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特許7429058オイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム
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  • 特許-オイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム 図1
  • 特許-オイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】オイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/04 20060101AFI20240131BHJP
   B01D 53/26 20060101ALI20240131BHJP
   B01D 45/08 20060101ALI20240131BHJP
   B01D 50/00 20220101ALI20240131BHJP
   F04B 39/16 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B01D53/04
B01D53/26 100
B01D45/08 Z
B01D50/00 501A
B01D50/00 501G
B01D50/00 501J
B01D50/00 502A
F04B39/16 F
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2022077571
(22)【出願日】2022-05-10
(65)【公開番号】P2023166791
(43)【公開日】2023-11-22
【審査請求日】2022-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】福原 廣
【審査官】壷内 信吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-020112(JP,A)
【文献】特開2016-014613(JP,A)
【文献】特開2006-297363(JP,A)
【文献】特開2012-016669(JP,A)
【文献】特開2020-093206(JP,A)
【文献】特開2016-107240(JP,A)
【文献】実開昭56-154811(JP,U)
【文献】米国特許第4478619(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 53/02-53/12
B01D 46/00-46/90
B01D 53/26-53/28
B01D 45/00-45/18
B01D 49/00-51/10
F04B 39/00-39/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エアコンプレッサにて生成された圧縮空気中の異物であるドレン及びオイルミストを分離・除去が可能なオイル分離除去装置であって、
オイル分離除去装置は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、
中空部下部には、下方が開口し側壁に複数の通気孔が備えられた略円筒状の分離器本体を、流入口の上方を被覆するように配設した水分分離部が備えられると共に、中空部における水分分離部の上方には、油分吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填された油分分離部が備えられ、
流入口の先端は、底体の天面より上方へ突出すると共に分離器本体の天面より下方に位置するよう配設され、
エアコンプレッサにて生成された圧縮空気が、流入口から水分分離部へ流入し、圧縮空気中に含有されたドレンが分離・除去された後、油分分離部にてオイルミストが分離・除去されることで、オイル分離除去装置の後段へ清浄な圧縮空気として送気されることを特徴とするオイル分離除去装置。
【請求項2】
前記水分分離部に、排水管及びオリフィス部が備えられ、水分分離部にて分離されたドレンが、排水管へ侵入した圧縮空気により排出されることを特徴とする請求項1に記載のオイル分離除去装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載されたオイル分離除去装置を用いた圧縮空気圧回路におけるオイルフリーシステムであって、
給油式エアコンプレッサと、エアドライヤと、エアタンクと、プレフィルタと、オイル分離除去装置と、で構成され、
エアコンプレッサにて生成された圧縮空気が最終的にオイル分離除去装置を経ることで、含有ドレン及びオイルミストが分離・除去された圧縮空気を生成することを特徴とする圧縮空気生成用オイルフリーシステム。
【請求項4】
前記オイル分離除去装置が、並列に複数配設されて成ることを特徴とする請求項3に記載の圧縮空気生成用オイルフリーシステム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮空気内のドレンやオイルミストを分離・除去するための装置及び、圧縮空気内の異物を分離・除去するための圧縮空気生成用システムに関し、詳しくは、圧縮空気に含有されるドレンやオイルミストを分離・除去するための装置及び、給油式エアコンプレッサにて生成された圧縮空気に含有されるドレンや塵埃、オイルミスト等の異物を分離・除去するためのシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気内には、オイルミストやスラッジなどの異物が含有している。従来、かかる異物を圧縮空気から分離・除去すべく、圧縮空気圧回路の所定中間箇所、特に末端箇所において、グラスファイバーや樹脂を編み込み若しくは中空糸膜により成形されたミストフィルターを使用することが一般的であった。
【0003】
しかしながら、上記従来のミストフィルターによれば、油滴やスラッジにより目詰まりが発生し易いといった問題があった。また、上記従来のミストフィルターでは、圧縮空気の通過距離が短いためにオイルミストを完全に除去することができず、多量のオイルミストが残留したまま圧縮空気を吐出してしまうといった問題があった。
【0004】
上記問題を解決すべく、特許第5663789号公報(特許文献1)や特許第6713596号公報(特許文献2)に記載の技術提案が本出願人よりなされている。すなわち、特許文献1にかかる技術提案によれば、圧縮空気内の異物分離、特にオゾンの分離・除去に優れた作用効果を発揮するものとして、有効な技術提案である。しかしながら、該技術提案によれば、圧縮空気内に含有されるドレンがオイル分離除去装置に浸入し、充填されたフィルタや活性炭にドレンが付着することによってドレンと油分が反発し、オイル分離・除去性能が充分に発揮されないことがあった。
また、特許文献2では、圧縮空気内の異物分離、特にオイルミストやドレン、オゾンの分離・除去に優れた作用効果を発揮するものとして、有効な技術提案である。しかしながら、該技術提案によれば、前記特許文献1と同様、サイクロンセパレータにより除去しきれなかったドレンが油吸着装置に充填されたフィルタや活性炭に付着することでドレンと油分が反発し、オイル分離・除去性能が充分に発揮されないことがあった。
【0005】
本出願人は、オイルフリーの圧縮空気圧回路を構成すべくオイル分離除去装置が配設されたシステムにおいて、従来の圧縮空気用の異物分離除去装置におけるドレン除去性能の問題に着目し、オイル分離除去装置において圧縮空気が油吸着材に到達する前段階で最終的なドレンの分離・除去を施すことができないものかという着想のもと、オイル分離除去装置内の流入口側に水分分離部を装備することで、ドレンが取り除かれた状態で圧縮空気を油吸着材へ送気可能なオイル分離除去装置を開発し、本発明にかかる「オイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム」の提案に至るものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2003-62417号公報
【文献】特開2006-297363号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記問題に鑑み、オイル分離除去装置内の流入口側に水分分離部を装備することで、ドレンが取り除かれた状態で圧縮空気を油吸着材へ送気可能なオイル分離除去装置、並びに、該オイル分離除去装置を圧縮空気圧回路に組み込むことで、オイルフリーの圧縮空気を生成し得るシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題を解決するため、本発明は、エアコンプレッサにて生成された圧縮空気中の異物であるドレン及びオイルミストを分離・除去が可能なオイル分離除去装置であって、オイル分離除去装置は、中空部を有し上方及び下方が夫々開口した筒状体から成る中空筒本体と、所定箇所に流入口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の下方開口端を閉塞可能な底体と、所定箇所に排出口を備え且つ締結手段を介して前記中空筒本体の上方開口端を閉塞可能な蓋体と、から成り、中空部下部には、下方が開口し側壁に複数の通気孔が備えられた略円筒状の分離器本体を、流入口の上方を被覆するように配設した水分分離部が備えられると共に、中空部における水分分離部の上方には、油分吸着材と活性炭とが交互に積層した状態で充填された油分分離部が備えられ、流入口の先端は、底体の天面より上方へ突出すると共に分離器本体の天面より下方に位置するよう配設され、エアコンプレッサにて生成された圧縮空気が、流入口から水分分離部へ流入し、圧縮空気中に含有されたドレンが分離・除去された後、油分分離部にてオイルミストが分離・除去されることで、オイル分離除去装置の後段へ清浄な圧縮空気として送気される手段を採用する。
【0009】
また、本発明は、前記水分分離部に、排水管及びオリフィス部が備えられ、水分分離部にて分離されたドレンが、排水管へ侵入した圧縮空気により排出される手段を採用する。
【0010】
さらに、本発明は、請求項1又は2に記載されたオイル分離除去装置を用いた圧縮空気圧回路におけるオイルフリーシステムであって、給油式エアコンプレッサと、エアドライヤと、エアタンクと、プレフィルタと、オイル分離除去装置と、で構成され、エアコンプレッサにて生成された圧縮空気が最終的にオイル分離除去装置を経ることで、含有ドレン及びオイルミストが分離・除去された圧縮空気を生成する手段を採用する。
【0011】
またさらに、本発明は、前記オイル分離除去装置が、並列に複数配設されて成る手段を採用する
【発明の効果】
【0012】
本発明にかかるオイル分離除去装置によれば、圧縮空気が水分分離部を経由して油分分離部へ流入することにより、該油分分離部に充填されているオイル吸着材及び活性炭へのドレン付着を減少させることで、油分分離部における油分の分離・除去作用の性能を最大限に活かすことが可能になる、といった優れた効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかるオイル分離除去装置によれば、前記水分分離部に、排水管及びオリフィス部が備えられ、水分分離部にて分離されたドレンが、排水管へ侵入した圧縮空気により常時排出されることにより、圧縮空気が油分分離部へ送気される際に誤ってドレンも同時に進行してしまう可能性を低下させると共に、排水管及びオリフィス部へドレンが流入する際に、排水管へ侵入した圧縮空気によってスムーズに外部へ排出される、といった優れた効果を奏する。
【0014】
さらに、本発明にかかる圧縮空気生成用オイルフリーシステムによれば、給油式エアコンプレッサと、エアドライヤと、エアタンクと、プレフィルタと、前記オイル分離除去装置と、にて構成されることにより、世界基準に合ったオイルフリーの圧縮空気を生成することができる、といった優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる圧縮空気生成用オイルフリーシステムの実施形態を示す模式図である。
図2】本発明にかかるオイル分離除去装置における水分分離部の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかるオイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステムは、圧縮空気中のドレンについて、油分分離部の前段に配設した水分分離部によって最終的に分離・除去することで、オイルフリーの圧縮空気を生成することを最大の特徴とする。
以下、本発明にかかるオイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステムの実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
尚、本発明にかかるオイル分離除去装置及び圧縮空気生成用オイルフリーシステムは、以下に述べる実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる形状や寸法、材質等の範囲内で適宜変更することができるものである。
【0018】
まず、図1及び図2に従って本発明にかかるオイル分離除去装置10を説明する。図1は、本発明にかかる圧縮空気生成用オイルフリーシステム1の実施形態を示す模式図であり、最後段に配設されているのがオイル分離除去装置10である。図2は、本発明にかかるオイル分離除去装置10の実施形態を示す要部断面図であり、(a)は水分分離部内における圧縮空気の流路図、(b)は水分分離部内において発生したドレンの流路図、(c)は水分分離部内部の構造について底体の天面に傾斜を設けると共に通風孔の内壁側に突起を備えた場合に形成されるドレンの流路図、(d)は該通風孔に備えた突起により形成されるドレンの流路模式図である。
オイル分離除去装置10は、エアコンプレッサ70にて生成された圧縮空気中のドレン及びオイルミストを分離・除去するための装置であって、主に中空筒本体11と、底体12と、蓋体13と、から構成されている。
【0019】
中空筒本体11は、油分分離部30と水分分離部20にて構成され、流入口14から流入した圧縮空気から水分及び油分を分離・除去するためのものである。
中空筒本体11は、中空部を有し、上方及び下方が夫々開口した筒状体から構成されている。中空筒本体11の外形状については、筒状であれば特に限定はなく、円筒形状や多角筒形状が考え得る。中空筒本体11の下方及び上方の開口端には、夫々底体12及び蓋体13が装着される。そしてまた、中空部下方には水分分離部20が備えられると共に、該水分分離部20上方には油分分離部30が備えられることとなる。
【0020】
底体12は、前記中空筒本体11の下方を閉塞すると共に、圧縮空気の流入口14を該中空筒本体11下方に備えた水分分離部20へ接続し、且つ、該水分分離部により分離された水分を外部へ排出させる排水口22を備えたものである。
底体12は、前記中空筒本体11における下方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に先端が天面より上方へ突出した流入口14を備えた構成となっている。該底体12の中空筒本体11の下方開口端への締結手段については、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。また、底体12の上方には流入口14を覆うように水分分離部20が配設され、底体12の天面部所定箇所に止着されることとなる。止着方法については、流入口14から流入した圧縮空気の圧力に耐え得る方法であれば良く、特に限定はしない。さらに、水分分離部20にて分離・除去されたドレンを外部へ排出可能な排水口22が、水分分離部20の内側所定箇所に備えられることとなる。
【0021】
排水口22は、水分分離部20にて分離・除去されたドレンを外部へ排出可能な穴であり、水分分離部20の内側所定箇所に備えられ、水分分離部20下方に貯留したドレンが圧縮空気と共に排水口22から外部へ排出されることとなる。また、外部への排出手段として、排水口22には排水管23及び排水弁24が備えられ、さらに、排水弁24の下方にオリフィス部25が設けられる態様も考え得る。この態様を採ることで、外部へ放出される圧縮空気の流出量が調整可能となり、損失を抑えることが可能となる。なお、オリフィスの形状に特に限定はしないが、偏心オリフィスや欠円オリフィスといったオリフィスの上流側にドレンが貯留しにくい形状が好ましい。さらにまた、オリフィス部の前段には、該オリフィス部にて詰まり等の異常時にドレン及び圧縮空気の流出を止めるためのバルブが設けられる態様も好適である。
【0022】
蓋体13は、前記中空筒本体11の上方を閉塞すると共に、該中空筒本体11の水分分離部20及び油分分離部30を経由することで清浄となった圧縮空気を後段へ送気可能な排出口15を備えたものである。
蓋体13は、前記中空筒本体11における上方の開口端を閉塞可能な大きさを有し、所定箇所(好ましくは平面視略中央箇所)に排出口15を備えた構成となっている。該蓋体13の中空筒本体11の上方開口端への締結手段については、前記底体12同様、特に限定はないが、例えば螺子等の締結手段により装着されることとなる。また、蓋体13の下方には油分分離部30が備えられ、水分分離部20にてドレンを分離・除去された圧縮空気が油分分離部30へ侵入し、圧縮空気中の油分を分離・除去することとなる。
【0023】
水分分離部20は、中空筒本体11の下端にて先端が底体12の天面より上方へ突出した流入口14を被覆するように配設され、中空部を有し上方が閉塞されると共に下方が開放された略円筒状であり、側壁には複数の通風孔21が備えられている。また、該水分分離部20の下方は、底体12の天面部所定箇所に止着されることとなる。止着方法については、流入口14から流入した圧縮空気の圧力に耐え得る方法であれば良く、特に限定はしない。
分離器本体の天面より下方に位置するよう配設された流入口14の先端から水分分離部20へ流入した圧縮空気は、閉塞された天面に衝突することで圧縮空気中のドレンを天面に付着させた後、側壁の通風孔21より水平方向へ流出し、中空筒本体11の内壁に沿って垂直方向へと流出方向を変え油分分離部30へ侵入することとなる。また、天面に付着したドレンは、ドレン量の増加に伴い凝縮され、水滴となって下方へ滴下もしくは水分分離部20内壁を伝い下方に落下し、底体12に備えられた排水口22から外部へ排出されることとなる。
【0024】
分離されたドレンの除去に際し、図2(c)のような排水口22へ向けて底体12を下方に傾斜させたり、予め水分分離部20に排水口22へ向けた底板を接続し、該底板と排水口22を止着したりする態様や、通風孔21の内壁側の外径に図2(d)のような突起を設けて、ドレンの流路を形成するといった態様が好ましい。このような態様を採ることにより、圧縮空気から分離したドレンが、通風孔21により送気される圧縮空気の圧力によって油分分離部30へ侵入してしまうことを防ぐことが可能となると共に、水分分離部20底面に貯留するドレンをスムーズに排出させることが可能となる。
【0025】
通風孔21は、水分分離部20の側壁に複数備えられ、水分分離部20内に流入した圧縮空気を分流し、油分分離部30へ送気することとなる。通風孔21の径を流入口14と略同一径とすることで、圧縮空気の圧力損失を極力抑えることが可能となる。さらに、水平方向に通風孔21を均等に配置することで、夫々の通風孔21から油分分離部30へ送気される圧縮空気量を均等にすることが可能となる。
【0026】
油分分離部30は、水分分離部20の上方に備えられ、油分吸着体31及び活性炭32にて構成される。油分吸着体31及び活性炭32は、中空筒本体11へ交互に積層され状態で充填されている。
圧縮空気中のオイルミスト等の油分を分離・除去する油分吸着体31の形状や材質については特に限定はなく、立方体形状や直方体形状のポリエチレンやポリプロピレン、ポリエチレンテフタレートといった、従来公知のものを使用すれば足りる。
圧縮空気中のオイルミスト等の油分を分離・除去すると共に臭気を吸収可能な活性炭32も油分吸着体31同様、従来公知のものを使用すれば足り、活性炭32の原材料等についても植物質や石炭質、石油質など特に限定するものではない。また、活性炭32の形状については、分離・除去作用を発生させる表面積を大きくするため、微細な粒状にする態様が好ましい。
水分分離部20から流出した圧縮空気が油分吸着体31及び活性炭32を経由することで、圧縮空気中の油分が分離・除去されつつ中空筒本体11上方へ上昇し、蓋体13の所定箇所に備えられた排出口15から後段の使用機器へ送気されることとなる。
【0027】
油分分離部30の最上面及び最下面や油分吸着体31と活性炭32との境界面には、所定径の通気孔を複数有したパンチングプレート33を配設する態様が望ましい。この態様を採ることで、油分分離部30に流入した圧縮空気がパンチングプレート33に備えられた複数の通気孔により分流することで複数の流路が形成されるため、積層された油分吸着体31及び活性炭32の能力を最大限に引き出すことが可能となる。
【0028】
以上の各構成要素により、本発明にかかるオイル分離除去装置10は構成されている。本発明にかかるオイル分離除去装置10は、中空筒本体11の下部に設けられた流入口14から流入した圧縮空気中のドレンを水分分離部20にて分離・除去した後、水分分離部20の上部に備えられた油分分離部30にて圧縮空気中の油分が分離・除去されることで、中空筒本体11の上部に設けられた排出口15からオイル分離除去装置10の後段に接続される使用機器へ清浄な圧縮空気の送気することが可能である。
【0029】
次に、図1に従って本発明にかかる圧縮空気生成用オイルフリーシステム1を説明する。尚、上記オイル分離除去装置10の説明は省略する。
図1は、本発明にかかる圧縮空気生成用オイルフリーシステム1の実施形態を示す模式図であり、(a)は圧縮空気圧回路における最後段に一基のオイル分離除去装置10を配設した模式図、(b)は圧縮空気圧回路における最後段に二基のオイル分離除去装置10を配設した模式図である。
圧縮空気生成用オイルフリーシステム1は、エアコンプレッサ70にて生成された圧縮空気中の異物を分離・除去するための装置であって、主に上流側からエアコンプレッサ70と、エアタンク60と、エアドライヤ50と、プレフィルタ40と、オイル分離除去装置10とで構成され、夫々配管Hによって接続されている。
そして、エアタンク60と、エアドライヤ50と、プレフィルタ40には、夫々ドレン回収部Dが備えられ、各装置にて発生したドレン等の異物を外部へ排出可能な態様となる。ドレン回収部Dは、例えば、電磁式ドレントラップ等の排出装置が考え得るが、従来公知のものを使用すれば足り、特に限定はしない。また、図示のようにドレン回収部の前段には、該ドレン回収部の故障時等にドレンの流入を止めるためのバルブが備えられている態様も好適である。
【0030】
エアコンプレッサ70は、大気を圧縮して所定気圧以上(例えば0.7Mpa)の圧縮空気を生成する機械であって、圧縮空気を生成するための構造によって、往復式や回転式、遠心式等の圧力方式や、給油式、ドライオイルフリー式等の潤滑方式が存在するが特に限定はなく、いずれの方式・構造のものでも使用することが可能である。エアコンプレッサ70により生成された圧縮空気は、後段に接続されたエアタンク60に流入されることとなる。
【0031】
エアタンク60は、エアコンプレッサ70により生成された圧縮空気を一時的に貯留するための容器であって、配管Hを介してエアコンプレッサ70の後段に配設され、流入した圧縮空気を貯留後、一定の圧力にて後段のエアドライヤ50へ送気する。また、流入した圧縮空気はエアタンク60内にて冷却されるため、貯留時にドレンが発生しエアタンク60内下部へ滞留することとなる。かかるエアタンク60を備えることで、エアコンプレッサ70の始動時や停止時における流体(圧縮空気)の水撃作用(ウォーターハンマー現象)の抑制に資し、後段に接続される機器の負荷軽減に資する。
【0032】
エアドライヤ50は、圧縮空気を乾燥させドレンを取り除くための機器であって、ドレンの除去方式により、冷凍式や中空糸膜式、吸着式などが存在する。本発明で使用するエアドライヤ50は、冷凍式や中空糸膜式、吸着式のいずれかを問うものではなく、特に限定されるものではないが、一般に繁用されているのは、冷凍式のエアドライヤ50である。冷凍式のエアドライヤ50は、冷媒の蒸発潜熱を利用して、圧縮空気を冷却し、含有ドレンを凝縮して除去するための装置であって、比較的安価に導入することができるため、好適である。
エアタンク60から流入した圧縮空気は、エアドライヤ50により乾燥された後、後段に接続されたプレフィルタ40へ送気されることとなる。
【0033】
プレフィルタ40は、エアドライヤ50から流入した圧縮空気中の異物を分離・除去するための手段を有する装置であり、形状や形式は特に限定しない。例えば、エアタンク60やエアコンプレッサ70では除去できない固形物を分離・除去可能なエレメントやフィルタを使用した装置や、塵埃やドレンを同時に除去可能なサイクロンセパレータ等を使用する態様が考え得る。さらに、上記フィルタ等を複数接続し、分離・除去可能な異物を増加させた態様も好適である。
プレフィルタ40により異物を除去された圧縮空気は、最後段のオイル分離除去装置10へ送気されることとなる。
【0034】
以上の動作及び作用により、圧縮空気生成用オイルフリーシステム1の最後段に配設されるオイル分離除去装置10へ流入する圧縮空気は、前段までの各装置にて異物が除去された清浄な圧縮空気であるが、各装置に使用されている油分が圧縮空気中に含まれてしまうことが想定される。そこで、本システムの最後段にオイル分離除去装置10を配設し、油分を徹底的に除去することで、オイルフリーの圧縮空気の生成を図るものであるが、圧縮空気中には、油分以外にドレンも未だ残存していることが想定される。すなわち、前段のプレフィルタ40にサイクロンセパレータを接続した場合においても、生成された圧縮空気中に存するドレン量の98~99%のみ分離・除去可能であって、除去しきれなかった少量のドレンが圧縮空気に含まれたままオイル分離除去装置10へ流入してしまう。そのため、オイル分離除去装置10に流入した圧縮空気を、油分分離部30へ直接流入させるのではなく、それ以前に水分分離部20を経由させることで、より100%に近いドレン除去を行い、油分分離部30の性能を最大限に活かすことがオイルフリーの圧縮空気の生成には重要である。
【0035】
以上の構成からなるオイル分離除去装置10を使用した圧縮空気生成用オイルフリーシステム1について、図1(a)に基づきその主な動作及び作用を説明する。
まず、エアコンプレッサ70にて生成された圧縮空気は、エアタンク60にて一時的に貯留された後にエアドライヤ50へ送気される。この時の圧縮空気は、大気中の塵埃や水蒸気、オイルミストを含んだものになる。そして、エアドライヤ50に流入した圧縮空気は、装置内の温度変化によって圧縮空気中のドレンが凝縮し除去されることで乾燥した圧縮空気となり、後段のプレフィルタ40へ送気される。乾燥した圧縮空気は、プレフィルタ40によりさらにドレンを含む異物が除去され、少量のドレンと除去しきれていないオイルミストを含んだ圧縮空気がオイル分離除去装置10へ流入することとなり、オイル分離除去装置10内の水分分離部20にてドレンを分離・除去した後、油分分離部30にてオイルミストを分離・除去することで、清浄な圧縮空気を圧縮空気生成用オイルフリーシステム1の後段に接続された使用機器へ送気することとなる。
【0036】
また、エアコンプレッサ70にて生成される圧縮空気量がオイル分離除去装置10の処理容量を超える場合は、図1(b)に図示したようにオイル分離除去装置10を複数台接続させる態様も考え得る。例えば、図1(b)のようにオイル分離除去装置10が二基接続された態様であるならば、エアコンプレッサ70にて生成された圧縮空気は、エアタンク60とエアドライヤ50とプレフィルタ40にて異物が除去された後に、プレフィルタ40とオイル分離除去装置10を接続する配管Hを二手に分岐させ、夫々のオイル分離除去装置10下部から流入口14へ接続させることとなる。そして、水分分離部20及び油分分離部30にてドレンと油分を分離・除去された圧縮空気は、夫々の排出口15から配管Hへ流入し、一の配管Hへ合流後に後段の使用機器へ排出されることとなる。この態様を採る場合、配管Hの分岐及び合流点を夫々のオイル分離除去装置10の略中央地点に設定することで、夫々のオイル分離除去装置10が処理する圧縮空気量が同量(均等)となり、ドレンと油分の分離・除去にかかる装置負担の分散化に資することとなる。また、オイル分離除去装置10を複数台設置する際は、設置箇所を左右対称とする態様を採ることで、夫々のオイル分離除去装置10と接続する配管Hのルートや上記分岐及び合流点を設定しやすくなると共に、配管Hルートの単純化によりメンテナンス性の向上に資する、といった優れた効果を奏するものである。
【0037】
このように、エアコンプレッサ70にて生成された圧縮空気に対し、エアタンク60と、エアドライヤ50と、プレフィルタ40と、オイル分離除去装置10を経由し圧縮空気中の異物除去を複数回行うことにより、より完全に近い清浄な圧縮空気を圧縮空気圧回路の後段に接続される使用機器へ送気可能となり、フィルタの目詰まりやオイル付着といった後段の各種機器への不具合が発生する可能性も減少し、各種機器の製品・機能の長寿命化とメンテナンス性の向上が図られることとなる。
【0038】
以上、本発明にかかるオイル分離除去装置10及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム1の基本的構成態様、並びに、動作・作用について説明したが、本発明は、上記実施形態や図面に示す構成態様に限定するものではない。例えば、水分分離部20にて分離・除去されたドレンが、排水管23に備えたドレントラップにて貯留された後、所定のタイミングにてドレンのみが外部へ排出されることで、オイル分離除去装置10へ流入した圧縮空気圧のロスを軽減させるといった態様等が考え得る。
【0039】
以上のように、本発明にかかるオイル分離除去装置10及び圧縮空気生成用オイルフリーシステム1によれば、オイル分離除去装置10内の構成態様として、油分分離部30の前段に水分分離部20を備えることで、油分分離部30へ流入する圧縮空気中のドレンを事前に軽減させることが可能となり、圧縮空気中の油分の分離・除去が滞りなく行われることが可能であって、清浄な圧縮空気Aの生成に資すると共に、圧縮空気圧回路の最後段へオイル分離除去装置10を配設することにより、エアタンク60と、エアドライヤ50と、プレフィルタ40にて異物が除去された圧縮空気からさらにドレンと油分が最大限除去された清浄な圧縮空気を使用機器へ提供することが可能な圧縮空気圧回路となる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明は、オイル分離除去装置10において、圧縮空気中に含有されるドレンを予め水分分離部20にて除去することで、油分分離部30のパフォーマンスを最大限に引き出すことが可能であって、該オイル分離除去装置10を最後段にて使用した圧縮空気圧回路を形成した圧縮空気生成用オイルフリーシステム1においては、オイル分離除去装置10の前段までに異物やドレン等が除去された圧縮空気を、オイル分離除去装置10に備えた水分分離部20にてドレンをさらに分離・除去した後、油分分離部30を経由させることにより油分が効率よく除去することが可能となり、圧縮空気圧回路の後段に接続される装置へ清浄な圧縮空気を送気することが可能となる。したがって、本発明にかかる「圧縮空気生成用オイルフリーシステム1」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0041】
1 オイルフリーシステム
10 オイル分離除去装置
11 中空筒本体
12 底体
13 蓋体
14 流入口
15 排出口
20 水分分離部
21 通風孔
22 排水口
23 排水管
24 排水弁
25 オリフィス部
30 油分分離部
31 オイルフィルタ
32 活性炭
33 パンチングプレート
40 プレフィルタ
50 エアドライヤ
60 エアタンク
70 エアコンプレッサ
D ドレン回収部
H 配管

図1
図2