(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】電動機の鉄損を求める方法および当該方法に用いる試料片
(51)【国際特許分類】
G01R 33/12 20060101AFI20240131BHJP
G01R 31/34 20200101ALI20240131BHJP
【FI】
G01R33/12 Z
G01R31/34 Z
(21)【出願番号】P 2020058725
(22)【出願日】2020-03-27
【審査請求日】2023-02-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木津 よし美
(72)【発明者】
【氏名】浅野 能成
(72)【発明者】
【氏名】安田 善紀
(72)【発明者】
【氏名】山際 昭雄
(72)【発明者】
【氏名】和嶋 潔
(72)【発明者】
【氏名】村川 鉄州
【審査官】田口 孝明
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-163062(JP,A)
【文献】特開2002-006009(JP,A)
【文献】特開平07-218610(JP,A)
【文献】特開2016-070811(JP,A)
【文献】特開2000-352579(JP,A)
【文献】特開2002-252995(JP,A)
【文献】実開平02-075585(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
IPC G01R 33/00-33/26、
31/327-31/34、
G01N 27/72-27/9093、
H02P 6/00-6/34、
21/00-25/03、
25/04、
25/10-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軟磁性材料を含む試料片(41,42)を用いて電動機の鉄損を求める方法であって、
駆動電流を入力して第1電動機(20)を駆動するときの、該第1電動機(20)の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位における磁束密度および磁界強度の時間変化
を模擬するように該試料片(41,42)を励磁する励磁ステップと、
励磁された上記試料片(41,42)で生じる鉄損を測定する測定ステップと、
上記試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する導出ステップとを含
み、
上記試料片(41,42)は、巻線(51~53)が巻回されており、当該巻線(51~53)は、上記第1電動機(20)の巻線(23)に対して並列に接続され、
上記励磁ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流を流すことで上記試料片(41,42)を励磁する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項2】
軟磁性材料を含む試料片(41,42)を用いて電動機の鉄損を求める方法であって、
駆動電流を入力して第1電動機(20)を駆動するときの、該第1電動機(20)の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位における磁束密度および磁界強度の時間変化
を模擬するように該試料片(41,42)を励磁する励磁ステップと、
励磁された上記試料片(41,42)で生じる鉄損を測定する測定ステップと、
上記試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する導出ステップとを含
み、
上記試料片(41,42)は、巻線(51~53)が巻回されており、当該巻線(51~53)は、上記第1電動機(20)の巻線(23)に対して直列に接続され、
上記励磁ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流を流すことで上記試料片(41,42)を励磁する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項3】
請求項1
又は2において、
上記第1電動機(20)と上記第2電動機とは、少なくとも固定子コア(22)の構成材料が互いに同じである
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項4】
請求項1
又は2において、
上記第1電動機(20)と上記第2電動機とは、少なくとも固定子コア(22)の構成材料が互いに異なる
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項5】
請求項1~
4のいずれか1項において、
上記導出ステップにおいて、上記試料片(41,42)の鉄損と、該試料片(41,42)の重量と、上記第2電動機の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位の重量とに基づいて上記第2電動機の鉄損を導出する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項6】
請求項1~
5のいずれか1項において、
上記第1電動機(20)の上記磁気回路中の上記所定部位は、上記第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)およびティース部(22b)を含む
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項7】
請求項1
~6のいずれか1項において、
上記試料片(41,42)の巻線(51~53)は、該試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流を流すための電源装置(30)に接続されている
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項8】
請求項
1~7のいずれか1項において、
上記試料片(41,42)の巻線(51~53)の少なくとも一部は、上記第1電動機(20)の相電圧に対応する電圧が印加される
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項9】
請求項
1~8のいずれか1項において、
上記試料片(41,42)の巻線(51~53)の少なくとも一部は、上記第1電動機(20)の線間電圧に対応する電圧が印加される
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項10】
請求項
1~9のいずれか1項において、
上記測定ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)における消費電力と、該試料片(41,42)の巻線(51~53)における銅損とに基づいて上記試料片(41,42)の鉄損を測定する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項11】
請求項1~1
0のいずれか1項において、
上記励磁ステップにおいて、上記第1電動機(20)の上記磁気回路中の上記所定部位で磁気飽和が生じると推定される条件が成立する場合、該条件が成立しない場合に比べて、上記駆動電流に対する上記試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を大きくする
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項12】
請求項1~1
1のいずれか1項において、
上記励磁ステップにおいて、弱め磁束制御を行うための上記駆動電流を上記第1電動機(20)に入力するときの上記時間変化を上記試料片(41,42)で模擬する場合、それ以外の場合に比べて、上記駆動電流に対する上記試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を小さくする
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項13】
請求項1~1
2のいずれか1項において、
上記駆動電流の包絡線(90)、上記第1電動機(20)の線間電圧の包絡線、上記第1電動機(20)の入力電力、上記第1電動機(20)のトルク、および上記第1電動機(20)の回転速度の少なくとも1つが、周期的に脈動する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項14】
請求項1~1
3のいずれか1項において、
上記測定ステップにおいて、上記試料片(41,42)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて上記試料片(41,42)の鉄損を測定する
ことを特徴とする電動機の鉄損を求める方法。
【請求項15】
請求項1~1
4のいずれか1項に記載の電動機の鉄損を求める方法に用いるリング状の試料片。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動機の鉄損を求める方法および当該方法に用いる試料片に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電動機の鉄損を求める方法が知られている。例えば特許文献1には、電動機への投入電力、出力電力、機械損、および銅損を求めた上で、これらに基づいて当該電動機の鉄損を求める方法が開示されている。具体的に、この方法では、投入電力から出力電力、機械損、および銅損を差し引くことで鉄損を求める。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記の方法は、差引きによって鉄損を求めているため、電動機のトルクや回転速度の脈動による当該電動機の出力の算出誤差、コイル発熱による銅損の測定誤差、または機械損の測定誤差などの影響を大きく受け、電動機の鉄損を精度よく求めることが難しいという課題がある。
【0005】
本開示の目的は、電動機の鉄損を精度よく求めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、軟磁性材料を含む試料片(41,42)を用いて電動機の鉄損を求める方法を対象とする。電動機の鉄損を求める方法は、駆動電流を入力して第1電動機(20)を駆動するときの、該第1電動機(20)の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位における磁束密度および磁界強度の時間変化を上記試料片(41,42)で模擬するように該試料片(41,42)を励磁する励磁ステップと、励磁された上記試料片(41,42)で生じる鉄損を測定する測定ステップと、上記試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する導出ステップとを含む。
【0007】
第1の態様では、試料片(41,42)で生じる鉄損を直接的に求め、当該鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する。このため、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0008】
本開示の第2の態様は、上記第1の態様において、上記第1電動機(20)と上記第2電動機とは、少なくとも固定子コア(22)の構成材料が互いに同じであることを特徴とする。
【0009】
第2の態様では、試料片(41,42)で模擬する対象としての第1電動機(20)の少なくとも固定子コア(22)の構成材料と、鉄損を求める対象としての第2電動機の少なくとも固定子コア(22)の構成材料とが、互いに同じである。
【0010】
本開示の第3の態様は、上記第1の態様において、上記第1電動機(20)と上記第2電動機とは、少なくとも固定子コア(22)の構成材料が互いに異なることを特徴とする。
【0011】
第3の態様では、試料片(41,42)で模擬する対象としての第1電動機(20)の少なくとも固定子コア(22)の構成材料と、鉄損を求める対象としての第2電動機の少なくとも固定子コア(22)の構成材料とが、互いに異なる。
【0012】
本開示の第4の態様は、上記第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、上記導出ステップにおいて、上記試料片(41,42)の鉄損と、該試料片(41,42)の重量と、上記第2電動機の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位の重量とに基づいて上記第2電動機の鉄損を導出することを特徴とする。
【0013】
第4の態様では、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。
【0014】
本開示の第5の態様は、上記第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、上記第1電動機(20)の上記磁気回路中の上記所定部位は、上記第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)およびティース部(22b)を含むことを特徴とする。
【0015】
第5の態様では、試料片(41,42)で生じる鉄損に基づいて、第2電動機の固定子のバックヨーク部およびティース部の鉄損を精度よく求めることができる。
【0016】
本開示の第6の態様は、上記第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、上記試料片(41,42)は、巻線(51~53)が巻回されており、上記励磁ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流を流すことで上記試料片(41,42)を励磁することを特徴とする。
【0017】
第6の態様では、試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流が流れることで、当該試料片(41,42)が直接的に励磁される。
【0018】
本開示の第7の態様は、上記第6の態様において、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)は、上記第1電動機(20)の巻線(23)に対して並列に接続されていることを特徴とする。
【0019】
本開示の第8の態様は、上記第6の態様において、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)は、上記第1電動機(20)の巻線(23)に対して直列に接続されていることを特徴とする。
【0020】
本開示の第9の態様は、上記第6の態様において、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)は、該試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流を流すための電源装置(30)に接続されていることを特徴とする。
【0021】
第9の態様では、電源装置(30)によって試料片(41,42)の巻線(51~53)に電流が流れる。
【0022】
本開示の第10の態様は、上記第7~第9の態様のいずれか1つにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)の少なくとも一部は、上記第1電動機(20)の相電圧に対応する電圧が印加されることを特徴とする。
【0023】
第10の態様では、第1電動機(20)の固定子(21)のティース部(22b)を試料片(41,42)で模擬することができる。
【0024】
本開示の第11の態様は、上記第7~第10の態様のいずれか1つにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)の少なくとも一部は、上記第1電動機(20)の線間電圧に対応する電圧が印加されることを特徴とする。
【0025】
第11の態様では、第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)を試料片(41,42)で模擬することができる。
【0026】
本開示の第12の態様は、上記第6~第11の態様のいずれか1つにおいて、上記測定ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51~53)における消費電力と、該試料片(41,42)の巻線(51~53)における銅損とに基づいて上記試料片(41,42)の鉄損を測定することを特徴とする。
【0027】
第12の態様では、試料片(41,42)の巻線(51~53)における消費電力および銅損に基づいて、当該試料片(41,42)の鉄損を測定することができる。
【0028】
本開示の第13の態様は、上記第1~第12の態様のいずれか1つにおいて、上記励磁ステップにおいて、上記第1電動機(20)の上記磁気回路中の上記所定部位で磁気飽和が生じると推定される条件が成立する場合、該条件が成立しない場合に比べて、上記駆動電流に対する上記試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を大きくすることを特徴とする。
【0029】
第13の態様では、第1電動機(20)の磁気回路中の所定部位で磁気飽和が生じることを想定する場合でも、試料片(41,42)で当該所定部位を高精度に模擬することができる。よって、そのような場合でも、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0030】
本開示の第14の態様は、上記第1~第13の態様のいずれか1つにおいて、上記励磁ステップにおいて、弱め磁束制御を行うための上記駆動電流を上記第1電動機(20)に入力するときの上記時間変化を上記試料片(41,42)で模擬する場合、それ以外の場合に比べて、上記駆動電流に対する上記試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を小さくすることを特徴とする。
【0031】
第14の態様では、第1電動機(20)で弱め磁束制御を行うことを想定する場合でも、第1電動機(20)の磁気回路中の所定部位を試料片(41,42)で高精度に模擬することができる。よって、そのような場合でも、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0032】
本開示の第15の態様は、上記第1~第14の態様のいずれか1つにおいて、上記駆動電流の包絡線(90)、上記第1電動機(20)の線間電圧の包絡線、上記第1電動機(20)の入力電力、上記第1電動機(20)のトルク、および上記第1電動機(20)の回転速度の少なくとも1つが、周期的に脈動することを特徴とする。
【0033】
第15の態様では、駆動電流の包絡線(90)、第1電動機(20)の線間電圧の包絡線、第1電動機(20)の入力電力、第1電動機(20)のトルク、および第1電動機(20)の回転速度の少なくとも1つが周期的に脈動しても、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0034】
本開示の第16の態様は、上記第1~第5の態様のいずれか1つにおいて、上記励磁ステップにおいて、磁場を発生可能な磁場発生装置(80)を用いて上記試料片(41,42)を励磁することを特徴とする。
【0035】
第16の態様では、磁場発生装置(80)により試料片(41,42)が励磁される。
【0036】
本開示の第17の態様は、上記第1~第16の態様のいずれか1つにおいて、上記測定ステップにおいて、上記試料片(41,42)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて上記試料片(41,42)の鉄損を測定することを特徴とする。
【0037】
第17の態様では、試料片(41,42)における磁束密度および磁界強度の時間変化を測定することを通じて、当該試料片(41,42)の鉄損を測定することができる。
【0038】
本開示の第18の態様は、上記第1~第15の態様のいずれか1つの電動機の鉄損を求める方法に用いるリング状の試料片(41,42)を対象とする。
【0039】
第18の態様では、リング状の試料片(41,42)を用いて上記方法を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】
図1は、実施形態1の鉄損測定システムの構成図である。
【
図2】
図2は、第1電動機の一部を拡大して示す平面図である。
【
図3】
図3は、駆動電流の波形の一例を示すグラフである。
【
図4】
図4は、実施形態1の電動機の鉄損を求める方法のフローチャートである。
【
図5】
図5は、実施形態1の変形例1の鉄損測定システムの構成図である。
【
図6】
図6は、実施形態1の変形例2の鉄損測定システムの構成図である。
【
図7】
図7は、実施形態2の鉄損測定システムの構成図である。
【
図8】
図8は、実施形態3の鉄損測定システムの構成図である。
【
図9】
図9は、実施形態4の鉄損測定システムの構成図である。
【
図10】
図10は、実施形態4の電動機の鉄損を求める方法のフローチャートである。
【
図11】
図11は、実施形態5の鉄損測定システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
《実施形態1》
実施形態1について説明する。本実施形態の鉄損測定システム(10)は、試料片(41,42)を用いて電動機の鉄損を求める方法を実行するために用いられる。具体的に、本実施形態の鉄損測定システム(10)は、第1電動機(20)の所定部位を試料片(41,42)で模擬することを通じて、第1電動機(20)またはこれと異なる第2電動機(図示せず)の鉄損を求めるのに用いられる。
【0042】
〈鉄損測定システムの構成〉
図1に示すように、鉄損測定システム(10)は、電源装置(30)と、第1および第2試料片(41,42)と、第1および第2波形計測装置(61,62)とを備える。鉄損測定システム(10)は、第1電動機(20)に接続される。
【0043】
図2に示すように、第1電動機(20)は、固定子(21)および回転子(24)を備える。固定子(21)は、軟磁性材料(例えば、電磁鋼板または圧粉磁心)で構成された固定子コア(22)を有する。固定子コア(22)は、バックヨーク部(22a)およびティース部(22b)を有する。ティース部(22b)には、この例では集中巻方式で巻線(23)が巻回される。なお、ティース部(22b)には、分布巻方式で巻線(23)が巻回されてもよい。回転子(24)は、軟磁性材料(例えば、電磁鋼板または圧粉磁心)で構成された回転子コア(25)と、回転子コア(25)に設けられた複数の永久磁石(26)とを有する。第1電動機(20)は、例えば埋込磁石型同期電動機である。バックヨーク部(22a)およびティース部(22b)は、それぞれ第1電動機(20)の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位に対応する。
【0044】
ここで、第1電動機(20)の磁気回路とは、バックヨーク部(22a)、ティース部(22b)、エアギャップ、回転子(24)、エアギャップ、ティース部(22b)、およびバックヨーク部(22a)をこの記載順に磁束が循環して流れる閉回路である。
【0045】
第1電動機(20)は、不図示の回転式圧縮機のケーシングに収容される。第1電動機(20)の回転子(24)は、駆動軸(図示せず)を介して圧縮機構(図示せず)に接続される。特にロータリ系の圧縮機構では、機械角1回転中にシリンダ数に対応して負荷が周期的に脈動するため、第1電動機(20)の出力(トルクまたは回転速度)も周期的に脈動する。なお、第1電動機(20)の負荷は、ロータリ系の圧縮機構に限らず、例えば、その他の回転式の圧縮機構であってもよいし、はずみ車であってもよい。
【0046】
電源装置(30)は、第1電動機(20)に駆動電流(具体的には、第1電動機(20)を回転駆動するための電流であって、実測または解析により求められる)を供給する。電源装置(30)の入力側は、交流電源または商用電源を整流した直流電源(図示せず)に接続される。この例では、直流電源の直流リンク電圧は、例えば交流電源または商用電源の基本周波数の2分の1または6分の1の周波数で周期的に脈動し、それにより駆動電流も周期的に脈動する。また、第1電動機(20)が機械角で1回転する間に負荷が脈動し、それにより駆動電流も周期的に脈動する。電源装置(30)の出力側は、U相ケーブル(11)、V相ケーブル(12)、およびW相ケーブル(13)を介して第1電動機(20)に接続される。電源装置(30)は、例えば、非同期型または同期型の三相電圧型PWMインバータである。
【0047】
ここで、駆動電流の波形の一例を
図3に示す。同図では、破線がU相電流を示し、一点鎖線がV相電流を示し、かつ二点鎖線がW相電流を示す。同図より、実線で示す駆動電流の包絡線(90)が周期的に脈動していることがわかる。同様に、第1電動機(20)の線間電圧の包絡線および第1電動機(20)の入力電力の少なくとも一方が周期的に脈動してもよい。
【0048】
第1試料片(41)は、軟磁性材料(例えば、電磁鋼板または圧粉磁心)で構成されたリング状の試料片である。第1試料片(41)は、軟磁性材料を略環状に形成した試料片である。第1試料片(41)は、軟磁性材料により閉磁路が形成された試料片である。第1試料片(41)の磁路断面積は、全周にわたって実質的に一定である。第1試料片(41)のインピーダンスは、第1電動機(20)のインピーダンスの10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがさらに好ましい。第1試料片(41)は、試料片に対応する。
【0049】
第1試料片(41)を構成する軟磁性材料は、第2電動機の固定子コアを構成する軟磁性材料と同じであることが好ましい。これにより、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。第1試料片(41)を構成する軟磁性材料は、第1電動機(20)の固定子コア(22)を構成する軟磁性材料と異なってもよい。この場合、入力される電力の基本周波数に対する両軟磁性材料の鉄損が、互いに等しいまたは略等しいことが好ましい。
【0050】
第1試料片(41)には、第1一次巻線(51)が巻回される。第1一次巻線(51)は、第1電動機(20)の巻線(23)に対して並列に接続される。第1一次巻線(51)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の線間電圧(この例では、U-V線間電圧)に対応する電圧が印加される。第1一次巻線(51)の巻き数は、駆動電流が入力される第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点A(後述)における磁束密度の振幅と、第1試料片(41)における磁束密度の振幅とが実質的に等しくなるように設定される。第1一次巻線(51)は、試料片の巻線に対応する。第1試料片(41)には、第1二次巻線(54)も巻回される。第1二次巻線(54)は、第2波形計測装置(62)に接続される。
【0051】
第2試料片(42)の構成は、第1試料片(41)のそれと同様であるので、詳しい説明を省略する。第2試料片(42)は、試料片に対応する。
【0052】
第2試料片(42)を構成する軟磁性材料は、第2電動機の固定子コアを構成する軟磁性材料と同じであることが好ましい。これにより、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。第2試料片(42)を構成する軟磁性材料は、第1電動機(20)の固定子コア(22)を構成する軟磁性材料と異なってもよい。この場合、入力される電力の基本周波数に対する両軟磁性材料の鉄損が、互いに等しいまたは略等しいことが好ましい。
【0053】
第2試料片(42)には、第2一次巻線(52)が巻回される。第2一次巻線(52)は、第1電動機(20)の巻線(23)に対して並列に接続される。第2一次巻線(52)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第2一次巻線(52)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)の巻き数は、駆動電流が入力される第1電動機(20)のティース部(22b)の点B(後述)における磁束密度の振幅と、第2試料片(42)における磁束密度の振幅とが実質的に等しくなるように設定される。第2一次巻線(52)は、試料片の巻線に対応する。第2試料片(42)には、第2二次巻線(55)も巻回される。第2二次巻線(55)は、第2波形計測装置(62)に接続される。
【0054】
第1波形計測装置(61)は、第1および第2試料片(41,42)の一次側に設けられる。第1波形計測装置(61)は、第1および第2一次巻線(51,52)の電流(換言すると、一次電流)の時間変化を計測する。第1波形計測装置(61)は、例えばオシロスコープまたはパワーメータである。
【0055】
第2波形計測装置(62)は、第1および第2試料片(41,42)の二次側に設けられる。第2波形計測装置(62)は、第1および第2二次巻線(54,55)の電圧(換言すると、二次電圧)の時間変化を計測する。第2波形計測装置(62)は、例えばオシロスコープである。
【0056】
〈電動機の鉄損を求める方法〉
上記の鉄損測定システム(10)により、第1および第2試料片(41,42)を用いて電動機の鉄損を求める方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0057】
まず、励磁ステップでは、電源装置(30)により、第1電動機(20)に駆動電流を入力し、第1電動機(20)を回転駆動する。このとき、第1試料片(41)の第1一次巻線(51)に電流が流れ、第1試料片(41)は、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。一方、第2試料片(42)の第2一次巻線(52)にも電流が流れ、第2試料片(42)は、第1電動機(20)のティース部(22b)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。
【0058】
具体的に、第1試料片(41)は、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点A(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。点Aは、バックヨーク部(22a)における径方向の中間点であり、かつ隣り合うティース部(22b)の間の周方向の中間点である。点Aは、バックヨーク部(22a)の断面において磁束集中または回転磁界が発生しない点として、バックヨーク部(22a)における磁束密度の時間変化を模擬するのに適する。点Aは、磁束密度の時間変化を模擬する点(この例では、点A)に対応する磁路断面積と同じ磁路断面積を有する断面におけるヨーク幅の中心点として、バックヨーク部(22a)における磁界強度の時間変化を模擬するのに適する。なお、第1試料片(41)で模擬する部位は、点Aに限らない。
【0059】
また、第2試料片(42)は、第1電動機(20)のティース部(22b)の点B(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。点Bは、ティース部(22b)における幅方向(周方向)および長手方向(径方向)の中間点である。点Bは、ティース部(22b)の断面において磁束集中または回転磁界が発生しない点として、ティース部(22b)における磁束密度の時間変化を模擬するのに適する。点Bは、磁束密度の時間変化を模擬する点(この例では、点B)に対応する磁路断面積と同じ磁路断面積を有する断面におけるティース幅の中心点として、ティース部(22b)における磁界強度の時間変化を模擬するのに適する。なお、第2試料片(42)で模擬する部位は、点Bに限らない。続けて、測定ステップに進む。
【0060】
測定ステップでは、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、当該第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々で生じる鉄損を測定する。
【0061】
具体的に、第2波形計測装置(62)で計測される第1二次巻線(54)および第2二次巻線(55)の各々の電圧に基づいて、B=∫Vdt/nS(B:磁束密度、V:電圧、n:巻線の巻き数、S:試料片の磁路断面積)の関係から、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々における磁束密度の時間変化を求める。また、第1波形計測装置(61)で計測される第1一次巻線(51)および第2一次巻線(52)の各々の電流に基づいて、H=ni/2πr(H:磁界強度、n:巻線の巻き数、i:電流、2πr:試料片の平均磁路長、r:試料片の外径と内径の平均値)の関係から、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々における磁界強度の時間変化を求める。なお、当該磁界強度の時間変化は、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々に配置されたHコイルで測定する電圧に基づいて、H=∫Vdt/A(H:磁界強度、V:電圧、A:エリアターン)の関係から求めてもよい。そして、求めた磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々で生じる鉄損を求める。ここで、複数の周期(一例として、
図3にP1~P3の3つの周期を示す)の各々の鉄損を求め、その平均値を算出することで第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々で生じる鉄損を求めてもよい。続けて、導出ステップに進む。
【0062】
導出ステップでは、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々の鉄損に基づいて、第2電動機の鉄損を導出する。第2電動機は、この例では固定子コアの構成材料のみが第1電動機(20)と異なる電動機であるが、固定子コアの構成材料以外(例えば、回転子コアの構成材料、全体的な形状または寸法、など)も第1電動機(20)と異なる電動機であってもよい。なお、第2電動機は、少なくとも固定子コアの構成材料が第1電動機(20)と同じものであってもよい。
【0063】
具体的に、第1試料片(41)の鉄損および重量に基づいて、第1試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のバックヨーク部の重量との積として、第2電動機のバックヨーク部における鉄損を求める。同様に、第2試料片(42)の鉄損および重量に基づいて、第2試料片(42)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のティース部の重量との積として、第2電動機のティース部における鉄損を求める。そして、第2電動機のバックヨーク部の鉄損と、第2電動機のティース部の鉄損との和として、第2電動機の鉄損を求める。
【0064】
-実施形態1の効果-
本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、駆動電流を入力して第1電動機(20)を駆動するときの、該第1電動機(20)の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位における磁束密度および磁界強度の時間変化を、軟磁性材料を含む試料片(41,42)で模擬するように該試料片(41,42)を励磁する励磁ステップと、励磁された上記試料片(41,42)で生じる鉄損を測定する測定ステップと、上記試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する導出ステップとを含む。この方法では、第1電動機(20)の磁気回路中の所定部位における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬する試料片(41,42)で生じる鉄損を直接的に求める。そして、求めた試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を導出する。このため、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0065】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記導出ステップにおいて、上記試料片(41,42)の鉄損と、該試料片(41,42)の重量と、上記第2電動機の磁気回路中の軟磁性材料を含む所定部位の重量とに基づいて上記第2電動機の鉄損を導出する。ここでは、試料片(41,42)の重量と、第2電動機の磁気回路中の所定部位の重量との比を考慮することで、試料片(41,42)の鉄損に基づいて第2電動機の鉄損を求めることが考えられる。これにより、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。
【0066】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記第1電動機(20)の上記磁気回路中の上記所定部位が、上記第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)およびティース部(22b)を含む。この方法では、第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)およびティース部(22b)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬する試料片(41,42)で生じる鉄損を直接的に求める。そして、求めた試料片(41,42)の鉄損に基づいて、第2電動機の固定子のバックヨーク部およびティース部の鉄損を導出する。このため、第2電動機の固定子のバックヨーク部およびティース部の鉄損を精度よく求めることができる。
【0067】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記試料片(41,42)が、巻線(51,52)が巻回されており、上記励磁ステップにおいて、上記試料片(41,42)の巻線(51,52)に電流を流すことで上記試料片(41,42)を励磁する。この方法では、試料片(41,42)の巻線(51,52)に電流が流れることで、当該試料片(41,42)が直接的に励磁される。
【0068】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記試料片(41,42)の巻線(51,52)の少なくとも一部が、上記第1電動機(20)の相電圧に対応する電圧が印加される。この方法では、第1電動機(20)の固定子(21)のティース部(22b)を試料片(41,42)で模擬することができる。
【0069】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記試料片(41,42)の巻線(51,52)の少なくとも一部が、上記第1電動機(20)の線間電圧に対応する電圧が印加される。この方法では、第1電動機(20)の固定子(21)のバックヨーク部(22a)を試料片(41,42)で模擬することができる。
【0070】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記駆動電流の包絡線(90)、上記第1電動機(20)の線間電圧の包絡線、上記第1電動機(20)の入力電力、上記第1電動機(20)のトルク、および上記第1電動機(20)の回転速度の少なくとも1つが、周期的に脈動する。この方法では、駆動電流の包絡線(90)、第1電動機(20)の線間電圧の包絡線、第1電動機(20)の入力電力、第1電動機(20)のトルク、および第1電動機(20)の回転速度の少なくとも1つが周期的に脈動しても、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。なお、従来公知の方法では、そのような周期的な脈動を考慮して電動機の鉄損を求めることは困難であった。
【0071】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記測定ステップにおいて、上記試料片(41,42)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて上記試料片(41,42)の鉄損を測定する。この方法では、試料片(41,42)における磁束密度および磁界強度の時間変化を測定することを通じて、当該試料片(41,42)の鉄損を測定することができる。
【0072】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、インバータで構成されて上記第1電動機(20)に駆動電流を供給する電源装置(30)を備える鉄損測定システム(10)を用いて実行される。ここで、従来は、インバータを用いて駆動される電動機の鉄損を測定することは困難であった。これに対し、本実施形態の方法では、インバータを用いて第1電動機(20)を駆動する場合に、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。特に、本実施形態の方法では、駆動周波数の変化に応じて電気角1周期内のスイッチング回数が変化する非同期型のインバータを用いて第1電動機(20)を駆動する場合(この場合、従来の方法では鉄損を精度よく求めるのが特に困難であった。)であっても、第2電動機の鉄損を精度よく求めることができる。
【0073】
-実施形態1の変形例1-
実施形態1の変形例1について説明する。本変形例は、第1一次巻線(51)および第2一次巻線(52)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0074】
図5に示すように、第1一次巻線(51)の一端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)の他端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の線間電圧(この例では、U-V線間電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)の一端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第2一次巻線(52)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。
【0075】
-実施形態1の変形例2-
実施形態1の変形例2について説明する。本変形例は、第1一次巻線(51)および第2一次巻線(52)の構成が上記実施形態1と異なり、かつ第3一次巻線(53)が設けられる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0076】
図6に示すように、第1一次巻線(51)、第2一次巻線(52)、および第3一次巻線(53)が、1つの試料片(41)に巻回される。第1一次巻線(51)の一端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)の一端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第2一次巻線(52)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、V相電圧)に対応する電圧が印加される。第3一次巻線(53)の一端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のW相に接続される。第3一次巻線(53)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第3一次巻線(53)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、W相電圧)に対応する電圧が印加される。第3一次巻線(53)は、試料片の巻線に対応する。試料片(41)には、二次巻線(54)も巻回される。二次巻線(54)は、第2波形計測装置(62)に接続される。
【0077】
-実施形態1の変形例3-
実施形態1の変形例3について説明する。本変形例は、第1一次巻線(51)および第2一次巻線(52)の構成が上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0078】
図示を省略するが、第1一次巻線(51)および第2一次巻線(52)の両方が、1つの試料片(41)に巻回される。第1一次巻線(51)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)の他端は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の線間電圧(この例では、U-V線間電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のW相に接続される。第2一次巻線(52)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、W相電圧)に対応する電圧が印加される。
【0079】
-実施形態1の変形例4-
実施形態1の変形例4について説明する。本変形例は、第1~第3一次巻線(51~53)の各々の一端が第1電動機(20)の内部で接続される点で上記実施形態1の変形例2と異なる。以下、上記実施形態1の変形例2と異なる点について主に説明する。
【0080】
図示を省略するが、第1一次巻線(51)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第2一次巻線(52)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、V相電圧)に対応する電圧が印加される。第3一次巻線(53)の一端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のW相に接続される。第3一次巻線(53)の他端は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)の中性点に接続される。第3一次巻線(53)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、W相電圧)に対応する電圧が印加される。
【0081】
《実施形態2》
実施形態2について説明する。本実施形態は、試料片(41,42)に巻回される巻線の構成と、測定ステップの具体的内容とが上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0082】
〈鉄損測定システムの構成〉
図7に示すように、本実施形態の鉄損測定システム(10)は、第1波形計測装置(61)に代えて電力測定装置(70)を備える。電力測定装置(70)は、第1および第2試料片(41,42)の第1~第3一次巻線(51~53)における消費電力および銅損を測定するのに用いられる。電力測定装置(70)には、第1~第3一次巻線(51~53)が接続される。電力測定装置(70)は、例えばパワーメータである。
【0083】
第1試料片(41)には、第1一次巻線(51)が巻回される。第1一次巻線(51)は、第1電動機(20)の巻線(23)に対して直列に接続される。第1一次巻線(51)は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第1一次巻線(51)の巻き数は、駆動電流が入力される第1電動機(20)のティース部(22b)の点Bにおける磁束密度の振幅と、第1試料片(41)における磁束密度の振幅とが実質的に等しくなるように設定される。第1一次巻線(51)は、試料片の巻線に対応する。
【0084】
第2試料片(42)には、第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)が巻回される。第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)は、第1電動機(20)の巻線(23)に対して直列に接続される。第2一次巻線(52)は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第3一次巻線(53)は、第1電動機(20)の外部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第2一次巻線(52)と第3一次巻線(53)との間には、第1電動機(20)の線間電圧(この例では、U-V線間電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)の巻き数は、駆動電流が入力される第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点Aにおける磁束密度の振幅と、第2試料片(42)における磁束密度の振幅とが実質的に等しくなるように設定される。第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)は、それぞれ試料片の巻線に対応する。
【0085】
第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々のインピーダンスは、第1電動機(20)のインピーダンスの1/10以下であることが好ましく、1/100以下であることがさらに好ましい。
【0086】
〈電動機の鉄損を求める方法〉
本実施形態の測定ステップでは、第1~第3一次巻線(51~53)における消費電力と、第1~第3一次巻線(51~53)における銅損とに基づいて、第1試料片(41)および第2試料片(42)の各々で生じる鉄損を測定する。
【0087】
具体的に、電力測定装置(70)で測定される第1一次巻線(51)の消費電力から、電力測定装置(70)の電流測定値および第1一次巻線(51)の抵抗値から求まる第1一次巻線(51)の銅損を差し引くことで、第1試料片(41)で生じる鉄損を求める。電力測定装置(70)で測定される第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)の消費電力から、電力測定装置(70)の電流測定値および第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)の抵抗値から求まる第2一次巻線(52)および第3一次巻線(53)の銅損を差し引くとで、第2試料片(42)で生じる鉄損を求める。
【0088】
-実施形態2の効果-
本実施形態の電動機の鉄損を求める方法によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0089】
-実施形態2の変形例1-
実施形態2の変形例1について説明する。本変形例は、第1~第3一次巻線(51~53)の構成が上記実施形態2と異なる。以下、上記実施形態2と異なる点について主に説明する。
【0090】
図示を省略するが、第1一次巻線(51)は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第3一次巻線(53)は、第1電動機(20)の内部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第2一次巻線(52)と第3一次巻線(53)との間には、第1電動機(20)の線間電圧(この例では、U-V線間電圧)に対応する電圧が印加される。
【0091】
-実施形態2の変形例2-
実施形態2の変形例2について説明する。本変形例は、第1~第3一次巻線(51~53)の構成が上記実施形態2と異なる。以下、上記実施形態2と異なる点について主に説明する。
【0092】
図示を省略するが、第1~第3一次巻線(51~53)の全てが、1つの試料片(41)に巻回される。第1一次巻線(51)は、第1電動機(20)の内部または外部で、第1電動機(20)のU相に接続される。第1一次巻線(51)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、U相電圧)に対応する電圧が印加される。第2一次巻線(52)は、第1電動機(20)の内部または外部で、第1電動機(20)のV相に接続される。第2一次巻線(52)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、V相電圧)に対応する電圧が印加される。第3一次巻線(53)は、第1電動機(20)の内部または外部で、第1電動機(20)のW相に接続される。第3一次巻線(53)には、第1電動機(20)の相電圧(この例では、W相電圧)に対応する電圧が印加される。
【0093】
《実施形態3》
実施形態3について説明する。本実施形態は、第1電動機(20)を直接的には用いることなく第2電動機の鉄損を求める点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0094】
〈鉄損測定システムの構成〉
図8に示すように、本実施形態の鉄損測定システム(10)は、電源装置(30)と、試料片(41)とを備える。
【0095】
電源装置(30)は、第1電動機(20)の駆動電流(実測または解析で求められる)に対応する励磁電流を試料片(41)に供給する。電源装置(30)の入力側は、直流電源(図示せず)に接続される。電源装置(30)の出力側は、試料片(41)に巻回された巻線(51)に接続される。
【0096】
試料片(41)は、軟磁性材料(例えば、電磁鋼板または圧粉磁心)で構成されたリング状の試料片である。試料片(41)は、軟磁性材料を略環状に形成した試料片である。試料片(41)は、軟磁性材料により閉磁路が形成された試料片である。試料片(41)の磁路断面積は、全周にわたって実質的に一定である。試料片(41)を構成する軟磁性材料は、第2電動機の固定子コアを構成する軟磁性材料と同じであることが好ましい。これにより、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。
【0097】
〈電動機の鉄損を求める方法〉
上記の鉄損測定システム(10)により、試料片(41)を用いて電動機の鉄損を求める方法について、
図4のフローチャートを参照して説明する。
【0098】
まず、励磁ステップでは、電源装置(30)により、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬するための励磁電流と、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬するための励磁電流とを、試料片(41)の巻線(51)に別々に入力する。このとき、試料片(41)の巻線(51)に電流が流れ、試料片(41)は、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)またはティース部(22b)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。
【0099】
具体的に、試料片(41)は、まず、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点A(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。続けて、試料片(41)は、第1電動機(20)のティース部(22b)の点B(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。なお、試料片(41)で模擬する部位は、点Aおよび点Bに限らない。また、ティース部(22b)を模擬するための励磁が、バックヨーク部(22a)を模擬するための励磁の先になされてもよい。続けて、測定ステップに進む。
【0100】
測定ステップでは、試料片(41)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、当該試料片(41)で生じる鉄損を測定する。
【0101】
具体的に、波形計測装置(図示せず)で計測される二次側の巻線(図示せず)の電圧に基づいて、B=∫Vdt/nS(B:磁束密度、V:電圧、n:巻線の巻き数、S:試料片の磁路断面積)の関係から、試料片(41)における磁束密度の時間変化を求める。また、波形計測装置で計測される巻線(51)の電流(励磁電流)に基づいて、H=ni/2πr(H:磁界強度、n:巻線の巻き数、i:電流、2πr:試料片の平均磁路長、r:試料片の外径と内径の平均値)の関係から、試料片(41)における磁界強度の時間変化を求める。なお、当該磁界強度の時間変化は、試料片(41)に配置されたHコイルで測定する電圧に基づいて、H=∫Vdt/A(H:磁界強度、V:電圧、A:エリアターン)の関係から求めてもよい。そして、求めた磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、試料片(41)で生じる鉄損を求める。ここで、複数の周期(一例として、
図3にP1~P3の3つの周期を示す)の各々の鉄損を求め、その平均値を算出することで試料片(41)で生じる鉄損を求めてもよい。続けて、導出ステップに進む。
【0102】
導出ステップでは、試料片(41)の鉄損に基づいて、第2電動機の鉄損を導出する。
【0103】
具体的に、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のバックヨーク部の重量との積として、第2電動機のバックヨーク部における鉄損を求める。同様に、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のティース部の重量との積として、第2電動機のティース部における鉄損を求める。そして、第2電動機のバックヨーク部の鉄損と、第2電動機のティース部の鉄損との和として、第2電動機の鉄損を求める。
【0104】
-実施形態3の効果-
本実施形態の電動機の鉄損を求める方法によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0105】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記試料片(41)の巻線(51)が、該試料片(41)の巻線(51)に電流を流すための電源装置(30)に接続されている。この方法では、電源装置(30)によって試料片(41)の巻線(51)に電流が流れる。第1電動機(20)の駆動電流を解析で求める場合、第1電動機(20)を試作することなく、第1電動機(20)または第2電動機の鉄損を精度よく求めることもできる。
【0106】
《実施形態4》
実施形態4について説明する。本実施形態は、第1電動機(20)を直接的には用いることなく第2電動機の鉄損を求める点で上記実施形態1と異なる。以下、上記実施形態1と異なる点について主に説明する。
【0107】
〈鉄損測定システムの構成〉
図9に示すように、本実施形態の鉄損測定システム(10)は、磁場発生装置(80)と、試料片(41)とを備える。磁場発生装置(80)は、電源装置(30)と、ヨーク体(81)と、巻線(56)とを有する。
【0108】
電源装置(30)は、第1電動機(20)の駆動電流(実測または解析で求められる)に対応する励磁電流をヨーク体(81)に供給する。電源装置(30)の入力側は、直流電源(図示せず)に接続される。電源装置(30)の出力側は、ヨーク体(81)に巻回された巻線(56)に接続される。
【0109】
ヨーク体(81)は、軟磁性材料で構成された部材である。ヨーク体(81)は、その鉄損が試料片(41)の鉄損と比較して1%以下となるよう十分に大きな磁路断面積を有しており、略C字状に構成され、エアギャップ(82)を有する。ヨーク体(81)は、エアギャップ(82)を経由する閉磁路を構成する。
【0110】
試料片(41)は、軟磁性材料(例えば、電磁鋼板または圧粉磁心)で構成されたブロック状(この例では、直方体状)の試料片である。試料片(41)を構成する軟磁性材料は、第2電動機の固定子コアを構成する軟磁性材料と同じであることが好ましい。これにより、第2電動機の鉄損をより一層精度よく求めることができる。
【0111】
〈電動機の鉄損を求める方法〉
上記の鉄損測定システム(10)により、試料片(41)を用いて電動機の鉄損を求める方法について、
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0112】
まず、配置ステップでは、ヨーク体(81)のエアギャップ(82)に試料片(41)を配置する。続けて、励磁ステップに進む。
【0113】
励磁ステップでは、電源装置(30)により、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬するための励磁電流と、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬するための励磁電流とを、ヨーク体(81)の巻線(56)に別々に入力する。このとき、ヨーク体(81)の巻線(56)に電流が流れ、試料片(41)は、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)またはティース部(22b)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。
【0114】
具体的に、試料片(41)は、まず、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点A(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。続けて、試料片(41)は、第1電動機(20)のティース部(22b)の点B(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。なお、試料片(41)で模擬する部位は、点Aおよび点Bに限らない。また、ティース部(22b)を模擬するための励磁が、バックヨーク部(22a)を模擬するための励磁の先になされてもよい。続けて、測定ステップに進む。
【0115】
測定ステップでは、試料片(41)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、当該試料片(41)で生じる鉄損を測定する。
【0116】
具体的に、波形計測装置(図示せず)で計測される二次側の巻線(図示せず)の電圧に基づいて、B=∫Vdt/nS(B:磁束密度、V:電圧、n:巻線の巻き数、S:ヨーク体の磁路断面積)の関係から、ヨーク体(81)における磁束密度の時間変化を求め、これに基づいて試料片(41)における磁束密度の時間変化を求める。また、波形計測装置で計測される巻線(56)の電流(励磁電流)に基づいて、H=ni/L(H:磁界強度、n:巻線の巻き数、i:電流、L:ヨーク体の平均磁路長)の関係から、ヨーク体(81)における磁界強度の時間変化を求め、これに基づいて試料片(41)における磁界強度の時間変化を求める。なお、試料片(41)の磁界強度の時間変化は、試料片(41)に配置されたHコイルで測定する電圧に基づいて、H=∫Vdt/A(H:磁界強度、V:電圧、A:エリアターン)の関係から求めてもよい。そして、求めた磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、試料片(41)で生じる鉄損を求める。ここで、複数の周期(一例として、
図3にP1~P3の3つの周期を示す)の各々の鉄損を求め、その平均値を算出することで試料片(41)で生じる鉄損を求めてもよい。続けて、導出ステップに進む。
【0117】
導出ステップでは、試料片(41)の鉄損に基づいて、第2電動機の鉄損を導出する。
【0118】
具体的に、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のバックヨーク部の重量との積として、第2電動機のバックヨーク部における鉄損を求める。同様に、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のティース部の重量との積として、第2電動機のティース部における鉄損を求める。そして、第2電動機のバックヨーク部の鉄損と、第2電動機のティース部の鉄損との和として、第2電動機の鉄損を求める。
【0119】
-実施形態4の効果-
本実施形態の電動機の鉄損を求める方法によっても、上記実施形態1と同様の効果が得られる。
【0120】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記励磁ステップにおいて、磁場を発生可能な磁場発生装置(80)を用いて上記試料片(41)を励磁する。この方法では、磁場発生装置(80)により試料片(41)が励磁される。
【0121】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、上記試料片(41)を、巻線(56)が巻回されたヨーク体(81)のエアギャップ(82)に配置する配置ステップをさらに含み、上記励磁ステップにおいて、上記ヨーク体(81)の巻線(56)が接続されかつ上記ヨーク体(81)の巻線(56)に電流を流すための電源装置(30)を用いて、上記エアギャップ(82)に配置された上記試料片(41)を励磁する。この方法では、電源装置(30)によりヨーク体(81)の巻線(56)に電流が流れ、それによりヨーク体(81)を磁束が流れる。この磁束はエアギャップ(82)を流れ、それによりエアギャップ(82)に配置された試料片(41)が間接的に励磁される。
【0122】
《実施形態5》
実施形態5について説明する。本実施形態は、磁場発生装置(80)の構成が、上記実施形態4と異なる。以下、上記実施形態4と異なる点について主に説明する。
【0123】
〈鉄損測定システムの構成〉
図11に示すように、本実施形態の鉄損測定システム(10)では、ヨーク体(81)が、柱状の柱状部(81a)と、当該柱状部の両端から互いに対向するように共通の方向に突出する柱状の突出部(81b)とで、略コ字状に形成されている。柱状部(81a)に、電源装置(30)の出力側に接続された巻線(56)が巻回される。
【0124】
試料片(41)は、板状に形成され、例えば電磁鋼板の単板によって構成される。試料片(41)の両端部は、その片面をヨーク体(81)の突出部(81b)の先端面に間隔を空けて対向させている。なお、電源装置(30)の出力側に接続された巻線(56)を、ヨーク体(81)ではなく、試料片(41)に巻回させてもよい。試料片(41)には、二次側の巻線(図示せず)が巻回される。
【0125】
〈電動機の鉄損を求める方法〉
上記の鉄損測定システム(10)により、試料片(41)を用いて電動機の鉄損を求める方法について、
図10のフローチャートを参照して説明する。
【0126】
まず、配置ステップでは、試料片(41)の両端部の一方の面が、ヨーク体(81)の突出部(81b)の先端面に小さい間隔を空けて対向するように、試料片(41)を配置する。続けて、励磁ステップに進む。
【0127】
励磁ステップでは、電源装置(30)により、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬するための励磁電流と、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬するための励磁電流とを、ヨーク体(81)の巻線(56)に別々に入力する。このとき、ヨーク体(81)の巻線(56)に電流が流れ、試料片(41)は、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)またはティース部(22b)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。
【0128】
具体的に、試料片(41)は、まず、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)の点A(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。続けて、試料片(41)は、第1電動機(20)のティース部(22b)の点B(
図2を参照)における磁束密度および磁界強度の時間変化を模擬するように励磁される。なお、試料片(41)で模擬する部位は、点Aおよび点Bに限らない。また、ティース部(22b)を模擬するための励磁が、バックヨーク部(22a)を模擬するための励磁の先になされてもよい。続けて、測定ステップに進む。
【0129】
測定ステップでは、試料片(41)における磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、当該試料片(41)で生じる鉄損を測定する。
【0130】
具体的に、波形計測装置(図示せず)で計測される試料片(41)に巻いた 二次側の巻線(図示せず)の電圧に基づいて、B=∫Vdt/nS(B:磁束密度、V:電圧、n:巻線の巻き数、S:試料片 の磁路断面積)の関係から、試料片(41)における磁束密度の時間変化を求める。また、波形計測装置で計測される巻線(56)の電流(励磁電流)に基づいて、H=ni/L (H:磁界強度、n:巻線の巻き数、i:電流、L:試料片の平均磁路長) の関係から、ヨーク体(81)における磁界強度の時間変化を求め、これに基づいて試料片(41)における磁界強度の時間変化を求める。なお、試料片(41)の磁界強度の時間変化は、試料片(41)に配置されたHコイルで測定する電圧に基づいて、H=∫Vdt/A(H:磁界強度、V:電圧、A:エリアターン)の関係から求めてもよい。そして、求めた磁束密度および磁界強度の時間変化に基づいて、試料片(41)で生じる鉄損を求める。ここで、複数の周期(一例として、
図3にP1~P3の3つの周期を示す)の各々の鉄損を求め、その平均値を算出することで試料片(41)で生じる鉄損を求めてもよい。続けて、導出ステップに進む。
【0131】
導出ステップでは、試料片(41)の鉄損に基づいて、第2電動機の鉄損を導出する。
【0132】
具体的に、第1電動機(20)のバックヨーク部(22a)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のバックヨーク部の重量との積として、第2電動機のバックヨーク部における鉄損を求める。同様に、第1電動機(20)のティース部(22b)を模擬する励磁電流を流した際の試料片(41)の鉄損と、当該試料片(41)の重量とに基づいて、試料片(41)の単位重量あたりの鉄損を求める。この単位重量あたりの鉄損と、第2電動機のティース部の重量との積として、第2電動機のティース部における鉄損を求める。そして、第2電動機のバックヨーク部の鉄損と、第2電動機のティース部の鉄損との和として、第2電動機の鉄損を求める。
【0133】
-実施形態5の効果-
本実施形態の電動機の鉄損を求める方法によっても、上記実施形態4と同様の効果が得られる。
【0134】
また、本実施形態の電動機の鉄損を求める方法は、配置ステップにおいて、試料片(41)の両端部の一方の面が、ヨーク体(81)の突出部(81b)の先端面に間隔を空けて対向するように、試料片(41)を配置し、上記励磁ステップにおいて、上記ヨーク体(81)の巻線(56)が接続されかつ上記ヨーク体(81)の巻線(56)に電流を流すための電源装置(30)を用いて、上記試料片(41)を励磁する。この方法では、電源装置(30)によりヨーク体(81)の巻線(56)に電流が流れ、それによりヨーク体(81)を磁束が流れ、これにより試料片(41)が間接的に励磁される。
【0135】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0136】
例えば、励磁ステップにおいて、第1電動機(20)の磁気回路中の所定部位(例えば、バックヨーク部(22a)またはティース部(22b))で磁気飽和が生じると推定される条件が成立する場合、当該条件が成立しない場合に比べて、駆動電流に対する試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を大きくしてもよい。具体的には、例えば、巻回される巻線の巻き数が互いに異なる複数の試料片(41,42)を用意し、当該条件が成立する場合に、巻回される巻線の巻き数が相対的に大きい試料片(41,42)を用いることが考えられる。別の例として、磁路断面積が互いに異なる複数の試料片(41,42)を用意し、当該条件が成立する場合に、磁路断面積が相対的に大きい試料片(41,42)を用いることが考えられる。さらに別の例として、試料片(41,42)の巻線に増幅アンプを接続し、当該条件が成立する場合に、試料片(41,42)の巻線に印加する電圧を昇圧することが考えられる。
【0137】
また、例えば、励磁ステップにおいて、弱め磁束制御を行うための駆動電流を第1電動機(20)に入力するときの磁束密度および磁界強度の時間変化を試料片(41,42)で模擬する場合、それ以外の場合に比べて、駆動電流に対する試料片(41,42)を励磁するための電圧または電流の比率を小さくしてもよい。具体的には、例えば、巻回される巻線の巻き数が互いに異なる複数の試料片(41,42)を用意し、当該条件が成立する場合に、巻回される巻線の巻き数が相対的に小さい試料片(41,42)を用いることが考えられる。別の例として、磁路断面積が互いに異なる複数の試料片(41,42)を用意し、当該条件が成立する場合に、磁路断面積が相対的に小さい試料片(41,42)を用いることが考えられる。さらに別の例として、試料片(41,42)の巻線に増幅アンプを接続し、当該条件が成立する場合に、試料片(41,42)の巻線に印加する電圧を降圧することが考えられる。
【0138】
また、例えば、本開示の電動機の鉄損を求める方法を用いて、第2電動機のみならず、複数の電動機の鉄損を、当該電動機の試作を伴うことなく精度よく求めることができる。この場合、鉄損を求める対象である複数の電動機の各々に対応させて、当該電動機の固定子コアの構成材料と同じ材料からなる試料片を複数用意することが好ましい。
【0139】
また、例えば、本開示の電動機の鉄損を求める方法によると、第2電動機の任意の部位(例えば、バックヨーク部またはティース部)で生じる鉄損を求めることもできる。一例として、上記実施形態1における第1試料片(41)を用いれば、第2電動機のバックヨーク部のみの鉄損を精度よく求めることができる。なお、電動機の磁気回路中の任意の部位の鉄損を精度よく求めることは、従来公知の測定方法では困難であった。
【0140】
また、例えば、第1電動機(20)の巻線(23)はスター型に結線されているが、これに限らず、デルタ型に結線されていてもよい。
【0141】
以上、実施形態および変形例を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。また、以上の実施形態および変形例は、本開示の対象の機能を損なわない限り、適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0142】
以上説明したように、本開示は、電動機の鉄損を求める方法および当該方法に用いる試料片について有用である。
【符号の説明】
【0143】
20 第1電動機
21 固定子
22 固定子コア
22a バックヨーク部
22b ティース部
23 巻線
30 電源装置
41 第1試料片(試料片)
42 第2試料片(試料片)
51 第1一次巻線(巻線)
52 第2一次巻線(巻線)
53 第3一次巻線(巻線)
56 巻線
80 磁場発生装置