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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】導光板
(51)【国際特許分類】
   C03C 3/091 20060101AFI20240131BHJP
   C03C 3/089 20060101ALI20240131BHJP
   C03C 17/04 20060101ALI20240131BHJP
   F21S 2/00 20160101ALI20240131BHJP
【FI】
C03C3/091
C03C3/089
C03C17/04 Z
F21S2/00 432
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018074488
(22)【出願日】2018-04-09
(65)【公開番号】P2019182700
(43)【公開日】2019-10-24
【審査請求日】2021-03-03
【審判番号】
【審判請求日】2022-11-22
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 昌宏
【合議体】
【審判長】日比野 隆治
【審判官】宮澤 尚之
【審判官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-43530(JP,A)
【文献】国際公開第2016/031345(WO,A1)
【文献】特開2017-52687(JP,A)
【文献】特開2007-126298(JP,A)
【文献】特開2011-225418(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C1/00-14/00
F21S2/00
F21Y105/00
F21Y115/10
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともガラス板を有する導光板であって、
該ガラス板が、ガラス組成として、質量%で、SiO 55~80%、Al 0~15%、B 1~20%、LiO 0~5%、LiO+NaO+KO 5.8~13%、MgO+CaO+SrO+BaO 0.1~10%、SnO 0~0.5%、Sb 0~0.5%、Fe 0~0.005%を含有し、質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が0.18以下であり、
該ガラス板の光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率が80%以上であることを特徴とする導光板。
【請求項2】
ガラス板中のCrの含有量が5質量ppm以下、TiOの含有量が50質量ppm以下、Ptの含有量が5質量ppm以下、Rhの含有量が5質量ppm以下であることを特徴とする請求項1に記載の導光板。
【請求項3】
ガラス板の塩基性度が0.54以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の導光板。
【請求項4】
ガラス板の光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率が85%以上であり、且つ該最高透過率と該最低透過率の差が10%以下であることを特徴とする請求項1~3の何れかに記載の導光板。
【請求項5】
ガラス板の少なくとも一方の表面上に、ドット模様が形成されていることを特徴とする請求項1~4の何れかに記載の導光板。
【請求項6】
エッジライト型面発光装置に用いることを特徴とする請求項1~5の何れかに記載の導光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導光板に関し、特にエッジライト型面発光装置に好適な導光板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶テレビ等に液晶表示装置が用いられている。液晶表示装置は、面発光装置と、この面発光装置の光出射面側に配置される液晶パネルとを備えている。面発光装置として、例えば、直下型とエッジライト型が知られている。
【0003】
直下型面発光装置では、光源が、光出射面に対して反対側となる背面に配置される。そして、光源として、発光ダイオード(Light Emitting Diode)等の点光源を用いる場合、明るさを補うために、多数のLEDチップが必要になり、輝度のばらつきが非常に大きくなる。
【0004】
このような事情から、現在では、エッジライト型面発光装置が主流になっている。エッジライト型面発光装置では、LED等の光源と、導光板と、反射板(又は反射膜)等とを備えている。光源は、光出射面に対して直交方向となる側面に配置される。導光板は、光源からの光を全反射により内部に伝播し、面状に出射させるために配置される。導光板として、一般的には、アクリル樹脂等の樹脂板が使用されているが、最近では、低膨張のガラス板が導光板として使用されつつある(特許文献1~4参照)。反射板は、光出射面とその反対側の光反射面に配置されると共に、光反射面に抜けた光を反射させて、液晶パネル等の表示面を発光させるために配置される。なお、液晶パネル等の表示面を均一に発光させるために、導光板の光出射面側に、拡散板(拡散膜)が配置される場合もある。
【0005】
図1は、エッジライト型面発光装置1の一例を示す断面概念図である。エッジライト型面発光装置1は、LED等の光源2と、導光板3と、反射板4と、拡散板5とを備えている。光源2からの光は、導光板3の端面から入射し、導光板3の内部に伝搬する。光反射面6に達した光は、反射板4により反射し、光出射面7の方に進み、拡散板5により拡散する。結果として、拡散板5の上方に配置された液晶パネル等の表示面を均一に発光させることが可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2012-123933号公報
【文献】特開2012-138345号公報
【文献】特開2012-216523号公報
【文献】特開2012-216528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、樹脂板の代わりに、ガラス板を導光板に用いると、表示パネルと導光板の寸法変化の差が小さくなるため、液晶表示装置の額縁部分に大きな空隙を設ける必要性がなくなり、結果として液晶表示装置等の表示装置を狭額縁化することができる(特許文献1~4参照)。
【0008】
しかし、ガラス板は、可視域(波長380~750nm)において光を吸収して、輝度の低下を招くという問題がある。
【0009】
光吸収の主な要因は、ガラス中に含まれるFeである。そして、Feは、導入原料から不可避的に混入する不純物である。よって、ガラス組成中からFeを除去することは容易ではない。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は、ガラス板を使用した場合でも、可視域で輝度が低下し難い導光板を創案することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、MgOとCaOの導入原料に不純物としてFeが多く含まれることを突き止めると共に、アルカリ金属酸化物とアルカリ土類金属酸化物の中で、MgOとCaOの含有比率を低減することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の導光板は、少なくともガラス板を有する導光板であって、該ガラス板が、ガラス組成として、質量%で、SiO 55~80%、Al 0~15%、B 1~20%、LiO+NaO+KO 1~20%、MgO+CaO+SrO+BaO 0.1~10%、SnO 0~0.5%、Sb 0~0.5%、Fe 0~0.005%(50質量ppm以下)を含有し、質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が0.40未満であることを特徴とする。ここで、「LiO+NaO+KO」は、LiO、NaO及びKOの合量を指す。「MgO+CaO+SrO+BaO」は、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量を指す。「(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)」は、MgOとCaOの合量をLiO、NaO、KO、MgO、CaO、SrO及びBaOの合量で除した値を指す。
【0012】
本発明の導光板は、少なくともガラス板を有する。樹脂板の代わりに、ガラス板を導光板に用いると、表示パネルと導光板の寸法変化の差が小さくなるため、液晶表示装置の額縁部分に大きな空隙を設ける必要性がなくなり、結果として液晶表示装置等の表示装置を狭額縁化することができる。
【0013】
また、本発明の導光板において、ガラス板の質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)は0.40未満である。このようにすれば、Fe不純物が混入し難くなるため、表示装置の輝度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の導光板では、ガラス板中のFeの含有量が50質量ppm以下である。このようにすれば、ガラス板の光路長200mm、可視域での最高透過率を高めることができる。Feは、ガラス中でFe3+又はFe2+の状態で存在する。Fe3+は、波長380nm付近に吸収ピークを持ち、紫外域、短波長側の可視域の透過率を低下させる。Fe2+は、波長1080nm付近に吸収ピークを持ち、長波長側の可視域の透過率を低下させる。よって、Feの含有量が多くなると、可視域の最高透過率が低下し易くなる。そこで、ガラス板中のFeの含有量を50質量ppm以下に規制すると、表示装置の輝度を高めることができる。なお、本発明でいう「Fe」は、2価の酸化鉄と3価の酸化鉄を含み、2価の酸化鉄は、Feに換算して、取り扱うものとする。他の多価酸化物についても、同様にして、表記の酸化物を基準にして取り扱うものとする。
【0015】
また、本発明の導光板は、ガラス板中のCrの含有量が5質量ppm以下、TiOの含有量が50質量ppm以下、Ptの含有量が5質量ppm以下、Rhの含有量が5質量ppm以下であることが好ましい。このようにすれば、可視域の透過率を高めることができる。
【0016】
また、本発明の導光板は、ガラス板の塩基性度が0.54以下であることが好ましい。導光板の光散乱性を高めるために、ガラス板の何れかの表面(通常、光出射面と対向する表面)にドット模様が形成されるが、このドット模様は、紫外線の照射により形成されることがある。しかし、ガラス板に紫外線が照射されると、ガラス板が着色して、可視域の透過率が低下してしまう。可視域の透過率が低下すると、光源からの光が端面から入射して光出射面に抜ける際に、光量が減殺される。結果として、表示装置の輝度が低下し易くなる。本発明者の調査によると、ガラス板の塩基性度が高くなると、ガラスネットワーク中の非架橋酸素数が多くなり、着色中心が多い状態となる。結果として、紫外線照射によりガラス板が着色し易くなり、可視域の透過率が低下し易くなる。そこで、本発明の導光板では、ガラス板の塩基性度を0.54以下に規制することが好ましい。これにより、紫外線を照射しても、可視域の透過率が低下し難くなる。ここで、「塩基性度」は、ガラス中の酸素原子の電子供与性を示す指標であり、ガラス中の酸化物イオンの平均的なルイス塩基性度を評価する指標となる。具体的には、下記数式1で算出される値である。なお、下記数式1において、Λは塩基性度、cは化合物iが持ち込む酸素の割合、Zはカチオンの原子価、rは酸素1個当たりで表現した時のカチオンの数(化合物iのカチオンと酸素のモル比)、γはbasicity moderating powerと呼ばれるパラメーターでカチオンの電気陰性度χにより決定されるものである。
【0017】
【数1】
【0018】
ガラス板の塩基性度を低下させるには、例えば、SiO、Al、B等の網目形成酸化物を増量し、MgO、CaO、SrO、BaO、ZnO、LiO、NaO、KO等の網目修飾酸化物の含有量を減量すればよい。
【0019】
図2は、塩基性度と紫外線照射前後の可視域での平均透過率の差(光路長2mm、波長範囲400~750nmにおける平均透過率と、出力0.1mW、波長185nmの紫外線、出力13.3mW、波長254nmの紫外線及び0.4mW、波長365nmの紫外線を同時に12時間照射した後の光路長2mm、波長範囲400~750nmにおける平均透過率との差)との関係を示したグラフである。図2から分かるように、塩基性度が低くなると、紫外線照射前後の可視域での平均透過率差が小さくなる。
【0020】
また、本発明の導光板は、ガラス板の光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率が85%以上であり、ガラス板の光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率が80%以上であり、且つ該最高透過率と該最低透過率の差が10%以下であることが好ましい。ここで、「透過率」は、市販の透過率測定装置で測定可能であり、例えば、島津製作所社製UV-3100PCにより測定可能であり、特段の明示がない限り、数式2により算出される内部透過率を指す。
【0021】
【数2】
【0022】
また、本発明の導光板は、ガラス板の少なくとも一方の表面上に、ドット模様が形成されていることが好ましい。
【0023】
また、本発明の導光板は、エッジライト型面発光装置に用いることが好ましい。
【0024】
図3は、本発明の導光板の一例を示す概念斜視図である。図3に示すように、導光板10は、ガラス板11を備えている。光源12からの光は、ガラス板11の端面13から入射して、ガラス板11の内部を伝搬して、光出射面から出射することになる。また、ガラス板11の光反射面14には、ドット模様15が形成されている。そして、ドット模様15のドットの直径は、端面13から端面16に向かうに従って、漸次大きくなっている。このドット模様15により、光出射面から出射する光が面内で均一化される。更に、ガラス板の端面16、17、18には、反射層19がそれぞれ形成されている。そして、ガラス板の端面16、17、18に到達した光は、反射層19により反射されて、ガラス板11の内部に戻り、最終的には光出射面から出射することになる。
【0025】
また本発明のガラス板11を複数枚接合して使用することも可能である。例えば、ガラス板11を2枚準備し、一方のガラス板11の端面17に反射層を形成せず、また他方のガラス板11の端面18に反射層を形成せず、両者の反射層を形成していない端面同士を屈折率が整合した透明接着剤で接合することによって、大面積の導光板を作製することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】エッジライト型面発光装置の一例を示す断面概念図である。
図2】塩基性度と紫外線照射前後の可視域での平均透過率の差との関係を示したグラフである。
図3】本発明の導光板の一例を示す概念斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明の導光板において、ガラス板は、ガラス組成として、質量%で、SiO 55~80%、Al 0~15%、B 1~20%、LiO+NaO+KO 1~20%、MgO+CaO+SrO+BaO 0.1~10%、SnO 0~0.5%、Sb 0~0.5%、Fe 0~0.005%(50質量ppm以下)を含有し、質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が0.40未満であることを特徴とする。上記のように各成分の含有量を規制した理由を下記に示す。なお、各成分の含有範囲の説明において、%表示は質量%を意味する。
【0028】
SiOは、ガラスのネットワークフォーマーとなる成分であり、熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。また耐酸性、歪点を高める成分である。SiOの含有量は55~80%であり、好ましくは58~78%、60~75%、62~74%、特に64~72%である。SiOの含有量が少なくなると、塩基性度が上昇し易くなると共に、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また耐酸性、歪点が低下し易くなる。一方、SiOの含有量が多くなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下すると共に、成形時にクリストバライトの失透ブツが析出し易くなる。
【0029】
Alは、熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。また歪点を高めたり、成形時にクリストバライトの失透ブツの析出を抑える効果もある。Alの含有量は0~15%であり、好ましくは0.1~13%、1~12%、特に4~11%である。Alの含有量が少なくなると、塩基性度が上昇し易くなると共に、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。また歪点が低下し易くなる。一方、Alの含有量が多くなると、液相温度が上昇して、ガラス板に成形し難くなる。
【0030】
は、融剤として作用し、高温粘性を下げて、溶融性を改善する成分である。また熱膨張係数を低下させて、熱による寸法変化を低減する成分である。Bの含有量は1~20%であり、好ましくは5~18%、7~17%、9~16%、特に10~15%である。Bの含有量が少なくなると、塩基性度が上昇し易くなると共に、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。またクリストバライト等の失透ブツが析出し易くなる。一方、Bの含有量が多くなると、歪点、耐酸性が低下し易くなる。またガラスが分相し易くなる。
【0031】
SiO+Al+Bの含有量は、好ましくは83%以上、85%以上、86%以上、88%以上、特に90~93%である。SiO+Al+Bの含有量が少なくなると、塩基性度が上昇し易くなる。なお、「SiO+Al+B」は、SiO、Al及びBの合量を指す。
【0032】
LiO+NaO+KOの含有量は1~20%であり、好ましくは2~15%、3~13%、4~12%、特に5~11%である。LiO+NaO+KOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、LiO+NaO+KOの含有量が多くなると、塩基性度が上昇し易くなると共に、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。なお、LiOの含有量は、好ましくは0~5%、0~3%、0~1%、0~0.5%、特に0~0.1%である。NaOの含有量は、好ましくは0~13%、2~10%、3~9%、4~8%、特に5~7%である。KOの含有量は、好ましくは0~9%、0~7%、0~5%、0~4%、特に0.1~3%である。
【0033】
MgO+CaO+SrO+BaOの含有量は0.1~10%であり、好ましくは0.3~8%、特に0.5~5%である。MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、MgO+CaO+SrO+BaOの含有量が多くなると、導入原料からFe不純物が混入し易くなる。また塩基性度が上昇し易くなる。
【0034】
質量比(SiO+Al+B)/(MgO+CaO+SrO+BaO)は、好ましくは15以上、特に20以上である。質量比(SiO+Al+B)/(MgO+CaO+SrO+BaO)が小さ過ぎると、塩基性度が上昇し易くなる。
【0035】
質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)は0.40未満であり、0.35以下、0.32以下、0.30以下、0.28以下、0.26以下、0.24以下、0.22以下、0.20以下、0.18以下、0.16以下、0.14以下、0.12以下、0.10以下、0.08以下、0.06以下、特に0.04以下である。質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が大きくなると、導入原料からFe不純物が混入し易くなる。
【0036】
MgOは、高温粘性を低下させて、溶融性を改善する成分であるが、導入原料中のFe不純物から表示装置の輝度を低下させる成分である。MgOの含有量は、好ましくは0~5%、0~4%、0.2~3%、特に0.5~2%である。MgOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、MgOの含有量が多くなると、導入原料からFe不純物が混入し易くなると共に、塩基性度が上昇し易くなる。また成形時に失透ブツが析出し易くなる。
【0037】
CaOは、歪点を低下させずに高温粘性のみを低下させて、溶融性を改善する成分であるが、導入原料中のFe不純物から表示装置の輝度を低下させる成分である。CaOの含有量は、好ましくは0~10%、0.1~8%、0.2~7%、0.3~6%、0.4~5%、特に0.5~4%である。CaOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、CaOの含有量が多くなると、導入原料からFe不純物が混入し易くなると共に、塩基性度が上昇し易くなる。また成形時に失透ブツが析出し易くなる。
【0038】
SrOは、高温粘性を低下させて、溶融性を改善すると共に、耐薬品性、耐失透性を高める成分である。SrOの含有量は、好ましくは0~10%、0.1~8%、0.2~7%、0.3~6%、0.4~5%、特に0.5~4%である。SrOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、SrOの含有量が多くなると、密度や塩基性度が上昇し易くなると共に、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。
【0039】
BaOは、高温粘性を低下させて、溶融性を改善すると共に、耐薬品性、耐失透性を高める成分である。BaOの含有量は、好ましくは0~10%、0~8%、0~7%、0~6%、0~5%、特に0.1~4%である。BaOの含有量が少なくなると、高温粘性が高くなり、溶融性が低下し易くなる。一方、BaOの含有量が多くなると、密度や塩基性度が上昇し易くなると共に、熱膨張係数が高くなって、熱による寸法変化が大きくなる傾向にある。
【0040】
SnOとSbは、清澄剤として作用する成分である。SnOの含有量は0~0.5%であり、好ましくは0.01~0.5%、0.05~0.5%、0.07~0.5%、特に0.1~0.4%である。Sbの含有量は0~0.5%であり、好ましくは0.01~0.5%、0.05~0.5%、0.07~0.5%、特に0.1~0.4%である。SnOとSbの含有量が少なくなると、清澄効果を享受し難くなる。一方、SnOとSbの含有量が多くなると、成形時に失透ブツが析出し易くなる。
【0041】
Feは、光を吸収する成分であり、可視域での透過率を低下させる成分である。Feの含有量は0~0.005%(50質量ppm以下)であり、好ましくは40質量ppm以下、30質量ppm以下、25質量ppm以下、20質量ppm以下、特に4~25質量ppmである。Feの含有量が多くなると、表示装置の輝度が低下し易くなる。なお、Feの含有量が過度に少ない場合、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0042】
Crの含有量は、好ましくは10質量ppm未満、8質量ppm以下、6質量ppm以下、0.1~5質量ppm、0.2~4質量ppm、特に0.3~3質量ppmである。Crの含有量が多くなると、可視域での透過率が低下し易くなる。なお、Crの含有量が過度に少ない場合、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0043】
TiOは、光を吸収する成分であり、可視域での透過率を低下させる成分である。TiOの含有量は、好ましくは50質量ppm以下、30質量ppm以下、20質量ppm以下、15質量ppm以下、10質量ppm以下、特に1~5質量ppm下である。TiOの含有量が多くなると、表示装置の輝度が低下し易くなる。なお、TiOの含有量が過度に少ない場合、原料コスト、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0044】
Fe、Cr、TiO等の混入を可及的に排除するには、MgOとCaOの含有量を減らす以外にも、原料調合設備等から原料へFe、Cr、TiO等の着色酸化物が混入しないように設計された製造設備を使用することが有効である。
【0045】
Pt(Ptイオン)の含有量は、好ましくは5質量ppm以下、3質量ppm以下、2質量ppm以下、0.01~1質量ppm、特に0.05~0.8質量ppmである。Ptの含有量が多くなると、可視域での透過率が低下し易くなる。なお、Ptの含有量が過度に少ない場合、ガラス製造設備に高強度のPtを使用し難くなり、ガラス板の製造コストが高騰する。
【0046】
Rh(Rhイオン)の含有量は、好ましくは5質量ppm以下、3質量ppm以下、2質量ppm以下、0.01~1質量ppm、0.05~0.8質量ppm、特に0.1~0.7質量ppmである。Rhの含有量が多くなると、可視域の最高透過率と最小透過率の透過率差が過大になり易い。なお、Rhの含有量が過度に少ない場合、ガラス製造設備に高強度のPt-Rh合金を使用し難くなり、ガラス板の製造コストが高騰する。なお、Rhの含有量を可及的に低減するには、高純度ガラス原料を用いたり、Rhが混入しないようにガラス製造条件を調整したり、ガラス製造設備におけるPt-Rh合金の使用箇所を減らせばよい。
【0047】
上記成分以外にも、他の成分を導入してもよい。例えば、液相温度を低下させるために、Y、Nb、Pを各3%まで、溶融温度を低下させるために、CsOを各5%まで、清澄剤としてSO、F、Cl等を合量で0.5%まで導入してもよい。Asは、環境負荷物質であり、またフロート法でガラス板を成形する場合、フロートバス中で還元されて金属異物となるため、実質的な導入を避けることが好ましく、具体的には、その含有量をそれぞれ0.5%以下、0.01%未満とすることが好ましい。
【0048】
水分量は、好ましくは500ppm以下、400ppm以下、300ppm以下、特に250ppm以下である。水分量が多くなると、歪点が低下し易くなり、また白金と溶融ガラスの界面で泡が発生し易くなる。ここで、「水分量」は、β-OH値(/mm)に対して、ガラス組成に固有の係数を乗ずることにより、算出することができる。そして、β-OH値は、数式3により算出可能である。
【0049】
【数3】
【0050】
本発明の導光板において、少なくともガラス板を備えるが、そのガラス板は下記の特性を有することが好ましい。
【0051】
塩基性度は、好ましくは0.54以下、0.53以下、0.52以下、0.51以下、0.50以下、0.49以下、特に0.30~0.48である。塩基性度が高過ぎると、紫外線の照射によって透過率が低下し易くなるため、表示装置の輝度が低下し易くなる。
【0052】
光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率は、好ましくは85%以上、86%以上、87%以上、特に88%以上である。光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率が低過ぎると、表示装置の輝度が低下し易くなる。
【0053】
光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率は、好ましくは75%以上、82%以上、84%以上、特に85%以上である。光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率が低過ぎると、表示装置の輝度が低下し易くなる。
【0054】
光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率と最低透過率の差は、好ましくは10%以下、7%以下、5%以下、3%以下、2%以下、特に1%以下である。光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率と最低透過率の差が大きくなると、表示装置の輝度が低下し易くなる。
【0055】
本発明の導光板において、ガラス板は、光路長2mm、波長範囲400~750nmにおける平均透過率をX(%)、出力0.1mW、波長185nmの紫外線、出力13.3mW、波長254nmの紫外線及び0.4mW、波長365nmの紫外線を同時に12時間照射した後の光路長2mm、波長範囲400~750nmにおける平均透過率をY(%)とした時に、X-Y<1%の関係を満たすことが好ましく、更に好ましくはX-Yが0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、特に0.4%未満である。紫外線照射前後の平均透過率差が大き過ぎると、表示装置の輝度を担保し難くなる。
【0056】
30~380℃の温度範囲における熱膨張係数は、好ましくは120×10-7/℃以下、95×10-7/℃以下、75×10-7/℃以下、特に30×10-7~70×10-7/℃である。ガラス板の熱膨張係数が高過ぎると、表示パネルと導光板の熱による寸法変化の差が大きくなる。ここで、「30~380℃の温度範囲における熱膨張係数」は、JIS R3102に準拠してディラトメーターで測定した平均値である。
【0057】
歪点は、好ましくは400℃以上、420℃以上、440℃以上、460℃以上、470℃以上、480℃以上、特に490℃以上である。歪点が低過ぎると、耐熱性が低下し易くなり、例えば、ガラス板の表面に高温で反射膜等を成膜すると、ガラス板が熱変形し易くなる。ここで、「歪点」は、JIS R3103に基づいて測定した値である。
【0058】
液相温度は、好ましくは1000℃以下、特に970℃以下である。液相粘度は、好ましくは104.6dPa・s以上、特に105.0dPa・s以上である。なお、「液相温度」は、各試料を粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、1100℃から1350℃に設定された温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度である。「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定した値である。
【0059】
ガラス板の少なくとも一辺の寸法は、好ましくは1000mm以上、1500mm以上、2000mm以上、2500mm以上、特に3000mm以上である。このようにすれば、表示装置の大型化の要請を満たすことができる。
【0060】
ガラス板は、オーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。このようにすれば、成形時にガラスリボンの表裏面の温度差、組成差が生じ難いと共に、未研磨で表面品位が良好なガラス板を成形し易くなり、結果として、導光板の製造コストの低廉化、輝度の均一化を図り易くなる。この理由は、オーバーフローダウンドロー法の場合、表面となるべき面が樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形されるからである。樋状構造物の構造や材質は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。また、下方への延伸成形を行うために、ガラスリボンに対して力を印加する方法は、所望の寸法や表面品位を実現できるものであれば、特に限定されない。例えば、充分に大きい幅を有する耐熱性ロールをガラスリボンに接触させた状態で回転させて延伸する方法を採用してもよいし、複数の対になった耐熱性ロールをガラスリボンの端面近傍のみに接触させて延伸する方法を採用してもよい。
【0061】
なお、オーバーフローダウンドロー法以外にも、スロットダウンドロー法、フロート法、ロールアウト法、リドロー法等でガラス板を成形することもできる。なお、フロート法では、成形時にガラスリボンの表裏面の温度差、組成差が発生し易いが、成形時の温度制御を厳密に行うと、その温度差、組成差を低減することができる。
【0062】
本発明の導光板は、ガラス板の少なくとも一方の表面(好ましくは光出射面)にドット模様が形成されていることが好ましい。ガラス板の表面にドット模様を形成すると、ドット模様を構成するドット間に、低屈折率の空気を接触させることができる。これにより、全反射条件が満たされて、ガラス板の内部に光を十分に伝播させることができる。結果として、光出射面から出射する光を面内で均一化し易くなる。
【0063】
ドット模様を構成するドットの直径は、光源からの光が入射すべき端面から離間するにつれて、漸次大きくなっていることが更に好ましい。このようにすれば、光出射面から出射する光を面内で均一化し易くなる。なお、ドット模様は、例えば、ガラス板の表面に耐熱塗料又はガラスフリットを印刷、焼成することにより形成することができる。
【0064】
ドット模様を構成するドットの形状は、特に制限されず、例えば、円形、楕円形、方形、三角形、多角形等が挙げられる。それらの中では、ドットの形状として円形が好ましい。
【0065】
本発明の導光板において、ガラス板の端面(好ましくは光源からの光が入射すべき端面)の平均表面粗さRaは、好ましくは0.5μm以下、0.3μm以下、0.2μm以下、特に0.1μm以下である。このようにすれば、光源からの光が端面に入射した際に、光のロスを低減し易くなる。また端面に高品位の反射層を形成し易くなる。
【0066】
例えば、ガラス板の端面を#2000の砥石で研磨すると、ガラス板の端面の平均表面粗さRaを可及的に低減することができる。また、ガラス板の端面をエッチングすると、研磨傷を発生させずに、ガラス板の端面の平均表面粗さRaを低減することができる。
【0067】
ガラス板の端面は、面取り部を有していないことが好ましい。このようにすれば、光源からの光をガラス板の内部に取り込み易くなる。
【0068】
本発明の導光板は、光源からの光が入射すべき端面以外の端面の全部又は一部に反射層が形成されていることが好ましく、光源からの光が入射すべき端面以外の端面の全部に反射層が形成されていることが特に好ましい。このようにすれば、ガラス板の内部に伝搬した光が端面から漏れ難くなる。なお、反射層として、端面に反射膜を直接成膜してもよいが、端面に反射シールを貼り付けてもよい。
【0069】
本発明の導光板は、ガラス板の一方の表面(好ましくは光出射面)側に拡散板を備えることが好ましく、ガラス板の一方の表面(好ましくは光出射面に対向する表面)側に反射板を備えることが好ましい。このようにすれば、表示装置の輝度を均一化し易くなる。
【実施例
【0070】
以下、実施例に基づいて、本発明を説明する。但し、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0071】
表1~10は、本発明の実施例(試料No.1~193)を示している。なお、表中で「RO」は、LiO+NaO+KOを示しており、「RO」は、MgO+CaO+SrO+BaOを示している。また、表中の初相における「cri」は、クリストバライトを示しており、「Quartz」は、石英を指している。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】
【表7】
【0079】
【表8】
【0080】
【表9】
【0081】
【表10】
【0082】
まず表中のガラス組成になるように、ガラス原料を調合したガラスバッチを白金坩堝に入れた後、1200~1650℃で24時間溶融した。ガラスバッチの溶解に際しては、白金スターラーを用いて攪拌し、均質化を行った。次いで、溶融ガラスをカーボン板上に流し出して、板状に成形した後、徐冷点付近の温度で30分間徐冷した。得られた各試料について、水分量HO、光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率、光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率及び光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率と光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最低透過率との差、30~380℃の温度範囲における熱膨張係数α、密度ρ、歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Ts、高温粘度104.0、103.0、102.5dPa・sにおける温度、液相温度TL、液相粘度logη at TL、初相を評価した。
【0083】
水分量HOは、β-OH値(/mm)に対して、ガラス組成に固有の係数0.09を乗ずることにより、算出したものである。そして、β-OH値は、上記の数式3により算出可能である。
【0084】
光路長200mm、波長範囲400~750nmにおける最高透過率と最低透過率は、上記の数式2により算出したものであり、島津製作所社製UV-3100PCにより測定したものである。
【0085】
30~380℃の温度範囲における熱膨張係数αは、JIS R3102に準拠してディラトメーターで測定した平均値である。
【0086】
密度ρは、周知のアルキメデス法によって測定した値である。
【0087】
歪点Ps、徐冷点Ta、軟化点Tsは、ASTM C336及びC338の方法に基づいて測定した値である。
【0088】
高温粘度104.0、103.0、102.5dPa・sにおける温度は、白金球引き上げ法で測定した値である。
【0089】
液相温度TLは、各試料を粉砕し、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れて、1100℃から1350℃に設定された温度勾配炉中に24時間保持した後、白金ボートを取り出し、ガラス中に失透(結晶異物)が認められた温度である。そして、液相温度TLから(液相温度TL-50℃)の温度範囲に析出している結晶を電子顕微鏡で観察し、初相として評価した。更に、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定し、これを液相粘度logη at TLとした。
【0090】
表1~10から分かるように、試料No.1~193は、質量比(MgO+CaO)/(LiO+NaO+KO+MgO+CaO+SrO+BaO)が小さく、Feの含有量が少ないため、可視域における透過率が高かった。よって、試料No.1~193は、エッジライト型面発光装置に用いる導光板として好適であると考えられる。
【符号の説明】
【0091】
1 エッジライト型面発光装置
2、12 光源
3、10 導光板
4、19 反射層
5 拡散板
6、14 光反射面
7 光出射面
11 ガラス板
13、16~18 端面
15 ドット模様
19 反射層
図1
図2
図3