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特許7429053低減された蒸発および劣化を伴う半導体膜の加工のための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】低減された蒸発および劣化を伴う半導体膜の加工のための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20240131BHJP
   C30B 33/02 20060101ALI20240131BHJP
   C30B 29/38 20060101ALI20240131BHJP
   C23C 16/56 20060101ALI20240131BHJP
   C23C 16/34 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01L21/205
C30B33/02
C30B29/38 D
C23C16/56
C23C16/34
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021541269
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-03-15
(86)【国際出願番号】 US2020015073
(87)【国際公開番号】W WO2020154674
(87)【国際公開日】2020-07-30
【審査請求日】2021-07-16
(31)【優先権主張番号】62/796,340
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506115514
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
【氏名又は名称原語表記】The Regents of the University of California
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(72)【発明者】
【氏名】ゾールナー, クリスティアン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】イザ, マイケル
(72)【発明者】
【氏名】スペック, ジェイムズ エス.
(72)【発明者】
【氏名】ナカムラ, シュウジ
(72)【発明者】
【氏名】デンバース, スティーブン ピー.
【審査官】加藤 芳健
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-186332(JP,A)
【文献】特開平11-224859(JP,A)
【文献】特開2004-343132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205
C30B 33/02
C30B 29/38
C23C 16/56
C23C 16/34
H01L 21/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造であって、該構造は、
(a)加工の間中、炭化ケイ素(SiC)基板上または上方に成長させられたアルミニウム含有窒化物層から構成される半導体膜の蒸発または劣化を防止するために、該半導体膜の表面上または上方に配置された別個のSiC基板片から構成される保護被覆
を備え、
(b)該保護被覆は、該半導体膜が加工されるいずれの条件においても化学的に不活性な材料である、
構造。
【請求項2】
前記保護被覆は、前記半導体膜の前記表面との気密または密閉シールを形成するエピレディ表面を有する、請求項1に記載の構造。
【請求項3】
前記アルミニウム含有窒化物層は、極性面、非極性面、または半極性面の上で成長させられる、請求項1に記載の構造。
【請求項4】
前記保護被覆は、前記半導体膜との直接接触を形成する、請求項1に記載の構造。
【請求項5】
前記保護被覆は、少なくとも10ミクロンの厚さを有する、請求項1に記載の構造。
【請求項6】
前記保護被は、前記加工後に取り除かれる、請求項1に記載の構造。
【請求項7】
前記条件は、前記半導体膜および前記保護被覆を少なくとも約1000℃の高温まで熱する高温熱的アニーリングを備える、請求項1に記載の構造。
【請求項8】
前記高温は、約1000℃~2500℃である、請求項7に記載の構造。
【請求項9】
前記条件は、前記半導体膜および前記保護被覆を半導体加工ガスへと露出させる制御された周囲を備える、請求項1に記載の構造。
【請求項10】
前記半導体加工ガスは、窒素、アルゴン、アンモニア、水素、酸素、またはフォーミングガスを備える、請求項9に記載の構造。
【請求項11】
前記半導体膜および前記保護被覆は、約100気圧より低い圧力において前記半導体加工ガスへと露出させられる、請求項9に記載の構造。
【請求項12】
前記圧力は、約1気圧より低い、請求項11に記載の構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本発明は、以下の同一人に譲渡された同時係属出願の米国特許法第119条(e)下の利益を主張する。
Christian J. Zollner、 Michael Iza、 James S. Speck、 Shuji NakamuraおよびSteven P. Denbaarsによる“METHOD FOR THERMAL TREATMENT OF SEMICONDUCTOR LAYERS WITH REDUCED EVAPORATION”と題する2019年1月24日に出願された米国仮特許出願第62/796,340号(代理人案件番号G&C30794.0663USP2(UC 2018-252-2))。
米国仮特許出願第62/796,340号は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
(発明の背景)
(1.発明の分野)
本発明は、半導体膜の蒸発および劣化を防止するために、別個の保護被覆でサンプルを被覆することによる半導体膜サンプルの加工における使用のための方法に関連する。
【背景技術】
【0003】
(2.関連技術の説明)
窒化ガリウム(GaN)ならびにこれのアルミニウムおよびインジウムを取込んだ三元および四元化合物(AlGaN、InGaN、AlInGaN)の有用性は、可視および紫外高電子素子ならびに高出力電子素子の製造に対して確立されている。これらの素子は一般的に、分子線エピタキシー法(MBE)、有機金属化学蒸着法(MOCVD)およびハイドライド気相成長法(HVPE)を備える成長技法を用いてエピタキシャルに成長させられる。
【0004】
加えて、短波長素子に対するAlGaNの発展は、窒化物系発光ダイオード(LED)およびレーザーダイオード(LD)が多くの他の研究事業を凌駕することを可能とした。結果、AlGaN系材料および素子は、紫外線半導体用途のために用いられる主要な材料系となっている。
【0005】
しかしながら、高いアルミニウム含有量を伴う高品質AlNおよびAlGaNの成長は、未だ課題である。これらの材料は、他の全てのIII族窒化物半導体材料と同じく様々な加工技法を伴って改良され得るが、これらの加工ステップにおける膜の蒸発または劣化の恐れがしばしば存在する。膜の蒸発または劣化は、別個の保護被覆を用いて膜を保護することによって低減され得る。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、低減された蒸発または劣化を伴う半導体膜の加工のための方法を開示する。方法は、加工の間中、半導体膜の蒸発または劣化を防止するために、半導体膜の表面上にまたは上方に保護被覆を提供することと、保護被覆なしでは半導体膜の蒸発または劣化を引き起こす1つまたは複数の条件の下で半導体膜および保護被覆を加工することとを含み、半導体膜は、半導体膜の材料および素子特性を改良または変更するように加工され、保護被覆は、半導体膜が加工される条件において化学的に不活性な材料である。
【0007】
半導体膜は、基板上で成長させられ、1つまたは複数の窒化系層からなり、窒化系層は、(Al,Ga,In,B)N半導体からなり、窒化系層は、極性面、非極性面または半極性面上で成長させられる。
【0008】
保護被覆は、半導体膜の表面との気密または密閉シールを形成するエピレディ表面を有し、保護被覆は、半導体膜との直接接触を形成する。好ましくは、保護被覆は、少なくとも10ミクロンの厚さを有する。保護被覆は、いずれのリンス、洗浄または化学もしくは物理エッチングの手順も伴わずに半導体膜の加工後に取り除かれる。
【0009】
半導体膜および保護被覆が加工される条件は、半導体膜および保護被覆を少なくとも約1000℃、例えば約1000℃~2500℃の高温まで熱する高温熱的アニーリングを備え得る。半導体膜および保護被覆が加工される条件はまた、半導体膜および保護被覆を半導体加工ガスへと露出させる制御された周囲を備え得、半導体加工ガスは、窒素、アルゴン、アンモニア、水素、酸素またはフォーミングガスを備え得る。半導体膜および保護被覆は、約100気圧より低い、例えば約1気圧より低い圧力において半導体加工ガスへと露出させられ得る。
【0010】
最後に、保護被覆は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)またはスピネル(MgAl)からなる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
方法であって、該方法は、
(a)加工の間中、半導体膜の蒸発または劣化を防止するために、該半導体膜の表面上にまたは上方に保護被覆を提供することと、
(b)該保護被覆なしでは該半導体膜の蒸発または劣化を引き起こす1つまたは複数の条件の下で該半導体膜および該保護被覆を加工することと
を備え、
(c)該半導体膜は、該半導体膜の材料または素子特性を改良または変更するように加工され、
(d)該保護被覆は、該半導体膜が加工される該条件において化学的に不活性な材料である、
方法。
(項目2)
前記半導体膜は、基板上で成長させられる、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記半導体膜は、1つまたは複数の窒化物系層からなる、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記窒化物系層は、(Al,Ga,In,B)N半導体からなる、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記窒化物系層は、極性面、非極性面または半極性面の上で成長させられる、項目4に記載の方法。
(項目6)
前記保護被覆は、前記半導体膜の表面との気密または密閉シールを形成するエピレディ表面を有する、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記保護被覆は、前記半導体膜との直接接触を形成する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記保護被覆は、少なくとも10ミクロンの厚さを有する、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記保護被覆は、いずれのリンス、洗浄または化学もしくは物理エッチングの手順も伴わずに前記加工後に取り除かれる、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記条件は、前記半導体膜および前記保護被覆を少なくとも約1000℃の高温まで熱する高温熱的アニーリングを備える、項目1に記載の方法。
(項目11)
前記高温は、約1000℃~2500℃である、項目10に記載の方法。
(項目12)
前記条件は、前記半導体膜および前記保護被覆を半導体加工ガスへと露出させる制御された周囲を備える、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記半導体加工ガスは、窒素、アルゴン、アンモニア、水素、酸素またはフォーミングガスを備える、項目12に記載の方法。
(項目14)
前記半導体膜および前記保護被覆は、約100気圧より低い圧力において前記半導体加工ガスへと露出させられる、項目12に記載の方法。
(項目15)
前記圧力は、約1気圧より低い、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記保護被覆は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al )、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)またはスピネル(MgAl )からなる、項目1に記載の方法。
(項目17)
項目1に記載の方法によって処理される半導体膜。
(項目18)
構造であって、該構造は、
(a)加工の間中、半導体膜の蒸発または劣化を防止するために、該半導体膜の表面上または上方の保護被覆
を備え、
(b)該保護被覆は、該半導体膜が加工される該条件において化学的に不活性である、
構造。
(項目19)
前記半導体膜は、1つまたは複数の窒化系層からなる、項目18に記載の構造。
(項目20)
前記保護被覆は、前記半導体膜との気密または密閉シールを形成するエピレディ表面を有する、項目18に記載の構造。
【図面の簡単な説明】
【0011】
ここで、図面を参照する(同様の参照番号は、全体を通して対応する部分を表す)。
【0012】
図1図1は、本発明の一実施形態において用いられるプロセスステップのフローチャートである。
【0013】
図2図2は、材料の蒸発を防止するための別個のSiC基板片の保護被覆を伴う、6Hポリタイプ炭化ケイ素(6H-SiC)を備える基板上へとエピタキシャルに堆積した窒化アルミニウム(AlN)層を備える半導体層に対するx線回折データのプロットを示している。
【0014】
図3図3(a)および図3(b)は、高温に晒された2つのサンプルの光学画像であり、保護されている(蒸発しなかった)サンプルと保護されていない(充分に蒸発した)サンプルとの間の差異を示している。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(発明の詳細な説明)
以下の好ましい実施形態の説明では、付属の図面への言及が行われ、ここで、付属の図面は本明細書の一部を形成し、付属の図面において具体的な実施形態が図示を手段として示され、本発明はその具体的な実施形態において実践され得る。本発明の範囲から逸脱することなく他の実施形態が利用され得、構造の変更が行われ得ることは、理解されるべきである。
【0016】
(概観)
本発明は、サンプル加工ステップの間中、半導体膜を備えるサンプルを、別個の基板片などの保護被覆と直接接触するように半導体膜を配置する(すなわち被覆する)ことによって保護するための方法を説明する。サンプル加工ステップは、膜の材料または素子特性を改良または変更する目標を伴って、保護被覆なしでは膜の蒸発または劣化を引き起こし得る高温熱的アニーリングおよび/または何らかの半導体加工ガスへの露出の制御された周囲および/または低圧雰囲気などの何らかの条件において半導体膜を処理することを指す。
【0017】
保護被覆で膜を被覆することによって半導体膜を保護することは、サンプル加工ステップの間中、膜および保護被覆の原子レベルで平坦な2つの表面の間に形成される気密または密閉シールを通じて膜の蒸発または劣化を防止する手法を供する。この保護は、膜の蒸発または劣化を通常引き起こし得る条件または処理へとサンプルを露出させることに対するより大きな柔軟性をもたらす。
【0018】
サンプル加工ステップは、半導体膜および保護被覆を約1000℃より大きな、より好ましくは約1000℃~2500℃の高温まで熱することを備え得る。2500℃より上の温度は、用いられ得るが、一般的にはこれに特化した装置およびプロセスを必要とし、ゆえにほとんどの用途に対して実践的でない。
【0019】
サンプル加工ステップはまた、半導体膜および保護被覆を窒素、アルゴン、アンモニア、水素、酸素、フォーミングガスもしくは何らかの他の加工ガスなどの1種類もしくは複数種類の半導体加工ガスならびに/または約100気圧より低い、より好ましくは約1気圧もしくはこれより低い低圧雰囲気へと露出させることを備え得る。加えて、サンプル加工ステップは、水素を含む腐食性化学などの他の過酷な条件を備え得る。
【0020】
一実施形態では、半導体膜は、基板上で成長させられる1つまたは複数の窒化物系層からなる。「窒化物系層」または「III族窒化物」または「窒化物」という用語は、化学式AlGaInNを有する(Al,Ga,In,B)N半導体の任意の合金組成物を指し、ここで、0≦w≦1、0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1およびw+x+y+z=1である。
【0021】
窒化物系層は、変化もしくは傾斜のついた組成物を有する複数の層、類似の(Al,Ga,In,B)N組成物の1つもしくは複数の層または非類似の(Al,Ga,In,B)N組成物の1つもしくは複数の層を備え得る。層はまた、ケイ素、ゲルマニウム、マグネシウム、ボロン、鉄、酸素および亜鉛などの元素をドープされ得る。
【0022】
窒化物系層は、従来の化学蒸着法(CVD)、プラズマ励起化学蒸着法(PECVD)、スパッタリング法、原子層堆積法(ALD)、真空もしくは制御された周囲の下での蒸発、イオンビーム蒸着法(IBD)、ハイドライド気相成長法(HVPE)、有機金属化学蒸着法(MOCVD)または分子線エピタキシー法(MBE)を備える堆積方法を用いて成長させられ得る。
【0023】
窒化物系層は、極性c面上またはa面もしくはm面などの非極性面上または{20-21}、{11-22}および{10-11}面などの半極性面上などの任意の結晶学的方向に成長させられ得る。
【0024】
窒化物系層は、電磁放射する層順序を形成し得る。電磁放射する層順序は、LEDおよびLDを構成し得る。
【0025】
窒化物系層は、本発明の方法を用いて加工されたとき、改良または変更された材料または素子特性を有し得る。
【0026】
別個の基板片などの保護被覆は、炭化ケイ素(SiC)、サファイア(Al)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl)または任意の他の一般的に用いられる基板材料からなり得る。好ましくは、保護被覆は、例えば分解を完全に停止させるのではなく分解を遅くするのみである短時間の比較的「穏やかな」(過酷な化学でも低圧でもない)条件において分解を低減するだけの技法とは対照的に、サンプル加工ステップの条件の下で不活性である。
【0027】
半導体膜保護の機構は、膜のもしくは保護被覆の材料タイプ、成長方法または加工もしくは貯蔵条件の詳細に依らずに有効であるべきである。しかしながら、材料の損失もしくは劣化の低減ならびに保護の度合いは、異なる材料、成長方法ならびに加工もしくは貯蔵条件に対して変化する。
【0028】
(プロセスステップ)
図1は、本発明の一実施形態において用いられるプロセスステップのフローチャートである。
【0029】
ブロック100は、例えば従来の方法を用いて基板上に少なくとも1つの半導体膜を成長させるステップを表している。一実施形態では、半導体膜は、1つまたは複数の窒化物系層からなる。
【0030】
ブロック102は、加工の間中、半導体膜の蒸発または劣化を防止するために、半導体膜の表面上にまたは上方に保護被覆を提供するステップを表している。一実施形態では、保護被覆は、半導体膜が加工される条件において化学的に不活性な材料であり、保護被覆は、半導体膜の表面との気密または密閉シールを形成するエピレディ表面を有し、保護被覆は、半導体膜との直接接触を形成し、保護被覆は、少なくとも10ミクロンの厚さを有する。
【0031】
ブロック104は、保護被覆なしでは半導体膜の蒸発または劣化を引き起こす1つまたは複数の条件の下で基板、半導体膜および保護被覆を加工するステップを表している。条件は、高温熱的アニーリングおよび/または制御された周囲を備え得る。高温熱的アニーリングは、基板、半導体膜および保護被覆を少なくとも約1000℃、例えば約1000℃~2500℃の高温まで熱する。制御された周囲は、基板、半導体膜および保護被覆を半導体加工ガスへと露出させ、半導体加工ガスは、窒素、アルゴン、アンモニア、水素、酸素またはフォーミングガスを備える。基板、半導体膜および保護被覆は、約100気圧より低い圧力、例えば約1気圧またはこれより低い気圧における半導体加工ガスへと露出させられ得る。
【0032】
ブロック106は、いずれのリンス、洗浄または化学もしくは物理エッチングの手順も伴わずに加工後に保護被覆を半導体膜から取り除くステップを表している。
【0033】
ブロック108は、半導体膜のさらなる成長、加工、パッケージングなどを続行するステップを表している。
【0034】
ブロック110は、本方法の最終結果、すなわち加工された時点の半導体膜を表しており、これは、複数の膜または層からなる半導体膜スタックの一部であり得る。一実施形態では、加工後の半導体膜は、このように加工されていない半導体膜と比べて、改良または変更された材料または素子特性を有する。
【0035】
最後に、ステップ100~108は、示される厳密な順序で実施される必要はないことに留意されたい。例えば、本発明の範囲から逸脱することなく、ステップは、別の順序で実施され得、かつ/または、個別のステップは、省略され得る。
【0036】
(実験結果)
図2は、6Hポリタイプ炭化ケイ素(6H―SiC)を備える基板上へとエピタキシャルに堆積した窒化アルミニウム(AlN)層を備える半導体膜に対する、(102)X線ロッキングカーブ(オメガ)半値全幅(FWHM)からなるx線回析データ対アニーリング条件のプロットを示している。別個のSiC基板片を備える保護被覆を半導体層の上方に配置し、その後、AlN層、6H-SiC基板および別個のSiC基板片を備えるサンプルの全体を4時間1600℃、アルゴン(Ar)周囲において1時間1700℃、Ar周囲において1時間1800℃およびAr周囲において4時間1800℃の様々な温度でのアニールに晒した。
【0037】
x線回折データは、貫通転位密度を追跡する、結晶の品質に対する性能指数であることが知られている。例えば、未公表のTEM(透過型電子顕微鏡)データによって確認されたように、FWHM=500の値が5E9cm-2に対応するのに対し、FWHM=190の値は、4E8cm-2に対応する。
【0038】
プロットにおいて示されたように、高温アニール処理を採用するとき、結晶の品質は、6H-SiC上で成長させられ、かつ材料の蒸発を防止するために別個のSiC基板片によって保護被覆されたAlN層に対して有意に改良される。具体的には、処理条件に関係なく、被覆されているサンプルが物質の改良を示す一方で、被覆されていないサンプルは、完全に蒸発する。
【0039】
図3(a)および図3(b)は、アルゴン(Ar)周囲の0.6atmの下で4時間1650℃で処理した同じAlN/SiCウエハの2つの欠片の光学画像であり、同一のアニーリング処理を伴う同一のエピウエハからの図3(a)内の保護されている(蒸発していない)AlN/SiCサンプルと、図3(b)内の保護されていない(充分に蒸発した)AlN/SiCサンプルとの間の差異を示している。
【0040】
具体的には、対比のために、図3(a)は、保護SiC被覆を伴ってアニーリング条件に晒されたAlNエピ層の表面を示しており、図3(b)は、保護SiC被覆を伴わずに同じアニーリング条件に晒されたAlNエピ層の表面を示している。図3(a)内の保護されているAlNエピ層が、別個の基板片による保護から生じる低減された材料の劣化および蒸発を呈している一方で、図3(b)内の保護されていないAlNエピ層は、充分に蒸発した。具体的には、図3(a)のサンプルが、保護SiC被覆で保護され、膜のほぼ全てが残った(光学反射を用いて計測された厚さがほぼ不変である)一方で、図3(b)のサンプルは、保護SiC被覆を伴わずに同一の条件の下でアニールされ、膜が明確に蒸発した(このサンプルに対してAlNのx線ピークが何も見られなかった)。
【0041】
(利点および改良点)
本発明は、高温熱的アニーリングおよび/または半導体加工ガスへの露出の制御された周囲および/または低圧雰囲気によるなどの加工の間中、材料の蒸発または劣化を防止することを確実にするために、半導体膜に保護被覆を提供する。本発明は、半導体膜と保護被覆との間の直接接触する気密または密閉シールを提供する。この保護の重要な利点は、膜の蒸発または劣化を防止しつつ膜の材料または素子特性を改良する、例えば高温熱的アニーリングおよび/または制御された周囲を用いて半導体層が処理され得ることである。
【0042】
(結論)
ここで、本発明の好ましい実施形態の説明を結論付ける。本発明の1つまたは複数の実施形態の前述の説明が、例証および説明の目的のために提示されている。包括的であること、または本発明を開示される精密な形態に制限することは、意図されていない。多くの修正および変形例が、上記の教示に照らして可能である。本発明の範囲は、本発明を実施するための形態によってではなく、むしろ本明細書に添付の請求項によって制限されることが、意図されている。
図1
図2
図3(a)-3(b)】