(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】運搬台車
(51)【国際特許分類】
B62B 5/00 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B62B5/00 F
(21)【出願番号】P 2019211505
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】597144484
【氏名又は名称】ジー・オー・ピー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100117857
【氏名又は名称】南林 薫
(72)【発明者】
【氏名】千田 豊治
【審査官】山本 賢明
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055707(JP,A)
【文献】特開2004-026459(JP,A)
【文献】特開2007-253767(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬物が積載される複数の載置部および複数のフレーム部を有する台車本体部と、
前記台車本体部に取り付けられ走行面を走行する走行部と、を備える運搬台車であって、
平面視において前記台車本体部の長手方向を前後とし、前記台車本体部の短手方向を左右とすると、
前記複数の載置部は、
それぞれ左右方向に沿って配置され、
前記台車本体部は、
前記複数のフレーム部のうち前後方向に沿って配置されたフレーム部に設けられた案内部を有し、
前記複数の載置部のうち少なくとも1つの載置部のボルト部材に螺合されたナット部材が前記案内部内でガイドされることによって前記1つの載置部が前後方向にスライドして、前記載置部同士の前後方向の間隔が調整可能であり、
前記載置部同士の間隔を調整することにより、
前記1つの載置部は、前記複数のフレーム部のうち前端に位置する前側フレーム部および後端に位置する後側フレーム部の何れに対しても相対的に位置が変更されることを特徴とする運搬台車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運搬台車に関する。
【背景技術】
【0002】
物品を運搬するための運搬台車として、特許文献1には台車本体に予め桁材を取り付けた運搬台車が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示された運搬台車は、2つの桁材に架け渡すことができる長さの運搬物を積載させることができるが、2つの桁部材に架け渡すことができない長さの運搬物を積載するのは困難であるという問題がある。
本発明は、上述したような問題点に鑑みてなされたものであり、運搬物を容易に積載できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、運搬物が積載される複数の載置部および複数のフレーム部を有する台車本体部と、前記台車本体部に取り付けられ走行面を走行する走行部と、を備える運搬台車であって、平面視において前記台車本体部の長手方向を前後とし、前記台車本体部の短手方向を左右とすると、前記複数の載置部は、それぞれ左右方向に沿って配置され、前記台車本体部は、前記複数のフレーム部のうち前後方向に沿って配置されたフレーム部に設けられた案内部を有し、前記複数の載置部のうち少なくとも1つの載置部のボルト部材に螺合されたナット部材が前記案内部内でガイドされることによって前記1つの載置部が前後方向にスライドして、前記載置部同士の前後方向の間隔が調整可能であり、前記載置部同士の間隔を調整することにより、前記1つの載置部は、前記複数のフレーム部のうち前端に位置する前側フレーム部および後端に位置する後側フレーム部の何れに対しても相対的に位置が変更されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、運搬物を容易に積載することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図5】第1の実施形態の載置部の構成を示す図である。
【
図6】第1の実施形態の運搬台車を積み重ねた状態を示す側面図である。
【
図10】第2の実施形態の運搬台車を積み重ねた状態を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本実施形態に係る運搬台車について図面を参照して説明する。
<第1の実施形態>
図1は第1の実施形態の運搬台車10の斜視図である。
図2は運搬台車10の平面図である。
図3は運搬台車10の底面図である。
図4は運搬台車10の側面図である。各図では、運搬台車10の進行方向を前後方向として、前側をFr、後側をRr、右側をR、左側をLで示している。したがって、
図4の側面図は、運搬台車10の進行方向に対して直交する方向から見た図である。なお、本実施形態の運搬台車10は、前側に限られず、前後左右を含め任意の方向に走行することができる。
【0009】
運搬台車10は、台車本体部20、走行部30、手摺部材40などを備えている。
台車本体部20は、複数のフレーム部などが連結して構成され、平面視で見て長手方向が前後であり、短手方向が左右である。台車本体部20は、左右方向よりも前後方向に長く、一対の長辺と一対の短辺からなる略矩形状である。
図1~
図3に示すように、台車本体部20は、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21d、コーナ部材22、補強フレーム部(補強部)25a,25b,25c等を有している。前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、略矩形状のフレーム部の一例に対応する。
【0010】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプ等を用いることができる。また、コーナ部材22は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。コーナ部材22は、上方に開口する挿入孔23と、下方を閉塞するストッパ部24(
図3を参照)とを有する。コーナ部材22の挿入孔23には、手押部材40が挿入可能である。挿入孔23に挿入された手押部材40の下端はストッパ部24によって支持される。
【0011】
前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dは、コーナ部材22により4つの角部で結合されることで、略矩形状の四方のフレーム枠を構成する。フレーム枠内は複数の補強フレーム部25a,25b,25cが前後左右方向に突き合わされ、ボルト、リベット、溶接などで接合されることで格子状に構成される。補強フレーム部25a,25b,25cは、例えば、アルミニウム合金製の角状の中空状パイプや断面凹凸状のプレートなどを用いることができる。ここでは、前後方向に長尺な2本の補強フレーム部25a,25bに対して左右方向に短尺な12本の補強フレーム部25cを接合することで、平面視で見て前後方向に3列、左右方向に5列に区分けされた複数の矩形状の空間26が形成される。なお、複数の空間26のうち後述する取付部材27A,27Bにより下側から一部が閉塞される空間26以外の空間26は、上下方向に貫通している。
【0012】
走行部30は、台車本体部20および運搬物の荷重を支持しながら走行面を走行する。走行部30は、複数のキャスター31A,31Bを有している。
図3に示すように、走行部30は、台車本体部20の4隅に配置される4つのキャスター31Aと、前後方向の中央であって左右に離れて配置される2つのキャスター31Bとの6つのキャスターを有する。
【0013】
キャスター31Aは取付部材27Aを介して台車本体部20に取り付けられる。取付部材27Aは、前側かつ左右方向両側の空間26および後側かつ左右両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベット28やネジを介して結合される。取付部材27Aは、矩形状の角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。キャスター31Aは台車本体部20の下面の4隅に配置されるので、運搬台車10を安定した状態で走行させることができる。
また、キャスター31Bは取付部材27Bを介して台車本体部20に取り付けられる。取付部材27Bは、前後方向の中央かつ左右方向の両側の空間26を下側から閉塞するように、各フレーム部や各補強フレーム部にリベット28やネジを介して結合される。取付部材27Bは、矩形状の隣接する角が切り欠かれた例えばアルミニウム合金製の金属板である。キャスター31Bは台車本体部20の前後方向の中央で左右に離れて配置されるので、運搬物が載置板29で偏って積載されても、運搬台車10が傾くことなく走行することができる。
【0014】
また、キャスター31A,31Bは、鉛直軸である旋回軸Oの軸回りに旋回可能である。また、キャスター31Aは、使用者の操作に応じてブレーキを掛けたり、ブレーキを解除したりすることができるブレーキ付キャスターである。一方、中央に配置されるキャスター31Bは、ブレーキなしキャスターである。ブレーキ付きキャスターである4つのキャスター31Aは、それぞれ上下に揺動可能なブレーキペダル32を有する。キャスター31Aにおいてブレーキを掛けるには、使用者が足でブレーキペダル32を下側に踏み込むように操作する。ブレーキペダル32は図示しない付勢部材などの付勢に抗して下側に向かって揺動することで、ブレーキペダル32が直接的あるいは間接的に車輪の外周面を強固に押圧するためにブレーキが掛けられた状態となる。また、ブレーキペダル32は、ブレーキが掛けられた状態が保持されるためにストッパとして機能する。
【0015】
手押部材40は、運搬台車10を走行させるときに使用者が手で押すための部材である。手押部材40は、長さが1000mm前後の長尺状である。手押部材40は下端をコーナ部材22の挿入孔23に挿入することで台車本体部20に装着され、挿入孔23から抜き出すことで台車本体部20から離脱されるように、着脱可能である。本実施形態の運搬台車10は4つの手押部材40(40A~40D)を有し、各コーナ部材22の挿入孔23に挿入される。ここで、手押部材40Aは右側かつ後側、手押部材40Bは左側かつ後側、手押部材40Cは右側かつ前側、手押部材40Dは左側かつ前側に位置する。なお、手押部材40A~40Dを使い分ける必要がない場合には単に手押部材40として説明する。また、4つの手押部材40A~40Dの全てを台車本体部20に装着する必要がなく、1つ、2つまたは3つの手押部材40のみを台車本体部20に装着してもよい。
【0016】
手押部材40は、本体部材41と、保護部材43と、補強部材44とを有する。
本体部材41は、長尺状かつパイプ状の部材、あるいは棒状部材である。本体部材41は、軽量化を図るために、例えば、アルミニウム合金製であって、押し出し成形により形成されている。また、本体部材41は、外径が例えば42~45mm(ここでは44mm)の円管であり、使用者が掴みやすい外径である。
【0017】
保護部材43は、使用者の手を保護すると共に、運搬物を積載するときの最大積載高さを示す指標となる。保護部材43は、本体部材41の上側であって、上端から所定の距離離れた位置にボルトやリベット等で固定される。なお、本体部材41のうち、本体部材41の上端から保護部材43の上端までの範囲が、使用者が運搬台車10を走行させるときに手で掴むグリップ部42である。保護部材43は、グリップ部42の外周面(外側面)よりも外側に突出することで、使用者がグリップ部42を掴んだ手を保護する形状である。本実施形態の保護部材43は、平面視において略円形の形状である。保護部材43の半径寸法は、平面視において、グリップ部42を掴んでいる使用者の手(例えば手の甲等)が保護部材43に重畳してはみ出さない(平面視において外形線の内側に収まる)寸法に設定される。具体的には、保護部材43の半径寸法は、50~80mmの範囲が好適であり、更には55~70mmの範囲が好適である。
【0018】
補強部材44は、本体部材41の下端、具体的には下端の近接した位置にボルトやリベット等で固定される。補強部材44は、本体部材41の強度を補強すると共に、本体部材41をコーナ部材22の挿入孔23に挿入したときに挿入孔23との間でガタ付きを抑制する。補強部材44は、例えば、アルミニウム合金製等である。
【0019】
また、本実施形態の台車本体部20は、運搬物が積載される2つの載置部50A,50Bを有する。載置部50A,50Bは、それぞれ右側フレーム部21cと左側フレーム部21dとに跨るように配置される(
図1を参照)。また、載置部50A,50Bは、それぞれ後述する案内部60Aの上面と案内部60Bの上面とに重なるように配置される。また、載置部50Aは載置部50Bよりも前側に位置し、載置部50Bは載置部50Aよりも後側に位置する。載置部50Aと載置部50Bとは、前後方向に間隔を空けて配置される。載置部50Aの上面と載置部50Bの上面とに亘って架け渡すように運搬物を載置することで、運搬物が台車本体部20に積載される。載置部50A,50Bは、長尺状であり、前側フレーム部21aおよび後側フレーム部21bと略平行に左右方向に沿って配置される。載置部50A,50Bは、平面視で見て、それぞれ右側フレーム部21cの一部および左側フレーム部21dの一部と重なり合う。
【0020】
載置部50Aの構成について説明する。なお、載置部50Bは、載置部50Aと同様の構成であり、同一符号を付して適宜、説明を省略する。
載置部50Aは、載置部材51と、緩衝部材55とを有する。
図5は、載置部50Aの構成の一例を示す図である。
図5(a)は載置部50Aの構成を示す斜視図であり、
図5(b)は載置部50Aを前側から見た図である。
【0021】
載置部材51は、運搬物の荷重を支持する長尺状の部材である。また、載置部材51は、載置部50Aと載置部50Bとに亘って載置した運搬物の下方に隙間を形成させるための部材である。載置部材51は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。載置部材51は、本体部52と、鍔部54a,54bとを有する。本体部52は、長手方向に沿って見たとき(左右方向に沿って見たとき)に外形が略台形状である。また、本体部52は、長手方向に沿った中空状であり、内部にリブ53を有することで補強されている。鍔部54aは本体部52の前側の下端から前側に向かって突出する略板状である。鍔部54bは本体部52の後側の下端から後側に向かって突出する略板状である。本体部52と、鍔部54a,54bとは、下面がそれぞれ面一であって平坦な面である。また、鍔部54a,54bは、それぞれ右端部および左端部に位置決め部としてボルト部材58が挿入される孔57が上下方向に貫通して形成される(
図5(b)を参照)。したがって、載置部50Aには4つのボルト部材58が上下方向に沿って挿入される。
【0022】
緩衝部材55は、載置部50Aに載置された運搬物と接触する長尺状の部材である。緩衝部材55は、例えば、軟質の合成樹脂製またはゴム製である。緩衝部材55は、載置部材51の上面を覆うようにして載置部材51に取り付けられる。また、緩衝部材55の上面は、載置された運搬物が面方向に滑るのを防止するために複数の凸条56が長手方向に沿って形成される。
【0023】
載置部50Aと載置部50Bは載置部同士の間隔、具体的には載置部同士の前後方向の間隔を調整可能である。本実施形態では、載置部50A,50Bは、前側フレーム部21a、後側フレーム部21b、右側フレーム部21c、左側フレーム部21dからなる略矩形状のフレーム部に対して前後方向にスライド可能である。
【0024】
本実施形態の台車本体部20は、載置部50A,50Bの前後方向へのスライドをガイドする2つの案内部60A,60Bを有する。案内部60Aは右側フレーム部21cの上面に固定され、案内部60Bは左側フレーム部21dの上面に固定される。案内部60A,60Bは、長尺状であり、右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dと略平行に前後方向に沿って配置される。
【0025】
案内部60Bの構成について
図5を参照して説明する。なお、案内部60Aは、案内部60Bと同様の構成であり適宜、説明を省略する。
案内部60Bは、載置部50A,50Bを前後方向にガイドする部材である。案内部60Bは、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。案内部60Bは、長手方向に沿って見たとき(前後方向に沿って見たとき)に外形が略矩形状であり内部が中空状に形成される。また、案内部60Bは上側に長手方向に沿ったスリット61を有する。案内部60Bの内部には、位置決め部としての略板状のナット部材62が案内部60Bの長手方向に沿ってスライド可能に配置されている。載置部50Aの鍔部54a,54bのそれぞれ左端部に挿入されたボルト部材58は、案内部60Bのスリット61を通して、案内部60B内に前後に離れて位置する2つのナット部材62と螺合される。なお、ボルト部材58のねじ部の先端が加締められることでナット部材62とボルト部材58とが離脱できないように構成されている。また、載置部50Aの鍔部54a,54bのそれぞれ右端部に挿入されたボルト部材58も同様に、案内部60Aのスリット61を通して、案内部60A内に前後に離れて位置する2つのナット部材62と螺合される。なお、案内部60A,60Bの内部には補強のためのリブが形成されていてもよい。
【0026】
このような、台車本体部20の構成によれば、載置部50A,50Bはそれぞれ案内部60A,60Bによってガイドされ、前後方向に沿ってスライド可能である。例えば、使用者が載置部50Aをスライドさせる場合には、ボルト部材58とナット部材62との間の螺合を緩めた状態にして載置部50Aを前後方向に移動させる。このとき、案内部60A内の2つのナット部材62が案内部60A内を摺動し、案内部60B内の2つのナット部材62が案内部60B内を摺動することで、載置部50Aがフレーム部に対して離脱することなく左右方向に沿った状態を維持したまま前後方向にスライドする。使用者は、所望する任意の位置でボルト部材58とナット部材62との螺合を締め付けることで、案内部60A,60Bに対して位置が固定される。同様に、載置部50Bもフレーム部に対して離脱することなく左右方向に沿った状態を維持したまま前後方向にスライドさせ、所望する任意の位置で案内部60A,60Bに対して位置が固定される。このように載置部50A,50Bを前後方向にスライドさせることで、載置部50Aと載置部50Bとの間隔、すなわち載置部同士の間隔が調整可能である。
【0027】
図4(a)に示す載置部50A,50Bは載置部同士の間隔を距離L1に調整した状態を示している。
図4(a)では、載置部50Aが前側のキャスター31Aの上方に位置し、載置部50Bが後側のキャスター31Aの上方に位置しており、載置部同士の間隔が後述する
図4(b)に示す距離L2に比べて長い。このように調整された載置部50A,50Bには前後方向に長尺な運搬物G1(二点鎖線を参照)を積載する場合に好適である。また、載置部50Aと載置部50Bとの間にフォークリフトの一対の爪Cを挿入することができるので、運搬物G1のみをフォークリフトで持ち上げることができる。一方、運搬台車10をフォークリフトで持ち上げる場合には、一対の爪Cのうち一方の爪Cを前側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に挿入し、他方の爪Cを後側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に挿入する。一対の爪Cを挿入した状態で上昇させることで、一対の爪Cが台車本体部20の下面に当接して、運搬台車10を持ち上げることができる。なお、運搬物G1のみを持ち上げる場合と、運搬台車10を持ち上げる場合とで、一対の爪Cの爪同士の間隔を同一にすることができ、同一の間隔であっても爪Cが運搬台車10のキャスター等に干渉することがない。したがって、運搬物G1あるいは運搬台車10を持ち上げる場合とでフォークリフト側で爪同士の間隔を変更する手間を軽減することができる。
【0028】
図4(b)に示す載置部50A,50Bは載置部同士の間隔を距離L2に調整した状態を示している。
図4(b)では、載置部50Aおよび載置部50Bが中央のキャスター31B寄りに位置しており、載置部同士の間隔が
図4(a)に示す距離L1に比べて短い。このように調整された載置部50A,50Bには前後方向に短尺な運搬物G2(二点鎖線を参照)を積載する場合に好適である。また、載置部50Aの前側および載置部50Bの後側にフォークリフトの一対の爪Cを挿入することができるので、運搬物G2のみをフォークリフトで持ち上げることができる。一方、運搬台車10をフォークリフトで持ち上げる場合には、
図4(a)と同様にして、運搬台車10を持ち上げることができる。また、運搬物G2のみを持ち上げる場合と、運搬台車10を持ち上げる場合とで、一対の爪Cの爪同士の間隔を同一にすることができ、同一の間隔であっても爪Cが運搬台車10のキャスター等に干渉することがない。したがって、運搬物G2あるいは運搬台車10を持ち上げる場合とでフォークリフト側で爪同士の間隔を変更する手間を軽減することができる。
【0029】
また、本実施形態の運搬台車10は、上下に運搬台車10を積み重ねることができる。
図6は、運搬台車10を積み重ねた状態を示す側面図である。上側の運搬台車10のキャスター31A,31Bを、下側の運搬台車10の取付部材27A,27B上に載せるように積み重ねることで安定させ、かつ低い高さで積み重ねることができる。
図6に示す載置部50A,50Bは載置部同士の間隔を距離L3に調整した状態を示している。
図6では、載置部50Aおよび載置部50Bは載置部同士の間隔が
図4(a)に示す距離L1に比べて短く、
図4(b)に示す距離L2に比べて長い。具体的には、載置部50A,50Bは取付部材27A,27Bが取り付けられていない空間26の上方に位置している。あるいは、載置部50Aが上側の運搬台車10の前側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に位置し、載置部50Bが上側の運搬台車10の後側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に位置している。このように調整された載置部50A,50Bは上側の運搬台車10のキャスター31A,31Bと干渉しないことから運搬台車10を積み重ねることができる。
【0030】
以上、本実施形態によれば、載置部50A,50Bは載置部同士の間隔が調整可能であることから、例えば、長尺あるいは短尺などの様々な種類の運搬物を容易に積載することができる。
なお、本実施形態では、台車本体部20は2つの載置部50A,50Bを有する場合について説明したが、この場合に限られず、3つ以上の載置部を有していてもよい。例えば、3つ目の載置部を載置部50Aと載置部50Bとの間に配置することができる。
また、本実施形態では、2つの載置部50A,50Bが何れもスライド可能である場合について説明したが、この場合に限られず、複数の載置部のうち少なくとも一つの載置部を調整可能にして、他の載置部を使用者が調整できないように固定されていてもよい。
【0031】
また、本実施形態では、案内部60Aが右側フレーム部21cの上面に固定され、案内部60Bが左側フレーム部21dの上面に固定される場合について説明したが、この場合に限られない。例えば、案内部60Aは右側フレーム部21cの側面や補強フレーム部25a,25bに固定され、案内部60Bは左側フレーム部21dの側面や補強フレーム部25a,25bに固定されていてもよい。この場合には、載置部50A,50Bの下面が右側フレーム部21cの上面および左側フレーム部21dの上面に接するように構成することができる。
また、案内部60A,60Bの長手方向の両端部の開口を閉塞させることで、ナット部材62が案内部60A,60Bの端部から抜け出ないように構成してもよい。
【0032】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態の運搬台車11について説明する。
図7は、第2の実施形態の運搬台車11の斜視図である。
図8は運搬台車11の平面図である。
図9は運搬台車11の側面図である。なお、第1の実施形態の運搬台車10と同様の構成は同一符号を付して適宜、説明を省略する。
【0033】
本実施形態の台車本体部20は、運搬物が積載される2つの載置部70A,70Bを有する。載置部70A,70Bは、平面視で見て、それぞれ右側フレーム部21cと左側フレーム部21dとの間に配置される(
図8を参照)。具体的には、載置部70A,70Bは、それぞれ後述する連結部材73を介して補強フレーム部25cの上面に配置される。また、載置部70Aは載置部70Bよりも前側に位置し、載置部70Bは載置部70Aよりも後側に位置する。載置部70Aと載置部70Bとは、前後に間隔を空けて配置される。載置部70Aの上面と載置部70Bの上面との間に亘って架け渡すように運搬物を載置することで、運搬物が台車本体部20に積載される。載置部70A,70Bは、長尺状であり、前側フレーム部21aおよび後側フレーム部21bと略平行に左右方向に沿って配置される。
【0034】
載置部70Aの構成について
図7に示す拡大図を参照して説明する。なお、載置部70Bは、載置部70Aと同様の構成であり、同一符号を付して適宜、説明を省略する。
載置部70Aは、載置部材71と、緩衝部材72とを有する。
【0035】
載置部材71は、運搬物の荷重を支持する長尺状の部材である。また、載置部材71は、載置部70Aと載置部70Bとに亘って載置した運搬物の下方に隙間を形成させるための部材である。載置部材71は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。載置部材71は、長手方向に沿って見たとき(左右方向に沿って見たとき)に外形が略矩形状であり、長手方向に沿った中空状である。
【0036】
緩衝部材72は、載置部70Aに載置された運搬物と接触する長尺状の部材である。緩衝部材72は、例えば、軟質の合成樹脂製またはゴム製である。緩衝部材72は、載置部材71の上面を覆うようにして載置部材71に取り付けられる。また、緩衝部材72の上面は、載置された運搬物が面方向に滑るのを防止するために複数の凸条が長手方向に沿って形成される。
【0037】
ここで、載置部70Aは、左右方向に沿った補強フレーム部25cのうち、最も前側で直列に位置する3つの補強フレーム部25c上に連結部材73を介して配置される。なお、
図7では、最も前側に位置する3つの補強フレーム部25cが連結部材73によって隠れている。本実施形態では、補強フレーム部25cの一つに付き、一つの連結部材73が連結される。したがって、載置部70Aは3つの連結部材73を介して補強フレーム部25cに連結されている。なお、載置部70Aと3つの連結部材73とは予めボルト、リベット、溶接などにより離脱できないように固定される。連結部材73は、例えば、押出し成形により形成されるアルミニウム合金製である。連結部材73は、長手方向に沿って見たとき(左右方向に沿って見たとき)に略H型状であり、上側に第1連結部74aを有し、下側に第2連結部74bを有する。第1連結部74aは載置部70Aを嵌め込むように嵌合させることで載置部70Aと連結する。第2連結部74bは補強フレーム部25cを嵌め込むように嵌合させることで補強フレーム部25cと連結する。なお、載置部70Bは、左右方向に沿った補強フレーム部25cのうち、最も後側で直列に位置する3つの補強フレーム部25c上に連結部材73を介して配置される。
【0038】
載置部70Aと載置部70Bは載置部同士の間隔、具体的には載置部同士の前後方向の間隔を調整可能である。本実施形態では、載置部70A,70Bは、連結部材73を介して連結する補強フレーム部25cを変更することで、前後方向の間隔を調整可能である。
【0039】
例えば、使用者が載置部70Aを最も前側で直列に位置する3つの補強フレーム部25cから前から2番目に直列に位置する3つの補強フレーム部25cに位置を変更させる場合には、3つの連結部材73を最も前側の補強フレーム部25cから取り外して、前から2番目に位置する3つの補強フレーム部25cに連結する。このとき、使用者は必要に応じて、3つの連結部材73と3つの補強フレーム部25cとをボルトやリベットなどを用いて固定してもよい。同様に、使用者が載置部70Bを最も後側で直列に位置する3つの補強フレーム部25cから後から2番目に直列に位置する3つの補強フレーム部25cに位置を変更させる場合には、3つの連結部材73を最も後側の補強フレーム部25cから取り外して、後から2番目に位置する3つの補強フレーム部25cに連結する。
【0040】
図9(a)に示す載置部70A,70Bは載置部同士の間隔を距離L4に調整した状態を示している。
図9(a)では、載置部70Aが最も前側の補強フレーム部25cの上方に位置し、載置部70Bが最も後側の補強フレーム部25cの上方に位置しており、載置部同士の間隔が後述する
図9(b)に示す距離L5に比べて長い。このように調整された載置部70A,70Bには前後方向に長尺な運搬物G3(二点鎖線を参照)を積載する場合に好適である。また、載置部70Aと載置部70Bとの間にフォークリフトの一対の爪Cを挿入することができるので、運搬物G3のみをフォークリフトで持ち上げることができる。一方、運搬台車11をフォークリフトで持ち上げる場合には、一対の爪Cのうち一方の爪Cを前側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に挿入し、他方の爪Cを後側のキャスター31Aと中央のキャスター31Bとの間に挿入する。一対の爪Cを挿入した状態で上昇させることで、一対の爪Cが台車本体部20の下面に当接して、運搬台車11を持ち上げることができる。
【0041】
図9(b)に示す載置部70A,70Bは載置部同士の間隔を距離L5に調整した状態を示している。
図9(b)では、載置部70Aが前から2番目の補強フレーム部25cの上方に位置し、載置部70Bが後から2番目の補強フレーム部25cの上方に位置しており、載置部同士の間隔が
図9(a)に示す距離L4に比べて短い。このように調整された載置部70A,70Bには前後方向に短尺な運搬物G4(二点鎖線を参照)を積載する場合に好適である。また、載置部70Aの前側および載置部70Bの後側にフォークリフトの一対の爪Cを挿入することができるので、運搬物G4のみをフォークリフトで持ち上げることができる。一方、運搬台車11をフォークリフトで持ち上げる場合には、
図9(a)と同様にして、運搬台車11を持ち上げることができる。
【0042】
また、本実施形態の運搬台車11は、上下に運搬台車11を積み重ねることができる。
図10は、運搬台車11を積み重ねた状態を示す側面図である。上側の運搬台車11のキャスター31A,31Bを、下側の運搬台車11の取付部材27A,27B上に載せるように積み重ねることで安定させ、かつ低い高さで積み重ねることができる。
図10に示す載置部70A,70Bは載置部同士の間隔を距離L4に調整した状態を示している。なお、上側の運搬台車11のキャスター31A,31Bのうち前側のキャスター31Aは、旋回軸Oに対して90°回転させることで、載置部70Aとの干渉が回避される。このように調整された載置部70A,70Bは上側の運搬台車11のキャスター31A,31Bと干渉しないことから運搬台車11を積み重ねることができる。
【0043】
以上、本実施形態によれば、載置部70A,70Bは載置部同士の間隔が調整可能であることから、例えば、長尺あるいは短尺などの様々な種類の運搬物を容易に積載することができる。
なお、本実施形態では、台車本体部20は2つの載置部70A,70Bを有する場合について説明したが、この場合に限られず、3つ以上の載置部を有していてもよい。例えば、3つ目の載置部を載置部70Aと載置部70Bとの間に配置することができる。
また、本実施形態では、2つの載置部70A,70Bが何れも前後方向に調整可能である場合について説明したが、この場合に限られず、複数の載置部のうち少なくとも一つの載置部を調整可能にして、他の載置部を使用者が調整できないように固定されていてもよい。
また、本実施形態では、2つの載置部70A,70Bが補強フレーム部25cに連結する場合について説明したが、この場合に限られず、前側フレーム部21aおよび後側フレーム部21dに連結してもよい。
【0044】
<変形例>
上述した第1の実施形態では、載置部50A,50Bはボルト部材58とナット部材62との螺合を締め付けることで載置部50A,50Bを案内部60A,60Bに対して任意の位置で固定する場合について説明したが、この場合に限られない。本変形例は、抜き差し可能なピン81を用いて右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dに形成された孔82に挿入することで、スライドさせた載置部80A,80Bを位置決めできるように構成する。
【0045】
図11は、変形例の載置部80Aの構成の一例を示す図である。なお、第1の実施形態と同様の構成は、同一符号を付して説明を省略する。また、載置部80Bは、載置部80Aと同様の構成であり適宜、説明を省略する。
本変形例では、載置部80Aの前後方向へのスライドをガイドする案内部60A,60Bがそれぞれ補強フレーム部25a,25bの上面に固定される。なお、第1の実施形態と同様、載置部80Aの鍔部54a,54bに挿入されたボルト部材58は、案内部60A,60Bのスリット61を通して、案内部60A,60B内にそれぞれ前後に離れて位置する2つのナット部材62と螺合される。ただし、本変形例では、ボルト部材58とナット部材62との螺合を締め付けて位置決めする必要がなく緩めたままであってよい。
【0046】
本変形例では、運搬台車は位置決め部としてのピン81を有する。ピン81は、載置部80Aの鍔部54aの孔57を通して右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dの上面に形成された孔82に挿入される。なお、右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dの上面の孔82は前後に所定の間隔を空けて複数形成される。
【0047】
例えば、使用者が載置部80Aをスライドさせる場合には、ピン81を孔57および孔82から抜き出し、載置部80Aを前後方向に移動させる。このとき、案内部60A内の2つのナット部材62が案内部60A内を摺動し、案内部60B内の2つのナット部材62が案内部60B内を摺動することで、載置部80Aがフレーム部に対して離脱することなく左右方向に沿った状態を維持したまま前後方向にスライドする。使用者は、所望する位置に近接する孔82と、載置部80Aの孔57とを連通させた上で、ピン81を孔57および孔82に挿入することで、載置部80Aが右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dに対して位置決めされる。同様に、載置部80Bについても右側フレーム部21cおよび左側フレーム部21dに対して位置決めされる。このように載置部80A,80Bを前後方向にスライドさせることで、載置部80Aと載置部80Bとの間隔、すなわち載置部同士の間隔が調整可能である。
【0048】
以上、本発明を上述した実施形態と共に説明したが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲内で変更などが可能であり、各実施形態および変形例を適宜、組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0049】
10,11:運搬台車 20:台車本体部 21a:右側フレーム部 21b:左側フレーム部 21c:前側フレーム部 21d:後側フレーム部 30:走行部 50A,50B:載置部 70A,70B:載置部 80A,80B:載置部 60A,60B:案内部