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  • 特許-積層体及びプリント配線板の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】積層体及びプリント配線板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20240131BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20240131BHJP
   H05K 1/03 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B32B27/00 Z
G03F7/004 512
H05K1/03 610H
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021026520
(22)【出願日】2021-02-22
(65)【公開番号】P2021154725
(43)【公開日】2021-10-07
【審査請求日】2021-02-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2020058919
(32)【優先日】2020-03-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000166683
【氏名又は名称】互応化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 倫也
(72)【発明者】
【氏名】西村 颯太
(72)【発明者】
【氏名】藤原 勇佐
(72)【発明者】
【氏名】橋本 壯一
(72)【発明者】
【氏名】荒井 貴
【合議体】
【審判長】里村 利光
【審判官】廣田 健介
【審判官】井口 猶二
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2019/074112(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/170249(WO,A1)
【文献】特開2011-1802228(JP,A)
【文献】特開2014-24919(JP,A)
【文献】特開2014-74924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F7/004-7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁層と、前記絶縁層に重なるレジスト形成層と、前記レジスト形成層に重なる被覆層と、を備え(ただし、前記絶縁層と前記レジスト形成層との間に導体回路が介在する場合を除く)
前記レジスト形成層は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物を含み、
プリント配線板の作製のために用いられ、
前記絶縁層から前記プリント配線板における絶縁性基板が作製され、
前記レジスト形成層から前記プリント配線板におけるレジスト層が作製され、
前記感光性組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、光重合性化合物(C)とを含有し、
前記カルボキシル基含有樹脂(A)は、エチレン性不飽和基をさらに含有し、
前記感光性組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物が作製された場合、光の波長450nm以上800nm以下の光の透過率が80%以上であり、
前記絶縁層は、コロナ処理、UV処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、及びEB処理からなる群から選択される少なくとも一種の表面処理が施されている、
積層体。
【請求項2】
前記絶縁層は、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の絶縁材料を含む、
請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記被覆層は、ポリエチレンテレフタレートと2軸延伸ポリプロピレンとのうちいずれか一方又は両方を含む、
請求項1又は2に記載の積層体。
【請求項4】
前記レジスト形成層の膜厚は、20μm以下である、
請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記被覆層の表面粗さSaは、50nm以下である、
請求項1から4のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項6】
前記被覆層のヘイズ値は、3.0%以下である、
請求項1から5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載の積層体における前記絶縁層を含む絶縁性基板と、前記積層体における前記レジスト形成層から作製されたレジスト層とを備えるプリント配線板を製造する方法であり、
前記積層体における前記被覆層を通して前記レジスト形成層に光を照射することで前記絶縁層上に前記レジスト層を形成することを含む、
プリント配線板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層体、プリント配線板の製造方法、及びプリント配線板に関し、より詳細には、積層体、この積層体から製造されるプリント配線板の製造方法、及びこの積層体から作製されるプリント配線板に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、透明基材上に透明導電膜が透明電極としてパターン形成されているタッチパネル用の部材を開示している。透明基材として、透明樹脂フィルムが用いられ、透明導電膜として、エネルギー線硬化性組成物が用いられている。特許文献1では、透明樹脂フィルムと電極とに対する十分な密着性を得ることができ、エネルギー線硬化性組成物は、透明樹脂フィルムを基板とするタッチパネルの絶縁層及び/又は保護層の材料として用いることが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2014-024919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の透明基材と透明電極として透明導電膜を備える透明積層部材では、パターン形成された薄膜の電極を有する基板上にエネルギー線硬化性組成物が塗布され、紫外線により光硬化されて硬化物となることで絶縁層及び又は保護層として形成されている。このため、透明導電膜の解像性、及び平坦性には改善の余地がある。
【0005】
本発明の目的は、解像性及び平坦性を改善しやすい積層体、及びこの積層体から作製されるプリント配線板、及びプリント配線板の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様に係る積層体は、絶縁層と、前記絶縁層に重なるレジスト形成層と、前記レジスト形成層に重なる被覆層と、を備える。前記レジスト形成層は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0007】
本発明の一態様に係るプリント配線板の製造方法は、前記積層体における前記絶縁層を含む絶縁性基板と、前記積層体における前記レジスト形成層から作製されたレジスト層とを備えるプリント配線板を製造する方法である。本製造方法では、前記積層体における前記被覆層を通して、前記レジスト形成層に光を照射することで前記絶縁層上に前記レジスト層を形成することを含む。
【0008】
本発明の一態様に係るプリント配線板は、前記積層体における前記絶縁層を含む絶縁性基板と、前記積層体における前記レジスト形成層から作製されたレジスト層とを備える。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一様態によれば解像性及び平坦性を改善しやすい積層体及びプリント配線板が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1Aは、本実施の一形態の積層体の概略を示す断面図である。図1Bは、本実施の一形態のロール状の積層体の概略を示す斜視図である。
図2図2A図2Dは、本実施形態のプリント配線板の製造工程の一例を示す概略図である。
図3図3は、図1Aに示す積層体の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
1.概要
まず、本実施形態に係る積層体10の概要について説明する。
【0012】
本実施形態の積層体10は、絶縁層1と、レジスト形成層2と、被覆層3とを備える。レジスト形成層2は、絶縁層1に重なり、被覆層3はレジスト形成層2に重なっている。レジスト形成層2は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0013】
積層体10では、レジスト形成層2が感光性組成物の乾燥物を含むため、光を照射することにより、露光して硬化させることが可能である。ここで、本実施形態の積層体10は、被覆層3を備えていることで、レジスト形成層2を硬化させるにあたり、大気中の酸素などの影響(例えば酸素阻害)を受けにくくして、レジスト形成層2を硬化させることができる。すなわち、レジスト形成層2は、被覆層3に保護されているともいえる。このため、レジスト形成層2の硬化物の硬化性を向上させることができ、その結果、現像性及び解像性が向上しうる。
【0014】
積層体10は、例えばプリント配線板の作製のために用いられる。この場合、絶縁層1、レジスト形成層2及び被覆層3が積層した状態で、被覆層3を通してレジスト形成層2に光を照射することで、レジスト形成層2における光が照射された部分を硬化させる。続いてレジスト形成層2から被覆層3を剥離し、必要によりレジスト形成層2を現像することで不要な部分を除去することにより、レジスト形成層2から電気絶縁性の層(レジスト層12)を作製できる。
【0015】
このように、絶縁層1上にレジスト層12を作製すると、絶縁層1をプリント配線板における絶縁性基板として利用できる。また、レジスト形成層2を永久レジスト(永久膜)として利用できる。
【0016】
したがって、本実施形態の積層体10は、プリント配線板を作製するための材料として特に好適に用いることができる。
【0017】
2.詳細
次に、本実施形態に係る積層体10、及び積層体10を構成する要素についてより具体的に説明する。
【0018】
<絶縁層>
絶縁層1は、積層体10において、電気的絶縁性を有する層である。絶縁層1は、例えば積層体10が電気絶縁性の層を備えるプリント配線板を作製するために用いられる場合、基材(又は基板)として機能する。すなわち、積層体10における絶縁層1は、プリント配線板100における絶縁性基板11となる。
【0019】
絶縁層1としては、例えばガラス、プラスチック、及びセラミック等といった適宜の基材を挙げることができる。より具体的には、例えば絶縁層1は、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)、シクロオレフィンポリマー(COP:Cyclo Olefin Polymer)、液晶ポリマー(LCP:Liquid Crystal Polymer)、ポリイミド(PI:Polyimide)及びポリカーボネート(PC:Polycarbonate)等の熱可塑性樹脂製のフィルムを含む。絶縁層1は、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の絶縁材料を含むことが好ましい。この場合、積層体10から作製されるプリント配線板100は低誘電特性に優れる。このため、プリント配線板100を高周波用途の電子機器、装置等に用いることができる。絶縁層1は、シクロオレフィンポリマーと液晶ポリマーとのうちいずれか一方又は両方を含むことがより好ましく、絶縁層1は、シクロオレフィンポリマーであることが更に好ましい。
【0020】
絶縁層1は、表面処理が施されていることが好ましい。表面処理は、コロナ処理、UV(紫外線)処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理及び電子線(EB:Electron Beam)処理からなる群から選択される少なくとも一種であることが好ましい。この場合、絶縁層1上に、レジスト形成層2等の樹脂からなる層、金属からなる触媒層4及びメッキ層などの層を作製する場合に、絶縁層1と各層との密着性を向上させることができる。さらに、絶縁層1に上記の少なくとも一種の表面処理がされていると、積層体10から被覆層3を剥離する際の剥離性を向上させることができる。表面処理は、コロナ処理とUV処理とのうちいずれか一方又は両方であることがより好ましい。
【0021】
<レジスト形成層>
レジスト形成層2は、積層体10において、絶縁層1に重なる。レジスト形成層2は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。レジスト形成層2は、光硬化性を有する。レジスト形成層2は、電気的絶縁性を有することが好ましい。なお、本開示でいう半硬化物とは、感光性組成物の完全に硬化した状態ではなく、未硬化の状態を含む。
【0022】
レジスト形成層2は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物に光照射して硬化させることで、レジスト層12を作製できる。そのため、レジスト形成層2は、永久レジスト(永久膜)として利用可能である。なお、感光性組成物の詳細については、後述する。また、レジスト形成層2の作製方法は、後に詳述する。
【0023】
<被覆層>
被覆層3は、積層体10において、レジスト形成層2を保護するカバー材としての機能を有しうる。このため、積層体10において、被覆層3は、絶縁層1に積層されているレジスト形成層2に劣化を生じにくくしたり、傷つきにくくしたり等、積層体10に不良を生じにくくできる。積層体10において、被覆層3は、積層体10に光を照射することでレジスト形成層2を露光するにあたり、レジスト形成層2硬化時の酸素阻害を低減することに寄与しうる。これにより、積層体10から作製されるプリント配線板100におけるレジスト層12の平坦性を向上させうる。
【0024】
被覆層3は、光透過性を有することが好ましい。この場合、積層体10において、被覆層3を通してレジスト形成層2を露光しやすい。被覆層3の光の透過率は、例えば20μmの厚み寸法を有する被覆層3において、光の波長350nm以上500nm以下の光の透過率が70%以上であることが好ましく、75%以上であることがより好ましく、80%以上であることが更に好ましい。
【0025】
被覆層3は、ポリエチレンテレフタレート(PET)と2軸延伸ポリプロピレン(OPP:Oriented Polypropylene)とのいずれか一方又は両方であることが好ましい。この場合、積層体10の高い透明性を維持することができる。また、被覆層3が高い透明性を有していると、積層体10におけるレジスト形成層2の硬化性を高めることができ、レジスト層12をより良好に形成しやすい。また、この場合、被覆層3は、ガスバリア性が高いため、積層体10を被覆層3上から露光する場合のレジスト形成層2の硬化性を良好に高めることができる。そのため、レジスト形成層2を硬化してレジスト層12を作製するにあたり、現像性及び解像性をより向上することができる。
【0026】
被覆層3は、PETフィルムであることがより好ましい。この場合、レジスト形成層2にフィッシュアイ等の影響を受けにくくでき、不良を生じさせにくい。そのため、積層体10に光を照射することで、被覆層3を介してレジスト形成層2を硬化させても、照射光に散乱を生じさせにくい。このため、レジスト形成層2の現像性及び解像性をより向上させることができる。なお、フィッシュアイとは、フィルム内部に生じうる小球状の塊である。さらに、被覆層3がPETフィルムであると、積層体10にガスバリア性を付与しうるため、積層体10において、被覆層3を介してレジスト形成層2に光を照射して感光性組成物を硬化させても、酸素阻害が生じにくい。このため、レジスト形成層2を硬化させるにあたり、照射する光の露光量を低減することができる。
【0027】
被覆層3の表面粗さSaは、50nm以下であることが好ましい。この場合、積層体10から被覆層3を剥離しても、レジスト形成層2(又はレジスト層12)に更に高い平坦性を付与することができる。レジスト形成層2が高い平坦性を有していると、プリント配線板100に、メッキ層を形成するにあたり、より均一な形状を有する導体配線を形成することができる。このため、プリント配線板100の信頼性が向上する。また、この場合、レジスト形成層2の透明性を向上することができる。
【0028】
被覆層3の表面粗さSaは、例えば次のようにして測定できる。レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK-X1000)を用いて、レーザー種:404nm半導体レーザー、測定範囲:270μm×202μm、対物レンズ:50倍、共焦点モードにて測定し、算出される。
【0029】
被覆層3のヘイズ値は、3.0%以下であることが好ましい。この場合、積層体10におけるレジスト形成層2に光を照射して感光性組成物を硬化させるにあたって、被覆層3を介在させても、感光性組成物をより良好に硬化させやすい。被覆層3のヘイズ値は、2.0%以下であればより好ましく、1.0%以下であれば更に好ましい。なお、被覆層3のヘイズ値は、JIS K7136に準じて、ヘイズメーターにより測定した拡散透過率及び全光線透過率の結果から算出可能である。
【0030】
<<積層体の作製方法>>
本実施形態に係る積層体10の具体的な作製方法の例について説明する。ただし、積層体10の作製方法は、以下の方法に限られない。
【0031】
まず、絶縁層1と感光性組成物の溶液を用意する。絶縁層1上に、レジスト形成層2を作製する。レジスト形成層2の作製方法は、例えば塗布法とドライフィルム法とがある。
【0032】
塗布法では、例えば絶縁層1上に感光性組成物を塗布して湿潤塗膜を形成する。感光性組成物の塗布方法は、適宜の方法、例えば浸漬法、スプレー法、スピンコート法、ロールコート法、カーテンコート法、及びスクリーン印刷法からなる群から選択される。続いて、感光性組成物中の有機溶剤を揮発させるために、例えば60~130℃の範囲内の温度下で湿潤塗膜を乾燥させ、これによって、レジスト形成層2を得ることができる。
【0033】
ドライフィルム法では、まずポリエステルなどから作製された適宜の支持体上に、感光性組成物を塗布してから乾燥することで、支持体上に感光性組成物の乾燥物であるドライフィルムを形成する。これにより、ドライフィルムと、ドライフィルムを支持する支持体とを備える支持体付きドライフィルムが得られる。この支持体付きドライフィルムにおけるドライフィルムを絶縁層1に重ねてから、ドライフィルムと絶縁層1に圧力をかけ、続いて支持体をドライフィルムから剥離することで、ドライフィルムを支持体上から絶縁層1上へ転写する。これにより、絶縁層1上に、ドライフィルムからなるレジスト形成層2が設けられる。
【0034】
続いて、レジスト形成層2上に被覆層3を作製する。具体的には、例えばレジスト形成層2上から、絶縁層1上に作製したレジスト形成層2を覆うように被覆層3を配置する。被覆層3は、レジスト形成層2上に配置されてから、加圧することにより押圧されてもよい。また、被覆層3は、レジスト形成層2上に配置されてから、加圧時に加熱されてもよい。これにより、絶縁層1、レジスト形成層2、及び被覆層3をこの順に備える積層体10が得られる。
【0035】
レジスト形成層2をドライフィルム法で作製する場合には、例えば絶縁層1、ドライフィルム(フィルム状の感光性組成物の乾燥物又は半硬化物)、及び被覆層3をこの順に重ね、必要により圧着することで、絶縁層1、レジスト形成層2、及び被覆層3をこの順に備える積層体10を作製できる。
【0036】
積層体10におけるレジスト形成層2中の感光性組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物が作製された場合の、光の波長が450nm以上800nm以下の範囲内における硬化物の透過率が80%以上であることが好ましい。この場合、積層体10は透明性に優れるため、積層体10を光学用途に好適に用いることができる。また、この場合、積層体10は、高い透明性を有することで、屋外に設置する場合にも外観及び景観等を損ないにくくすることに寄与できる。感光性組成物から作製される硬化物の吸収スペクトルは、例えば分光光度計等の分光分析装置により測定される。具体的な測定方法は、後述の実施例の[透過率の測定]に記載の方法と同様である。感光性組成物から作製された硬化物の吸収スペクトルを測定することにより、光透過率、及び吸光度を得ることができる。10μmの厚み寸法を有する硬化物の光の波長が450nm以上800nm以下の範囲内における透過率は、85%以上であることがより好ましく、90%以上であれば更に好ましく、95%以上であれば特に好ましい。なお、上記の「10μmの厚み寸法を有する硬化物」とは、本実施形態の感光性組成物から作製される硬化物の厚みが10μmであることに限る主旨ではない。
【0037】
積層体10は、図1Bに示すように、ロール状に形成されていることが好ましい。この場合、ロール状の積層体10から直接プリント配線板を作製するための材料として利用可能である。具体的には、ロール状の積層体10から適宜の寸法に切り出して、使用することができる。ロール状の積層体10を作製するにあたっては、上記のように絶縁層1上にレジスト形成層2を形成してから、例えばレジスト形成層2上に配置した被覆層3を加圧しながら、ロール状に成形してもよい。レジスト形成層2をドライフィルム法で作製した場合であっても、同様に絶縁層1、ドライフィルム、及び被覆層3を重ねて、圧着しながらロール状に成形することで図1Bに示すロール状の積層体10を作製してもよい。
【0038】
図3に示す積層体10を作製するに当たっては、例えば絶縁層1の一方の面(表面)に感光性組成物を塗布して感光性組成物の乾燥皮膜(第1レジスト形成層21ともいう)を作製してから、第1レジスト形成層21上に被覆層3(第1被覆層31ともいう)を重ねる。続いて、絶縁層1の他方の面(裏面)に感光性組成物を塗布して感光性組成物の乾燥皮膜(第2レジスト形成層22ともいう)を作製してから、第2レジスト形成層22上に被覆層3(第2被覆層32ともいう)を重ねる。そして、第1被覆層31、第1レジスト形成層21、絶縁層1、第2レジスト形成層22、及び第2被覆層32をこの順に備える積層物を、必要により加熱及び加圧することで、積層体10を作製できる。なお、感光性組成物を塗布してから被覆層3を重ねる順序、並びに加熱及び加圧のタイミングは前記に限らない。
【0039】
積層体10の厚さは、特に制限されないが、例えば20μm以上であってよい。積層体10の厚さが、例えば350μm以下であると、積層体1から作製されるプリント配線板100をタッチパネル等の光学部品として利用するにあたり、フレキシブルなプリント配線板100を容易に作製することができる。
【0040】
積層体10における絶縁層1の厚さは、特に制限されず、適宜の寸法であってよいが、例えば1μm以上300μm以下とすることができる。この場合、積層体10をロール状に形成しやすい。またこの場合、積層体10から作製されるプリント配線板100を薄型化させやすい。
【0041】
積層体10におけるレジスト形成層2の膜厚(厚さ)は、特に制限されないが、例えば20μm以下であれば好ましい。レジスト形成層2の膜厚が0.5μm以上20μm以下であると、レジスト形成層2からレジスト層12を作製するにあたっての現像性及び解像性をより向上させることができる。レジスト形成層2は、0.8μm以上15μm以下であればより好ましく、1.0μm以上13μm以下であれば更に好ましく、1.5μm以上10μm以下であれば特に好ましい。また、この範囲内であると、積層体10から作製されるプリント配線板100をタッチパネル等の電子材料(光学部品)を作製するために好適に用いることができる。
【0042】
積層体10における被覆層3の厚さは、特に制限されず、被覆層3を通してレジスト形成層2に光を照射するにあたり、例えば光の波長350nm以上500nm以下の光の透過率が70%以上を有する厚み寸法であってよい。
【0043】
積層体10は、図3に示すように、絶縁層1と、複数のレジスト形成層2と、複数の被覆層3と、を備えていてもよい。具体的には、積層体10は、絶縁層1の両面に各々重なるレジスト形成層2(21,22)、及びレジスト形成層2(21,22)の絶縁層1とは反対側の面に各々重なる被覆層3(31,32)が順に積層されていてもよい。また、これに限られず、絶縁層1に、複数のレジスト形成層2と複数の被覆層3とが交互に重なって積層した多層の積層体10であってもよい。この場合において、積層体10の厚さは、例えば50μm以上であってよい。
【0044】
積層体10は、上記で説明した絶縁層1、レジスト形成層2、及び被覆層3以外の層を備えていてもよい。例えば、積層体1は、絶縁層1とレジスト形成層2との間に触媒層4を備えることが好ましい。すなわち、触媒層4は、メッキ層などの導体層が作製される場合のプライマー層として機能しうる。積層体10が触媒層4を備えていると、絶縁層1とレジスト形成層2との密着性をより向上させることができる。これにより、積層体10からプリント配線板100を作製すると、プリント配線板100における絶縁性基板11とレジスト層12との高い密着性を維持することができ、プリント配線板100に剥離等の不良を生じにくい。
【0045】
積層体10が触媒層4を備える場合は、例えば絶縁層1上に触媒層4を作製するための材料(以下、触媒層用材料ともいう)を塗布することで触媒層4を形成してから、触媒層4上に感光性組成物を塗布、必要により加熱乾燥することでレジスト形成層2を作製し、続いてレジスト形成層2上に被覆層3を形成すればよい。
【0046】
触媒層用材料は、適宜の密着性を向上させうる触媒機能を有する材料を採用できる。触媒用材料は、例えばパラジウムなどの金属類、シランカップリング剤などのカップリング剤、アミノ基を有する化合物であるアミン系化合物、及びSH基を含有するチオール系化合物からなる群から選択される少なくとも一種の材料であってよい。触媒層用材料は、粉体状であってもよく、液状であってもよい。触媒層4は、例えば絶縁層1上に、触媒層用材料を塗布、浸漬などすることで作製可能である。
【0047】
積層体10は、ハードコート層、アンカー層、接着層、及び紫外線吸収層等の適宜の機能性付与層を備えていてもよい。
【0048】
例えば、図3に示す積層体10からプリント配線板100を作製するにあたっては、絶縁層1の面の少なくとも一方の面に重なるハードコート層(不図示)を備えることが好ましい。また、ハードコート層が紫外線吸収剤を含有することが好ましい。この場合、積層体10におけるレジスト形成層2を露光するにあたり、レジスト形成層2に対して、一方の面から他方の面側への光の透過を抑制することができる。具体的には、例えば第1レジスト形成層21を、露光するにあたって、第1被覆層31を通して第1レジスト形成層21に照射された光が、絶縁層1を介して第1レジスト形成層21とは反対側にある第2レジスト形成層22まで透過することを抑制できる。紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収するものであれば特に限定されないが、具体的には、例えばベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾエート系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を挙げることができる。なお、ハードコート層は、絶縁層1とは異なる層である。また、絶縁層1が紫外線吸収剤を含有することも好ましい。この場合、ハードコート層(紫外線吸収層)を用いなくても、積層体10におけるレジスト形成層2を露光するにあたり、レジスト形成層2に対して、一方の面から他方の面側への光の透過を抑制することができる。
【0049】
<プリント配線板>
続いて、本実施形態のプリント配線板の製造方法について、図2A図2Dを参照して具体的に説明する。
【0050】
上記で説明した積層体10は、プリント配線板100を作製するために用いられる。本実施形態のプリント配線板100は、積層体10における絶縁層1を含む絶縁性基板11と、積層体10におけるレジスト形成層2から作製されたレジスト層12とを備える。
【0051】
プリント配線板100は、絶縁性基板11と、レジスト層12とを備える。図2Dでは、プリント配線板100は、導体層13(導体配線131)を更に備えている。
【0052】
プリント配線板100を作製するためには、まず、積層体10を用意する。なお、図2A図2Dでは、図1Aに示す積層体10、すなわち、絶縁層1、触媒層4、レジスト形成層2、及び被覆層3をこの順に備える積層体10を用いているが、これに限られず、例えば触媒層4を備えていなくてもよい。積層体10の作製方法は、上記で説明したとおりである。
【0053】
図2Aに示すように、レジスト形成層2を露光することで図2Bに示すようにレジスト形成層2を部分的に硬化させる。本実施形態では、積層体10における被覆層3を通してレジスト形成層2に光を照射する。すなわち、本実施形態のプリント配線板100の作製方法では、被覆層3上から被覆層3を通して、光を照射することでレジスト形成層2を露光することを含む。これにより、積層体10における絶縁層1(絶縁性基板11)上にレジスト層12を形成する。なお、被覆層3を剥離した後、露光してもよい。この場合、レジスト形成層2を露光するにあたり、露光時のフィッシュアイの影響を低減させ、解像性の向上に寄与できる。
【0054】
被覆層3を通して、レジスト形成層2を部分的に露光するためには、例えば図2Aに示すように、ネガマスクMを被覆層3に当ててから、被覆層3を介してレジスト形成層2に紫外線を照射する。ネガマスクMは、紫外線を透過させる露光部Maと紫外線を遮蔽する非露光部Mbとを備え、非露光部Mbは、例えばレジスト形成層2の未硬化部2bと合致する位置に設けられる。ネガマスクMにおける非露光部Mbは、例えばメッキ層を作製する部分である。ネガマスクMは、例えばマスクフィルム、乾板等のフォトツールである。紫外線の光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、感光性組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0055】
露光方法は、ネガマスクを用いる方法以外の方法であってもよい。例えば、光源から発せられる紫外線をレジスト形成層2を硬化させるために露光すべき部分(露光部Ma)のみに照射する直接描画法でレジスト形成層2を露光してもよい。直接描画法に適用される光源は、例えばケミカルランプ、低圧水銀灯、中圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、キセノンランプ、メタルハライドランプ、LED、YAG、g線(436nm)、h線(405nm)、i線(365nm)、並びにg線、h線及びi線のうちの二種以上の組み合わせからなる群から選択される。紫外線の光源はこれらに限定されず、感光性組成物を硬化させうる紫外線を照射できる光源であればよい。
【0056】
なお、レジスト形成層2の全面を露光(全面露光)してレジスト層12を作製した場合には、積層体10から被覆層3を剥離、続いてレジスト層12上にメッキ処理、又は金属箔を配置することにより、金属張積層板を作製することができる。もちろん、積層体10が絶縁層1の両面にレジスト形成層2(例えば、第1レジスト形成層21及び第2レジスト形成層22)と被覆層3(例えば、第1被覆層31及び第2被覆層32)との各々を備える場合には、両面金属張積層板とすることもできる。
【0057】
レジスト形成層2が露光されると、積層体10において、レジスト形成層2のうち硬化した部分(硬化部2a)と未硬化の部分(未硬化部2b)とが形成される。例えば、図2Aに示すようにレジスト形成層2がネガマスクMを介して露光されると、ネガマスクMの露光部Maに対応して感光性樹脂組成物の乾燥物又は半硬化物の露光された部分が硬化され、一方ネガマスクMの非露光部Mbに対応して露光されなかった部分は未硬化である。
【0058】
続いて、露光した積層体10から、図2Bに示すように、被覆層3を剥離することにより、絶縁層1上に硬化部2aと未硬化部2bとを含むレジスト形成層2を露出させる。
【0059】
続いて、露光後のレジスト形成層2に現像処理を施すことで、レジスト形成層2からレジスト層12を作製できる。具体的には、現像処理を施すことで、図2Bに示すレジスト形成層2の硬化部2aが残存し、未硬化部2bが除去される。これにより、図2Cに示すようにレジスト層12が形成される。本実施形態では、レジスト層12は、上述のとおり、レジスト形成層2の未硬化部2bが除去されているため、硬化部2aで形成されている。
【0060】
現像処理では、感光性組成物の組成に応じた適宜の現像液を使用できる。現像液は、例えばアルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液、又は有機アミンである。アルカリ性水溶液は、より具体的には例えば炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸アンモニウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素アンモニウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化アンモニウム、水酸化テトラメチルアンモニウム及び水酸化リチウムからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。アルカリ性水溶液中の溶媒は、水のみであっても、水と低級アルコール類等の親水性有機溶媒との混合物であってもよい。有機アミンは、例えばモノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びトリイソプロパノールアミンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有する。
【0061】
現像液は、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液であることが好ましく、炭酸ナトリウム水溶液であることが特に好ましい。この場合、作業環境の向上及び廃棄物処理の負担軽減を達成できる。
【0062】
これにより、積層体10における絶縁層1が絶縁性基板11となり、この絶縁性基板11上に、感光性組成物の硬化物を含むレジスト層12を備える基板20が得られる。
【0063】
続いて、基板20に対し、メッキ処理を施すことで、導体層13を作製することができる。例えば、レジスト形成層2から作製されたレジスト層12には、メッキ処理を施すことができる。すなわち、レジスト層12はめっきレジスト層としても利用可能である。そのため、積層体10からプリント配線板100を作製するにあたり、プリント配線板100にはホールめっき等のメッキ層を含む導体層13を備えることができる。例えば、プリント配線板100は、積層体10におけるレジスト形成層2を露光及び現像してから、レジスト層12における除去された部分にメッキ処理を施すことで、例えばホールめっきなどの導体配線131を備えてもよい(図2D参照)。
【0064】
具体的には、図2Dに示すように、レジスト層12において、レジスト形成層2から形成された隣り合う硬化部2aとの間の隙間(未硬化部2bが除去された箇所)にメッキ処理を施すことで、例えば導体層13(より具体的には導体配線131)を作製することができる。なお、メッキ処理の方法は、上記ではいわゆるフルアディティブ法により方法を説明したが、これに限られず、適宜の方法が採用できる。
【0065】
上記メッキ処理を施す前に、レジスト層12に熱処理とUV処理とのうちのいずれか一方、又は両方の処理を行ってもよい。この場合、レジスト層12の密着性、及びメッキ耐性が向上する。
【0066】
また、上記メッキ処理を施す前に、レジスト層12に粗化処理を施すことで、レジスト層12の表面を粗化してもよい。例えば、レジスト層12の外表面の一部とレジスト層の隙間における内側面全体とを粗化するにあたって、酸化剤を用いた一般的なデスミア処理を行うことができる。例えば、レジスト層12の外表面に酸化剤を接触させて、レジスト層12に粗面を付与する。しかし、これに限らず、プラズマ処理、コロナ処理、UV処理、オゾン処理やプライマー処理等の硬化物に粗面を付与しない手法も適宜採用することができる。酸化剤は、デスミア液として入手可能な酸化剤であってもよい。例えば、市販のデスミア用膨潤液とデスミア液とにより、酸化剤が構成され得る。このような酸化剤は、例えば過マンガン酸ナトリウムや過マンガン酸カリウムの群から選択される少なくとも1種の過マンガン酸塩を含有することができる。また、デスミア処理は、上記メッキ処理を施す前に、プラズマ処理を行うことによって施してもよい。この場合、レジスト形成層2を露光してから、現像処理をするにあたり、レジスト残渣が発生した場合、レジスト残渣を除去することができる。
【0067】
このようにして、絶縁性基板11、レジスト層12、及び導体層13を備えるプリント配線板100を作製することができる。本実施形態では、積層体10における絶縁層1がプリント配線板100における絶縁性基板11となり、積層体10におけるレジスト形成層2がプリント配線板100における絶縁性のレジスト層12となっている。すなわち、積層体10における絶縁層1は、絶縁性の基材として、レジスト形成層2は、永久レジストとして、各々利用可能である。
【0068】
プリント配線板100におけるレジスト層12の厚さは、特に限定されないが、0.5μm以上20μm以下であることが好ましい。レジスト層12の厚さは、0.8μm以上15μm以下であることがより好ましく、1.0μm以上13μm以下であることが更に好ましく、1.5μm以上10μm以下であることが特に好ましい。レジスト層12は、既に述べたとおり、例えば層間絶縁層として好適に用いることができる。レジスト層12を層間絶縁層として用いる場合、層間絶縁層の高い解像性を確保するためには、0.5μm以上20μm以下であることが好ましく、1μm以上10μm以下の範囲内であることがより好ましい。
【0069】
<<感光性組成物>>
次に、本実施形態に係るレジスト形成層2を作製するための感光性組成物が含有しうる成分について、詳細に説明する。なお、以下の説明において、「(メタ)アクリル」とは、「アクリル」と「メタクリル」とのうち少なくとも一方を意味する。例えば、(メタ)アクリレートは、アクリレートとメタクリレートのうち少なくとも一方を意味する。
【0070】
感光性組成物は、本実施形態のレジスト形成層2を作製するために好適に用いることができる。そのため、本実施形態の感光性組成物では、この乾燥物であるドライフィルムから、あるいは感光性組成物の塗膜から、めっきレジスト層、ソルダーレジスト層、及び層間絶縁層等の電気絶縁性層を特に良好に形成することができる。
【0071】
(カルボキシル基含有樹脂)
感光性組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)を含有することが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基を少なくとも2つ有するエポキシ化合物(a1)と、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物と、酸二無水物(a4)を含有する酸無水物(a3)とが反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有することが好ましい。
【0072】
本実施形態では、カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)を含有する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の合成について具体的に説明する。
【0073】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物(以下、「生成物(X)」ともいう)は、エポキシ化合物(a1)における二つのエポキシ基の各々にカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(X1)を含有する。この生成物(X1)は、エポキシ基とカルボキシル基との反応により生じた二級の水酸基と、カルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基とを有する。生成物(X)は、エポキシ化合物(a1)における二つのエポキシ基のうち一方のみにカルボン酸(a2)におけるカルボキシル基が反応して生成した生成物(X2)も含有しうる。生成物(X2)は、二級の水酸基と、エチレン性不飽和基と、エポキシ基とを有する。生成物(X)は未反応のエポキシ化合物(a1)も含有しうる。すなわち、生成物(X)はエポキシ基を有する成分を含有することがあり、この成分は生成物(X2)とエポキシ化合物(a1)とのうち少なくとも一方を含みうる。
【0074】
生成物(X)と酸無水物(a3)とが反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)は、生成物(X1)と酸二無水物(a4)との反応により生成する成分(X3)を含有する。成分(X3)は、酸二無水物(a4)に由来するカルボキシル基を有する。また、酸二無水物(a4)による架橋反応が生じうることから、成分(X3)には分子量分布が生じやすい。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、未反応の生成物(X1)も含みうる。
【0075】
さらに、酸無水物(a3)は、酸一無水物(a5)を含有しうる。よって、生成物(X)と酸無水物(a3)とが反応して生成するカルボキシル基含有樹脂(A1)は、生成物(X1)と酸一無水物(a5)との反応により生成する成分(X4)を含有する。成分(X4)は、酸一無水物(a5)に由来するカルボキシル基を有する。
【0076】
これにより、カルボキシル基含有樹脂(A1)は適度な分子量分布を有しうる。このため、所望の分子量及び多分散度を有するカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。すなわち、数平均分子量Mnが500以上2500以下であり、かつ多分散度Mw/Mnが1.2以上2.8以下の範囲内であるカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。
【0077】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、エポキシ基を有する樹脂を含有することも好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A)がエポキシ基を有する樹脂を含有すると、感光性組成物において、残存するカルボキシル基との反応性を有しうる。このため、感光性組成物は、熱硬化性を発現できうる。
【0078】
カルボキシル基含有樹脂(A1)は、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)に由来するエチレン性不飽和基を有しているから、光反応性を有する。このため、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、感光性組成物に、感光性(具体的には紫外線硬化性)を付与できる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、酸無水物(a3)に由来するカルボキシル基を有しているから、感光性組成物に、アルカリ金属塩及びアルカリ金属水酸化物のうち少なくとも一方を含有するアルカリ性水溶液による現像性を付与できる。さらに、酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量は、酸二無水物(a4)による架橋の数に依存する。このため、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。また、酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、酸二無水物(a4)の量を制御することで、所望の分子量及び酸価のカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0079】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量は500以上2500以下であることが好ましい。この場合、感光性組成物のアルカリ性水溶液による現像性が向上しやすい。数平均分子量は、より好ましくは800以上2300以下であり、更に好ましくは900以上2200以下であり、特に好ましくは1000以上2000以下である。
【0080】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度Mw/Mnは1.2以上2.8以下であることが好ましい。カルボキシル基含有樹脂(A1)の多分散度Mw/Mnは、より好ましくは1.3以上2.7以下であり、更に好ましくは1.4以上2.6以下であり、特に好ましくは1.5以上2.5以下である。なお、なお、多分散度は、カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)に対する重量平均分子量(Mw)の比の値(Mw/Mn)である。
【0081】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィによる分子量測定結果から算出される。ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィでの分子量測定は、例えば、次の条件の下で行うことができる。
GPC装置:昭和電工社製SHODEX SYSTEM 11、
カラム:SHODEX KF-800P,KF-005,KF-003,KF-001の4本直列、
移動相:THF、
流量:1ml/分、
カラム温度:45℃、
検出器:RI、
換算:ポリスチレン。
【0082】
カルボキシル基含有樹脂(A1)の酸価は55mgKOH/g以上130mgKOH/g以下であることが好ましい。この場合、感光性組成物から作製される硬化物の解像性が特に向上する。カルボキシル基含有樹脂(A1)の酸価は、より好ましくは60mgKOH/g以上120mgKOH/g以下であり、更に好ましくは60mgKOH/g以上110mgKOH/g以下であり、特に好ましくは60mgKOH/g以上75mgKOH/g未満である。
【0083】
カルボキシル基含有脂(A1)の原料、並びにカルボキシル基含有樹脂(A1)の合成時の反応条件について詳しく説明する。
【0084】
エポキシ基を少なくとも2つ有するエポキシ化合物(a1)は、例えばビスフェノールフルオレン骨格を有する化合物を含有できる。カルボキシル基含有樹脂(A1)は、例えば、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とが反応して生成する生成物と、酸無水物(a3)と、の反応物である。すなわち、カルボキシル基含有樹脂(A1)は、下記式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物とエチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)とを反応させ、それにより得られた生成物と、酸無水物(a3)とを反応させることで合成される。感光性組成物がカルボキシル基含有樹脂(A1)を含有していると、感光性組成物の硬化物は、高い耐熱性及び絶縁信頼性を有しうる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)がビスフェノールフルオレン骨格を有する場合は、300~330nmの波長域の光を吸収しやすいため、感光性組成物から作製される硬化物の解像性が向上しうる。また、カルボキシル基含有樹脂(A1)がビスフェノールフルオレン骨格を有する場合は、嵩高い構造をもつため、生成するラジカル種の拡散を防ぐことができ、300~330nmの波長域を有さない光で露光した場合においても、感光性組成物から作製される硬化物の解像性が向上しうる。
【0085】
【化1】
【0086】
式(1)におけるR1~R8の各々は、水素でもよいが、炭素数1~5のアルキル基又はハロゲンでもよい。なぜなら、芳香環における水素が低分子量のアルキル基又はハロゲンで置換されても、カルボキシル基含有樹脂(A1)の物性に悪影響はなく、むしろカルボキシル基含有樹脂(A1)を含む感光性組成物の硬化物の耐熱性あるいは難燃性が向上する場合もあるからである。
【0087】
エポキシ化合物(a1)は、例えば下記式(2)に示す構造を有していてもよい。式(2)中のnは、例えば0~20の範囲内の整数である。カルボキシル基含有樹脂(A1)の分子量を適切に制御するためには、nの平均は0~1の範囲内であることが特に好ましい。nの平均が0~1の範囲内であれば、酸無水物(a3)が酸二無水物を含有する場合でも、過剰な分子量の増大が抑制されやすくなる。また、式(2)において、R1~R8は各々独立に水素、炭素数1以上5以下のアルキル基又はハロゲンである。
【0088】
【化2】
【0089】
エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)は、例えば一分子中にエチレン性不飽和基を1個のみ有する化合物を含有できる。より具体的には、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、クロトン酸、桂皮酸、2-アクリロイルオキシエチルコハク酸、2-メタクリロイルオキシエチルコハク酸、2-アクリロイルオキシエチルフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルフタル酸、2-アクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-メタクリロイルオキシプロピルフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルマレイン酸、2-メタクリロイルオキシエチルマレイン酸、β-カルボキシエチルアクリレート、2-アクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-メタクリロイルオキシエチルテトラヒドロフタル酸、2-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸、及び2-メタクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタル酸からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。好ましくは、エチレン性不飽和基を有するカルボン酸(a2)はアクリル酸を含有する。
【0090】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させるに当たっては、適宜の方法が採用され得る。例えば、エポキシ化合物(a1)の溶剤溶液にカルボン酸(a2)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により、好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、生成物(X)を得ることができる。この場合の溶剤は、例えばメチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、及びトルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、及び酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の酢酸エステル類、及びジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。熱重合禁止剤は例えばハイドロキノン及びハイドロキノンモノメチルエーテルのうち少なくとも一方を含有する。触媒は例えばベンジルジメチルアミン、トリエチルアミン等の第3級アミン類、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、メチルトリエチルアンモニウムクロライド等の第4級アンモニウム塩類、トリフェニルフォスフィン、及びトリフェニルスチビンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0091】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させることが好ましい。この場合、エポキシ化合物(a1)におけるエポキシ基とカルボン酸(a2)との開環付加反応が特に促進され、95%以上、あるいは97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0092】
エポキシ化合物(a1)とカルボン酸(a2)とを反応させる際のエポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対するカルボン酸(a2)の量は0.7モル以上1.0モル以下であることが好ましい。この場合、優れた感光性と安定性とを有する感光性組成物が得られる。
【0093】
このようにして得られる生成物(X)は、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基とカルボン酸(a2)のカルボキシル基との反応で生成された水酸基を備える。
【0094】
酸二無水物(a4)は、酸無水物基を二つ有する化合物である。酸二無水物(a4)は、テトラカルボン酸の無水物を含有できる。酸二無水物(a4)は、例えば1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、メチルシクロヘキセンテトラカルボン酸二無水物、テトラカルボン酸二無水物、ナフタレン-1,4,5,8-テトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物、グリセリンビスアンヒドロトリメリテートモノアセテート、エチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、1,3,3a,4,5,9b-ヘキサヒドロ-5(テトラヒドロ-2,5-ジオキソ-3-フラニル)ナフト〔1,2-c〕フラン-1,3-ジオン、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、及び3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。特に酸二無水物(a4)が3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物を含有することが好ましい。この場合、感光性組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性組成物から作製される皮膜のタック性を更に抑制するとともに硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。
【0095】
酸無水物(a3)は、酸一無水物(a5)を含んでいてもよい。酸一無水物(a5)は、酸無水物基を一つ有する化合物である。酸一無水物(a5)は、ジカルボン酸の無水物を含有できる。酸一無水物(a5)は、例えばフタル酸無水物、1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸、メチルテトラヒドロフタル酸無水物、メチルナジック酸無水物、ヘキサヒドロフタル酸無水物、メチルヘキサヒドロフタル酸無水物、コハク酸無水物、メチルコハク酸無水物、マレイン酸無水物、シトラコン酸無水物、グルタル酸無水物、シクロヘキサン-1,2,4-トリカルボン酸-1,2-無水物、及びイタコン酸無水物からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。この場合、感光性組成物の良好な現像性を確保しながら、感光性組成物から作製される皮膜のタック性を更に抑制するとともに硬化物の絶縁信頼性及び耐メッキ性を更に向上できる。
【0096】
生成物(X)と酸無水物(a3)とを反応させるに当たっては、適宜の方法が採用されうる。例えば、生成物(X)の溶剤溶液に酸無水物(a3)を加え、更に必要に応じて熱重合禁止剤及び触媒を加えて攪拌混合することで、反応性溶液を得る。この反応性溶液を常法により好ましくは60℃以上150℃以下、特に好ましくは80℃以上120℃以下の温度で反応させることで、カルボキシル基含有樹脂(A1)が得られる。溶剤、触媒及び重合禁止剤としては、適宜のものが使用でき、生成物(X)の合成時に使用した溶剤、触媒及び重合禁止剤をそのまま使用することもできる。
【0097】
触媒が特にトリフェニルフォスフィンを含有することが好ましい。すなわち、トリフェニルフォスフィンの存在下で、生成物(X)と、酸無水物(a3)とを反応させることが好ましい。この場合、生成物(X)における二級の水酸基と酸無水物(a3)との反応が特に促進され、90%以上、95%以上、97%以上、あるいはほぼ100%の反応率(転化率)を達成できる。
【0098】
酸無水物(a3)が酸二無水物(a4)を含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸二無水物(a4)の量は、0.01モル以上0.24モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。酸二無水物(a4)の量は、0.04モル以上0.22モル以下であることがより好ましい。
【0099】
また、酸無水物(a3)が酸一無水物(a5)を更に含有する場合、エポキシ化合物(a1)のエポキシ基1モルに対して、酸一無水物(a5)の量は0.05モル以上0.7モル以下であることが好ましい。この場合、酸価と分子量とが適度に調整されたカルボキシル基含有樹脂(A1)が容易に得られる。
【0100】
生成物(X)と、酸無水物(a3)とを、エアバブリング下で反応させることも好ましい。この場合、生成されるカルボキシル基含有樹脂(A1)の過度な分子量増大が抑制されることで、感光性組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0101】
感光性組成物中の、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外の成分について説明する。
【0102】
感光性組成物は、既に述べたとおり、例えばエチレン性不飽和基及びカルボキシル基を有する樹脂を含有するカルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、光重合性化合物(C)と、を含有する。
【0103】
カルボキシル基含有樹脂(A)は、カルボキシル基含有樹脂(A1)のみを含有してもよく、カルボキシル基含有樹脂(A1)以外の感光性樹脂(A2)を含有してもよい。感光性樹脂(A2)は、例えばカルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物を含有するエチレン性不飽和単量体の重合体とエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物との反応物である樹脂を含有する。エチレン性不飽和単量体はカルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。感光性樹脂(A2)は、重合体におけるカルボキシル基の一部にエポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を反応させることで得られる。エチレン性不飽和単量体は、カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物を更に含有してもよい。カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物は、例えばアクリル酸、メタクリル酸、ω-カルボキシ-ポリカプロラクトン(n≒2)モノアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等の化合物を含有する。カルボキシル基を有さないエチレン性不飽和化合物は、例えば2-(メタ)アクリロイロキシエチルフタレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチル-2-ヒドロキシエチルフタレート、直鎖又は分岐の脂肪族あるいは脂環族(ただし、環中に一部不飽和結合を有してもよい)の(メタ)アクリル酸エステル等の化合物を含有する。エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物は、グリシジル(メタ)アクリレートを含有することが好ましい。
【0104】
(光重合開始剤)
感光性組成物は、光重合開始剤(B)を含有することが好ましい。光重合開始剤(B)は、感光性組成物の感光性を向上させうる成分である。光重合開始剤(B)は、例えばα-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤、及びオキシムエステル系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも1種を含有することが好ましい。この場合、感光性組成物を紫外線等の光を照射して露光する場合に、感光性組成物に高い感光性を付与できる。光重合開始剤(B)は、アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤を含有することが更に好ましい。この場合、感光性組成物に高い感光性を付与できるとともに、着色が少なく、高い透明性を維持できる。
【0105】
α-アミノアルキルフェノン系光重合開始剤は、例えば2-メチル-1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルホリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタノン-1、2-(ジメチルアミノ)-2-[(4-メチルフェニル)メチル]-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノンからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0106】
アシルホスフィンオキサイド系光重合開始剤は、例えば2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイル-エチル-フェニル-フォスフィネート等のモノアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤、並びにビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-4-プロピルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジクロロベンゾイル)-1-ナフチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,5-ジメチルフェニルフォスフィンオキサイド、ビス-(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、(2,5,6-トリメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のビスアシルフォスフィンオキサイド系光重合開始剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0107】
オキシムエステル系光重合開始剤は、例えば1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)-,2-(О-ベンゾイルオキシム)]、エタノン,1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]-,1-(O-アセチルオキシム)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0108】
感光性組成物は、更に適宜の光重合促進剤、及び増感剤等を含有してもよい。例えば感光性組成物は、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン、フェニルグリオキシックアシッドメチルエステル、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、2-ヒドロキシ-1-{4-[4-(2-ヒドロキシ-2-メチル-プロピオニル)-ベンジル]フェニル}-2-メチル-プロパン-1-オン及び2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のヒドロキシケトン類;ベンゾインとそのアルキルエーテル類;アセトフェノン、ベンジルジメチルケタール等のアセトフェノン類;2-メチルアントラキノン等のアントラキノン類;2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2-イソプロピルチオキサントン、4-イソプロピルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン等のチオキサントン類;ベンゾフェノン、4-ベンゾイル-4’-メチルジフェニルスルフィド、ビス(ジエチルアミノ)ベンゾフェノン等のベンゾフェノン類;2,4-ジイソプロピルキサントン等のキサントン類;並びに2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン等のα-ヒドロキシケトン類;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノ-1-プロパノン等の窒素原子を含む化合物からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。感光性組成物は、光重合開始剤(B)と共に、p-ジメチル安息香酸エチルエステル、p-ジメチルアミノ安息香酸イソアミルエステル、2-ジメチルアミノエチルベンゾエート等の第三級アミン系等の適宜の光重合促進剤及び増感剤等を含有してもよい。感光性組成物は、必要に応じて、可視光露光用の光重合開始剤及び近赤外線露光用の光重合開始剤のうちの少なくとも一種を含有してもよい。感光性接着剤組成物は、光重合開始剤(B)と共に、レーザー露光法用増感剤である7-ジエチルアミノ-4-メチルクマリン等のクマリン誘導体、カルボシアニン色素系、キサンテン色素系等を含有してもよい。
【0109】
(光重合性化合物)
感光性組成物は、光重合性化合物(C)を含有することが好ましい。光重合性化合物(C)は、感光性組成物に光硬化性を付与できる。光重合性化合物(C)は、光重合性モノマー及び光重合性プレポリマーからなる群から選択される少なくとも一種を含むことが好ましい。光重合性モノマーとしては、例えば2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレート;並びにジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ε-カプロラクトン変性ペンタエリストールヘキサアクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。
【0110】
光重合性プレポリマーは、例えばエチレン性不飽和結合を有するモノマーを重合させてからエチレン性不飽和基を付加して得られるプレポリマー、及びオリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。オリゴ(メタ)アクリレートプレポリマー類は、例えばエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、アルキド樹脂(メタ)アクリレート、シリコーン樹脂(メタ)アクリレート、及びスピラン樹脂(メタ)アクリレートからなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0111】
特に光重合性化合物(C)は、二官能の不飽和化合物と三官能の不飽和化合物とのうち少なくとも一方、すなわち一分子中に不飽和結合を2つ有する化合物又は一分子中に不飽和結合を3つ有する化合物の少なくとも一種を含有することが好ましい。この場合、感光性組成物から作製される乾燥皮膜を露光・現像する場合の解像性が向上するとともに、感光性組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。
【0112】
(その他の成分)
感光性組成物は、上記で説明した以外の成分を含有してもよい。例えば、感光性組成物は、エポキシ化合物(D)を更に含有することが好ましい。この場合、感光性組成物に熱硬化性を付与できる。また、この場合、感光性組成物から作製される硬化物の耐メッキ性、及び絶縁性を向上させることができる。
【0113】
エポキシ化合物(D)は、例えば結晶性エポキシ樹脂(D1)を含有することができる。また、エポキシ化合物(D)は、非晶性エポキシ樹脂(D2)を更に含有してもよい。ここで「結晶性エポキシ樹脂」は、融点を有するエポキシ樹脂であり、「非晶性エポキシ樹脂」は、融点を有さないエポキシ樹脂である。
【0114】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、例えば、1,3,5-トリス(2,3-エポキシプロピル)-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン、ハイドロキノン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YDC-1312)、ビフェニル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品名YX-4000)、ジフェニルエーテル型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日鉄ケミカル&マテリアル株式会社製の品番YSLV-80DE)、ビスフェノール型結晶性エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品名YSLV-80XY)、テトラキスフェノールエタン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番GTR-1800)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される一種以上の成分を含有することが好ましい。
【0115】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は、1分子中に2個のエポキシ基を有することが好ましい。この場合、温度変化が繰り返される中で、硬化物にクラックを更に生じ難くさせることができる。
【0116】
結晶性エポキシ樹脂(D1)は150g/eq以上300g/eq以下のエポキシ当量を有することが好ましい。このエポキシ当量は、1グラム当量のエポキシ基を含有する結晶性エポキシ樹脂(D1)のグラム重量である。結晶性エポキシ樹脂(D1)は融点を有する。結晶性エポキシ樹脂(D1)の融点としては、例えば70℃以上180℃以下が挙げられる。
【0117】
特にエポキシ化合物(D)は、融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)を含有することが好ましい。この場合、感光性剤組成物のアルカリ性水溶液による現像性が特に向上する。また、この場合、感光性組成物から作製される硬化物層の解像性(開口性)も向上しうる。融点110℃以下の結晶性エポキシ樹脂(D1-1)は、例えばビフェニル型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番YX-4000)、ビフェニルエーテル型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-80DE)、及びビスフェノール型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学製の品番YSLV-80XY)、ビスフェノールフルオレン型結晶性エポキシ樹脂(具体例として構造(S7)を有するエポキシ樹脂)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。
【0118】
非晶性エポキシ樹脂(D2)は、例えば、フェノールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-775)、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-695)、ビスフェノールAノボラック型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON N-865)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER1001)、ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として三菱化学株式会社製の品番jER4004P)、ビスフェノールS型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-1514)、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂(具体例として日本化薬株式会社製の品番NC-3000)、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として新日鉄住金化学株式会社製の品番ST-4000D)、ナフタレン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-4032、EPICLON HP-4700、EPICLON HP-4770)、ターシャリーブチルカテコール型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON HP-820)、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂(具体例としてDIC製の品番EPICLON HP-7200)、アダマンタン型エポキシ樹脂(具体例として出光興産株式会社製の品番ADAMANTATEX-E-201)、特殊二官能型エポキシ樹脂(具体例として、三菱化学株式会社製の品番YL7175-500、及びYL7175-1000;DIC株式会社製の品番EPICLON TSR-960、EPICLON TER-601、EPILON TSR-250-80BX、EPICLON 1650-75MPX、EPICLON EXA-4850、EPICLON EXA-4816、EPICLON EXA-4822、及びEPICLON EXA-9726;新日鉄住金化学株式会社製の品番YSLV-120TE)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-156)、ゴム状コアシェルポリマー変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番MX-136)、並びにゴム粒子含有ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例として株式会社カネカ製の品番カネエースMX-130)からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有することが好ましい。
【0119】
感光性組成物がエポキシ化合物(D)を含有する場合、感光性組成物は、結晶性エポキシ樹脂(D1)と非晶性エポキシ樹脂(D2)との両方を含有することが好ましい。この場合、感光性組成物から作製される硬化物の耐メッキ性、及び絶縁性をより向上させることができる。
【0120】
エポキシ化合物(D)はリン含有エポキシ樹脂を含有してもよい。この場合、感光性組成物の硬化物の難燃性が向上する。リン含有エポキシ樹脂は結晶性エポキシ樹脂(D1)に含有されてもよいし、あるいは非晶性エポキシ樹脂(D2)に含有されてもよい。リン含有エポキシ樹脂は、例えば、リン酸変性ビスフェノールF型エポキシ樹脂(具体例としてDIC株式会社製の品番EPICLON EXA-9726、及びEPICLON EXA-9710)、新日鉄住金化学株式会社製の品番エポトートFX-305等である。
【0121】
エポキシ化合物(D)は、ビスフェノールフルオレン骨格を有するエポキシ化合物(D3)を含有してもよい。このエポキシ化合物(D3)は、例えば上記で説明した式(1)で示されるビスフェノールフルオレン骨格(S1)を有するエポキシ化合物(a1)を含む。
【0122】
感光性組成物は、溶剤(E)を含有することが好ましい。溶剤(E)は、水、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール等の直鎖、分岐、2級又は多価のアルコール類;メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;スワゾールシリーズ(丸善石油化学社製)、ソルベッソシリーズ(エクソン・ケミカル社製)等の石油系芳香族系混合溶剤;セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類;カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類;エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル等のアルキレングリコールアルキルエーテル類;ジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類;並びにジアルキルグリコールエーテル類からなる群から選択される少なくとも一種の化合物を含有できる。溶剤(E)は、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エタノール、イソブタノール、1-ブタノール、イソプロパノール、ヘキサノール、エチレングリコール、3-メチル-3-メトキシブタノール、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールメチルエーテル、及びジプロピレングリコールメチルエーテル等のポリプロピレングリコールアルキルエーテルからなる群から選択される少なくとも一種のアルコール系溶剤(E1)を含有することが好ましい。すなわち、感光性組成物は、アルコール系溶剤(E1)を含有することが好ましい。この場合、感光性組成物を調製するにあたって、感光性組成物の塗布性及び均一性をより向上させることができる。また、基材に熱可塑性のフィルムを用いた場合においても、基材の溶解を生じにくくでき基材に損傷を与えにくい。溶剤(E)は、プロピレングリコールモノメチルエーテルを含むことがより好ましい。この場合、感光性組成物の塗布性及び均一性を更に向上させることができ、かつ良好な乾燥性も得られる。プロピレングリコールモノメチルエーテルは、溶剤(E)に対して50質量%以上の割合で含有することが更に好ましい。
【0123】
感光性組成物は、カプロラクタム、オキシム、マロン酸エステル等でブロックされたトリレンジイソシアネート系、モルホリンジイソシアネート系、イソホロンジイソシアネート系及びヘキサメチレンジイソシアネート系のブロックドイソシアネート;ブチル化尿素樹脂;前記以外の各種熱硬化性樹脂;紫外線硬化性エポキシ(メタ)アクリレート;ビスフェノールA型、フェノールノボラック型、クレゾールノボラック型、脂環型等のエポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を付加して得られる樹脂;並びにジアリルフタレート樹脂、フェノキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂等の高分子化合物からなる群から選択される少なくとも一種の樹脂を含有してもよい。
【0124】
感光性組成物は、エポキシ化合物(D)を硬化させるための硬化剤を含有してもよい。硬化剤は、例えば、イミダゾール、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール、2-フェニルイミダゾール、4-フェニルイミダゾール、1-シアノエチル-2-フェニルイミダゾール、1-(2-シアノエチル)-2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体;ジシアンジアミド、ベンジルジメチルアミン、4-(ジメチルアミノ)-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メトキシ-N,N-ジメチルベンジルアミン、4-メチル-N,N-ジメチルベンジルアミン等のアミン化合物;アジピン酸ヒドラジド、セバシン酸ヒドラジド等のヒドラジン化合物;トリフェニルフォスフィン等のリン化合物;酸無水物;フェノール;メルカプタン;ルイス酸アミン錯体;及びオニウム塩からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有できる。これらの成分の市販品は、例えば、四国化成株式会社製の2MZ-A、2MZ-OK、2PHZ、2P4BHZ、2P4MHZ(いずれもイミダゾール系化合物の商品名)、サンアプロ株式会社製のU-CAT3503N、UCAT3502T(いずれもジメチルアミンのブロックイソシアネート化合物の商品名)、DBU、DBN、U-CATSA102、U-CAT5002(いずれも二環式アミジン化合物及びその塩)である。
【0125】
感光性組成物は、密着性付与剤を含有してもよい。密着性付与剤としては、例えばアセトグアナミン(2,4-ジアミノ-6-メチル-1,3,5-トリアジン)、及びベンゾグアナミン(2,4-ジアミノ-6-フェニル-1,3,5-トリアジン)等のグアナミン誘導体、並びに2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン、2-ビニル-4,6-ジアミノ-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物、2,4-ジアミノ-6-メタクリロイルオキシエチル-S-トリアジン・イソシアヌル酸付加物等のS-トリアジン誘導体、シランカップリング剤等が、挙げられる。
【0126】
感光性組成物は、レオロジーコントロール剤を含有してもよい。レオロジーコントロール剤により、感光性組成物の粘性が好適化しやすくなる。レオロジーコントロール剤としては、例えば、ウレア変性中極性ポリアマイド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-430、BYK-431)、ポリヒドロキシカルボン酸アミド(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-405)、変性ウレア(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-410、BYK-411、BYK-420)、高分子ウレア誘導体(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-415)、ウレア変性ウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-425)、ポリウレタン(ビッグケミー・ジャパン株式会社製の品番BYK-428)、ひまし油ワックス、ポリエチレンワックス、ポリアマイドワックス、ベントナイト、カオリン、クレーが挙げられる。
【0127】
感光性組成物は、硬化促進剤;着色剤;シリコーン、アクリレート等の共重合体;レベリング剤;チクソトロピー剤;重合禁止剤;ハレーション防止剤;難燃剤;消泡剤;酸化防止剤;界面活性剤;並びに高分子分散剤からなる群から選択される少なくとも一種の成分を含有してもよい。
【0128】
感光性組成物中の成分の量は、感光性組成物が光硬化性を有し、かつアルカリ性溶液で現像可能であるように、適宜調整される。
【0129】
感光性組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(A)の量は、50質量%以上90質量%以下であれば好ましく、55質量%以上85質量%以下であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下であれば更に好ましい。また、感光性組成物の固形分量に対するカルボキシル基含有樹脂(A1)の量は、50質量%以上90質量%以下であれば好ましく、55質量%以上85質量%以下であればより好ましく、60質量%以上80質量%以下であれば更に好ましい。
【0130】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合開始剤(B)の量は、0.5質量%以上20質量%以下であることが好ましく、1質量%以上15質量%以下であることがより好ましく、2質量%以上10質量%以下であれば更に好ましい。
【0131】
カルボキシル基含有樹脂(A)に対する光重合性化合物(C)の量は、5質量%以上60質量%以下であれば好ましく、10質量%以上50質量%以下であればより好ましく、25質量%以上45質量%以下の範囲内であれば更に好ましい。
【0132】
感光性組成物が、エポキシ化合物(D)を含有する場合、エポキシ化合物(D)の量に関しては、エポキシ化合物(D)に含まれるエポキシ基の当量の合計が、カルボキシル基含有樹脂(A)に含まれるカルボキシル基1当量に対して0当量超2当量以下であることが好ましく、0当量超1当量以下であることがより好ましく、0当量超0.8当量以下であれば更に好ましく、0当量超0.5当量以下であれば特に好ましい。
【0133】
感光性組成物が、溶剤(E)を含有する場合、溶剤(E)の量に関しては、感光性組成物全体に対して50質量%以上95質量%以下であることが好ましい。この場合、感光性組成物を塗布するにあたって、感光性組成物の塗布性が向上しうる。
【0134】
本実施形態の感光性組成物を調製するにあたっては、適宜の方法で調整すればよい。例えば感光性組成物は、感光性組成物の原料を混合し、撹拌することにより調整可能である。また、例えば三本ロール、ボールミル、サンドミル等を用いる適宜の混練方法によって混練することで、感光性組成物を調製してもよい。原料に液状の成分、粘度の低い成分等が含まれる場合には、原料のうち液状の成分、粘度の低い成分等を除く部分をまず混練し混合物を調製してから、得られた混合物に、液状の成分、粘度の低い成分等を加えて混合することで、感光性組成物を調製してもよい。感光性組成物が溶剤(E)を含む場合、まず原料のうち、溶剤の一部又は全部を混合してから、原料の残りと混合してもよい。
【0135】
本実施形態に係る感光性組成物は、ソルダーレジスト層、層間絶縁層、めっきレジスト層等の、電気絶縁性の層の材料に適している。特に、上記のとおり、感光性組成物は、高い透明性を有しながら、高い現像性も有することができるため、光学用途の電気絶縁性材料に適している。
【0136】
既に述べたとおり、感光性組成物は、この感光性組成物から、10μmの厚み寸法を有する乾燥皮膜が作製された場合の、波長450~800nmの光透過率が80%以上であることが好ましく、85%以上であればより好ましく、90%以上であれば更に好ましく、95%以上であれば特に好ましい。この範囲内であれば、感光性組成物から作製される皮膜を透明性の高い硬化膜とすることができ、積層体10を光学用途に特に好適に用いることができる。
【0137】
本実施形態に係る感光性組成物は、厚さ25μmの皮膜であっても炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるような性質を有することが好ましい。この場合、十分に厚い電気絶縁性の層を、感光性組成物からフォトリソグラフィー法で作製することが可能であるため、感光性組成物を、プリント配線板における層間絶縁層、ソルダーレジスト層等を作製するために広く適用可能である。勿論、感光性組成物から厚さ25μmより薄い電気絶縁性の層を作製することも可能である。
【0138】
厚さ25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であるかどうかは、次の方法で確認できる。適当な基材上に感光性組成物を塗布することで湿潤塗膜を作製し、この湿潤塗膜を80℃で40分加熱することで、厚さ25μmの皮膜を形成する。この皮膜に紫外線を透過する露光部と紫外線を遮蔽する非露光部とを有するネガマスクを直接当てた状態で、皮膜に500mJ/cm2の条件で紫外線を照射して露光を行う。露光後に、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射してから、純水を0.2MPaの噴射圧で90秒間噴射する処理を行う。この処理後に皮膜を観察した結果、皮膜における非露光部に対応する部分が除去されて残渣が認められない場合に、厚さ25μmの皮膜が炭酸ナトリウム水溶液で現像可能であると判断できる。なお、他の厚さ(例えば30μm)の皮膜についても、同様に、炭酸ナトリウム水溶液での現像が可能かどうかを確認することができる。
【実施例
【0139】
以下、本発明の具体的な実施例を提示する。ただし、本発明は実施例のみに制限されない。
【0140】
(1)感光性樹脂Aの合成
還流冷却器、温度計、空気吹き込み管及び攪拌機を取付けた四つ口フラスコ内に、ビスフェノールフルオレン型エポキシ化合物(式(2)で示され、式(2)中のR1~R8がすべて水素であるエポキシ当量252g/eqのエポキシ化合物)252質量部、アクリル酸72質量部、トリフェニルフォスフィン1.5質量、4-メトキシフェノール0.2質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート200質量部を加えた。これらをエアバブリング下で攪拌することで混合物を調製した。この混合物をフラスコ内で、エアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度115℃、加熱時間12時間の条件で加熱した。これにより、中間体の溶液を調製した。
【0141】
続いて、フラスコ内の中間体の溶液に1,2,3,6-テトラヒドロ無水フタル酸15.4質量部、3,3’、4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物58.8質量部、及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート15質量部を投入した。これらをエアバブリング下で攪拌しながら加熱温度115℃、加熱時間6時間の条件で加熱し、更にエアバブリング下で攪拌しながら、加熱温度60℃、加熱時間6時間の条件で加熱した。これにより、感光性樹脂Aの65質量%溶液を得た。感光性樹脂Aの多分散度(Mw/Mn)は1.99、数平均分子量(Mn)は、1460、及び酸価は、71mgKOH/gであった。
【0142】
(2)感光性組成物の調製
[実施例1~9及び比較例1]
後掲の表1に示す成分を、表1に示す質量割合(質量部)で、フラスコ内に加えてから、温度35℃で撹拌混合することで、感光性組成物を調製した。なお、表に示される成分の詳細は次のとおりである。
・光重合開始剤A:2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニル-フォスフィンオキサイド(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad TPO H)。
・光重合開始剤B:1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン(IGM Resins B.V.社製、品番Omnirad 184)。
・光重合性化合物:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート。
・酸化防止剤:Pentaerythritol tetrakis(3-(3,5-di-tert-butyl-4-hydroxyphenyl)propionate)(BASFジャパン株式会社製、品番Irganox 1010)。
・表面改質剤:界面活性剤(DIC株式会社製、品番メガファックF-557)
・溶剤:プロピレングリコールモノメチルエーテル。
【0143】
【表1】
【0144】
[実施例10~11]
実施例10は、下記表2に示す成分を、表2に示す質量割合(質量部)で、フラスコ内に加えてから、温度35℃で撹拌混合することで、感光性組成物を調製した。また、後述の実施例11は、下記表3に示す成分を、表3に示す質量割合(質量部)で、フラスコ内に加えてから、温度35℃で撹拌混合することで、感光性組成物を調製した。表2,3に示される成分のうち、表1と共通するものは、上記表1と同様であるが、それ以外の成分の詳細は次のとおりである。
・シリカゾル:日産化学製シリカゾル、品名MEK-ST-ZL(固形分30wt%、粒径45nm、溶剤MEK(メチルエチルケトン))。
・カーボンブラック分散液(カーボンブラック15wt%、分散剤5wt%、溶剤MEK)。
【0145】
【表2】
【0146】
【表3】
【0147】
[透過率の測定]
上記(2)で調製した感光性組成物を、ポリエチレンテレフタレート(PET:Polyethylene terephthalate)製のフィルム上にアプリケーターで塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜に、120℃で5分間の条件で、加熱乾燥を行い、PET製のフィルム上に厚み寸法10μmの乾燥皮膜(ドライフィルム)を作製した。続いて、PET製のフィルム上に作製した乾燥皮膜の全面に、超高圧水銀ランプにより、400mJ/cm2の条件で紫外線を照射した。露光後の皮膜に現像処理を施した。現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。
【0148】
続いて、皮膜にメタルハライドランプにより、1000mJ/cm2の条件で紫外線を照射し、感光性組成物を硬化させた。PET製のフィルム上に作製した硬化物(硬化膜)を、紫外可視近赤外分光光度計(株式会社島津製作所製の品番UV-3100PC)にセットして、硬化物の450~800nmの透過率を測定した。リファレンスには、絶縁層であるPETフィルムを使用した。実施例1~9及び比較例1において得られた、厚み寸法10μmの硬化物の透過率曲線は、450~800nmのいずれの波長域においてもすべて95%以上の透過率を示した。
【0149】
なお、実施例10において、得られた厚み10μmの硬化物の透過率曲線は、450~800nmの波長域において、90~95%の透過率を示し、実施例11において、得られた厚み10μmの硬化物の透過率曲線は、450~800nmの波長域において、80~85%の透過率を示した。
【0150】
(3)テストピースの作製
実施例1~11及び比較例1について、積層体のテストピースを次のように作製した。
【0151】
[実施例1]
まず、絶縁層として、厚さ130μmのCOP(シクロオレフィンポリマー)フィルムを用意した。そして、COPフィルムの片面に100W・min/mでコロナ処理を行なった。このCOPのコロナ処理を行なった面に、上記(2)で調製した感光性組成物を、スピンコーターで塗布することにより、湿潤塗膜を形成した。この塗膜に対し、120℃で5分間の条件で加熱乾燥を行うことにより、COPフィルム上に厚さ2μmのレジスト形成層(以下、乾燥皮膜ともいう。)を作製した。続いて、乾燥皮膜の上に、被覆層としてPETフィルム(表面粗さSa:32nm(両面)、ヘイズ:2.6%、厚さ:16μm)を50℃で熱圧着し、ラミネートすることで、絶縁層、乾燥皮膜(レジスト形成層)、及び被覆層を備えるテストピース(寸法:幅100mm、長さ100mm、及び厚さ148μm)を作製した。加熱ラミネートの条件は、圧力0.5MPa、加熱温度50℃、及び加熱加圧時間45秒である。
【0152】
また、以下の評価(4-3)においては、実施例3では、無電解銅メッキを密着させるための表面処理を行った後、また、実施例1~2、4~11、及び比較例1においては、コロナ処理後に、無電解銅メッキを密着させるための表面処理を行った後、上記同様の方法で乾燥皮膜、及び被覆層を順に重ね、続いて更に無電解銅メッキ処理を行うことでテストピースを作製した。
【0153】
[実施例2]
実施例1において、被覆層であるPETフィルム(表面粗さSa:32nm(両面)、ヘイズ:2.6%、厚さ:16μm)を、表面粗さSa:5nm(両面)、ヘイズ:0.6%、厚さ:16μmのPETフィルムに変更した以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0154】
[実施例3]
実施例2において、乾燥皮膜(レジスト形成層)の膜厚を12μmにした以外は、実施例2と同様の方法でテストピースを作製した。
【0155】
[実施例4]
実施例1において、絶縁層であるCOPの表面にコロナ処理を施さないこと以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0156】
[実施例5]
実施例1において、被覆層を二軸延伸ポリプロプレン(OPP)フィルム(表面粗さSa:50nm(両面)、ヘイズ:0.3%、厚さ:40μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0157】
[実施例6]
実施例1において、被覆層をOPPフィルム(表面粗さSa:30nm(両面)、ヘイズ:1%、厚さ:20μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0158】
[実施例7]
実施例1において、被覆層をポリエチレン(PE)フィルム(Sa:60nm(両面)、ヘイズ:17%、厚さ20μm)に変更した以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0159】
[実施例8]
実施例2において、絶縁層をPETフィルムに、絶縁層の厚さを38μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法でテストピースを作製した。
【0160】
[実施例9]
実施例2において、レジスト形成層の厚さを15μmに変更した以外は、実施例2と同様の方法でテストピースを作製した。
【0161】
[実施例10]
実施例2において、レジスト形成層を、表2に記載の感光性樹脂組成物で作製すること以外は、実施例2と同様の方法でテストピースを作製した。
【0162】
[実施例11]
実施例2において、レジスト形成層を、表3に記載の感光性樹脂組成物で作製すること以外は、実施例2と同様の方法でテストピースを作製した。
【0163】
[比較例1]
実施例1において、被覆層を重ねなかった以外は、実施例1と同様の方法でテストピースを作製した。
【0164】
(4)評価
(4-1)解像性
実施例1~11及び比較例1のテストピースにおいて、乾燥皮膜に被覆層の上からライン幅4μm、及び6μmのラインを含むパターンを有し、かつ非露光部有するソーダガラス製のネガマスクを用いて、乾燥皮膜に超高圧水銀ランプにより、150mJ/cm2の条件で紫外線をプロキシミティ露光した。その後、被覆層を剥離した後、露光後の皮膜に現像処理を施した。なお、被覆層にPEを用いた実施例7においては、露光量150mJ/cm2の露光条件の場合、被覆層にPET又はOPPを用いた実施例1~6及び実施例8~11に比較してUV透過性が低下する傾向が見られたため、露光量150mJ/cm2から400mJ/cm2に増加した条件で紫外線を照射し、その後、露光後の皮膜に現像処理を施した。
【0165】
現像処理にあたっては、皮膜に30℃の1%Na2CO3水溶液を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。続いて、皮膜に純水を0.05MPaの噴射圧で60秒間噴射した。これにより、皮膜における露光されていない部分を除去して、皮膜にライン抜けのパターンを形成した。その後、メタルハライドランプにより1000mJ/cm2で追加のUV硬化を行った。露光及び現像処理後に得られたテストピースの状態を観察し、以下の基準で評価し、その結果を表4~5に示した。
A:充分に乾燥皮膜のUV硬化反応が進んでおり、現像時にUV照射箇所において硬化膜の剥離が生じず、かつライン幅4μmのスペースが解像できている。
B:充分に乾燥皮膜のUV硬化反応が進んでおり、現像時にUV照射箇所において硬化膜の剥離が生じず、ライン幅4μmのスペースは解像できていないが、ライン幅6μmのスペースが解像できている。
C:充分に乾燥皮膜のUV硬化反応は進んでおり、現像時にUV照射箇所において硬化膜の剥離が生じていないが、ライン幅4μm及び6μmのスペースは解像できていない。
D:充分に乾燥皮膜のUV硬化反応が進んでおらず、かつ現像時にUV照射箇所において一部硬化膜の剥離が生じる。
【0166】
(考察)
上記の結果より、被覆層としてPEをラミネートした実施例7に比べて、実施例1~5では、被覆層としてPET、及びOPPをラミネートした状態において露光を行なうと、乾燥皮膜のUV硬化反応が進みやすくなることが示唆された。また、低露光量(150mJ/cm2)においても、充分なUV硬化が可能となることがわかった。これは、ガス透過性が低い被覆層で被覆した状態で露光することにより、露光時の酸素阻害をより良好に低減することができたため、であると考えられる。
【0167】
また、実施例1~4及び実施例8~11と実施例5~7とを対比すると、特に被覆層としてPETを用いると、OPP又はPEの場合に比べて、被覆層中のフィッシュアイなどの異物の存在による露光光の散乱による影響を受けにくいため、解像性が向上することが示唆された。
【0168】
また、実施例1~4及び実施例8~11の結果より、被覆層にPETを用いた場合において、表面粗さSaが小さいほど、露光光の散乱がより抑えられ、解像性がより良好となった。
【0169】
なお、実施例7については、(4-2)以降の評価において、露光量400mJ/cm2に増加した条件で紫外線を照射し、その後、露光後の皮膜に現像処理を施した。露光及び現像処理後のテストピースで評価を行った。
【0170】
また、比較例1のように、被覆層を重ねないで露光を行なった場合には、露光時の酸素阻害の影響により、低露光量(150mJ/cm2)の露光ではUV硬化反応が充分でなく、UV照射箇所においても現像時に塗膜の一部が剥離した。したがって、以降の評価は、行っていない。
【0171】
(4-2)密着性
上記(4-1)で露光及び現像を行なったテストピースにおいて、JIS D0202に準拠して、テストピースのレジスト層に碁盤目状(幅約1mm)にクロスカットを入れ、次いで、セロハン粘着テープによるピーリング試験後の剥がれの状態を目視により観察した。その結果を以下に示す基準で評価し、その結果を表4~5に示した。
A:100個のクロスカット部分のうちの全てに全く変化が見られない。
B:100個のクロスカット部分のうち1~5箇所に僅かな浮きを生じた。
C:100個のクロスカット部分のうち5~10箇所に剥がれを生じた。
D:100個のクロスカット部分のうち11~100箇所に剥がれを生じた。
【0172】
(考察)
実施例1と実施例4の比較より、COP基材において、コロナ処理を行なうことにより、硬化膜の基材に対する密着性は向上しうることが確認された。これは、基材である絶縁層にコロナ処理を行なったことにより、絶縁層への極性基の付与や、濡れ性の変化が生じたためと推察される。同様の効果は、UV照射、プラズマ処理、オゾン処理、EB処理、及びプライマー処理(接着層、触媒層、アンカー剤(カップリング剤、アミノ化合物など))等いずれの処理を施しても得られると考えられる。
【0173】
また、実施例1~11のように、被覆層としてPET、OPP、又はPEをラミネートし、露光しても、絶縁層に対する硬化膜の密着性が向上することが確認された。これは、露光時の酸素阻害の低減による光反応の促進が起因しているものと考えられる。
【0174】
(4-3)メッキ耐性
絶縁層に無電解銅メッキを密着させるための表面処理を行った後に、(4-2)と同様の方法で作製した露光及び現像処理後のテストピースを、無電解Niめっき液に浸漬し、無電解メッキ処理を施した。得られたメッキ処理後のテストピースに、JIS D0202に準拠してテープピーリング試験を行なった。そして、以下に示す基準で評価し、その結果を表4~5に示した。
A:レジストにピーリングは発生しなかった。
B:レジストに若干の変色は見られたが、ピーリングは発生しなかった。
C:レジストに一部ピーリングが発生した。
D:レジストに大きなピーリングが発生した。
【0175】
(考察)
実施例1~11のように、酸素阻害を軽減して露光を行なうことで良好なメッキ耐性が得られることが示唆された。
【0176】
(4-4)平坦性
(4-2)で作製した露光及び現像後のテストピースを、レーザー顕微鏡で観察を行い、硬化膜表面の平坦性を次に示す基準で評価し、その結果を表2に示した。
A:一辺の長さが2μm以上の窪み又は凹みは見られない。
B:一辺の長さが2~3μmの窪み又は凹みが見られた。
C:一辺の長さが3~4μmの窪み又は凹みが見られた。
D:一辺の長さが4μm以上の窪み又は凹みが見られた。
【0177】
【表4】
【0178】
【表5】
【0179】
(まとめ)
上記実施形態から明らかなように、本開示は、下記の態様を含む。以下では、実施形態との対応関係を明示するためだけに、符号を括弧付きで付している。
【0180】
第1の態様に係る積層体(10)は、絶縁層(1)と、前記絶縁層(1)に重なるレジスト形成層(2)と、前記レジスト形成層(2)に重なる被覆層(3)と、を備える。前記レジスト形成層(2)は、感光性組成物の乾燥物又は半硬化物を含む。
【0181】
第1の態様によれば、積層体(10)において被覆層(3)を備えていることで、レジスト形成層(2)を硬化させるにあたり、大気中の酸素などの影響(例えば酸素阻害)を受けにくくして、レジスト形成層(2)を硬化させることができる。このため、レジスト形成層(2)の硬化物の硬化性を向上させることができ、その結果、積層体(10)によれば、解像性及び平坦性を改善しやすい。
【0182】
第2の態様の積層体(10)は、第1の態様において、プリント配線板(100)の作製のために用いられ、前記絶縁層(1)から前記プリント配線板(100)における絶縁性基板(11)が作製され、前記レジスト形成層(2)から前記プリント配線板(100)におけるレジスト層(12)が作製される。
【0183】
第2の態様によれば、積層体(10)における絶縁層(1)上にレジスト層(12)を作製すると、絶縁層(1)をプリント配線板(100)における絶縁性基板(11)として利用できる。また、レジスト形成層(2)を永久レジスト(永久膜)として利用できる。
【0184】
第3の態様の積層体(10)は、第1又は2の態様において、前記絶縁層(1)は、シクロオレフィンポリマー、液晶ポリマー、ポリエチレンテレフタレート、及びポリイミドからなる群から選択される少なくとも一種の絶縁材料を含む。
【0185】
第3の態様によれば、積層体(10)から作製されるプリント配線板(100)は低誘電特性に優れる。このため、プリント配線板(100)を高周波用途の電子機器、装置等に用いることができる。
【0186】
第4の態様の積層体(10)は、第1から3のいずれか1つの態様において、前記被覆層(3)は、ポリエチレンテレフタレートと2軸延伸ポリプロピレンとのうちいずれか一方又は両方を含む。
【0187】
第4の態様によれば、積層体(10)の高い透明性を維持することができる。また、この場合、積層体(10)におけるレジスト形成層(2)の硬化性を高めやすく、レジスト層(12)をより良好に形成しやすい。また、この場合、積層体(10)を被覆層(3)上から露光する場合のレジスト形成層(2)の硬化性をより良好に高めることができる。そのため、レジスト形成層(2)を硬化してレジスト層(12)を作製するにあたり、現像性及び解像性をより向上させやすい。
【0188】
第5の態様の積層体(10)は、第1から4のいずれか1つの態様において、前記感光性組成物は、カルボキシル基含有樹脂(A)と、光重合開始剤(B)と、光重合性化合物(C)とを含有する。
【0189】
第5の態様によれば、積層体(10)におけるレジスト形成層(2)に光を照射することにより硬化させることができ、レジスト形成層(2)からレジスト層(12)を作製しやすい。
【0190】
第6の態様の積層体(10)は、第1から5のいずれか1つの態様において、前記レジスト形成層(2)の膜厚は、20μm以下である。
【0191】
第6の態様によれば、レジスト形成層(2)からレジスト層(12)を作製するにあたって現像性及び解像性をより向上させることができる。
【0192】
第7の態様の積層体(10)は、第1から6のいずれか1つの態様において、前記感光性組成物から、10μmの厚み寸法を有する硬化物が作製された場合、光の波長450nm以上800nm以下の光の透過率が80%以上である。
【0193】
第7の態様によれば、積層体(10)は透明性に優れるため、積層体(10)を光学用途に好適に用いることができる。また、この場合、積層体(10)は、高い透明性を有することで、屋外に設置する場合にも外観及び景観等を損ないにくくすることに寄与できる。
【0194】
第8の態様の積層体(10)は、第1から7のいずれか1つの態様において、前記絶縁層(1)は、コロナ処理、UV処理、プラズマ処理、オゾン処理、プライマー処理、及びEB処理からなる群から選択される少なくとも一種の表面処理が施されている。
【0195】
第8の態様によれば、絶縁層(1)と、絶縁層(1)上に作製される層との密着性を向上させることができる。さらに、この場合、積層体(10)から被覆層(3)を剥離する際の剥離性を向上させることができる。
【0196】
第9の態様の積層体(10)は、第1から8のいずれか1つの態様において、前記被覆層(3)の表面粗さSaは、50nm以下である。
【0197】
第9の態様によれば、積層体(10)から被覆層(3)を剥離しても、レジスト形成層(2)(又はレジスト層(12))に更に高い平坦性を付与しやすい。この場合、プリント配線板(100)に、メッキ層を形成するにあたり、より均一な形状を有する導体配線を形成しやすい。このため、プリント配線板(100)の信頼性を向上させやすい。また、この場合、レジスト形成層(12)の透明性をより向上させやすい。
【0198】
第10の態様の積層体(10)は、第1から9のいずれか1つの態様において、前記被覆層(3)のヘイズ値は、3.0%以下である。
【0199】
第10の態様によれば、積層体(10)におけるレジスト形成層(2)に光を照射して感光性組成物を硬化させるにあたり、積層体(10)における被覆層(3)が介在していても、感光性組成物をより良好に硬化させやすい。
【0200】
第11の態様のプリント配線板の製造方法は、第1から10のいずれか1つの態様の積層体(10)における前記絶縁層(1)を含む絶縁性基板(11)と、前記積層体(10)における前記レジスト形成層(2)から作製されたレジスト層(12)とを備えるプリント配線板(100)を製造する方法である。本製造方法では、前記積層体(10)における前記被覆層(3)を通して前記レジスト形成層(2)に光を照射することで前記絶縁層(1)上に前記レジスト層(12)を形成することを含む。
【0201】
第11の態様によれば、レジスト形成層(2)を露光するにあたり、露光時のフィッシュアイの影響を低減させ、解像性の向上に寄与できる。
【0202】
第12の態様のプリント配線板(100)は、第1から10のいずれか1つの態様の積層体(10)における前記絶縁層(1)を含む絶縁性基板(11)と、前記積層体(10)における前記レジスト形成層(2)から作製されたレジスト層(12)とを備える。
【0203】
第12の態様によれば、絶縁性基板(11)、解像性及び平坦性に優れるレジスト層(12)、及び導体層(13)を備えるプリント配線板(100)を作製することができる。
【符号の説明】
【0204】
1 絶縁層
2 レジスト形成層
3 被覆層
10 積層体
11 絶縁性基板
12 レジスト層
100 プリント配線板
図1
図2
図3