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  • 特許-エアジェット織機 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】エアジェット織機
(51)【国際特許分類】
   D03D 47/30 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
D03D47/30
【請求項の数】 1
(21)【出願番号】P 2018216336
(22)【出願日】2018-11-19
(65)【公開番号】P2020084341
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-02-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【弁理士】
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【弁理士】
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】森田 光飛
(72)【発明者】
【氏名】稲村 貴裕
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】山崎 勝司
【審判官】八木 誠
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第2163670(EP,A1)
【文献】特開2004-91936(JP,A)
【文献】特開2008-137199(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D03D29/00-51/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
緯入れ経路に緯糸を射出するメインノズルと、
前記緯入れ経路に沿って配列され、エアを噴出する複数のサブノズルと、
前記複数のサブノズルに接続され、内部にエアを貯留するエアタンクと、
前記サブノズルと前記エアタンクとの間の流路に設けられて連通状態と閉鎖状態とに切り替えられるバルブとを備え、
前記複数のサブノズルは、
前記緯入れ経路の高圧領域にエアを噴出する第一サブノズルと、
前記緯入れ経路の低圧領域にエアを噴出する第二サブノズルとを有し、
前記第一サブノズルと前記バルブとの間には、第一ホースが設けられ、前記第一ホースの前記バルブ側の端部の内側には第一スリーブが嵌合され、
前記第二サブノズルと前記バルブとの間には、第二ホースが設けられ、前記第二ホースの前記バルブ側の端部の内側には第二スリーブが嵌合され、
前記第一ホースの内部に形成された第一エア流路の流路抵抗は、前記第二ホースの内部に形成された第二エア流路の流路抵抗よりも小さく、
前記第二スリーブの内径は、前記第一スリーブの内径よりも小さい、または
前記第二ホースの長さは、前記第一ホースの長さよりも長い、または
前記第二ホースの内側表面の粗さは、前記第一ホースの内側表面の粗さよりも粗い、または
前記第二ホースの内側の表面積は、前記第一ホースの内側の表面積よりも広い
エアジェット織機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、エアジェット織機に関する。
【背景技術】
【0002】
エアジェット織機は、緯糸を射出するメインノズルと、緯糸の緯入れ経路に沿って並べられた複数のサブノズルとを有する。サブノズルからエアが噴出することによって、緯入れ経路において、緯糸を搬送する牽引力が高められる。
【0003】
ここで、緯糸の緯入れ経路の入口側では、緯糸の牽引力を高めるために、サブノズルからのエアの噴出量を多く設定する必要がある。また、緯糸の緯入れ経路の出口側でも、緯糸の張力を高めるために、同様に、サブノズルからのエアの噴出量を多く設定する必要がある。一方、緯糸の緯入れ経路の中央部分の近傍では、入口側または出口側よりも、サブノズルからのエアの噴出量は少なくてもよい。そこで、特許文献1の図1に記載されるエアジェット織機では、省エネ性能を高めるため、緯入れ経路の中央付近に設けられるサブノズルに接続するエアタンクと、緯入れ経路の入口側及び出口側に設けられるサブノズルに接続するエアタンクとを別のものにしている。具体的には、特許文献1の図1に記載されるエアジェット織機では、緯入れ経路の中央付近に設けられるサブノズルに接続するエアタンクの気圧は、緯入れ経路の入口側及び出口側に設けられるサブノズルに接続するエアタンクの気圧よりも低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】欧州特許明細書第2163670号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の図1に記載されたエアジェット織機の緯入れ経路では、サブノズルが接続されるエアタンクによって、サブノズルからのエアの噴出量の多い高圧領域の位置及びサブノズルからのエアの噴出量の少ない低圧領域の位置が、各々、固定されてしまう。従って、織布の通し幅に応じて、緯入れ経路の高圧領域の位置及び低圧領域の位置を変更することができないという問題があった。
【0006】
また、サブノズルのピッチを高圧領域と低圧領域とで変える方法もあるが、この場合にも、緯入れ経路の高圧領域の位置及び低圧領域の位置を変更することが困難であり、さらに、サブノズルの並びが不規則だと、サブノズルに接続する配管の配置が複雑になってしまうという問題もあった。
【0007】
この発明は、このような問題を解決するためになされ、複数のサブノズルの各々のエアの噴出量を容易に変更して、緯糸の緯入れ経路の高圧領域の位置及び低圧領域の位置を調整することができるエアジェット織機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、この発明に係るエアジェット織機は、緯入れ経路に緯糸を射出するメインノズルと、緯入れ経路に沿って配列され、エアを噴出する複数のサブノズルと、複数のサブノズルに接続され、内部にエアを貯留するエアタンクと、サブノズルとエアタンクとの間の流路に設けられて連通状態と閉鎖状態とに切り替えられるバルブとを備え、複数のサブノズルは、緯入れ経路の高圧領域にエアを噴出する第一サブノズルと、緯入れ経路の低圧領域にエアを噴出する第二サブノズルとを有し、第一サブノズルとバルブとの間には、第一ホースが設けられ、第一ホースのバルブ側の端部の内側には第一スリーブが嵌合され、第二サブノズルとバルブとの間には、第二ホースが設けられ、第二ホースのバルブ側の端部の内側には第二スリーブが嵌合され、第一ホースの内部に形成された第一エア流路の流路抵抗は、第二ホースの内部に形成された第二エア流路の流路抵抗よりも小さく、第二スリーブの内径は、第一スリーブの内径よりも小さい、または第二ホースの長さは、第一ホースの長さよりも長い、または第二ホースの内側表面の粗さは、第一ホースの内側表面の粗さよりも粗い、または第二ホースの内側の表面積は、第一ホースの内側の表面積よりも広い。
【0009】
また、この発明に係るエアジェット織機の第一サブノズルとエアタンクとの間には、第一ホースが設けられ、第一ホースのエアタンク側の端部の内側には第一スリーブが嵌合され、第二サブノズルとエアタンクとの間には、第二ホースが設けられ、第二ホースのエアタンク側の端部の内側には第二スリーブが嵌合され、第二スリーブの内径は、第一スリーブの内径よりも小さくてもよい。
【0010】
また、第二ホースの長さは、第一ホースの長さよりも長くてもよい。
また、第二ホースの内側表面の粗さは、第一ホースの内側表面の粗さよりも粗くてもよい。
さらにまた、第二ホースの内側の表面積は、第一ホースの内側の表面積よりも広くてもよい。
【発明の効果】
【0011】
この発明に係るエアジェット織機によれば、複数のサブノズルの各々のエアの噴出量を容易に変更して、緯糸の緯入れ経路の高圧領域の位置及び低圧領域の位置を調整することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】この発明の実施の形態に係るエアジェット織機の概略図である。
図2図1に示すエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースとエアタンクとの接続箇所の構造を示す断面図である。
図3図1に示すエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースのエアタンク側の端部の取付け構造を示す断面図である。
図4図1に示すエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースに取り付けられるスリーブの形状の違いを模式的に示す断面図であり、図4(a)は、第一ホースに設けられる第一スリーブの形状を示し、図4(b)は、第二ホースに設けられる第二スリーブの形状を示している。
図5】この発明の別の実施の形態に係るエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースの形状の違いを模式的に示す断面図であり、図5(a)は、第一ホースの形状を示し、図5(b)は、第二ホースの形状を示している。
図6】この発明の別の実施の形態に係るエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースの形状の違いを模式的に示す断面図であり、図6(a)は、第一ホースの形状を示し、図6(b)は、第二ホースの形状を示している。
図7】この発明の別の実施の形態に係るエアジェット織機の第一ホース又は第二ホースの形状の違いを模式的に示す断面図であり、図7(a)は、第一ホースの形状を示し、図7(b)は、第二ホースの形状を示している。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。
図1に示すように、エアジェット織機100は、筬20と、筬20に沿って形成される緯入れ経路21に緯糸を射出するメインノズル15と、緯入れ経路21に沿って配列される24個のサブノズル14とを有する。なお、緯入れ経路21の入口側及び出口側は、高圧領域Hである。また、緯入れ経路21の入口側の高圧領域Hと出口側の高圧領域Hとの間は、低圧領域Lとなる。ここで、高圧領域Hに対応する位置に配置され、高圧領域Hにエアを噴出するサブノズル14を第一サブノズル14aとし、低圧領域Lに対応する位置に配置され、低圧領域Lにエアを噴出するサブノズル14を第二サブノズル14bとする。第一サブノズル14aのエアの噴出量は、第二サブノズル14bのエアの噴出量よりも多い。また、緯入れ経路21の入口側の高圧領域Hに対応する第一サブノズル14aの数は、8個であり、緯入れ経路21の出口側の高圧領域Hに対応する第一サブノズル14aの数も、同様に8個である。
なお、緯入れ経路21の入口側に高圧領域Hが設けられることにより、緯糸を搬送する牽引力を高くすることができる。また、緯入れ経路21の出口側に高圧領域Hが設けられることにより、緯糸に加えられる張力を高くすることができる。
【0014】
第一サブノズル14aの各々には、第一ホース13aの一端が接続される。また、第一ホース13aの他端は、内部にエアを貯留するエアタンク40に接続される。さらに、第二サブノズル14bの各々には、第二ホース13bの一端が接続される。また、第二ホース13bの他端も、エアタンク40に接続される。また、第一ホース13aとエアタンク40との間には、4本の第一ホース13a毎に、1つのバルブ30が設けられる。同様に、第二ホース13bとエアタンク40との間には、4本の第二ホース13b毎に、1つのバルブ30が設けられる。すなわち、16個の第一サブノズル14a及び8個の第二サブノズル14bに対して、バルブ30は、6個設けられている。
【0015】
より具体的には、図2に示すように、第一ホース13a又は第二ホース13bは、固定部材50を介して、エアタンク40に接続されている。また、第一ホース13a又は第二ホース13bの端部は、コネクタ11によって、固定部材50に取り付けられている。固定部材50には、第一ホース13a又は第二ホース13bの各々と、エアタンク40とを連通させる連結部流路51が形成される。また、バルブ30は、固定部材50に取り付けられ、エアが流通する連結部流路51を連通状態と閉鎖状態とに切り替えたり、連結部流路51を流通するエアの流量を調整したりすることができる。
【0016】
図3に示すように、固定部材50の連結部流路51に差し込まれた第一ホース13a又は第二ホース13bのエアタンク40側の端部の内側には、ホースの潰れ防止のために、略円筒形状のスリーブ12が嵌合されている。ここで、図4(a)に示すように、第一ホース13aのエアタンク40側の端部の内側に嵌合されているスリーブ12を第一スリーブ12aとする。また、図4(b)に示すように、第二ホース13bのエアタンク40側の端部の内側に嵌合されているスリーブ12を第二スリーブ12bとする。ここで、第一スリーブ12aの内径D1は、第二スリーブ12bの内径D2よりも大きい。これにより、第一サブノズル14aとエアタンク40との間の第一ホース13aの内部に形成される第一エア流路16aの流路抵抗は、第二サブノズル14bとエアタンク40との間の第二ホース13bの内部に形成される第二エア流路16bの流路抵抗よりも小さくなる。ここで流路抵抗とは、第一エア経路16aや第二エア経路16bの形状によりエアの流れを妨げる力である。
【0017】
以上より、この実施の形態にかかるエアジェット織機100では、第一サブノズル14aとエアタンク40との間の第一エア流路16aの流路抵抗は、第二サブノズル14bとエアタンク40との間の第二エア流路16bの流路抵抗よりも小さい。これにより、第一サブノズル14aから緯入れ経路21の高圧領域Hに噴出されるエアの量を、第二サブノズル14bから緯入れ経路21の低圧領域Lに噴出されるエアの量よりも多くすることができる。すなわち、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を適宜変えるだけで、より流路抵抗の低いエア流路に接続するサブノズル14は、エアの噴出量が多い第一サブノズル14aとなり、より流路抵抗の高いエア流路に接続するサブノズル14は、エアの噴出量が少ない第二サブノズル14bとなる。これにより、緯入れ経路21において、第一サブノズル14aに対応する位置には、高圧領域Hが設定され、第二サブノズル14bに対応する位置には、低圧領域Lが設けられる。従って、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を適宜変えることで、サブノズル14のエアの噴出量を容易に変更して、緯入れ経路21の高圧領域Hの位置及び低圧領域Lの位置を調整し、織布の通し幅の変更に対応することができる。また、個々のサブノズル14が接続されるエアタンク40やバルブ30に関係なく、サブノズル14毎にエアの噴出量を調整することが可能である。
【0018】
また、エアジェット織機100では、スリーブ12を、内径D1が大きい第一スリーブ12aと、内径D2が小さい第二スリーブ12bとの間で選択し、適宜交換することにより、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を変更することができる。従って、スリーブ12の寸法に応じてサブノズル14のエアの噴出量をどの程度絞るかを決めることができ、緯入れ経路21の高圧領域Hの位置及び低圧領域Lの位置を容易に可変とすることができる。また、スリーブ12の寸法の違いによってサブノズル14のエアの噴出量を調整する場合は、サブノズル14とエアタンク40との間のホースの剛性は、エア流路の流路抵抗の違いに影響を受けない。
【0019】
また、図5に示すように、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を変更するために、第一ホース13aの内径と、第二ホース13bの内径とを、互いに異なるものとしてもよい。この時、図5(a)に示す第一ホース13aの内径は、図5(b)に示す第二ホース13bの内径よりも大きく、第二エア流路16bの流路抵抗は、第一エア流路16aの流路抵抗よりも大きい。
【0020】
また、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を変更するために、第二ホース13bの長さを第一ホース13aの長さよりも長くして、第二エア流路16bの流路抵抗を第一エア流路16aの流路抵抗よりも大きくしてもよい。ここで、第二ホース13bの長さと第一ホース13aの長さとを変える場合、径や材質が同じホースを使用することができるため、部品の供給がより容易となる。
【0021】
また、図6に示すように、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を変更するために、第二ホース13bに、内側表面を粗くするための処理を行っても良い。具体的には、第二ホース13bの内側表面に研磨剤を付着させることにより、図6(b)に示す第二ホース13bの内側表面の粗さを、図6(a)に示す第一ホース13aの内側表面の粗さよりも粗くする。これにより、第二エア流路16bの流路抵抗を第一エア流路16aの流路抵抗よりも大きくする。
【0022】
また、図7に示すように、サブノズル14とエアタンク40との間のエア流路の流路抵抗を変更するために、第一ホース13aの断面形状と、第二ホース13bの断面形状とを互いに異なるものとしてもよい。具体的には、図7(a)に示す第一ホース13aの内側表面の断面形状が円形であるのに対して、図7(b)に示す第二ホース13bの内側表面の断面形状は凹凸を有している。すなわち、第二ホース13bの内側表面の表面積は、第一ホース13aの内側表面の表面積よりも広い。従って、これにより、第二エア流路16bの流路抵抗は、第一エア流路16aの流路抵抗よりも大きくなる。
なお、ホースを形成する際の押出し型を変更することによって、第一ホース13aの内側表面の断面形状と第二ホース13bの内側表面の断面形状とを異なるものとすることができる。
【0023】
また、第一ホース13aと第二ホース13bとを識別しやすくするため、第一ホース13aの色と第二ホース13bの色とを異なるものとしてもよい。
【符号の説明】
【0024】
12a 第一スリーブ、12b 第二スリーブ、13a 第一ホース、13b 第二ホース、14 サブノズル、14a 第一サブノズル、14b 第二サブノズル、15 メインノズル、16a 第一エア流路、16b 第二エア流路、21 緯入れ経路、100 エアジェット織機。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7