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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】生産管理装置および生産管理システム
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2019072545
(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公開番号】P2020170428
(43)【公開日】2020-10-15
【審査請求日】2022-03-11
(73)【特許権者】
【識別番号】517012534
【氏名又は名称】i Smart Technologies株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000028
【氏名又は名称】弁理士法人明成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】今井 武晃
【審査官】永井 友子
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-068816(JP,A)
【文献】特開2018-185653(JP,A)
【文献】特開2019-028929(JP,A)
【文献】特開平11-353375(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0160733(US,A1)
【文献】特開2019-003593(JP,A)
【文献】特開2007-140625(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
評価対象となる製造ラインにおける生産状況を管理するための生産管理装置であって、
前記評価対象となる製造ラインである第1製造ラインに配置された生産設備における第1サイクルタイムを取得するサイクルタイム取得部と、
前記第1サイクルタイムを用いて前記生産状況を示す生産情報を算出する生産情報算出部と、
前記第1製造ラインとは異なる第2製造ラインにおける第2サイクルタイムを用いて算出された、前記第2製造ラインにおける生産状況を示す参照情報を取得する参照情報取得部と、
前記生産情報と前記参照情報とを比較することによって、前記第1製造ラインの生産状況の評価を実行し、前記評価の結果を出力する評価部であって、前記生産情報としての可動率と前記参照情報としての複数の可動率の中央値の差、前記生産情報としての可動率と前記参照情報としての複数可動率の平均値との差、前記生産情報としての可動率と前記参照情報としての複数可動率の最頻値との差、前記参照情報としての複数の可動率に対する前記生産情報としての可動率の偏差値の少なくともいずれか一つを前記評価の結果として出力する評価部と、を備える、生産管理装置。
【請求項2】
請求項1に記載の生産管理装置であって、
前記参照情報の算出には、前記第2サイクルタイムのうち、閾値より小さい値が用いられ、
前記閾値は、前記第2サイクルタイムのうち外れ値を除くために設定されている、生産管理装置。
【請求項3】
請求項2に記載の生産管理装置であって、
前記閾値は、統計的手法を用いて前記第2サイクルタイムから算出された統計値を用いて決定されている、生産管理装置。
【請求項4】
請求項3に記載の生産管理装置であって、
前記統計値は、前記第2サイクルタイムの最頻値である、生産管理装置。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の生産管理装置であって、
前記閾値は、第2閾値であり、
前記生産情報の算出には、前記第1サイクルタイムのうち、前記第2閾値とは異なる第1閾値より小さい値が用いられ、
前記第1閾値は、前記第1サイクルタイムのうち外れ値を除くために設定され、前記統計的手法を用いて前記第1サイクルタイムから算出された統計値を用いて決定されている、生産管理装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記第1サイクルタイムは、前記第1製造ラインの稼働の予定に応じて予め定められた第1期間におけるサイクルタイムであり、
前記第2サイクルタイムは、前記第2製造ラインの稼働の予定に応じて予め定められた第2期間におけるサイクルタイムである、生産管理装置。
【請求項7】
請求項6に記載の生産管理装置であって、
前記第1期間の終期は、前記第1製造ラインにおける終業時間であり、
前記第2期間の終期は、前記第2製造ラインにおける終業時間である、生産管理装置。
【請求項8】
請求項1から請求項7までのいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記生産情報は、可動率である、生産管理装置。
【請求項9】
請求項8に記載の生産管理装置であって、
前記可動率は、平均サイクルタイム×生産個数÷(稼働時間-計画停止時間)によって算出される、生産管理装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記第2製造ラインは、複数の製造ラインを含み、
前記参照情報は、前記複数の製造ラインの各々についての生産状況を示している、生産管理装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれか一項に記載の生産管理装置であって、
前記評価部は、前記生産情報と前記参照情報との比較の結果、前記第1製造ラインの生産状況より前記第2製造ラインの生産状況が良好である場合には、
前記第1製造ラインにおける労務費と前記生産状況との関係を示す労務情報を用いて、前記第1製造ラインの生産状況を前記第2製造ラインの生産状況に置き換えた場合における、前記第1製造ラインの推定労務費を算出し、
前記評価の結果として前記推定労務費を出力する、生産管理装置。
【請求項12】
請求項1から請求項11までのいずれか一項に記載の生産管理装置であって、さらに
前記参照情報を記憶したデータベースを備え、
前記参照情報取得部は、前記データベースに記憶された参照情報を取得する、生産管理装置。
【請求項13】
請求項1から請求項12に記載の生産管理装置であって、
前記生産管理装置における情報伝達には、インターネットが介在している、生産管理装置。
【請求項14】
生産管理システムであって、
請求項1から請求項13までのいずれか一項に記載の生産管理装置と、
前記第1製造ラインに配置された第1生産設備に取付けられた第1検出装置であって、前記第1生産設備の動作に応じて、前記第1サイクルタイムの取得に用いられる検出信号を出力する第1検出装置と、を備える、生産管理システム。
【請求項15】
請求項14に記載の生産管理システムであって、さらに、
前記第2製造ラインに配置された第2生産設備に取り付けられた第2検出装置であって、前記第2生産設備の動作に応じて、前記第2サイクルタイムの取得に用いられる検出信号を出力する第2検出装置を、備える、生産管理システム。
【請求項16】
請求項14または請求項15に記載の生産管理システムであって、
前記生産管理システムにおける情報伝達には、インターネットが介在している、生産管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、生産管理の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
生産状況を示す指標として可動率を用いて、生産管理方法が知られている(例えば、特許文献1)。この生産管理方法は、管理の対象となる生産設備において、異なる複数の期間における可動率を用いて、生産管理を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2009-187266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の生産管理方法では、管理対象となる生産設備における生産状況の変化に応じて生産状況を評価することはできるが、生産状況の客観的な評価は困難である。例えば、他の生産設備と比べて、管理対象となる生産設備における生産状況が優れているのか否かを評価することが困難である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本開示の一形態によれば、評価対象となる製造ラインにおける生産状況を管理するための生産管理装置が提供される。この生産管理装置は、前記評価対象となる製造ラインである第1製造ラインに配置された生産設備における第1サイクルタイムを取得するサイクルタイム取得部と、前記サイクルタイムを用いて前記生産状況を示す生産情報を算出する生産情報算出部と、前記第1製造ラインとは異なる第2製造ラインにおける第2サイクルタイムを用いて算出された、前記第2製造ラインにおける生産状況を示す参照情報を取得する参照情報取得部と、前記生産情報と前記参照情報とを比較することによって、前記生産状況の評価を実行し、前記評価の結果を出力する評価部と、を備える。この形態の生産管理装置は、評価対象となる第1製造ラインの生産状況を、第2製造ラインの生産状況と評価することによって、第1製造ラインの生産状況を評価できる。このため、この生産管理装置によれば、第2製造ラインを参照して第1製造ラインの生産状況を客観的に評価することができる。
(2)上記形態の生産管理装置において、前記参照情報の算出には、前記第2サイクルタイムのうち、閾値より小さい値が用いられ、前記閾値は、前記第2サイクルタイムのうち外れ値を除くために設定されてもよい。この形態の生産管理装置によれば、閾値を用いて第2サイクルタイムから外れ値を除くことができる。これにより、外れ値の影響によって、参照情報が不正確になることを抑制できる。
(3)上記形態の生産管理装置において、前記閾値は、統計的手法を用いて前記第2サイクルタイムから算出された統計値を用いて決定されていてもよい。この形態の生産管理装置によれば、閾値を客観的に決定することができる。
(4)上記形態の生産管理装置において、前記統計値は、前記第2サイクルタイムの最頻値であってもよい。この形態によれば、最頻値を用いて閾値を決定できるので、生産設備の故障等による第2サイクルタイムの遅延等が参照情報に影響を与えることを抑制できる。
(5)上記形態の生産管理装置において、前記閾値は、第2閾値であり、前記生産情報の算出には、前記第1サイクルタイムのうち、前記第2閾値とは異なる第1閾値より小さい値が用いられ、前記第1閾値は、前記第1サイクルタイムのうち外れ値を除くために設定され、前記統計的手法を用いて前記第1サイクルタイムから算出された統計値を用いて決定されてもよい。この形態の生産管理装置によれば、第1閾値を用いて第1サイクルタイムから外れ値を除くことができる。これにより、外れ値の影響によって、生産情報が不正確になることを抑制できる。
(6)上記形態の生産管理装置において、前記第1サイクルタイムは、前記第1製造ラインの稼働の予定に応じて予め定められた第1期間におけるサイクルタイムであり、前記第2サイクルタイムは、前記第2製造ラインの稼働の予定に応じて予め定められた第2期間におけるサイクルタイムであってもよい。この形態の生産管理装置は、期間を設定することにより、データ間のばらつきを低減できる。
(7)上記形態の生産管理装置において、前記第1期間の終期は、前記第1製造ラインにおける終業時間であり、前記第2期間の終期は、前記第2製造ラインにおける終業時間であってもよい。この形態の生産管理装置は、終業後、つまり残業時間におけるサイクルタイムを除外することができる。残業時間では、作業者が残業の終了時刻を加味して作業効率を変化させる場合等により、通常とは異なる生産状況となる傾向がある。このため、残業時間におけるサイクルタイムによって生産状況が正しく評価されなくなることが抑制される。
(8)上記形態の生産管理装置において、前記生産情報は、可動率であってもよい。この形態の生産管理装置は、可動率を用いて生産管理を行うことができる。
(9)上記形態の生産管理装置において、前記可動率は、平均サイクルタイム×生産個数÷(稼働時間-計画停止時間)によって算出されてもよい。この形態の生産管理装置によれば、可動率の算出に平均サイクルタイムを用いるため、可動率の算出に主観的な要素が入ることを抑制できる。
(10)上記形態の生産管理装置において、前記第2製造ラインは、複数の製造ラインを含み、前記参照情報は、前記複数の製造ラインの各々についての生産状況を示してもよい。この形態によれば、複数の製造ラインを参照することができるので、評価の結果の信頼性が向上する。
(11)上記形態の生産管理装置において、前記評価部は、前記生産情報と前記参照情報との比較の結果、前記第1製造ラインの生産状況より前記第2製造ラインの生産状況が良好である場合には、前記第1製造ラインにおける労務費と前記生産状況との関係を示す労務情報を用いて、前記第1製造ラインの生産状況を前記第2製造ラインの生産状況に置き換えた場合における、前記第1製造ラインの推定労務費を算出し、前記評価の結果として前記推定労務費を出力してもよい。この形態によれば、生産管理装置の利用者は、推定労務値という具体的な数値を基準として第1製造ラインの生産状況を判断することができる。
(12)上記形態の生産管理装置は、さらに、前記参照情報を記憶したデータベースを備え、前記参照情報取得部は、前記データベースに記憶された参照情報を取得してもよい。この形態の生産管理装置によれば、参照情報がデータベースに予め記憶されているため、生産状況の評価を行う際における、参照情報を取得が容易である。
(13)上記形態において、前記生産管理装置におえる情報伝達には、インターネットが介在してもよい。
本開示は、生産管理装置以外の種々の形態で実現することが可能である。例えば、生産管理装置を備えた生産管理システムや生産管理装置を備えた製造ラインや生産管理方法や生産管理プログラム等の形態で実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】第1実施形態に係る生産管理システムの模式図。
図2】第1実施形態に係る生産管理システムを備えた第1生産施設の模式図。
図3】第1実施形態に係る生産管理装置の構成を示すブロック図。
図4】第1実施形態に係る生産管理装置の検出部が設置されている様子を示す模式図。
図5】処理部において実行されるサイクルタイム等の取得処理のフローチャート。
図6】処理部において実行される可動率の算出処理のフローチャート。
図7】処理部において実行される参照情報の生成処理のフローチャート。
図8】処理部において実行される生産状況の評価処理のフローチャート。
図9】第1実施形態において提供される評価結果の第1の例を示す図。
図10】第1実施形態において提供される評価結果の第2の例を示す図。
図11】第2実施形態の処理部において実行される評価処理のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
A.第1実施形態
図1は、第1実施形態に係る生産管理システム100の模式図である。第1実施形態に係る生産管理システム100は、インターネットINTを利用するInternet of Things(IoT)技術によって生産管理を行なうシステムであり、複数の生産施設80のそれぞれについての生産管理を行うことができる。本実施形態において、複数の生産施設80は、同一の企業又は組織に属する生産施設だけでなく、異なる企業等に属する生産施設を含んでいる。
【0008】
生産管理装置20は、生産施設80の生産状況を管理する装置である。生産管理装置20は、生産管理の対象となる生産施設80に配置される本体部202と、本体部202にインターネットINTを介して接続された処理部40と、を備える。本体部202は、生産施設80の生産状況を管理するために用いる情報としてサイクルタイムや停止情報を取得し、処理部40に提供する。また、本体部202は、処理部40から提供される情報を生産管理装置20の利用者に提供する。なお、一の生産施設80に配置された本体部202は、他の生産施設80に配置された本体部202に対して情報の伝達を直接行うことはできない。具体的には、例えば、第1生産施設80Aに配置された本体部202は、他の生産施設80、例えば第2生産施設80Bに配置された本体部202に対して情報の伝達を直接行うことはできない。
【0009】
処理部40は、複数の生産管理装置20で共通して用いられる。処理部40は、各生産施設80についての生産管理に用いられる生産情報を記憶するデータベース50を有している。処理部40は、本体部202から提供された情報を用いて、生産施設80に設けられた製造ラインの生産状況を示す生産情報を算出する。また、処理部40は、生産情報を用いて各生産施設80の生産状況を評価することが可能である。データベース50に記憶された情報は、生産情報の算出や生産状況の評価に用いられる。また、本体部202は、データベース50に記憶された情報へのアクセスを直接行えない。
【0010】
図2は、第1実施形態に係る生産管理システム100を備えた第1生産施設80Aの模式図である。以下では、複数の生産施設80の1つである第1生産施設80Aにおける生産管理を行う場合を例として、生産管理システム100の詳細を説明する。
【0011】
第1生産施設80Aは、製造ラインL1、L2を備えた工場を含み、実際の生産が行われる場所である。第1生産施設80Aの生産管理において、製造ラインL1、L2が、生産管理システム100による生産状況の管理の対象となる。なお、図2では、生産施設80Aとは別の生産施設の一例として第2生産施設80Bが示されている。
【0012】
第2生産施設80Bは、製造ラインL3を備えた工場を含んでいる。第1生産施設80Aの生産管理において、製造ラインL3は、生産管理システム100による生産状況の管理の対象とはならず、第1生産施設80Aの製造ラインL1、L2における生産状況を評価するための比較対象として用いられる。
【0013】
各生産施設80A、80Bには、通信装置70が配置されている。通信装置70は、生産管理システム100におけるインターネットINTへの接続に用いられる。通信装置70は、例えば、無線LAN通信装置や、無線中継機、アクセスポイント、無線基地局、である。
【0014】
第1生産施設80Aの製造ラインL1、L2は、搬送機構31と、複数の搬送機構31に沿って配置された複数の生産設備30a~30dと、を有する。製造ラインL1、L2において、製品は、複数の製造工程を経て製造される。
【0015】
第2生産施設80Bの製造ラインL3は、第1生産施設80Aの製造ラインL1、L2と同様に、搬送機構31と、複数の搬送機構31に沿って配置された複数の生産設備30e、30fと、を有する。
【0016】
製品は、第1生産施設80Aの製造ラインL1、L2や第2生産施設80Bの製造ラインL3で製造される物であり、完成した状態だけではなく、加工途中の状態も含む。製品は、加工対象や検査対象とも記載される。搬送機構31は、製品を搬送するための機構であり、例えば、ベルトコンベアや無人搬送車等の自動搬送装置や、フォークリフト等を用いた有人による搬送手段、である。本実施形態において、搬送機構31は、ベルトコンベアである。生産設備30a~30fは、例えば、製品の製造工程における加工を行なう加工設備や、加工設備による加工品の品質を検査する検査設備である。生産設備30a~30fとしての加工設備は、例えば、金属加工機や、溶接機、樹脂成形機、である。生産設備30a~30fとしての検査設備は、例えば、画像解析装置や強度検査装置である。各生産設備30a~30fには、生産処理や、加工処理、検査処理を実行するためのプログラマブルロジックコントローラ(PLC)およびPLCに接続されているセンサが備えられている。PLCに接続されたセンサとは、例えば、生産設備30a~30fあるいは搬送機構31に予め組み込まれている生産設備30a~30fの状態を検出するためのセンサである。生産設備30a~30fが用いられる製造工程の一部には、作業者による操作や作業が含まれていてもよい。また、本実施形態において生産設備30a~30fは、装置もしくは機器であるが、作業者による作業、例えば、加工や目視による点検、を行なう場所であってもよい。本実施形態において、第1製造ラインL1や第2製造ラインL2に備えられた生産設備30a~30dは、それぞれ複数であるが、単数であってもよい。
【0017】
複数の生産管理装置20(図1)は、図2に示す第1生産管理装置20Aと第2生産管理装置20Bとを含む。第1生産管理装置20Aは、複数の検出部10a~10dと、本体部202Aと、を備え、製造ラインL1、L2の生産状況に関する情報を取得する。検出部10a~10dは、生産設備30a~30dに取り付けられている。ここで、「生産設備30a~30dに取り付けられている」とは、それぞれの検出部10a~10dに対応する生産設備30a~30dの状態を検出できるように配置されていることを意味し、直接取り付けられている場合に限定されない。検出部10a~10dは、生産設備30a~30dが製造ラインL1、L2に設置された後に取り付けられている。検出部10a~10dは、本体部202Aと無線通信を介して接続され、検出結果である検出信号を本体部202Aへと出力する検出装置として機能する。本体部202Aは、検出部10a~10dが出力した検出信号の計数と、検出信号が出力される時間間隔の計時と、を行う。本体部202Aは、計数の結果を第1生産施設80Aにおける生産個数として処理部40に送信する。より具体的には、第1生産施設80Aの生産個数は、第1製造ラインL1の生産個数と第2製造ラインL2の生産個数とに分けて管理される。また、本体部202Aは、計時の結果を第1生産施設80Aにおけるサイクルタイムとして処理部40に送信する。より具体的には、第1生産施設80Aのサイクルタイムは、第1製造ラインL1のサイクルタイムと第2製造ラインL2のサイクルタイムとに分けて管理される。
【0018】
第2生産管理装置20Bは、複数の検出部10e、10fと、本体部202Bと、第1生産管理装置20Aと共通の処理部40、を備え、製造ラインL3から生産状況に関する情報を取得する。検出部10e、10fは、生産設備30e、30fに取り付けられている。本体部202Bは、検出部10e、10fが出力した検出信号の計数と、検出信号が出力される時間間隔の計時と、を行う。本体部202Bは、計数の結果を第2生産施設80Bにおける生産個数として処理部40に送信する。また、本体部202Bは、計時の結果を第2生産施設80Bにおけるサイクルタイムとして処理部40に送信する。
【0019】
処理部40は、複数の生産管理装置20の本体部202から送信される情報を処理することにより生産管理装置20が設けられた複数の生産施設80の生産状況を評価し、また生産状況を示す各種の情報を管理する。処理部40は、サイクルタイムや検出信号を用いて生産情報を生成する。生成された生産情報は、表示装置601~608へと送信される。処理部40から第1生産施設80Aに配置された表示装置601~604への生産情報の送信は、通信装置70および本体部202を介して行なわれる。ここで、生産情報とは、製造ラインL1、L2の生産状況を示す情報である。生産状況は、例えば、製造ラインL1、L2の生産効率である。生産情報は、例えば、製造ラインL1、L2の可動率である。なお、以下において、検出部10a~10dの共通の機能を説明する場合には、検出部10a~10dは、検出部10とも記載される。
【0020】
表示装置601~604は、製造ラインL1、L2において作業を行なう者に生産情報を提供する。表示装置601~604は、生産管理装置20Aの本体部202Aと通信可能に無線接続され、本体部202Aを介して送信される生産情報をディスプレイ等の情報表示部61に表示する。表示装置601、602は、利用者が携帯することが可能な通信端末であり、例えば、スマートフォンや、タブレット型PCや、スマートウォッチ、である。表示装置601、602の利用者は、作業を行なっている場所から移動することなく生産情報の提供を受けることができる。また、表示装置601、602がスマートフォン等の生産施設80A以外の場所においても通信可能な装置である場合には、表示装置601、602の利用者は、生産施設80Aに実際に行くことなく生産施設80における生産状況を知ることができる。表示装置603、604は、設置場所に固定されるモニタ装置、例えば液晶モニタやデスクトップ型PCや電光掲示板、であって、製造ラインL1、L2における複数の作業者に生産情報を提供する装置である。表示装置603、604は、複数の利用者に生産情報を提供することができる。表示装置601~604は、生産管理装置20Aと無線接続されているため、有線接続されている場合と比べて、使用位置を変更する際の手間や制限が少ない。本実施形態において、表示装置601~604は、処理部40によって生成された生産情報を本体部202Aとの無線通信を介して取得しているが、これに限定されない。例えば、表示装置601~604は、本体部202Aを介さずに通信装置70と接続され、通信装置70から送信される生産情報を直接受信することによって生産情報を取得してもよい。また、設置位置に固定して利用される表示装置603、604は、本体部202Aもしくは通信装置70と有線接続されていてもよい。
【0021】
本実施形態において、生産管理システム100は、4台の表示装置601~604を有しているが、これに限定されない。表示装置601~604は、5台以上であってもよく、また、3台以下であってもよい。例えば、表示装置601~604の数は、生産情報の提供を受ける者の人数や生産情報の提供が必要な場所の数に応じて適宜変更が可能である。また、表示装置601~604が使用される位置や環境に応じて、表示装置601~604に用いられる装置は、変更可能である。例えば、第1生産施設80Aにおいて、作業者が表示装置601、602を携帯する必要がない場合には、生産管理システム100は、設置位置に固定されるモニタ装置である表示装置603、604のみを備えていてもよい。また、表示装置601~604による生産情報の提供が不要である場合には、生産管理システム100は、表示装置601~604を備えていなくてもよい。また、表示装置601~604に加えて、生産施設80Aとは離れた場所に設置されたPC等が表示装置として用いられてもよい。
【0022】
図3は、第1実施形態に係る生産管理装置20の構成を示すブロック図である。検出部10は、センサ11と、コントロール部12と、送受信部13と、を有している。センサ11は、生産設備30a~30d(図1)に後付け可能なセンサであり、製造ラインL1、L2の生産状況として製品の繰り出しに応じて信号を出力するセンサである。センサには、例えば、生産設備30a~30dから繰り出される製品を検出するセンサや、製品の繰り出しに関する生産設備30a~30dの動作や、生産設備30a~30dによる加工対象の取り込みおよび排出に伴う動作を用いることができる。センサ11は、アナログセンサでもよくデジタルセンサであってもよい。
【0023】
センサ11には、検出する対象に応じて適切なセンサが採用される。例えば、生産設備30a~30dの動作を検出する場合には、生産設備30a~30dへの通電を検出する通電チェッカーや、生産設備30a~30dの可動部の動きを検出する加速度センサやジャイロセンサが用いられる。また、搬送機構31から製品が繰り出される場合にのみ動作する場合には、搬送機構31の動作を検出してもよい。作業者による作業を検出する場合には、作業者が使用する工具等の動作を検出する通電チェッカーを用いることができる。搬送機構31の動作の検出には、例えば、加速度センサや動作音を検出する音センサを用いることができる。また、搬送に決められた経路を移動するフォークリフト等の有人による搬送手段を検出する場合には、通過を検出するための光センサや搬送時の音を検出するための音センサを用いることができる。上述のように、検出部10は、生産設備30a~30dに後付けされている。このため、生産設備30a~30dや搬送機構31の変更に応じて柔軟な対応が可能である。また、生産状況に影響を与えやすい製造工程や、作業時間に変化が生じやすい自動化されていない工程についての動作を検出するように設計することができる。
【0024】
コントロール部12は、図示しない中央演算処理装置(CPU)と記憶装置とを備えている。コントロール部12は、例えば、センサ11から出力された信号に含まれるノイズの除去や、時間情報の生成を行なう。時間情報は、検出部10が生産状況を検出した時刻を示す情報であり、例えば、センサ11から出力された信号がコントロール部12に到達した時刻である。コントロール部12は、センサ11がアナログセンサである場合には、センサ11から出力された信号をアナログ信号からデジタル信号への変換を行なってもよい。アナログ信号からデジタル信号への変換には、例えば、二値化処理が用いられる。本実施形態において、コントロール部12は、二値化処理により、センサ11から出力された信号の電力値または電圧値が予め定めた値以上である場合に、検出信号を送受信部13へ出力する。
【0025】
送受信部13は、検出信号を生産管理装置20へと無線通信によって送信する。無線通信とは、例えば、IEEE802.11aの規格に準拠した2.4GHz帯域もしくは5GHz帯域を用いた無線通信や、1GHz未満の周波数帯域(916.5-927.5MHz)であるサブギガ帯域を用いた無線通信や、Bluetooth(登録商標)を用いた無線通信、である。
【0026】
本体部202は、中央演算処理部(CPU)21と、記憶部22と、送受信部23と、生産情報を表示するモニタである表示部24と、入力部25と、を有する。CPU21と記憶部22と送受信部23は、通信バスを介して相互に通信が可能となるように接続されている。
【0027】
CPU21は、例えば、検出信号が出力された時刻である時間情報を取得する取得部211や、出力される検出信号を計数する計数部212や、検出信号が出力される時間間隔を計時する計時部213、として機能する。CPU21は、時間情報と計時の結果と計数の結果とを処理部40および記憶部22へ出力する。また、CPU21は、送受信部23や表示部24を制御する。
【0028】
記憶部22は、読み込み及び書き込みが可能な記憶媒体であり、例えば、RAMや、ハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることができる。本実施形態では、記憶部22として、SSDが採用されている。記憶部22は、例えば、前述したCPU21の各種機能を実現するための各種プログラムや、各種情報を生成する際に必要となる基準パルス数や、基準パルス間隔を格納している。また、記憶部22は、検出信号と時間情報と計時の結果と計数の結果とを一時的に記憶する。
【0029】
送受信部23は、検出部10から検出信号を受信し、処理部40から生産情報を受信する受信部として機能する。また、送受信部23は、記憶部22に記憶されている情報を表示装置601~604および処理部40に送信する送信部としても機能する。
【0030】
入力部25は、外部から生産管理装置20へ信号を入力するための入力装置、例えば、スウィッチやキーボードである。生産管理装置20の利用者は、入力部25を介して生産管理装置20の設定変更、例えば、生産管理装置20から情報を送信する表示装置601~608の変更、が可能である。また、利用者は、入力部25を介して処理部40への情報、例えば生産設備30a~30dの故障や保守についての情報、を入力が可能である。
【0031】
処理部40は、送受信部41と、制御部43と、記憶部42と、を有する。処理部40は、本体部202とは別の場所に備えられている。本実施形態において、処理部40は、本体部202とインターネットINTを介して接続されたサーバ上に設けられている。サーバとして、情報共有サービスを利用してもよい。
【0032】
送受信部41は、処理部40をインターネットINTに通信可能な状態で接続する。送受信部41は、本体部202から送信された検出信号およびサイクルタイムを受信し、記憶部42へと出力する。また、送受信部41は、本体部202へ生産情報を送信する。
【0033】
制御部43は、中央演算処理装置(CPU)を有する。制御部43は、検出信号と時間情報と計時の結果と計数の結果と用いて生産情報を生成する。
【0034】
記憶部42は、読み込み及び書き込みが可能な記憶媒体であり、例えば、RAMや、ハードディスクドライブ(HDD)や、ソリッドステートドライブ(SSD)を用いることができる。記憶部22は、例えば、前述したCPU21の各種機能を実現するための各種プログラムを格納している。記憶部42は、各生産施設80における始業時間や終業時間や休憩時間や予め決められている保守等の情報を記憶している。記憶部42は、本体部202から送信された情報や、制御部43によって生成された生産情報を記憶することによってデータベース50を構築している。
【0035】
図4は、第1実施形態に係る生産管理装置20の検出部10aが設置されている様子を示す模式図である。検出部10aは、生産設備30aに備えられた開閉ドア301に取り付けられている。開閉ドア301は、加工が終了した製品が生産設備30aから排出される際に開く。センサ11は、生産設備30aの稼働状態を示す情報として製品PWが排出される際に開く開閉ドア301の動きを検出する。検出部10aは、センサ11として磁気センサを有している。磁気センサであるセンサ11による開閉ドア301の動きの検出は、センサ11と開閉時に位置が変動しないように設置された磁石112との距離の変化によるセンサによって検出される磁力の変化を用いて行なうことができる。
【0036】
上述のように、本実施形態において、図2から図4で説明をした生産管理装置20は、図1に示した生産施設80のそれぞれに配置されている。このため、生産施設80のそれぞれについて、サイクルタイム等の情報が生産管理装置20によって取得される。これにより、生産管理システム100は、生産施設80のそれぞれについての生産状況を示す生産情報をビッグデータとして処理部40のデータベース50に集積することが可能である。データベース50には複数の生産施設80から取得された生産情報が記憶されているため、利用者は、データベース50に記憶された複数の生産情報を生産施設80における生産状況の相場を示すデータとして利用できる。また、データベース50に集積された情報には、同一の生産管理装置20によって取得された情報が用いられている。このため、生産状況の差に起因しない情報のばらつき、例えば情報が取得される際の手順や環境等の違いによる情報のばらつきを低減することができる。このため、データベース50に記憶された複数の生産施設80に関する生産情報を用いて、一の生産施設80Aの生産状況を評価する場合には、前処理や妥当性の検討等、種々の手間が低減される。
【0037】
以下では、第1生産施設80Aに設けられた第1製造ラインL1の生産管理方法を、サイクルタイムの取得処理と、管理情報の算出処理と、データベース50の構築処理と、生産状況の評価処理と、の4つの処理に分けて説明する。
【0038】
図5は、処理部40において実行されるサイクルタイム等の取得処理のフローチャートである。この処理は、例えば、製造ラインL1、L2の電源スイッチがオンにされることによって開始される。また、例えば、生産管理装置20の記憶部22に記憶されている運転予定に製造ラインL1、L2の運転開始時刻が含まれている場合には、運転開始時刻になることによって処理が開始されてもよい。取得処理が開始されると、制御部43は、ステップS102の処理を実行する。
【0039】
ステップS102の処理において、制御部43は、取得処理の終了条件が満たされているか否かの判定を行う。終了条件は、例えば、現在時刻が記憶部42に記憶された終業時刻になったことである。終了条件が満たされている場合(ステップS102:Yes)には、CPU21は、取得処理を終了する。終了条件が満たされていない場合(ステップS102:No)には、制御部43は、ステップS104の処理を実行する。
【0040】
ステップS104において、制御部43は、サイクルタイム取得部として、サイクルタイムの取得を行う。サイクルタイムの取得は、検出部10から出力される検出信号の出力される時間間隔の計時の結果を本体部202から受信することによって行われている。制御部43によって取得されたサイクルタイムは、記憶部42に記憶される。なお、サイクルタイムの取得は、計時の結果を用いずに、検出部10から出力される検出信号に含まれる時間情報を用いて取得されてもよい。ステップS104の処理の後に、制御部43は、ステップS106の処理を実行する。
【0041】
ステップS106の処理において、制御部43は、生産個数の取得を実行する。生産個数の取得は、検出部10から出力される検出信号の計数の結果を本体部202から受信することによって行われている。制御部43によって取得された生産数は、記憶部42に記憶される。ステップS106の後に、制御部43は、再びステップS102の処理を実行する。これにより、制御部43は、終了条件が満たされるまで、ステップS104とステップS106の処理を繰り返す。
【0042】
図6は、処理部40において実行される可動率の算出処理を示すフローチャートである。算出処理により、処理部40は、図5に示した取得処理によって取得されたサイクルタイムおよび生産個数を用いて、生産情報として可動率を算出する。算出処理は、例えば、予め定められた時刻、具体的には例えば第1生産施設80Aにおいて設定した終業時刻なると開始される。算出処理が開始されると、処理部40の制御部43は、ステップS202の処理を開始する。
【0043】
ステップS202の処理において、制御部43は、製造ラインL1、L2において取得されるサイクルタイムから外れ値を除くための閾値の算出を実行する。具体的には、制御部43は、図5のステップS104で取得されたサイクルタイムから統計的手法により算出される統計値を用いて閾値を算出する。統計値を用いることにより、閾値が客観的に決定される。ステップS104で取得されたサイクルタイムは、記憶部42に記憶されている。制御部43は、例えば、ステップS104で取得されたサイクルタイムの統計値である最頻値や中央値を用いて、閾値を算出する。具体的には、閾値は、例えば最頻値や中央値の定数倍に設定される。より具体的には、閾値は、最頻値や中央値の2倍や3倍等の予め定めた定数倍に設定される。最頻値や中央値は、他の統計値(例えば平均値)と比べて故障等によるサイクルタイムの遅延等による影響を受けない。閾値の算出に用いられるサイクルタイムは、算出処理が実行される当日分、始業時間から就業時間までの間に取得されたサイクルタイムである。本実施形態では、制御部43は、ステップS104で取得されたサイクルタイムの最頻値の2倍を閾値として算出する。ステップS202の処理の後に、制御部43は、ステップS204の処理を実行する。
【0044】
ステップS204の処理として、制御部43は、ステップS202で算出された閾値を用いて、取得されたサイクルタイムから外れ値の除外を実行する。制御部43は、最頻値の2倍以上のサイクルタイムを外れ値として除外する。外れ値は、例えば、製品を繰り出すのに要する時間に加えて停止時間を含むデータである。外れ値が除外された後の処理後サイクルタイムは、記憶部42に記憶される。ステップS204の処理の後に、制御部43は、ステップS206の処理を実行する。
【0045】
ステップS206の処理として、制御部43は、平均サイクルタイムを算出する。平均サイクルタイムは、ステップS204の処理で取得された処理後サイクルタイムの平均値である。これにより、生産設備30の停止等の異常によるサイクルタイムの遅延が算出される平均サイクルタイムの値に反映されることを抑制できる。ステップS208の処理の後に、制御部43は、ステップS208の処理を実行する。
【0046】
ステップS208の処理として、制御部43は、製造ラインL1、L2における可動時間の算出を実行する。可動時間とは、生産設備30a~30dが実際に運転された時間である。本実施形態において、可動時間は、下記の式(1)によって算出される。
可動時間=生産個数×平均サイクルタイム・・・(1)
生産個数には、算出処理が実行される当日分、始業時間から就業時間までに取得された計数の結果が用いられる。式(1)を用いて可動時間を算出する場合には、可動時間に停止時間が含まれることが抑制される。また、可動率の算出に平均サイクルタイムを用いるため、可動率の算出に主観的な要素が入ることが抑制される。ステップS208の処理の後に、制御部43は、ステップS210の処理を実行する。
【0047】
ステップS210の処理において、制御部43は、生産情報算出部として、製造ラインL1、L2における可動率の算出を実行する。可動率とは、運転の要求に応じて、生産設備30a~30dが実際に動くことができた割合である。本実施形態において、可動率は、下記の式(2)によって算出される。
可動率=可動時間÷(稼働時間-計画停止時間)×100・・・(2)
稼働時間は、記憶部42に記憶されている、生産施設80Aにおける始業時間と終業時間と休憩時間とを用いて算出される。計画停止時間は、記憶部42に記憶されている予め設定されている保守や点検の予定を用いて算出される。稼働時間から計画停止時間を引いた時間は、製造ラインにおける製品の生産が要求される要求時間を示している。算出された可動率は、記憶部42に記憶される。ステップS210が完了すると、算出処理は終了される。
【0048】
図7は、処理部40において実行される参照情報の生成処理のフローチャートである。生成処理は、複数の生産施設80に設けられた製造ラインの各々について適宜実行される。生成処理において、制御部43は、参照生成部として機能する。参照情報は、評価対象となっている第1生産施設80Aの製造ラインL1、L2の生産状況を示す情報である。本実施形態において、参照情報は、複数の生産施設80のそれぞれについての可動率である。参照情報の生成処理が開始されると、ステップS302の処理を実行する。
【0049】
ステップS302の処理として、制御部43は、参照サイクルタイムの取得を実行する。参照サイクルタイムは、評価対象となる第1生産施設80A以外の生産施設80、例えば第2生産施設80Bにおけるサイクルタイムである。参照サイクルタイムは、各生産施設80に設けられた複数の生産管理装置20のそれぞれによって取得された計時の結果に応じて、取得される。取得された参照サイクルタイムは、記憶部42に記憶されている。取得の手順は、図5の取得処理と同一の手順で行われる。ステップS302の処理の後に、制御部43は、ステップS304の処理を実行する。
【0050】
ステップS304の処理として、制御部43は、参照可動時間の算出を実行する。参照可動時間は、評価対象となる第1生産施設80A以外の生産施設80における可動時間である。算出方法は、ステップS204における第1生産施設80Aにおける可動時間の算出方法と同一の算出方法(式(1))が用いられる。また、参照可動時間の算出の際に用いる参照サイクルタイムの平均値の算出も同様の手順で行われる。つまり、参照可動時間の算出には、統計値を用いて算出された閾値以上の参照サイクルタイムが用いられる。参照サイクルタイムから外れ値を除外するための閾値は、例えばステップS202(図6)における閾値と同様に、参照サイクルタイムの中央値や最頻値の定数倍に設定される。本実施形態において、制御部43は、ステップS304の処理において、参照サイクルタイムの最頻値の2倍を閾値として算出する。また、予め定められた期間である始業時間から就業時間までの期間の参照サイクルタイムが用いられる。ステップS304の処理の後に、制御部43は、ステップS306の処理を実行する。なお、ステップS304の処理における参照可動時間の算出方法は、ステップS202からステップS208までの一連の処理において用いられる算出方法と厳密に同一である必要はない。例えば、S304の処理で用いられる閾値は、参照サイクルタイムの最頻値の1.5倍等の2倍以外の定数倍であってもよい。
【0051】
ステップS306の処理として、制御部43は、参照可動率を算出する。参照可動率は、評価対象となる第1生産施設80A以外の生産施設80における可動率である。算出方法は、ステップS206における第1生産施設80Aにおける可動率の算出方法と同一の算出方法(式(2))が用いられる。算出された参照可動率は、データベース50に格納される。ステップS306の処理が完了すると、制御部43は、生成処理を一旦終了した後に、他の生産施設80について構築処理を再度実行する。図7の生成処理が繰り返されることによって、複数の参照可動率を記憶するデータベース50が構築される。データベース50に複数の参照可動率が集積されることによって、データベース50に記憶された参照可動率の、製造ラインにおける可動率の相場を示すデータとしての信頼性が向上する。
【0052】
図8は、処理部40において実行される生産状況の評価処理のフローチャートである。評価処理では、評価対象となる第1製造ラインL1の可動率と、第1生産施設80A以外の生産施設80の製造ラインの可動率(参照可動率)とを比較することによって、第1生産施設80Aの生産状況に関する評価結果が利用者に提供される。
【0053】
ステップS402の処理において、制御部43は、評価対象である第1製造ラインL1における可動率の取得を実行する。この可動率は、図6の算出処理において算出された可動率を記憶部42から読み込むことによって取得される。ステップS402の処理の後に、制御部43は、ステップS404の処理を実行する。
【0054】
ステップS404の処理において、制御部43は、参照情報取得部として、データベース50に記録されている参照可動率の取得を実行する。取得される参照可動率は、データベース50に記録された参照可動率のうちから予め設定された条件を用いて選択された複数の参照可動率である。予め設定された条件とは、例えば、時間的な条件や環境的な条件を含む。本実施形態において、環境的な条件として、第1製造ラインL1において生産される製品と同一または類似の製品を生産していることが設定されている。これにより、利用者は、同業種内における第1製造ラインL1の生産状況を知ることができる。また、時間的な条件として、繁忙期または閑散期に該当する時期のみを用いる、もしくは繁忙期や閑散期に該当する時期を除くことを設定してもよい。ステップS404では、データベース50に予め記憶された参照情報を取得するため、取得の度に参照情報を算出する場合と比べて、参照情報を取得が容易である。ステップS404の処理の後に、制御部43は、ステップS406の処理を実行する。
【0055】
ステップS406の処理において、制御部43は、評価対象となる第1製造ラインL1における可動率と参照可動率との比較を実行する。本実施形態では、制御部43は、第1生産施設80Aの可動率と複数の参照可動率の中央値との差を算出することによって、比較を実行する。複数の参照可動率の中央値は、製造ラインの可動率の相場を示す値である。ステップS406の処理の後に、制御部43は、ステップS408の処理を実行する。なお、制御部43は、中央値に代えて、平均値や最頻値を製造ラインの可動率の相場を示す値として用いてもよい。また例えば、制御部43は、複数の参照可動率と比較した場合における第1生産施設80Aの可動率の偏差値の算出によって、比較を実行してもよい。
【0056】
ステップS408の処理として、制御部43は、評価結果の提供を実行する。制御部43は、利用者への評価結果の提供ために、生産管理装置20および表示装置601~604にステップS406の結果の送信を、送受信部41に実行させる。これにより、評価部としての制御部43から評価結果が生産管理装置20および表示装置601~604に出力される。生産管理装置20の利用者は、本体部202Aや表示装置601~604を介して、生産管理システム100からの評価結果の提供を受けることができる。ステップS408の処理が完了すると、評価処理は終了する。
【0057】
図9は、第1実施形態において提供される評価結果の第1の例を示す図である。図10に示す様に、本実施形態では、参照可動率の確率分布201が示されている。図10では、確率分布に加えて、参照可動率の中央値201Cと、確率分布における第1製造ラインL1の可動率201Rと、が示されている。第1製造ラインL1の可動率201Rは実線で示され、第1製造ラインL1の可動率201Rよりも小さい領域は斜線で示されている。図9において、縦軸は分布の確率の大きさを示し、横軸は可動率の大きさを示している。
【0058】
図9の例において、第1生産施設80Aの可動率は、参照可動率の中央値201Cよりも小さい。具体的には、参照可動率の中央値201Cが可動率65%であるのに対して、第1生産施設80Aの可動率201Rは、50%である。このため、第1生産施設80Aの生産状況は、他の生産施設80と比べて低いことがわかる。例えば、この場合において、利用者は、可動率201Rを向上させることにより、つまり新たに製造ラインを設ける等の設備投資をすることなく生産量を増大させることができると判断することができる。
【0059】
図10は、第1実施形態において提供される評価結果の第2の例を示す図である。図10では、確率分布に加えて、参照可動率の中央値201Cと、確率分布における第1生産施設80Aの可動率201Rと、が示されている。図10において、縦軸は分布の確率の大きさを示し、横軸は可動率の大きさを示している。
【0060】
図10の例において、第1生産施設80Aの可動率は、参照可動率の中央値201Cよりも大きい。具体的には、参照可動率の中央値201Cが可動率65%であるのに対して、第1生産施設80Aの可動率201Rは、80%である。例えば、この場合において、利用者は、第1生産施設80Aの可動率201Rが他の生産設備と比べて高いため、新たに製造ラインを設ける等の設備投資をしなければ生産量を増大させることが困難であると判断することができる。
【0061】
以上説明した第1実施形態によれば、生産管理装置20は、評価対象となる製造ライン、例えば第1製造ラインL1の生産状況を示す生産情報と、他の製造ラインの生産状況を示す参照情報と比較することによって、評価対象となる製造ラインの生産状況を評価できる。したがって、生産管理装置20は、他の製造ラインを参照して第1製造ラインL1の生産状況を客観的に評価することができる。例えば、利用者は、生産管理装置20を用いることにより、評価対象となる第1製造ラインL1の生産状況が、他の製造ラインと比べて、優れているのか否かを知ることができる。さらに、第1実施形態では、複数の製造ラインから取得された参照情報を参照することができる。このため、参照情報に生じる偏りが低減される。したがって、生産管理装置20による製造ラインの評価の信頼性を高めることができる。
【0062】
また以上説明した第1実施形態によれば、生産情報および参照情報は、それぞれの製造ラインL1~L3の可動率である。可動率は、各製造ラインにおける要求時間を最大とした比率であるため、サイクルタイムの大きさや稼働時間の長さ等の種々の条件が異なる製造ライン間であっても、比較に用いることができる。このため、生産情報と参照情報とを比較する際に、値の大きさの程度を合わせる前処理、例えば標準化が不要である。また、生産情報および参照情報は、同一の算出方法を用いて算出されている。このため、生産情報と参照情報との比較が容易である。また、比較結果の信頼性が高い。
【0063】
また以上説明した第1実施形態によれば、生産情報である可動率を算出するために、稼働の予定に応じて予め定められた期間におけるサイクルタイムが用いられている。実施形態では、予め定められた期間において、始期は始業時間であり、終期は終業時間である。このため、サイクルタイムが取得される期間が可動率の算出の度に変化することを抑制できるので、可動率の値にばらつきが生じることを低減できる。さらに本実施形態では、予め定められた期間の始期が始業時間であるため、評価の際に、始業後に実際に製造ラインL1、L2が稼働するまでに要する時間の損失を考慮できる。また、予め定められた期間の終期が終業時間であるため、終業後、つまり残業時間におけるサイクルタイムを除外することができる。残業時間では、作業者が残業の終了時刻を加味して作業効率を変化させる場合等により、通常とは異なる生産状況となる傾向がある。このため、残業時間におけるサイクルタイムによって生産状況が正しく評価されなくなることが抑制される。
【0064】
また以上説明した第1実施形態によれば、生産管理装置20の検出部10は、評価対象となる製造ライン(例えば第1製造ラインL1)だけでなく、参照情報が取得される製造ライン(例えば第3製造ラインL3)にも配置されている。このため、参照情報の算出に用いられる製造ラインにおいて取得される参照サイクルタイムは、評価対象となる製造ラインと同様に、生産管理装置20の検出部10によって出力される検出信号に応じて取得される。これにより、評価対象となる製造ラインにおけるサイクルタイムと参照サイクルタイムとの取得の方法にばらつきが低減できる。したがって、生産情報と参照情報との比較が容易なる。
【0065】
また以上説明した第1実施形態によれば、評価対象となる製造ラインL1における生産状況の評価の基準として製造ラインL1とは異なる製造ラインから取得された参照情報を用いている。このため、製造ラインL1に関する生産情報が少ない、例えば1日分の情報のみである場合であっても、生産状況の評価が可能である。このため、生産管理装置20の利用者は、過去に生産状況が管理されていなかった製造ラインL1に対する評価を容易に行うことができる。さらに、本実施形態では、検出部10は、生産設備30の設置の後に取り付けることが可能である。このため、生産管理装置20の利用者は、新たに生産状況の管理が必要となった既存の製造ラインに対しても、生産管理装置20を用いた生産状況の評価を迅速に行うことができる。これにより、生産管理装置20の利用者は、例えば、生産管理装置20を、今まで生産管理が行われていなかった生産施設80の生産状況の改善の余地の有無の判断する手段として利用できる。
【0066】
また例えば、生産管理装置20の利用者は、生産管理装置20を、M&A等を行う際において、今まで生産管理が行われていなかった生産施設80の価値を評価するため基準の算出手段として利用できる。具体的には、例えば、現在の収益が低い生産施設80であっても、現在の可動率が低い場合には、生産管理装置20の利用者は、可動率を向上させることにより生産施設80の収益を増やすことが可能であると判断できる。この場合には、現在の収益が低い場合であっても、利用者は、生産施設80の潜在的な価値を高いと評価できる。一方、例えば、現在の収益が高い生産施設80であっても、現在の可動率が高い場合には、生産管理装置20の利用者は、生産施設80の収益を増やすためには設備投資等が必要であると判断できる。この場合には、現在の収益が高い場合であっても、利用者は、生産施設80の潜在的な価値をあまり高くないと判断することができる。なお、M&Aは、Merger And Acquisitionの略である。
【0067】
B.第2実施形態
第2実施形態に係る生産管理システム100は、第1実施形態に係る生産管理システム100と同様の構成を有し、生産管理装置20によって実行される生産状況の評価の方法においてのみ、第1実施形態と異なる。第2実施形態では、第1実施形態と同様に、取得処置(図5)と算出処理(図6)と生成処理(図7)とが実行される。第2実施形態では、評価処理において、生産状況の評価の指標として労務費を用いて製造ラインL1の評価できる。以下では、第1実施形態と同様の構成については、同様の符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0068】
本実施形態において、処理部40の記憶部42は、各製造ラインL1~L3における労務費に関する情報を記憶している。労務費は、各製造ラインL1~L3において製品を生産するために必要な人件費である。また、記憶部42は、各製造ラインL1~L3における残業時間に関する情報を記憶している。
【0069】
図11は、第2実施形態の処理部40において実行される評価処理のフローチャートである。評価処理が開始されると、制御部43は、評価対象である第1製造ラインL1における可動率の取得を実行する(ステップS402)。次に、制御部43は、データベース50に記録されている参照可動率の取得を実行する(ステップS404)。ステップS404の後に、制御部43は、評価対象となる第1製造ラインL1における可動率と参照可動率との比較を実行する(ステップS406)。ステップS406の後に、制御部43は、ステップS407の処理を実行する。
【0070】
ステップS407の処理として、制御部43は、ステップS406の比較の結果、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好であるか否かの判定を実行する。本実施形態において、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好であるか否かの判定は、参照可動率の中央値が第1製造ラインL1の可動率より大きいか否かに応じて行われる。具体的には、参照可動率の中央値が第1製造ラインL1の可動率より大きい場合には、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好であると判定する、一方、具体的には、参照可動率の中央値が第1製造ラインL1の可動率以下である場合には、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好ではないと判定する。ステップS407の判定の結果、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好ではない場合(ステップS407:No)には、制御部43は、評価結果の提供を実行する(ステップS408)。ステップS407の判定の結果、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好である場合(ステップS407:Yes)には、制御部43は、ステップS410の処理を実行する。
【0071】
ステップS410の処理として、制御部43は、第1製造ラインL1の推定労務費の算出を実行する。推定労務費の算出では、まず、労務費と生産状況との関係を示す労務情報を算出する。労務情報は、例えば、可動率と残業時間との関係を示す情報を含む。労務情報は、例えば、1日当たりの目標とする生産個数と終業時間までの生産個数とに応じて算出される目標達成率や、第1製造ラインL1における残業時間や、残業代を用いて、算出される。推定労務費は、第1製造ラインL1の可動率を参照可動率の中央値に置き換えた場合に想定される労務費である。例えば、労務費として直接労務費を用いる場合には、第1製造ラインL1の可動率が向上することによって残業時間が減少する場合には、減少する残業時間の分だけ現在の労務費より小さい値が推定労務費として算出される。ステップS410の処理の後に、制御部43は、ステップS412の処理を実行する。
【0072】
ステップS412の処理において、制御部43は、評価結果の結果としてステップS406の結果に加えて想定労務費を提供する。制御部43は、利用者への評価結果および想定労務費の提供ために、生産管理装置20および表示装置601~604にステップS406の結果およびステップS410の結果の送信を、送受信部41に実行させる。ステップS412の処理が完了すると、評価処理は終了する。なお、制御部43は、ステップS412の処理において、さらに想定労務費と現在の労務費との差等の情報を提供してもよい。
【0073】
以上説明した第2実施形態によれば、生産管理装置20は、参照可動率が第1製造ラインL1の可動率より良好である場合には、想定労務費を提供することができる。このため、生産管理装置20は、利用者に対して、生産状況が向上した場合における利益を具体的に示すことができる。このため、生産管理装置20の利用者は、想定労務費に応じて、評価対象となった製造ラインの生産状況を判断することができる。これにより、生産管理装置20の利用者は、具体的なイメージを持って製造ラインの生産状況を判断できるので、製造ラインの価値等を容易に判断できる。
【0074】
C.他の実施形態
C1.第1の他の実施形態
本実施形態において、生産情報および参照情報としての可動率は、式(1)と式(2)とを用いて算出されているが、これに限定されない。例えば、可動率は、他の計算方法によって算出されていてもよい。また、生産情報および参照情報は、可動率に限定されない。生産情報および参照情報は、製造ラインの生産状況を示す情報であればよく、例えば、標準化したサイクルタイムの平均値や、やる気指数や、停止指数等の種々の評価指標を用いることができる。
【0075】
やる気指数は、製造ラインの現実の生産能力と生産能力の理論上の限界との差を示す。製造ラインの生産能力が生産能力の理論上の限界に近いほど、やる気指数の値が小さくなる。このため、製造ラインの生産状況が良好であるほど、やる気指数が小さくなる。やる気指数は、下記の式(3)を用いて算出される。
やる気指数=(CT最頻値-設備限界値)/CT最頻値 ・・・(3)
CT最頻値は、製造ラインにおけるサイクルタイムの最頻値である。設備限界値は、製造ラインに設けられた生産設備30の生産能力の理論的な限界によって決まるサイクルタイムの最小値である。
【0076】
停止指数は、製造ラインにおける停止が生産の遅れに与えている影響の度合いを示す。停止指数が小さいほど、製造ラインにおける停止が生産の遅れに与えている影響の度合いが小さい。このため、製造ラインの生産状況が良好であるほど、停止指数が小さくなる。停止指数は、下記の式(4)を用いて算出される。
停止指数=(CT平均値-CT最頻値)/CT平均値 ・・・(4)
CT平均値は、製造ラインにおけるサイクルタイムの平均値である。なお、CT平均値の算出に用いられるサイクルタイムからは外れ値が除外されていない。このため、CT平均値には、生産設備30の停止の影響が反映されている。
【0077】
C2.第2の他の実施形態
上記実施形態において、閾値は、最頻値や中央値を用いて算出されているが、これに限定されない。統計的手法によって算出される他の統計値、例えば平均値や標準偏差を用いて算出してもよい。具体的には、例えば平均値に標準偏差の2倍を加えることによって算出してもよい。また、例えば、閾値の算出には、統計的手法によって算出された値が用いられていなくてもよい。具体的には、例えば、利用者が経験的に決定してもよい。また、閾値は、設定されていなくてもよい。外れ値は、閾値を用いて除外されているが、これに限定されない。例えば、取得されたサイクルタイムのうち大きな値である上位2%を除外する等、閾値を用いない方法で外れ値が除外されてもよい。
【0078】
また、閾値をサイクルタイムの最頻値や中央値の定数倍とする場合において、定数の具体的な値は、サイクルタイムの大きさに応じて変更されてもよい。例えば、サイクルタイムの最頻値が小さい場合には、第1実施形態と同様に閾値を最頻値の2倍としてもよい。一方、サイクルタイムの最頻値が大きい場合には、閾値を最頻値の2倍より小さい最頻値の1.1倍に設定してもよい。サイクルタイムの最頻値が小さい場合とは、例えば、サイクルタイムの最頻値が1分以下である等、停止した生産設備30の点検に想定される時間より小さい場合である。サイクルタイムの最頻値が大きい場合とは、例えば、サイクルタイムの最頻値が30分以上である等、停止した生産設備30の点検に想定される時間より十分に大きい場合である。サイクルタイムが大きい製造ラインでは、停止した生産設備30の点検に要する時間がサイクルタイムと比べて短い場合がありうる。このため、サイクルタイムの最頻値が比較的大きい場合に、閾値を最頻値の2倍より小さい最頻値に設定することにより、閾値より小さいサイクルタイムに停止を含むサイクルタイムが含まれることを抑制できる。また例えば、サイクルタイムが10秒以下である等、停止等への対応に要する時間と比べてサイクルタイムが十分に小さい場合には、閾値は、統計値を用いることなく、20秒等の予め定めた長さの時間に設定されてもよい。このように、サイクルタイムの長さに応じて閾値の算出方法を変化させる場合には、記憶部42は、サイクルタイムの大きさと閾値の算出方法との関係を示すテーブルや、関数式を記憶していてもよい。
【0079】
C3.第3の他の実施形態
上記実施形態において、生産情報や参照情報の算出のために用いられるサイクルタイムは、それぞれの製造ラインにおける就業時間に応じて予め定められた期間のサイクルタイムであるが、これに限定されない。例えば、予め定められた期間は、就業時間とは関係なく、生産設備30aの電源がオンになっている期間を用いてもよい。この場合には、期間の始期は、始業時間と異なる場合がある。また、期間の終期は、終業時間とは異なる場合がある。
【0080】
また、評価対象となる製造ラインのサイクルタイムは、一日分の就業時間に満たない期間に取得されたサイクルタイムであってもよい。この場合であっても、可動率等の生産情報の算出は可能である。この場合には、生産情報を算出するために要する時間を短くできる。
【0081】
C4.第4の他の実施形態
上記実施形態では、複数の生産施設80に設けられた製造ラインを比較の対象としているが、例えば、モデルとなる1つの製造ラインとの比較を行ってもよい。また、平均的な製造ラインとして設定された仮想の製造ラインを基準として用いてもよい。
【0082】
C5.第5の他の実施形態
上記実施形態において、処理部40は、複数の生産管理装置20で共通して用いられているが、これに限定されない。例えば、それぞれ別に処理部40を有していてもよい。この場合には、処理部40間で情報の共有が可能であってもよい。
【0083】
また、処理部40は、本体部202の内部に設けられていてもよい。この場合には、生産管理装置20は、情報伝達の経路にインターネットINTを含まないオフラインによる動作が可能な装置であってもよい。また、処理部40は、本体部202とイントラネットとを介して接続されていてもよい。これらの場合には、データベース50は、別のシステムで作られた後に、処理部40に記憶されてもよい。また、データベース50のみがインターネットINTを介したサーバ上に構築されていてもよい。この場合には、生産管理装置20は、必要に応じて、データベース50から参照情報を取得して、評価処理を実行してもよい。
【0084】
C6.第6の他の実施形態
上記第2実施形態において、生産管理装置20は、生産状況の評価結果として、推定労務費を提供しているが、これに限定されない。例えば、生産管理装置20は、推定労務費に代えて、若しくは加えて、生産状況によって変化し得る種々の費用を提供してもよい。例えば、生産管理装置20は、1つの製品あたりの労務費を算出し、提供してもよい。
【0085】
C7.第7の他の実施形態
上記実施形態において、検出部10は、生産設備30に後付けされたセンサ11を有しているが、これに限定されない。例えば、検出部10は、生産設備30に予め設けられたセンサを用いて検出信号を取得してもよい。
【0086】
C8.第8の他の実施形態
上記実施形態において、生産管理システム100は、生産管理装置20から出力される製造ラインの評価結果を、生産管理装置20の表示部24や表示装置601~604に表示することによって利用者に提供しているが、評価結果の提供方法はこれに限定されない。例えば、生産管理システム100は、表示装置601~604に代えて、もしくは加えて、プリンター等の印刷装置を情報提供装置として有してもよい。この場合には、評価結果は、紙等の印刷媒体に印刷されることによって利用者に提供されてもよい。また例えば、生産管理システム100は、情報提供装置としてスマートスピーカ等の音声による情報提供が可能な装置を有していてもよい。この場合には、評価結果は、音声によって利用者に提供されてもよい。
【0087】
以上説明した第1から第8の他の実施形態であっても、上記第1実施形態および第2実施形態と同様の構成を有する点において、同様の効果を奏する。
【0088】
本開示は、上述の実施形態に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態中の技術的特徴は、上述の課題の一部または全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行なうことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
INT…インターネット、L1~L3…製造ライン、10、10a~10f…検出部、11…センサ、12…コントロール部、13…送受信部、20、20A、20B…生産管理装置、21…CPU、22…記憶部、23…送受信部、24…表示部、25…入力部、30、30a~30f…生産設備、31…搬送機構、40…処理部、41…送受信部、42…記憶部、43…制御部、50…データベース、61…情報表示部、70…通信装置、80、80A、80B…生産施設、100…生産管理システム、112…磁石、201…確率分布、201C…中央値、201R…可動率、202、202A、202B…本体部、211…取得部、212…計数部、213…計時部、301…開閉ドア、601~604…表示装置、L1…第1製造ライン、L2…第2製造ライン、L3…第3製造ライン、PW…製品
図1
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