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特許7429080半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/304 20060101AFI20240131BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20240131BHJP
   B28D 5/02 20060101ALI20240131BHJP
   B28D 5/04 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01L21/304 611Z
B23K26/53
B28D5/02 B
B28D5/04 B
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2023200298
(22)【出願日】2023-11-28
【審査請求日】2023-11-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】521081850
【氏名又は名称】有限会社ドライケミカルズ
(74)【代理人】
【識別番号】240000693
【弁護士】
【氏名又は名称】弁護士法人滝田三良法律事務所
(72)【発明者】
【氏名】千葉 哲也
(72)【発明者】
【氏名】池田 真朗
【審査官】三浦 みちる
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-049161(JP,A)
【文献】特開2011-249449(JP,A)
【文献】特開2015-062946(JP,A)
【文献】特開2020-102536(JP,A)
【文献】特開2021-168347(JP,A)
【文献】特開2018-093046(JP,A)
【文献】特開2017-216266(JP,A)
【文献】特開2015-222766(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
B23K 26/53
B28D 5/02
B28D 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光させた集光点を切断予定面に沿って走査させることにより切断ガイドラインを形成するガイドライン形成手段と、
前記半導体結晶インゴットの前記切断予定面を切断する切断手段と
を備え、
前記ガイドライン形成手段は、前記切断予定面において前記切断手段の切断方向に対応した走査ラインとして、該切断手段の切断方向に一致した走査ラインで前記切断ガイドライン形成することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項2】
請求項1記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記切断手段は、前記切断予定面にワイヤーを周回させながら前進させると共に該ワイヤーから放電を行うワイヤー放電加工装置であることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項3】
請求項1記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記切断手段は、前記切断予定面に切断刃を進行させることを特徴とするカッタ装置であることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のうちいずれか1項記載の半導体結晶ウェハの製造装置において、
前記ガイドライン形成手段は、前記半導体結晶インゴットの端面から前記レーザー光線を入射させることを特徴とする半導体結晶ウェハの製造装置。
【請求項5】
円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光させた集光点を切断予定面に沿って走査させることにより切断ガイドラインを形成するガイドライン形成工程と、
前記半導体結晶インゴットの前記切断予定面を切断する切断工程と
を備え、
前記ガイドライン形成工程は、前記切断予定面において前記切断工程の切断方向に対応した走査ラインとして、該切断工程の切断方向に一致した走査ラインで前記切断ガイドラインを形成することを特徴とする半導体結晶ウェハの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法としては、下記特許文献1に示すように、ウェハ形状形成工程として、結晶成長させた単結晶SiCの塊を円柱状のインゴットに加工するインゴット成形工程と、インゴットの結晶方位を示す目印となるよう、外周の一部に切欠きを形成する結晶方位成形工程と、単結晶SiCのインゴットをスライスして薄円板状のSiCウェハに加工するスライス工程と、修正モース硬度未満の砥粒を用いてSiCウェハを平坦化する平坦化工程と、刻印を形成する刻印形成工程と、外周部を面取りする面取り工程とを含み、次に、加工変質層除去工程として、先行の工程でSiCウェハに導入された加工変質層を除去する加工変質層除去工程を含み、最後に、鏡面研磨工程として、研磨パッドの機械的な作用とスラリーの化学的な作用を併用して研磨を行う化学機械研磨(CMP)工程を含むSiCウェハの製造方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-15646号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、かかる従来のSiCウェハの製造方法では、製造工程が多く複雑であり、装置構成が複雑となり製造コストが嵩むという問題ある。
【0005】
一方で、製造工程を簡略化した場合には、SiCウェハに要求される品質を安定して得ることが困難となる。
【0006】
そこで、本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造装置であって、
前記半導体結晶インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光させた集光点を切断予定面に沿って走査させることにより切断ガイドラインを形成するガイドライン形成手段と、
前記半導体結晶インゴットの前記切断予定面を切断する切断手段と
を備え、
前記ガイドライン形成手段は、前記切断予定面において前記切断手段の切断方向に対応した走査ラインとして、該切断手段の切断方向に一致した走査ラインで前記切断ガイドライン形成することを特徴とする。
また、第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工された半導体結晶インゴットからスライス状にウェハを切り出す半導体結晶ウェハの製造方法であって、
前記半導体結晶インゴットに対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光させた集光点を切断予定面に沿って走査させることにより切断ガイドラインを形成するガイドライン形成工程と、
前記半導体結晶インゴットの前記切断予定面を切断する切断工程と
を備え、
前記ガイドライン形成工程は、前記切断予定面において前記切断工程の切断方向に対応した走査ラインとして、該切断工程の切断方向に一致した走査ラインで前記切断ガイドラインを形成することを特徴とする。
【0008】
第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置および第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、切断手段(切断工程)による切断の際に切断予定面に形成された切断ガイドラインが切断のガイドになるため、切断手段(切断工程)により精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0009】
すなわち、切断手段(切断工程)は、切断の際に、切断ガイドラインが切断抵抗の少ない領域となり切断のガイドとなる。
【0010】
ここで、切断ガイドラインは、切断手段(切断工程)の切断方向に対応した切断予定面内において、前記切断手段(切断工程)の切断方向に対応した走査ライン(例えば、切断方向に対応としては切断方向と一致や切断方向と直交のほか、切断方向に応じた走査ラインの疎密など)として形成されることで、切断手段(切断工程)による切断の際に切断抵抗の少ない領域を切断方向に対応させて形成することができる。
【0011】
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置および第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
また、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置および第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、切断ガイドラインを切断手段(切断工程)の切断方向に一致した走査ラインで前記切断ガイドラインを形成することで、実際に切断手段(切断工程)の切断の際に切断抵抗の少ない領域である切断ガイドラインが切断方向に連続的に形成され切断のガイドとなる。
このように、第1発明の半導体結晶ウェハの製造装置および第5発明の半導体結晶ウェハの製造方法によれば、実際に精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0012】
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明において、
前記切断手段は、前記切断予定面にワイヤーを周回させながら前進させると共に該ワイヤーから放電を行うワイヤー放電加工装置であることを特徴とする。
第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、切断手段がワイヤー放電加工装置である場合が好適であり、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0013】
このように、第2発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0014】
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1発明において、
前前記切断手段は、前記切断予定面に切断刃を進行させることを特徴とするカッタ装置であることを特徴とする。
第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、切断手段がカッタ装置である場合が好適であり、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができる。
【0015】
このように、第3発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、実際に精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【0019】
発明の半導体結晶ウェハの製造装置は、第1~発明のいずれかにおいて、
前記ガイドライン形成手段は、前記半導体結晶インゴットの端面から前記レーザー光線を入射させることを特徴とする。
【0020】
発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、切断ガイドラインの形成のためのレーザー光線の入射を半導体結晶インゴットの端面から行うことで、集光点までの距離を決めてその距離を維持したままワイヤーの進行方向に沿って走査させることで簡易かつ確実に切断ガイドラインを形成することができる。
【0021】
このように、第発明の半導体結晶ウェハの製造装置によれば、簡易かつ確実に切断ガイドラインを形成して、精度よく半導体結晶インゴットをスライス状に切断することができ、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態のSiCウェハ(半導体結晶ウェハ)の製造方法の工程全体を示すフローチャート。
図2図1のSiCウェハの製造方法における溝加工工程の内容を示す説明図。
図3図1のSiCウェハの製造方法におけるガイドライン形成工程および切断工程の内容を示す説明図。
図4図1のSiCウェハの製造方法における研削工程の内容を示す説明図。
図5図1のSiCウェハの製造方法におけるガイドライン形成工程の変更例を示す説明図。
図6図1のSiCウェハの製造方法におけるガイドライン形成工程の変更例を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1に示すように、本実施形態において、半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、円筒形状に研削加工されたSiCインゴットからスライス状に切り出したSiCウェハを得る方法であって、溝加工工程(STEP100/図1)と、ガイドライン形成工程(STEP110/図1)と、切断工程(STEP120/図1)と、研削加工工程(STEP130/図1)とを備える。
【0024】
図2図5を参照して各工程の詳細および本実施形態のSiCウェハの製造装置について説明する。
【0025】
まず、溝加工工程(STEP100/図1)では、共通の溝加工ドラム砥石20により、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する。
【0026】
溝加工ドラム砥石20は、SiCインゴット10の側面全体に周回する複数の凹溝11を形成するためのドラム砥石であって、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面に形成されている。
【0027】
具体的に、溝加工工程(STEP100/図1)では、複数の凹溝11に対応した複数の凸部21が側面全体に形成された溝加工ドラム砥石20を互いに平行な回転軸上でそれぞれ回転させながらSiCインゴット10に圧接することにより凹溝11を形成する。
【0028】
このとき、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される。
【0029】
保護板15は、例えば、ポリ塩化ビニールなどの合成樹脂であり、SiCインゴット10とは必要に応じて接着剤などを介して接合される。
【0030】
かかる一対の保護板15,15により、SiCインゴット10の両端部を保護することができ、両端部の欠けや割れを防止することができる。そのため、複数の凹溝11を両端面の際まで形成することができ、ひいては、後述するSiCウェハ100をより多く切断して得ることができる。
【0031】
また、SiCインゴット10を回転軸に挟持して固定する際に、必要に応じて保護板15,15を加工(例えば、穴あけ)して固定することができる。加えて、この場合にも、SiCインゴット10自体の加工を伴わないため、SiCインゴット10を傷めることもない。
【0032】
次に図3(a)に示すように、ワイヤー40による切断に先立って、ガイドライン形成工程(STEP110/図1)により、切断予定面に切断ガイドラインを形成する。
【0033】
切断予定面は、溝加工工程(STEP100/図1)により形成された各凹溝11を含む面(図中に仮想線で示す、インゴットの外径よりも凹溝幅分小さい円形面)である。かかる切断予定面にSiCインゴット10に対して透過性を有する波長のレーザー光線を集光させた集光点を位置させることにより、SiC結晶の改質領域をSiCインゴット10に部分的に形成する。そして、集光点を切断予定面において走査させた走査ラインにより所望の切断ガイドラインが形成される。
【0034】
かかる切断ガイドラインを形成するガイドライン手段としては、上記レーザー光線を発振するレーザー発振器と、レーザー光線をSiCインゴット10の内部に集光させる集光器(レンズ)とが用いられる。
【0035】
具体的に走査ラインは、図3(b)に切断予定面における断面図で示すように、図中矢印で示すワイヤー40の進行方向に複数走査させた切断ガイドラインが複数形成される。これらの切断ガイドライン同士の間隔は、均等であってもよいが中央付近になるにしたがって間隔が小さく、左右両サイドに向かって間隔が大きくなるように疎密を付けてもよい。
【0036】
このように疎密を設けることで、ワイヤー40の進行の際に切断量の多い中央部は切断速度が落ち(逆に両サイドは切断速度が速くなり)ワイヤー40が弓なりになるところ、切断抵抗の少ない領域を両サイドから中央部にかけて段階的に設けることで、図3(c)に示すように、ワイヤー40が弓なりになるのを防止してワイヤーを直線状に保持することができる。
【0037】
なお、かかるワイヤー40による切断工程(STEP120/図1)で用いられるワイヤー装置は、(種々の装置が採用され得るが)ワイヤーボビン間に渡された複数のワイヤー40を周回させながら前進させると共に、ワイヤーに高電圧(高周波高電圧)を印加することによりSiCインゴット10へ放電を行うことで、SiCインゴット10をスライス状に切断する。
【0038】
凹溝11に配置されワイヤー40は、切断中、周回および放電しながら前進する際に、凹溝11(SiCインゴット10の外径が小さくなっていること)に加えて、切断ガイドラインにより切断予定面は切断抵抗の少ない領域となっており、ワイヤー40が切断予定面を滑るように切断していくことができる。
【0039】
これにより、複数の凹溝11に配置された複数のワイヤー40で、SiCインゴット10を1回でスライス状に精度よく切断することができる。すなわち、ワイヤー40による高速切断加工を実現することができると共に、切断面の表面平坦性および低ダメージ加工が可能となる。加えて、全面または特定領域において結晶性の悪いSiCインゴット10に対しても指定厚みでのスライスが可能であり、結晶方位の影響もない。
【0040】
また、切断抵抗が少ないことから、ワイヤー40の径自体を小さくすることができ、結果として、切り代を最小化させて取り率を向上させることができる。
【0041】
次に、図4に示すように、研削加工工程(STEP130/図1)では、第1面加工工程(STEP130(1))により、切断面のいずれか一方の一面110を支持面として、残る他面120にメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施す。
【0042】
具体的には、第1面加工工程(STEP130(1))では、メカニカルポリッシュを施すメカニカルポリッシュ装置50(超高合成高精度研削加工装置)により、研削加工を行う。
【0043】
メカニカルポリッシュ装置50は、スピンドル51と、定盤であるプラテン52上のダイアモンド砥石53とを備える。
【0044】
まず、ここで一面110を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させて支持させ、他面120を下面として、ダイアモンド砥石53により他面120を研削加工する。
【0045】
このとき、スピンドル51およびダイアモンド砥石53は、図示しない駆動装置により回転駆動されると共に、図示しないコンプレッサーなどによりスピンドル51がダイアモンド砥石53に押圧されることにより他面120に研削加工が施される。
【0046】
なお、研削加工後には、ドレッサー等によりダイアモンド砥石53へのドレッシングが施されてもよい。
【0047】
また、メカニカルポリッシュ装置50は、必要に応じて、加工時に複数の機能水を使用可能なように機能水供給配管を有してもよい。
【0048】
次に、第2面加工工程(STEP130(2))では、第1面加工工程により、高精度研削加工が施された他面120を上面として、一面110に対して、第1面加工工程と同様の高精度研削加工を施す。
【0049】
すなわち、他面120を上面として、スピンドル51の吸着プレートである真空ポーラスチャック54に吸着させ、一面110を下面として、ダイアモンド砥石53により一面110を研削加工する。
【0050】
この場合にも、必要に応じて、ドレッサー等をダイアモンド砥石53に押圧することによりドレッシングが施されてもよい。
【0051】
かかる第1面加工工程(STEP130(1))および第2面加工工程(STEP130(2))のメカニカルポリッシュ(高精度研削加工)処理によれば、切断研磨工程により得られた高い平坦性を有するトランスファレス切断面のいずれか一方を支持面(吸着面)として、残りの面に順次、メカニカルポリッシュ(高精度研削加工)を施していくことで、いわゆる転写を防止して高品質なSiCウェハを得ることができると共に、従来の遊離砥石加工、すなわち1次~4次の複数回のラップなど複雑な製造工程を大幅に簡略化することができる。
【0052】
より具体的には、砥石を替えて粗研削や複数回の仕上げ研削を行う必要がなく、例えば、♯30000以上の砥石により直接1回の研削加工により仕上げまで行うことができるため、簡易であるばかりでなく、SiCウェハ100から利用できる真性半導体層を大きく確保するすることができるという優位性がある。
【0053】
なお、第1面加工工程(STEP130(1))および第2面加工工程(STEP130(2))の高精度研削加工処理において、SiCウェハ100のサイズは、現在8インチまでであり、それぞれの口径のウェハはヘッドの面積に応じて、セットされ、(12インチまでが可能)高精度研削加工処理が行われる。
【0054】
以上が本実施形態のSiCウェハの製造方法の詳細である。以上、詳しく説明したように、かかる本実施形態のSiCウェハの製造方法および装置によれば、凹溝11および切断ガイドラインにより切断抵抗の少ない領域を積極的に形成しておくことでこれらが切断のガイドとなり、複数のワイヤー40で精度よく1回でSiCインゴット10をスライス状に切断することができる。
【0055】
次に、図5を参照して、切断ガイドラインの変更例について説明する。
具体的には、図5(a)に示すように、切断ガイドラインは、SiCインゴット10の端面に限らず、側面からレーザー光線を入射させることにより、図5(b)に切断予定面における断面図で示すように、切断予定面に同心円状に複数の切断ガイドラインを形成してもよい。例えば、SiCインゴット10を軸線回りに回転させることで、容易に同心円状の切断ガイドラインを形成することができる。
【0056】
そして、この場合にも、凹溝11に配置されワイヤー40は、切断中、周回しながら前進する際に、未切断領域の凹溝11に加えて、切断ガイドラインが切断抵抗の少ない領域となっており切断のガイドとなる。また、この場合にも、複数の同心円状の切断ガイドラインは、SiCインゴット10の中央部ほど密になっているため、図5(c)に示すように、ワイヤー40が弓なりになるのを防止してワイヤーを直線状に保持することができる。
【0057】
なお、上記実施形態において、切断ガイドラインは、ワイヤー40の進行方向に一致される場合や同心円状に形成される場合に限定されるものではない。切断ガイドラインは、ワイヤー40の進行方向を加味したものであればよく、例えば、ワイヤー40の切断終点を起点とし、ワイヤーの進退方向(この場合には後退方向)に放射状となる走査方向で切断ガイドラインを形成してもよい。
【0058】
この場合にもSiCインゴットの中央部が左右サイドに比べて切断ガイドラインが密になるため、切断抵抗の少ない領域を両サイドから中央部にかけて段階的に設けることになり、ワイヤー40が弓なりになるのを防止してワイヤーを直線状に保持することができる。
【0059】
もちろん、ワイヤー40の切断終点を起点にした放射状に代えてまたは加えて、切断始点を起点としてワイヤーの進退方向(この場合には進行方向)に放射状となる走査方向で切断ガイドラインを形成してもよい。
【0060】
このように、切断始点や切断終点を起点とする放射状の切断ガイドラインを設けることで、切断始点と切断終点での切断がほぼ切断抵抗のない状態で切断可能となり、これら切断始点と切断終点の切断仕上がりを格段に向上させることができる。
【0061】
さらに、本実施形態のガイドライン形成工程(STEP110/図1)は、ウェハの再生を目的としたバックサイド形成の薄膜加工に適用してもよい。
【0062】
また、本実施形態のSiCウェハの製造方法において、上述の一連の処理の後、必要に応じて、化学機械研磨(CMP)工程やウェハ洗浄工程が行われてもよい。
【0063】
さらに、本実施形態は、半導体結晶ウェハの製造方法として、SiCインゴットからSiCウェハを製造する場合について説明したが、半導体結晶は、SiCに限定されるものはなく、ガリヒソ、インジュウムリン、シリコン、その他の化合物半導体であってもよい。
【0064】
また、本実施形態では、溝加工工程(STEP100/図1)において、SiCインゴット10は、その両端面が一対の保護板15,15を介して保護された状態で回転自在に支持される場合について説明したが、これに限定されるものではない。例えば、一対の保護板15,15を省略して回転軸に直接SiCインゴット10を固定してもよい。
【0065】
さらに、溝加工工程(STEP100/図1)以外の工程、例えば、切断工程(STEP120/図1)においても、SiCインゴット10の両端面を一対の保護板15,15により保護した状態で加工処理を行うようにしてもよい。
【0066】
なお、本実施形態では、溝加工工程(STEP100/図1)において、共通の溝加工ドラム砥石20により、かかるSiCインゴット10に対して、側面全体に周回する複数の凹溝11を形成する場合について説明したが、STEP100の溝加工工程を省略し、凹溝11が形成されない場合であってもよい。
【0067】
また、本実施形態では、切断手段として、放電型のワイヤーソー装置である放電加工装置を例に説明したが、切断手段はこれに限定されるものではなく、放電機能のないワイヤーソー装置のほか、カッタ装置(放電機能を有する場合を含む)であってもよい。この場合、切断刃の形状は、円盤状のリングブレードのほか、弓鋸の鋸刃などであってもよい。
【0068】
さらに、本実施形態では、ガイドライン形成工程(STEP110/図1)で形成される切断ガイドラインとして、主に、切断方向に対応としては切断方向と一致した走査ラインを例に説明したが、切断方向に対応した走査ラインはこれに限定されるものではなく、切断方向と直交した走査ラインのほか、切断方向に対応させて走査ラインに疎密を設けてもよい。
【0069】
例えば、図6に示すように、切断手段(ワイヤーソー装置のワイヤー)の切断終点を起点とし、切断方向(ワイヤーの進行方向)へ向かう放射状の走査ラインの切断ガイドラインを形成してもよい。このように走査ラインを放射状とすることで、切断時に、例えば、切断抵抗の少ない領域を両サイドから中央部にかけて段階的に設けることになり、ワイヤーの中央部が切断領域において弓なりに送れることを防止することができると共に、最終切断部分が放射点のため(切断抵抗のない状態で切断可能となり)最終切断部分の仕上がりに優れる。
【0070】
なお、このような放射状の走査ラインは、切断手段(ワイヤーソー装置のワイヤー)の切断終点を起点とすることに加えてまたは代えて、切断始点を起点としてもよい。この場合には、切断始点部分が放射点のため(切断抵抗のない状態で切断可能となり)切断始点部分の仕上がりに優れる。
【符号の説明】
【0071】
1…SiC結晶(半導体結晶)、4…ワイヤーソー装置(放電加工装置)、10…SiCインゴット(半導体結晶インゴット)、11…凹溝、15,15…一対の保護板、20…溝加工ドラム砥石、21…凸部、40…ワイヤー、50…メカニカルポリッシュ装置(超高合成高精度研削加工装置)、51…スピンドル、52…プラテン、53…ダイアモンド砥石、54…真空ポーラスチャック(吸着プレート)、100…SiCウェハ(半導体結晶ウェハ)、110…一面、120…他面。
【要約】
【課題】本発明は、高品質な半導体結晶ウェハを簡易かつ確実に製造することができる半導体結晶ウェハの製造装置および製造方法を提供することを目的とする。
【解決手段】半導体結晶ウェハであるSiCウェハの製造方法は、溝加工工程(STEP100/図1)と、ガイドライン形成工程(STEP110/図1)と、切断工程(STEP120/図1)と、研削加工工程(STEP130/図1)とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6