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特許7429083デッキボード及び該デッキボードの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】デッキボード及び該デッキボードの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 5/04 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
B60R5/04 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2023543987
(86)(22)【出願日】2022-08-25
(86)【国際出願番号】 JP2022032098
(87)【国際公開番号】W WO2023027156
(87)【国際公開日】2023-03-02
【審査請求日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】P 2021139276
(32)【優先日】2021-08-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000133065
【氏名又は名称】株式会社タケヒロ
(74)【代理人】
【識別番号】100103207
【弁理士】
【氏名又は名称】尾崎 隆弘
(72)【発明者】
【氏名】小林 寿史
【審査官】久保田 信也
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-28565(JP,A)
【文献】実開平5-89167(JP,U)
【文献】特開2002-178411(JP,A)
【文献】特開2018-1987(JP,A)
【文献】特開2006-182208(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0343953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 5/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の荷室に配設されるデッキボードであって、
貫通孔が設けられた板状の発泡体及び前記発泡体の上下に配置された面材が一体化したボード部と、
前記面材の部分同士が一体化し、全部又は一部が前記貫通孔内に位置し、前記ボード部から延び出す第1延出部及び第2延出部と、を備え、
前記第1延出部は、前記第2延出部の仮想延長面と対向するように延び出しており、
前記第1延出部の先端が、前記第2延出部の先端よりも下方に位置し、
前記第1延出部と前記第2延出部との間に手指を差込み可能な開口が画定される、
ことを特徴とするデッキボード。
【請求項2】
前記第1延出部が、凹曲面と、該凹曲面と連続する先端面と、を有する請求項1に記載のデッキボード。
【請求項3】
前記開口の形状が、実質的に台形形状である請求項1又は2に記載のデッキボード。
【請求項4】
車両の荷室に配設されるデッキボードの製造方法であって、
貫通孔が設けられた板状の発泡体の上下に、面材を配置し、前記発泡体及び面材の積層体を得る積層工程と、
前記貫通孔に位置する面材の部分同士をプレスして、該面材の部分同士が一体化した面材一体化部を形成する第1プレス工程と、
前記面材一体化部に切り込みを設ける切り込み工程と、
前記切り込みに沿って前記面材一体化部の少なくとも一部を前記デッキボードの厚さ方向に凹ませ、手指を差込み可能な開口を形成する凹設工程と、
前記発泡体と、該発泡体の上下に位置する前記面材の部分をプレスして、該発泡体及び面材を一体化する第2プレス工程と、を備える、
ことを特徴とするデッキボードの製造方法。
【請求項5】
前記第1プレス工程、切り込み工程、凹設工程及び第2プレス工程を、同じプレス型で連続的に行う請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項6】
前記プレス型が、第1本体及び第1可動部を有する上型と、第2本体及び第2可動部を有する下型と、を備え、
前記第1可動部が、前記第1本体に対してプレス方向に相対的に移動可能であり、
前記第2可動部が、前記第2本体に対して前記プレス方向に相対的に移動可能である請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項7】
前記第1本体が、前記プレス方向に付勢する第1付勢機構が設けられた第1穴部を有し、
前記第1可動部が、前記第1付勢機構と連結し、前記第1穴部内を前記プレス方向に摺動可能であり、
前記第2本体が、前記プレス方向に付勢する第2付勢機構が設けられた第2穴部を有し、
前記第2可動部が、前記第2付勢機構と連結し、前記第2穴部内を前記プレス方向に摺動可能である請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項8】
前記第1本体が、前記下型に向かって突出し、前記第2可動部と対向して位置する第1凸部を有し、
前記第2本体が、前記上型に向かって突出し、前記第1可動部と対向して位置する第2凸部を有する請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項9】
前記第1プレス工程が、前記第1可動部と前記第2凸部とによる前記面材の部分同士のプレス、及び前記第2可動部と前記第1凸部とによる前記面材の部分同士のプレスを含む請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項10】
前記第1凸部が、前記下型と対向する面に、刃先が前記下型に向く第1刃を有し、
前記切り込み工程が、前記第1刃と前記第2凸部とにより前記面材一体化部をせん断することにより行われる請求項に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項11】
前記第1可動部が、前記下型と対向する面に、刃先が前記下型に向き、前記第1刃と前記第2凸部とによる面材一体化部のせん断を補助する第2刃を有する請求項10に記載のデッキボードの製造方法。
【請求項12】
前記凹設工程が、前記第1凸部及び第2可動部により行われる請求項11のいずれか1項に記載のデッキボードの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デッキボード及び該デッキボードの製造方法に関し、より詳細には、把手部材の取付けを必要としないデッキボード及び該デッキボードの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両の荷室において、床面の一部を凹設して収納部を形成したものが知られている。このような荷室においては、床面の上に取外し可能な板材(デッキボード)を配設することで、収納部にスペアタイヤや工具等を収納すること及びデッキボード上に荷物等を載置することが可能である。収納部に収納した物を取り出す際には、デッキボードを上方に持ち上げる操作が必要であり、この操作を容易に行うために、把手部材を取り付けたデッキボードが知られている。このようなデッキボードとして、例えば特許文献1及び2に記載のものがある。特許文献1に記載のデッキボードは、ウェビングベルトが取り付けられており、ウェビングベルトを把持することでデッキボードを上方へ持ち上げ、取り外すことが可能である。特許文献2に記載のデッキボードは、把持レバーが設けられており、把持レバーを把持することでデッキボードを上方へ持ち上げることが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004―314839
【文献】特開2014―83986
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1及び2に記載のデッキボードは、把手部材を取り付ける必要があるため、生産性が悪く、把手部材のコストも発生する。デッキボードを上下に貫通する差込み孔を設け、この差込み孔に手指を差し込むことで上方へ持ち上げ可能なデッキボードも知られているが、このような構成のデッキボードは、差込み孔の形成時に、切れ端が発生するため、切れ端の除去作業が必要であり、切れ端の処分費用も発生する。そこで、本発明は、生産性が良く、かつ、製造コストを削減したデッキボード及び該デッキボードの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、車両の荷室に配設されるデッキボードであって、貫通孔が設けられた板状の発泡体及び前記発泡体の上下に配置された面材が一体化したボード部と、前記面材の部分同士が一体化し、全部又は一部が前記貫通孔内に位置し、前記ボード部から延び出す第1延出部及び第2延出部と、を備え、前記第1延出部は、前記第2延出部の仮想延長面と対向するように延び出しており、前記第1延出部の先端が、前記第2延出部の先端よりも下方に位置し、前記第1延出部と前記第2延出部との間に手指を差込み可能な開口が画定される、ことを特徴とする。前記面材が熱可塑性樹脂を含むことが好ましく、この場合には前記発泡体との一体化が容易である。
【0006】
この構成によれば、前記開口に手指を差込み把持することにより、前記デッキボードを上方へ持ち上げることができるため、把手部材の取り付けを必要としない。そのため、生産性が良く、かつ、製造コストを削減することができる。この構成によれば、前記開口に差し込んだ手指を前記第2延出部に掛けることができるため、前記デッキボードを上方へ持ち上げる操作が容易である。「前記第2延出部の仮想延長面」とは、前記第2延出部を仮想的に面方向に延長した平面又は曲面を意味する。
【0008】
本発明は、前記第1延出部が、凹曲面と、該凹曲面と連続する先端面と、を有することが好ましい。この構成によれば、前記凹曲面及び先端面に沿って手指をガイドしながら前記開口に差し込むことができる。「凹曲面」とは、前記デッキボードの厚さ方向に凹んだ面を意味する。「先端面」とは、第1延出部の先端に位置する面を意味する。
【0009】
本発明は、前記開口の形状が、実質的に台形形状であることが好ましい。この構成によれば、前記開口に手指を差し込む操作が容易である。「実質的に台形形状」とは、厳密な台形の形状のみではなく、台形の側面の傾斜度が異なるもの、台形の角が丸くなっているもの、台形の辺が曲線に置き換わったもの等、台形に類似する形状も含む。
【0010】
本発明は、車両の荷室に配設されるデッキボードの製造方法であって、貫通孔が設けられた板状の発泡体の上下に、面材を配置し、前記発泡体及び面材の積層体を得る積層工程と、前記貫通孔に位置する面材の部分同士をプレスして、該面材の部分同士が一体化した面材一体化部を形成する第1プレス工程と、前記面材一体化部に切り込みを設ける切り込み工程と、前記切り込みに沿って前記面材一体化部の少なくとも一部を前記デッキボードの厚さ方向に凹ませ、手指を差込み可能な開口を形成する凹設工程と、前記発泡体と、該発泡体の上下に位置する前記面材の部分をプレスして、該発泡体及び面材を一体化する第2プレス工程と、を備える、ことを特徴とする。
【0011】
この構成によれば、前記開口に手指を差込み把持することにより、上方への持ち上げが可能な前記デッキボードを製造することができるため、該デッキボードへの把手部材の取り付けを必要としない。前記面材一体化部に切り込みを設け、該切り込みに沿って前記面材一体化部を凹設することにより前記開口を形成するため、前記デッキボードの製造時に前記面材一体化部の切れ端が発生しない。そのため、生産性が良く、かつ、製造コストを削減することができる。
【0012】
本発明は、前記第1プレス工程、切り込み工程、凹設工程及び第2プレス工程を、同じプレス型で連続的に行うことが好ましい。この構成によれば、前記第1プレス工程、切り込み工程、凹設工程及び第2プレス工程を簡便に行うことができる。
【0013】
本発明は、前記プレス型が、第1本体及び第1可動部を有する上型と、第2本体及び第2可動部を有する下型と、を備え、前記第1可動部が、前記第1本体に対してプレス方向に相対的に移動可能であり、前記第2可動部が、前記第2本体に対して前記プレス方向に相対的に移動可能であることが好ましい。この構成によれば、前記各工程をより安定して行うことができる。「プレス方向」とは、プレスをする際に前記上型と前記下型とが近接する方向及びその反対方向を意味する。
【0014】
本発明は、前記第1本体が、前記プレス方向に付勢する第1付勢機構が設けられた第1穴部を有し、前記第1可動部が、前記第1付勢機構と連結し、前記第1穴部内を前記プレス方向に摺動可能であり、前記第2本体が、前記プレス方向に付勢する第2付勢機構が設けられた第2穴部を有し、前記第2可動部が、前記第2付勢機構と連結し、前記第2穴部内を前記プレス方向に摺動可能であることが好ましい。この構成によれば、前記第1位置付勢機構及び第2付勢機構が、それぞれ前記第1可動部及び第2可動部を前記プレス方向に移動させることができる。前記第1付勢機構は、連結した前記第1可動部の第1穴部内の位置に応じて、前記下型に向く方向に前記第1可動部を付勢する機構である。前記第2付勢機構は、連結した前記第2可動部の第2穴部内の位置に応じて、前記上型に向く方向に前記第2可動部を付勢する機構である。前記第1付勢機構及び第2付勢機構としては、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータやコイルばね等の弾性材料を採用可能である。前記第1付勢機構と前記第2付勢機構とは、個別に独立して動作してもよく、或いは互いに連動して動作してもよい。
【0015】
本発明は、前記第1本体が、前記下型に向かって突出し、前記第2可動部と対向して位置する第1凸部を有し、前記第2本体が、前記上型に向かって突出し、前記第1可動部と対向して位置する第2凸部を有することが好ましい。この構成によれば、前記第1プレス工程、切り込み工程、凹設工程及び第2プレス工程をより安定して行うことができる。
【0016】
本発明は、前記第1プレス工程が、前記第1可動部と前記第2凸部とによる前記面材の部分同士のプレス、及び前記第2可動部と前記第1凸部とによる前記面材の部分同士のプレスを含むことが好ましい。この構成によれば、前記第1プレス工程をより安定して行うことができる。
【0017】
本発明は、前記第1凸部が、前記下型と対向する面に、刃先が前記下型に向く第1刃を有し、前記切り込み工程が、前記第1刃と前記第2凸部とにより前記面材一体化部をせん断することにより行われることが好ましい。この構成によれば、前記切り込み工程をより安定して行うことができる。
【0018】
本発明は、前記第1可動部が、前記下型と対向する面に、刃先が前記下型に向き、前記第1刃と前記第2凸部とによる面材一体化部のせん断を補助する第2刃を有することが好ましい。この構成によれば、前記切り込み工程をより安定して行うことができる。
【0019】
本発明は、前記凹設工程が、前記第1凸部及び第2可動部により行われることが好ましい。この構成によれば、前記凹設工程をより安定して行うことができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、把手部材の取り付けを必要とせず、製造時に切れ端を発生しないため、生産性が良く、製造コストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明実施形態のデッキボードの斜視図である。
図2】同、II-II切断部端面図である。
図3】同、III-III線断面図である。
図4】本発明実施形態のプレス型の要部を示す部分断面図である。
図5】本発明実施形態のデッキボードの製造方法おける積層工程を示す部分断面図であり、(a)は下型の上への面材の載置、(b)は面材の上への発泡体の積層、(c)は発泡体の上への他の面材の積層、(d)は積層工程終了時の状態を示す。
図6】本発明実施形態のデッキボードの製造方法おけるプレス型の要部の動きを示す部分断面図であり、(a)は積層工程終了時(プレス開始前)、(b)は第1プレス工程開始時、(c)は第1プレス工程及びせん断工程終了時、(d)は凹設工程途中、(e)は凹設工程及び第2プレス工程終了時(プレス終了時)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[デッキボード]
本実施形態のデッキボード1を、図1図3を参照して説明する。デッキボード1は、貫通孔2が設けられた板状の発泡体3及び発泡体3の上下に配置された面材4が一体化したボード部11と、面材4の部分同士が一体化し、その一部が貫通孔2内に位置し、ボード部11から延び出す第1延出部12及び第2延出部13から成る面材一体化部14と、を備える。第1延出部12と第2延出部13との間には、手指を差込み可能な開口15が画定されているため、開口15に手指を差込み把持することにより、デッキボード1を上方へ持ち上げることができる。これにより、デッキボード1は、上方へ持ち上げるための把手部材の取り付けを必要としない。本実施形態のデッキボード1の形状は平面視で実質的に矩形であるが、これに限定されず、配置する車両の荷室の形状に応じたものを採用することができる。
【0023】
発泡体3は、内部に気泡が分散した熱可塑性樹脂製の板状体であり、その厚さ方向に貫通孔2が設けられている。貫通孔2の形状は、平面視で実質的に矩形である。発泡体3の厚さは、5mm~30mmであることが好ましい。厚さを5mmよりも大きくすることにより、上部に荷物等を載置するために十分な強度をデッキボード1に付与することができ、30mmよりも小さくすることにより、デッキボード1により荷室の容積が減少しすぎることを防止できる。発泡体3の材質は、公知の熱可塑性樹脂を採用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。発泡体3に設けられる貫通孔2の数は、特に限定されず、1つであっても複数であってもよい。貫通孔2の平面視の形状は、特に限定されず、矩形、円形、楕円形、長円形、多角形等を採用することができる。貫通孔2の大きさは、貫通孔2の内部に手指を差込み可能な開口15を形成可能な大きさであれば特に限定されない。
【0024】
面材4は、熱可塑性樹脂及び繊維性材料を含むシート状の部材である。面材4の厚さは発泡体3の厚さよりも小さく、1mm~3mmであることが好ましい。厚さを1mmよりも大きくすることにより、開口15に手指を差し込んでデッキボード1を持ち上げるために十分な強度を面材一体化部14に付与することができる。面材4が含む熱可塑性樹脂は、公知の熱可塑性樹脂を採用でき、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン等が挙げられる。面材4が含む繊維性材料は、公知の無機繊維、有機繊維、又はこれらの両方を採用でき、例えば無機繊維としてはガラス繊維、炭素繊維、金属繊維、鉱物繊維等が挙げられ、有機繊維としては、植物繊維、動物繊維、合成繊維等が挙げられる。
【0025】
ボード部11は、発泡体3の表面に配置された面材4が密着して、発泡体3と面材4とが一体化し、発泡体3の外面を面材4で被覆した部分である。ボード部11の上に荷物等を載置することができる。
【0026】
面材一体化部14は、ボード部11から延び出す面材4同士が二層に密着して一体化した部分であり、ボード部11から貫通孔2内に延び出す第1延出部12と第2延出部13から成る部分である。第1延出部12は、デッキボード1の厚さ方向Y1に凹んだ面である凹曲面12aと(凹直面でもよい)、凹曲面12aと連続する先端面12bと、を有している。第1延出部12は、第2延出部13の仮想延長面IPと上下方向に対向するように延び出しており、第1延出部12の先端面12b及び第2延出部13が、デッキボード1の厚さ方向Y1と実質的に直交するように設けられている(図2参照)。第1延出部12の先端12cが、第2延出部13の先端13aよりも下方に位置しており、2つの先端12c、13a及び凹曲面12aにより開口15が画定されている。2つの先端12c及び13aは、それぞれの上部が丸みを帯びており、開口15に手指を差し込む際の安全性を高める形状である。発泡体3に複数の貫通孔2が設けられている場合には、それぞれの貫通孔2に面材一体化部14が設けられる。本実施形態の第1延出部12の先端面12bは、厚さ方向Y1と実質的に直交するように設けられているが、これに限定されず、例えば先端面12bが凹曲面12aから斜め下方向又は斜め上方向に延在するように設けられたものであってもよい。第1延出部12の先端面12bと同様に、第2延出部13も、厚さ方向Y1と実質的に直交するように設けられることに限定されない。先端12cの辺と先端13aの辺とが平面視で重なるように位置しているが、これに限定されない。
【0027】
開口15は、2つの先端12c、13a及び凹曲面12aにより画定され、デッキボード1の厚さ方向Y1に拡がっている(図2及び図3参照)。開口15の形状は、先端12cの辺と先端13aの辺とが互いに平行な実質的に台形形状である(図3参照)。開口15の形状としては、特に限定されず、矩形、円形、楕円形、長円形、多角形等も採用可能である。開口15の大きさは、貫通孔2内に形成可能な範囲であれば特に限定されず、開口15に手指を差込み可能であればよい。
【0028】
第1延出部12、第2延出部13及び開口15が上記のような形状や構造であることにより、凹曲面12a及び先端面12bに沿って手指を開口15に差し込み、差し込んだ手指を第2延出部13に掛けることができるため、デッキボード1を容易に上方へ持ち上げることが可能である。
【0029】
本実施形態のデッキボード1は、以下の効果を奏する。開口15に手指を差込み把持することにより、デッキボード1を上方へ持ち上げることができるため、デッキボード1への把手部材の取り付けを必要としない。そのため、デッキボード1は生産性が良く、かつ、製造コストを削減することができる。第1延出部12の先端12cが、第2延出部13の先端13aよりも下方に位置しているため、開口15に差し込んだ手指を第2延出部13に掛けることができる。第1延出部12が凹曲面12a及び先端面12bを有するため、これらの面に沿って手指をガイドしながら開口15に差し込むことができる。このため、デッキボード1の下に収納された工具等の収納物に手指がひっかかったりすることなく、手指を円滑に開口15に差し込むことができる。開口15が、厚さ方向Y1に拡がった、実質的に台形形状であるため、開口15への手指の差込みが容易である。
【0030】
[デッキボードの製造方法]
本実施形態のデッキボード1の製造方法では、プレス型5を使用する。プレス型5について図4を参照して説明する。図4は、面材一体化部14を形成するプレス型5の要部を示す部分断面図である。プレス型5は、第1本体61及び第1可動部62を有する上型6と、第2本体71及び第2可動部72を有する下型7と、を備えている。
【0031】
第1本体61は、プレス方向Y2に付勢する第1付勢機構63が設けられた第1穴部64と、第1穴部64の横壁となる第1凸部65と、を有している。第1穴部64は、下型7に向かって開口した縦穴が設けられた部分であり、第1可動部62が嵌合する領域である第1嵌合領域Aと、第1付勢機構63が設けられる領域である第1設置領域Bとを有している。第1付勢機構63は、第1可動部62が連結され、プレス方向Y2に移動可能な先端部63aを有している。第1付勢機構63は、先端部63aに連結したものを図4の下方向に付勢する。第1付勢機構63の付勢により、第1可動部62が第1穴部64をプレス方向Y2に沿って摺動するようになっている。第1付勢機構63としては、例えば、油圧シリンダ等のアクチュエータやコイルばね等の弾性材料が採用可能である。
【0032】
第1凸部65は、下型7に向かって突出し、第2可動部72と対向しており、第1穴部64と連続して設けられている。このため、第1凸部65の側壁65aと、第1穴部64の第1嵌合領域Aにおける側壁64aと、が同一平面上に連続している。第1凸部65は、下型7と対向する面の側壁65a側の端部に、刃先が下型7に向き、第1凸部65の側壁65aと連続する側壁66aを含む第1刃66を有している(図4円内参照)。プレスを行う際に、第1刃66の側壁66aと、後述する第2凸部75の側壁75aと、が摺動する構成であるため、第1刃66と第2凸部75とにより、プレスと同時にせん断することができる。
【0033】
第1可動部62は、第1付勢機構63の先端部63aと連結された状態で、第1嵌合領域A内でプレス方向Y2に第1穴部64と摺動することにより、第1本体61に対してプレス方向Y2に相対的に移動可能なように上型6に設けられている。第1凸部65の側壁65aと、第1嵌合領域Aの側壁64aと、が同一平面上に連続しているため、第1可動部62の第1嵌合領域A内に位置する側壁62aは側壁64aと摺動し、第1可動部62の第1嵌合領域A外に位置する側壁62aは側壁65aと摺動する。
【0034】
第1可動部62は、下型7と対向する面の第1凸部65の側壁65aと摺動する側の端部に、刃先が下型7に向き、第1可動部62の側壁62aと連続し、第1刃66の側壁66a及び第1凸部65の側壁65aと縦方向に摺動する側壁67aを含み、第1刃66と第2凸部75とによる面材一体化部14のせん断を補助する第2刃67を有している(図4円内参照)。これにより、第1刃66と、第2凸部75とによるせん断をより安定して行うことが可能である。
【0035】
第1可動部62は、先端部63aに接続されているため、第1付勢機構63により、先端部63aを介して図4の下方向に付勢される。第1可動部62は、プレス方向Y2に力を受けていない状態では、第2刃67の刃先と第1刃66の刃先とが合うように位置する(図4参照)。
【0036】
第2本体71は、プレス方向Y2に付勢する第2付勢機構73が設けられた第2穴部74と、第2凸部75と、を有している。第2穴部74は、上型6に向かって開口した縦穴が設けられた部分であり、第2可動部72が嵌合する領域である第2嵌合領域Cと、第2付勢機構73が設けられる領域である第2設置領域Dとを有している。第2付勢機構73は、第2可動部72が連結され、プレス方向Y2に移動可能な先端部73aを有している。第2付勢機構73は、第1付勢機構63と同様に、先端部73aに連結したものを図4の上方向に付勢する。第2付勢機構73の付勢により、第2可動部72が第2穴部74をプレス方向Y2に沿って摺動するようになっている。第2付勢機構73は、第1付勢機構63と連動して動作してもよく、独立して動作してもよい。連動して動作する場合には、第1付勢機構63及び第2付勢機構73が、それぞれ第1可動部62及び第2可動部72を付勢するための力の大きさを対応させることにより連動させてもよく、それぞれの先端部63a及び先端部73aのプレス方向Y2における移動距離を対応させることにより連動させてもよい。第2付勢機構73としては、第1付勢機構63の場合と同様に、油圧シリンダ等のアクチュエータやコイルばね等の弾性材料が採用可能である。
【0037】
第2凸部75は、上型6に向かって突出し、第1可動部62と対向しており、プレスをする際に、第2凸部75の側壁75aと、第1刃66の側壁66a及び第1凸部65の側壁65aと、が摺動するように設けられている。このような構成であるため、第1刃66と第2凸部75とにより、プレスと同時にせん断することができる。
【0038】
第2凸部75と第2穴部74とは、第1刃66の幅と実質的に同幅の隙間76をあけて設けられている。隙間76により、せん断の際に第1刃66に加わる力を低減し、より安定してせん断を行うことができる。
【0039】
第2可動部72は、第2付勢機構73の先端部73aと連結された状態で、第2穴部74の第2嵌合領域C内をプレス方向Y2に摺動することにより、第2本体71に対してプレス方向Y2に相対的に移動可能なように下型7に設けられている。
【0040】
第2可動部72は、先端部73aに接続されているため、第2付勢機構73により、先端部73aを介して図4の上方向に付勢される。第2可動部72は、プレス方向Y2に力を受けていない状態では、第2可動部72及び第2凸部75の上型6と対向するそれぞれの面の位置が実質的に水平となるように位置する(図4参照)。
【0041】
プレス型5を使用したプレスによるデッキボード1の製造方法について図4図6を参照して説明する。この製造方法は、貫通孔2が設けられた板状の発泡体3の上下に、面材4を配置し、発泡体3及び面材4の積層体16を得る積層工程S1(図5参照)と、貫通孔2に位置する面材4の部分同士をプレスして、面材4の部分同士が一体化した面材一体化部14を形成する第1プレス工程S2(図6(a)~(c)参照)と、面材一体化部14に切り込みを設ける切り込み工程S3(図6(c)参照)と、切り込み工程S3において設けられた切り込みに沿って面材一体化部14の少なくとも一部を厚さ方向Y1に凹ませ、手指を差込み可能な開口15を形成する凹設工程S4と(図6(c)~(e)参照)、発泡体3と、発泡体3の上下に位置する面材4の部分をプレスして、発泡体3及び面材4を一体化する第2プレス工程S5(図6(e)参照)と、を備える。第1プレス工程S2、切り込み工程S3、凹設工程S4及び第2プレス工程S5は、プレス型5により、連続的に行うことができる。
【0042】
貫通孔2が設けられた板状の発泡体3の上下に、面材4を配置し、発泡体3及び面材4の積層体16を得る積層工程S1を行う。この工程は、図5に示す通り、プレス装置(図示略)に設置した下型7の上部に面材4を載置し(図5(a)参照)、その上に発泡体3の貫通孔2と、下型7の第2可動部72及び第2凸部75とが平面視において重なるように発泡体3を配置し(図5(b)参照)、さらにその上に別の面材4を配置することにより行う(図5(c)参照)。これにより積層体16が下型7の上部に得られる(図5(d)参照)ため、得られた積層体16を移動させることなく、続く工程S2~S5を行うことが可能である。
【0043】
プレス型5内に配置された積層体16に対して、発泡体3の貫通孔2に位置する面材4の部分同士を第1可動部62と第2凸部75とにより、及び第2可動部72と第1凸部65とによりプレスして、面材4の部分同士が一体化した面材一体化部14を形成する第1プレス工程S2を行う。図4及び図6に示す通り、第1可動部62と第2凸部75との間、及び第2可動部72と第1凸部65との間が、他の部分の上型6と下型7との間よりも狭いため、プレス型5を使用してプレスする際には、第1可動部62と第2凸部75との間に位置する部分、及び第2可動部72と第1凸部65との間に位置する部分が他の部分よりも先にプレスされる(図6(a)~(c)参照)。このため、プレス型5を使用したプレスでは、第1プレス工程S2が初めに行われる。プレス開始時において、第2刃67の刃先と第1刃66の刃先とが合うように位置し、第2可動部72は、第2可動部72及び第2凸部75の上型6と対向するそれぞれの面の位置が実質的に水平となるように位置する(図6(a)参照)。
【0044】
第1刃66と第2凸部75とにより面材一体化部14をせん断することによりに切り込みを設ける切り込み工程S3を行う。このせん断により、第2延出部13が形成される。図4及び図6に示す通り、プレス型5の第1凸部65が第1刃66を有しているため、本実施形態では第1プレス工程S2において面材一体化部14を形成すると同時に面材一体化部14がせん断される。したがって、切り込み工程S3は、第1プレス工程S2と同時に完了する(図6(c)参照)。第1可動部62が第2刃67を有していることにより、第1刃66と第2凸部75とにより面材一体化部14をせん断する際に第1刃66に加わる力を軽減することができるため、面材一体化部14のせん断を安定して行うことができる。
【0045】
第1凸部65及び第2可動部72により、切り込みに沿って面材一体化部14の一部をデッキボード1の厚さ方向Y1(プレス方向Y2と同方向)に凹ませ、手指を差込み可能な開口15を形成する凹設工程S4を行う。凹設工程S4は、切り込み工程S3からさらにプレスを進行させることにより行われる。切り込み工程S3の完了時からさらにプレスが進行すると第2可動部72が付勢機構73から図6の上方向に付勢されながら第2穴部74内で摺動するため、第1凸部65と第2可動部72とにより挟まれた面材一体化部14の一部は、押さえつけられた状態で厚さ方向Y1に凹設される(図6(c)~(e)参照)。この凹設により、第1延出部12が形成され、その結果、第1延出部12と第2延出部13との間に手指を差込み可能な開口15が形成される(図6(e)参照)。したがって、開口15を形成する際に、面材一体化部14の一部を切り取る必要がなく、切れ端が発生しないため、切れ端の除去作業や切れ端の処分費用が不要であり、生産性が良く、製造コストを削減することができる。凹設工程S4において、第2可動部72と第1凸部65とにより挟んで押さえつけた状態で厚さ方向Y1に凹設することにより、第1延出部12を形成するため、凹設工程S4を安定して行うことができる。第1可動部62が付勢機構63から図6の下方向に付勢されるため、凹設工程S4では、第1可動部62と第2凸部75との間に位置する第2延出部13は、第1可動部62と第2凸部75とにより挟まれて押さえつけられた状態である。
【0046】
発泡体3と、発泡体3の上下に位置する面材4の部分をプレスして、発泡体3及び面材4を一体化する第2プレス工程S5を行う。この工程により、積層体16の全体が一体化され、デッキボード1が完成する。本実施形態では、プレス型5を使用するため第2プレス工程S5は、凹設工程S4と同時に完了する(図6(e)参照)。プレス完了時において、第1可動部62及び第2可動部72は、それぞれ第1嵌合領域A及び第2嵌合領域Cに嵌合するように位置する。
【0047】
本実施形態のデッキボード1の製造方法は、以下の効果を奏する。面材一体化部14の切れ端が発生しないため、生産性が良く、かつ、製造コストを削減することができる。プレス型5により、各工程S2~S5を連続的に行うことができる。第1可動部62が第2刃67を有していることにより、面材一体化部14のせん断を安定して行うことができる。第1延出部12が第2可動部72と第1凸部65とにより挟まれて押さえつけられた状態で厚さ方向Y1に凹設されるため、凹設工程S4を安定して行うことができる。
【0048】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求の範囲に記載された本発明の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。例えば、本実施形態では、プレス型5を用いて上記工程S2~S5を連続的に行うが、複数のプレス型を用いて別々に行ってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1・・・デッキボード
11・・・ボード部
12・・・第1延出部
12a・・・凹曲面
12b・・・先端面
12c・・・先端
13・・・第2延出部
13a・・・先端
14・・・面材一体化部
15・・・開口
16・・・積層体
2・・・貫通孔
3・・・発泡体
4・・・面材
5・・・プレス型
6・・・上型
61・・・第1本体
62・・・第1可動部
62a・・・側壁
63・・・第1付勢機構
63a・・・先端部
64・・・第1穴部
64a・・・側壁
65・・・第1凸部
65a・・・側壁
66・・・第1刃
66a・・・側壁
67・・・第2刃
67a・・・側壁
7・・・下型
71・・・第2本体
72・・・第2可動部
73・・・第2付勢機構
73a・・・先端部
74・・・第2穴部
75・・・第2凸部
75a・・・側壁
76・・・隙間
S1・・・積層工程
S2・・・第1プレス工程
S3・・・切り込み工程
S4・・・凹設工程
S5・・・第2プレス工程
A・・・第1嵌合領域
B・・・第1設置領域
C・・・第2嵌合領域
D・・・第2設置領域
IP・・・仮想延長面
Y1・・・厚さ方向
Y2・・・プレス方向
図1
図2
図3
図4
図5
図6