(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】味付け半熟ゆで卵
(51)【国際特許分類】
A23L 15/00 20160101AFI20240131BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240131BHJP
A23L 5/00 20160101ALI20240131BHJP
A23B 5/00 20060101ALI20240131BHJP
A23B 5/005 20060101ALI20240131BHJP
A23B 5/14 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
A23L15/00 D
A23L5/10 F
A23L5/00 G
A23B5/00 A
A23B5/005
A23B5/14
(21)【出願番号】P 2023139385
(22)【出願日】2023-08-29
(62)【分割の表示】P 2022189937の分割
【原出願日】2022-11-29
【審査請求日】2023-08-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】399027004
【氏名又は名称】イセデリカ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004163
【氏名又は名称】弁理士法人みなとみらい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北林 菜穂
(72)【発明者】
【氏名】石塚 薫
(72)【発明者】
【氏名】内山 珠実
【審査官】関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-212079(JP,A)
【文献】特開平11-299457(JP,A)
【文献】特開平11-225708(JP,A)
【文献】特開2021-164419(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 15/00
A23L 5/10
A23L 5/00
A23B 5/00
A23B 5/005
A23B 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゆで卵を調味液に浸漬させる味付け工程と、前記ゆで卵を調味液なしで包装に密封する包装工程と、前記包装に封入された前記ゆで卵を卵黄の全体が白濁しない条件で加熱殺菌する加熱工程と、を含み、
前記味付け工程では、調味液と、複数の前記ゆで卵を密閉容器に入れて湯煎して加熱する密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項2】
前記味付け工程では、前記ゆで卵を調味液に浸漬させた状態で加熱殺菌した後に冷却を行う、請求項1に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項3】
前記包装工程において、前記ゆで卵を真空包装する、請求項1に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項4】
前記包装は、袋状の包装体であって、一の前記包装体に一の前記ゆで卵が真空包装される請求項3に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項5】
前記包装工程では、前記ゆで卵をプラスチックフィルムの間に挟み込んで包装する請求項3に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項6】
前記加熱工程の後に、冷却を行う冷却工程を含み、
前記冷却工程では、冷却水を貯めた槽に前記ゆで卵を漬けることで冷却する、請求項1に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【請求項7】
前記調味液は、酢を配合した液である請求項1に記載の密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、味付きの半熟ゆで卵であって、パック詰めされたものに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、味付きゆで卵であって調味液に浸してパック詰めされたものが多く販売されている。調味液に浸すことは、調味液の味を染み込みやすくすることや、内部のゆで卵の保存性の向上の面で利点がある。一方、顧客が開封するときを考えると、調味液はなるべく封入しないことが好ましく、例えば特許文献1には、調味液の量を減らす殻剥きゆで卵の発明が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明には、パック内部のゆで卵の保存性を高めるために脱気密封することが記載されている。
しかしながら、曲面形状であり、比較的脆い食品であるゆで卵を完全に脱気密封することは難しく、やはり少量の調味液と封入することが必要となり、開封にあたって不便である。
一方で、パッケージングした卵を調味液に全く漬けないこととすると、卵への味付けや保存性の面から課題があり、卵の卵黄を半熟とし、加熱量を抑えねばならない場合にあってはそれらの課題が顕著になる。
【0005】
本発明は、上記の課題に鑑み、卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、保存性が高いことの全てを充足し、液体をパッケージングの内部に封入しないようにすることで取り扱いに不便がないパック詰めの味付け半熟ゆで卵の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する本発明は、ゆで卵を調味液に浸漬させる味付け工程と、前記ゆで卵を調味液なしで包装に封入する包装工程と、前記包装に封入されたゆで卵を卵黄の全体が白濁しない条件で加熱する加熱工程と、を含む、味付け半熟ゆで卵の製造方法である。
このように、味付け、包装、加熱を順番に行う構成によって、卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、保存性が高いことの全てを充足し、液体をパッケージングの内部に封入しないようにすることで取り扱いに不便がないパック詰めの味付け半熟ゆで卵を製造することができる。
【0007】
本発明の好ましい形態では、前記味付け工程は、ゆで卵を調味液に浸漬させた状態で加熱する。
このような構成によって、ゆで卵に調味液が浸透しやすくなるため、味付け半熟ゆで卵の味を濃くすることができる。
【0008】
本発明の好ましい形態では、前記味付け工程では、調味液と、複数のゆで卵を密閉容器に入れて湯煎する。
このような構成によって、調味液を均一かつ無駄なくゆで卵に浸透させ、取り扱い性能を高めることができる。
【0009】
本発明の好ましい形態では、前記加熱工程の後に、冷却を行う冷却工程を含む。
このような構成によって、殺菌のために高温で加温しても、卵黄の変性を防ぐことができる。
【0010】
本発明の好ましい形態では、前記冷却工程では、冷却水を貯めた槽に前記ゆで卵を漬けることで冷却する。
このような構成によって、殺菌のために高い温度で加温しても、ゆで卵を急激に冷却して卵黄の変性を防ぐことができる。
【0011】
本発明の好ましい形態では、前記調味液は、酢を配合した液である。
このような構成によって、pHを低くし、ゆで卵の表面に雑菌が繁殖しにくくなる。
【0012】
上記課題を達成する本願発明は、調味液によって味付けされ、卵黄の全体が白濁していない味付け半熟ゆで卵と、これを封入する包装からなり、前記味付け半熟ゆで卵は、調味液なしで前記包装に封入されている包装入り味付け半熟ゆで卵である。
このような構成によって、卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、保存性が高いことの全てを充足し、液体をパッケージングの内部に封入しないようにすることで取り扱いに不便がないパック詰めの味付け半熟ゆで卵を提供することができる。
【発明の効果】
【0013】
上記課題を解決する本発明は、上記の課題に鑑み、卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、保存性が高いことの全てを充足し、液体をパッケージングの内部に入れないようにすることで開封や取り扱いに不便のないパック詰めのゆで卵を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の実施形態に係る、密閉容器に収容されたゆで卵及び調味液を表す模式図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る、包装されたゆで卵の正面模式図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る、包装されたゆで卵の断面模式図である。
【
図4】本発明の実施例に係る、ゆで卵の断面の経時変化を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を用いて、本発明の実施形態に係るパック詰め味付け卵Xについて説明する。説明は、原料・材料の説明、各調理工程の説明、実施例の順に詳述する。
なお、以下に示す実施形態は本発明の一例であり、本発明を以下の実施形態に限定するものではない。
【0016】
以下、本発明の原料、特に卵及び調味液について好ましい形態を説明する。
本明細書において、「原卵」とは、鳥類から採取される卵であって、殻付きで加熱処理がされていないものを言い、特に鶏卵、ウズラ卵、ダチョウ卵、アヒル卵等が想定される。
また、本明細書における「ゆで卵」とは、原卵に湿式加熱調理がなされた結果、卵白が変質して凝固した卵であって、殻が剥かれた状態のものを言う。なお、ここでいう湿式加熱調理は、ゆでる、煮る、蒸す等が含まれる、液体を媒体とした加熱処理をいう。
【0017】
本発明に用いる「ゆで卵」の重量は、30g以上、好ましくは40g以上、より好ましくは50g以上である。また、本発明に用いるゆで卵の重量は、90g以下、好ましくは80g以下、より好ましくは70g以下を目安とすることができ、上記条件を満たしやすい鶏卵を使用することが好ましい。
【0018】
また、本発明に用いる「ゆで卵」は、その加熱条件によって、卵黄に白濁・凝固が発生していないか、一部のみに白濁が発生している、いわゆる「半熟状」の状態となっている。ここで「白濁」とは、卵黄の変質により生卵の卵黄と比較して白い部分が現れることを言い、「凝固」とは卵黄の変質により粘性や硬さが変化することを言う。
【0019】
次に、本発明の調味液2について好ましい形態を説明する。
本明細書において「調味液」とは、ゆで卵1の味付けのために用いられる少なくとも甘味、塩味、酸味が含まれる液体であって、塩味調味料、甘味料、酸味料及び水を混合させることによって調整される。
【0020】
本発明に係る塩味調味料は、塩味を生じさせる調味料であって、塩、醤油、だし等が含まれる。
本発明の塩には、精製塩、岩塩、海塩が含まれる。調味液に対する塩の重量比は、少なくとも1.5%、好ましくは2.0%、より好ましくは2.4%である。
本発明の醤油は、甘口醤油、濃口醤油、再仕込み醤油等の市販のものから選択される一般的な醤油であって、醤油とだしと併せただし醤油を利用してもよい。調味液に対する醤油の重量比は、濃口醤油を用いる場合少なくとも10%以上であり、好ましくは13%以上であり、より好ましくは16%以上である。また、調味液に対する醤油の重量比は、多くとも25%以下であり、好ましくは22%以下であり、より好ましくは19%以下である。濃口醤油以外を用いる場合、調味液が上記と同程度の塩分となる範囲で醤油の重量比を調整することが好ましい。
【0021】
本発明に係る甘味料は、果糖、グラニュー糖、白砂糖、黒糖等から選択される一般的な甘味料であって、アスパルテームやスクラロースなどの人工甘味料でもよい。また、液糖や水あめなどの液状甘味料や、みりんやみりん風調味料、発酵調味料等の糖分を含む調味料を使用してもよい。
調味液に対する甘味料の重量比は、白砂糖である場合、少なくとも5%以上であり、好ましくは7%以上であり、さらに好ましくは9%以上である。また、調味液に対する甘味料の重量比は、白砂糖である場合、多くとも20%以下であり、好ましくは16%以下であり、より好ましくは12%以下である。白砂糖以外を用いる場合、調味液が上記と同程度の甘味を生じる範囲で甘味料の重量比を調整することが好ましい。
【0022】
本発明に係る酸味料は、クエン酸、酢酸、リンゴ酸等の何れかを含む一般的な酸味料であって、例えばレモン汁やミカン汁、酢などを使用することができる。これによって、pHを低く保ち、雑菌の増殖を抑えて保存性を高められる。
調味液に対する酸味料の重量比は、酢を用いる場合で、少なくとも0.5%以上であり、好ましくは0.9%以上であり、より好ましくは1.3%以上である。また、調味液に対する酸味料の重量比は、多くとも3.0%以下であり、好ましくは2.5%以下であり、より好ましくは2.0%以下である。
酢以外を用いる場合、調味液が上記の同程度の水素イオン濃度となる範囲で酸味料の重量比を調整することが好ましい。
【0023】
上記の塩味調味料、甘味料、酸味料に水を加えて重量比が上述のとおりになるように調整し、加温及び攪拌して固形成分を溶解させることによって、本発明の調味液とする。なお、水には通常用いられる飲料用水以外にも、軟水、ミネラル水、硬水等を使用してもよく、適宜pH調整材や安定剤(酢酸ナトリウム等)を添加してもよい。
【0024】
以下、本発明の調理工程Mについて説明する。調理工程Mは、パック詰め味付け卵Xを製造する目的を持つ製造者によって行われる。また、本発明の調理工程Mには、原卵0をゆで卵1とするゆで卵製造工程M1と、ゆで卵1を調味液2に浸漬させる味付け工程M2と、ゆで卵1を調味液2なしで包装体3に封入する包装工程M3と、包装体3に封入されたゆで卵1を卵黄の全体が白濁しない条件で加熱する加熱工程M4と、を含む。
【0025】
<ゆで卵製造工程M1>
まず、製造者は、原卵0を湿式加熱によって加熱し、殻をむくことによってゆで卵1を得る。該湿式加熱は、特に茹でることによって行うことが好ましい。ゆで卵1は、卵白は凝固され卵黄の一部または全部が白濁しない条件で加熱され、いわゆる「半熟」の状態となっている。
【0026】
<味付け工程M2>
次に、味付け工程M2では、ゆで卵製造工程M1によって得られたゆで卵1に味付けを行う。工程は調味液2にゆで卵を浸漬させた状態で加熱後、冷却した状態を長時間保持することによって行うことが好ましく、これによってゆで卵の殺菌を適切に行い、保存性を高めることができる。
【0027】
味付け工程M2における加熱温度は、半熟を維持するために95℃以下であることが好ましく、より好ましくは92℃以下である。また、加熱時間は15分以下であることが好ましく、より好ましくは12分以下である。さらに、冷却の温度は、15℃以下であることが好ましく、より好ましくは12℃以下、さらに好ましくは10℃以下である。保存性を高めるために、冷却の温度を9℃以下とし、好ましくは8℃以下、より好ましくは5℃以下としてもよい。冷却状態で保持する時間は、少なくとも30分以上であり、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは8時間以上である。例えば、前日の夕方に冷却を開始したものを、当日の昼前まで冷却を保持してもよい。
【0028】
なお、本実施形態の味付け工程M2では、
図1に示すように、複数のゆで卵1と、調味液2とを封入する密閉容器4を使用する。密閉容器4は、上部にシール部41を有しており、内部が密閉できるようにしてある。密閉容器4の材質は、ポリプロピレンや塩化ビニールなどの軟質で耐水性・耐熱性のあるプラスチックであることが好ましく、その形状は袋状となるようにしてある。
【0029】
本実施形態に係る密閉容器4は、ゆで卵1と調味液2を、内部に空気が入らないように密封する。ゆで卵1及び調味液2は、密封された状態で湯せんされることによって加熱され、また冷却される。
【0030】
ここにおいて、冷却された状態での保持は、密封された状態で冷却水を溜めた槽に漬けおくことで内部のゆで卵1を急速に冷却する工程を行った後に、冷蔵庫等の空冷環境において長時間静置される工程を経ることが好ましい。
【0031】
また、密閉容器4内部におけるゆで卵1の重量を1とした際の調味液2の重量は、味付けすることを考慮して、少なくとも0.2以上、好ましくは0.4以上、より好ましくは0.6以上とするのが好ましく、また、経済性や熱伝導性を考慮して、多くとも1.5以下、好ましくは1.3以下、より好ましくは1.1以下とすることが好ましい。
なお、密閉容器4を密封する手段としては、後述するような真空包装を用いても良い。
【0032】
<包装工程M3>
包装工程M3では、味付け工程M2によって味付けされたゆで卵1を調味液2から取り出し、包装体3を使用することによって、
図2及び
図3に示すように真空包装を行う。なお、
図2は正面図を表しており、
図3は、A―A’断面における断面図を表している。なお図中において、包装体3の斜線は省略している。
【0033】
図3に示すように、包装体3は袋状になるように設けられており、好ましくは側面3方向における端部同士が接続または接着された第一包装体31及び第二包装体32を備えている。ゆで卵1は包装体3の内側に格納されており、好ましくは第一包装体31及び第二包装体32の中心付近でゆで卵1を挟み込むようにしてある。
【0034】
第一包装体31及び第二包装体32は、それぞれ軟質のプラスチックフィルムであって、
図3(a)に示すように、中心にゆで卵1が嵌め込まれるような凹部が対向するように設けられていてもよく、
図3(b)に示すように、第一包装体31のみが変形してゆで卵1を包み込むようにしてもよい。
【0035】
包装工程M3において、製造者は、ゆで卵1を調味液2から取り出し、調味液2を廃棄する。その後、単一のゆで卵1を包装体3内側の所定位置に配置し真空包装機に入れる。これにより、包装体3の内部にあるエアーが抜けたときに包装体3の開口部分の接着を行い、ゆで卵1を密封する。接着の手段としては、接着剤による接着や熱溶着(ヒートシール)が用いられる。
ここにおいて真空包装は、窒素などの不活性ガスの雰囲気下で行うことが好ましい。
【0036】
なお、ゆで卵1を調味液2から取り出す際に、調味液2の液切りを行う液切り工程を行うことが好ましい。液切り工程の例として、網目の上にゆで卵1を乗せ置くこと、ゆで卵1を振動させて付着した調味液2を振り落とすこと、ゆで卵1に付着した調味液2をふき取ること等が挙げられる。
【0037】
<加熱工程M4>
加熱工程M4では、包装工程M3において包装されたゆで卵1を、包装体3によって包装された状態で加熱することで殺菌を行う。その後、包装されたまま冷却状態で保持する冷却工程を行う。ここにおいて加熱及び冷却は、湯や冷水に浸すことによって行うことが好ましい。これにより保存性を高められる。
【0038】
加熱工程M4における加熱条件は、味付け工程M2と同様とすることが好ましい。すなわち、半熟を維持するために95℃以下であることが好ましく、より好ましくは92℃以下である。また、加熱時間は、15分以下であることが好ましく、より好ましくは12分以下である。さらに、冷却の温度は、少なくとも15℃以下であり、より好ましくは12℃以下、さらに好ましくは9℃以下である。冷却状態で保持する時間は、少なくとも30分以上であり、好ましくは2時間以上、さらに好ましくは6時間以上であり、これにより卵黄まで確実に冷却することができる。
【0039】
上記によって、製造者は、卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、を充足し、工程中の複数回の加熱殺菌によって保存性を高めるとともに、液体をパッケージングの内部に封入しないようにすることで取り扱いの不便が少ないパック詰めのゆで卵の製造をすることができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を用いて、より詳細に本発明について説明する。
【0041】
《ゆで卵製造工程M1》
まず、鶏卵である原卵0(50g~70g)を常圧下、95℃の湯に約6分間漬けた後に、8℃の冷水に漬けて冷却し、殻をむくことによって半熟のゆで卵1を得た。
【0042】
《味付け工程M2》
調味液2は、以下のように作成した。
水70.5kgと、醤油18kgと、砂糖10kgと、を耐熱容器に投入し砂糖が完全に溶解するまで加温し、さらに高酸度酢1.5kgを投入し、冷却することで調味液2を得た。
【0043】
密閉容器4にゆで卵1を60個と上述の調味液2を2100g入れ、内部に空気が混入しないようにシール部41を閉めて密封した。その後、密閉容器4を90℃の湯につけることで10分間加熱し殺菌した。
次に、密閉容器4を、水温を8℃以下とした冷水に漬けることで速やかに冷却し、その後8℃以下とした冷蔵庫内において12時間以上静置した。
【0044】
《包装工程M3》
密閉容器4からゆで卵1を取り出し、調味液2を廃棄した。
その後、ゆで卵1を一つずつ包装体3の中に入れ、真空包装機でヒートシールすることによって包装した。
【0045】
《加熱工程M4》
包装体3の中に封止されたゆで卵1を、90℃の湯につけることで10分間加熱し殺菌した。
その後、冷却工程として、包装体3の中に封止されたゆで卵を、水温を8℃以下とした冷水に漬けることで速やかに冷却した。
【0046】
以上により、パック詰め味付け卵Xを製造した。
ゆで卵1において、断面を切断して観察した結果、卵白は凝固したが、卵黄の一部には白濁が発生しない部分が見られた。また、卵白表面は調味液2の色に変質している様子が見られ、調味液2が浸透している様子が観察できた。
そして、パック詰め味付け卵Xを冷蔵保存し、所定の経過日数ごとに官能評価及び視認による変化を確認した結果、表1に示す結果が得られた。官能評価は、一名の専門のテスターに甘味及び塩味と、卵白の食感との観点について簡潔にまとめたレポートを作成させることによって行い、視認による変化は表面及び断面の色変化に着目したレポートを作成させることで行った。なお、日数によってテスターを変えていない。
表1のように、経過日数21日目までは経過日数4日目とほとんど同じ良好な官能を示し、また表面及び断面の色は経過日数40日目であっても、
図4のように外観上ほとんど変化が確認できなかったため、保存性が高いことが示された。
【0047】
【符号の説明】
【0048】
0 原卵
1 ゆで卵
2 調味液
3 包装体
31 第一包装体
32 第二包装体
4 密閉容器
41 シール部
X パック詰め味付け卵
【要約】
【課題】卵白に調味液の味がしみ込んでいること、卵黄が半熟であること、保存性が高いことの全てを充足し、液体をパッケージングの内部に封入しないようにすることで取り扱いに不便がないパック詰めの味付け半熟ゆで卵の製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】上記課題を解決する本願発明は、ゆで卵を調味液に浸漬させる味付け工程と、前記ゆで卵を調味液なしで包装に封入する包装工程と、前記包装に封入されたゆで卵を卵黄の全体が白濁しない条件で加熱する加熱工程と、を含み、前記味付け工程では、調味液と、複数のゆで卵を密閉容器に入れて湯煎して加熱する密封包装入りの味付け半熟ゆで卵の製造方法である。
【選択図】
図1