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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】樹脂潤滑用グリース組成物
(51)【国際特許分類】
   C10M 139/00 20060101AFI20240131BHJP
   C10M 169/06 20060101ALI20240131BHJP
   C10M 169/04 20060101ALI20240131BHJP
   C10M 117/02 20060101ALN20240131BHJP
   C10M 101/02 20060101ALN20240131BHJP
   C10M 107/02 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 10/12 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 10/02 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 30/06 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 40/04 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 40/00 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 40/02 20060101ALN20240131BHJP
   C10N 50/10 20060101ALN20240131BHJP
【FI】
C10M139/00 Z
C10M169/06
C10M169/04
C10M117/02
C10M101/02
C10M107/02
C10N10:12
C10N10:02
C10N30:06
C10N40:04
C10N40:00 D
C10N40:00 G
C10N40:02
C10N50:10
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020051409
(22)【出願日】2020-03-23
(65)【公開番号】P2021147569
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-24
(73)【特許権者】
【識別番号】000162423
【氏名又は名称】協同油脂株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100119013
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 一夫
(74)【代理人】
【識別番号】100123777
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 さつき
(74)【代理人】
【識別番号】100111796
【弁理士】
【氏名又は名称】服部 博信
(74)【代理人】
【識別番号】100123766
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 七重
(72)【発明者】
【氏名】相馬 実波
(72)【発明者】
【氏名】筒井 大介
(72)【発明者】
【氏名】柴田 亮
【審査官】中野 孝一
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-292083(JP,A)
【文献】特表2018-510947(JP,A)
【文献】特表2011-512432(JP,A)
【文献】特開2019-116949(JP,A)
【文献】特開2007-262343(JP,A)
【文献】特開2007-262344(JP,A)
【文献】特開2005-247971(JP,A)
【文献】特開2006-044306(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10M101/00-177/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製部材と樹脂製部材との潤滑又は樹脂製部材と他の素材製の部材との潤滑に使用するためのグリース組成物であって、
組成物の全質量に対して、0.5質量%を超え、7.5質量%未満の固体有機モリブデン化合物を含有し、潤滑対象の樹脂製部材がポリアミドである、前記グリース組成物。
【請求項2】
前記固体有機モリブデン化合物の含有量が、1~5質量%である請求項1記載のグリース組成物。
【請求項3】
前記増ちょう剤が、リチウム石けん系増ちょう剤である、請求項1又は2記載のグリース組成物。
【請求項4】
基油が、合成炭化水素油及び鉱油からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する請求項1~3のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項5】
潤滑対象の樹脂製以外の素材製部材が金属製部材である請求項1~のいずれか1項記載のグリース組成物。
【請求項6】
請求項1~のいずれか1項記載のグリース組成物を充填した電動パワーステアリングの減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂潤滑用グリース組成物に関する。詳細には、樹脂製部材間、樹脂製部材と他の素材製部材、例えば、金属製部材との潤滑に使用するのに適した樹脂潤滑用グリース組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車部品等には種々の金属製部材が多用されていたが、近年、軽量化を目的として、金属製部材に代えて樹脂製部材が使用されることが多くなってきている。そのため、現在は、樹脂製部材と金属製部材のいずれもが使用されている。例えば、自動車の電動パワーステアリングの減速機部には、樹脂(ポリアミド)製ウォームホイールギヤと、鋼製ウォームギヤが使用されている。
これらの樹脂製部材間、及び樹脂製部材と金属製部材間の潤滑に使用されるグリース組成物として、特許文献1には、ポリオレフィンワックスを含む潤滑グリース組成物が記載されている。このグリース組成物は、樹脂潤滑部に使用した場合、低摩擦が実現でき、樹脂潤滑部を有する部品の効率向上の要求に対応が可能である。特許文献2には、増ちょう剤と基油を含むグリースに、モンタンワックスを含有させたことを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物が記載されている。このグリース組成物は、潤滑部の静摩擦係数を低くし、潤滑部の耐久寿命を長くすることができるという点で優れている。
しかし、これらのグリース組成物は電動パワーステアリングの減速機部に適用した場合、静摩擦係数が低いことから、例えば高速道路での運転時といったモーターによる非アシスト時にわずかにハンドルをきると、減速機の潤滑部がすべり、ハンドルが中心を外れる問題が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-194867号公報
【文献】特開2002-371290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は、潤滑部の静摩擦係数を高くし、且つ、高くした静摩擦係数に引きずられて動摩擦係数が上昇することを抑制し、そのままある程度低く維持することで、モーターによる非アシスト時に、減速機の潤滑部のすべりを抑制し、アシスト時に潤滑効率を維持できる樹脂潤滑用グリース組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、固体有機モリブデン化合物を含ませたことを特徴とする樹脂潤滑用グリース組成物である。すなわち、本発明により、以下のグリース組成物を提供する。
〔1〕樹脂製部材と樹脂製部材との潤滑又は樹脂製部材と他の素材製の部材との潤滑に使用するためのグリース組成物であって、
組成物の全質量に対して、0.5質量%を超え、7.5質量%未満の固体有機モリブデン化合物を含有する、前記グリース組成物。
〔2〕前記固体有機モリブデン化合物の含有量が、1~5質量%である前記〔1〕に記載のグリース組成物。
〔3〕前記増ちょう剤が、リチウム石けん系増ちょう剤である、前記〔1〕又は〔2〕記載のグリース組成物。
〔4〕基油が、合成炭化水素油及び鉱油からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有する前記〔1〕~〔3〕のいずれか1項記載のグリース組成物。
〔5〕潤滑対象の樹脂製部材がポリアミドである前記〔1〕~〔4〕のいずれか1項記載のグリース組成物。
〔6〕潤滑対象の樹脂製以外の素材製部材が金属製部材である前記〔1〕~〔5〕のいずれか1項記載のグリース組成物。
〔7〕前記〔1〕~〔6〕のいずれか1項記載のグリース組成物を充填した電動パワーステアリングの減速機。
【発明の効果】
【0006】
本発明により、潤滑部の静摩擦係数を高くし、且つ、動摩擦係数をある程度低く維持することで、モーターによる非アシスト時に、減速機の潤滑部のすべりを抑制し、アシスト時に潤滑効率を維持できる樹脂潤滑用グリース組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
〔増ちょう剤〕
本発明のグリース組成物に用いる増ちょう剤は特に制限されない。例えば、Li石けんや複合Li石けんに代表される石けん系増ちょう剤、ジウレアに代表されるウレア系増ちょう剤、有機化クレイやシリカに代表される無機系増ちょう剤、PTFEに代表される有機系増ちょう剤が挙げられる。このうち、石けん系増ちょう剤が好ましい。石けん系増ちょう剤自身が低い動摩擦係数を有することから、石けん系増ちょう剤を用いることにより、潤滑効率が優れる。12-ヒドロキシステアリン酸リチウム、ステアリン酸リチウム及び複合Li石けん(例えば、12-ヒドロキシステアリン酸及びアゼライン酸から形成される複合Li石けん)がより好ましく、12-ヒドロキシステアリン酸リチウム及び複合Li石けんが特に好ましい。12-ヒドロキシステアリン酸リチウム及び複合Li石けんを用いることにより、少ない増ちょう剤量で増ちょうするため、低温作動性が優れる。
本発明のグリース組成物中の増ちょう剤の量は、組成物の全質量を基準として、好ましくは3~20質量%、さらに好ましくは4~17質量%、特に好ましくは5~15質量%である。3質量%以上とすることにより、グリースを形成するのに十分な増ちょう剤効果を発揮でき、潤滑部からの漏えいを抑制できる。20質量%以下とすることにより、グリース組成物が潤滑部へ流入するのに適度な硬さを有することができる。
【0008】
〔基油〕
本発明のグリース組成物に用いる基油は特に制限されない。例えば、鉱油、ジエステルやポリオールエステルに代表されるエステル系合成油、ポリαオレフィン(「PAO」)やエチレンとα-オレフィンとのコオリゴマー、ポリブテンに代表される合成炭化水素油、アルキルジフェニルエーテルやポリプロピレングリコールに代表されるエーテル系合成油、シリコーン油、フッ素化油などが使用可能である。2種以上を併用してもよい。
ところで、電動パワーステアリングは油圧式パワーステアリングと比較して出力が小さいため、低温時の作動トルクが大きく、作動不良を生じることがある。本発明のグリース組成物を電動パワーステアリングの潤滑部、例えば減速機部に用いる場合、基油として合成油を含ませると、低温時の作動トルクを低くすることができる。特に、合成炭化水素油を含むのが好ましく、ポリαオレフィンを含むのがより好ましい。基油中の合成油の割合は特に限定されないが、低温作動性を良好にするには、PAOを好ましくは50~100質量%、より好ましくは60~100質量%、さらに好ましくは70~100質量%とするのがよい。このとき、基油の残部の種類は問わないが、コストの観点から、鉱油であるのが好ましい。したがって、本発明のグリース組成物を電動パワーステアリングの潤滑部、例えば減速機部に用いる場合、基油中の鉱油の割合は、好ましくは0~50質量%、より好ましくは0~40質量%(例えば、20~40質量%)であり、さらに好ましくは0~30質量%である。鉱油としてはあらゆる鉱油が使用できる。例えば、精製鉱油、高粘度指数油、脱ロウ鉱油などが挙げられる。低温作動性の観点から特に好ましいものは脱ロウ鉱油である。
【0009】
低温作動性及び耐久性の観点から、基油の40℃における動粘度が、20~80mm2/sであるのが好ましく、30~70mm2/sであるのがより好ましい。
基油は、40℃における動粘度が、15~420mm2/sであるPAOを、基油の全量を基準にして、70~100質量%含むのが特に好ましい。これにより、低温作動性に特に優れるグリース組成物が得られる。このとき、基油全体の40℃における動粘度は、30~70mm2/sであるのが好ましい。
本発明のグリース組成物中の基油の含有量は、グリースを製造するのに通常用いられる量であり、例えば75~95質量%であり、低温作動性の観点から、83~96質量%が好ましく、85~95質量%がより好ましい。
【0010】
〔添加剤〕
一般にグリースの添加剤として用いられる有機モリブデン化合物には、常温・常圧で固体のものと、液体のものとがある。固体有機モリブデン化合物は、グリースに配合したときも固体状態を保つことから、液体の有機モリブデン化合物とは異なる性能を発揮し得る。
本発明において用いる固体有機モリブデン化合物としては、周囲温度(例えば25℃)で固体であれば特に制限されない。
本発明の組成物中の固体有機モリブデン化合物の量は、0.5質量%を超え、7.5質量%未満であり、好ましくは1~5質量%、さらに好ましくは2~3質量%である。0.5質量%を超えると、静摩擦係数が有意に高くすることができ、被潤滑部材のすべりを抑制することができる。7.5質量%未満のとき、被潤滑部材の低温作動性及び潤滑効率を良好に保つことができる。
【0011】
本発明のグリース組成物には必要に応じて種々の添加剤を添加することができる。このような添加剤としては、例えば、酸化防止剤、錆止め剤、金属腐食防止剤、油性剤、耐摩耗剤、極圧剤、固体潤滑剤等が挙げられる。具体的には、酸化防止剤としては、アミン系、フェノール系、キノリン系、硫黄系、ジチオリン酸亜鉛等が挙げられるが、アミン系が好ましい。アミン系としては、例えば、フェニルαナフチルアミン、アルキルフェニルαナフチルアミン、アルキルジフェニルアミンなどが挙げられ、特にアルキルジフェニルアミンであることがより好ましい。
錆止め剤としては、亜鉛系、カルボン酸系、カルボン酸塩系、アミン系、スルホン酸塩系が挙げられるが、スルホン酸塩系特にCaスルホネートが好ましい。Caスルホネートとしては、潤滑油留分中の芳香族炭化水素成分のスルホン化によって得られる石油スルホン酸のカルシウム塩、ジノニルナフタレンスルホン酸やアルキルベンゼンスルホン酸のような合成スルホン酸のカルシウム塩、石油スルホン酸の過塩基性カルシウム塩、アルキル芳香族スルホン酸の過塩基性カルシウム塩などが挙げられ、特に過塩基性Caスルホネートが好ましい。
金属腐食防止剤としては、チアジアゾール系、ベンゾイミダゾール系、ベンゾトリアゾール系が挙げられるが、ベンゾトリアゾール系が好ましい。ベンゾトリアゾール系としては、1,2,3-ベンゾトリアゾール、1,H-ベンゾトリアゾール、4-メチル-1,H-ベンゾトリアゾール、4-カルボキシル-1,H-ベンゾトリアゾール、ナトリウムトリルトリアゾール、5-メチル-1,H-ベンゾトリアゾール、ベンゾトリアゾールブチルエーテル、銀ベンゾトリアゾール、5-クロロ-1,H-ベンゾトリアゾール、1-クロロ-ベンゾトリアゾール、1-ジ(C8H17)アミノメチル-ベンゾトリアゾール、2,3-ジヒドロキシプロピル-ベンゾトリアゾール、1,2-ジカルボキシエチル-ベンゾトリアゾール、(C8H17)アミノメチル-ベンゾトリアゾール、ビス(ベンゾトリアゾール-1-イル-メチル)(C8H17)アミン、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-4-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メチルアミン、N,N-ビス(2-エチルヘキシル)-5-メチル-1H-ベンゾトリアゾール-1-メチルアミンなどが挙げられ、特に1-[N,N-ビス(2-エチルヘキシル)アミノメチル]-4-メチルベンゾトリアゾールが好ましい。
油性剤としては、脂肪酸、脂肪酸エステル、リン酸エステルが挙げられる。
耐摩耗剤や極圧剤としては、リン系、硫黄系、有機金属系が挙げられる。
固体潤滑剤としては、酸化金属塩、二硫化モリブデン、ポリテトラフルオロエチレン、メラミンシアヌレート、グラファイトが挙げられる。
これら任意の添加剤の含有量は、本発明の組成物の全質量を基準にして、例えば0.1~~10質量%、好ましくは0.1~5質量%であり、より好ましくは0.5~3質量%である。
【0012】
本発明のグリース組成物の60回混和ちょう度は、離油及び漏れ防止、低温作動性の観点から、190~415であるのが好ましく、235~370であるのがより好ましい。
本発明のグリース組成物は、定法により、上記各成分及びその他の添加剤を所望の配合割合で混合することにより容易に製造することができる。
本発明のグリース組成物は、樹脂製部材間、樹脂製部材と他の素材製部材、例えば、金属製部材との潤滑に使用する。具体的には、転がり軸受、ボールねじ、電動パワーステアリング装置の減速機、サポートヨーク等に好適に用いることができる。樹脂製部材を構成する樹脂は特に制限されないが、強度や硬さの観点から、ポリアミドであるのが好ましい。
【実施例
【0013】
<試験グリース>
〔増ちょう剤が12-ヒドロキシステアリン酸リチウムである試験グリース組成物〕
基油2352.3gに対し、12-ヒドロキシステアリン酸570.0gを90℃で完全溶解させた。別容器に水酸化リチウム77.7gを90℃の純水388.5gで完全溶解させ、両者を混合し220℃まで昇温し、その後、攪拌しながら100℃以下まで冷却し、これをベースグリースとした(ベースグリースの合計量は3000g、増ちょう剤量は19%)。
上記ベースグリースに、固体有機モリブデン化合物を、表1に示す割合で配合し、表1に示す割合の増ちょう剤量になるように追加の基油を添加し、3本ロールミルで分散することにより試験グリース組成物を調製した。試験グリース組成物のちょう度は325である。
【0014】
〔増ちょう剤がステアリン酸リチウムである試験グリース組成物〕
基油1891.5gに、ステアリン酸957.2g及び水酸化リチウム1水塩151.3gを添加攪拌し、その後230℃まで加熱した。その後、攪拌しながら100℃以下まで冷却し、ベースグリースとした。上記ベースグリースに、固体有機モリブデン化合物を、表1に示す割合で配合し、表1に示す割合の増ちょう剤量になるように追加の基油を添加し、3本ロールミルで分散することにより試験グリース組成物を調製した。試験グリース組成物のちょう度は325である。
【0015】
〔増ちょう剤が複合リチウム石けんである試験グリース組成物〕
基油1776.0gの中に12-ヒドロキシステアリン酸445.9gを加え、完全に透明な液体状態になる温度(80~90℃)に加熱した。これに予め水363.5gに水酸化リチウム1水塩64.8gを添加して加熱溶解したものを加え、激しく攪拌しながら12-ヒドロキシステアリン酸のけん化反応を行って12-ヒドロキシステアリン酸のリチウム塩を形成した。次に、基油507.7g及びアゼライン酸139.4gを加えて均一な状態になるまで攪拌を継続した。これに予め水363.5gに水酸化リチウム1水塩64.8gを添加して加熱溶解したものを加え、激しく攪拌しながらアゼライン酸のけん化反応を行った。次に、加熱工程に入り内容物を200℃まで徐々に加熱した。その後、攪拌しながら100℃以下まで冷却し、ベースグリースとした。上記ベースグリースに、固体有機モリブデン化合物を、表1に示す割合で配合し、表1に示す割合の増ちょう剤量になるように追加の基油を添加し、3本ロールミルで分散することにより試験グリース組成物を調製した。試験グリース組成物のちょう度は325である。
【0016】
試験グリース組成物を調製するのに用いた成分は以下のとおりである。
<基油>
・PAO:ポリαオレフィン、40℃における動粘度:56mm2/s
・鉱油:ナフテン系鉱油、40℃における動粘度:115mm2/s
なお、動粘度は、JIS K 2220 23.に従って測定した。
<添加剤>
・固体有機Mo:MoDTC(商品名:Molyvan A R.T.Vanderbilt社製)
・ポリオレフィンワックス:ポリエチレンワックス(商品名:LICOWAX PE190 P、クラリアントケミカルズ株式会社製)
・モンタンワックス:モンタン酸部分ケン化エステルワックス(商品名:LICOWAX OP FL、クラリアントケミカルズ株式会社製)
【0017】
なお、表1に示したmass%は、グリース組成物の全質量を基準とした値であり、残部は基油である。
試験グリース組成物の混和ちょう度は、60回混和ちょう度を意味し、JIS K 2220 7.に従って測定した。
【0018】
<試験方法>
実施例、比較例のグリース組成物について、下記に示す試験を行って、安定後の摩擦係数の算術平均をとることにより、その特性を評価した。結果を表1に示す。
○静摩擦係数および動摩擦係数(バウデン試験)
[試験条件]
試験片:樹脂ピン(直径5.0mm、長さ15mm、ナイロンGF30%配合)
プレート(2.0×15×160mm、表面粗さRa=0.2μm、S45C)
滑り速度:1mm/s
ストローク:10mm
荷重:19.6N
温度:25℃
グリース塗布量:0.2mm厚
【0019】
判定基準:静摩擦係数
0.155以上=○(合格)、0.155未満=×(不合格)
判定基準:動摩擦係数
0.150以下=○(合格)、0.150超=×(不合格)
【0020】
【表1】