(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】非接触給電装置
(51)【国際特許分類】
H02J 50/05 20160101AFI20240131BHJP
B25J 19/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H02J50/05
B25J19/00 F
(21)【出願番号】P 2022162834
(22)【出願日】2022-10-08
(62)【分割の表示】P 2018089340の分割
【原出願日】2018-05-07
【審査請求日】2022-10-08
(31)【優先権主張番号】P 2017168090
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2018030221
(32)【優先日】2018-02-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】512135274
【氏名又は名称】富士ウェーブ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121337
【氏名又は名称】藤河 恒生
(72)【発明者】
【氏名】粟井 郁雄
(72)【発明者】
【氏名】二ツ矢 幹基
【審査官】辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/196424(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/010057(WO,A1)
【文献】特表2007-526555(JP,A)
【文献】特開2017-144530(JP,A)
【文献】特開2007-060829(JP,A)
【文献】特開2001-077733(JP,A)
【文献】特開平06-260815(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 50/05
B25J 19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流の電力を送る送電器と、
対向する一対の伝送器用導体を有し、該一対の伝送器用導体の一方側から他方側に向けて前記送電器からの電力の伝送を非接触で行うものであって直列に設けられた複数個の伝送器と、
複数個の負荷回路と、
複数個のインダクタンス素子と、
を備えており、
前記複数個の伝送器はそれぞれ、関節を構成し互いに隣接する関節構成部材の各々に前記一対の伝送器用導体の各々が固定されて
おり、
前記複数個の伝送器のうちの第1の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第1のインダクタンス素子が接続され、該第1の伝送器と該第1のインダクタンス素子からなる第1の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第1の負荷回路が接続され、
前記複数個の伝送器のうちの第2の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第2のインダクタンス素子が接続され、該第2の伝送器と該第2のインダクタンス素子からなる第2の直列体の一方側の端子には前記第1の直列体の前記他方側の端子が直接接続され、該第2の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第2の負荷回路が接続され、
前記第1の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第1のインダクタンス素子及び前記第2の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第2のインダクタンス素子は、前記送電器の周波数で共振することを特徴とする非接触給電装置。
【請求項2】
交流の電力を送る送電器と、
対向する一対の伝送器用導体を有し、該一対の伝送器用導体の一方側から他方側に向けて前記送電器からの電力の伝送を非接触で行うものであって直列に設けられた複数個の伝送器と、
複数個の負荷回路と、
複数個のインダクタンス素子と、
を備えており、
前記複数個の伝送器のうちの第1の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第1のインダクタンス素子が接続され、該第1の伝送器と該第1のインダクタンス素子からなる第1の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第1の負荷回路が接続され、
前記複数個の伝送器のうちの第2の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第2のインダクタンス素子が接続され、該第2の伝送器と該第2のインダクタンス素子からなる第2の直列体の一方側の端子には前記第1の直列体の前記他方側の端子が直接接続され、該第2の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第2の負荷回路が接続され、
前記第1の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第1のインダクタンス素子及び前記第2の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第2のインダクタンス素子は、前記送電器の周波数で共振し、
前記第1の直列体は、第1の筐体の中に収容され、
前記第2の直列体は、第2の筐体の中に収容されており、
前記第1の直列体の第1のインダクタンス素子と前記第2の直列体の第2のインダクタンス素子は、磁性コアに巻いたトロイダルコイルであることを特徴とする非接触給電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非接触部分を経由して給電する非接触給電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
非接触給電装置は、様々な用途に用いることができる。例えば、商用電源に接続された給電用の台と携帯可能な機器との間の非接触部分を経由して、その機器に給電して充電するものに広く用いられている。また、特許文献1及び特願2017-168091などに示すように、関節部分を非接触部分として経由して必要な回路に給電するロボットに用いることができる。特許文献1は、電磁誘導により非接触部分の電力伝送を行うものであり、特願2017-168091は、対向する一対の伝送器用導体により非接触部分の電力伝送を行うものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、非接触給電装置をロボットに用いる場合、関節部分(非接触部分)が複数ありそれらを通って給電される回路(負荷回路)も複数有るのが普通であり、1つの負荷回路の負荷の変動が他の負荷回路に影響して他の負荷回路の動作に必要な電力が十分には供給されなくなることも生じ得ることである。
【0005】
本発明は、係る事由に鑑みてなされたものであり、その目的は、非接触部分が複数有り負荷回路が複数有るものにおいて、1つの負荷回路の負荷が変動しても他の負荷回路の動作に必要な電力の供給が影響され難い非接触給電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の非接触給電装置は、交流の電力を送る送電器と、対向する一対の伝送器用導体を有し、該一対の伝送器用導体の一方側から他方側に向けて前記送電器からの電力の伝送を非接触で行うものであって直列に設けられた複数個の伝送器と、複数個の負荷回路と、複数個のインダクタンス素子と、を備えており、前記複数個の伝送器はそれぞれ、関節を構成し互いに隣接する関節構成部材の各々に前記一対の伝送器用導体の各々が固定されており、前記複数個の伝送器のうちの第1の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第1のインダクタンス素子が接続され、該第1の伝送器と該第1のインダクタンス素子からなる第1の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第1の負荷回路が接続され、前記複数個の伝送器のうちの第2の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第2のインダクタンス素子が接続され、該第2の伝送器と該第2のインダクタンス素子からなる第2の直列体の一方側の端子には前記第1の直列体の前記他方側の端子が直接接続され、該第2の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第2の負荷回路が接続され、前記第1の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第1のインダクタンス素子及び前記第2の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第2のインダクタンス素子は、前記送電器の周波数で共振することを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の非接触給電装置は、交流の電力を送る送電器と、対向する一対の伝送器用導体を有し、該一対の伝送器用導体の一方側から他方側に向けて前記送電器からの電力の伝送を非接触で行うものであって直列に設けられた複数個の伝送器と、複数個の負荷回路と、複数個のインダクタンス素子と、を備えており、前記複数個の伝送器のうちの第1の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第1のインダクタンス素子が接続され、該第1の伝送器と該第1のインダクタンス素子からなる第1の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第1の負荷回路が接続され、前記複数個の伝送器のうちの第2の伝送器の前記他方側又は前記一方側の伝送器用導体には、前記複数個のインダクタンス素子のうちの第2のインダクタンス素子が接続され、該第2の伝送器と該第2のインダクタンス素子からなる第2の直列体の一方側の端子には前記第1の直列体の前記他方側の端子が直接接続され、該第2の直列体の他方側の端子には、前記複数個の負荷回路のうちの第2の負荷回路が接続され、前記第1の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第1のインダクタンス素子及び前記第2の伝送器の一対の伝送器用導体と前記第2のインダクタンス素子は、前記送電器の周波数で共振し、前記第1の直列体は、第1の筐体の中に収容され、前記第2の直列体は、第2の筐体の中に収容されており、前記第1の直列体の第1のインダクタンス素子と前記第2の直列体の第2のインダクタンス素子は、磁性コアに巻いたトロイダルコイルであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の非接触給電装置によれば、非接触部分が複数有り負荷回路が複数有るものにおいて、1つの負荷回路の負荷が変動しても他の負荷回路の動作に必要な電力の供給が影響され難いものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態に係る非接触給電装置を示すものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図2】同上の非接触給電装置の一対の伝送器用導体が円板状の場合を示すものであって、(a)が側面図、(b)が模式的な斜視図である。
【
図3】同上の非接触給電装置の
図2で示した一対の伝送器用導体の変形例を示す側面図であって、(a)は一対の伝送器用導体と電気配線の接続位置を変えたもの、(b)は一対の伝送器用導体を並列配置したものである。
【
図4】同上の非接触給電装置の一対の伝送器用導体が円筒状の場合を示すものであって。(a)が模式的な斜視図、(b)が断面図、(c)が(b)を変形した断面図である。
【
図5】同上の非接触給電装置がロボット内に設けられた一例の関節及びその周辺の概略を示すものであって、(a)が平面図、(b)がその一部の平面視拡大断面図である。
【
図6】同上の非接触給電装置がロボット内に設けられた他の例の関節及びその周辺の概略を示すものであって、(a)が平面図、(b)がその一部の平面視拡大断面図である。
【
図7】同上の非接触給電装置がロボット内に設けられた更に他の例の関節及びその周辺の概略を示すものであって、(a)が平面図、(b)がその一部の平面視拡大断面図である。
【
図8】同上の非接触給電装置の
図1を変形したものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図9】同上の非接触給電装置の他の例を示すものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図10】同上の非接触給電装置の
図9を変形したものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図11】同上の非接触給電装置のシミュレーションにおける周波数特性を示す特性図である。
【
図12】同上の非接触給電装置のシミュレーションにおける負荷回路相互の影響を示す特性図であって、(a)が第2の負荷回路の負荷を変化させたとき、(b)が第1の負荷回路の負荷を変化させたときのものである。
【
図13】同上の非接触給電装置の更に他の例を示すものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図14】同上の非接触給電装置の
図13を変形したものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図15】同上の非接触給電装置の
図10に示したものにおいて負荷回路に整流回路とDCDCコンバータが含まれる回路構成のものであって、(a)が構成図、(b)が等価回路図である。
【
図16】同上の非接触給電装置のDCDCコンバータを示すものであって、(a)が等価回路図、(b)が特性図である。
【
図17】同上の非接触給電装置の
図15の回路構成を用いて行った実験において負荷回路相互の影響を示す特性図であって、(a)が第2の負荷回路の負荷を変化させたとき、(b)が第1の負荷回路の負荷を変化させたとき、(c)が第3の負荷回路の負荷を変化させたときのものである。
【
図18】同上の非接触給電装置の第1の直列体(又は第2の直列体)が第1の筐体(又は第2の筐体)の中に収容されたものを示すものであって、(a)が正面視断面図、(b)が(a)におけるA-A線で示す面で切断した断面図、(c)が(a)におけるB-B線で示す面で切断した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態を図面を参照しながら説明する。本発明の実施形態に係る非接触給電装置1は、
図1(a)に示すように、送電器2と、2個の伝送器(第1及び第2の伝送器)3A、3Bと、2個の負荷回路(第1及び第2の負荷回路)4A、4Bと、2個のインダクタンス素子(第1及び第2のインダクタンス素子)5A、5Bと、を備えている。
【0011】
送電器2は、交流の電力を送るものである。送電器2の周波数fは、限定されるものではないが、例えば、500KHz~50MHzの範囲の一つの周波数にすることができる。
【0012】
第1の伝送器3Aは、対向する一対の伝送器用導体3Aa、3Abを有しており、それらの間には所定の隙間が設けられており、一対の伝送器用導体の一方側3Aaから他方側3Abに向けて送電器2からの電力の伝送を非接触で行う。第2の伝送器3Bも、第1の伝送器3Aの構造と同様であり、対向する一対の伝送器用導体3Ba、3Bbを有しており、それらの間には所定の隙間が設けられており、一対の伝送器用導体の一方側3Baから他方側3Bbに向けて送電器2からの電力の伝送を非接触で行う。2個の伝送器3A、3Bは、直列に設けられており、送電器2からの電力は、第1の伝送器3Aを通ってから第2の伝送器3Bへ伝送される。
【0013】
また、第1の伝送器3Aは、
図1(b)に示すように、一対の伝送器用導体3Aa、3Abにおいて容量成分の容量値C
Aを有し、第2の伝送器3Bは、一対の伝送器用導体3Ba、3Bbにおいて容量成分の容量値C
Bを有している。
【0014】
伝送器用導体3Aa、3Ab、3Ba、3Bbは、通常、金属製(例えば、銅製など)のものである。第1の伝送器3Aを構成する一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び第2の伝送器3Bを構成する一対の伝送器用導体3Ba、3Bbはそれぞれ、
図2(a)、(b)に示すように、同軸に設けられた円板状(例えば、直径が5cm以上、隙間が0.5cm以上)などの平板状とすることができる。
【0015】
これら一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbには、電気配線6Aa、6Ab及び6Ba、6Bbが接続される(
図2(a)、(b)参照)。電気配線6Aa、6Ab及び6Ba、6Bbは、一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbの裏面(互いに対向する面の反対面)の中央部近傍に接続してもよいし、
図3(a)に示すように、外側面などに接続しても構わない。また、一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbは、その各々が、
図3(b)に示すように、並列配置された複数個のものとすることも可能である。
【0016】
また、一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbはそれぞれ、
図4(a)に示すように、同軸に設けられた円筒状(例えば、直径が5cm以上、隙間が0.5cm以上)とすることができる。この場合も、電気配線6Aa、6Ab及び6Ba、6Bbの接続位置を変えることが可能であり、また、
図4(b)、(c)に示すように、一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbの各々を1個のもの又は並列配置された複数個のものとすることも可能である。なお、
図4においては、有底円筒形状のものを示している。
【0017】
ここで、非接触給電装置1が複数個の関節を有するロボット内に設けられている場合は、一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbは、一方側3Aa(又は3Ba)と他方側3Ab(又は3Bb)が同軸で相対的に回動するので、電気的に不変なように、それらは円板状又は円筒状とするのが好ましい。
図5、
図6及び
図7において、一例として、一対の伝送器用導体3Ba、3Bbの関節及びその周辺の概略を示している。図中Cは、一対の伝送器用導体3Ba、3Bbの中心軸を示している。
【0018】
また、非接触給電装置1が複数個の関節を有するロボット内に設けられている場合は、一対の伝送器用導体3Aa、3Abの各々は、関節を構成し互いに隣接する関節構成部材1aの各々に固定される。一対の伝送器用導体3Ba、3Bbについても同様である。なお、
図5、
図6及び
図7で示す構成において、負荷回路4Aは、一方の関節構成部材1aに固定されたステータ7aを駆動制御し、ロータ7bを及びそれに固着された回動部材7cを回動させており、それにより、回動部材7cに固定された他方の関節構成部材1aが回動部材7cの回動とともに回動するようになっている。なお、
図7(b)における符号7c’は、回動部材7cの対称位置に有って、他方の関節構成部材1a(図においては上側の関節構成部材1a)に固定され、一方の関節構成部材1a(図においては下側の関節構成部材1a)に対して自由に他方の関節構成部材1aが回動するように、一方の関節構成部材1aに結合する回動部材である。
【0019】
第1及び第2の負荷回路4A、4Bはそれぞれ、非接触給電装置1の給電の目的の回路であり、送電器2からの電力を消費する回路である。例えば、非接触給電装置1が複数個の関節を有するロボット内に設けられている場合は、2個の負荷回路4A、4Bのうち第1の負荷回路4Aは隣接する関節構成部材の間の角度を変え得る関節駆動制御器とすることができる。また、2個の負荷回路4A、4Bのうち第2の負荷回路4Bは、ロボットの目的の作業のためのアクチュエータ等とすることができる。第1及び第2の負荷回路4A、4Bは、抵抗値RA、RBの等価負荷抵抗を有する。
【0020】
第1及び第2のインダクタンス素子5A、5Bはそれぞれ、所定のインダクタンス値L
A、L
Bを有するものである。第1のインダクタンス素子5Aは、その一方側の端子において第1の伝送器3Aの他方側の
伝送器用導体3Abに接続されている。また、第1のインダクタンス素子5Aは、
図8に示すように、その他方側の端子において第1の伝送器3Aの一方側の
伝送器用導体3Aaに接続されることも可能である。第1の伝送器3Aと第1のインダクタンス素子5Aは、第1の直列体8Aを構成し、第1の直列体8Aの他方側には、第1の負荷回路4Aが接続されている。第1の直列体8Aの一方側には、送電器2が接続されている。
【0021】
第2のインダクタンス素子5Bは、その一方側の端子において第2の伝送器3Bの他方側の
伝送器用導体3Bbに接続されている。また、第2のインダクタンス素子5Bは、その他方側の端子において第2の伝送器3Bの一方側の
伝送器用導体3Baに接続されることも可能である(
図8参照)。第2の伝送器3Bと第2のインダクタンス素子5Bは、第2の直列体8Bを構成し、第2の直列体8Bの他方側には、第2の負荷回路4Bが接続されている。
【0022】
非接触給電装置1では、容量値CAの一対の伝送器用導体3Aa、3Abと、インダクタンス値LAの第1のインダクタンス素子5A、及び容量値CBの一対の伝送器用導体3Ba、3Bbと、インダクタンス値LBの第2のインダクタンス素子5Bは、送電器2の周波数fで共振するようにすることができる。より詳細には、容量値CAの一対の伝送器用導体3Aa、3Abと、インダクタンス値LAの第1のインダクタンス素子5Aは直列共振回路を形成する。従って、共振周波数fでは、この直列共振回路のインピーダンスの虚部は0になり、この直列共振回路を通って給電される第1の負荷回路4Aでは抵抗値RAに反比例した電力が消費される。また、容量値CBの一対の伝送器用導体3Ba、3Bbと、インダクタンス値LBの第2のインダクタンス素子5Bは直列共振回路を形成する。従って、共振周波数fでは、この直列共振回路のインピーダンスの虚部は0になり、この直列共振回路を通って給電される第2の負荷回路4Bでは抵抗値RBに反比例した電力が消費される。
【0023】
また、非接触給電装置1は、
図9に示すように、第1の伝送器3A(又は第2の伝送器3B)を通さずに送電器2からの電力を消費する第3の負荷回路4Cを設けることができる。その場合、インダクタンス値L
Cの第3のインダクタンス素子5Cと容量値C
Cの容量素子9Cの直列体を設け、この直列体の一端が第1の伝送器3Aの一方側の
伝送器用導体3Aaに接続され、他端が第3の負荷回路4Cに接続されるようにすることができる。この場合、インダクタンス値L
Cの第3のインダクタンス素子5Cと容量値C
Cの容量素子9Cの直列体は、共振周波数fで共振する直列共振回路にする。そうすると、この直列共振回路を通って給電される第3の負荷回路4Cではその抵抗値R
Cに反比例した電力が消費される。
【0024】
なお、送電器2の近傍では、部品の配置や配線などが制約を受けることが少ないのが普通である。例えば、ロボットにおいては、関節を通るのでなければ、通常、制約を余り受けずに必要な部品の配置や配線などを行うことができる。従って、第3の負荷回路4Cには、上記に限らず、様々な方法で給電することが可能である。
【0025】
また、第3のインダクタンス素子5Cと容量素子9Cを省略することも可能である。第3のインダクタンス素子5Cと容量素子9Cを省略するのに加えて、
図10に示すように、
図8で示したのと同様な第1の直列体8Aと第2の直列体8Bの回路構成とすることができる。
【0026】
また、第3の負荷回路4Cは、例えば、第1の負荷回路4Aを、第2の伝送器3Bが設けられるロボットの関節において隣接する関節構成部材1a、1aの間の角度を変え得る関節駆動制御器とするならば、第1の伝送器3Aが設けられる関節において隣接する関節構成部材の間の角度を変え得る関節駆動制御器とすることができる。
【0027】
次に、非接触給電装置1の
図9に示した回路で行ったシミュレーションについて述べる。容量値C
Aは196.2pF、容量値C
Bは182.0pFとした。これらの値は、直径約25cmの円板状で間隔を約1cmとした一対の伝送器用導体3Aa、3Ab及び一対の伝送器用導体3Ba、3Bbを実際に製作して測定して得たものである。インダクタンス値L
A、L
B、L
Cはそれぞれ、129.1μH、139.2μH、84.4μHとした。容量値C
Cは300pFとした。抵抗値R
A、R
Bは、通常は(変化させない場合は)100Ωとした。抵抗値R
Cは、50Ωとした。
【0028】
図11に、送電器2の出力端子から見たインピーダンスの実部Z
re及び虚部Z
imの周波数依存性を示す。
図11より、周波数が1MHzで共振することが分かる。
【0029】
図12(a)に、送電器2の交流電力を周波数1MHz、振幅(実効値)30Vとし、第2の負荷回路4Bの抵抗値R
Bを変化させたとき、すなわち負荷を変化させたときの第1の負荷回路4Aの消費電力P
Aと第2の負荷回路4Bの消費電力P
Bを示す。
図12(a)より、第2の負荷回路4Bの抵抗値R
Bを変化させても第1の負荷回路4Aは影響されず、その消費電力P
Aは一定に保たれていることが分かる。
図12(b)に、送電器2の交流電力を周波数1MHz、振幅(実効値)30Vとし、第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aを変化させたとき、すなわち負荷を変化させたときの第1の負荷回路4Aの消費電力P
Aと第2の負荷回路4Bの消費電力P
Bを示す。
図12(b)より、第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aを変化させても第2の負荷回路4Bは影響されず、その消費電力P
Bは一定に保たれていることが分かる。
【0030】
なお、第3の負荷回路4Cについては、他の第1、第2の負荷回路4A、4Bによって影響されないことは、非接触給電装置1の回路構成から明らかである。
【0031】
このように、非接触給電装置1では、負荷回路が複数有って、1つの負荷回路の負荷が変動しても他の負荷回路の動作に必要な電力の供給が影響され難いものとなる。このことは、非接触給電装置1を、
図13及び
図14に示すように、2個の第1、第2の伝送器3A、3Bに更に1個又は複数個直列させてそれらと同様の伝送器3D、・・・を設け、それに対応して負荷回路4D、・・・及び第1、第2のインダクタンス素子5A、5Bと同様のインダクタンス素子5D、・・・を更に1個又は複数個設けた構成にしても同様である。
【0032】
次に、損失抵抗が大きなインダクタンス素子を用いた場合に好適な非接触給電装置1について説明する。
図15に示すのは、
図10に示した非接触給電装置1において、負荷回路4A、4B、4Cに整流回路4Aa、4Ba、4CaとDCDCコンバータ4Ab、4Bb、4Cbが含まれる回路構成のものである。整流回路4Aa、4Ba、4Caにはそれぞれ、送電器2から送られる交流電力の一部が入力される。また、DCDCコンバータ4Ab、4Bb、4Cbには、整流回路4Aa、4Ba、4Caにより整流されて生成されたDC電圧が入力される。
【0033】
DCDCコンバータ4Ab、4Bb、4Cbは、
図16(a)に示すように、その負荷インピーダンスR
OUTが入力インピーダンスR
INに変換される。入力インピーダンスR
INは、
図16(b)に示すように、負荷インピーダンスR
OUTが最も大きいところでは、負荷インピーダンスR
OUTにほぼ等しく、それから負荷インピーダンスR
OUTが減少すると、負荷インピーダンスR
OUTよりもはるかに緩やかに減少し、負荷インピーダンスR
OUTが小さいところでは、負荷インピーダンスR
OUTが減少すると、負荷インピーダンスR
OUTと同様な勾配で減少する。こうして、入力インピーダンスR
INの変化量は、負荷インピーダンスR
OUTの全電力範囲において、負荷インピーダンスR
OUTの変化量の約10分の1になる。
【0034】
従って、インダクタンス素子5A、5Bの損失抵抗が大きくても、それによる電圧降下を極めて小さくすることができる。
【0035】
図17(a)~(c)に示すのは、
図15の回路構成を用いて行った実験結果である。容量値C
Aは772pFであり、この値は、直径約15cmの円板を並列に2個設け(
図3(b)参照)、間隔を約1mmとして誘電体を挟んだ一対の伝送器用導体3Aa、3Abを測定して得たものである。容量値C
Bは703pFであり、この値は、直径約14cmの円板を並列に2個設け(
図3(b)参照)、間隔を約1mmとして誘電体を挟んだ一対の伝送器用導体3Ba、3Bbを測定して得たものである。インダクタンス素子5Aは、そのインダクタンス値L
Aが32.8μH、損失抵抗が5.5Ωである。インダクタンス素子5Bは、そのインダクタンス値L
Bが36.0μH、損失抵抗が6.1Ωである。DCDCコンバータ4Ab、4Bb、4Cbは、出力電圧が4Vである。送電器2の交流電力は、周波数1MHz、実効値10Vとした。
【0036】
図17(a)は、第2の負荷回路4Bの抵抗値R
Bを変化させたとき、すなわち負荷を変化させたときの第1の負荷回路4Aの消費電力P
A、第2の負荷回路4Bの消費電力P
B、第3の負荷回路4Cの消費電力P
Cを示している。第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aは380Ω、第3の負荷回路4Cの抵抗値R
Cは120Ωとした。
図17(a)より、第2の負荷回路4Bの抵抗値R
Bを変化させても第1の負荷回路4A及び第3の負荷回路4Cは影響されず、その消費電力P
A及びP
Cは一定に保たれていることが分かる。
図17(b)は、第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aを変化させたとき、すなわち負荷を変化させたときの第1の負荷回路4Aの消費電力P
A、第2の負荷回路4Bの消費電力P
B、第3の負荷回路4Cの消費電力P
Cを示している。第2の負荷回路4Bの抵抗値R
Bは120Ω、第3の負荷回路4Cの抵抗値R
Cは380Ωとした。
図17(b)より、第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aを変化させても第2の負荷回路4B及び第3の負荷回路4Cは影響されず、その消費電力P
B及びP
Cは一定に保たれていることが分かる。
図17(c)は、第3の負荷回路4Cの抵抗値R
Cを変化させたとき、すなわち負荷を変化させたときの第1の負荷回路4Aの消費電力P
A、第2の負荷回路4Bの消費電力P
B、第3の負荷回路4Cの消費電力P
Cを示している。第1の負荷回路4Aの抵抗値R
Aは120Ω、第32負荷回路4Bの抵抗値R
Bは380Ωとした。
図17(c)より、第3の負荷回路4Cの抵抗値R
Cを変化させても第1の負荷回路4A及び第2の負荷回路4Bは影響されず、その消費電力P
A及びP
Bは一定に保たれていることが分かる。なお、
図17(a)~(c)の中で、P
INで示すのは、消費電力P
A、P
B、P
C、を、インダクタンス素子5A、5Bの損失抵抗で消費される電力、DCDCコンバータ4Ab、4Bb、4Cbで消費される電力などを合計した全体で消費される電力である。
【0037】
第1の直列体8A(第2の直列体8B)は、
図18に示すように、第1の筐体(第2の筐体)10Aの中に収容されるようにするのが好ましい。そうすると、例えば、既存の関節に容易に取り付け可能となる。第1の直列体8A(第2の直列体8B)の端子10Cは、第1の筐体(第2の筐体)10Aに固定されている。また、第1の筐体(第2の筐体)10Aと軸10Bとの間には、軸受10D、10Dが設けられ、軸10Bが第1の直列体8A(第2の直列体8B)のもう1つの端子となることができる。軸10Bには第1の伝送器3A(第2の伝送器3B)の他方側の
伝送器用導体3Ab(他方側の
伝送器用導体3Bb)が固定されており、軸10Bに固定されていない一方側の
伝送器用導体3Aa(一方側の
伝送器用導体3Ba)に対し同軸で相対的に回動することができる。第1の直列体8A(第2の直列体8B)の第1のインダクタンス素子5A(第2のインダクタンス素子5B)は、磁性コア(フェライトコアなど)に巻いたトロイダルコイルであるのが好ましい。そうすると、第1のインダクタンス素子5A(第2のインダクタンス素子5B)を第1の伝送器3A(第2の伝送器3B)と同様な平板状とすることができ、また、軸10Bを中央に通過させることができ、また、磁束を良好に閉じ込めることができる。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係る非接触給電装置について説明したが、本発明は、上述の実施形態に記載したものに限られることなく、特許請求の範囲に記載した事項の範囲内でのさまざまな設計変更が可能である。また、非接触給電装置1は、上述したロボットに用いる他、様々な用途に用いることができる。
【符号の説明】
【0039】
1 非接触給電回路
1a 関節構成部材
2 送電器
3A、3B、3D 伝送器
3Aa、3Ab、3Ba、3Bb、3Da、3Db 伝送器用導体
4A、4B、4C、4D 負荷回路
4Aa、4Ba、4Ca 整流回路
4Ab、4Bb、4Cb DCDCコンバータ
5A、5B、5C、5D インダクタンス素子
6Aa、6Ab、6Ba、6Bb 電気配線
7a ステータ
7b ロータ
7c 回動部材
8A 第1の直列体
8B 第2の直列体
9C 容量素子
10A 筐体
10B 軸
10C 端子
10D 軸受