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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】電動ファン付き衣服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/002 20060101AFI20240131BHJP
   A41D 13/015 20060101ALI20240131BHJP
   A41D 27/26 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A41D13/002 105
A41D13/015 108
A41D27/26 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019199268
(22)【出願日】2019-10-31
(65)【公開番号】P2021070892
(43)【公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-10-18
(73)【特許権者】
【識別番号】000156307
【氏名又は名称】株式会社TJMデザイン
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100154003
【弁理士】
【氏名又は名称】片岡 憲一郎
(72)【発明者】
【氏名】小野 隆
(72)【発明者】
【氏名】小野塚 翔
【審査官】山尾 宗弘
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-055223(JP,A)
【文献】特開2017-101354(JP,A)
【文献】特開平11-315406(JP,A)
【文献】特開2000-144507(JP,A)
【文献】特開2019-173263(JP,A)
【文献】登録実用新案第3180608(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D 13/002
A41D 13/015
A41D 27/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
身体の少なくとも胴体を覆う服本体と、前記服本体に装着されて前記服本体の内部に外気を導入する電動ファンと、を備えた電動ファン付き衣服であって、
前記服本体の内側に、
前記胴体の背中部分に配置される背当て部と、
それぞれ前記背当て部に連ねて設けられ、前記胴体の肩部分に配置される一対の肩当て部と、を備えた通気パッドが配置されており、
前記通気パッドが、多数の隙間を内包するクッション状に形成された第1通気材と、多数の隙間を内包するとともに前記第1通気材よりも柔軟なクッション状に形成された第2通気材と、を有する2層構造であることを特徴とする、電動ファン付き衣服。
【請求項2】
それぞれの前記肩当て部が、前記背当て部からの延出方向を調整可能に構成されている、請求項1に記載の電動ファン付き衣服。
【請求項3】
前記服本体の外側面に、肩部分に掛けられた帯状部材を肩幅方向に保持可能な保持部が設けられている、請求項1または2に記載の電動ファン付き衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動ファン付き衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場等において作業者が上半身に着用する作業服などの衣服として、身体の少なくとも胴体を覆う服本体と、服本体に装着されて服本体の内部に外気を導入する電動ファンと、を備えた電動ファン付き衣服が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
電動ファン付き衣服を着用し、電動ファンを作動させると、電動ファンにより服本体の内部に外気が導入され、当該外気は服本体と身体との間を通って袖口や襟口等から外部に排出される。これにより、服本体の内部の空気を換気するとともに、服本体と身体との間で流通する空気により身体から出た汗等の蒸発を促進して、身体に清涼感を与えることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6545543号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高所で作業をする作業者には、転落事故を防止するために、安全帯の着用が義務付けられている。安全帯としては、身体の肩部分と大腿部とに亘ってベルト部を掛け渡す構成を有する、所謂フルハーネス型の安全帯が多く用いられている。
【0006】
しかし、電動ファン付き衣服の上からフルハーネス型の安全帯を装着すると、肩部分に掛け渡される安全帯によって服本体と身体との間の空気の流通路が塞がれ、これにより服本体の内部での空気の流れが妨げられて清涼感が損なわれてしまう、という問題点があった。
【0007】
このような問題点に対し、特許文献1に記載されるように、フルハーネス型の安全帯の上から電動ファン付き衣服を着用する方法が提案されている。しかし、この着用方法では、安全帯を着脱する際に、電動ファン付き衣服も着脱する必要があるため、その着脱作業が煩雑になるという問題点があり、また、服本体として、背中部分に命綱(ランヤード)を通すための開口部を有するものを用いる必要がある。
【0008】
また、現場監督等の管理者の立場としては、作業者がフルハーネス型安全帯の上から電動ファン付き衣服を着用すると、フルハーネス型安全帯を適切に装着していることを目視で確認することができず好ましくないなど、種々の問題が生じることになる。
【0009】
本発明は、このような課題を鑑みてなされたものであり、その目的は、フルハーネス型の安全帯を上から着用しても清涼感を維持することが可能な電動ファン付き衣服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の電動ファン付き衣服は、身体の少なくとも胴体を覆う服本体と、前記服本体に装着されて前記服本体の内部に外気を導入する電動ファンと、を備えた電動ファン付き衣服であって、前記服本体の内側に、前記胴体の背中部分に配置される背当て部と、それぞれ前記背当て部に連ねて設けられ、前記胴体の肩部分に配置される一対の肩当て部と、を備えた通気パッドが配置されており、前記通気パッドが、多数の隙間を内包するクッション状に形成された第1通気材と、多数の隙間を内包するとともに前記第1通気材よりも柔軟なクッション状に形成された第2通気材と、を有する2層構造であることを特徴とする。
【0011】
本発明の電動ファン付き衣服は、上記構成において、それぞれの前記肩当て部が、前記背当て部からの延出方向を調整可能に構成されているのが好ましい。
【0012】
本発明の電動ファン付き衣服は、上記構成において、前記服本体の外側面に、肩部分に掛けられた帯状部材を肩幅方向に保持可能な保持部が設けられているのが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、フルハーネス型の安全帯を上から着用しても清涼感を維持することが可能な電動ファン付き衣服を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施の形態である電動ファン付き衣服の正面図である。
図2図1に示す電動ファン付き衣服の背面図である。
図3図1に示す電動ファン付き衣服の内側を示す図である。
図4図1に示す通気パッドを単体で示す図である。
図5図4におけるA-A線に沿う断面図である。
図6】肩部分における通気パッドの装着状態を示す説明図である。
図7図1に示す電動ファン付き衣服の、上からフルハーネス型の安全帯が装着された状態の正面図である。
図8図1に示す電動ファン付き衣服の、上からフルハーネス型の安全帯が装着された状態の背面図である。
図9】変形例の通気パッドを単体で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しつつ本発明をより具体的に例示説明する。
【0016】
図1図2に示すように、本発明の一実施の形態である電動ファン付き衣服1は、服本体10を有している。
【0017】
服本体10は、着用者2の身体の少なくとも胴体を覆う形状に形成されている。本実施の形態では、服本体10は、袖の無いベスト型に形成された作業服となっている。
【0018】
より具体的には、服本体10は、前身頃11、後ろ身頃12及び襟部分13を有しており、これらが縫製されて構成されている。前身頃11には、上下方向に延びるファスナー14が設けられており、ファスナー14を開くことで前身頃11の右側部分11aと左側部分11bとを分離して左右に開くことができる。図3に示すように、前身頃11と後ろ身頃12との間には、着用者2の腕を通すための左右一対の開口(袖口)15が設けられている。
【0019】
服本体10は、通気性の小さな布地または通気性を有さないシート状の素材により形成されるのが好ましいが、他の素材で形成されてもよい。また、服本体10の下端部分に、当該部分からの空気漏れを防止するために、ゴム等の伸縮性を有する部材で構成されて腰部分に締付けられる部分を設けた構成とすることもできる。
【0020】
図2図3に示すように、後ろ身頃12の下方側部分の左右には、後ろ身頃12を内外に貫通する右側開口12a及び左側開口12bが設けられている。そして、服本体10のこれら右側開口12a及び左側開口12bの部分には、電動ファン20が装着されている。
【0021】
一対の電動ファン20は、それぞれ電動モータ21により駆動されて回転するファン22を有しており、ファン22が回転することで、右側開口12aないし左側開口12bを介して服本体10の外部の空気(外気)を服本体10の内部に導入することができる。詳細は図示しないが、電動ファン20は、電動モータ21に電力を供給するバッテリ(電源)、電動モータ21の作動を制御する制御装置及び電動モータ21のオン・オフを切り替えるためのスイッチ等を備えている。
【0022】
なお、電動ファン20の構成は上記に限らず、服本体10に装着されて服本体10の内部に外気を導入することができるものであれば、その構成は種々変更可能である。また、本実施の形態では、服本体10に2つの電動ファン20を装着した構成としているが、服本体10に少なくとも1つの電動ファン20が設けられていればよい。
【0023】
図1図2に示すように、服本体10の内側には通気パッド30が配置されている。
【0024】
図4図5に示すように、通気パッド30は、背当て部31と、一対の肩当て部32とを有し、全体として略Y字の形状となっている。背当て部31は、服本体10の後ろ身頃12の内側に装着されており、着用者2が服本体10を着用したときに、着用者2の胴体の背中部分に配置される。一方、一対の肩当て部32は、それぞれ背当て部31に連なっており、着用者2が服本体10を着用したときに、着用者2の胴体の肩部分に沿って配置されるようになっている。
【0025】
通気パッド30の背当て部31と一対の肩当て部32は、何れも、所定の厚みを有しており、服本体10と着用者2の胴体との間に配置された状態において、電動ファン20により服本体10の内部に導入された空気が通過することが可能な程度の通気性を有している。また、通気パッド30は、フルハーネス型安全帯等のベルト部材によって押されても、電動ファン20が服本体10の内部に導入した空気が通過することができる程度の通気性を確保できる程度の剛性を有している。
【0026】
本実施の形態では、通気パッド30は、表裏2層となるように重ねて配置された第1通気材33及び第2通気材34を、通気性を有する一対のメッシュ状のカバー布35で表裏から覆い、これらカバー布35の周縁部を縫製して一体化した構成を有している。
【0027】
第1通気材33としては、ポリオールエステル樹脂(POE)により、ランダムに曲がる線状に形成された線状部材を多数纏めることで、多数の隙間を内包するクッション状に形成されたものが用いられている。
【0028】
また、第2通気材34としては、ポリエステル樹脂により、ランダムに曲がるとともに第1通気材33よりも細い線状に形成された線状部材を多数纏めることで、多数の隙間を内包するとともに第1通気材33よりも柔軟なクッション状に形成されたものが用いられている。
【0029】
このように、通気パッド30を、柔軟性の異なる第1通気材33と第2通気材34とを有する2層構造としたので、通気パッド30を厚み方向への押し潰しに対して所定の強度を有するとともに高い通気性を有する構成とすることができる。また、このような構成により、より剛性の高い第1通気材33により、通気パッド30に加わる荷重を支持して通気パッド30が押し潰されて通気性が低下することを抑制しつつ、より剛性の低い第2通気材34により通気パッド30の柔軟性を確保することができる。
【0030】
図5においては、第1通気材33と第2通気材34とを同一の厚みに示しているが、第1通気材33の厚みを第2通気材34の厚みよりも厚くした構成としてもよい。当該構成によれば、通気パッド30の通気性を維持しつつ、厚み方向への押し潰しに対する通気パッド30の強度を高めることができる。
【0031】
第1通気材33及び第2通気材34としては、通気性を有していれば、上記に限らず、スポンジ状のものや格子状のものなど、種々の構成のものを用いることができる。また、通気パッド30は、2層構造のものに限らず、単層構造としてもよく、3層以上の構造としてもよい。
【0032】
図4図5に示すように、背当て部31には、背当て部31を左右に横断するように真っ直ぐに延びる回動部31aが設けられている。回動部31aは、例えば、表裏のカバー布35を密に縫製することで第1通気材33及び第2通気材34の厚みを薄くして構成されたものとすることができる。背当て部31は、回動部31aにおいて容易に折れ曲がることができる。
【0033】
このように、背当て部31を、回動部31aにおいて容易に折れ曲がる構成としたことにより、図6に示すように、服本体10が着用者2の胴体に着用されたときに、着用者2の背中部分に沿って背当て部31が折れ曲がることができるようにして、通気パッド30の胴体の背中部分への装着感を高めることができる。
【0034】
同様に、図4図5に示すように、それぞれの肩当て部32には、長手方向に間隔を空けて複数の回動部32aが設けられている。本実施の形態では、それぞれ肩当て部32を横断するように真っ直ぐに延びる回動部32aが、肩当て部32に3本設けられている。これらの回動部32aは、例えば、表裏のカバー布35を密に縫製することで第1通気材33及び第2通気材34の厚みを薄くして構成されたものとすることができる。それぞれの肩当て部32は、回動部31aにおいて容易に折れ曲がることができる。3本の回動部32aは、背当て部31から離れる側ほど、背当て部31の回動部31aに対してより大きな角度で傾斜するように構成されている。
【0035】
このように、肩当て部32を、回動部32aにおいて容易に折れ曲がる構成としたことにより、図6に示すように、服本体10が着用者2の胴体に着用されたときに、着用者2の肩部分に沿って肩当て部32が折れ曲がることができるようにして、肩当て部32の胴体の肩部分への装着感を高めることができる。
【0036】
なお、回動部31a、32aは、表裏のカバー布35を密に縫製することで第1通気材33及び第2通気材34の厚みを薄くした構成に限らず、それぞれ第1通気材33及び第2通気材34を配置しないことで薄く形成された構成とすることもできる。
【0037】
一対の肩当て部32は、それぞれ背当て部31からの延出方向を調整可能に構成されるのが好ましい。本実施の形態では、背当て部31と一対の肩当て部32の間に調整部36を設け、調整部36を変形させることにより、それぞれの肩当て部32の背当て部31からの延出方向を肩幅方向(左右)に調整することができるようになっている。
【0038】
これらの調整部36は、表裏のカバー布35を、背当て部31と肩当て部32の間において所定の範囲で密に縫製し、第1通気材33及び第2通気材34の厚みを所定の範囲で薄くすることで、薄くて柔軟な板状に構成されている。一対の肩当て部32は、それぞれ調整部36が柔軟に変形することで、その背当て部31と連結される根元部分を中心として肩幅方向(左右方向)に回動することができる。これにより、一対の肩当て部32の背当て部31からの延出方向を肩幅方向(左右)に調整することができる。
【0039】
このように、本実施の形態の電動ファン付き衣服1では、一対の肩当て部32を、それぞれ背当て部31からの延出方向を調整可能な構成としたので、着用者2は、通気パッド30が取り付けられた服本体10を着用した後、調整部36を起点として肩当て部32を肩幅方向に動かして、自身の肩の線に適する位置に肩当て部32の肩幅方向の位置を調整することができる。これにより、肩当て部32の胴体の肩部分への装着感をさらに高めることができる。
【0040】
なお、調整部36は、表裏のカバー布35を所定の範囲で密に縫製することで第1通気材33及び第2通気材34の厚みを所定の範囲で薄くした構成に限らず、背当て部31と肩当て部32の間にそれぞれ所定の範囲で第1通気材33及び第2通気材34を配置しない部分を設けることで薄く形成された構成とすることもできる。
【0041】
また、調整部36は、肩当て部32の背当て部31からの延出方向を調整可能な構成であれば、その構成は種々変更可能である。例えば、通気パッド30を背当て部31と肩当て部32とが分離された構成とし、これらを紐状の部材や回動ピン等を用いて互いに連結することで、肩当て部32が背当て部31に対して回動することが可能な構成とすることもできる。
【0042】
図4に示すように、背当て部31には第1面ファスナー40が設けられている。第1面ファスナー40は細長い形状を有しており、背当て部31の幅方向の中央部において、上方から下方に向けて真っ直ぐに延びる姿勢で背当て部31に固定されている。
【0043】
また、肩当て部32の先端部分には、それぞれ第2面ファスナー41が設けられている。第2面ファスナー41は、それぞれ矩形形状に形成され、肩当て部32の最も先端側の回動部32aよりも先端側に固定されている。
【0044】
一方、図3に示すように、服本体10の後ろ身頃12には、第1面ファスナー40に接着可能な第3面ファスナー42が設けられている。第3面ファスナー42は、細長い形状を有しており、後ろ身頃12の幅方向の中央部において、上方から下方に向けて真っ直ぐに延びる姿勢で後ろ身頃12の内面に固定されている。背当て部31に設けられた第1面ファスナー40を、後ろ身頃12に設けられた第3面ファスナー42に接着させることで、背当て部31を服本体10の後ろ身頃12に着脱自在に装着することができる。
【0045】
なお、第3面ファスナー42の長さを第1面ファスナー40よりも長くすることで、背当て部31の服本体10の後ろ身頃12への装着位置を上下方向に調整可能な構成とすることもできる。
【0046】
また、前身頃11の右側部分11a及び左側部分11bには、それぞれ第2面ファスナー41に接着可能な第4面ファスナー43が設けられている。第4面ファスナー43は、それぞれ第2面ファスナー41よりも細長い形状を有しており、前身頃11の右側部分11a及び左側部分11bの肩部分よりも前側(胸部分側)の部分に、胴体の幅方向(肩幅方向)に沿って延びる姿勢で固定されている。それぞれの肩当て部32に設けられた第2面ファスナー41を、前身頃11に設けられた対応する第4面ファスナー43に接着させることで、肩当て部32の先端部分を服本体10の前身頃11の所定部位に固定することができる。
【0047】
ここで、上記の通り、一対の肩当て部32は、それぞれ調整部36が柔軟に変形することで、背当て部31からの延出方向を調整可能となっている。これに対し、肩当て部32の先端に設けられた第2面ファスナー41が接着される第4面ファスナー43は、それぞれ胴体の幅方向(肩幅方向)に沿って延びて設けられており、肩当て部32の先端の前身頃11への固定位置を肩幅方向に調整可能となっている。したがって、着用者2は、通気パッド30が取り付けられた服本体10を着用し、調整部36を起点として肩当て部32を肩幅方向に動かして自身の肩の線に適する位置に肩当て部32の肩幅方向の位置を調整した後、当該位置において第2面ファスナー41を第4面ファスナー43に接着することで、自身の体型に有った位置に肩当て部32を固定することができる。
【0048】
なお、第4面ファスナー43の長さは、肩当て部32の先端部分の調整部36による肩幅方向への調整が可能な範囲に対応した長さに設定すればよい。
【0049】
また、第4面ファスナー43は服本体10の前身頃11の肩部分よりも前側の部分(胸部分)に設けられているので、肩当て部32の位置を肩幅方向に調整した後、第2面ファスナー41を第4面ファスナー43に接着する作業を、胴体の前側において行うことができる。これにより、着用者2は、当該接着作業を容易に行うことができる。
【0050】
上記構成を有する電動ファン付き衣服1は、服本体10に電動ファン20が装着された構成となっている。着用者2が電動ファン付き衣服1を着用し、電動ファン20を作動させると、電動ファン20により服本体10の内部に外気が導入される。また、服本体10の内部に導入された外気は、服本体10と身体との間を通って開口15や襟部分13から外部に排出される。服本体10の内側に配置される通気パッド30は通気性を有しているので、服本体10の内部の外気の流れが通気パッド30により阻止されることはない。したがって、電動ファン20を作動させることにより、服本体10の内部の空気を換気するとともに、服本体10と身体との間で流通する空気により身体から出た汗等の蒸発を促進して、着用者2の身体に清涼感を与えることができる。
【0051】
また、本実施の形態の電動ファン付き衣服1によれば、図7図8に示すように、電動ファン付き衣服1の上からフルハーネス型安全帯50が装着された場合であっても、服本体10の内部に空気の流れを維持して、清涼感を維持することができる。
【0052】
フルハーネス型安全帯50は、電動ファン付き衣服1の服本体10の上から着用者2の肩部分に掛け渡される一対のベルト部材51を有している。これらのベルト部材51は、胸部において連結ベルト52により互いに連結されるとともに、その一端は、着用者2の大腿部にまで延びて下部ベルト53に連結されている。下部ベルト53は、それぞれ着用者2の大腿部に巻き付けられており、ベルト部材51は下部ベルト53を介して着用者2の大腿部を保持している。一方、一対のベルト部材51の他端は、背中側においてクリップ54を用いて交差状に保持された後、下部ベルト53に連結されている。また、一対のベルト部材51は、背中側においても、連結ベルト55、56により互いに連結されている。詳細は図示しないが、クリップ54には、命綱(ランヤード)が連結される。
【0053】
本実施の形態の電動ファン付き衣服1では、上記構成のフルハーネス型安全帯50が上から装着された場合であっても、肩部分に掛け渡されたベルト部材51を、服本体10の内側の肩部分に対応する部分に配置された肩当て部32により支持することができるので、電動ファン20と開口15との間の空気の流路がベルト部材51によって閉塞されることを防止するとともに、電動ファン20により服本体10の内部に導入された空気を、肩部分において通気性を有する肩当て部32を通して開口15に向けて流すことができる。これにより、上記構成のフルハーネス型安全帯50が電動ファン付き衣服1の上から装着された場合であっても、電動ファン20により服本体10の内部に導入された空気が服本体10の内部において流れることができるようにして、電動ファン付き衣服1を着用した着用者2に対する清涼感を維持することができる。
【0054】
また、本実施の形態の電動ファン付き衣服1では、上記構成のフルハーネス型安全帯50が上から装着された場合であっても、服本体10の背中側に配置された通気パッド30の背当て部31によって、交差する一対のベルト部材51を支持することができるので、電動ファン20により服本体10の内部に導入された空気を、背中側の部分において自由に流通することができるようにして、電動ファン付き衣服1を着用した着用者2の背中部分における清涼感をも維持することができる。
【0055】
また、本実施の形態の電動ファン付き衣服1では、通気パッド30を、柔軟性の異なる第1通気材33と第2通気材34とを有する2層構造としたので、通気パッド30を厚み方向への押し潰しに対して所定の強度を有するとともに高い通気性を有する構成とすることができる。これにより、電動ファン20により服本体10の内部に導入された空気が服本体10の内部においてさらに確実に流れることができるようにして、電動ファン付き衣服1を着用した着用者2に対する清涼感をより確実に維持することができる。
【0056】
服本体10の外側面に、肩部分に掛けられた帯状部材を肩幅方向に保持可能な保持部44を設けた構成とすることもできる。図6に示すように、服本体10の外側面の肩部分よりも前方側(胸部)の部分には面ファスナー45が設けられており、保持部44は面ファスナー45に接着可能な面ファスナーで構成されている。保持部44及び面ファスナー45は、それぞれ肩幅方向に延びる細長い形状を有している。
【0057】
上記構成の保持部44を設けたことにより、電動ファン付き衣服1の上からフルハーネス型安全帯50を装着した後、保持部44を面ファスナー45から取り外した状態で、帯状部材であるベルト部材51の位置を面ファスナー45上において肩当て部32の直上に位置するように調整する。そして、この状態で保持部44を面ファスナー45に接着させることにより、保持部44によって、ベルト部材51を肩当て部32の直上の位置に保持することができる。したがって、フルハーネス型安全帯50の拘束感を和らげるために、ベルト部材51が肩部分に緩く掛け渡された場合など、ベルト部材51が肩部分からずれを生じる虞がある場合であっても、保持部44によりベルト部材51を肩当て部32の直上の位置に安定的に保持することができる。これにより、ベルト部材51が肩当て部32からずれて、服本体10の内部において空気流路がベルト部材51によって閉塞されることを防止することができる。
【0058】
また、保持部44は、服本体10の外側面の肩部分よりも前方側(胸部)の部分に設けられているので、保持部44によりベルト部材51の位置を固定する作業を、胴体の前側において行うことができる。これにより、着用者2は、作業を容易に行うことができる。
【0059】
さらに、面ファスナー45は肩幅方向に延びる細長い形状を有しているので、肩当て部32の位置に合わせてベルト部材51の位置を肩幅方向に調整することが可能である。
【0060】
なお、保持部44の長手方向の端部に、面ファスナーが設けられない摘み部分を設けてもよい。これにより、保持部44を面ファスナー45から剥がす作業を容易に行うことができるので、上記作業をより容易にすることができる。
【0061】
保持部44は、面ファスナー45に接着される構成に限らず、例えば、帯状部材を潜らせた後、ボタンやホック等により服本体10の外面に固定されるエポレット様のストラップとして構成するなど、その構成は種々変更可能である。また、複数の保持部44を、帯状部材の長手方向に沿って並べて設けた構成とすることもできる。
【0062】
本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0063】
例えば、前記実施の形態では、通気パッド30を、面ファスナーを用いて服本体10に着脱自在に装着するようにしているが、これに限らず、面ファスナーに代えてホックやボタン等の他の締結部材を用いるようにしてもよい。
【0064】
また、通気パッド30は、服本体10に着脱自在に装着される構成に限らず、服本体10に、縫製や接着等により固定された構成であってもよい。
【0065】
前記実施の形態では、通気パッド30は、背当て部31と一対の肩当て部32とを有する略Y字形状となっているが、これに限らず、例えば図9に変形例として示すように、背当て部31から左右方向に延びる一対の腰当て部37を備えた構成とすることもできる。この場合、一対の腰当て部37は、それぞれ肩当て部32の回動部32aと同様の構成の、複数(2本)の回動部37aを備えた構成とすることができる。また、それぞれの腰当て部37の先端には第5面ファスナー46が固定され、図3に示すように、服本体10の前身頃11には、それぞれの第5面ファスナー46に接着可能な一対の第6面ファスナー47が固定されている。第6面ファスナー47は左右方向に所定の長さを有しており、第5面ファスナー46の固定位置すなわち腰当て部37の先端の服本体10に対する固定位置を左右方向の調整することができる。
【0066】
一対の腰当て部37は、服本体10が着用者2の胴体に着用されたときに、着用者2の腰部分に巻き付けられるように配置される。これにより、着用者2が、服本体10の上から工具等を収納するための腰ベルトを着用した場合であっても、当該腰ベルトにより服本体10の下端部から外部への空気の流出が阻止されることを抑制することができる。
【0067】
また、通気パッド30の背当て部31の大きさは種々変更可能であり、例えば、背中の全体を覆う程度の面積を有する大きさのものとしてもよい。これにより、着用者2が電動ファン付き衣服1の上からリュックサックを背負った場合でも、清涼感を維持することができる。
【0068】
前記実施の形態では、服本体10はベスト型となっているが、着用者2の身体の少なくとも胴体を覆う構成であれば、例えば、着用者2の腕を覆う一対の袖を有するものや、胴体を覆う上衣に下半身を覆う下衣が一体に連ねて設けられた所謂つなぎ服など、その形状は種々変更可能である。
【0069】
電動ファン20は、通気パッド30と重ならない位置であれば、服本体10の種々の位置に設けることができる。また、電動ファン20は、2つに限らず、少なくとも1つ設けられていればよい。
【0070】
通気パッド30は、保冷剤を収納可能なポケットを有する構成としてもよい。保冷剤としては、例えば、化学的に冷却されるジェルを用いたもの、ペルチェ方式で冷却されるもの等を用いることができる。通気パッド30に保冷剤を収納することで、電動ファン付き衣服1を着用したときの清涼感をさらに高めることができる。
【0071】
通気パッド30の背当て部31、肩当て部32及び腰当て部37の形状は種々変更可能である。
【0072】
前記実施の形態では、服本体10は作業服であるが、これに限られない。
【符号の説明】
【0073】
1 電動ファン付き衣服
2 着用者
10 服本体
11 前身頃
11a 右側部分
11b 左側部分
12 後ろ身頃
12a 右側開口
12b 左側開口
13 襟部分
14 ファスナー
15 開口
20 電動ファン
21 電動モータ
22 ファン
30 通気パッド
31 背当て部
31a 回動部
32 肩当て部
32a 回動部
33 第1通気材
34 第2通気材
35 カバー布
36 調整部
37 腰当て部
37a 回動部
40 第1面ファスナー
41 第2面ファスナー
42 第3面ファスナー
43 第4面ファスナー
44 保持部
45 面ファスナー
46 第5面ファスナー
47 第6面ファスナー
50 フルハーネス型安全帯
51 ベルト部材
52 連結ベルト
53 下部ベルト
54 クリップ
55 連結ベルト
56 連結ベルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9