチルピラジンは、その熱特性によって特徴付けることができる。例えば、
図13は、カンナビジオール:テトラメチルピラジンのDSCサーモグラムであり、約89.9℃で開始し、約92.8℃でピーク最大値を有する単一の急激な吸熱を示す。カンナビジオール:テトラメチルピラジンは、DSC単独、または
図12のそのXRPD回折パターンもしくは本明細書に記載されるピークのうちの1つ以上と組み合わせて特徴付けることができる。
【0079】
約1:1のカンナビジオール:4,4’-ジピリジルのモル比でのカンナビジオール:4,4’-ジピリジル物質Aの共結晶が本明細書に開示される。4,4’-ビピリジルの構造を式Vに示す。
【化5】
【0080】
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aに対応するXRPDパターンを
図16に示す。判断できるように、
図16のカンナビジオール4,4’-ジピリジル物質AのXPRDパターンは、
図1のカンナビジオール出発物質のXRPDパターンとは異なる。
【0081】
図16に示されるカンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aのパターンと実質的に同じパターンを使用して、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aの共結晶を特徴付けることができる。カンナビジオール:4,4’-ジピリジルについて
図16で識別されたピークのより小さいサブセットを使用して、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aの共結晶を特徴付けることができる。例えば、約4.4、7.7、8.9、9.2、12.0、15.0、15.5、16.3、17.9、18.4、18.6、18.9、19.6、20.3、20.6、21.6、22.6、および25.6度2θ±0.2でのピークのうちのいずれか1つ以上。
【0082】
さらに、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質が室温で95%RHに1週間曝露された後、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Bと指定された独特の結晶性物質が生じた。
【0083】
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Bに対応するXRPDパターンを
図21に示す。判断できるように、
図21のカンナビジオール4,4’-ジピリジル物質BのXPRDパターンは、カンナビジオール出発物質
図1のXRPDパターンとは異なる。
【0084】
図21に示されるカンナビジオール:4,4’-ジピリジルのパターンと実質的に同じパターンを使用して、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Bの共結晶を特徴付けることができる。
【0085】
図21でカンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Bについて識別されたピークのより小さいサブセットを使用して、カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Bの共結晶を特徴付けることができる。例えば、約°2θで識別されたピークのうちのいずれか1つ以上を使用して、カンナビジオール:4,4’-ジピリジルの共結晶を特徴付けることができる。例えば、約7.7、9.2、10.6、11.1、11.9、15.2、16.2、18.3、19.57、20.4、20.8、22.1、22.3、24.1度2θ±0.2でのピークのうちのいずれか1つ以上。
【0086】
以下の病状を治療するために、カンナビジオールの新しい共結晶形態を使用するための方法がまた、本明細書に開示される。これらに限定されないが、けいれん/発作、例えばてんかんに関連するけいれん/発作;精神障害(これらに限定されないが、統合失調症、不安障害、双極性障害);認知機能の改善、例えば統合失調症の対象における;抗炎症剤として(例えば、これに限定されないが、炎症性腸疾患);疼痛(例えば、これらに限定されないが、慢性疼痛、神経障害性疼痛、侵害受容性疼痛);肝炎;多発性硬化症などの神経変性疾患における痙性;多発性硬化症関連の筋けいれん、むずむず脚症候群、悪液質および拒食症;緑内障における高眼圧症;トゥレット症候群のけいれん;大麻使用障害、コカイン依存症、およびアヘン中毒などの薬物依存症の軽減;糖尿病;グラフ対宿主病(GVHD);アテローム性動脈硬化;神経保護剤として、これらに限定されないが、固形腫瘍、血液悪性腫瘍、および転移した癌などの癌;貧血、クローン病;潰瘍性大腸炎;全身性エリテマトーデス(SLE);皮膚エリテマトーデス;乾癬;自己免疫性ブドウ膜炎;自己免疫性肝炎;過敏性肺疾患;過敏性肺炎;遅延型過敏症;シェーグレン病;自己免疫甲状腺疾患;後天性免疫不全症候群、サルコイドーシス;関節リウマチ;間質性肺疾患(ILD)(例えば、特発性肺線維症、または関節リウマチまたは他の炎症性疾患に関連するILD);強皮症;皮膚炎(アトピー性皮膚炎および湿疹性皮膚炎を含む);虹彩炎、結膜炎;角結膜炎;特発性両側進行性感音難聴;再生不良性貧血;赤芽球癆;特発性血小板減少症;多発性軟骨炎;墓眼症;筋萎縮性側索硬化症(ALS);原発性胆汁性肝硬変;回腸炎;慢性炎症性腸疾患、セリアック病;過敏性腸症候群、アルツハイマー病;プリオン関連疾患;神経変性疾患、運動障害、脂肪肝;不眠症および他の睡眠障害;外傷後ストレス症候群;低酸素虚血(急性脳卒中を含む);または、治療を必要とする対象に有効量のカンナビジオール共結晶を投与することを含む、または本質的にそれからなる、またはそれからなるカンナビジオール治療で治療可能であると報告または調査中の他の状態など。
【0087】
本明細書で使用される場合、「対象」という用語は、治療、観察、および/または実験の対象となる、または対象となっている、動物、典型的にはヒト(すなわち、任意の年齢群の男性もしくは女性、例えば、小児患者(例えば、幼児、子供、青年)もしくは成人患者(例えば、若い成人、中年成人、もしくは高齢者)、または霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)などの他の哺乳動物;げっ歯類(マウス、ラット)、牛、豚、馬、羊、山羊、猫、犬などの他の哺乳動物、および/または鳥を指す。
【0088】
「治療すること」もしくは「治療」もしくは「治療する」または「緩和すること」もしくは「緩和する」または「改善する」などの用語は、1)診断された病的状態または障害の症状を治癒、減速、減少させる、および/またはその進行を止める療法的手段と、2)標的化された病的状態または障害の発症を予防および/または遅延させる予防的または予防手段と、の両方を指す。したがって、治療を必要とするものには、すでに障害のあるもの、障害を起こしやすいもの、および障害が予防されるべきものが含まれる。
【0089】
本明細書で使用される「治療有効量」という用語は、治療されている疾患または状態の症状のうちの1つ以上をある程度緩和するであろう、投与されている組成物または医薬組成物の実施形態のその量、および/または治療されている対象が発症している、または発症するリスクがある状態または疾患の症状のうちの1つ以上をある程度防止するであろうその量を指す。
【0090】
患者へのカンナビジオール共結晶の投与量は、患者の病態または特定の状態、ならびに他の臨床的要因(例えば、ヒトまたは動物の体重および状態、ならびにカンナビジオールの投与経路)に依存し得る。カンナビジオール共結晶は、1日に数回から1回の治療プロトコルで投与され得る。任意に、カンナビジオール共結晶は、開示されたプロセスに従って、急性的に、1回の介入中に、または慢性的に、例えば、複数回投与または任意に、徐放もしくは持続放出システムの単回投与を用いて送達され得る。例えば、カンナビジオール共結晶は、持続性薬物送達ビヒクルなどの薬物送達ビヒクルを介して患者に投与され得る。本開示は、ヒトおよび獣医学的使用の両方のための適用を有することが理解されるべきである。本発明の方法は、単回投与、ならびに同時または長期間にわたってのいずれかを前提に複数投与を意図する。さらに、カンナビジオール共結晶は、他の形態の療法と組み合わせて投与され得る。
【0091】
一実施形態では、カンナビジオール共結晶は、当業者に知られている製剤方法を使用して医薬組成物として提供され得るこれらの製剤は、一般に、経口的、例えば、口腔内、舌下、経皮的、吸入を介して、または直腸内などの標準的な経路で投与され得る。他の実施形態では、医薬組成物は、例えば、注射または注入などによる非経口的な、対象への直接注射によって投与される。さらに、医薬組成物は、経口投与により(例えば、丸剤、カプセル形態で、食品の一部として、例えばキャンディーなど)投与され得る。
【0092】
本明細書で使用される場合、「医薬組成物」は、生理学的に好適な担体および賦形剤などの他の化学成分を伴う、本明細書に記載される有効成分のうちの1つ以上の調製物を指す。医薬組成物の目的は、生物への化合物の投与を容易にすることである。
【0093】
本発明の組成物は、カンナビジオール共結晶に加えて、追加の薬剤を含むことができる。そのような薬剤は、カンナビジオール共結晶によって提供される状態の治療に加えて、患者に直接的な利益を提供する活性薬剤であり得、または組成物中の他の薬剤の送達、適合性、または反応性を改善する支持剤であってもよい。
【0094】
例えば注射によるカンナビジオール結晶の非経口送達のための組成物は、薬学的に許容される無菌の水性または非水性溶液、分散液、懸濁液、または乳濁液、ならびに使用直前に無菌の注射可能な溶液または分散液に再構成するための無菌粉末を含むことができる。好適な水性および非水性の担体、希釈剤、溶媒、またはビヒクルの例としては、水、エタノール、ポリオール(例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなど)、カルボキシメチルセルロース、およびそれらの好適な混合物、植物油(例えば、オリーブ油)およびオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが挙げられる。さらに、組成物は、カンナビジオール共結晶の有効性を高めることができる湿潤剤または乳化剤、pH緩衝剤などの補助物質を少量含有することができる。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティング材の使用により、分散液の場合には必要な粒子サイズの維持により、および界面活性剤の使用により維持され得る。これらの組成物はまた、抗酸化剤、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤を含んでもよい。
【0095】
微生物汚染の防止は、パラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸などの様々な抗菌剤および抗真菌剤を含めることによって確保されてもよい。糖、塩化ナトリウムなどの等張剤を含むことも望ましい場合がある。
【0096】
一実施形態では、組成物は、その中の成分の薬学的に許容される塩、例えば、無機酸または有機酸から誘導されてもよいものを含むことができる。薬学的に許容される塩は、当技術分野で周知である。例えば、S.M.Bergeらは、薬学的に許容される塩をJ.Pharmaceutical Sciences(1977)66:1 et seq.に詳細に記載しており、これは、参照により本明細書に組み込まれる。薬学的に許容される塩には、例えば、塩酸もしくはリン酸などの無機酸、または酢酸、酒石酸、マンデル酸などの有機酸で形成される酸付加塩が含まれる。遊離カルボキシル基で形成された塩は、例えば、水酸化ナトリウム、カリウム、アンモニウム、カルシウム、または第二鉄などの無機塩基、およびイソプロピルアミン、トリメチルアミン、2-エチルアミノエタノール、ヒスチジン、プロカインなどの有機塩基からも誘導され得る。塩は、カンナビジオールの最終的な単離および精製の間にその場で、または遊離塩基官能基と好適な有機酸との反応を介して別個に調製されてもよい。代表的な酸付加塩には、これらに限定されないが、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、重硫酸塩、酪酸塩、カンファー酸塩、カンファースルホン酸塩、二グルコン酸、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプトン酸、ヘキサン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシメタンスルホナート(イセチオナート)、乳酸塩、マレイン酸塩、メタンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭酸塩、p-トルエンスルホネート、およびウンデカノエートが含まれる。また、塩基性窒素含有基は、メチル、エチル、プロピル、およびブチルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物、ジメチル、ジエチル、ジブチル、およびジアミルの硫酸塩などのジアルキル硫酸塩;デシル、ラウリル、ミリスチル、およびステアリルの塩化物、臭化物、およびヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;ベンジルおよびフェネチル臭化物などのアリールアルキルハロゲン化物などの薬剤で四級化され得る。これにより、水もしくは油溶性または分散性の生成物が得られる。薬学的に許容される酸付加塩を形成するために用いられてもよい酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、およびリン酸などの無機酸、ならびにシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、およびクエン酸などの有機酸が含まれる。
【0097】
一実施形態では、本明細書に記載される方法は、当技術分野で一般に知られているように、徐放放出または持続放出送達システムの使用を含むことができる。そのようなシステムは、例えば、対象へのカンナビジオール共結晶の長期送達が望まれる状況において望ましいことがある。この特定の実施形態によれば、持続放出マトリックスは、酵素的もしくは酸/塩基加水分解によって、または溶解によって分解可能である物質、通常はポリマーでできているマトリックスを含むことができる。対象内に入ると、そのようなマトリックスは、酵素および体液によって作用され得る。持続放出マトリックスは、生体適合性材料、例えばリポソーム、ポリラクチド(ポリ乳酸)、ポリグリコリド(グリコール酸のポリマー)、ポリラクチドコグリコリド(乳酸とグリコール酸とのコポリマー)ポリ無水物、ポリ(オルト)エステル、ポリタンパク質、ヒアルロン酸、コラーゲン、コンドロイチン硫酸、カルボン酸、脂肪酸、リン脂質、多糖類、核酸、ポリアミノ酸、アミノ酸、例えばフェニルアラニン、チロシン、イソロイシン、ポリヌクレオチド、ポリビニルプロピレン、ポリビニルピロリドン、およびシリコーンから選択され得る。可能な生分解性ポリマーおよびそれらの使用は、例えば、Brem et al.(1991,J.Neurosurg.74:441-6)に詳述され、これは、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0098】
有効量のカンナビジオール共結晶が静脈内または皮下注射によって投与される場合、組成物は、一般に、発熱物質を含まない、非経口的に許容される水溶液の形態であり得る。適切なpH、等張性、安定性などを有するそのような非経口的に許容される溶液の調製は、当業者の範囲内である。静脈内、皮膚、または皮下注射用の医薬組成物は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル注射液、ブドウ糖注射液、ブドウ糖および塩化ナトリウム注射液、乳酸加リンゲル注射液、または当技術分野で知られている他のビヒクルなどの等張性ビヒクルを含有することができる。治療組成物はまた、安定剤、防腐剤、抗酸化剤、または当業者に知られている他の添加剤を含有してもよい。
【実施例】
【0099】
A.実験方法:
1.おおよその溶解度
秤量された試料を、室温で溶媒または溶媒混合物のアリコートで処理した。混合物は、溶解を促進するために添加の間に超音波処理した。試験物質の完全な溶解は、目視検査によって判定した。溶解度は、完全な溶解を提供するために使用される全溶媒に基づいて推定した。実際の溶解度は、大きすぎる溶媒のアリコートを使用したため、または溶解速度が遅いため、計算された値よりも大きくなる場合がある。溶解度は、溶解が実験中に発生しなかった場合、「未満」として表される。アリコートを1回だけ添加した結果完全に溶解した場合、溶解度は、「より大きい」と表される。
【0100】
B.機器技術:
1.インデックス化
インデックス化は、回折パターンのピーク位置を仮定して、結晶学的単位格子のサイズおよび形状を判定するプロセスである。この用語は、Millerインデックスラベルを個々のピークに割り当てることからその名を得た。XRPDインデックス化は、いくつかの目的を果たす。パターン内のすべてのピークが単一の単位格子によってインデックス化される場合、これは、試料が単一の結晶相を含有することの強力な証拠である。インデックス化溶液を仮定して、単位格子体積を、直接計算することができ、それらの溶媒和状態を判定するのに有用であり得る。インデックス化は、結晶形態の堅牢な説明でもあり、特定の熱力学的状態ポイントでのその相のすべての利用可能なピーク位置の簡潔な要約を提供する。XRPDパターンのインデックス化は、TRIADS(商標)ソフトウェアを使用して行った(米国特許第8,576,985号を参照)。割り当てられた消滅記号、単位格子パラメーター、および導出された数量と一致する空間群は、それぞれの図に表形式で表示され、各形態のためのインデックス化溶液を提供する。
【0101】
2.偏光顕微鏡(PLM):
試料は、0.8x~10xの対物レンズで交差した偏光子を備えた1次赤補償器を備えた実体顕微鏡下で観察した。
【0102】
3.プロトン核磁気共鳴分光法(1H NMR):
溶液NMRスペクトルは、399.82MHzの1Hラーモア周波数でAgilent DD2-400分光計を使用して取得した。試料を重水素化クロロホルムに溶解させた。スペクトルは、6.6μsの1Hパルス幅、スキャン間の2.5秒の遅延、64102データポイントを有する6410.3のスペクトル幅、および40の共同追加スキャンで取得した。信号対雑音比を改善するために、262144ポイントおよび0.2Hzの指数線広がり係数を有するVarian VNMR6.1Cソフトウェアを使用して、自由誘導減衰を処理した。
【0103】
4.X線粉末回折(XRPD):
a.PANalytical X’PERT Pro MPD回折計-透過
XRPDパターンは、Optixの長い細焦点光源を使用して生成されたCu放射線の入射ビームを使用して、PANalytical X’Pert PRO MPD回折計で収集した。楕円傾斜多層ミラーを使用して、Cu Kα X線を、試験片を通して検出器に集束させた。分析の前に、シリコン試験片(NIST SRM640e)を分析して、Si 111ピークの観測された位置がNIST認定位置と一致していることを確認した。試料の試験片を3μmの厚さのフィルムで挟み、透過形状で分析した。ビームストップ、短い散乱防止エクステンション、散乱防止ナイフエッジを使用して、空気によって生成される背景を最小限に抑えた。入射ビームと回折ビームのためのソーラースリットを使用して、軸発散からの広がりを最小限に抑えた。回折パターンは、試験片から240mmのところに位置する走査型位置検出器(X’Celerator)およびData Collectorソフトウェアv.2.2bを使用して収集した。各パターンのデータ収集パラメーターは、ミラーの前の発散スリット(DS)を含めて、本報告書のデータセクションの画像の上に表示される。
【0104】
5.示差走査熱量測定(DSC):
DSC分析は、TA Instruments 2920示差走査熱量計を使用して行った。温度較正は、NISTトレース可能インジウム金属を使用して行った。試料をアルミDSC皿に入れ、蓋をし、重量を正確に記録した。試料皿として構成された秤量されたアルミニウム皿を、セルの基準側に置いた。各サーモグラムのデータ取得パラメーターおよび皿構成は、本報告書のデータセクションの画像に表示される。サーモグラムに関する法コードは、開始温度および終了温度、ならびに加熱速度の略語であり、例えば、-30-250-10は、「-30℃~250℃、10℃/分」を意味する。
【0105】
6.フーリエ変換赤外分光法(FT-IR):
FT-IRデータは、Ever-Glo中/遠IR光源、臭化カリウムビームスプリッター、および重水素化硫酸トリグリシン検出器を備えたNicolet FTIR6700フーリエ変換赤外分光光度計(Thermo Nicolet)で取得した。波長検証は、NIST SRM1921b(ポリスチレン)を使用して行った。ゲルマニウム(Ge)結晶を備えた減衰全反射アクセサリ(Thunderdome(商標)、Thermo Spectra-Tech)をデータ収集に使用した。各スペクトルは、4cm-1のスペクトル分解能で収集された256の共同追加スキャンを表す。きれいなGe結晶で背景データセットを取得した。Log1/R(R=反射率)スペクトルは、相互に対するこれらの2つのデータセットの比率を取ることによって得た。
【0106】
7.熱重量分析(TGA):
TG分析は、IR炉を備えたTA Instruments Discovery熱重量分析計を使用して行った。温度較正は、ニッケルおよびAlumel(商標)を使用して行った。各試料をアルミニウム皿に置いた。試料を密閉し、蓋に穴を開け、その後、TG炉に挿入した。炉を窒素下で加熱した。各サーモグラムのデータ取得パラメーターは、本報告書のデータセクションの画像に表示される。取得スキャン速度は、サーモグラムヘッダーに記録されるが、加熱範囲は、個々のプロットから判定され得る。
【0107】
結果と考察:
カンナビジオールは、X線粉末回折(XRPD)および1H NMR分光法で分析した。
【0108】
出発物質のXRPDパターン(
図1)は、結晶性物質で構成され、Cambridge Structural Databaseのカンナビジオール(Refcode:CANDOM10)の単結晶データからの計算されたXRPDパターンと比肩する。
【0109】
1H NMRスペクトルは、参照として収集され、カンナビジオールの構造と一致することが判明した(データは示されず)。
【0110】
単一の吸熱は、DSCデータ(データは示されず)において約70℃(ピーク最大)で観察された。TGAに基づく加熱による有意な重量損失は、観察されなかった(データは示されず)。
【0111】
カンナビジオールの動的溶解度推定は、スクリーニング実験の設計を援助する様々な溶媒で判定した(表1および表2)。溶解度は、室温(RT)でカンナビジオールの秤量された量に溶媒の測定されたアリコートを添加することによって推定した。アリコートの添加の間に試料を超音波処理し、溶解を目視検査で判断した。アセトン、アセトニトリル、DMA、DMF、p-ジオキサン、エタノール、IPOAc、MEK、およびメタノール中での溶解度推定から生成された溶液の変色は、室温で1~3日後に観察された。
【表1】
【表2】
【0112】
B.共結晶スクリーニング
カンナビジオールの共結晶スクリーニングは、主に薬学的に許容されるコフォーマーを使用して行った。カンナビジオールの共結晶を対象とする68の実験は、34のコフォーマーを使用して実施した。カンナビジオールは、化学的に非常に反応性が高いと報告されている(Mechoulam,R.およびJanus,L,Cannabidiol:an overview of some chemical and pharmacological aspects.Part I;chemical aspects(2002)Chem Phys Lipids 121(1-2):35-43)。例えば、酸素の存在下で塩基に含まれるカンナビジオールは、単量体および二量体のヒドロキノンに酸化されることが報告されている(同文献)。酸化された化合物の陰イオンは、深い紫色を有し、大麻の識別に使用されたビーム反応の基礎である(同文献)。O-H…N水素結合を潜在的に活用するために、イミダゾールなどの薬学的に許容される塩基とカンナビジオールとの共結晶を形成する試みは、おそらくビーム反応の結果として、溶液の変色をもたらした。したがって、使用した塩基のpKaは、実験条件を調整する際に考慮に入れた。芳香族窒素を含有するような塩基性の低い化合物は、O-H…N水素結合を活用するために評価した。実験は、約1:1、2:1、または1:2のAPI:コフォーマー比で設定し、過剰量のコフォーマーを使用した追加の実験を行った。実験は、冷却、蒸発、スラリー化、および溶媒支援粉砕を含む様々な結晶化技術を使用して行った。共結晶スクリーニング実験から得られた固体は、典型的には、偏光顕微鏡(PLM)およびX線粉末回折(XRPD)によって分析した。単離された固体のXRPDパターンを、カンナビジオールおよびコフォーマーの既知の形態のXRPDパターンと比較した。
【0113】
カンナビジオールの共結晶を対象に実施された実験の大部分は、カンナビジオール、コフォーマー、カンナビジオールとコフォーマーとの物理的混合物、ゲル、オイル、または変色した溶液をもたらした。
【0114】
カンナビジオールの4つの共結晶が発見された:カンナビジオールL-プロリン形態A、カンナビジオールD-プロリン形態A、カンナビジオールテトラメチルピラジン物質A、およびカンナビジオール4,4’-ジピリジル物質A(表3)。さらに、カンナビジオール4,4’物質Aを室温(RT)で95%の相対湿度(RH)に1週間曝露した後、4,4’-ジピリジル物質Bと呼ばれる独特の結晶性物質が生じた。
【表3】
【0115】
1.カンナビジオール:L-プロリン(1:1)形態A:
独特の結晶性物質は、L-プロリンとのカンナビジオールの共結晶を対象とした実験から識別した。L-プロリンの潜在的な首位は、MeOHの存在下でのカンナビジオールとL-プロリンの比率が異なるいくつかの異なる実験条件から得た。MeOH中のカンナビジオールおよび過剰のL-プロリンを含有する溶液の蒸発は、XRPDに基づいてL-プロリンとの混合物として単離された独特の結晶性物質をもたらした(
図2)。MeOHでのカンナビジオールおよびL-プロリンの溶媒支援粉砕、ならびにカンナビジオールおよびL-プロリンを含有する(1:1および2:1のモル比)MeOH溶液の蒸発は、同じ独特の結晶性物質をもたらした。カンナビジオール:L-プロリン(1:1)形態Aの特徴を表4に示す。
【0116】
カンナビジオールとL-プロリンとの1:1の共結晶を対象とした蒸発実験から得られた試料のXRPDパターンのインデックス化が成功した。インデックス化の成功は、その物質が主にまたは独占的に単結晶相で構成されることを示す。インデックス化された体積は、水またはメタノールの可能な存在とともに、カンナビジオール:L-プロリンの1:1の共結晶と一致する。
【0117】
試料の
1H NMRスペクトルは、カンナビジオールおよびL-プロリンを約1:1のモル比で含有し、カンナビジオールL-プロリンの1:1の共結晶を示唆した(
図6)。
【0118】
DSCサーモグラムは、約146.4℃で開始し、147.8℃でピーク最大値を有する単一の急激な吸熱を示す(
図3)。TGAサーモグラムでは有意な体重減少は観察されず、試料が非溶媒和/無水である可能性が高いことが示唆される。約28℃~160℃の間に(融解を超えて)約0.1重量%の損失が観察される(
図4)。
【0119】
カンナビジオールL-プロリン形態Aの水溶解度は、アリコート添加法を使用して<1mg/mlと推定した。
【0120】
カンナビジオールL-プロリン形態Aの試料は、室温で95%RHに1週間曝露し、XRPDに基づいて物理的形態の変化は観察されなかった(データは示されず)。
【0121】
カンナビジオールL-プロリン形態Aは、約2~8℃で約15週間保存し、試料をXRPDにより分析した。XRPDに基づいて、保管後、物理的形態の変化は観察されなかった(データは示されず)。
【0122】
カンナビジオール共結晶を調製する方法:
カンナビジオール(87.76mg、0.28mmol)およびL-プロリン(33.8、0.29mmol)mgを、室温(RT)でメタノール(350μL)に溶解した。透明な溶液を室温で約3時間攪拌した。溶液を窒素下で1日間蒸発させた。
【表4】
カンナビジオールL-プロリン形態AのFT-IRスペクトルを、参照として収集し、
図5に示す。
カンナビジオールL-プロリン形態Aの水溶解度は、アリコート添加法を使用して<1mg/mlと推定した
【0123】
2.カンナビジオールD-プロリン形態A:
カンナビジオールおよびD-プロリンのMeOHとの溶媒支援粉砕がXRPD(
図7)により独特の物質を生成した、ならびに等モル量のカンナビジオールおよびD-プロリンを含有するMeOH溶液の蒸発、の2つの条件下でカンナビジオールD-プロリン形態Aを生成した。カンナビジオールD-プロリン形態Aの特性評価を表5に示す。
【表5】
【0124】
カンナビジオールD-プロリン形態Aの
1H NMRスペクトルは、4.06ppmのピークに基づいて、1:1のモル比でカンナビジオールおよびD-プロリンと一致する(
図11)。残留有機溶媒は、観察されなかった。
【0125】
までのTGAサーモグラムでは、有意な重量損失は観察されず、試料が非溶媒和/無水である可能性が高いことを示唆する(
図9)。
【0126】
カンナビジオールD-プロリン形態Aの水溶解度は、アリコート添加法を使用して<1mg/mlと推定した。
【0127】
カンナビジオールD-プロリン形態AのFT-IRスペクトルを、参照として収集し、
図10に示す。
【0128】
カンナビジオールD-プロリン形態AのDSCサーモグラムは、約154℃で開始する単一の吸熱を示す(
図8)。
カンナビジオールとD-プロリン形態Aとの共結晶の調製:
【0129】
メタノール(0.9mL)をカンナビジオール(92.4mg、0.29mmol)およびD-プロリン(34.8mg、0.30mmol)に添加して、透明な溶液を生成した。溶液を窒素下で3日間蒸発させた。
【0130】
3.カンナビジオールテトラメチルピラジン物質A:
カンナビジオールテトラメチルピラジン物質Aは、等モル量のカンナビジオールおよびテトラメチルピラジン(TMP)を1:1でMeOHと溶媒支援粉砕することにより、不規則物質として単離した。カンナビジオールおよびTMPを1:2のモル比で含有する第2の溶媒支援粉砕実験では、同じ不規則物質が得られ、追加のピークが存在した。等モル量のカンナビジオールおよびTMPを含有する、実験から単離された固体を、XRPD(
図12)、
1H NMR、DSC、およびFT-IR分光法により分析した。さらに、水溶解度の視覚的推定を実施し、カンナビジオールテトラメチルピラジン物質Aの固体を95%RHに曝露した後、XRPDにより分析した。
【0131】
カンナビジオールテトラメチルピラジン物質Aの特性評価を表6に示す。
【0132】
試料の
1H NMRスペクトルは、カンナビジオールの化学構造と一致し、カンナビジオール1モルあたり約0.9モルのTMPを含有する(
図15)。
1H NMRデータに基づいて、カンナビジオールの分解は、観察されない。
【0133】
カンナビジオールTMP物質AのDSCサーモグラムは、90℃で開始し、93℃でピーク最大値を有する単一の急激な吸熱を示し、それは、共結晶の融解に起因する可能性が高い(
図13)。
【0134】
カンナビジオールTMP物質AのFT-IRスペクトルを、参照として収集した(
図14)。
【0135】
カンナビジオールTMP物質Aの水溶解度は、アリコート添加法を使用して<1mg/mLと推定した。
【0136】
カンナビジオールTMP物質Aの試料は、室温で95%RHに1週間曝露し、XRPDに基づいて物理的形態の変化は観察されなかった(データは示されず)。
【0137】
試料が不十分なため、カンナビジオール:TMP(1:2)実験から得られた固体は、カンナビジオールTMP物質Aと一致し、カンナビジオールのピークが追加され、追加的な熱特性評価に使用した。DSCデータで2つの吸熱が観察され、1つの吸熱は、63℃で開始し、65℃でピーク最大値を有し、カンナビジオールの融解に起因する可能性が高く、その後、87℃でピーク最大値を有し、共結晶の融解/分解に起因する第2の吸熱が続いた(データ示さず)。TGAサーモグラムは、24~45℃で0.1%の重量損失を示した。
【0138】
テトラメチルピラジン物質Aの調製:
カンナビジオール(51.0mg、0.16mmol)とテトラメチルピラジン(22.1mg、0.16mmol)とを合わせ、少量のMeOHと接触させ、濃いペーストを生成した。試料をメノウ乳鉢/乳棒で軽く粉砕し、白色粉末を生成した。固体を収集し、分析した。
【表6】
【0139】
4.カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質A:
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aは、等モル量ならびにMeOHの存在下での2モル当量の4,4-ジピリジルを含む溶媒支援粉砕実験から識別した(XRPD、
図16)。カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aの特性評価を表7にまとめる。
【0140】
試料の
1H NMRスペクトルは、カンナビジオールの化学構造と一致し、概して、約1:0.9のモル比でのカンナビジオールおよび4,4’-ジピリジルと一致する(
図20)。
1H NMRデータに基づいて、カンナビジオールの分解は、観察されない。
【0141】
DSCサーモグラムは、114.8℃(最大ピーク)で幅広い特色を示し、その後、融解のためである可能性が高い、140.7℃(最大ピーク)で急激な吸熱が続く(
図17)。起こり得る融解にまで加熱しても、TGAサーモグラムで有意な重量損失は観察されない(
図18)。
【0142】
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質AのFT-IRスペクトルを、参照として収集した(
図19)。
【0143】
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aの水溶解度は、アリコート添加法を使用して<1mg/mLと推定した。
【0144】
カンナビジオール4,4’-ジピリジル物質Aの試料は、室温で95%RHに1週間曝露し、XRPDにより独特の結晶性物質が得られ(物質B)(
図21)、ストレス状態下で物理的形態の変化が発生したことを示した。
【0145】
カンナビジオール4,4-ジピリジル物質Aの調製:
カンナビジオール(55.4mg、0.18mmol)と4,4’-ジピリジル(27.4mg、0.18mmol)とを合わせ、少量のMeOHと接触させ、濃厚なペーストを生成した。試料をメノウ乳鉢/乳棒で軽く粉砕し、白色粉末を生成した。固体を収集して分析した。
【0146】
発見された共結晶とカンナビジオールとの物理的性質の比較を表8に示す。
【表7】
【表8】