(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】受動型制振装置
(51)【国際特許分類】
F16F 15/02 20060101AFI20240131BHJP
F16F 15/03 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
F16F15/02 C
F16F15/03 Z
(21)【出願番号】P 2020036506
(22)【出願日】2020-03-04
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】599142132
【氏名又は名称】株式会社サンエス
(74)【代理人】
【識別番号】100077838
【氏名又は名称】池田 憲保
(74)【代理人】
【識別番号】100129023
【氏名又は名称】佐々木 敬
(72)【発明者】
【氏名】山中 成浩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一幸
(72)【発明者】
【氏名】平井 三男
【審査官】松林 芳輝
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-162026(JP,A)
【文献】特開2014-229760(JP,A)
【文献】特開2005-276118(JP,A)
【文献】特開2003-049560(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 15/00-15/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース上に、固定部を配置すると共に、前記固定部に対して相対的変位可能にバネ部材を介して可動部を配置し、前記固定部、前記可動部の一方に永久磁石を、他方にはコイルを、前記可動部の変位に伴って前記永久磁石の磁束が前記コイルを横切るようにそれぞれ組み合わせることにより減衰力を発生する減衰器を構成し、
前記可動部は、所定値の質量を持つ主ウエイトと、該主ウエイトに着脱自在に装着可能とした複数の補助ウエイトとを含み、
前記コイルの両端に可変抵抗器を接続して閉回路を形成することにより前記可変抵抗器で減衰力を可変とし
、
前記主ウエイトは、センター軸部と、該センター軸部を間において互いに平行に延び前記センター軸部の両端に連結されて閉磁路を形成する一対のサイド軸部を持つ、軟磁性材料によるヨーク部を含み、
前記ベースに固定したコイル保持部を介して前記センター軸部を内包するように前記コイルを装着して前記固定部を構成する一方、前記一対のサイド軸部の内壁側にはそれぞれ、前記センター軸部を間において同磁極が対向し合うように一対以上の前記永久磁石を前記可動部の変位方向に並べて固着して前記減衰器を構成したことを特徴とする受動型制振装置。
【請求項2】
前記バネ部材は、複数のスプリングを直列、又は並列、もしくは直列及び並列に配置して構成し、スプリングの個数を増減させることにより当該制振装置の共振周波数を調整することを特徴とする請求項1に記載の受動型制振装置。
【請求項3】
前記ヨーク部には、前記一対のサイド軸部の前記ベース側の端部にそれぞれ、前記センター軸部から離れる方向に延びる第一フランジ部を設け、
一対の前記第一フランジ部にそれぞれ、前記複数の補助ウエイトを着脱自在に装着可能とする共に、一対の前記第一フランジ部と前記ベースの間にそれぞれ前記バネ部材を介在させ、かつ一対の前記第一フランジ部にそれぞれ、前記ベースに固定されて前記可動部の変位をガイドする少なくとも1本のガイド軸を挿通したことを特徴とする請求項
1または2に記載の受動型制振装置。
【請求項4】
前記ヨーク部には更に、前記一対のサイド軸部の前記ベース側とは反対側の端部にそれぞれ、前記センター軸部から離れる方向に延びる第二フランジ部を設け、
一対の前記第二フランジ部にはそれぞれ、リニアベアリングを介して前記少なくとも1本のガイド軸を挿通したことを特徴とする請求項
3に記載の受動型制振装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動吸振器の原理を利用した受動型制振装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の動吸振器の原理を利用した受動型制振装置としては、制振の対象となる構造物に、減衰器とスプリングを介して補助的な質量体を付加し、構造物の共振周波数に該制振装置を同定させるに際して、スプリングのバネ定数を調整し周波数を同定させるケースが一般的である(特許文献1)。
【0003】
受動型制振装置の重要な要素である減衰力を発生させる従来の減衰器には、オイルダンパー、摩擦ダンパー、電磁ダンパー(渦電流方式)、粘性力ダンパー等が使われている。しかしながら、これらのいずれの手法も、減衰力の直線性に難があり、減衰係数の調整が困難である等の問題点の他、周囲温度の変化及び経年変化等により長期にわたる制振機能の安定性確保が難しいという問題点がある。
【0004】
上記各種の減衰器のうち、電磁ダンパー(渦電流方式)について言えば、減衰力の直線性を確保するために速度(振動)センサーとフィードバックアンプを使用している例(特許文献2)もあるが、装置の複雑化とコストアップの原因とならざるを得ない。また、この例では給電が必要となることも大きな問題である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-227331号公報
【文献】特開平04-280308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のような問題に鑑み、本発明の課題は、電源を使わず、設置及び同調が容易で且つ長期にわたり安定した性能を維持することのできる受動型制振装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は交通振動その他による一般住宅における環境振動対策や、歩道橋や橋梁等の構造物における走行振動、交通振動等の振動対策用として、動吸振器の原理を利用した受動型制振装置であり、以下の態様で実現される。
【0008】
(第1の態様)
ベース上に、固定部を配置すると共に、前記固定部に対して相対的変位可能にバネ部材を介して可動部を配置し、前記固定部、前記可動部の一方に永久磁石を、他方にはコイルを、前記可動部の変位に伴って前記永久磁石の磁束が前記コイルを横切るようにそれぞれ組み合わせることにより減衰力を発生する減衰器を構成し、
前記可動部は、所定値の質量を持つ主ウエイトと、該主ウエイトに着脱自在に装着可能とした複数の補助ウエイトとを含み、
前記コイルの両端に可変抵抗器を接続して閉回路を形成することにより前記可変抵抗器で減衰力を可変としたことを特徴とする受動型制振装置。
【0009】
(第2の態様)
前記バネ部材は複数のスプリングを直列、又は並列、もしくは直列及び並列に配置して構成しスプリングの個数を増減させることにより前記制振装置の共振周波数を調整することを特徴とする上記第1の態様に記載の受動型制振装置。
【0010】
(第3の態様)
前記主ウエイトは、センター軸部と、該センター軸部を間において互いに平行に延び前記センター軸部の両端に連結されて閉磁路を形成する一対のサイド軸部を持つ、軟磁性材料によるヨーク部を含み、
前記ベースに固定したコイル保持部を介して前記センター軸部を内包するように前記コイルを装着して前記固定部を構成する一方、前記一対のサイド軸部の内壁側にはそれぞれ、前記センター軸部を間において同磁極が対向し合うように一対以上の前記永久磁石を前記可動部の変位方向に並べて固着して前記減衰器を構成したことを特徴とする上記第1又は第2の態様に記載の受動型制振装置。
【0011】
(第4の態様)
前記ヨーク部には、前記一対のサイド軸部の前記ベース側の端部にそれぞれ、前記センター軸部から離れる方向に延びる第一フランジ部を設け、
一対の前記第一フランジ部にそれぞれ、前記複数の補助ウエイトを着脱自在に装着可能とする共に、一対の前記第一フランジ部と前記ベースの間にそれぞれ前記バネ部材を介在させ、かつ一対の前記第一フランジ部にそれぞれ、前記ベースに固定されて前記可動部の変位をガイドする少なくとも1本のガイド軸を挿通したことを特徴とする上記第1~第3の態様のいずれか1つに記載の受動型制振装置。
【0012】
(第5の態様)
前記ヨーク部には更に、前記一対のサイド軸部の前記ベース側とは反対側の端部にそれぞれ、前記センター軸部から離れる方向に延びる第二フランジ部を設け、
一対の前記第二フランジ部にはそれぞれ、リニアベアリングを介して前記少なくとも1本のガイド軸を挿通したことを特徴とする上記第4の態様に記載の受動型制振装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、電源を使わず、設置及び同調が容易で且つ長期にわたり安定した性能を維持することのできる受動型制振装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明に係る受動型制振装置の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、
図1~
図5を参照して、本発明に係る受動型制振装置の好ましい実施形態について説明する。本発明に係る受動型制振装置は、受動型質量同調制振装置としての使用に適している。
【0016】
受動型制振装置(以下、本装置と略称することがある)1は、ベース10と、ベース10上に固定された固定部20と、固定部20に対して相対的変位可能にベース10に設置された可動部30とを有する。可動部30を相対的変位可能とするために、ここでは、ベース10と可動部30との間の2箇所において、複数のスプリング50を直列に積み重ねて介在させている。これにより、複数のスプリング50を、可動部30の上下動を可能にするバネ部材として作用させる。なお、
図1に二点鎖線で示すように、本装置の設置場所に応じて、本装置をベース10よりも大きな台板11を介して設置するようにしても良い。
初めに、可動部30について説明する。可動部30は、センター軸部31と、該センター軸部31を間において互いに平行に延びセンター軸部(センターポール)31の両端に連結されて閉磁路を形成する一対のサイド軸部(サイドヨーク)32を含み、所定値の質量を持つ主ウエイトとして作用する。可動部30はまた、軟磁性材料(例えば鉄)で形成することにより、磁気回路を形成するためのヨーク部としても作用する。
【0017】
可動部30の一対のサイド軸部32の内壁側にはそれぞれ、センター軸部31を間において同磁極が対向し合うように一対以上(ここでは5対)の永久磁石40を可動部30の変位方向に並べて、例えば接着により固着している。本実施形態では、永久磁石40を、その幅方向に関して十分なサイズを確保するために、対ごとに、サイド軸部32の幅方向に関して3つの分割磁石40A、40B、40Cで構成しているが、これに限定されるものではなく、例えば対ごとに1つずつの永久磁石で構成されても良い。
【0018】
可動部30には更に、一対のサイド軸部32のベース10側の端部にそれぞれ、センター軸部31から離れる方向に延びる第一フランジ部33を設けている。第一フランジ部33は、サイド軸部32と一体に形成されても良いが、別体とする場合には、ボルト等によりサイド軸部32に取り付けられる。第一フランジ部33は、
図2から明らかなように、サイド軸部32の幅よりも大きな幅を有し、その中央部には複数の板状の補助ウエイト34を着脱自在に設置できるようにしている。補助ウエイト34を着脱自在にしてその設置個数を可変としているのは、後述する質量調整を行うためである。
【0019】
補助ウエイト34を着脱自在に設置する構造は以下の通りである。第一フランジ部33の中央部に、間隔をおいて上方に延びる2本の支持棒35を固定している。補助ウエイト34には、
図2に示すように、2本の支持棒35と同じ間隔の2箇所に、長手方向(幅方向)の一方の側縁から直角に、支持棒35の挿通可能な切れ目34-1を形成している。このような構造により、補助ウエイト34をスライドさせて第一フランジ部33上に装着することができる。なお、切れ目34-1の代わりに穴が形成されても良い。
【0020】
支持棒35の外周には雄ネジが切られており、最上部の補助ウエイト34から突き出している部分にナット(図示省略)を装着することにより、複数の補助ウエイト34を第一フランジ部33上に固定することができる。
【0021】
スプリング50は、ベース10と一対の第一フランジ部33との間に設置されるが、縦揺れによる第一フランジ部33の上下動に伴って伸縮し、しかも伸縮に際して設置箇所から外れてしまうことの無いような設置構造にされている。スプリング50は更に、複数の補助ウエイト34を取り外す事なしに追加や取り外しを行うことができる構造にされている。その理由は、後述される。
図5を参照して、スプリング50の設置構造の一例を説明する。ベース10に、複数(ここでは3本)の支持棒52を等間隔で立設した座板51が固定されている。第一フランジ部33には、その上下動が支持棒52によって妨げられないようにするために、支持棒52の貫入可能な貫通孔33aが厚さ方向に形成されている。ここでは、中央の支持棒52の周囲のみにスプリング50が単一、あるいは複数個直列に装着されてベース10と第一フランジ部33との間に介在しているが、必要に応じて、両側の支持棒52にもスプリングを増設して並列配置構成とすることができる。各支持棒52は、初期状態で、その上部が貫通孔33aに貫入した状態に置かれ、スプリング50が伸長し切った場合でも貫通孔33aから外れることが無いようにされている。
【0022】
可動部30には更に、一対のサイド軸部32のベース10側とは反対側の端部にそれぞれ、センター軸部31から離れる方向に延びる第二フランジ部36を設けている。第二フランジ部36も、サイド軸部32と一体に形成されても良いが、別体とする場合には、ボルト等によりサイド軸部32に取り付けられる。
【0023】
一対の第一フランジ部33には、それぞれ、その長手方向(幅方向)の両端部に近い場所に貫通孔が設けられ、これら2つの貫通孔にはベース10に固定されて可動部30の変位をガイドするガイド軸37が挿通されている。同様に、一対の第二フランジ部36にも、それぞれ、その長手方向の両端部に近い場所(第一フランジ部33の2つの貫通孔に対応する場所)に貫通孔が設けられ、この貫通孔には上記のガイド軸37が挿通されている。このようにして、可動部30は、合計2本以上(本図では4本)のガイド軸37により上下動がガイドされる。なお、第一フランジ部33の貫通孔には、それぞれリニアベアリング38を設置してガイド軸37に対する第一フランジ部33の上下動をスムーズにする構造とするのが好ましい。
【0024】
次に、固定部20について説明する。固定部20は、上述したガイド軸37の他、コイル部60を有する。コイル部60は、ベース10に固定した略U形状のコイル保持部61と、コイル保持部61に取り付けられてセンター軸部31を内包するように装着された筒状のコイル62とを有する。
【0025】
コイル62は、可動部30の上下方向の変位に伴って、永久磁石40の磁束が効率よくコイル62の導線を横切るように、長さ(中心軸方向の長さ)及びベース10からの高さ位置が設定されている。勿論、永久磁石40とコイル62のギャップは小さい方が望ましい。
【0026】
以上のような組み合わせにより、複数の永久磁石40とコイル62は、可動部30の上下動に伴って永久磁石40の磁束がコイル62を横切ることにより、減衰力を発生する減衰器として作用する。
【0027】
なお、センター軸部31と一対のサイド軸部32は、永久磁石40の発生磁束を効率良く利用できるようにするために閉回路を形成している。この場合、センター軸部31を内包するように筒状のコイル62を装着するために、本実施形態では、以下のような構造を採用している。センター軸部31の下端部とサイド軸部32との連結部に切れ目を入れ、コイル62を装着する際には、治具を用い、センター軸部31の下端部とサイド軸部32との連結部の切れ目を広げた状態にしてセンター軸部31の周囲にコイル62を装着する。コイル62の装着が終了したら、ボルト等によりサイド軸部32の下端部をセンター軸部31の下端部に締め付け固定する。勿論、ボルトの頭部は、サイド軸部32に埋め込み式にされ、第一フランジ部33の取り付けに支障はない。
【0028】
以上のような固定部20、可動部30等を含む構造体の周囲4面のうち、ここでは補助ウエイト34の着脱が行われる2面以外の2面はサイドカバー70でカバーされる。勿論、4面全面をサイドカバー70でカバーしても良いことは言うまでも無い。構造体の上部については、4本のガイド軸37の上端部を固定するための天板71で塞がれる。特に、可動部30の上端部の中央には、スペーサ72が取り付けられており、天板71の中央にはスペーサ72に対応した開口が設けられている。そして、この開口から露出したスペーサ72の上端と開口の周囲をカバーするように板部材(
図1に二点鎖線で示す)を、ボルト、ネジ等で取り付け可能にすることにより、本装置を設置現場まで搬送する際の構造体のがたつきを防止するようにしている。
【0029】
本実施形態では更に、コイル62の両端に可変抵抗器63を接続して、コイルと可変抵抗器63の閉回路を形成し、この可変抵抗器63で減衰力を可変としている。
図4に示すように、本実施形態では、コイル保持部61に可変抵抗器63を設け、サイドカバー70を取り付ける前に可変抵抗器63の抵抗値の調整、設定ができるようにしている。勿論、サイドカバー70に調整用の貫通窓を設けることで、サイドカバー70の取り付け後でも可変抵抗器63の抵抗値の設定を行うことができる。
【0030】
ここで、減衰器としての減衰力及びその調整、設定について説明する。
【0031】
磁気回路中のコイルが磁気(磁束)を速度Vで垂直に横切る方向に動くことで発生する電圧E、流れる電流I、発生する力Fは以下の通りである。
【0032】
磁束密度Bなる磁束中において長さLの導線が速度Vで移動すると電圧Eが発生し、コイルLが閉じていればその抵抗値Rに反比例した電流Iが流れ、磁束中の導線に流れる電流Iは磁束Bとの相互作用により速度Vに比例し、速度Vと反対方向の力Fが発生する。そして、この力Fが減衰力として作用する。
【0033】
本実施形態における減衰器では、この力Fを速度Vに比例した減衰力として使用する。加えて、可変抵抗器63の抵抗値を変化させて電流Iを可変とすることにより、減衰力Fを調整可能とすることができる。本実施形態における磁気回路は永久磁石を使用するので、減衰器等のための電力は必要としない。
【0034】
本実施形態ではまた、補助ウエイト34の設置個数を調整して、第一、第二フランジ部33、36と、永久磁石40と、設置された補助ウエイト34及び主ウエイトを含む可動部全体の質量を可変とすることにより、質量の調整ができる。
【0035】
本実施形態では更に、1箇所当たりのスプリング50の設置個数を増減させることにより減衰器の共振周波数を調整できるようにしている。共振周波数の調整は、制振を目的として本装置が設置される設置場所についてあらかじめ計測された共振周波数に同定させるために行われる。
【0036】
次に、本装置の設置形態、周波数同定、減衰係数の設定作業等について説明する。
【0037】
本装置の設置場所、例えば交通振動その他の振動対策を必要とする一般住宅、走行振動等の対策を必要とする歩道橋や橋梁等の構造物の特定場所、について共振周波数の計測を行う。
【0038】
続いて、上記特定場所に本装置を設置し、補助ウエイト34側のサイドカバー70及び可変抵抗器63側のサイドカバー70を取り外すと共に、スペーサ72及びこれをカバーしている板部材(
図1に二点鎖線で示す)を取り外したうえで、本装置の共振周波数を、計測された特定場所の共振周波数に合わせる同定作業を行う。
【0039】
作業としては、補助ウエイト34の個数を調整する質量同調、可変抵抗器の抵抗値を調整することで減衰力を調整する作業、及びスプリング50の設置個数を調整する周波数同定が行われる。
【0040】
同定作業が終了したら、第一フランジ部33上の補助ウエイト34を、支持棒35に取り付けたナットで固定し、サイドカバー70を取り付ける。
【0041】
以上のようにして、本実施形態による受動型制振装置は、主ウエイト、第一、第二フランジ部33、36、永久磁石40、複数の補助ウエイト34を含めた可動部全体の質量とスプリング50のバネ定数の調整により、本装置の共振周波数を、設置場所の共振周波数に同定させること及び可変抵抗器63の抵抗値を変化させて最適な減衰係数に設定することで縦揺れに対する最適な制振機能を発揮する。
【実施形態の効果】
【0042】
本装置における永久磁石40による磁気回路及び減衰力発生用のコイル62は周囲温度の変化にも安定しており、本装置では軸受け(リニアベアリング38)以外は非接触なので消耗部もなく耐久性に優れ、メンテナンスフリーを実現することができる。
【0043】
本装置は、スプリング50の設置個数調整による周波数の同定が比較的簡単且つ精密に調整できる。
【0044】
本装置は、内蔵される減衰器の減衰係数を自由に最適数値に設定することができ、対象とする構造物に対する最適な制振条件が得られるため、高い制振効果が得られる。
【0045】
本装置は、外部からの電力供給を必要とせず、長期にわたり安定した制振効果が期待できる。
【符号の説明】
【0046】
1 受動型制振装置
10 ベース
11 台板
20 固定部
30 可動部
31 センター軸部
32 サイド軸部
33 第一フランジ部
34 補助ウエイト
35 支持棒
36 第二フランジ部
37 ガイド軸
38 リニアベアリング
40 永久磁石
50 スプリング
60 コイル部
61 コイル保持部
62 コイル
63 可変抵抗器
70 サイドカバー