(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】駆動システムの作動状態を推定する方法及び駆動システム
(51)【国際特許分類】
G01M 99/00 20110101AFI20240131BHJP
B65G 43/00 20060101ALN20240131BHJP
F16H 19/02 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
G01M99/00 A
B65G43/00 Z
F16H19/02 D
F16H19/02 K
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019189266
(22)【出願日】2019-10-16
【審査請求日】2022-09-15
(32)【優先日】2018-10-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【氏名又は名称】中西 基晴
(74)【代理人】
【識別番号】100186613
【氏名又は名称】渡邊 誠
(72)【発明者】
【氏名】ラウル・バルタザール・バダヤ
【審査官】佐々木 創太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-002202(JP,A)
【文献】特開2000-206093(JP,A)
【文献】米国特許第07653512(US,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 13/00-13/045
99/00
B65G 43/00-43/10
F16H 19/00-37/16
49/00
G03G 13/34
15/00
15/36
21/00-21/02
21/14
21/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
駆動システムの作動状態を推定する方法(100)であって、
前記駆動システム(100)は、
電動機(1)と、
前記電動機(1)によって動作される機械ユニット(2)と、を有し、
前記方法は、
a)電気的特性を使用して前記電動機(1)を操作し、
b)電気的特性を使用して、前記機械ユニット(2)の動作に関する動作特性(D)を決定し、
c)変更された電気的特性を使用して、ステップa)及びb)を繰り返し、
d)分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)を生成し、前記分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)は、使用される前記電気的特性を結果として生じる動作特性(D)に割り当て、
e)生成された前記分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)に応じて前記作動状態を推定する、方法。
【請求項2】
請求項1に記載された方法において、
前記電気的特性は、前記電動機(1)によって提供されるトルクを含む、方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された方法において、
前記電気的特性は、電動機(1)に印加される電流を含む、方法。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか一項に記載された方法において、
前記動作特性は、所定の距離で前記機械ユニット(2)を動作するのに必要な時間を含む、方法。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載された方法において、
前記動作特性は、所定の期間、前記機械ユニット(2)によって進め
られる距離(D)を含む、方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載された方法において、
前記動作特性は、前記機械ユニット(2)の最大速度を含む、方法。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか一項に記載された方法において、
前記ステップa)及びb)は、変更された電気的特性を使用して5から100回繰り返される、方法。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載された方法において、
前記ステップa)からd)は異なる時点で繰り返され、各時点で、対応する分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)が保存され、前記作動状態は、保存された前記分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)に基づいて推定される、方法。
【請求項9】
請求項8に記載された方法において、
保存された前記分布関数(F1、F´1、F2、F´2、F3、F´3)間の差がしきい値より大きいとき、メンテナンスが要求されるように作動状態が推定される、方法。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか一項に記載された方法において、
前記作動状態は、
摩耗レベルの状態、
メンテナンス状態の必要性、
摩擦抵抗状態、
前記機械ユニット(2)に含まれる部品の機械的故障、及び
前記機械ユニット(2)に含まれる部品の位置ずれ、
からなる群の少なくとも1つを含む、方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか一項に記載された方法において、
前記電気的特性は、前記電動機(1)の最大実行時電力に依存する上限と、前記機械ユニット(2)の動作に必要な前記電動機(1)の最小電力に依存する下限との間で選択される、方法。
【請求項12】
駆動システム(100)であって、
電動機(1)と、
前記電動機(1)によって動作される機械ユニット(2)と、を有し、
前記駆動システム(100)は、請求項1から11のいずれか一項に記載された方法を実行するように構成される、駆動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、駆動システムの作動状態を推定する方法及び駆動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明の目的は、駆動システムの作動状態を推定する方法、及び駆動システムの作動状態の信頼できる推定を可能にする駆動システムを提供することである。
本発明は、請求項1に記載の駆動システムの作動状態を推定する方法及び請求項12に記載の駆動システムによりこの目的を解決する。
【0003】
この方法は、駆動システムの作動状態を推定するのに役立ち、駆動システムは、少なくとも1つの電動機と、電動機によって動作又は駆動される機械ユニットとを有する。機械ユニットは、あらゆる種類の従来の機械部品、例えばギア、伝達手段、機械的ガイド手段、機械的カップリングなどを含み得る。
【0004】
この方法は以下のステップを含む。
ステップa)、定義された電気的特性、特に電気的特性のセットを使用して、機械ユニットが、使用される電気的特性に応じた及び駆動システムの状態に応じた動作を実行するように、電動機を作動させる。
【0005】
ステップb)、定義された電気的特性を使用するとき、機械の動作に関する動作特性を決定する。
ステップc)、定義されているが変更された電気的特性を使用して、ステップa)及びb)を何度も繰り返す。
【0006】
ステップd)、分布関数を生成し、分布関数は、使用及び定義された電気特性のそれぞれに、結果として生じる動作特性を割り当てる。
ステップe)、生成された分布関数に応じて作動状態を推定する。作動状態は、例えば、生成された分布関数の形状、高さ、緯度、極値、及び/又は勾配などに応じて推定され得る。
【0007】
本発明は、分布関数が駆動システムの作動状態に特有であるという発見に基づいている。
一実施形態によれば、電気的特性は、電動機によって提供されるトルクを含むか、又はトルクである。例えば、電動機によって提供されるトルクを変更され得、使用される各トルク値について、対応する動作特性が、分布関数を生成するために決定される。
【0008】
一実施形態によれば、電気的特性は、電動機に印加される電流を含むか、又は電流である。例えば、電動機に印加される電流は変更され得、使用される各電流値について、対応する動作特性が、分布関数を生成するために決定される。
【0009】
一実施形態によれば、動作特性は、所与の距離にわたって機械ユニットを動作させるのに必要な継続時間を含むか、又はその時間である。
一実施形態によれば、動作特性は、所与の継続時間の間、又は所与の継続時間中に、機械ユニットによって進められる又は作成される距離を含むか、又はその距離である。
【0010】
一実施形態によれば、動作特性は、機械的ユニットの最大速度を含むか、その最大速度であり、最大速度は、電気的特性を使用して達成される。
一実施形態によれば、ステップa)及びb)は、変更された電気特性を使用して5から100回繰り返される。
【0011】
一実施形態によれば、ステップa)からd)が異なる時点で繰り返され、各時点で対応する分布関数が保存され、保存された分布関数に基づいて作動状態が推定される。
一実施形態によれば、保存された分布関数間の差が閾値よりも大きいとき、メンテナンスが要求されるように作動状態が推定される。違いは例えば平均二乗偏差として計算される。特に、エラーのない駆動システムを示す基準分布関数と実際の分布関数との差が、メンテナンス要求を推定するために計算され得る。
【0012】
一実施形態によれば、動作状態は、摩耗(レベル)状態、メンテナンス状態の必要性、摩擦抵抗状態、機械ユニットに含まれる部品の機械的故障、及び機械ユニットに含まれる部品の位置ずれからなる群の少なくとも1つを含む。動作状態は、特定のメンテナンスの必要性又は問題、たとえばベアリングの高摩擦又は機械部品の変形などをさらに含み得る。
【0013】
一実施形態によれば、電気的特性は、電動機の最大実行時電力に依存する上限と、機械ユニットの動作に必要な電動機の最小電力に依存する下限との間で選択される。
駆動システムは、電動機と、電動機によって動かされる機械ユニットとを備え、駆動システムは上記の方法を実行するように構成されている。
【0014】
本発明により、予測メンテナンスが提供され、例えば、重大な損傷が発生する前に、駆動システムを保守、検査、又は修復する必要があるか否かを判定する。
駆動システムの各電動機について、以下のステップが実行され得る。最初に、電動機に適用される多数の異なる電流値及び/又はトルク値が定義される。本発明の方法の感度及び分解能は、使用される異なる電流値及び/又はトルク値の数に依存する。システムが既知の機能状態にあるとき、すべての異なる電流値及び/又はトルク値が電動機に順次適用される。異なる電流値及び/又はトルク値を電動機に適用することによって生じる各動作は、同一の開始点で開始することになる。さらに、動作のための移動距離又は移動時間のいずれかは、適用された各電流値及び/又はトルク値に対して一定のままである。各移動距離又は各移動時間の結果は保存され、従って、既知の機能状態の対応する移動距離及び/又は対応する移動時間に異なる電流値及び/又はトルク値を割り当てる基準分布関数が得られる。
【0015】
これらのステップは定期的に繰り返され、結果の分布関数が基準分布関数と、及び/又は互いに比較されて、駆動システムを修理する必要があるかどうかを決定する。保守が必要かどうかの決定は、同様のデバイスのデータからの学習に基づいて行われ得る。
【0016】
異なる電流値/トルク値を使用して分布関数を決定することにより、この方法は、駆動システムの特定の問題に対して異なる感度を提供することができる。一例として、動作に対する抵抗の増加(例えば、機械部品の位置ずれによる)は、高出力の動作よりも低出力の動作の方が影響が大きくなる。同様に、動作に対する抵抗の減少(例えば、機械部品の摩耗による)は、低出力の動作よりも高出力の動作の方が影響が大きくなる。
【0017】
ここで、図面を参照して本発明を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】例示的な駆動システムを非常に概略的に示す。
【
図2】移動距離をモータ電流に割り当てるいくつかの分布関数を概略的に示す。
【
図3】移動時間をモータ電流に割り当てるいくつかの代替分配関数を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、例示的な駆動システム100を非常に概略的に示しており、電動機1と、電動機1によって動作又は駆動される機械ユニット2とを備えている。
機械ユニット2は、第1ベルト3、第2ベルト4、第1車輪5、及び第2車輪6を備える。第2ベルト4は、車輪5及び6の周りを走り、第1車輪5は、第1ベルト3により電動機1のモータシャフト7に結合され、電動機1は、搬送される物品8の水平動作を生じさせることができる。
【0020】
駆動システム100及び機械ユニット2は例示に過ぎず、本発明は、例えば複数の電動機を備えている、及び/又は他の形態の機械ユニットを備えている、より複雑な駆動システム100内で使用され得ることを理解されたい。
【0021】
本発明により、駆動システム100の作動状態、例えば、使用される部品の摩耗レベル、例えば車輪5及び6の軸受の摩擦抵抗、機械ユニット2に含まれる部品3-6の機械的故障、及び機械ユニット2に含まれる部品3-6の位置ずれを推定することができる。
【0022】
駆動システム100の作動状態を推定するために、以下のステップが実行される。
最初に、電動機1に印加される多数の異なる電流値が定義される。電流値の数は、例えば1Aから10Aの範囲の、例えば100の異なる電流値を有し得る。異なる電流値は、隣接する電流値間で等しい間隔を有し得る。自明であるが、これらの値は例として理解すべきである。
【0023】
駆動システム100が例えば駆動システム100を修理することにより既知の機能的状態になった後、又は初期設置後に、多数の電流値の異なる電流値の全てが、電動機に連続的に適用される。駆動システム100は無負荷であるべきであり、即ち、対象物8が取り除かれるべきである。
【0024】
電流値の1つを電動機に印加することによって生じる各動作は、同一の開始点SPで開始するものとする。さらに、異なる電流値の1つを電動機1に印加することにより生じる各動作の動作時間は一定のままであるものとする。移動時間は、例えば5秒である。次に、結果の移動距離Dがそれぞれ保存される。
【0025】
図2は、異なる電流値I(x軸)を対応する移動距離D(y軸)に割り当てた結果として生じる基準分布関数F1を示す。分布関数F1は、駆動システム100の適切な又は意図された機能に特有のものである。
【0026】
分布関数F2は、100時間の作動後に対応して決定され、分布関数F3は、500時間の作動後に対応して決定されている。
500時間の作動後、駆動システム100はメンテナンスを必要とし、分布関数F3はこれらのメンテナンスの必要性に特有のものである。したがって、分布関数Fによりメンテナンスの必要性を推定することができる。
【0027】
本発明の方法は、例えば、決定された(実際の又はシミュレートされた)分布関数Fを駆動システム100の定義された作動状態に割り当てることによって、例えば訓練され得る。
【0028】
図3は、機械ユニット2を所定の距離Dだけ動かすのに必要な対応する継続時間T(y軸)に異なる電流値I(x軸)を割り当てる代替の分布関数F´1、F´2、F´3を示す。
【0029】
分配関数F´1は、駆動システム100の適切な又は意図された機能に特有のものである。
分布関数F´2は、100時間の作動後に対応して決定され、分布関数F´3は、500時間の作動後に対応して決定されている。
【0030】
図示されているように、機械ユニット2を同一の所定の距離Dだけ動かすのに必要な時間Tは、作動時間が長くなるにつれて増加する。
したがって、分布関数F´によりメンテナンスの必要性を推定することができる。
【0031】
本発明の方法は、例えば、決定された(実際の又はシミュレートされた)分布関数F又はF´を駆動システム100の定義された作動状態に割り当てることによって、例えば訓練され得る。