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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】帽子
(51)【国際特許分類】
   A42B 1/008 20210101AFI20240131BHJP
   A42B 1/0189 20210101ALI20240131BHJP
   A42C 5/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A42B1/008 Z
A42B1/0189
A42C5/04 E
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020151740
(22)【出願日】2020-09-10
(65)【公開番号】P2022045960
(43)【公開日】2022-03-23
【審査請求日】2023-04-25
(73)【特許権者】
【識別番号】597093115
【氏名又は名称】株式会社シオジリ製帽
(74)【代理人】
【識別番号】100187838
【弁理士】
【氏名又は名称】黒住 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100220892
【弁理士】
【氏名又は名称】舘 佳耶
(74)【代理人】
【識別番号】100205589
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 和将
(74)【代理人】
【識別番号】100194478
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 文彦
(72)【発明者】
【氏名】塩尻 英一
【審査官】須賀 仁美
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-138526(JP,A)
【文献】特開2000-239915(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0068975(US,A1)
【文献】中国実用新案第205512567(CN,U)
【文献】米国特許第04989270(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A42B1/00-1/248
A42C5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の頭部を覆うクラウンにおける左前部と右前部とに、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むためのベンチレーション用開口部が設けられ、
クラウンの内側におけるベンチレーション用開口部よりも後方の領域に、メッシュ生地からなるベンチレーション用メッシュ生地が宛がわれた帽子であって、
ベンチレーション用メッシュ生地が、その前端側の縁部からその後端側にかけて高さ方向の幅が狭くなる形状とされるとともに、
ベンチレーション用メッシュ生地の上縁が、クラウンに対して縫着されない状態とされた
ことを特徴とする帽子。
【請求項2】
クラウン内側におけるクラウンの下縁に沿った箇所に、ビン皮が環状に配されて、
ベンチレーション用メッシュ生地が、クラウンとビン皮との間に配され、
ベンチレーション用メッシュ生地の下縁が、ビン皮の下縁に縫着される一方、クラウンには縫着されず、
ベンチレーション用メッシュ生地の外面に設けられた固定手段によって、ベンチレーション用メッシュ生地がクラウンの内面に固定された
請求項1記載の帽子。
【請求項3】
前記固定手段が、クラウンに対してベンチレーション用メッシュ生地を間欠的に固定するものとされた請求項2記載の帽子。
【請求項4】
前記固定手段が、スナップボタン又は面ファスナーとされた請求項2又は3記載の帽子。
【請求項5】
請求項1~4いずれか記載の帽子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベンチレーション機能を備えた帽子に関する。
【背景技術】
【0002】
強い日差しを長時間に亘って頭部に浴びると日射病にかかるおそれがあるために、日差しの強い日中における野外活動は帽子を被って行うように薦められている。しかし、夏の暑い時期に帽子を被ると、頭が蒸れて不快さを感じることも多い。このため、帽子を敬遠する者も多い。特に、撥水加工や防水加工が施された生地でクラウンを形成した帽子は、通気性を確保することが困難であるために、そのような傾向が強い。このような実状に鑑みてか、帽子メーカーは、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むことができるようにしたベンチレーション(換気)機能付きの帽子を提案している。
【0003】
例えば、特許文献1には、同文献の図1~3に示されるように、着用者の頭部を覆うクラウン10における左前部と右前部とに、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むための通気用開口部O,O(ベンチレーション用開口部)を設けた帽子が記載されている。この帽子においては、同文献の図6に示されるように、クラウン10の内側におけるベンチレーション用開口部O,Oよりも後方の領域に、メッシュシート20(メッシュ生地からなるベンチレーション用メッシュ生地)が宛がわれている。
【0004】
特許文献1の帽子に係る構成を採用することで、同文献の図6における太矢印で示されるように、ベンチレーション用開口部O,Oからクラウン10の内側に導入された空気を、クラウン10の内面とベンチレーション用メッシュ生地20の外面との隙間を通じて、クラウン10の内側における広い範囲に行きわたらせることが可能になる(同文献の段落0018を参照。)。したがって、着用者の頭部を効果的に冷却することが可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-138526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、特許文献1の帽子は、ベンチレーション用メッシュ生地20の縫製に手間を要し、製造コストを抑えにくいという欠点を有していた。すなわち、同文献の帽子においては、半球状のクラウン10に対してベンチレーション用メッシュ生地20を綺麗に沿わせるため、ベンチレーション用メッシュ生地20は、同文献の図5に示されるように、4枚の三角状のメッシュ生地(メッシュシート用れんげ21a,21b,22a,22b)の側縁同士を繋ぎ合わせて蓮の葉状(扇状)に形成される(同文献の段落0027~0028を参照。)ところ、この扇状のベンチレーション用メッシュ生地20の縁部全周をクラウン10に対して縫着する必要があるからである。加えて、特許文献1の帽子では、クラウン10の内側におけるベンチレーション用開口部O,Oよりも後方の略全域にベンチレーション用メッシュ生地20が宛がわれるため、ベンチレーション用メッシュ生地20が嵩んで重くなるという欠点もあった。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために為されたものであり、クラウンにおける左前部と右前部とに、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むためのベンチレーション用開口部が設けられ、クラウンの内側におけるベンチレーション用開口部よりも後方の領域に、メッシュ生地からなるベンチレーション用メッシュ生地が宛がわれた帽子において、縫製を容易にして製造コストを抑えることを目的とするものである。また、帽子を軽量化して、帽子の被り心地を良くすることも本発明の目的である。さらに、そのような特徴を備えた帽子の製造方法を提供することも本発明の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題は、
着用者の頭部を覆うクラウンにおける左前部と右前部とに、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むためのベンチレーション用開口部が設けられ、
クラウンの内側におけるベンチレーション用開口部よりも後方の領域に、メッシュ生地からなるベンチレーション用メッシュ生地が宛がわれた帽子であって、
ベンチレーション用メッシュ生地が、その前端側の縁部からその後端側にかけて高さ方向の幅が狭くなる形状とされるとともに、
ベンチレーション用メッシュ生地の上縁が、クラウンに対して縫着されない状態とされた
ことを特徴とする帽子
を提供することによって解決される。
【0009】
本発明の帽子では、ベンチレーション用メッシュ生地を、その前端側の縁部からその後端側にかけて高さ方向の幅が狭くなる形状としたため、ベンチレーション用メッシュ生地の上縁をクラウンに対して縫着しなくても、クラウンに対してベンチレーション用メッシュ生地がバタつきにくくすることができる。したがって、ベンチレーション用メッシュ生地の上縁の縫着を省略することができる。また、ベンチレーション用メッシュ生地は、扇状ではなく、帯状に近い形となるため、ベンチレーション用メッシュ生地を構成するメッシュ生地の枚数を少なくしても、半球状のクラウンに対してベンチレーション用メッシュ生地を綺麗に沿わせることが可能となる。したがって、ベンチレーション用メッシュ生地を構成するメッシュ生地同士の縫着を省略することもできる。よって、帽子の縫製を簡略化し、帽子の製造コストを抑えることが可能になる。加えて、ベンチレーション用メッシュ生地の面積を小さくすることで、ベンチレーション用メッシュ生地の重量を抑え、帽子を軽量化することも可能になる。
【0010】
本発明の帽子においては、
クラウン内側におけるクラウンの下縁に沿った箇所に、ビン皮を環状に配し、
ベンチレーション用メッシュ生地を、クラウンとビン皮との間に配し、
ベンチレーション用メッシュ生地の下縁を、ビン皮の下縁に縫着する一方、クラウンには縫着せず、
ベンチレーション用メッシュ生地の外面に設けた固定手段によって、ベンチレーション用メッシュ生地をクラウンの内面に固定する
ことが好ましい。
これにより、ベンチレーション用メッシュ生地の下縁をクラウンに対して縫着する必要がなくなり、帽子の縫製をさらに簡略化することができる。
【0011】
本発明の帽子において、上記の固定手段に係る構成を採用する場合には、その固定手段を、クラウンに対してベンチレーション用メッシュ生地を間欠的に固定するものとすることが好ましい。かかる構成を採用すると、ベンチレーション用メッシュ生地の下縁には、クラウンに対して固定されない区間(非固定区間)が形成されるようになるところ、この非固定区間を通じて、クラウンの外側の空気をクラウンの内面とベンチレーション用メッシュ生地の外面との隙間に導入することができるようになり、帽子のベンチレーション機能をさらに高めることが可能になる。
【0012】
上記の固定手段の種類は、特に限定されない。ベンチレーション用メッシュ生地をクラウンに固定する固定手段としては、スナップボタンや面ファスナー等が例示される。スナップボタンは、クラウンに対してベンチレーション用メッシュ生地を間欠的に固定する構成を採用しやすいという利点を有している。一方、面ファスナーは、クラウンに対するベンチレーション用メッシュ生地の固定位置を調整しやすいという利点を有している。
【発明の効果】
【0013】
以上のように、本発明によって、クラウンにおける左前部と右前部とに、クラウンの外側の空気をクラウンの内側に取り込むためのベンチレーション用開口部が設けられ、クラウンの内側におけるベンチレーション用開口部よりも後方の領域に、メッシュ生地からなるベンチレーション用メッシュ生地が宛がわれた帽子において、縫製を容易にして製造コストを抑えることが可能になる。また、帽子を軽量化して、帽子の被り心地を良くすることも可能になる。さらに、そのような特徴を備えた帽子の製造方法を提供することも可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明に係る帽子を示した斜視図である。
図2】本発明に係る帽子を下方から見た状態を示した底面図である。
図3】本発明に係る帽子を構成するベンチレーション用メッシュ生地を示した斜視図である。
図4】本発明に係る帽子におけるベンチレーション用メッシュ生地の周辺を、ベンチレーション用メッシュ生地に垂直な平面で切断して拡大した状態を示した拡大断面図である。
図5】本発明に係る帽子を下方から見た状態を示した底面図であって、(a)固定手段によりベンチレーション用メッシュ生地をクラウンに固定する前の状態と、(b)固定手段によりベンチレーション用メッシュ生地をクラウンに固定した後の状態とをそれぞれ示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の帽子の好適な実施態様について、図面を用いてより具体的に説明する。以下で述べる内容は、飽くまで好適な一実施形態に過ぎない。このため、本発明の帽子の技術的範囲は、以下で述べる構成に限定されない。本発明の帽子には、発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更を施すことができる。
【0016】
図1は、本発明に係る帽子を示した斜視図である。本実施形態の帽子は、図1に示すように、クラウン10と、前鍔20とを備えている。クラウン10は、帽子の着用者の頭部を覆う部分であり、通常、半球状に形成される。クラウン10における左前部と右前部には、ベンチレーション用開口部αが左右一対に設けられている。また、クラウン10の前側下部にも、ベンチレーション用開口部βを設けている。これらのベンチレーション用開口部α,βは、クラウン10の外側の空気をクラウン10の内側に取り込むための部分となっている。これらのベンチレーション用開口部α,βによって、クラウン10の内側における広い範囲のベンチレーション(換気)を行うことが可能となっている。
【0017】
クラウン10は、通常、複数枚の生地を繋ぎ合わせることによって構成される。本実施形態の帽子では、クラウン10を、6枚の三角状の生地(クラウン形成生地11,12,13,14,15,16)によって構成している。これらのクラウン形成生地11~16は、その形態から「れんげ」と呼ばれることもある。これらのクラウン形成生地11~16のうち、クラウン形成生地11は、帽子の着用者の頭部の左前部を覆うための部分となっており、クラウン形成生地12は、同頭部の右前部を覆うための部分となっている。また、クラウン形成生地13は、帽子の着用者の頭部の左横部を覆うための部分となっており、クラウン形成生地14は、同頭部の右横部を覆うための部分となっている。さらに、クラウン形成生地15は、帽子の着用者の頭部の左後部を覆うための部分となっており、クラウン形成生地16は、同頭部の右後部を覆うための部分となっている。
【0018】
上述したベンチレーション用開口部αのうち、左側のベンチレーション用開口部αは、クラウン形成生地11とクラウン形成生地13との境界部に設けており、右側のベンチレーション用開口部αは、クラウン形成生地12とクラウン形成生地14との境界部に設けている。それぞれのベンチレーション用開口部αは、クラウン形成生地13,14の前端縁における下側略半分の区間を三角状に切り欠くことによって形成している。これらのベンチレーション用開口部αからは、後述するベンチレーション用メッシュ生地30が露出した状態となっている。また、クラウン形成生地11,12の内側には、後掲する図2に示すように、メッシュ生地からなるクラウン裏地17,18が重ねられている。図1に示すように、ベンチレーション用開口部βからは、クラウン裏地17,18が露出した状態となっている。
【0019】
クラウン形成生地11~16を繋ぎ合わせる方法は、特に限定されない。本実施形態の帽子においては、クラウン形成生地11~16を縫着(縫合)によって半球状に繋ぎ合わせている。後掲する図2に示すように、クラウン形成生地11~16の縫合部分における裏側には、バイアステープ40を縫着しており、クラウン形成生地11~16の縫合部分に解れが生じにくくしている。クラウン形成生地11~16は、縫合ではなく、シームレス加工(例えば、超音波による振動で生地同士を摩擦することで熱を発生させ、生地を溶融させて互いに溶着させる加工等)によって繋ぎ合わせることもできる。
【0020】
前鍔20は、着用者の目に日光が直接入らないようようにする庇(ひさし)としての機能を有している。前鍔20の形態は、特に限定されないが、本実施形態の帽子においては、平面視三日月状となっている。前鍔20の基端縁(後端縁)は、クラウン10の下縁における前側部分に対して縫着されている。前鍔20の基端縁中央部には、空気透過用開口部γが設けられている。この空気透過用開口部γは、前鍔20の下側(下面側)の空気を前鍔20の上側(上面側)に透過させるための部分となっている。この空気透過用開口部γによって、前鍔20の上側にある空気だけでなく、前鍔20の下側にある空気も、上記のベンチレーション用開口部βを通じてクラウン10の内側に取り込むことができるようになっている。
【0021】
図2は、本発明に係る帽子を下方から見た状態を示した底面図である。図3は、本発明に係る帽子を構成するベンチレーション用メッシュ生地30を示した斜視図である。図2に示すように、クラウン10の内側におけるベンチレーション用開口部αよりも後方の領域(同図におけるクラウン10の下縁の後側区間Sと重なる領域)には、図3に示すベンチレーション用メッシュ生地30が宛がわれている。図2の矢印Aに示すように、ベンチレーション用開口部αからクラウンの内側に取り込まれた空気は、クラウン10の内面とベンチレーション用メッシュ生地30の外面との隙間を流れ、帽子の着用者の頭部を冷却する。
【0022】
このように、ベンチレーション用メッシュ生地30は、クラウン10の内側(内面側)に、空気が流通するための流通空間(上記の隙間)を形成するためのものとなっているところ、図3に示すように、その前端縁P,Pからその後端側(点P,P付近)にかけて、高さ方向の幅が徐々に狭くなる形状を有している。換言すると、ベンチレーション用メッシュ生地30の上縁P,Pが、後側になるに連れて徐々に低くなる(クラウン10の下縁に近づく)ようになっている。
【0023】
このため、ベンチレーション用開口部αから取り込まれた空気を、クラウン10の内面とベンチレーション用メッシュ生地30の外面との隙間にしっかりと取り入れることができるようにしながらも、クラウン10に対してベンチレーション用メッシュ生地30がバタつきにくくなっている。したがって、クラウン10に対するベンチレーション用メッシュ生地30の上縁P,Pの縫着を省略し、帽子の縫製を簡略化することができる。
【0024】
加えて、図2に示すように、ベンチレーション用メッシュ生地30の面積を小さくすることができる(クラウン10の内側におけるベンチレーション用開口部αよりも後方に、ベンチレーション用メッシュ生地30を宛がわれない領域を形成することができる)ので、帽子を軽量化することも可能となっている。
【0025】
また、図3に示すように、ベンチレーション用メッシュ生地30を帯状に近い形とする(長手状にする)ことができる。このため、ベンチレーション用メッシュ生地30を構成するメッシュ生地31,32の枚数を少なくしても、半球状のクラウン10に対してベンチレーション用メッシュ生地30を綺麗に沿わせる(ベンチレーション用メッシュ生地30を半球状に湾曲させる)ことができる。したがって、本発明の帽子では、ベンチレーション用メッシュ生地30を構成するメッシュ生地31,32の枚数を少なくして、ベンチレーション用メッシュ生地30を形成するための縫合箇所を減らすこともできる。本実施形態の帽子において、ベンチレーション用メッシュ生地30は、左側のメッシュ生地31(図3における点P,P,P,P,P,P,Pで囲まれた部分)と、右側のメッシュ生地32(同図における点P,P,P10,P,P,P,Pで囲まれた部分)とを、それぞれの後端縁Pに沿った箇所で縫着(縫合)したものとなっている。
【0026】
ベンチレーション用メッシュ生地30は、半球状のクラウン10の内面に沿うように湾曲した状態でクラウン10に取り付けられる。本実施形態の帽子では、ベンチレーション用メッシュ生地30における左側の前端縁(図2及び図3における点Pと点Pとを結ぶ線部P)に沿った箇所を、クラウン形成生地11の後端縁(左側縁)に縫着するとともに、ベンチレーション用メッシュ生地30における右側の前端縁(図2及び図3における点Pと点Pとを結ぶ線部P)に沿った箇所を、クラウン形成生地12の後端縁(右側縁)に縫着している。
【0027】
また、ベンチレーション用メッシュ生地30の左側の前端縁P及び右側の前端縁Pにおける上側の略半分の区間も、それぞれ、クラウン形成生地13,14に対しても縫着している。しかし、ベンチレーション用メッシュ生地30の左側の前端縁P及び右側の前端縁Pにおける下側の略半分の区間は、クラウン形成生地13,14に対しても縫着せずに、ふらした状態としている。これにより、ベンチレーション用開口部αからクラウン形成生地13,14の内側に空気が取り込まれやすくなっている。ただし、クラウン形成生地13,14の左側の前端縁P及び右側の前端縁Pにおける下端近傍の箇所(図1における部分δを参照。)では、クラウン形成生地13,14に対してベンチレーション用メッシュ生地30をスポット的に縫着しており、クラウン形成生地13,14が捲れないようにしている。
【0028】
さらに、ベンチレーション用メッシュ生地30の上縁(図2及び図3における点Pと点Pと点Pと点Pと点Pとを結ぶ線部P)に沿った箇所は、クラウン10に縫着せずに、ふらした状態としている。このため、クラウン10の内面とベンチレーション用メッシュ生地30の外面との隙間を流れる空気がベンチレーション用メッシュ生地30の上縁から抜け出やすい構造となっている。ベンチレーション用メッシュ生地30の下縁(図2及び図3における点Pと点Pと点Pと点P10と点Pとを結ぶ線部P10)に沿った箇所は、クラウン10の下縁に縫着してもよいが、本実施形態の帽子では、ベンチレーション用メッシュ生地30の下縁を、クラウン10の下縁に縫着せず、後述するビン皮50の下縁に縫着する構造を採用している。
【0029】
クラウン10の内側におけるクラウン10の下縁に沿った箇所には、図2に示すように、ビン皮50を環状に配している。このビン皮50は、帽子の着用者の頭部の汗を吸収する部材となっている。一般的な帽子においては、ビン皮50の下縁における略全区間が、クラウン10の下縁に対して縫着される。これに対し、本実施形態の帽子では、ビン皮50の下縁における、クラウン10の下縁の前側区間Sに重なる区間は、クラウン10の下縁に縫着しているものの、クラウン10の下縁の後側区間Sに重なる区間は、クラウン10の下縁に縫着されていない。このため、クラウン10の下縁の後側区間Sでは、ベンチレーション用メッシュ生地30及びビン皮50が、クラウン10から分離した状態(後掲する図5(a)を参照。)となっている。これにより、クラウン10に対するベンチレーション用メッシュ生地30やビン皮50の縫着をさらに容易に行うことが可能となっている。
【0030】
ただし、クラウン10の下縁の後側区間Sにおいて、ベンチレーション用メッシュ生地30及びビン皮50がクラウン10から分離したままであると、帽子を着用した際に、クラウン10の下縁の後側区間Sから、ベンチレーション用メッシュ生地30及びビン皮50がずれ落ちてきて露出するおそれがある。この点、本実施形態の帽子では、図4及び図5に示すように、ベンチレーション用メッシュ生地30の外面側における下縁に沿った箇所に、固定手段60を設けるとともに、クラウン10の下縁の後側区間Sにおける内面側に、被固定手段70を設けている。このため、図4(a)の矢印A及び図5の矢印Aに示すように、固定手段60を被固定手段70に対して固定することで、クラウン10の下縁の後側区間Sにおいて、ベンチレーション用メッシュ生地30及びビン皮50をクラウン10に対して固定することができるようにしている。
【0031】
ここで、図4は、本発明に係る帽子におけるベンチレーション用メッシュ生地30の周辺を、ベンチレーション用メッシュ生地30に垂直な平面で切断して拡大した状態を示した拡大断面図である。図5は、本発明に係る帽子を下方から見た状態を示した底面図であって、(a)固定手段60によりベンチレーション用メッシュ生地30をクラウン10に固定する前の状態と、(b)固定手段60によりベンチレーション用メッシュ生地30をクラウン10に固定した後の状態とをそれぞれ示した図である。
【0032】
固定手段60及び被固定手段70の種類は、特に限定されない。固定手段60及び被固定手段70としては、スナップボタンや面ファスナー等が例示される。本実施形態の帽子では、固定手段60及び被固定手段70としてスナップボタン(一方がオスで他方がメス)を採用している。スナップボタンは、左右にそれぞれ2箇所(2組)ずつ、計4箇所に設けている。このため、クラウン10の下縁における後側区間Sに対して、ベンチレーション用メッシュ生地30が間欠的に固定されるようになっている。
【0033】
このように、クラウン10の下縁に対してベンチレーション用メッシュ生地30の下縁を間欠的に固定することで、ベンチレーション用メッシュ生地30の下縁における隣り合うスナップボタンの間には、クラウン10に対して固定されない区間(非固定区間)が繰り返し形成されるようになる。この非固定区間は、クラウン10の外側の空気をクラウン10の内面とベンチレーション用メッシュ生地30の外面との隙間に取り入れる部分として機能させることができる。すなわち、クラウン10の下縁からも空気を取り入れることが可能になり、帽子のベンチレーション機能をさらに高めることができる。
【0034】
それぞれの非固定区間の長さ(隣り合うスナップボタンの間隔)は、特に限定されない。しかし、非固定区間を短くしすぎると、上述したクラウン10の下縁からのベンチレーション作用が得られにくくなる。また、スナップボタンを多数箇所に設ける必要が生じ、固定手段60と被固定手段70との固定に手間を要するようになる。このため、それぞれの非固定区間の長さは、20mm以上とすることが好ましい。それぞれの非固定区間の長さは、30mm以上とすることがより好ましく、40mm以上とすることがさらに好ましい。ただし、非固定区間を長くしすぎると、非固定区間のベンチレーションメッシュ生地30やビン皮50がずれ落ちやすくなるおそれがある。このため、それぞれの非固定区間の長さは、150mm以下とすることが好ましい。
【0035】
以上で述べた本発明の帽子は、縫製が容易であるにもかかわらず、優れたベンチレーション機能を発揮できるものとなっている。加えて、軽量化を図ることができるものとなっている。このため、本発明の帽子は、暑い環境下で着用されることが多い運動帽や作業帽や通学帽として好適に用いることができる。特に、野球帽として好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0036】
10 クラウン
11 クラウン形成生地(左前部)
12 クラウン形成生地(右前部)
13 クラウン形成生地(左横部)
14 クラウン形成生地(右横部)
15 クラウン形成生地(左後部)
16 クラウン形成生地(右後部)
17 クラウン裏地(左前部)
18 クラウン裏地(右前部)
20 前鍔
30 ベンチレーション用メッシュ生地
31 メッシュ生地(左側)
32 メッシュ生地(右側)
40 バイアステープ
50 ビン皮
60 固定手段
70 被固定手段
前側区間
後側区間
α ベンチレーション用開口部
β ベンチレーション用開口部
γ 空気透過用開口部


図1
図2
図3
図4
図5