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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】キャリアテープの蓋体
(51)【国際特許分類】
   B65D 85/86 20060101AFI20240131BHJP
   B32B 7/14 20060101ALI20240131BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20240131BHJP
   B65D 77/20 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B65D85/86 300
B32B7/14
B65D65/40 D
B65D77/20 L
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020030274
(22)【出願日】2020-02-26
(65)【公開番号】P2021133952
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000190116
【氏名又は名称】信越ポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】平岩 重信
【審査官】宮崎 基樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-026299(JP,A)
【文献】実開昭52-091301(JP,U)
【文献】特開2019-199521(JP,A)
【文献】特開2004-123112(JP,A)
【文献】特開2004-154949(JP,A)
【文献】特開2004-262550(JP,A)
【文献】特開2009-046132(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 85/86
B65D 77/20
B65D 65/40
B32B 7/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に並んで複数の凹部が間欠的に設けられたキャリアテープに貼着されて、前記複数の凹部のそれぞれの開口を閉じる蓋体であって、
前記キャリアテープと前記蓋体とのシール部が、前記複数の凹部を挟んでテープ幅方向の両側にそれぞれテープ長手方向に延びるように設けられ、
前記シール部には、テープ長手方向に対しそれぞれ傾斜して延びる複数の接着領域および非接着領域が交互に形成されて、テープ幅方向における接着領域の長さの割合がテープ長手方向の位置によらず略一定となるように構成されている
ことを特徴とするキャリアテープの蓋体。
【請求項2】
前記シール部において隣り合う前記接着領域が互いに平行に形成されている、
ことを特徴とする請求項1に記載のキャリアテープの蓋体。
【請求項3】
前記シール部において前記複数の接着領域のテープ長手方向に対する傾斜角度が60°よりも小さく設定されている、
ことを特徴とする請求項2に記載のキャリアテープの蓋体。
【請求項4】
前記シール部において前記複数の接着領域のテープ幅方向の寸法が同じである、
ことを特徴とする請求項2または3のいずれかに記載のキャリアテープの蓋体。
【請求項5】
前記シール部における前記接着領域の長さの割合が18~95%である、
ことを特徴とする請求項1から4までのいずれか1項に記載のキャリアテープの蓋体。
【請求項6】
前記キャリアテープの長手方向に延びる蓋体としてのカバーテープであって、
前記シール部の接着層厚みが0.5~10.0μmである、
ことを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のキャリアテープの蓋体。
【請求項7】
前記キャリアテープの長手方向に延びる蓋体としてのカバーテープであって、その基材層の一方の面全体に中間層を介して接着層が形成され、前記基材層の他方の面には帯電防止層が形成されており、
前記帯電防止層、基材層、中間層および接着層を含むカバーテープの総厚みが35~60μmである、
ことを特徴とする請求項1から6までのいずれか1項に記載のキャリアテープの蓋体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種電子部品、精密機器などの部品の収納、搬送などに用いるキャリアテープに関し、特にエンボス部に収納した部品を覆う蓋体のシール部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、この種のキャリアテープとしては、例えば特許文献1に記載されているエンボス型のキャリアテープが知られている。このものでは、長手方向に並んで間欠的に形成された多数の凹部(エンボス部)にそれぞれ電子部品などを収納し、それらを覆うように蓋体としてのカバーテープを熱融着して、封入する。このように部品などを収納したキャリアテープは、リールに巻き取って保管したり、搬送したりすることができる。
【0003】
そして、例えば電子部品を基板などに実装する際には、リールを実装機(マウンター)に取り付けてキャリアテープを送り出しながら、カバーテープを剥がしてゆき、剥がれたところのエンボス部から部品を取り出す。こうして部品を取り出す際には、あまり強い力を必要とせず、スムーズにカバーテープを剥がせることが好ましい一方で、搬送中にカバーテープが剥がれたりしないよう、所要の剥離強度も求められる。
【0004】
このようなカバーテープの接着層としては従来一般的にアクリル系およびポリスチレン系の樹脂が用いられ、その接着力は熱融着の際の温度、圧力、時間などによって変化するので、所要の剥離強度が得られるように工程の管理が行われている。特に剥離強度への影響が大きいのは熱融着時の温度(以下、シール温度ともいう)であり、一般的には例えば図2に示されているように、シール温度が高いほど剥離強度も高くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平7-223674号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、従来までは上述した剥離強度との相関を考慮してシール温度を管理し、剥がすときにあまり強い力が必要ないように低めの温度に設定していたが、こうすると、シール部内における部位ごとの接着力のばらつきが大きくなってしまう。この結果、前記の図2に符号Rを付して示すように、シール温度が低くなるほど剥離強度の最大、最小のばらつきが大きくなってしまう。
【0007】
こうなると、前記の如く例えば電子部品を実装する際に、リールからキャリアテープを引き出しながら、カバーテープを剥がしてゆく途中で接着力が大きく変化することから、キャリアテープの振動(ジッパリング)が大きくなってしまい、エンボス部から電子部品が飛び出すといった不具合の生じるおそれがある。
【0008】
本発明は以上の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、キャリアテープにおいて蓋体(カバーテープ)のシール部の形態に工夫を凝らし、あまり強い力が必要なく、かつ、スムーズにカバーテープを剥がせるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(1)本発明に係る1つの態様は、長手方向に並んで複数の凹部が間欠的に設けられたキャリアテープに帖着されて、前記複数の凹部のそれぞれの開口を閉じる蓋体であって、前記キャリアテープと前記蓋体とのシール部が、前記複数の凹部を挟んでテープ幅方向の両側にそれぞれテープ長手方向に延びるように設けられ、前記シール部には、テープ長手方向に対しそれぞれ傾斜して延びる複数の接着領域および非接着領域が交互に形成されて、テープ幅方向における接着領域の長さの割合がテープ長手方向の位置によらず略一定となるように構成されているものである。
(2)上記(1)の態様において、前記シール部における隣り合う前記接着領域が互いに平行に形成されていてもよい。
(3)上記(2)の態様において、前記シール部における前記複数の接着領域のテープ長手方向に対する傾斜角度が60°よりも小さく設定されていてもよい。
(4)上記(2)、(3)の態様において、前記シール部における前記複数の接着領域のテープ幅方向の寸法が同じであってもよい。
(5)上記(1)~(4)のいずれかの態様において、前記シール部における前記接着領域の長さの割合は18~95%であってもよい。
(6)上記(1)~(5)のいずれかの態様において、前記蓋体が、前記キャリアテープの長手方向に延びるカバーテープであり、前記シール部の接着層厚みが0.5~10.0μmであってもよい。
(7)上記(1)~(6)のいずれかの態様において、前記蓋体が、前記キャリアテープの長手方向に延びるカバーテープであって、その基材層の一方の面全体に中間層を介して接着層が形成され、前記基材層の他方の面には帯電防止層が形成されており、前記帯電防止層、基材層、中間層および接着層を含むカバーテープの総厚みが35~60μmであってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係るキャリアテープの蓋体によれば、例えばカバーテープのシール部における接着領域を斜めストライプ状のパターンにしたことで、全面を接着領域にするのに比べて接着面積が少なくなる分、シール温度を高めに設定することができ、接着力(剥離強度)のばらつきを小さくできる。これにより、あまり強い力を必要とせず、スムーズにカバーテープを剥がせるようになって、ジッパリングを抑制し、部品の飛び出しなどの不具合を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る実施形態のテーピング体の概略構造を示し、(a)一部、断面で示す斜視図であり、(b)(c)シール部の構造を示す断面図である。
図2】カバーテープの剥離強度のシール温度依存性の一例を示すグラフ図である。
図3】(a)カバーテープの接着層、および(b)シール部の形態を示す説明図である。
図4】シール部における公知のパターンを例示する説明図であり、(a)はストライプ、(b)はクロス、(c)(d)は海島パターンをそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。本明細書の実施形態においては、全体を通じて、同一の部材には同一の符号を付している。
【0013】
図1(a)は、本発明に係る実施形態のテーピング体1を示す斜視図である。
このテーピング体1は、例えば電子部品などを多数、収納した状態でリールに巻き取り、保管したり、搬送したり、また、一例として実装機(マウンター)に取り付けて送り出し、電子部品などを供給したりするものである。テーピング体1は、電子部品に限らず、例えば精密部品などの保管、搬送、供給等にも用いられる。
【0014】
図1(a)に示すようにテーピング体1は、それぞれテープの搬送方向に延びる長尺のキャリアテープ20およびカバーテープ30(蓋体)を備えている。キャリアテープ20にはその長手方向(テープ長手方向)に沿って、部品P(図1(b)にのみ示す)を収納するための凹部21が所定の間隔で、即ち間欠的に並んで複数、形成されている。この凹部21の形状は、収納する部品の寸法および形状に合わせて設定されるが、図示の例では平面視で略矩形状とされている。
【0015】
また、キャリアテープ20における幅方向(テープ幅方向)の一側(図1では奥側に位置する送り穴側)には、テーピング体1を送り出すための送り穴22が所定の間隔で、即ち間欠的に並んで複数、形成されている。この送り穴22の寸法、形状および間隔は、実装機などの送り機構に合わせて設定されるものであり、図示の例では断面が円形状の送り穴22が、凹部21の約半分の間隔で形成されている。
【0016】
一例としてキャリアテープ20は、熱可塑性樹脂を材料として形成されている。熱可塑性樹脂としては、例えばポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレンなどの合成樹脂、これらの樹脂にカーボン等を練り込んで導電性を付与したもの、表面に導電コーティングを施したものなどが挙げられる。
【0017】
そのようなキャリアテープ20の複数の凹部21のそれぞれの開口を閉じるように、カバーテープ30が貼着される。図1(b)に表れているように、この実施形態ではカバーテープ30には送り穴を形成せず、キャリアテープ20の送り穴22を塞がないように、カバーテープ30の幅をキャリアテープ20よりも狭くしている。なお、カバーテープ30の幅をキャリアテープ20と同程度にして、送り穴22に対応する位置に同じ寸法、形状の送り穴を形成してもよい。
【0018】
一例としてカバーテープ30は、例えばポリエステルおよびポリエチレンテレフタレートなどのフィルムを貼り合わせて基材層とし、その表面に導電コーティングを施す一方、裏面にはポリエチレン、ポリアミドなどの中間層と、アクリル系樹脂の接着層とを順に形成したものである。接着層にはポリエステルやポリスチレン系樹脂、酢酸ビニル系樹脂なども用いられ、導電性を付与するために金属酸化物および有機導電性ポリマー等の導電性物質が練り込まれることもある。
【0019】
それら各層の厚みは帯電防止層で約1μm、基材層で約12~16μm、中間層で約30~40μm、接着層で約0.5~10.0μmが好ましく、それらを合わせたカバーテープ30の総厚みは、所要の強度を確保するために約35~60μmとするのが好ましい。特に接着層については、0.5μm未満では十分な接着力が得られない一方、10μmを超えるとブロッキングのリスクが大きくなる。
【0020】
そして、凹部21に部品が収納されたキャリアテープ20にカバーテープ30を重ね合わせて、凹部21を間に挟んだテープ幅方向両側の所定部位をそれぞれコテにより加熱することで、テープ長手方向に連続して熱融着された2つのシール部40が形成される。図示の例ではシール部40は、テープ幅方向の一側では凹部21と送り穴22との間に形成され、反対の他側ではキャリアテープ20およびカバーテープ30の側縁に沿って形成されている。
【0021】
こうして部品を収納したテーピング体1のリールを実装機に取り付けて、送り出しながらカバーテープ30を剥がすときには、シール部40がテープ長手方向の一方の端から順に剥離してゆく。このときにはあまり強い力を必要とせず、スムーズにカバーテープ30を剥がせることが好ましい一方で、搬送中にカバーテープ30が剥がれたりしないように十分な剥離強度も求められる。
【0022】
ここで、一般的にアクリル系樹脂による接着層の剥離強度は、熱融着する際の温度、圧力、時間などによって変化するが、特に熱融着時の温度(以下、シール温度ともいう)の影響が強い。一例として図2に示すように、シール温度が高いほど剥離強度も高くなり、図示の例では例えば130℃のときの剥離強度(平均値)が0.13Nであるのに対して、180℃のときの剥離強度(平均値)は0.93Nにもなる。
【0023】
なお、図2に示すグラフは、詳しくは以下に述べるように、本実施形態のテーピング体1を用いた試験によって得られたものであり、一例としてキャリアテープ20の幅は8.0mm、カバーテープ30の幅は5.5mmであり、シール部40の幅は両側それぞれが0.5mmである。また、熱融着時の圧力は1.2MPa、時間は0.1秒であり、剥離強度は単位面積当たりに必要な力(N)を計測している。
【0024】
前記のような剥離強度のシール温度依存性を考慮して、カバーテープ30を剥がすときにあまり強い力が必要ないよう、低剥離強度に設定する必要があり、シール温度を下げる必要がある。その為、シール部40内における部位による接着力のばらつきが大きくなってしまう。これは、シール部40内においても微視的には強く接着している部分と、そうでない部分とが混在しており、シール温度の低いときにそのばらつきが大きくなることによると考えられる。
【0025】
このため、図2に符号Rとして剥離強度の最小、最大の範囲を示すように、シール温度の低いときに剥離強度のばらつきが大きくなる。こうなると、前記の如く例えば実装機において部品を供給する際にカバーテープ30を剥がしてゆく途中で、剥離強度が大きく変化することから、テーピング体1の振動(ジッパリング)が大きくなってしまい、凹部21から部品が飛び出すといった不具合を生じ得る。
【0026】
そこで、本実施形態では、シール温度を高めに設定することで、シール部40内の部位による接着力のばらつきを小さくしつつ、そうしても剥離強度があまり高くならないように、接着層を斜めストライプ状のパターンによって構成した。すなわち、図3(a)に一例を示すようにカバーテープ30の裏面全体に形成される接着層を、テープ長手方向に対し傾斜したストライプ状としている。
【0027】
(シール部の形態)
以下、本実施形態のシール部の形態について詳しく説明すると、まず、図3(a)に示すようにカバーテープ30のテープ幅方向の寸法は例えば5.5mmであり、その両側におけるシール部40の幅、即ちコテ幅はそれぞれ0.5mmである。そして、拡大して図3(b)に示すように、テープ長手方向に対して例えば30°くらい傾斜してそれぞれ延びる複数の接着領域41と、非接着領域42とが交互に形成されている。
【0028】
図示の例では、接着領域41および非接着領域42がそれぞれ一定の幅で、かつ平行に形成されており、これにより、テープ長手方向の位置によらず、テープ幅方向における接着領域41の長さの割合が一定になっている。図3(b)には説明の便宜上、テープ長手方向に延びる補助線Aを100μm間隔で示しており、図において左下隅にある正方形の領域Bに斜めストライプパターンの特徴が表れている。
【0029】
すなわち、前記の正方形領域Bの上辺においては、図の左側に位置する接着領域41の幅が50%になっており、一方、正方形領域Bの下辺においては、図の右側に位置する接着領域41の幅が50%になっている。そして、上辺から下に向かって移動するに従い、左側の接着領域41の幅が一定の割合で狭くなるとともに、これと同じ割合で右側の接着領域41の幅が広がってゆく。
【0030】
つまり、本実施形態のシール部40の斜めストライプパターンによれば、接着領域41と非接着領域42とが同じ幅とされ、テープ長手方向の位置によらず、テープ幅方向における接着領域41の長さの割合(接着面積の割合に相当するので、以下、接着面積割合ともいう)が50%で一定になっている。このため、シール部40における実際の接着面積は見かけ(全面を接着領域にした場合)の半分になり、その分、接着力が小さくなる。
【0031】
そして、そのように接着面積が小さくなり、接着力が小さくなる分、本実施形態では、シール部40のシール温度を高めに設定することで、部位による接着力のばらつきを小さくすることができる。詳しくは後述するが、図2に示す例ではシール温度を例えば150℃以上に設定することで、接着力のばらつきを十分に小さくし、部品の供給時などにカバーテープ30を剥がす際の剥離強度の変化を抑制することができる。
【0032】
ここで、前記シール部40のパターンについては、必ずしもテープ長手方向に対して30°傾斜させる必要はない。但し、仮に図4(a)のような傾斜していないストライプパターンにすると、コテにより加熱して融着させる部位がテープ幅方向にずれた場合に、接着面積割合が変化してしまい、接着力のばらつきを生じることになるので、少なくとも1度以上、好ましくは5°以上、より好ましくは10°以上、傾斜させる。
【0033】
また、図示しないが、仮に傾斜角度が90°になると、非接着領域42がテープ幅方向の全体にわたって形成されることになり、ここでは接着力が急減してしまうので、傾斜角度は90°未満にすべきである。この傾斜角度は、接着領域41および非接着領域42の幅に応じて、非接着領域42がテープ幅方向の全体にわたって形成されないように、幾何学的に設定することができる。
【0034】
現実的には、接着層のストライプパターンを印刷によって形成することも考慮して、ストライプパターンの傾斜角度は89°よりも小さくすべきである。また、テーピング体1を送り出しながらカバーテープ30を剥がすときには、テープ長手方向に対して斜めに力が加わることもあるので、余裕を見れば傾斜角度は例えば80°よりも小さくするのが好ましく、60°よりも小さくするのがより好ましい。
【0035】
また、シール部40のパターンについては、一例を図4(b)に示すように、本実施形態のような斜めストライプパターンの傾斜の向きを反対にして、対称な斜めストライプパターンとし、これらを重ね合わせてクロスパターンとすることも考えられる。しかしながら、このようなクロスパターンでは、α-α(50%)~β-β(100%)と剥離強度自体が大きく変化し、一定の剥離強度にならない為、好ましくない。
【0036】
さらに、一例を図4(c)に示すように接着領域41をドット状にしたり、反対に非接着領域42をドット状にしたりして、いわゆる海島パターンとすることも考えられるが、例えば図4(c)の例ではテープ長手方向に接着領域41の存在しない範囲Cができてしまい、接着力が急変するので、好ましくない。図4(d)の例でも同様にテープ長手方向に接着力が急変することになるので、好ましくない。
【0037】
(実施例)
次に、上述した実施形態のテーピング体1を用いて行った試験の結果を説明する。
以下の表1は、上述した実施形態のテーピング体1について、斜めストライプパターンのシール部40における接着面積割合(テープ幅方向における接着領域41の長さの割合)を種々、変更するとともに、コテによる熱融着の際のシール温度も変更して、剥離強度とそのばらつきの変化について調べた結果である。
【0038】
【表1】
【0039】
なお、試験に供したテーピング体1においてカバーテープの総厚みは約52μmであり、そのうちの接着層の厚み(即ちシール部における接着領域の厚み)は約5μmである。また、表1において接着面積割合100%の場合の強度とは、全面を接着領域とした場合の剥離強度を示している。この場合、表1の比較例1は、接着面積割合を100%にするとともに、シール温度を135℃にしたものであり、剥離強度は0.3Nに抑えられたが、そのばらつきが0.21Nと大きくなってしまう。
【0040】
これに対し、表1の実施例3は、接着面積割合を50%にするとともに、シール温度を160℃にしたものであり、その剥離強度は0.37Nと好適な値になり、しかもばらつきが0.039と十分に小さくなっている。同じシール温度で接着面積割合が100%の場合は剥離強度が0.74Nになっており、本実施形態では剥離強度を半分程度に設定できることが分かる。
【0041】
前記実施例3から表の下側に向かって、実施例4~10の順にシール温度を180~220℃に高くする一方、接着面積割合は17~40%の範囲で低下させる。こうすると、接着面積割合の低下に概ね比例して剥離強度が低下してゆくので、シール温度の設定によって剥離強度を確保しつつ、そのばらつきを十分に小さくできる。そして、最も下の実施例10では剥離強度が0.2Nになっており、この辺りが下限値と考えられる。
【0042】
一方、前記実施例3よりも表の上側に示した実施例1、2では、いずれもシール温度を150℃に設定するとともに、接着面積割合は96%,95%と非常に大きく設定しており、これにより剥離強度が0.6Nと高くなっている。こうして接着面積が大きくなっていることと、シール温度が低いこととが相まって、剥離強度のばらつきも0.1N近くまで増大しており、この辺りが接着面積割合の上限と考えられる。
【0043】
なお、前記実施例1よりも表の上側に示した比較例2は、実施例の斜めストライプパターンとの比較のために、図4(b)に示したクロスパターンのシール部を有するテーピング体を製作して、試験を行ったものである。上述したようにクロスパターンでは、接着領域が交差する部分で一時的に接着面積割合が減少し、接着力が急減することから、剥離強度のばらつきが0.390と大きくなっている。
【0044】
上記の試験結果から、表1に記載の実施例1~10のテーピング体1の場合、シール部40のストライプの間隔などを変更して接着面積割合を18~95%にすれば、シール温度の調節によって剥離強度を約0.2~0.6Nの範囲で任意に設定することができる。また、その接着面積割合およびシール温度の設定によって、剥離強度のばらつきを0.1N未満に抑制することができる。
【0045】
以上、説明したように本実施形態のテーピング体1によれば、カバーテープ30のシール部40を斜めストライプ状のパターンによって形成したことで、全面を接着領域にするのに比べて実際の接着面積が小さくなるので、その分、シール温度を高めに設定することによって、剥離強度のばらつきを小さくできる。例えばシール温度は約150℃以上に設定すればよい。
【0046】
また、斜めストライプパターンのシール部40では、テープ長手方向の位置によらず、接着領域41のテープ幅方向の長さの割合、即ち接着面積割合が概ね一定になるので、テープ長手方向について接着力、即ち剥離強度のばらつきが生じることも抑制できる。
【0047】
よって、上述したように接着面積割合を所定の範囲(18~95%、より好ましくは30~50%)に設定することにより、搬送中に剥がれない強さを確保しつつ、部品の供給時になど、剥がすときにはあまり強い力を必要とせず、しかも概ね一定の力でスムーズにカバーテープ30を剥がせるようになる。このことで、ジッパリングを抑制し、部品の飛び出しなどの不具合を防止することができる。
【0048】
また、本実施形態のテーピング体1では、前記のようなパターンを形成する接着層の厚みを0.5~10.0μmとしているので、十分な接着力が得られるとともに、ブロッキングの発生を抑制できる。さらに、カバーテープ30の総厚みを35μm以上とすることで、必要な強度を確保できるとともに、総厚みを60μm以下とすることで、シール部40の熱融着時に十分な熱伝導性が得られる。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について詳述したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内において、種々の変形、変更が可能である。
【0050】
例えば上述した実施形態では、カバーテープ30の接着層の斜めストライプパターンにおいて、隣り合う接着領域41を互いに平行に形成し、かつそれぞれの接着領域41のテープ幅方向の寸法を略同じにしているが、これに限ることはなく、シール部40においてテープ幅方向における接着領域41の長さの割合が、テープ長手方向の位置によらず略一定になるようなパターンであればよい。
【0051】
但し、複数の接着領域41のテープ長手方向に対する傾斜角度を異ならせたり、テープ幅方向の寸法を異ならせたりすると、例えば印刷によりパターンを形成する際、或いは、シール部40をコテにより加熱して融着させる際など、実際の製造に伴う位置のずれや誤差に起因して接着面積割合が変化するおそれがあるので、上述した実施形態のような均一な斜めのパターンとするのが好ましい。
【0052】
また、上述した実施形態のテーピング体1では、長尺のカバーテープ30の側縁に沿ってシール部40を形成しているが、これに限らず、側縁から少し間隔を空けてシール部40を形成してもよい。さらに、キャリアテープ20と同様に長尺のカバーテープ30にも限定されず、例えば、長尺のカバーテープ30を長手方向に複数に分割した帯状の蓋体を、キャリアテープ20に貼着するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 テーピング体
20 キャリアテープ、21 凹部、22 送り穴
30 カバーテープ(蓋体)
40 シール部、41 接着領域、42 非接着領域
図1
図2
図3
図4