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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】乳酸菌含有粉体、除菌剤、口腔ケア剤
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/20 20060101AFI20240131BHJP
   A61K 8/99 20170101ALI20240131BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 8/73 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 35/744 20150101ALI20240131BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240131BHJP
   A61K 47/10 20170101ALI20240131BHJP
   A61P 31/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C12N1/20 B
C12N1/20 E
A61K8/99
A61Q11/00
A61K8/73
A61K35/744
A61K9/14
A61K47/36
A61K47/10
A61P31/04
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023060652
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-04-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】322013269
【氏名又は名称】ウィステリア製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100135758
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 高志
(74)【代理人】
【氏名又は名称】玉城 信一
(72)【発明者】
【氏名】横沢 卓也
【審査官】吉門 沙央里
(56)【参考文献】
【文献】中国特許第103620021(CN,B)
【文献】中国特許出願公開第111195266(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111109492(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第111264737(CN,A)
【文献】特開2001-158743(JP,A)
【文献】国際公開第2023/282356(WO,A1)
【文献】特開2011-201840(JP,A)
【文献】S. A. Ishijima, et al.,Applied and Environmental Microbiology,2012年,Vol.78, No.7,p.2190-2199
【文献】P. M. Jansen, et al.,PLOS ONE,2021年,Vol.16(3):e0248308,p.1-17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末を含み、
水分活性が0.3以下であり、
前記乳酸菌が、ストレプトコッカス・サリバリウスK12及びストレプトコッカス・サリバリウスM18のいずれかであり、
前記デキストリン粉末の質量Xと前記乳酸菌粉末の質量Yとの割合(Y/X)が0.02~0.1であり、
pHが5~7である、口腔ケア剤用の乳酸菌含有粉体。
【請求項2】
さらに、糖類粉末を含む請求項1に記載の乳酸菌含有粉体。
【請求項3】
前記糖類粉末が、糖アルコール類及び/又はオリゴ糖類を含む請求項2に記載の乳酸菌含有粉体。
【請求項4】
ふるい分けにより測定される積算分布の値が小径側から累積90%になる粒子径が800μm以下である請求項1~3のいずれか1項に記載の乳酸菌含有粉体。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の乳酸菌含有粉体を含む口腔ケア剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌含有粉体、除菌剤、口腔ケア剤に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば口腔内等には、多種多様な微生物によって構成された微生物叢が存在し、う蝕、歯周病、口臭等の口腔内の疾患又は不快症状の主要な原因となる細菌も存在する。
【0003】
口腔内をケアするために様々な抗菌剤が使用されているが、近年では口腔内の善玉菌で悪玉菌を排除して、口腔内環境を整えるプロバイオティクスの考え方が知られるようになっている。この善玉菌として乳酸菌が用いられ、乳酸菌が産生する乳酸等により悪玉菌の生育が抑制される。
【0004】
例えば特許文献1では、乳酸菌及びキシリトールを有効成分とすることを特徴とする口腔乾燥症用組成物が開示されている。また、特許文献1の実施例には、乳酸菌倍散物等の成分を混合し打錠して得た錠菓が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-115464号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に乳酸菌は特許文献1のように、錠剤、顆粒剤、カプセル剤等に加工する場合が多いが、その製造工程において生菌数の減少が問題となる。生菌数が少なければ期待する機能が得られにくくなるため、乳酸菌の活性を有効に利用するためには、製剤中における生菌数の安定化は重要な課題といえる。また、乳酸菌による効果を得るには、乳酸菌の拡散性が良好であることが必要であり、特許文献1にように加工を施してしまうと、所望の拡散性が得られにくくなり、乳酸菌の活性を有効に利用できなくなることが懸念される。
【0007】
以上から、本発明は上記に鑑みなされたものであり、乳酸菌生菌数が減少しにくく、乳酸菌の活性を有効に利用できる乳酸菌含有粉体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討したところ、生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末とデキストリンを含むデキストリン粉末とを含み、水分活性とpHを特定の範囲とすることで上記課題が解決できることを見出し、本発明を完成した。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0009】
[1] 生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末を含み、水分活性が0.3以下である乳酸菌含有粉体。
[2] さらに、糖類粉末を含む[1]に記載の乳酸菌含有粉体。
[3] 前記糖類粉末が、糖アルコール類及び/又はオリゴ糖類を含む[2]に記載の乳酸菌含有粉体。
[4] ふるい分けにより測定される積算分布の値が小径側から累積90%になる粒子径が800μm以下である[1]~[3]のいずれか1つに記載の乳酸菌含有粉体。
[5] [1]~[4]のいずれか1つに記載の乳酸菌含有粉体を含む除菌剤。
[6] [1]~[4]のいずれか1つに記載の乳酸菌含有粉体を含む口腔ケア剤。
[7] [5]に記載の除菌剤を含む口腔ケア剤。
[8] 生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末、及び糖類粉末を含み、水分活性が0.3以下である乳酸菌含有粉体を含み、前記乳酸菌含有粉体における前記乳酸菌粉末、前記デキストリン粉末、及び前記糖類粉末の合計中の前記乳酸菌粉末の含有量が0.5~5質量%であり、前記デキストリン粉末の含有量が50~80質量%であり、前記糖類粉末の含有量が10~80質量%であり、前記乳酸菌含有粉体中の前記乳酸菌粉末、前記デキストリン粉末、及び前記糖類粉末の合計が90質量%以上であり、前記乳酸菌含有粉体のふるい分けにより測定される積算分布の値が小径側から累積90%になる粒子径が800μm以下である口腔ケア剤。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、乳酸菌生菌数が減少しにくく、乳酸菌の活性を有効に利用できる乳酸菌含有粉体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の一実施形態(本実施形態)について説明する。
[乳酸菌含有粉体]
本実施形態に係る乳酸菌含有粉体は、生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末を含む。また、当該乳酸菌含有粉体水分活性は0.3以下である。
【0012】
生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末により、乳酸菌の有する所望の機能を得ることができる。また、デキストリン粉末により、生きた状態の乳酸菌の活性状態を良好に維持でき、乳酸菌の拡散性を向上させ、その活性を有効に活用することができる。
なお、生きた状態の乳酸菌としては、生菌体、湿潤菌、乾燥菌等が適宜使用できる。
【0013】
また、乳酸菌生菌数を減少しにくくする観点から、乳酸菌粉末にはデキストリンや後述の糖類粉末の糖類を含まないことが好ましく、デキストリン粉末や後述の糖類粉末にはそれぞれ乳酸菌を実質的に含まない(好ましくはそれぞれ5000個/g以下、より好ましくはそれぞれ2000個/g以下)ことが好ましい。
【0014】
本実施形態において、乳酸菌含有粉体の水分活性が0.3を超えると、乳酸菌に悪影響を及ぼす細菌(以下、「有害菌」ということがある)が増えやすくなり、例えば、口腔ケアに有効な乳酸菌生菌数が減少してしまう。水分活性は、0.28以下であることが好ましく、0.25以下であることがより好ましい。
【0015】
上記水分活性(AW)とは、試料の飽和水蒸気圧(Pとする)と純水の飽和水蒸気圧(Poとする)の比で示される相対湿度で、Aw=P/Poを意味する。水分活性は、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0016】
本実施形態において、乳酸菌含有粉体のpHは8.5以下であることが好ましい。pHが8.5以下であると、有害菌の増殖を抑制し、例えば、口腔ケアに有効な乳酸菌生菌数を良好に維持できる。当該pHは、5~8であることが好ましく、5~7であることがより好ましい。pHは、実施例に記載の方法で測定することができる。
【0017】
乳酸菌含有粉体の水分活性は、例えば、水分活性が0.3以下のデキストリン粉末や後述の糖類粉末等の割合を調整することで、所望の範囲にすることができる。また、pHについても、既知のpHのデキストリン粉末や後述の糖類粉末等の割合を調整することで、所望の範囲にすることができる。
【0018】
(乳酸菌粉末)
乳酸菌粉末を構成する乳酸菌の菌種は用途に応じて適宜選択されるが、例えば、ストレプトコッカス・サリバリウス、ストレプトコッカス・フェカリス、ストレプトコッカス・フェシウム、ストレプトコッカス・サーモフィルス、ロイコノストック・メセンテロイデス、ロイコノストック・ラクティス、ラクトコッカス・ラクティス、ラクトコッカス・プランタラム等の乳酸球菌、ラクトバチルス・クリスパタス、ラクトバチルス・アシドフィルス、ラクトバチルス・サリバリウス、ラクトバチルス・プランタラム、ラクトバチルス・カゼイ、ラクトバチルス・ガッセリ、ラクトバチルス・ファーメンタム等の乳酸桿菌、ビフィドバクテリウム・ロンガム、ビフィドバクテリウム・ブレーベ、ビフィドバクテリウム・ビフィダム、ビフィドバクテリウム・インファンティス、ビフィドバクテリウム・アドレセンティス等のビフィズス菌を使用することができる。好ましくは、ストレプトコッカス・サリバリウスであり、より好ましくはストレプトコッカス・サリバリウスK12、ストレプトコッカス・サリバリウスM18である。
【0019】
例えば、ストレプトコッカス・サリバリウスK12及びストレプトコッカス・サリバリウスM18の乳酸菌粉末は、ブリステクノロジー社から、それぞれ、BLIS K12及びBLIS M18として入手することができる。
【0020】
特に、BLIS K12は、有害菌の増殖を抑制する静菌性ペプチドSalvaricin A2と、死滅効果のあるSalvaricin B2とを産生することで、歯周病の増殖を抑制したり、口臭を抑制したりすることが確認されている。したがって、口腔ケア剤用の除菌剤として有効である。
【0021】
また、BLIS M18は、Bacteriocin-Like Inhibitory Substances(バクテリオシン様抑制物質)と呼ばれる抗微生物タンパク質を産生し、虫歯菌や歯周病菌に対する効果が認められている。また、デキストラーゼと呼ばれる酵素を産生し、歯垢の主成分を分解する効果が期待される。したがって、口腔ケア剤用の除菌剤として有効である。
【0022】
BLIS K12及びBLIS M18については、特許第3673497号米国特許第7226590号、特表2005-517439号公報等に詳細が記載されている。
【0023】
乳酸菌粉末の形態は本発明の効果が得られれば特に限定されないが、凍結乾燥菌末、噴霧乾燥菌末、減圧真空乾燥菌末等の粉末が好ましく、乳酸菌生菌数の減少抑制の観点から、より好ましくは凍結乾燥菌末である。
【0024】
乳酸菌粉末は、ふるい分けにより測定される積算分布の値が小径側から累積90%になる粒子径(以下、「D90」ということがある)が600μm以下の粉末であることが好ましく、500μm以下の粉末であるであることがより好ましい。600μm以下であることで、乳酸菌粉末の有効比表面積を増やすことができる。
なお、乳酸菌粉末はその活性を有効に利用する観点から、顆粒でない粉末、すなわち、非造粒粉末であることが好ましい。
【0025】
乳酸菌粉末における乳酸菌の割合は、通常、95質量%以上であり、98質量%であることが好ましい。他に共存し得る成分としては、不可避の乳酸菌以外の菌、有機物、無機物等が挙げられる。
【0026】
(デキストリン粉末)
デキストリン粉末は、でんぷんの加水分解により得られた粉末状のデキストリンである。
本実施形態に係るデキストリン粉末の粒径は、乳酸菌粉末と均一に混合できれば特に限定されるものではないが、例えば、D90が700μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
【0027】
デキストリン粉末は、粉塵発生を抑制し、袋や容器への充填性を良好にする観点から、デキストリン顆粒状粉末を含むことが好ましい。デキストリン粉末中のデキストリン顆粒状粉末の含有量は、75質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、99質量%以上であることがより好ましい。
【0028】
デキストリン顆粒状粉末は、公知の造粒方法により所望サイズとすることができる。デキストリン顆粒状粉末を作製する際に、造粒の条件を調整することで、デキストリン粉末中のデキストリン顆粒状粉末の含有量を例えば、75質量%以上とすることができる。
【0029】
デキストリン顆粒状粉末を含むデキストリン粉末の粒径も、D90が700μm以下であることが好ましく、500μm以下であることがより好ましい。
【0030】
乳酸菌含有粉体の水分活性を0.3以下とする観点から、デキストリン粉末の水分活性(Aw)は、0.3以下であることが好ましく、0.2以下であることがより好ましい。
デキストリン粉末の水分活性(Aw)は、例えば、真空乾燥や乾熱乾燥等により調整することができる。
また、デキストリン粉末のpHは、4.0~8.5であることが好ましい。
【0031】
デキストリン粉末の質量Xと乳酸菌粉末の質量Yとの割合(Y/X)は、乳酸菌粉末の良好な分散性とその活性維持の観点から、0.01~0.15であることが好ましく、0.02~0.1であることがより好ましく、0.03~0.07であることがさらに好ましい。
【0032】
(糖類粉末)
本実施形態に係る乳酸菌含有粉体はさらに、糖類粉末を含むことが好ましい。糖類粉末を含むことで、生きた状態の乳酸菌の活性状態をより良好に維持できる。
【0033】
糖類粉末は、乳酸菌の活性状態をより良好に維持する観点から、糖アルコール類(糖アルコール類粉末)及び/又はオリゴ糖類(オリゴ糖類粉末)を含むことが好ましい。
糖アルコール類は、糖分子のカルボニル基を還元して得られる多価アルコール類から選ぶことができ、キシリトール、ソルビトール、マンニトール、トレハロース、アラビトール、エリスリトール、ラクチトール、マルチトール及びパラチニット等が挙げられる。なかでも、エリスリトール、キシリトール等が好ましい。
【0034】
オリゴ糖類は、ブドウ糖や果糖等の単糖が数個結合したもので、フルクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、キシロオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース等が挙げられる。なかでも、フルクトオリゴ糖等が好ましい。
【0035】
乳酸菌含有粉体における乳酸菌粉末、デキストリン粉末、及び糖類粉末の合計中の乳酸菌粉末の含有量は、当該乳酸菌の活性を有効に利用する観点から、0.5~5質量%であることが好ましく、1~4質量%であることがより好ましい。
【0036】
乳酸菌含有粉体における乳酸菌粉末、デキストリン粉末、及び糖類粉末の合計中のデキストリン粉末の含有量は、乳酸菌粉末の良好な分散性の観点から、40~99質量%であることが好ましく、45~95質量%であることがより好ましく、50~80質量%であることがさらに好ましい。
【0037】
乳酸菌含有粉体における乳酸菌粉末、デキストリン粉末、及び糖類粉末の合計中の糖類粉末の含有量は、当該乳酸菌の活性を有効に利用する観点から、10~80質量%であることが好ましく、19.5~60質量%であることがより好ましく、30~50質量%であることがさらに好ましい。
糖類粉末が糖アルコール類及びオリゴ糖類である場合、乳酸菌含有粉体における乳酸菌粉末、デキストリン粉末、及び糖類粉末の合計中の糖アルコール類及びオリゴ糖類の含有量は、乳酸菌の活性状態をより良好に維持する観点から、それぞれ、5~40質量%であること好ましく、10~30質量%であることがより好ましく、15~25質量%であることがさらに好ましい。16~20質量%であることがさらに好ましい。
【0038】
乳酸菌含有粉体中の乳酸菌粉末、デキストリン粉末、及び糖類粉末の合計は、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることがより好ましい。
【0039】
乳酸菌含有粉体は、D90が800μm以下であることが好ましく、750μm以下であることがより好ましく、600μm以下であるであることがさらに好ましい。上記粒径であることで、口腔ケア剤等とした際の取り扱い性を良好にすることができる。
【0040】
乳酸菌含有粉体は、乳酸菌粉末とデキストリン粉末(デキストリン顆粒状粉末を含む場合あり)と、任意の糖類粉末等を混合することで製造することができる。このとき、乳酸菌含有粉体の水分活性が0.3以下であり、pHが5.5~8.5となるように、デキストリン粉末等の材料を選定し、その配合割合を調整したり、少なくとも一部を乾燥したりすることが好ましい。
当該乳酸菌含有粉体は、後述するような種々の除菌剤や口腔ケア剤に好適に用いることができる。
【0041】
[除菌剤]
本実施形態に係る除菌剤は、本発明の乳酸菌含有粉体を含む。
当該除菌剤における「除菌」とは、当該除菌剤を用いることで、人間やペット等に対して、有害若しくは不快感を与える原因となる細菌等の微生物やウイルス(例えば悪玉菌等)を減らすことをいい、具体的には、当該微生物やウイルスの絶対数を減らしたり、増殖を抑えたり、相対的に悪玉菌よりも善玉菌の割合を増やすことをいう。したがって、例えば、口腔内の善玉菌で悪玉菌を排除して、口腔内環境を整える場合も除菌に該当する。
【0042】
本実施形態に係る除菌剤における既述の乳酸菌含有粉体の含有量は、除菌効果を有効に発現させる観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましい。
【0043】
本実施形態に係る除菌剤は、その除菌効果を阻害しない限り、種々の添加剤を含有してもよい。例えば、ステビアエキス等のような香味剤;スペアミント油、セイヨウハッカ油、ティーツリー葉油、ビターオレンジ果皮エキス、パセリエキス、セイヨウハッカ葉エキス、ローズマリーエキス、セージ葉エキス、タチジャコウソウ葉エキス、キシリトール、レモングラス油、グレープフルーツ果皮油、ニオイテンジクアオイ油、マンダリンオレンジ果皮油、ライム油、レモン果皮油等のような香料等が挙げられる。
【0044】
本実施形態に係る除菌剤は、除菌対象へ粉体上のまま付与したり、使用直前にスラリー状として塗布したりして使用することができる。
【0045】
[口腔ケア剤]
本実施形態に係る口腔ケア剤は、本発明の乳酸菌含有粉体を含む、あるいは、本発明の除菌剤を含む。
口腔ケア剤とは、口腔内においてう蝕や歯周病の原因となる細菌を除菌したり、又は、口臭等の改善をして不快感を解消したりといった機能を発揮するものをいう。
【0046】
本実施形態に係る除菌剤における既述の乳酸菌含有粉体の含有量は、除菌効果を有効に発現させる観点から、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることがさらに好ましく、99質量%以上であることがよりさらに好ましい。
また、本実施形態に係る除菌剤を口腔ケア剤として用いてもよい。
【0047】
より具体的には、本実施形態に係る口腔ケア剤は、生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末、及び糖類粉末を含み、水分活性が0.3以下である乳酸菌含有粉体を含み、前記乳酸菌含有粉体における前記乳酸菌粉末、前記デキストリン粉末、及び前記糖類粉末の合計中の前記乳酸菌粉末の含有量が0.5~5質量%であり、前記デキストリン粉末の含有量が50~80質量%であり、前記糖類粉末の含有量が10~80質量%であり、前記乳酸菌含有粉体中の前記乳酸菌粉末、前記デキストリン粉末、及び前記糖類粉末の合計が90質量%以上であり、前記乳酸菌含有粉体のふるい分けにより測定される積算分布の値が小径側から累積90%になる粒子径が800μm以下である口腔ケア剤であることが好ましい。
【0048】
本実施形態に係る口腔ケア剤もその除菌効果を阻害しない限り、種々の添加剤を含有してもよい。例えば、香料、甘味料等が挙げられる。
【0049】
本実施形態に係る口腔ケア剤においては、特に、乳酸菌粉末における乳酸菌として、BLIS K12及び/又はBLIS M18を用いることが好ましい。
【0050】
本実施形態に係る口腔ケア剤は、例えば、直接口腔内に含ませるか、あるいは、湿った歯ブラシ等の毛先に口腔ケア剤を付着させ、その状態で歯や舌等のブラッシング等して使用することができる。
【実施例
【0051】
次に実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
[実施例1,2]
表1に記載の配合となるように、下記の各種粉末をV型混合機により25rpmで10分間混合し、D90が700μm以下となるようにふるい分けして乳酸菌含有粉体を作製した。
なお、乳酸菌粉末以外の各種粉末は、水分活性が表1の値となるように、60℃の乾燥機で乾燥を行った。
【0053】
(各種粉末)
i)乳酸菌粉末:BLIS M18(ブリステクノロジー社製、凍結乾燥菌末、水分活性0.25以下、D90<500μm)
ii)デキストリン粉末:TK-16AG(松谷化学工業(株)製、D90:500μm以下、pH4~5.5、水分5%)
iii)糖類粉末
・フルクトオリゴ糖:メイオリゴP((株)明治フードマテリア製、水分5%以下)
・エリスリトール(三菱ケミカル(株)製、pH5~7(30%水溶液におけるpH))
【0054】
作製された乳酸菌含有粉体について、下記の水分活性及びpHを測定した。
(測定)
i)水分活性
水分活性(Aw)は、測定対象となる試料を水分活性測定装置(Aqualab 4TE、メータージャパン(株)製)により温度25℃の室内にて測定した。結果を表1に示す。
ii)pH
pHは試料1gを室温下の蒸留水10mL中を加え、1分間振動するように撹拌した後の試料液体をガラス電極pHメーターにより測定した。結果を表1に示す。
【0055】
(評価)
・活性状態(生菌数)
作製された乳酸菌含有粉体の乳酸菌(ストレプトコッカス・サリバリウスM18)の生菌数を下記のようにして測定した。
具体的には、11gの乳酸菌含有粉体をストマッカーバッグ内の99mlのリン酸緩衝液(0.1% Tween)に加えた。サンプルは、完全に溶解するまで5分間ストマックした。その後、サンプルの10倍希釈液を調製し、3連でCABK12寒天プレートにスパイラルプレートした。プレートは37℃、5%CO空気中で24時間インキュベートした。インキュベーション後、QCounterを用いて、ストレプトコッカス・サリバリウスM18の総菌数を測定した。
【0056】
【表1】
【0057】
乳酸菌粉末であるBLIS M18におけるストレプトコッカス・サリバリウスM18の生菌数は、1.0×10cfu/g(参考値)であり、実施例1及び実施例2はともに、良好に生菌数が維持できていた。特に、実施例2では参考値を上回っていたが、これは、乳酸菌含有粉体の配合状態が良いため、生菌数が増えたと推察される。
以上より、本実施例に係る乳酸菌含有粉体は乳酸菌生菌数が減少しにくく、乳酸菌の活性を有効に利用できるといえる。
【要約】
【課題】乳酸菌生菌数が減少しにくく、乳酸菌の活性を有効に利用できる乳酸菌含有粉体を提供する。
【解決手段】生きた状態の乳酸菌を含む乳酸菌粉末、及びデキストリンを含むデキストリン粉末を含み、水分活性が0.3以下である乳酸菌含有粉体である。
【選択図】なし