(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、プログラム
(51)【国際特許分類】
G09B 19/00 20060101AFI20240131BHJP
G09B 7/04 20060101ALI20240131BHJP
G06Q 50/20 20120101ALI20240131BHJP
【FI】
G09B19/00 H
G09B7/04
G06Q50/20
(21)【出願番号】P 2022100926
(22)【出願日】2022-06-23
【審査請求日】2023-08-10
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519059340
【氏名又は名称】株式会社JDSC
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100145481
【氏名又は名称】平野 昌邦
(74)【代理人】
【識別番号】100181722
【氏名又は名称】春田 洋孝
(72)【発明者】
【氏名】本田 崇人
【審査官】安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-112659(JP,A)
【文献】特開2009-048098(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B 19/00
G09B 7/04
G06Q 50/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとに所定のモデルのパラメータであるモデルパラメータを用いて当該評価項目の正答率である推定正答率を推定する正答率推定部と、
前記推定正答率に基づいて前記学習者に対し提示する評価項目である提示項目を選択する項目選択部と、
前記学習者の回答履歴に基づいて算出される正答率である実績正答率と前記推定正答率との差が減少するように前記モデルを学習するモデル学習部と、を備え、
前記モデルパラメータは、少なくとも2種類の
評価項目に対する取り組みに求められうる能力、または、学習による獲得が企図された能力の各種類について、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む
情報処理装置。
【請求項2】
前記回答履歴は、提示項目に関連付けて提示したヒントを示すヒント情報を含み、
前記モデルパラメータは、前記
能力の各種類について、ヒントの提示により正答に貢献するヒント貢献度を含み、
前記正答率推定部は、学習対象の評価項目と当該評価項目に対応するヒントのセットごとに前記推定正答率を推定し、
前記項目選択部は、前記推定正答率に基づいて、前記提示項目と当該提示項目に対応するヒントである提示ヒントとのセットを選択する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記項目選択部は、ヒントを提示しない出題項目について、ヒントなしを示すヒント情報を含めて前記回答履歴を更新する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記項目選択部は、複数件のヒントを提示した出題項目について、
前記複数件のヒントを示すヒント情報を含めて前記回答履歴を更新する
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記回答履歴は、前記評価項目ごとの回答がなされた回答時刻を含み、
前記モデル学習部は、
前記回答時刻ごとに、前記実績正答率と前記推定正答率との差が減少するように、前記モデルパラメータを定め、
前記正答率推定部は、
目標時刻における前記推定正答率を推定する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記正答率推定部は、
前記回答時刻からの時間経過に基づいて前記習熟度の前記回答時刻からの変化量を調整し、
当該習熟度を含むモデルパラメータに基づいて目標時刻における前記推定正答率を算出する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記
能力ごとに、少なくとも前記評価項目の習熟度と難易度の一方を出力する出力処理部を備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記習熟度に基づいて前記評価項目を含む学習課程の合否を判定する出力処理部を備える
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項9】
請求項1に記載の情報処理装置と、
学習者ごとの回答履歴を取得する回答履歴取得部、を備える
情報処理システム。
【請求項10】
コンピュータに、
請求項1に記載の情報処理装置として機能させるためのプログラム。
【請求項11】
情報処理装置における方法であって、
前記情報処理装置が、
学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとに所定のモデルのパラメータであるモデルパラメータを用いて当該評価項目の正答率である推定正答率を推定するステップと、
前記推定正答率に基づいて前記学習者に対し提示する評価項目である提示項目を選択する項目選択ステップと、
前記学習者の回答履歴に基づいて算出される正答率である実績正答率と前記推定正答率との差が減少するように前記モデルを学習するモデル学習ステップと、を備え、
前記モデルパラメータは、少なくとも2種類の
評価項目に対する取り組みに求められうる能力、または、学習による獲得が企図された能力の各種類について、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む
情報処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、プログラム、例えば、学習を支援するためのeラーニングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
昨今、PC(Personal Computer、パーソナルコンピュータ)などの情報処理装置を用いて通信ネットワークを経由して学習を支援するためのeラーニングシステムが普及しつつある。eラーニングシステムにより、学習者に対し場所や時間を問わず学習可能とする環境が提供される。一般に、ある学習課程に対する進捗や習熟度は、学習者により異なりうる。画一的な教材の提供によれば、期待されるほど進捗が得られないことや、習得されないことがある。そのため、個々の学習者に適した学習体験を与えることが重要となる。
【0003】
そこで、知識獲得予測(Knowledge Tracing)を導入し、学習者ごとの課題の順序を定め学習の効率化を図る試みがなされてきた。例えば、非特許文献1には、DKVMN(Dynamic Key Value Memory Networks)モデルを導入し、学習の進捗に応じて学習者の習熟度(mastery level)を推定し、推定した習熟度から次の課題の正答率を予測することについて記載されている。DKVMNモデルにおいて、課題を基礎づける複数の潜在概念(latent concept)と課題との相関関係が表現され、潜在概念ごとに習熟度の時間変化が算出される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【文献】Jiani Zhang, Xingjian Shi, Irwin King, Dit-Yan Yeung,“Dynamic Key-Value Memory Networks for Knowledge Tracing”, [online], 17 Feb 2017, Cornell University, arXiv > cs > arXiv:1611.08108, Computer Science > Artificial Intelligence, [令和4年3月10日検索],インターネット <https://arxiv.org/abs/1611.08108>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一般に、ある課題への取り組みに対して、複数種類の能力が総合的に用いられる。そのため、1種類の能力の向上を図るだけでは、必ずしも学習者の能力向上をもたらさないことがある。例えば、数学の文章題を解くためには、問題に対する読解力を要する。他方、読解力は、国語の能力として扱われ、数学の学習だけでは習得できないことが通例である。ひいては、学習目的とする数学の成績を向上できないことがある。
【0006】
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、本発明の課題の一つは、学習者に対し、より適した学習体験を与えることができる情報処理装置、情報処理システム、情報処理方法、および、プログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明は上記の課題を解決するためになされたものであり、本発明の一態様は、学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとに所定のモデルのパラメータであるモデルパラメータを用いて当該評価項目の正答率である推定正答率を推定する正答率推定部と、前記推定正答率に基づいて前記学習者に対し提示する評価項目である提示項目を選択する項目選択部と、前記学習者の回答履歴に基づいて算出される正答率である実績正答率と前記推定正答率との差が減少するように前記モデルを学習するモデル学習部と、を備え、前記モデルパラメータは、少なくとも2種類の評価項目に対する取り組みに求められうる能力、または、学習による獲得が企図された能力の各種類について、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む。
(2)本発明の他の態様は、(1)の情報処理装置と、学習者ごとの回答履歴を取得する回答履歴取得部、を備える情報処理システムである。
【0008】
(3)本発明の他の態様は、コンピュータに、(1)の情報処理装置として機能させるためのプログラムである。
(4)本発明の他の態様は、情報処理装置における方法であって、前記情報処理装置が、学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとに所定のモデルのパラメータであるモデルパラメータを用いて当該評価項目の正答率である推定正答率を推定するステップと、前記推定正答率に基づいて前記学習者に対し提示する評価項目である提示項目を選択する項目選択ステップと、前記学習者の回答履歴に基づいて算出される正答率である実績正答率と前記推定正答率との差が減少するように前記モデルを学習するモデル学習ステップと、を備え、前記モデルパラメータは、少なくとも2種類の評価項目に対する取り組みに求められうる能力、または、学習による獲得が企図された能力の各種類について、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む、情報処理方法である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、学習者に対し、より適した学習体験を与えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る情報処理システムの機能構成例を示す概略ブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る情報処理装置の概要を説明するための説明図である。
【
図7】本実施形態に係る推定正答率の算出モデルの例を示す図である。
【
図8】本実施形態に係る出題項目の選択処理の例を示すフローチャートである。
【
図10】習熟度に基づく判定の表示例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る情報処理システムの他の機能構成例を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(概要)
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。まず、本実施形態の概要について説明する。
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の機能構成例を示す概略ブロック図である。情報処理システム1は、情報処理装置10と端末装置20を含んで構成される。情報処理装置10と端末装置20は、ネットワークを経由して無線または有線で各種のデータを送受信可能に接続される。ネットワークは、インターネット、公衆ネットワーク、構内ネットワーク(LAN:Local Area Network)、仮想専用線(VPN:Virtual Private Network)、専用回線、などのいずれか1つまたは複数の組み合わせであってもよい。
【0012】
情報処理装置10は、端末装置20への学習コンテンツを示すコンテンツデータの配信に係る処理を実行する。情報処理装置10のユーザは、例えば、学習コンテンツの制作者、販売者、教育サービスの提供者、教育機関、試験機関、などのいずれであってもよい。端末装置20のユーザは、学習者である。学習者は、情報処理装置10から提供される学習コンテンツを用いて学習を行う者である。学習者は、受講者、会員、学生、生徒、訓練生、などとも呼ばれることがある。
【0013】
1件の学習コンテンツは、複数の評価項目を含んで構成される。評価項目は、学習者による回答に対する評価対象物の構成単位である。個々の評価項目として、問題、課題、などが該当する。1件の学習コンテンツは、例えば、各1件の課程、講座、教科、または、教材に対応づけられていてもよいし、複数の課程、講座、教科、教材、または、それらの組に対応付けられてもよい。
【0014】
個々の評価項目は、情報処理装置10から提供され、端末装置20を用いて学習期間中に提示される。学習者は、端末装置20に提示された評価項目を用いて学習を行い、評価項目に対する回答を指示する。端末装置20は、指示された回答を情報処理装置10に送信する。情報処理装置10は、評価項目ごとに回答を収集し、収集した回答を回答履歴として各学習者について取得する。情報処理装置10は、取得された回答の正誤を、評価項目ごとに判定する。
【0015】
情報処理装置10は、学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとにモデルパラメータを用いて当該評価項目の推定正答率を推定する。情報処理装置10は、推定した推定正答率に基づいて学習者に対し、次に提示する評価項目を提示項目として選択する。情報処理装置10は、学習者の回答履歴に基づいて正答率を実績正答率として算出し、実績正答率と推定正答率との差が減少するようにモデルを学習する。モデルパラメータは、項目反応理論に基づく正答率のモデルのパラメータとして、複数種類の潜在能力のそれぞれについて、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む。潜在能力は、評価項目に対する取り組みに求められうる能力、または、学習による獲得が企図された能力を指す。潜在能力は、潜在スキル、などとも呼ばれる。よって、情報処理装置10は、複数種類の潜在能力ごとに算出されるモデルパラメータを用いて、学習コンテンツをなす複数の評価項目が、学習者ごとに異なる順序で提示されうる。
【0016】
なお、情報処理装置10は、パーソナルコンピュータ(PC:Personal Computer)、ワークステーション、サーバ装置などの汎用の機器を用いたウェブサーバとして構成されてもよいし、専用の機器として構成されてもよい。端末装置20は、PC、タブレット端末装置、スマートフォンなどの汎用の機器として構成されてもよいし、専用の機器として構成されてもよい。
図1において、情報処理装置10と端末装置20の個数は、各1台であるが、一般的には端末装置20の個数は複数台となる。また、学習者数は、端末装置20の個数と等しいか、より多くなりうる。情報処理装置10の台数は、1台に限らず、2台以上となりうる。
【0017】
(情報処理装置)
次に、情報処理装置10の機能構成例について説明する。情報処理装置10は、制御部120、記憶部140、および、入出力部150を含んで構成される。
制御部120は、プロセッサを含んで構成される。プロセッサは、例えば、CPU(Central Processing Unit)などである。プロセッサは、記憶部140に予め記憶させた所定のプログラムを読み出し、読み出したプログラムに記述された命令に示される処理を実行する。この実行により、次に説明する制御部120の機能をはじめとする情報処理装置10の機能を発揮する。本願では、プログラムに記述された命令に示される処理を実行することを、「プログラムの実行」、「プログラムを実行する」などと呼ぶことがある。制御部120は、専用の部材を用いて実現されてもよい。
【0018】
記憶部140は、制御部120が実行する処理に用いる各種のデータを記憶する。記憶部140は、制御部120が取得した各種のデータを記憶する。記憶部140は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。
【0019】
入出力部150は、他の機器と無線または有線を用いて各種のデータの入力または出力する。入出力部150は、他の機器とネットワークを経由して接続してもよい。入出力部150は、例えば、入出力インタフェース、通信インタフェースなどのいずれか、または両者を含んで構成されてもよい。
【0020】
次に、制御部120の機能構成例について説明する。制御部120は、回答履歴取得部122、正答率推定部124、項目選択部126、モデル学習部128、出力処理部130、および、学習者管理部132を含んで構成される。
【0021】
回答履歴取得部122は、回答履歴を学習者ごとに取得し、取得した回答履歴を記憶部140に記憶する。回答履歴は、学習者ID(Identifier)ごとに保存される。学習者IDは、個々の学習者の識別情報である。回答履歴は、評価項目IDごとに、その学習者の回答を含んで構成される。評価項目IDは、個々の評価項目の識別情報であり、評価項目ごとに異なる。回答履歴取得部122は、端末装置20からの回答情報の受信ごとに、受信した回答情報で伝達される学習者の学習者IDに対応付けられた回答履歴に、その回答情報に含まれる評価項目の評価項目IDとその評価項目に対する回答を追加することにより、その回答履歴を更新する。なお、回答履歴取得部122は、その評価項目IDに回答時刻をさらに対応付けて回答履歴に含まれるようにしてもよい。回答履歴は、評価項目IDごとに回答時刻が含まれてもよい。回答時刻は、学習者が用いる端末装置20から取得された時刻に相当する。
【0022】
正答率推定部124は、記憶部140に記憶された学習者の回答履歴に基づいて、所定のモデルのモデルパラメータを用いて、学習対象とする評価項目ごとに推定正答率を算出する。正答率推定部124は、回答履歴の更新に応じてモデルパラメータを更新する。本実施形態において、「モデル」とは、ある入力値に対して、出力値を取得するための演算処理、または、その処理手順を指す。本実施形態に係るモデルは、回答履歴に基づいて上記のモデルパラメータを算出するまでの第1過程と、算出されたモデルパラメータから推定正答率を算出するまでの第2過程を含む。第1過程における演算処理に用いられるパラメータの組を「パラメータセット」と呼び、上記の「モデルパラメータ」と区別することがある。
【0023】
正答率推定部124は、モデルパラメータから推定正答率を定める第2過程において、シグモイド関数を用いることができる。モデルパラメータには、少なくとも2種類の潜在能力のそれぞれの種類に対して、習熟度、難易度、および、識別度が含まれる。習熟度は、学習者が学習により獲得した能力の程度を示す。難易度は、評価項目に対する回答が正答となることの困難性の程度を示す。識別度は、評価項目の正誤の識別能力、つまり、正答率が学習者により分散する度合いを示す。推定正答率の算出対象とする評価項目は、次に提示される評価項目の候補である。評価項目の候補は、例えば、未回答の問題となる。再回答が許容される学習コンテンツにおいては、回答済みの問題が、評価項目の候補として含まれてもよい。
正答率推定部124は、評価項目ごとに算出した推定正答率を項目選択部126に出力し、算出した評価項目ごとの推定正答率を記憶部140に記憶する。なお、モデルの例については、後述する。
【0024】
項目選択部126は、正答率推定部124から入力された評価項目ごとの推定正答率に基づいて、学習者に対して提示する提示項目を選択する。項目選択部126は、例えば、推定正答率が所定の目標正答率に近似する評価項目ほど優先して選択する。目標正答率として、その提示項目に関する習得により習熟度の実質的な向上が期待される値、例えば、0.5~0.7を項目選択部126に予め設定しておく。選択される提示項目は、次に提示される1件の評価項目、例えば、新たに出題される問題である。再回答が許容される学習コンテンツにおいては、出題済みの問題が再度提示される可能性がある。
項目選択部126は、選択した評価項目を提示項目として示す提示項目情報を出力処理部130に出力する。
【0025】
モデル学習部128は、記憶部140に記憶された学習者ごとの回答履歴に示される評価項目に対する回答に基づいて算出される実績正答率と、その評価項目に対して所定のモデルを用いて推定された推定正答率との差分が減少(最小化)するように、モデルパラメータを算出する(モデル学習)。モデル学習において、提示項目に対する回答に応じて、モデルパラメータを定めるためのパラメータセットが再帰的に更新される。実績正答率と推定正答率の差分の大きさを示す損失関数として、例えば、差分二乗和、交差エントロピー、などのいずれが用いられてもよい。後述するように、第1段階と第2段階におけるモデル学習が同期していてもよいし、同期していなくてもよい。
【0026】
出力処理部130は、学習者の端末装置20に対して各種の情報を出力するための処理を実行する。例えば、記憶部140には、学習コンテンツを予め記憶させておく。学習コンテンツは、評価項目ごとに、評価項目IDと評価項目コンテンツを含み、これらを対応付けて構成される。出力処理部130は、項目選択部126から入力される提示項目情報として評価項目IDと合致する評価項目IDに対応する評価項目コンテンツを特定する。出力処理部130は、特定した評価項目コンテンツを記憶部140から読み出し、出題要求の送信元となる学習者の端末装置20に送信する。
【0027】
学習者管理部132は、学習者に対する学習状況を管理する。学習者管理部132は、例えば、学習者ごとにアクセスの可否を判定する(アクセス管理)。アクセス管理により、アクセス要求に係る端末装置20のユーザが正当な学習者であるか否かが判定される。例えば、記憶部140には、予め学習者データを記憶しておく。学習者データは、学習者ごとの学習者IDと認証情報を含め、これらを対応付けて構成される。学習者管理部132は、学習者データを参照し、端末装置20から受信したアクセス要求で伝達された学習者IDと同一の学習者IDに対応する認証情報と、端末装置20から受信した認証情報とを照合して、その成否によりアクセスの可否を判定する(ログイン処理)。
【0028】
学習者管理部132は、アクセス可と判定した学習者が用いる端末装置20に対して、アクセス可を示すアクセス許否情報を送信し、学習コンテンツを提供可能とする。例えば、正答率推定部124は、アクセス可と判定された学習者の端末装置20から出題要求が入力されるとき、推定正答率の算出を実行する。項目選択部126において、推定正答率に基づいて提示項目が選択される。出力処理部130により、選択された提示項目に係る提示項目コンテンツが、その端末装置20に送信される。学習者管理部132は、アクセス否と判定した学習者が用いる端末装置20に対して、アクセス否を示すアクセス許否情報を送信し、学習コンテンツの提供を行わない。
【0029】
学習者管理部132は、学習者の進捗管理を行ってもよい。学習者データは、学習者IDごとに進捗情報を含み、これらを対応付けて構成されてもよい。進捗情報には、学習コンテンツのうち、評価項目ごとの出題の有無と回答の有無を示す情報が含まれてもよい。学習者管理部132は、出題から回答までの期間が予め定めた基準回答期間を超える評価項目が存在する学習者の端末装置20に対して、その評価項目に対する回答を案内するための回答案内情報(リマインダ)を送信してもよい。学習コンテンツには、予め学習期間が設定されてもよい。学習期間は、受講期間に相当する。学習者管理部132は、学習期間の終了までの期間が予め定めた学習案内期間未満になっても出題または回答がない評価項目が存在する学習者の端末装置20に対して、学習を案内するための学習案内情報(リマインダ)を送信してもよい。
なお、学習者管理部132は、認証情報の照合に成功した学習者であっても、アクセス要求の送信元となる端末装置20に対しては、アクセス否と判定する。
【0030】
(端末装置)
次に、端末装置20の機能構成例について説明する。端末装置20は、制御部220、記憶部240、入出力部250、表示部260、および、操作入力部270を含んで構成される。
制御部220は、プロセッサを含んで構成される。プロセッサは、記憶部240に予め記憶させた所定のプログラムを読み出し、読み出したプログラムに記述された命令に示される処理を実行する。この実行により、次に説明する制御部220の機能をはじめとする端末装置20の機能を発揮する。制御部220の機能を実現するためのプログラムは、例えば、学習コンテンツの提供に係る専用のアプリケーションプログラムとなりうる。
【0031】
記憶部240は、制御部220が実行する処理に用いる各種のデータを記憶する。記憶部240は、制御部220が取得した各種のデータを記憶する記憶媒体を含んで構成される。
入出力部250は、他の機器と無線または有線を用いて各種のデータの入力または出力する。入出力部250は、他の機器とネットワークを経由して接続してもよい。入出力部250は、例えば、入出力インタフェース、通信インタフェースなどのいずれか、または両者を含んで構成されてもよい。
【0032】
表示部260は、制御部220から入力される表示データに従って各種の表示情報を表示する。表示部260は、液晶ディスプレイ、有機エレクトロルミネッセンスディスプレイなどのいずれであってもよい。
操作入力部270は、ユーザである学習者の操作を受け付け、受け付けた操作に応じて操作信号を生成する。操作入力部270は、生成した操作信号を制御部220に出力する。操作入力部270は、マウス、キーボード、タッチセンサ、などの汎用の入力デバイスを備えてもよいし、ボタン、つまみ、ダイヤル、などの専用の部材を備えてもよい。なお、表示部260として機能するディスプレイと、操作入力部270として機能するタッチセンサは、一体化した単一のタッチパネルとして構成されてもよい。
【0033】
次に、制御部220の機能構成例について説明する。制御部220は、表示処理部222と、入力処理部224を含んで構成される。
表示処理部222は、学習コンテンツの提示に係る各種の表示情報を表示部260に表示させる。例えば、表示処理部222は、表示情報としてログイン画面を示す表示データを表示部260に出力する。ログイン画面の表示により、学習者IDと認証情報の入力が促される。
【0034】
表示処理部222は、情報処理装置10からアクセス可を示すアクセス許否情報が入力されるとき、または、既に出題した評価項目に対して回答がなされた後、情報処理装置10に出題要求を送信する。表示処理部222は、情報処理装置10から入力される評価項目コンテンツに基づいて評価項目画面を示す表示データを表示部260に出力する。評価項目画面の表示により、評価項目コンテンツが表示され、回答が促される。
表示処理部222は、情報処理装置10からアクセス否を示すアクセス許否情報が入力されるとき、学習者認証に対する失敗を示すエラー画面を示す表示データを表示部260に出力する。
【0035】
入力処理部224は、操作入力部270から入力される操作信号に基づいて学習コンテンツの提示または回答に係る処理を実行する。例えば、入力処理部224は、ログイン画面が表示されているとき、操作信号で指示される学習者IDと認証情報を情報処理装置10に送信する。入力処理部224は、評価項目コンテンツとして問題が表示されているとき、操作信号で指示される情報に基づいて問題に対する回答を構成し、構成した回答を示す回答情報を情報処理装置10に送信する。
【0036】
(推論・モデル学習)
次に、本実施形態に係る推論およびモデル学習の概要について説明する。
図2は、本実施形態に係る推論およびモデル学習の概要を説明するための説明図である。情報処理装置10は、所定のモデルを用いて推論S02とモデル学習S04を行う。
推論S02において、回答履歴取得部122は、学習者の端末装置20から評価項目ごとに回答情報を受信し、受信した回答情報に基づいて回答履歴を更新する。
正答率推定部124は、第1段階として、更新した回答履歴を用いて、学習対象とする評価項目ごとにモデルパラメータを算出する。正答率推定部124は、第2段階として、算出したモデルパラメータを用いて当該評価項目の推定正答率を算出する。モデルパラメータは、複数種類の潜在能力のそれぞれについて、少なくとも習熟度、難易度、および、識別度を含む。
項目選択部126は、推定した推定正答率に基づいて学習者に対し、次に提示する評価項目を提示項目として選択し、その学習者の端末装置20に選択した提示項目に係る提示項目コンテンツを送信する。
【0037】
モデル学習S04において、モデル学習部128は、学習者の回答履歴に基づいて、評価項目ごとの実績正答率とモデルを用いて算出される推定正答率との差分が最小化されるようにモデルパラメータを求めるためのパラメータセットを更新する。更新対象となるパラメータセットは、主に第1段階に関わる。パラメータセットの更新において、例えば、最急勾配法、確率的勾配降下法、などの手法が利用可能である。
【0038】
推論S02とモデル学習S04の一部または全部の過程は、同期していてもよい。例えば、モデル学習S04におけるパラメータセットの更新は、学習者からの回答ごとになされてもよい。また、推論S02とモデル学習S04の一部または全部の過程は、同期していなくてもよい。例えば、モデル学習S04におけるパラメータセットの更新は、学習者からの回答の有無に関わらず、予め定めた時間間隔(例えば、1時間~1か月)ごとになされてもよい。
【0039】
(ヒント)
本実施形態では、一部または全部の評価項目に対応付けて、さらにヒントが設定されてもよい。あるヒントは、個々の評価項目に対する正答を導くことが企図された情報を含む。ヒントは、学習コンテンツの一部の構成要素として含まれてもよい。
回答履歴を用いて算出されるモデルパラメータには、個々のヒントに対するヒント貢献度が含まれてもよい。ヒント貢献度は、そのヒントの提示により正答に貢献する度合いを示すパラメータである。即ち、ヒント貢献度とは、そのヒントが評価項目の解決に向けて誘導する能力を定量化した値とみることもできる。正答率推定部124は、所定のモデルを用いて評価項目と、その評価項目に対応するヒントとのセットごとに推定正答率を算出する。項目選択部126は、算出した推定正答率が目標正答率に近似するセットほど優先して選択する。項目選択部126は、選択した評価項目とヒントのセットを学習者の端末装置20に送信する。
【0040】
正答率推定部124は、一例として、式(1)に従って推定正答率pを算出することができる。式(1)において、sigmoid(…)は、実数…に対するシグモイド関数を示す。Nは、潜在能力の種類の数を示す。Nは、予め定めた2以上の整数である。cは、個々の潜在能力を示すインデックスである。acは、ある評価項目に対する潜在能力cに関する識別度を示す。θcは、ある学習者に対する潜在能力cに関する習熟度を示す。bcは、ある評価項目に対する潜在能力cに関する難易度を示す。scは、あるヒントの評価項目に対する潜在能力cに関するヒント貢献度を示す。ac、θc、bc、scは、それぞれ0以上1以下となるように正規化された実数である。なお、ヒントの提示を行わない場合には、ヒント貢献度scをゼロとみなして推定正答率pが算出される。
【0041】
【0042】
端末装置20の表示処理部222は、情報処理装置10から受信した評価項目とヒントのそれぞれを示す表示データを表示部260に出力する。表示部260には、評価項目とヒントを示す画面が表示される。入力処理部224は、評価項目とヒントがいずれも表示されたとき、操作信号に基づいて評価項目とヒントのセットに対する回答を示す回答情報を情報処理装置10に送信する。
【0043】
情報処理装置10の回答履歴取得部122は、端末装置20から受信した回答情報で伝達される学習者IDに対応付けられた回答履歴に、その回答情報に含まれる評価項目の評価項目IDと対応するヒントIDのセットと対応付けて回答を追加することにより、その回答履歴を更新する。よって、正答率推定部124、項目選択部126、および、モデル学習部128における評価項目とヒントのセットごとに行われる演算に便宜である。
【0044】
表示処理部222は、評価項目の表示よりも後にヒントを示す表示データを表示部260に出力してもよい。表示処理部222は、学習者の要求に応じてヒントを表示してもよい。例えば、表示処理部222は、操作入力部270からヒント要求を示す操作信号が入力されるとき、ヒントを示す表示データを出力する。また、表示処理部222は、評価項目の表示からの経過時間が予め定めた基準回答時間を超える場合に、ヒントを示す表示データを出力してもよい。
【0045】
入力処理部224は、評価項目が表示され、ヒントが表示されていないときに、操作信号に基づいて評価項目に対するヒントを伴わずに回答を受け付けることがある。その場合、入力処理部224は、その評価項目に対応するヒントを提示せずに当該評価項目に対する回答を示す回答情報を情報処理装置10に送信してもよい。その場合には、情報処理装置10の回答履歴取得部122は、ヒントなしを示すヒントIDを用いて、評価項目に対するヒントを提示しなかったことを表す情報を回答履歴に含めてもよい。
【0046】
よって、正答率推定部124、項目選択部126、および、モデル学習部128は、評価項目を提示しヒントを提示しなかった場合と、評価項目とヒントのいずれも提示した場合とを区別して処理を行うことができる。例えば、正答率推定部124は、ある評価項目に対して、ヒントを伴わない場合における推定正答率と、対応するヒントとのセットに対する推定正答率のそれぞれを算出することができる。正答率推定部124は、ヒントを伴わない場合には、ヒント貢献度をゼロとして推定正答率を算出する。項目選択部126は、ヒントを伴わずに評価項目を選択する場合に対する推定正答率が、評価項目とヒントのセットに対する推定正答率よりも目標正答率に近似する場合には、ヒントを伴わずに評価項目を選択することもありうる。このような場合には、ヒントの提示により、却って正答率が低下することが見込まれるためである。
【0047】
1件の評価項目に対応づけられるヒントの個数は1個に限られず、2個以上となってもよい。2個以上のヒントは、同時に提示されてもよい、1個ずつ提示されてもよい。1個ずつ提示する場合、操作入力部270は、操作信号に基づいて、2個以上のヒントのいずれかを選択可能としてもよいし、個々のヒントの提示の要否を指示可能としてもよい。個々のヒントの提示順序は、操作信号に基づいて選択されてもよいし、疑似乱数を用いてランダムに選択されてもよいし、予め定められてもよい。予め定めた提示順序として、評価項目と対応付けて選択されたヒントの順列(後述)が用いられてもよい。操作入力部270は、ある評価項目についてヒントの有無の他、提示したヒントの組、または、ヒントの順列ごとに回答を受け付け、ヒントの組、または、順列ごとの回答を示す回答情報を情報処理装置10に送信してもよい。
【0048】
ヒントIDは、ヒントの組、または、ヒントの順列ごとに設定されてもよい。回答履歴取得部122は、端末装置20から受信した回答情報で伝達される学習者IDに対応付けられた回答履歴に、その回答情報に含まれる評価項目の評価項目IDと対応するヒントIDのセットと対応付けて回答を追加することにより、その回答履歴を更新する。これにより、正答率推定部124、項目選択部126、および、モデル学習部128における評価項目とヒントの組、または、ヒントの順列ごとに行われる演算に便宜である。これにより、正答率推定部124、項目選択部126、および、モデル学習部128は、提示したヒントの組、または、ヒントの順列ごとに区別して処理を行うことができる。例えば、正答率推定部124は、ある評価項目に対して、ヒントの組、または、ヒントの順列ごとに推定正答率を算出することができる。その場合、ヒント貢献度は、ヒントの組、または、ヒントの順列ごとに算出されてもよい。そして、項目選択部126は、算出された推定正答率に基づいて、ある評価項目に対して、提示すべきヒントの組、または、ヒントの順列を定めることができる。
【0049】
(提示項目の選択例)
次に、提示項目の選択例について説明する。
図3は、提示項目の第1選択例を示す図である。
図3は、正答率推定部124により、ヒントを伴わずに、次に提示する提示項目の候補ごとに算出した推定正答率を例示する。項目1、項目2、項目3のそれぞれについて、推定正答率は0.76、0.65、0.47となる。項目選択部126において、目標正答率が0.6と設定されている場合、推定正答率が目標正答率に最も近似している項目2が提示項目として選択される。
【0050】
図4は、提示項目の第2選択例を示す図である。
図4は、正答率推定部124により、次に提示する提示項目とヒントの候補ごとに算出した推定正答率を例示する。項目2とヒント1のセット、項目2とヒント2のセット、項目2とヒント3のセットのそれぞれについて、推定正答率は0.68、0.71、0.74となる。項目選択部126において、ヒントの提示後の目標正答率が0.73と設定されている場合、推定正答率が目標正答率に最も近似しているセットをなす項目2とヒント3が、それぞれ提示項目と提示ヒントとして選択される。
【0051】
図5は、提示項目の第3選択例を示す図である。
図5は、正答率推定部124により、次に提示する提示項目とヒントのセットの候補ごとに算出した推定正答率を例示する。項目1とヒント1のセット、項目1とヒント2のセット、項目1とヒント3のセット、項目1とヒントなしのセットのそれぞれについて、推定正答率は0.75、0.76、0.68、0.76となる。項目選択部126は、推定正答率が高いセットほど優先して選択してもよい。ここで、項目1とヒントなし、つまり、ヒントを伴わずに項目1が提示項目として選択される。この場合、目標正答率が設定されなくてもよい。
【0052】
図6は、提示項目の第4選択例を示す図である。
図6は、正答率推定部124により、次に提示する提示項目と1件のヒントもしくは複数件のヒントの順列とのセットの候補ごとに算出した推定正答率を例示する。項目2とヒント1のセット、項目2とヒント2のセット、項目2とヒント3のセット、項目2とヒント1ならびにヒント2からなる系列のセットのそれぞれについて、推定正答率は0.68、0.71、0.74、0.75と算出される。項目選択部126は、推定正答率が高いセットほど優先して選択してもよい。その場合には、項目2と、ヒント1ならびにヒント2からなる順列が選択される。かかるヒントの順列は、提示項目の正答を導くうえで有効であることが期待される。
【0053】
(推定正答率の算出モデル)
次に、本実施形態に係る推定正答率の算出モデルの例について説明する。
図7は、本実施形態に係る推定正答率の算出モデルの例を示す図である。例示されるモデルは、KVMMA(Key-Value Memory Matrix Attention)ネットワークとして構成される。この構成により、学習者ごとの回答履歴に基づき、評価項目、ヒント、および、学習者を跨いで潜在能力ごとにモデルパラメータを取得可能とする。KVMMAネットワークは、モデルパラメータに共通の状態がキー行列(Key Matrix)M
kと値行列(Value Matrix)M
v
tを用いて表現する機械学習モデルである。キー行列M
kと値行列M
v
tは、モデル学習により更新され、モデルパラメータの算出に用いられる。キー行列M
kは、主に評価項目ならびにヒントと学習者の回答との関連性を表す。値行列M
v
tは、主に学習者の能力と、評価項目ならびにヒントと学習者の回答のセットとの関連性を表される。正答率推定部124は、値行列M
v
tを時刻tごとに更新する。回答ごとの更新により、値行列M
v
tの時間経過特性が表される。時刻tは、学習者による回答時刻を示すインデックスである。キー行列M
k、値行列M
v
t、後述する埋込行列A、B、Cは、いずれもモデルパラメータの算出までの第1過程において用いられるパラメータセットとなる。これらのパラメータセットは、モデル学習において上述の損失関数が最小化されるように再帰的に定められる。
【0054】
図7の例では、モデルパラメータにヒント貢献度が含まれる。ヒントが提示されない場合、提示した1個のヒント、提示したヒントの組または順列が、それぞれ異なるヒントIDをもって識別される。
正答率推定部124は、埋込行列(embedding matrix)Aから時刻tにおいて提示された評価項目q
tを表す埋込ベクトル(embedding vector)k
q
tを抽出する。埋込行列Aは、d
k行Q列の行列である。d
kは、2以上の予め定めた整数である。d
kは、埋込ベクトルk
q
tの要素数(次元数)に相当する。Qは、評価項目の件数を示す正の整数である。
【0055】
正答率推定部124は、埋込ベクトルkq
tにキー行列Mkを乗算し、重みベクトルwq
tを算出する。キー行列Mkは、dk行N列の行列である。重みベクトルwq
tは、N列のベクトルとなる。正答率推定部124は、重みベクトルwq
tに関数fa、fbをそれぞれ作用して、識別度ベクトルa、難易度ベクトルbを算出する。識別度ベクトルa、難易度ベクトルbは、それぞれ識別度ac、難易度bcを要素として有する。関数fa、fbは、例えば、係数行列Wa、Wbとの乗算値に定数Ca、Cbをそれぞれ加えて得られる行列に対する何らかの活性化関数(例えば、シグモイド関数)となりうる。関数fa、fbのそれぞれのパラメータである係数行列Wa、Wbは、モデル学習において更新されるパラメータセットの一部となりうる。
【0056】
正答率推定部124は、埋込行列Bから時刻tにおいて提示されたヒントhtを表す埋込ベクトルkh
tを抽出する。埋込行列Bは、埋込行列Aとは別個のdk行H列の行列である。埋込ベクトルkh
tの要素数もdkとなる。Hは、ヒントの件数を示す正の整数である。
正答率推定部124は、埋込ベクトルkh
tにキー行列Mkを乗算して得られた重みベクトルwh
tの何らかの活性化関数(例えば、ソフトマックス(softmax)関数)をヒント貢献度ベクトルsとして算出する。ソフトマックス関数は、個々の要素値を0以上1以下の値域に収め、かつ、要素値の総和を1となるように正規化する関数である。ヒント貢献度ベクトルsは、ヒント貢献度scを要素として有するベクトルである。
【0057】
正答率推定部124は、埋込行列Cから時刻tにおいて提示された評価項目qt、ヒントht、および、それらに対する回答rtのセット(qt、ht、rt)を表す埋込ベクトルvtを抽出する。埋込行列Cは、埋込行列A、Bとは別個のdv行P列の行列である。dvは、予め定めた2以上の整数であり、埋込ベクトルvtの要素数に相当する。Pは、得られた回答の件数に相当する。
【0058】
正答率推定部124は、埋込ベクトルvtのシグモイド関数を忘却ベクトル(erase vector)etとして算出する。正答率推定部124は、キー行列Mkに変換関数を作用して得られる行列に忘却ベクトルetを乗算して得られるベクトル値を忘却更新量として算出する。変換関数は、dk行N列のキー行列Mkを線形演算によりdv行N列の行列に縮退する関数である。なお、dk=dvである場合には、キー行列Mkに対する変換関数の演算を要しない。
【0059】
正答率推定部124は、埋込ベクトルvtの双曲線正接関数を加算ベクトル(add vector)utとして算出する。正答率推定部124は、キー行列Mkと加算ベクトルutを乗算して学習更新行列を算出する。変換関数のパラメータは、モデル学習において更新されるパラメータセットの一部となりうる。
【0060】
正答率推定部124は、1を各次元の要素として有する単位ベクトルから忘却更新量を差し引いて得られる忘却補正値を現時点の時刻tにおける値行列Mv
tに乗じて忘却行列を算出し、算出した忘却行列に学習更新行列を加算して、次の時点の時刻t+1における値行列Mv
t+1を算出する。忘却補正値の乗算により、誤答をもたらす知識の忘却が模擬(シミュレート)される。学習更新行列の加算により、正答をもたらす知識の獲得が模擬される。
【0061】
正答率推定部124は、値行列Mv
tを何らかの変換関数を用いて得られる要素数Nのベクトルに対し何らかの活性化関数(例えば、ソフトマックス関数)の関数値を時刻tにおける習熟度ベクトルθ(t)として算出する。習熟度ベクトルθ(t)は、潜在能力cごとの習熟度θc
(t)を要素として有する。変換関数は、例えば、列ごとの平均化、変換ベクトルgの乗算などのいずれであってもよい。変換関数に係るパラメータ、例えば、変換ベクトルgは、モデル学習において更新されるパラメータセットの一部となりうる。
【0062】
正答率推定部124は、式(2)に従って、潜在能力cごとに得られた識別度ac、難易度bc、ヒント貢献度sc、および、時刻tにおける学習者の習熟度θc
(t)を用いて推定正答率ptを算出することができる。
式(1)、(2)に例示されるように、評価項目の識別度acは、評価項目ごとの正誤のばらつきの大きさを表す。学習者の習熟度θc
(t)とヒント貢献度scは、学習者の能力、ヒントによる正答率ptを向上させる能力を表す。評価項目の難易度bcは、評価項目による推定正答率ptの低下を表す。
【0063】
【0064】
なお、上記の説明では、回答ごとに逐次にパラメータセットが更新され、更新されたパラメータセットに基づいて正答率を算出する場合を例にしたが、これには限らない。正答率推定部124は、回答時刻ごとの正答率の時間経過に基づいて目標時刻における正答率を算出してもよい。
例えば、モデル学習部128は、回答時刻ごとに、実績正答率と推定正答率との差が減少するようにモデルパラメータを定め、回答時刻ごとのモデルパラメータから目標時刻におけるモデルパラメータを予測する。目標時刻は、正答率の算出目標とする時刻を意味する。目標時刻は、現時点の時刻でもよいし、その前後の時刻であってもよい。目標時刻は、端末装置20から指示される時刻であってもよい。ここで、正答率推定部124は、回答履歴を参照して回答時刻を特定することができる。予測において、例えば、線形予測などの手法を用いることができる。正答率推定部124は、目標時刻におけるモデルパラメータを推定し、推定したモデルパラメータに基づいて推定正答率を算出することができる。
【0065】
また、正答率推定部124は、最後の回答時刻から目標時刻までの経過時間が長くなるほど増加するように誤答に基づく忘却更新量を調整してもよい。忘却更新量の調整において、例えば、経過時間の増加に応じて単調に増加し、一定値として1に漸近する関数(例えば、シグモイド関数、双曲線正接、など)が乗じられればよい。これにより、誤答による習熟度の変化量の増加が考慮される。また、正答率推定部124は、その経過時間が長くなるほど減少するように正答に基づく学習更新行列を定めてもよい。学習更新行列の調整において、例えば、経過時間の増加に応じて単調に減少し、0に収束する関数(例えば、指数関数、など)が乗じられればよい。これにより、正答による習熟度の変化量が減少し、時間経過による学習効果の減少が考慮される。正答率推定部124は、調整後の値行列Mv
t、ひいては習熟度を用いて推定正答率を算出することができる。
【0066】
(出題項目の選択処理)
次に、本実施形態に係る出題項目の選択処理の例について説明する。
図8は、本実施形態に係る出題項目の選択処理の例を示すフローチャートである。但し、
図8の例では、ヒントの選択については考慮されていない。
(ステップS102)回答履歴取得部122は、学習者ごとの評価項目に対する回答を示す回答履歴を取得する。
(ステップS104)モデル学習部128は、学習者ごとの回答履歴から得られる実績正答率と、モデルを用いて推定された推定正答率との差分が減少するようにモデルパラメータを算出する。
【0067】
(ステップS106)正答率推定部124は、算出したモデルパラメータを用いて、処理対象とする学習者について、学習対象の評価項目ごとに推定正答率を推定する。
(ステップS108)項目選択部126は、推定正答率が予め定めた目標正答率に最も近似する評価項目を出題項目として選択する。
(ステップS110)出力処理部130は、選択された出題項目に係る評価項目コンテンツを学習者の端末装置20に送信する。
【0068】
(ステップS112)回答履歴取得部122は、学習者の端末装置20から出題項目に対する回答を受信する。
(ステップS114)回答履歴取得部122は、学習者の出題項目に対する回答を、その評価項目に対する回答として回答履歴に追加する。その後、ステップS104の処理に進む。
図8の処理は、未回答の評価項目がなくなるまで繰り返される。
【0069】
(応用例)
次に、本実施形態に係る情報処理装置10の応用例について説明する。
出力処理部130は、学習者に対して算出されたモデルパラメータの一部または全部を、端末装置20を経由して表示部260に出力してもよい。出力処理部130は、端末装置20の入力処理部224から受信した出力要求で指示されるモデルパラメータを端末装置20に送信してもよい。
出力処理部130は、例えば、潜在能力ごとに、指示された評価項目の習熟度と難易度の一方または両方を、出力要求に対する応答として端末装置20に送信する。端末装置20の表示処理部222は、指示されたモデルパラメータを含む表示画面を示す表示データを表示部260に出力する。表示部260には、指示されたモデルパラメータとして、評価項目の習熟度と難易度の一方または両方が表示される。
【0070】
図9は、モデルパラメータの表示例を示す図である。
図9の例では、評価項目として数学の「問題D」についての「難易度」と、会員番号「1234」の学習者「ABC」の「習熟度」が、その評価項目に対する「問題分析」として表示されている。難易度と習熟度は、それぞれ潜在能力として、「読解力」、「図解力」、「計算力」のそれぞれについて表示されている。表示される値は、1以上10以下の整数値となるように離散化されている。学習者の習熟度は、読解力に関しては難易度よりも低いが、図解力と計算力に関しては、それぞれ難易度よりも高い。このことから、学習者「ABC」が「問題D」を取り組むうえで、十分な「図解力」と「計算力」を有する反面、「読解力」が不足することが示される。表示画面の「講評」の欄には、モデルパラメータに対応するメッセージとして「図解力と計算力は、まずまずですが、読解力に改善の余地があります」との文言を含めて表示画面が構成されている。また、不足する潜在能力である「読解力」に関しては、向上を促すためのメッセージとして「読解ドリルを受講し、国語の潜在アップも狙ってはいかがでしょうか」との文言を含めて表示画面が構成されている。
【0071】
出力処理部130は、潜在能力ごとに得られた習熟度に基づいて、その習熟度の算出に用いた評価項目を含む学習コンテンツに係る学習課程の合否を判定してもよい。出力処理部130は、例えば、いずれの潜在能力に対する習熟度も、所定の判定基準値以上であるとき、その学習者について合格と判定する。出力処理部130は、習熟度の潜在能力間の平均値が、所定の判定基準値以上であるとき、その学習者に対して合格と判定してもよい。
出力処理部130は、合格と判定するとき、その学習者の端末装置20に合格通知を送信してもよい。合格通知には、習熟度の他、実績正答率、学習に用いた評価項目、それらに対する正否、それらの数、判定結果、などの情報が含まれてもよい。
端末装置20の表示処理部222は、情報処理装置10から受信した合格通知を表す表示画面を示す表示データを生成し、表示部260に出力してもよい。表示部260には、合格通知を表す表示画面が表される。
【0072】
図10は、習熟度に基づく判定の表示例を示す図である。
図10の例では、会員番号「5678」の学習者「XYZ」に対する合格通知としての学習課程に対する「終了証」を示す。この例では、実績正答率として、科目1について「76/93」、科目2について「82/96」、科目3について「86/91」と表されている。実績正答率の分子、分母は、それぞれ得点、設問数を示す。この例では、終了時点の設問数は、各科目ともに学習コンテンツに含まれる100問よりも少ない。即ち、100問の全部に対して学習が完了する前に学習内容に対して十分に習熟したと習熟度に基づいて判定されたことが示される。「習得技能」の欄において、潜在能力として、「技能1」に対する習熟度として「78」、「技能2」に対する習熟度として「82」、「技能3」に対する習熟度として「84」、「技能4」に対する習熟度として「87」と表示されている。これらの値は、最小値が0、最大値が100となるように正規化されている。習熟度に対する「判定」の欄において「合格」と通知されている。この判定は、出力処理部130における「技能1」~「技能4」のそれぞれについて得られた習熟度が、いずれも所定の判定基準値以上に達したとの判定による。このように学習コンテンツに含まれる全評価項目について学習がなされる前に、習熟度が一定以上の水準に達したと判定された学習者に対しては合格通知が伝達される。そのため、学習者は必ずしも必要とされない学習を回避することができる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態に係る情報処理装置10は、学習者が学習した評価項目ごとの回答を示す回答履歴に基づき、学習対象の評価項目ごとに所定のモデルのパラメータであるモデルパラメータを用いて当該評価項目の正答率である推定正答率を推定する正答率推定部124を備える。情報処理装置10は、推定した推定正答率に基づいて学習者に対し提示する評価項目である提示項目を選択する項目選択部126を備える。学習者の回答履歴に基づいて算出される正答率である実績正答率と推定正答率との差が減少するようにモデルを学習するモデル学習部128を備える。モデルパラメータは、少なくとも2種類の潜在能力の各種類について、学習者の能力レベルを示す習熟度、評価項目に対する難易度、および、評価項目による正誤の識別度を含む。
この構成により、学習者の回答履歴に基づいて、複数種類の潜在能力ごとの習熟度、難易度、および、識別度を含むモデルパラメータが算出される。そして、算出されたモデルパラメータを用いて評価項目ごとに算出された推定正答率に基づいて提示項目が選択される。提示項目の選択において、潜在能力ごとの習熟度、難易度、および、識別度が用いられるので、学習者の能力に適した提示項目を提供することで、学習の効率化が図られる。
【0074】
回答履歴は、提示項目に関連付けて提示したヒントを示すヒント情報を含んでもよい。モデルパラメータは、潜在能力の各種類について、ヒントの提示により正答に貢献するヒント貢献度を含んでもよい。正答率推定部124は、学習対象の評価項目と当該評価項目に対応するヒントのセットごとに推定正答率を推定してもよい。項目選択部126は、推定した推定正答率に基づいて、提示項目と当該提示項目に対応するヒントである提示ヒントとのセットを選択してもよい。
この構成により、ヒント情報を含む回答履歴に基づいてヒント貢献度が算出され、さらにヒント貢献度を用いて推定された推定正答率に用いて提示項目と提示ヒントが選択される。そのため、提示により期待される推定正答率に基づいて、提示項目に関連する提示ヒントが選択されるので、補正された学習者の能力に適したヒントを用いて学習の効率化が図られる。
【0075】
項目選択部126は、ヒントを提示しない出題項目について、ヒントなしを示すヒント情報を含めて回答履歴を更新してもよい。
この構成により、ヒントを提示しない出題項目も、ヒントを提示する出題項目と同様に、ヒント情報を用いて、一元的に処理することができる。そのため、出題項目ごとに実行される処理の効率化が図られる。
【0076】
項目選択部126は、複数件のヒントを提示した出題項目について、その複数件のヒントを示すヒント情報を含めて回答履歴を更新してもよい。
この構成により、提示したヒントの件数に関わらず、ヒントを示すヒント情報が回答履歴に含まれる。そのため、提示したヒントの件数に関わらず、ヒント情報を用いて、一元的に処理することができる。そのため、出題項目ごとに実行される処理の効率化が図られる。
【0077】
回答履歴は、評価項目ごとの回答がなされた回答時刻を含んでもよい。モデル学習部128は、回答履歴に含まれた回答時刻ごとに、実績正答率と推定正答率との差が減少するようにモデルパラメータを定めてもよい。正答率推定部124は、目標時刻における推定正答率を推定してもよい。
この構成により、回答時刻ごとの実績正答率に基づいて、目標時刻における推定正答率が推定される。そのため、回答時刻が不規則であっても、学習時点とする目標時刻における推定正答率に基づいて、学習者の能力に適した評価項目が選択される。
【0078】
正答率推定部124は、回答時刻からの時間経過に基づいて習熟度の回答時刻からの変化量を調整し、調整した習熟度を含むモデルパラメータに基づいて目標時刻における推定正答率を算出してもよい。
この構成により、回答時刻からの時間経過に基づいて調整した習熟度に基づいて目標時刻における推定正答率が推定される。そのため、回答時刻からの時間経過による学習効果の変化を考慮して、学習者の能力に適した評価項目が選択される。
【0079】
情報処理装置10は、潜在能力ごとに、少なくとも評価項目の習熟度と難易度の一方を出力する出力処理部130を備えてもよい。
この構成により、潜在能力ごとの学習者の習熟度、または、提示項目の学習に要する難易度が出力される。出力された習熟度、または、難易度に接した学習者は、自己の潜在能力ごとの習熟度、または、難易度に基づいて、よりきめ細やかな学習指針を得ることができる。
【0080】
情報処理装置10は、潜在能力ごとに推定された習熟度に基づいて、評価項目を含む学習課程の合否を判定する出力処理部130を備えてもよい。
この構成により、潜在能力ごとに推定された習熟度に基づいて、評価項目の難易度と識別度に関わらず、学習者の習得の度合いが判定される。そのため、学習者の能力本位で的確に合否が判定される。
【0081】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について詳しく説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0082】
例えば、学習コンテンツに含まれる評価項目、ヒント、および、潜在能力は、上記に説明したものに限られず、任意に定められうる。
上記の説明では、評価項目に対する回答の候補が正答と誤答の2通りである場合を例にしたが、これには限られない。評価項目に対する回答は、その評価が正答である程度、つまり、正答率として定量化できるものであればよい。
【0083】
モデルパラメータの算出に用いられる第1段階のモデルは、KVMMAネットワークに限られず、RNN(Recurrent Neural Network)であってもよいし、ニューラルネットワーク以外の数理モデル、例えば、HMM(Hidden Markov Model)であってもよい。
推定正答率の算出に用いられる第2段階のモデルは、モデルパラメータの変化に応じて推定正答率を単調に増加または減少させ、一定の値域に収めることができる数理モデルであればよい。かかる数理モデルは、例えば、シグモイド関数の他、双曲線正接、などであってもよい。
【0084】
項目選択部126は、目標正答率に近似する推定正答率を与える評価項目、または、評価項目とヒントの設置を優先して選択する他、より高い推定正答率を与える評価項目、または、評価項目とヒントの設置を優先して選択してもよい。
対応するヒントが設定されている評価項目に対しては、正答率推定部124は、ヒントを提示しない場合と、提示する場合のそれぞれに対して、推定正答率を算出してもよい。項目選択部126は、ヒントを提示する場合における推定正答率からヒントを提示しない場合の推定正答率における差分が予め定めた基準値以下となるヒントは無効なヒントとして、そのヒントと評価項目とのセットを棄却してもよい。項目選択部126は、その差分が大きいセットほど、有効なヒントを含むセットとして優先して選択してもよい。
【0085】
また、情報処理装置10は、端末装置20の表示処理部222と入力処理部224に相当する機能部を備えてもよい。その場合には、上記の情報処理装置10と端末装置20における各種情報の送受信が情報処理装置10における入出力となる。
回答履歴取得部122は、情報処理装置10とは、無線または有線で接続される別個の装置として、または、別個の装置の一機能として構成されてもよい。回答履歴取得部122をなす別個の装置は、例えば、ログサーバもしくはデータベースサーバとして構成されてもよい。
図11に例示される情報処理システム1は、情報処理装置10と端末装置20の他、回答履歴取得部122を備える。その場合、情報処理装置10において、回答履歴取得部122が省略されてもよい。上記の回答履歴取得部122と情報処理装置10の他部との入出力に代え、別個の装置と情報処理装置10の他部との送受信がなされる。また、上記の回答履歴取得部122と端末装置20との送受信に代え、別個の装置と端末装置20との送受信がなされる。
端末装置20において、表示部260と操作入力部270の一方または両方が省略されてもよい。端末装置20は、操作信号の入力元、表示データの送信先となる機器と無線または有線で各種のデータを送受信可能に接続できればよい。
【0086】
また、上述した実施形態における情報処理装置10の一部、または全部を、LSI(Large Scale integration)等の集積回路として実現してもよい。情報処理装置10の各機能ブロックは個別にプロセッサ化してもよいし、一部、または全部を集積してプロセッサ化してもよい。また、集積回路化の手法はLSIに限らず専用回路、または汎用プロセッサで実現してもよい。また、半導体技術の進歩によりLSIに代替する集積回路化の技術が出現した場合、当該技術による集積回路を用いてもよい。
【符号の説明】
【0087】
10…情報処理装置、20…端末装置、120…制御部、122…回答履歴取得部、124…正答率推定部、126…項目選択部、128…モデル学習部、130…出力処理部、132…学習者管理部、140…記憶部、150…入出力部、220…制御部、222…表示処理部、224…入力処理部、240…記憶部、250…入出力部、260…表示部、270…操作入力部