(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ワイパーブレード
(51)【国際特許分類】
B60S 1/38 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B60S1/38 B
(21)【出願番号】P 2023066494
(22)【出願日】2023-04-14
(62)【分割の表示】P 2017118441の分割
【原出願日】2017-06-16
【審査請求日】2023-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2016-0075623
(32)【優先日】2016-06-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(32)【優先日】2016-11-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】517213360
【氏名又は名称】キムブレイド カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003214
【氏名又は名称】弁理士法人服部国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヒュンウー キム
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-140090(JP,A)
【文献】実開昭59-093952(JP,U)
【文献】米国特許第4513468(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102012219805(DE,A1)
【文献】欧州特許出願公開第1059213(EP,A2)
【文献】欧州特許出願公開第2181901(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60S 1/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ブレード取り付け手段(10)に取り付けられる取り付け部(110)と、
前記取り付け部(110)から連続的に形成されており、前記取り付け部(110)と単一の平坦な矩形状の接触縁部(130)とを連結する角度維持屈曲可能部(120)と、を備え、
前記角度維持屈曲可能部(120)は、少なくとも一つの長手方向の内部空洞(121)を有し、
前記角度維持屈曲可能部(120)と前記一つの長手方向の内部空洞(121)は、前記単一の平坦な矩形状の接触縁部(130)がクリーニング面(S)に線接触して汚れ(P)を落としているときに前記取り付け部(110)と前記接触縁部(130)の角度を維持するように構成された4バーリンク構造を形成しており、ワイパーブレードの全体形状は、前記ブレード取り付け手段(10)の移動方向に従って横方向に傾斜しており、
前記一つの長手方向の内部空洞(121)が矩形状を有する、ワイパーブレード。
【請求項2】
前記ワイパーブレードが弾性材料から作られている、請求項1に記載のワイパーブレード。
【請求項3】
前記単一の平坦な矩形状の接触縁部(130)の外側面がコーティング層(131)を有する、請求項1に記載のワイパーブレード。
【請求項4】
前記単一の平坦な矩形状の接触縁部(130)が低摩擦のシリコンゴムから成る、請求項1に記載のワイパーブレード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全般的にワイパーブレードに関し、動作のしやすさとクリーニング力との相反する特性のバランスを取ることにより、ワイパーブレードの全体形状が、ブレード取り付け手段の移動方向に従って弾性によって横方向に傾斜して動作をしやすくし、クリーニングを行うためのワイパーブレードの接触部分が、クリーニング面に対して直角に近い角度を維持することができ、それにより、ワイパーブレードはクリーニング力にも優れている。
【背景技術】
【0002】
概して
図1で示されるように、ワイパーブレード1は、ブレード取り付け手段10に取り付けられ、クリーニング面Sにおいて汚れP'を落とすように動作する。
【0003】
ワイパーブレードの動作中、ブレード取り付け手段10の動きに従って円滑に移動及び動作するためには、ワイパーブレードがブレード取り付け手段の移動方向に従って弾性により横方向に傾斜するような形状を、ワイパーブレードが有していることが効率的である。
【0004】
これに反して、ワイパーブレードのクリーニング力を考慮すると、ワイパーブレードがクリーニング面Sにおいて直角に近い角度を維持するとき、クリーニング力が優れたものになる。ブレード取り付け手段10が、
図1に示されるように、ブレード取り付け手段10の移動方向に沿って弾性によりクリーニング面Sに対して比較的小さい角度θ1を有するとき(典型的には5度~30度)、ワイパーブレードはクリーニング面Sと表面接触し、したがって、クリーニング力は低下し、残りの汚染物P'は残る。
【0005】
既存の発明の大半は、動作のしやすさとクリーニング力との相反する特性に適合しない。先行技術である「Blade for automobile wiper」(韓国実用新案KR20-1998-021842A)は、ブレードから下方に突出し、直接拭き取りを行うようにフロントガラスに連結されている二つのブレードを開示しているに過ぎない。
【0006】
別の先行技術である「Wiper Blade(韓国登録済み特許KR10-0488972B)」は、ワイパーブレードの上端部の両側面の上端部に長手方向に形成された挿入溝を開示しているに過ぎず、その挿入溝の下端において車両の窓に接触する。そして、除去するための翼が一体成形されている車両ワイパーブレードのワイパーブレードの下部に、補助翼が翼の両側に下向きに一体成形されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、先行技術の課題を克服するために、本発明の目的はワイパーブレードを提供することであり、動作のしやすさとクリーニング力との相反する特性のバランスを取ることにより、ワイパーブレードの全体形状が、ブレード取り付け手段の移動方向に従って弾性により横方向に傾斜して動作をしやすくし、クリーニングを行うためのワイパーブレードの接触部分は、角度維持屈曲可能部によって提供される四つのリンク構造によって取り付け部に対する角度が維持されながらクリーニング面Sと線接触し、それにより、ワイパーブレードはクリーニング力にも優れている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、上記の目的は、ブレード取り付け手段に取り付けられる取り付け部と、取り付け部から連続的に形成されており、一つ以上の長手方向の内部空洞を有する角度維持屈曲可能部と、角度維持屈曲可能部から連続的に形成されており、角度維持屈曲可能部によって提供される四つのリンク構造によって取り付け部に対する角度が維持されながらクリーニング面に線接触して汚れを落とす接触縁部と、を備える、弾性材料から作られたワイパーブレードを提供することによって達成され得る。
【0009】
さらに、少なくとも一つの実施形態において、内部空洞は矩形状を有し、矩形状の各角部に丸みのある凹部(rounded subsidences)を有する。
【0010】
さらに、少なくとも一つの実施形態において、接触縁部の外側面はコーティング層を有する。
【0011】
さらに、少なくとも一つの実施形態において、接触縁部は低摩擦のシリコンゴムから成る。
【0012】
さらに、少なくとも一つの実施形態において、ワイパーブレードは、接触縁部の下部に設置された多孔性の収着部材をさらに備え、多孔性の収着部材は、汚れを一時的に吸収し、次いで押圧されることによって汚れを再び放出する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、動作のしやすさとクリーニング力との相反する特性が調和され得、ワイパーブレードの全体形状が、ブレード取り付け手段の移動方向に従って弾性により横方向に傾斜して動作をしやすくし、クリーニングを行うためのワイパーブレードの接触部分は、角度維持屈曲可能部によって提供される四つのリンク構造によって取り付け部に対する角度が維持されながらクリーニング面Sと線接触し、それにより、ワイパーブレードはクリーニング力にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】先行技術のワイパーブレードの課題を示す概略図である。
【
図5】本発明の第1の実施形態の動作を示す概略図である。
【
図8】本発明の第4の実施形態の動作を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態によれば、ワイパーブレード100は弾性材料から作られ、
図2に示されるように、取り付け部110、角度維持屈曲可能部120、及び接触縁部130を備える。ワイパーブレード100を構成する弾性材料は、ゴム(NR、CR、NCR、EPDM)、又はシリコン材料から作られてもよい。
【0016】
図2に示されるように、取り付け部110は、ブレード取り付け手段10に取り付けられ、ブレード取り付け手段10の構造及び形状に応じて様々な形態で製造されてもよい。
【0017】
図2に示されるように、角度維持屈曲可能部120は、取り付け部110から連続的に形成され、一つ以上の長手方向の内部空洞121を有する。
【0018】
内部空洞121により、角度維持屈曲可能部120は、取り付け部110と接触縁部130とを連結する4バーリンク構造(4-bar linkage structure)に類似した構造を有する。したがって、弾性によって充分な強度を有することから、取り付け部110と接触縁部130の相対角度は
図5に示されるように制限され、比較的良好に維持される。そして、ワイパーブレード100の全体形状は、ブレード取り付け手段10の移動方向に従って弾性により横方向に傾斜する。
【0019】
角度維持屈曲可能部120が4バーリンク構造に類似した構造を有するためには、内部空洞121が、
図2に示されるように矩形状を有することが好ましい。角度維持屈曲可能部120が4バーリンク構造にさらに類似した構造を有するためには、内部空洞121が、
図4に示されるように矩形状の各角部に丸みのある凹部122をさらに有することが好ましい。4バーリンク構造のリンク間の連結部に対応する部分に形成された丸みのある凹部122によって、リンク間の連結部に対応する部分がより自由に回転可能になり、したがって角度維持屈曲可能部120が、4バーリンク構造にさらに類似した動作特性を有する。
【0020】
一方、弾性材料で4バーリンクに類似した構造を作るために、角度維持屈曲可能部120は、弾性と、リンクアームの機能を果たすこととの両方のために適した硬さを有してもよい。したがって、内部空洞121の両側部分は、適切な構造的剛性を有すると同時に、過度に屈曲又は押圧されず、収縮もされない。その特性を実現するために、内部空洞121の両側部分の厚さtは、0.2~1.2mmの範囲にあってもよく、角度維持屈曲可能部120は、40~90のショアA型硬さを有してもよい。
【0021】
内部空洞121の両側部分の厚さtが前記厚さの範囲よりも薄い、又は内部空洞121の両側部分の硬さが前記硬さよりも小さい場合には、内部空洞121の両側部分の構造的強度は弱まり、過度に屈曲又は押圧されて収縮し、それにより、接触縁部130の接触角度が先行技術の場合のように小さくなる。これとは反対に、内部空洞121の両側部分の厚さtが前記厚さの範囲よりも厚い、又は内部空洞121の両側部分の硬さが前記硬さよりも大きい場合には、内部空洞121の両側部分の構造的強度が必要以上に強くなり、リンク間の連結部分の動作を円滑に実施できなくなる。
【0022】
上側と下側を連結する二つのリンクアームとして機能する内部空洞121の両側部分の構造的強度は、垂直方向の長さ(すなわち、内部空洞121の垂直高さ)に大きな影響を有する。内部空洞121の垂直高さが必要以上に大きくなり、内部空洞121の両側部分の厚さtに対する内部空洞121の高さの比率が大きくなる場合、内部空洞121の両側部分の構造的強度は比較的弱まり、それによりワイパーブレード100は過度に屈曲又は押圧されて収縮し、その結果、接触縁部130の接触角度が、先行の従来型ワイパーブレードのように小さくなる。これとは反対に、内部空洞121の垂直高さが必要以上に小さく、内部空洞121の両側部分の厚さtに対する内部空洞121の高さの比率が小さくなる場合、内部空洞121の両側部分の構造的強度は必要以上に強くなり、4リンク構造のリンク間の連結部分の動作を円滑に実施できなくなる可能性が高い。したがって、内部空洞121の両側部分の厚さtが0.2~1.2mmの範囲内にあるとき、内部空洞121の高さは2.0~6.0mmの範囲にあることが好ましい。
【0023】
本発明の別の実施形態によれば、角度維持屈曲可能部120は、
図6に示されるように複数の内部空洞121を有してもよい。
【0024】
複数の内部空洞121によって、角度維持屈曲可能部120は、複数の4バーリンク構造に類似した構造を有する。したがって、弾性によって充分な強度を有することから、取り付け部110と接触縁部130の相対角度はよりよく制限され、比較的良好に維持され、ワイパーブレード100の全体形状は、ブレード取り付け手段10の移動方向に従って弾性により横方向に傾斜する。
【0025】
接触縁部130は、
図2に示されるように角度維持屈曲可能部120から連続的に形成され、
図5に示されるようにクリーニング面Sに線接触して汚れPを落とす。上述されたように、角度維持屈曲可能部120によって提供される4バーリンク構造によって、取り付け部110に対する角度が維持されながら、接触縁部130は、比較的大きい角度θ2でクリーニング面Sと線接触することができる。したがって、接触縁部130がクリーニング面Sに接触する接触領域が小さく保たれ、それにより、動作に起因する摩擦力が低減し、クリーニング面Sに対する押圧力がかなり強くなり、したがって汚れPを拭き取るクリーニング力が優れたものになる。一方では、接触縁部130の断面は、多角形の部分の形状、又は二枚若しくは三枚ブレードの形状であってもよい。
【0026】
図6に示されるように、接触縁部130の外側面は、摩擦を低減すると同時に強度を増大するためにコーティング層131を有してもよい。コーティング層131の材料としては、様々な合成樹脂又はシリコンのうちの一つを選択することが可能である。一実施形態では、コーティング層131は、低い摩擦力を有するシリコン材料又はテフロン(登録商標)材料から作られることが好ましい。コーティング層131は、高強度フィルムを接着することによって形成されてもよい。
【0027】
図2に示されるように、取り付け部110と角度維持屈曲可能部120とは異なり、接触縁部130は、低摩擦のシリコン材料から作られてもよい。この場合、ワイパーブレード100が押出成形され、次いで切断されるように、ワイパーブレード100が製造されることが好ましい。さらに、取り付け部110及び角度維持屈曲可能部120が、別の特性のシリコン材料から成る接触縁部130と同時に押出成形される。
【0028】
ワイパーブレード100は、ワイパーがより円滑に動作できるように、往復するワイパーの動作に従って所定の角度で傾斜することが好ましい。この目的のために、
図4に示されるように、取り付け部110と角度維持屈曲可能部120との間に屈曲ネック140が形成され得る。さらに、接触縁部130がクリーニング面Sに接触する角度θ2が比較的大きな角度で維持され得るように、所定の角度は約5~30度の範囲内とすることができる。この目的を追求するために、
図4に示されるように、取り付け部110の下端部に支持アーム142がさらに形成され、角度維持屈曲可能部120の上端部に支持突起141がさらに形成される。
【0029】
したがって、
図8に示されるように、屈曲ネック140がワイパーの動作に応じて所定の角度で屈曲すると、支持突起141が支持アーム142と接触し、さらなる屈曲を防止し、したがって、接触縁部130がクリーニング面Sに接触する角度θ2が制限されて比較的大きな角度で維持されながら、ワイパーブレード100は、動作方向に対応する所定の角度だけ傾斜する。
【0030】
図7に示されるように、接触縁部130の下部に多孔性の収着部材160が設置され、多孔性の収着部材160は、多孔性の収着材料から作られ、接触縁部130が取り除くことのできない残りの汚れPを一時的に吸収し、次いで、動作方向が変わるときに押圧されることにより汚れPを再び放出する。
【0031】
多孔性の収着部材160は、その動作特性に応じて様々な大きさ及び形状で形成されてもよい。多孔性の収着部材160について重視されることが、多孔性の収着部材160が接触部130にしっかりと取り付けられた状態を維持することである場合、
図7に示されるように、多孔性の収着部材160は、所定の深さdで接触縁部130の下部に挿入される。多孔性の収着部材160によって吸収された汚れが、圧縮によって再び効率良く放出され得るのに充分な圧縮効果を確保するために、所定の深さdは、多孔性の収着部材160の垂直高さの半分未満とすることができる。
【0032】
多孔性の収着部材160が、残りの汚れを吸収する効果を向上させるために動作特性に焦点を合わせる場合、多孔性の収着部材160は、狭い幅及び長い長さを有する。
【0033】
図面及び上の記述に関する参照番号及び符号が、以下に提供される。
【符号の説明】
【0034】
S クリーニング面
P 汚れ
10 ブレード取り付け手段
100 ワイパーブレード
110 取り付け部
111 クランプ部材
120 角度維持屈曲可能部
121 内部空洞
122 丸みのある凹部
130 接触縁部
131 コーティング層
140 屈曲ネック
141 支持突起
142 支持アーム
160 多孔性の収着部材