(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】外部床の防水構造
(51)【国際特許分類】
E04D 7/00 20060101AFI20240131BHJP
E04B 1/682 20060101ALI20240131BHJP
E04B 1/684 20060101ALI20240131BHJP
E04D 13/04 20060101ALI20240131BHJP
E04F 15/02 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
E04D7/00 F
E04B1/682 A
E04B1/684 G
E04D13/04 J
E04F15/02 H
(21)【出願番号】P 2020012902
(22)【出願日】2020-01-29
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000198787
【氏名又は名称】積水ハウス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(73)【特許権者】
【識別番号】591037960
【氏名又は名称】シーカ・ジャパン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100166637
【氏名又は名称】木内 圭
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】水津 裕行
(72)【発明者】
【氏名】宮城 亜矢
(72)【発明者】
【氏名】大西 正人
(72)【発明者】
【氏名】松村 康弘
【審査官】吉村 庄太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-132177(JP,A)
【文献】特開平09-310451(JP,A)
【文献】特開昭56-118767(JP,A)
【文献】特開2010-189865(JP,A)
【文献】特開2017-137721(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 7/00
E04B 1/682
E04B 1/684
E04D 13/04
E04D 11/00
E04F 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
断熱材の表面に耐候性材料によって被覆された金属板を積層してパネル状に形成した防水床ユニットを外部床下地上に複数枚敷き並べ、
前記防水床ユニット同士が隣接する目地の上に、合成樹脂材料または合成ゴム材料からなる接着層を有する長尺の防水テープが張着され、
前記防水テープの上に、合成樹脂系、合成ゴム系またはポリマーセメント系の防水塗料が塗り重ねられる外部床の防水構造において、
前記防水テープは、基材の片面または両面に合成ゴム材料からなる接着層が設けられた長尺の防水テープであり、
前記防水テープの幅方向における中央部分には、前記目地を水密的に被覆す
る目地被覆帯が、前記防水テープの全幅の20~40%の幅で設けられ、
前記目地被覆帯を挟んだその両側部分には、該防水テープの長さ方向に沿っ
て並ぶ複数個の孔部が形成され、
前記孔部が丸孔で、その直径が前記目地被覆帯の幅の15~40%であり、
前記孔部の離隔寸法が前記孔部の直径の1~2倍であり、
前記防水塗料が前記孔部内に流入して前記防水床ユニットの金属板に接着された
ことを特徴とする外部床の防水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、建物の屋外部分に設けられる外部床の防水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は、建物のバルコニーや屋上等に設けられる外部床の防水構造(防水工法)として、特許文献1に記載された防水構造の実用化を図っている。該文献記載の防水構造は、あらかじめ工場で製造したパネル状の防水床ユニットを外部床下地上に複数枚敷き並べるユニット防水構造において、防水床ユニット同士が隣接する目地部分の防水性、耐久性および施工性を向上させようとしたものである。該防水構造の概略的構成を
図3に示す。
【0003】
該防水構造は、
(1)発泡樹脂等からなる断熱材11の表面に、耐候性材料によって被覆された金属板(被覆金属板)12を積層するなどして防水床ユニット1を製造する。その防水床ユニット1の縁部上面には階段状の段落部13を形成しておく。
(2)隣接する防水床ユニット1同士をわずかに離して、外部床下地2上に防水床ユニット1を敷き並べる。
(3)防水床ユニット1の縁部同士が隣接する目地部分においては、段落部13同士を突き合わせて形成される凹溝の底面に、ブチルゴムその他の合成ゴム材料等からなる防水テープ4を張着して、目地3を被覆する。
(4)防水テープ4の上から凹溝内に、ウレタン樹脂系塗料をはじめとする合成樹脂系または合成ゴム系の防水塗料5を充填する。
という工程を組み合わせて構成される。
【0004】
これらの複合作用により、防水床ユニット1同士が隣接する目地3の上には、防水テープ4と、防水塗料5の塗膜と、からなる二重の防水層が形成される。凹溝内に充填された防水塗料5は、段落部13の高さに相当する厚みと塗料自体の伸縮性によって優れた防水性および耐久性を発揮する。また、防水塗料5の上面が防水床ユニット1(被覆金属板12)の上面と略面一に仕上がるので、防水床ユニット1の敷設領域全体にわたって良好な排水性が得られることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述の防水構造においては、目地3を被覆する防水テープ4が防水床ユニット1の表層を構成する被覆金属板12にしっかりと接着されていて、その上に防水塗料5が適切な厚みで塗り重ねられている限り、防水塗料5の塗膜が紫外線や熱によって経年劣化しても、その下にある防水テープ4が目地部分の防水性を担保することが期待される。
【0007】
しかし、被覆金属板12が熱伸縮して、防水テープ4および防水塗料5からなる塗膜に引張力や圧縮力が反復的に作用すると、防水塗料5からなる塗膜の膨湾等によって防水テープ4が目地3から剥がれてしまうおそれがある。これは、ブチルゴム等からなる防水テープ4と、ウレタン樹脂系塗料等からなる防水塗料5との間に生じる伸縮特性(特に熱で伸びた状態からの戻りやすさ)等の差異によって防水テープ4に面外方向の力が作用することや、防水テープ4の接着力が温度変化によって低下しやすいことに起因するものと考えられる。この事象は、防水テープ4の幅が大きくなるほど生じやすくなる。
【0008】
本願が開示する発明は前述のような事象を改善するために着想されたものであり、上述のような防水床ユニットが敷き並べられた防水施工面の目地上に防水テープを張着し、その上に防水塗料を塗布することによって二重の防水層を形成する外部床の防水構造において、防水施工面に対する防水テープの接着力を高め得る防水構造を提供することを目的としている。
【0009】
なお、本発明における「外部床」には、バルコニーや屋外廊下など、建物の屋外部分に設けられる歩行タイプの床面に加えて、陸屋根の屋上に設けられる非歩行タイプの略平坦な床面(屋根面)も含むものとする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前述の目的を達成するために、本願が開示する発明に係る外部床の防水構造は、断熱材の表面に耐候性材料によって被覆された金属板を積層してパネル状に形成した防水床ユニットを外部床下地上に複数枚敷き並べ、前記防水床ユニット同士が隣接する目地の上に、合成樹脂材料または合成ゴム材料からなる接着層を有する長尺の防水テープが張着され、前記防水テープの上に、合成樹脂系、合成ゴム系またはポリマーセメント系の防水塗料が塗り重ねられる外部床の防水構造において、前記防水テープは、基材の片面または両面に合成ゴム材料からなる接着層が設けられた長尺の防水テープであり、前記防水テープの幅方向における中央部分には、前記目地を水密的に被覆する所定幅の目地被覆帯が設けられ、前記目地被覆帯を挟んだその両側部分には、該防水テープの長さ方向に沿って適宜間隔で並ぶ複数個の孔部が形成され、前記防水塗料が前記孔部内に流入して前記防水床ユニットの金属板に接着された、との構成を採用する。
【0011】
この構成によれば、目地部分を被覆する防水テープの上に塗り重ねられた防水塗料の一
部が、防水テープに形成された孔部を通じて防水床ユニットの金属板に直接、接着されることになるので、金属板が熱伸縮したり横移動したりしても、金属板と、防水テープおよび防水塗料との一体的な接着力が好適に保持される。これにより、長期間にわたって安定的な防水性能が担保される。
【0012】
この防水構造においては、前記孔部が、前記防水テープの長さ方向に沿って適宜間隔で複数個形成されているのが好ましい。これにより、防水施工面に対する防水塗料の接着力を、防水テープの長さ方向にわたって均等化することができる。
【0013】
また、本願が開示する発明に係る防水テープは、基材の片面または両面に合成ゴム材料からなる接着層が設けられた長尺の防水テープにおいて、該防水テープの幅方向における中央部分に、防水施工面の目地を水密的に被覆する所定幅の目地被覆帯が設けられ、前記目地被覆帯を挟んだその両側部分に、該防水テープの長さ方向に沿って適宜間隔で並ぶ複数個の孔部が形成されている、ものとして特徴づけられる。この防水テープを使用することにより、前述の防水構造を好適に実施することができる。
【0014】
さらに、本願が開示する発明は、前記防水テープの具体的態様として、前記目地被覆帯の幅が防水テープの全幅の20~40%であり、前記孔部が丸孔で、その直径が前記目地被覆帯の幅の15~40%であり、前記防水テープの長さ方向に沿って並ぶ前記孔部の離隔寸法が前記孔部の直径の1~2倍である、との構成を採用する。これにより、防水テープおよび防水塗料の防水施工面に対する接着力と、目地部分の防水性能とをバランス良く得ることができる。
【発明の効果】
【0015】
前述のように構成される外部床の防水構造によれば、防水床ユニットの表面を被覆する金属板が熱伸縮したり横移動したりしても、金属板の目地部分に張着された防水テープおよびその上に塗り重ねられた防水塗料と、金属板との一体的な接着力が長期間にわたって好適に保持され、安定的な防水性能が得られる。
【0016】
また、その防水構造は、前述のように構成される防水テープを使用することによって確実に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本願が開示する発明の一実施形態にかかる防水テープの構成を示す部分斜視図である。
【
図2】
図1の防水テープを使用した外部床の防水構造の概略的構成を示す断面図である。
【
図3】特許文献1に開示された従来の外部床の防水構造の概略的構成を示す断面図であって、(a)は施工途中の状態、(b)は施工完了状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本願が開示する発明の実施形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0019】
(防水テープ)
図1は、本願が開示する発明の一実施形態にかかる防水テープ40の構成を示す。この防水テープ40は、基材41の片面または両面に合成ゴム材料からなる接着層42が設けられた長尺の防水テープ40である。基材41には、例えば、ポリエステル、ポリエチレン、ポリオレフィン、レーヨン等の合成樹脂材料からなる不織布またはフィルム、あるいはブチルゴム等の合成ゴム材料からなる発泡シート体、その他適宜の粘着テープ用基材を利用することができる。接着層42には、耐候性や耐蝕性に優れた各種の合成ゴム材料を利用することができるが、施工性や伸縮性、経済性等の面ではブチルゴムが特に実用的である。かかる合成ゴム材料を基材41の片面または両面に適宜の厚みで塗布することにより防水テープ40が形成される。
【0020】
本願が開示する発明の要部は、この防水テープ40の幅方向における中央部分に、防水施工面の目地を水密的に被覆する目地被覆帯43が設けられるとともに、目地被覆帯43を挟んだその両側部分に、防水テープ40の長さ方向に沿って並ぶ複数個の孔部44が形成されている点にある。目地被覆帯43は、略一様の幅で防水テープ40の長さ方向に途切れなく延びている。複数個の孔部44は全て同じ大きさの丸孔であり、どちらの側も略等間隔で平面視直線状に並んでいる。目地被覆帯43および孔部44の形態や寸法関係については、以下の防水構造(
図2)に関連付けて詳述する。
【0021】
(防水構造)
図2は、本願が開示する発明の一実施形態にかかる外部床の防水構造を示す。図示の部位は、
図3に示した従来の防水構造の目地部分と同じ部位を拡大したものであり、
図3に示した従来の防水構造と実質的に同一の構成要素には共通の符号を付している。
【0022】
外部床下地2は、適宜の躯体上に、ALC床版や構造用合板その他の下地材を略水平に架設して形成されている。ただし、本願が開示する発明においては、外部床下地2の材質や構造は特に限定しない。
【0023】
外部床下地2の上に敷き並べられる防水床ユニット1は、断熱材11の上面に被覆金属板12を積層接着するなどして形成されている。断熱材11としては、発泡ポリスチレン樹脂の板体が実用性において特に優れるが、これに限らず、適度な断熱性と保型性とを備えた比較的軽量の材料を好適に利用することができる。
【0024】
被覆金属板12には、薄鋼板の上面または上下両面にポリ塩化ビニル樹脂による耐候性被膜を形成した、いわゆる塩ビ鋼板を好適に利用することができる。また、それに替えて、例えばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂系、アクリル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、シリコンポリエステル系樹脂その他の合成樹脂系材料、あるいはエチレンプロピレンゴム、ブチルゴム、クロロプレンゴムその他の合成ゴム材料等による塗装、融着あるいはシート張着等の表面処理によって耐水性、耐蝕性、耐酸性等を向上させた鋼板等も利用可能である。また、鋼板に替えて、それ自体が耐水性に優れるステンレス鋼板やアルミニウム合金板を利用してもよいが、その場合も、メッキや塗装等の表面処理によって耐蝕性や耐酸性を強化すると、より好ましい。
【0025】
例示の防水構造においては、被覆金属板12が、その縁部を断熱材11の縁部に揃えて積層されており、その防水床ユニット1同士が目地部分に略一定幅(例えば10mm前後)の隙間をあけて外部床下地2上に並べられ、接着剤等を介して外部床下地2に固定される。すなわち、目地3を介して隣接する被覆金属板12の上面が防水施工面10となり、その目地3の上に本願が開示する発明の要部をなす防水テープ40が張着される。
【0026】
防水テープ40は、その幅方向における中央部分に設けられた目地被覆帯43を目地3の上に重ね、目地3の長さ方向にわたって途切れないように被覆金属板12に張着される。この目地被覆帯43によって目地3の隙間が水密的に被覆される。目地被覆帯43の両側部分に一列ずつ形成された孔部44は、目地3を挟む両側の被覆金属板12にそれぞれ重ねられ、孔部44よりも外側の側縁部分は両側の被覆金属板12にそれぞれ張着される。
【0027】
次いで、防水テープ40の上に防水塗料5が塗り重ねられる。すると、この防水塗料5が防水テープ40に形成された孔部44内に流入して防水施工面10に接着される。この防水塗料5には、適度な流動性を備えて厚塗りに適し、塗布後も長期間にわたって適度な伸縮性を保持する塗料が好ましく、特にウレタン(ポリウレタン、アクリルウレタン)樹脂系塗料が実用性に優れる。また、それ以外にも、被覆金属板12および防水テープ40との接着性が良い各種の合成樹脂系塗料(例えば、ピュアアクリル塗料、シリコン樹脂系塗料、ビニル樹脂塗料、タールエポキシ樹脂塗料等)や、防水テープ40の接着層42とは異なる合成ゴム系塗料(例えば、塩化ゴム系塗料等)、あるいはポリマーセメント系の防水塗料を利用することができる。
【0028】
かかる構成により、防水上の弱点になりやすい防水施工面10の目地3の上には、防水テープ40と防水塗料5の塗膜とからなる二重の防水層が形成される。防水テープ40と防水塗料5とは材質が異なり、それらが互いの特性を補完し合うことで、防水施工面10に対する一体的な接着力が長期間にわたって好適に保持される。特に、ブチルゴムを接着層42とする防水テープ40と、ウレタン樹脂系の防水塗料5とを組み合わせた場合には、互いが相性よく接着して、それぞれの伸縮性も良好に保持される
この防水構造において特に安定した防水性能を得るには、防水テープ40の全幅Wが目地3の幅Jの5~10倍程度であるのが好ましい。防水テープ40の全幅Wがそれよりも小さいと、防水施工面10への接着力が弱くなり、反対に大きすぎると、施工後に熱伸縮等の影響を受けやすくなって膨湾を生じやすくなる。そして、目地被覆帯43の幅Aは、防水テープ40の全幅Wの20~40%であって、かつ、目地3の幅Jの2~3倍程度であるのが好ましい。さらに、孔部44は、その直径Dが目地被覆帯43の幅Aの15~40%であり、防水テープ40の長さ方向に沿って並ぶ離隔寸法B(中心間距離ではなく、孔部44以外の部分の寸法)が孔部44の直径Dの1~2倍であるのが好ましい。これらの比率設定により、防水施工面10に対する防水テープ40および防水塗料5の接着力のバランスを最適化することができる。
【0029】
なお、本願が開示する発明の技術的範囲は、例示した実施の形態によって限定的に解釈されるべきものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて概念的に解釈されるべきものである。本願が開示する発明の実施に際しては、特許請求の範囲において具体的に特定していない構成要素の形状、構造、材質、数量、接合形態、相対的な位置関係等を、例示形態と実質的に同等程度以上の作用効果が得られる範囲内で適宜、改変することが可能である。
【0030】
特に、本願が開示する発明の要部をなす防水テープ40の孔部44は、目地被覆帯43の両側部分にそれぞれ二列以上ずつ形成されていてもよいし、その配列形態についても、例示のような直線状配列に限らず、例えばジグザグ(千鳥状)配列になっていてもよい。また、小径の孔部と大径の孔部とが交互に並ぶような形態であってもよい。これらは、目地3の幅や防水テープ40の全幅等に応じて、あるいは接着層42や防水塗料5の種類に合わせて適宜、変更可能である。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本願が開示する発明は、建物その他の構造物の屋外部分に略水平に設けられる外部床(非歩行タイプの平坦な屋根面を含む。)の目地部分のための防水構造として、幅広く利用することができる。
【符号の説明】
【0032】
1 防水床ユニット
10 防水施工面
11 断熱材
12 被覆金属板
13 段落部
2 外部床下地
3 目地
40 防水テープ
41 基材
42 接着層
43 目地被覆帯
44 孔部
5 防水塗料
A 目地被覆帯の幅
B 孔部の離隔寸法
D 孔部の直径
J 目地の幅
W 防水テープの全幅