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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】カバー部材
(51)【国際特許分類】
   B60K 15/05 20060101AFI20240131BHJP
   F02M 37/00 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B60K15/05 B
F02M37/00 301J
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020093899
(22)【出願日】2020-05-29
(65)【公開番号】P2021187277
(43)【公開日】2021-12-13
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】308039414
【氏名又は名称】株式会社FTS
(73)【特許権者】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120765
【弁理士】
【氏名又は名称】小滝 正宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097076
【弁理士】
【氏名又は名称】糟谷 敬彦
(72)【発明者】
【氏名】西本 将
(72)【発明者】
【氏名】石川 佳紀
(72)【発明者】
【氏名】望月 哲也
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0234357(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2023/0140955(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0087979(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0187131(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0194796(US,A1)
【文献】米国特許第06035884(US,A)
【文献】独国特許出願公開第102008004358(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/00-37/06
B62D 1/00-67/00
B65D 1/00-90/66
F02M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上部に開口部を有し、該開口部の開口縁部に係止リングが固定された車両用の燃料タンクの前記開口部に取付けられる蓋の外面を覆うカバー部材であって、
該カバー部材は、上面部と、該上面部に連続して下方に形成される側面部を有し、
前記上面部の裏面には、前記係止リングの外周縁部を上方から下方に通過させ、前記カバー部材を前記係止リングに取付けるための、下方に突出する突出部と、該突出部の先端部分に爪部を有する係合部が複数箇所形成されていることを特徴とするカバー部材。
【請求項2】
前記上面部において、下方に前記係合部が形成される部位には、凹部が形成されている請求項1に記載のカバー部材。
【請求項3】
前記上面部において、下方に前記係合部が形成される部位には、上方に突出し、且つ前記側面部方向に延設される取手部が形成されている請求項1又は請求項2に記載のカバー部材。
【請求項4】
前記取手部は、前記側面部側が低く形成されている請求項3に記載のカバー部材。
【請求項5】
前記上面部には、下方に前記係合部が形成される部位以外の部位に、略直線状の溝部が形成されている請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載のカバー部材。
【請求項6】
前記上面部には、下方に前記係合部が形成される部位以外の部位に、前記上面部が上方に突出する収容部が形成され、前記溝部は、前記収容部が形成されていない前記上面部に形成されている請求項5に記載のカバー部材。
【請求項7】
前記上面部には、下方に前記係合部が形成される部位以外の部位に、前記上面部が上方に突出する収容部が形成され、該収容部は、1つの側面に形成された収容部開口部と、該収容部開口部に対向する面が前記上面部に対して鋭角に形成された傾斜部とを有し、前記溝部は、前記上面部及び前記収容部の収容部上面部、又は、前記上面部、前記収容部上面部及び前記傾斜部に形成されている請求項5に記載のカバー部材。
【請求項8】
前記収容部の前記収容部開口部の前側の前記上面部には、切り欠き部が形成され、該切り欠き部により上下方向に開閉可能な展開部が形成されている請求項7に記載のカバー部材。
【請求項9】
前記展開部の肉厚は、前記上面部の他の部位に比較して薄く形成されている請求項8に記載のカバー部材。
【請求項10】
前記カバー部材は、前記側面部の周縁に連続して外側方向に形成された鍔部を備えている請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載のカバー部材。
【請求項11】
前記カバー部材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で構成されている請求項1乃至請求項10のいずれか1項に記載のカバー部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用の燃料タンクの開口部に取付けられる蓋の外面を覆うカバー部材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両に搭載される燃料タンクの上部の開口部に搭載される燃料供給装置に関し、以下の技術が開示されている。図9(a)に示すように、燃料タンク100では、タンク本体160の上壁には、略円筒状の開口部110が一体に設けられており、開口部110の外周には、固定部材としての円環状のスレッドリング600が固定されている。又、開口部110の上側には、閉塞部材としての円板状のポンプフランジ220(フューエルポンプフランジ) が設けられている。ポンプフランジ220の外周部は、全周において、開口部110の上面とロックナット230の内周側部分との間に挟持されており、ポンプフランジ220は、開口部110を上側から閉塞している。タンク本体160の上側には、開口部110の外周において、樹脂カバーを構成する樹脂製で円環状の下側カバー700が設けられており、下側カバー700は、開口部110の全周を取り囲んでいる。
【0003】
下側カバー700の上側には、樹脂カバーを構成する樹脂製で略円板状の上側カバー800が設けられている。上側カバー800には、上側部分において円板状の頂部810が設けられると共に、下側部分において円筒状の周部820が設けられており、周部820は、頂部810の全周から下側へ延出されている。頂部810は、下側カバー700(立設部710)の上側を被覆し、周部820は、下側カバー700の外周側(立設部710の外周側)に配置されており、上側カバー800は、下側カバー700の上側を閉塞している。
【0004】
上側カバー800には、図9(b)に示すように、周部820の他側部分において、矩形枠状の上嵌合部830が一体に設けられており、下側カバー700の立設部710に形成された下嵌合部720と嵌合し、下側カバー700に上側カバー800が装着される。
【0005】
又、特許文献2には、燃料タンク100の開口部における構造に関し、以下の技術が開示されている。図10に示すように、燃料タンク100の開口部構造は、燃料タンク100の開口部に固定された幅広孔330と幅狭孔340とを周方向に連ねた形態の係止孔320を有する係止リング300と、ポンプフランジ220を係止リング300とで挟むロックリング400と、図示しない燃料ポンプを覆うように取り付けられるプロテクタ500から構成されている。ロックリング400に形成された係止爪420は、係止リング300の幅広孔330に対して挿抜が可能であり、幅狭孔340に挿入された状態では幅狭孔340の孔縁部に係止され、ロックリング400を係止リング300に固定する。プロテクタ500にはストッパ510が形成され、係止リング300の幅広孔330に挿入されることにより幅狭孔340内のロックリング400の係止爪420が係止リング300の幅広孔330へ変位することを規制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2010-241253号公報
【文献】特開2016-113085号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、車両に搭載される燃料タンクの上部の開口部に搭載される燃料供給装置(燃料ポンプ等)の外面を保護するカバー又はプロテクタには、カバー又はプロテクタの組付けの作業性の向上とともに、熱気又は液体が燃料供給装置に接触することを防止することが要求される。
【0008】
さらに、燃料ポンプの交換等のメンテナンスを行う際には、カバー又はプロテクタを着脱する必要があるが、燃料タンクを車両から降ろすことなくメンテナンスを行う場合は、座席下のカーペットをめくり、フロアパネルに形成されているサービスホールから手を入れて行う必要がある。一般的に、サービスホールの開口部は小さく、燃料ポンプの交換等を行う場合の作業スペースは非常に狭い。
【0009】
特許文献1の技術では、熱気又は液体が燃料供給装置に接触することを防止することについては、非常に有効であるが、上側カバー800と下側カバー700が側面に形成された上嵌合部830と下嵌合部720により固定されているので、サービスホールから嵌合部を探すのに時間を要する。さらに、下側カバー700から、上側カバー800を離脱する際には、上嵌合部830を一時的に弾性変形させて上嵌合部830内から下嵌合部720を離脱させる必要があるので、開口部の小さいサービスホールから手を入れて行う上側カバー800を離脱する作業性は極めて悪い。
【0010】
一方、特許文献2の技術では、サービスホールからプロテクタの締結部を探すことは容易であるが、燃料供給装置の上部が開放されているので、熱気又は液体が燃料ポンプ等の燃料供給装置に接触し、燃料供給装置の劣化が進むおそれがある。又、特許文献2の技術では、燃料供給装置の交換には、3箇所のナットの着脱が必要であり、作業性の観点から依然として問題が残存している。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、上記の課題を解決し、熱気又は液体が車両用の燃料タンクの開口部に取付けられる蓋に接触することを防止するとともに、着脱が容易で作業性に優れたカバー部材を提供するものであり、請求項1の本発明は、上部に開口部を有し、開口部の開口縁部に係止リングが固定された車両用の燃料タンクの前記開口部に取付けられる蓋の外面を覆うカバー部材であって、カバー部材は、上面部と、上面部に連続して下方に形成される側面部を有し、上面部の裏面には、係止リングの外周縁部を上方から下方に通過させ、カバー部材を係止リングに取付けるための、下方に突出する突出部と、突出部の先端部分に爪部を有する係合部が複数箇所形成されていることを特徴とするカバー部材である。
【0012】
請求項1の本発明では、カバー部材は、上部に開口部を有し、開口部の開口縁部に係止リングが固定された車両用の燃料タンクの前記開口部に取付けられる蓋の外面を覆うので、カバー部材により、熱気又は液体が蓋に接することを防止することができる。
【0013】
又、上面部と、上面部に連続して下方に形成される側面部を有し、上面部の裏面には、係止リングの外周縁部を上方から下方に通過させ、カバー部材を係止リングに取付けるための、下方に突出する突出部と、突出部の先端部分に爪部を有する係合部が複数箇所形成されているので、カバー部材を燃料タンクの開口部の開口縁部に固定された係止リングの外周縁部を係合部の爪部を通過させて着脱することにより、特許文献2におけるボルトとナットによる嵌合作業を行うことなくカバー部材を容易に着脱することができ、作業性に極めて優れている。
【0014】
さらに、係合部は、上面部の裏面に形成されているので、フロアパネルに形成されている小さなサービスホールであっても、カバー部材の側面にまで手を延ばすことなくカバー部材の着脱を容易に行うことができ、燃料ポンプの交換等のメンテナンスを効率よく行うことができる。
【0015】
請求項2の本発明は、上面部において、下方に係合部が形成される部位には、凹部が形成されているカバー部材である。
【0016】
請求項2の本発明では、上面部において、下方に係合部が形成される部位には、凹部が形成されているので、係合部が形成されている場所を容易に見つけ出すことができる。又、凹部のため、指の腹部で押し易く、凹部を押すことにより、係合部を係止リングから容易に着脱させることができ、カバー部材の着脱を容易に行うことができる。
【0017】
請求項3の本発明は、上面部において、下方に係合部が形成される部位には、上方に突出し、且つ側面部方向に延設される取手部が形成されているカバー部材である。
【0018】
請求項3の本発明では、上面部において、下方に係合部が形成される部位には、上方に突出し、且つ側面部方向に延設される取手部が形成されているので、係合部が形成されている場所を容易に見つけ出すことができる。又、取手部を指で掴み、上下動させることにより、係合部を係止リングに着脱でき、カバー部材の着脱を容易に行うことができる。
【0019】
請求項4の本発明は、取手部は、側面部側が低く形成されているカバー部材である。請求項4の本発明では、取手部は、側面部側が低く形成されているので、カバー部材をフロアパネルに形成されているサービスホールに出し入れするときに、取手部の側面部側がサービスホールの縁部分に当たることを抑制でき、カバー部材の着脱を容易に行うことができる。
【0020】
請求項5の本発明は、上面部には、下方に係合部が形成される部位以外の部位に、略直線状の溝部が形成されているカバー部材である。
【0021】
請求項5の本発明では、カバー部材の上面部には、下方に係合部が形成される部位以外の部位に、略直線状の溝部が形成されているので、溝部を基点としてカバー部材を変形させることができ、カバー部材の着脱を容易に行うことができる。
【0022】
請求項6の本発明は、上面部には、下方に係合部が形成される部位以外の部位に、上面部が上方に突出する収容部が形成され、溝部は、収容部が形成されていない上面部に形成されているカバー部材である。
【0023】
請求項6の本発明は、カバー部材の上面部には、上面部が上方に突出する収容部が形成されているので、例えば、蓋の上面から上方に突き出ている燃料供給部や燃料供給ホースなどを収容し、熱気又は液体が接触することを防止することができる。又、上面部の一部を部分的に突出させて収容部を形成するので、カバー部材をコンパクトに作製することができる。
【0024】
又、収容部は、下方に係合部が形成される部位以外の部位に形成されるので、係合部を不必要に下方に長く形成する必要がなく、係合部の機械的強度の低下を防止することができる。
【0025】
さらに、溝部は、収容部が形成されていないカバー部材の上面部に形成されているので、突出する収容部の角部によって溝部を基点とするカバー部材の変形が妨げられることを防止することができる。
【0026】
請求項7の本発明は、上面部には、下方に係合部が形成される部位以外の部位に、上面部が上方に突出する収容部が形成され、収容部は、1つの側面に形成された収容部開口部と、収容部開口部に対向する面が上面部に対して鋭角に形成された傾斜部とを有し、溝部は、上面部及び収容部の収容部上面部、又は、上面部、収容部上面部及び傾斜部に形成されているカバー部材である。
【0027】
請求項7の本発明では、カバー部材の上面部には、上面部が上方に突出すると共に1つの側面に形成された収容部開口部と、収容部開口部に対向する面が上面部に対して鋭角に形成された傾斜部とを有する収容部が形成されているので、例えば、圧力センサなどが蓋上に水平方向に取付けられている場合などでは、燃料タンク側からのリード線部を傾斜部に収容し、圧力センサの車両側との接続部を側面に形成された収容部開口部に配置することができる。
【0028】
又、収容部は、下方に係合部が形成される部位以外の部位に形成されるので、係合部を不必要に下方に長く形成する必要がなく、係合部の機械的強度の低下を防止することができる。
【0029】
さらに、溝部は、上面部と収容部の収容部上面部、又は、上面部と収容部上面部及び傾斜部に略直線状に形成されているので、溝部が収容部を通る場合にもカバー部材の変形が妨げられることを防止することができる。
【0030】
請求項8の本発明は、収容部の収容部開口部の前側の上面部には、切り欠き部が形成され、切り欠き部により上下方向に開閉可能な展開部が形成されているカバー部材である。
【0031】
例えば、圧力センサの車両側との接続部では、圧力センサのジャック部分が収容部の収容部開口部から前側に露出する場合があり、カバー部材の着脱において、ジャック部分が着脱の妨げになる場合がある。又、ジャック部分に該当するカバー部材の上面部に開口部を形成すると、熱気又は液体が蓋に接触する可能性が高くなる。
【0032】
請求項8の本発明では、収容部の収容部開口部の前側の上面部には、切り欠き部が形成され、切り欠き部により上下方向に開閉可能な展開部が形成されているので、開口部の前側が上下に展開することにより、カバー部材の着脱において、ジャック部分等が着脱の妨げになることを防止することができる。又、カバー部材を取付けた後は、展開部によって蓋上を保護することができるので、熱気又は液体との接触による蓋の劣化を抑制することができる。
【0033】
請求項9の本発明は、展開部の肉厚は、上面部の他の部位に比較して薄く形成されているカバー部材である。請求項9の本発明では、展開部の肉厚は、カバー部材の上面部の他の部分に比較して薄く形成されているので、展開部の上下方向の開閉を容易にするとともに、熱気又は液体との接触による蓋の劣化を抑制することができる。
【0034】
請求項10の本発明は、カバー部材は、側面部の周縁に連続して外側方向に形成された鍔部を備えているカバー部材である。
【0035】
燃料タンクは、外部から熱気によるタンク内の温度上昇を抑制するために開口部以外の外面を断熱材で覆う場合がある。請求項10の本発明は、カバー部材は、側面部の周縁に連続して外側方向に形成された鍔部を備えているので、カバー部材が燃料タンクの係止リングに取付けられたときに、カバー部材の鍔部を断熱材に被さるようにすることができ、カバー部材と燃料タンクとの隙間からの熱気又は液体の侵入を抑制することができる。
【0036】
請求項11の本発明は、カバー部材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で構成されているカバー部材である。カバー部材においては、熱気として、例えば、エンジン、触媒装置、又は路面からの熱により加熱された空気、液体として、車両外部又は車室からの酸性の液体への対応が求められる。
【0037】
請求項11の本発明では、カバー部材は、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)で構成されているので、カバー部材を軽量化することができ、さらに耐熱性及び耐酸性に優れている。
【発明の効果】
【0038】
カバー部材は、上部に開口部を有し、開口部の開口縁部に係止リングが固定された車両用の燃料タンクの前記開口部に取付けられる蓋の外面を覆うので、カバー部材により、熱気又は液体が蓋に接することを防止することができる。
【0039】
又、上面部と、上面部に連続して下方に形成される側面部を有し、上面部の裏面には、カバー部材を係止リングに取付けるための、下方に突出する突出部と、突出部の先端部分に爪部を有する係合部が複数箇所形成されているので、カバー部材を燃料タンクの開口部の開口縁部に固定された係止リングに係合部の爪部を着脱することにより、カバー部材を容易に着脱することができ、作業性に極めて優れている。
【0040】
さらに、係合部は、上面部の裏面に形成されているので、フロアパネルに形成されている小さなサービスホールであっても、カバー部材を容易に着脱することができ、燃料ポンプの交換等のメンテナンスを効率よく行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
図1】本発明の第1の実施形態のカバー部材の平面図である。
図2】カバー部材を裏面から見た平面図である。
図3】係止リングの斜視図である。
図4】ロックリングの斜視図である。
図5図1のX-X断面図であり、他の部材を組付けた図である。
図6】本発明の第2の実施形態の斜視図である。
図7図6のカバー部材の平面図である。
図8図7のY-Y断面図であり、他の部材を組付けた図である。
図9】従来の燃料供給装置であり、(a)は断面図、(b)は斜視図である(特許文献1)。
図10】従来の燃料タンクの開口部構造である(特許文献2)。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明を具体化した第1の実施形態を図1から図5に基づいて説明する。本第1の実施形態は、樹脂製の燃料タンク1と、金属製の係止リング3と、燃料タンク1の開口部11の開口縁部12に取付けられる蓋2と、蓋2の外面を覆うカバー部材5を備えている。なお、燃料タンク1は、車両のフロアを構成するフロアパネルの下に、フロアパネルから離隔して配置される。
【0043】
又、蓋2は、後述するロックリング4によって、係止リング3に取付けられる。以下の説明においては、順に、本実施形態を構成する燃料タンク1、蓋2、係止リング3、ロックリング4を簡単に説明し、最後にカバー部材5について詳述する。そして、その後に、燃料タンク1への蓋2の取付け、係止リング3へのカバー部材5の着脱について説明する。
【0044】
燃料タンク1は、ブロー成形法を用いて成形した高密度ポリエチレン(HDPE)を主材とし、燃料の透過性の極めて少ないバリヤ層には、例えば、エチレン-ビニルアルコール共重合体(EvOH)を用い、樹脂製燃料タンクの内側から、主材/接着材層/バリヤ層/接着材層/再生材層/主材構造の4種6層構造である。なお、主材/接着材層/バリヤ層/接着材層/主材の3種5層であってもよい。また、ポリプロピレンやポリアミド等の、ブロー成形が可能な合成樹脂であれば、いずれの合成樹脂も使用することができる。
【0045】
図5に示すように、燃料タンク1の上部には、円形をなす開口部11が形成されている。開口部11の開口縁部12の上面である開口面13にはシール溝14が形成され、シール溝14にはOリング15が取付けられている。又、燃料タンク1の開口部11近傍を除く部位は、断熱材8で覆われている。
【0046】
次に、蓋2について説明する。蓋2は、後述するロックリング4によって着脱可能に取付けられており、燃料タンク1の開口部11を塞ぐことで開口部11をフタしている。蓋2は、図5に示すように、円柱部21と、フランジ部22と、燃料供給部23と、コネクタ部24を有している。蓋2は、樹脂製であり、燃料供給部23と、コネクタ部24のうちのターミナル等の導電部以外の部分と一体に成形される。材料としては、費用対効果に優れたPOM(ポリアセタール)を使用した。
【0047】
蓋2の円柱部21は、蓋2における円柱形状の部分であり、その上部にフランジ部22が形成され、フランジ部22は外側に向けて張り出している。円柱部21は、燃料タンク1の開口部11内に入り込んでいる。
【0048】
蓋2の燃料供給部23は、中空管を有し、燃料タンク1に貯留されている燃料が中を通る。燃料供給部23の一方の端部は、燃料タンク1内に設置される図示しない燃料ポンプに接続されている。又、他の端部には、ホース9の一端が接続され、ホース9の他の端部は、エンジンに接続されている。
【0049】
蓋2のコネクタ部24は、上下方向に延びてフランジ部22を貫いている。コネクタ部24の下端は、図示しない複数のリード線によって燃料ポンプに接続されている。
【0050】
次に、係止リング3について説明する。図3及び図5に示すように、係止リング3は、全体として円環形を有している。係止リング3の内周側の縁部は、燃料タンク1に埋設されている。係止リング3の外周縁部31は、燃料タンク1の開口部11の開口面13の上面と面一に板状を有し、燃料タンク1の開口部11の開口面13よりも外周側に張り出している。係止リング3の外周縁部31には、周方向にほぼ等角度に間隔を有し、貫通孔であり、ほぼ同形状の係止孔32が8箇所形成されている。各係止孔32は、幅広孔33と幅狭孔34を周方向に連通した形状を有しており、平面視において、幅狭孔34は、幅広孔33よりも時計回り方向前方に形成されている。なお、係止孔32は8箇所には限定されない。
【0051】
次にロックリング4について説明する。図4に示すように、ロックリング4は、係止リング3と同様に、全体として円環形を有している。ロックリング4は、円環形の板状の本体部41と、係止リング3の係止孔32と同数の8箇所の係合爪部42を有している。8箇所の係合爪部42は、同一形状で及び同寸法で周方向にほぼ等角度に間隔を有して配置されている。係合爪部42は、本体部41の外周縁から下方に延出した脚部43と、脚部43の先端部から径方向内側方向(ロックリング4の中心側)に延出したロックリング爪部44とから構成されている。
【0052】
最後に、カバー部材5について説明する。カバー部材5は、燃料タンク1の開口部11の開口縁部12に取付けられた係止リング3に取付けられ、蓋2の外面を上方及び側方から覆う。カバー部材5は、蓋2を熱気及び液体から保護するため、断熱性及び耐酸性に優れた材料を使用することが望ましく、本第1の実施形態では、オレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)を用いて形成した。
【0053】
カバー部材5は、図1図2及び図5に示すように、上面部51と、上面部51に連続して下方に形成される側面部52と、側面部52の周縁に連続して外側方向に形成された鍔部53を有し、上面部51の裏面には、カバー部材5を係止リング3に取付けるための、下方に突出する突出部55と、突出部55の先端部分に爪部56を有する係合部54が3箇所形成されている。なお、図1及び図2に示した破線の円弧は、カバー部材5を係止リング3に取付けるときの係止リング3の外周縁部31の最外周部を示している。
【0054】
上面部51は、第1収容部60が形成された部分を除き、円板形状に形成されている。又、側面部52は、上面部51の外周縁から下方に延びている。なお、上面部51は、円板形状に限定されない。
【0055】
第1収容部60は、カバー部材5を装着したときに、蓋2の燃料供給部23と、燃料供給部23に接続されたホース9を上方から覆うように収容することができるように、上面部51が上方に突出して形成されている。又、第1収容部60の外側の端部には、ホース9の通路となる端部開口部69が形成されている。
【0056】
又、上面部51には、カバー部材5を装着したときに、蓋2のコネクタ部24が上面部51を貫通可能な貫通孔66が2箇所形成されている。なお、貫通孔66は2箇所には限定されない。
【0057】
係合部54は、図2及び図5に示すように、上面部51の裏面から下方に形成される。係合部54は、下方に突出する突出部55と、突出部55の先端部分に径方向内側に形成された爪部56を有している。
【0058】
係合部54は、円周上に配設され、カバー部材5を係止リング3に装着したときに、突出部55の内側が係止リング3の外周縁部31の外側に配設されて、カバー部材5の水平方向をガイドする。又、爪部56が係止リング3の下方に配設されることにより、カバー部材5を係止リング3に着脱可能にする。
【0059】
カバー部材5の係止リング3への着脱は、係合部54の突出部55を外側に撓ませて、爪部56が係止リング3の外周縁を上下に移動することによって行われる。
【0060】
係合部54は、円周上の3箇所に分散して形成されている。なお、係合部54は、3箇所には限定されない。ただし、カバー部材5を確実に係止リング3に固定すること及びカバー部材5の着脱時の作業性を考慮すると、係合部54を多数配置することは望ましくなく、3箇所程度を均等に配置するのが適当である。なお、係合部54を形成する位置は、第1収容部60、貫通孔66などの位置も考慮して決定される。
【0061】
又、図2では、係合部54の周方向において、爪部56の両側に突出部55が延びて形成されているが、これは、突出部55によりカバー部材5の水平方向を確実にガイドすることと、着脱時における爪部56が係止リング3の外周縁部31を上下に移動する際の容易性を考慮したものである。
【0062】
図5に示すように、係合部54の爪部56の下面には、傾斜面67が形成されている。傾斜面67を形成することにより、カバー部材5を係止リング3に取付けるときに、突出部55を外側に撓ませ易くでき、取付けの作業性を向上させることができる。
【0063】
図1及び図2に示すように、上面部51において、下方に係合部54が形成される部位には、凹部57が形成されている。凹部57は、弧状に窪んだ形状に形成した。凹部57を形成することにより、係合部54が形成されている場所を容易に見つけ出すことができ、凹部57のため、指の腹で押し易く、凹部57を押すことにより、係合部54を係止リング3から容易に離脱させることできるので、カバー部材5を容易に着脱することができる。
【0064】
図1及び図2に示すように、上面部51において、下方に係合部54が形成される部位には、上方に突出し、且つ側面部52方向に延設される取手部58が形成されている。取手部58を形成することにより、係合部54が形成されている場所を容易に見つけ出すことができ、取手部58を掴み、取手部58を上下動させることにより、係合部54を係止リング3に着脱できるので、カバー部材5を容易に着脱することができる。
【0065】
又、図5に示すように、取手部58は、側面部52側が低く形成されている。取手部58は、側面部52側が低く形成されているので、カバー部材5を図示しないフロアパネルに形成されているサービスホールに出し入れする際に、取手部58の側面部52側がサービスホールの縁部分に当たることを抑制でき、カバー部材5を容易に着脱することができる。
【0066】
なお、本実施形態では、凹部57と取手部58が同時に形成されているが、凹部57と取手部58は片方のみ形成してもよい。
【0067】
図1に示すように、カバー部材5の上面部51には、下方に係合部54が形成される部位、第1収容部60が形成される部位以外の部位に、直線状の溝部59が形成されている。溝部59を形成することにより、溝部59を基点としてカバー部材5を変形させることができるので、カバー部材5を容易に着脱することができる。
【0068】
次に、燃料タンク1への蓋2の取付け、カバー部材5の着脱について説明する。図5に示すように、燃料タンク1に燃料ポンプ等が取付けられた蓋2を取付けるには、まず、燃料タンク1の開口部11の上面の開口面13に形成されたシール溝14にOリング15を挿入する。そして、蓋2の円柱部21を燃料タンク1の開口部11の開口縁部12から挿入し、フランジ部22を開口面13上に載置する。
【0069】
この後、ロックリング4の係合爪部42を係止リング3の係止孔32の幅広孔33に上から落とし込むように挿入し、ロックリング4の本体部41を蓋2の縁部の上面に載置させる。次に、ロックリング4を係止リング3に対して時計回りに回転する。これに伴い、係合爪部42が幅広孔33から幅狭孔34に移動すると共に、係合爪部42のロックリング爪部44が係止リング3の外周縁部31の下面に当接する。これにより、Oリング15が押し潰されて、開口部11と蓋2の隙間が確実にシールされる。
【0070】
次に、エンジン側からのホース9をカバー部材5の端部開口部69から挿入し、蓋2に形成された燃料供給部23にホース9を接続する。そして、蓋2のコネクタ部24、燃料供給部23及びホース9の位置にカバー部材5の貫通孔66と第1収容部60の位置を合わせて載置する。
【0071】
凹部57又は取手部58を押すと、カバー部材5の係合部54は、爪部56の傾斜面67によって外側に力が働き、それに伴い突出部55が外側に少し撓む。カバー部材5は上から押されているので、爪部56は、係止リング3の外周縁部31を上方から下方に通過する。そして、通過後に、外側に働いていた力が解放され、突出部55の撓みは解除される。その結果、係合部54を係止リング3の外周縁部31に固定することができる。この動作は、カバー部材5に形成された3箇所の係合部54全てに対して行われる。
【0072】
なお、カバー部材5の凹部57又は取手部58を押す時に、溝部59を同時に押しながら行うと、溝部59を基点としてカバー部材5の上面部51を僅かに変形させながら、係合部54の爪部56が外側に移動するように変形させることができるので、係合部54を係止リング3の外周縁部31に固定することをより容易に行うことができる。
【0073】
カバー部材5が係止リング3に取付けられた時、カバー部材5の鍔部53は、燃料タンク1を覆う断熱材8に被さるように当接する。その結果、カバー部材5と燃料タンク1との隙間からの熱気又は液体の侵入を抑制することができる。
【0074】
一方、カバー部材5を取り外すときは、取手部58を指で掴み、外側方向で斜め下方に力を加えて押し、係合部54の爪部56を係止リング3の外周縁部31の外側に移動させ、その後に、取手部58を持ち持ち上げる。その結果、係合部54の爪部56を係止リング3の外周縁部31の下方から上方に通過させることができ、カバー部材5を係止リング3から外すことができる。
【0075】
なお、取手部58を形成しない場合は、凹部57を、例えば、親指の腹部で、外側方向で斜め下方に力を加えて押し、係合部54の爪部56を係止リング3の外周縁部31の外側に移動させ、その後に、他の指、例えば、人差し指で側面部52側を上に引き上げることにより、カバー部材5を係止リング3から外すことができる。
【0076】
次に、本発明を具体化した第2の実施形態を図6から図8に基づいて説明する。本第2の実施形態において、上記の第1の実施形態との相違点は、次の2点である。第1点は、第1収容部60とは別の上面部51に、第2収容部61を形成し、第2収容部61の収容部開口部62の前側の上面部51には、切り欠き部64が形成され、切り欠き部64により上下方向に開閉可能な展開部65が形成されている点である。
【0077】
第2点は、溝部59は、上面部51、第2収容部61の収容部上面部68及び傾斜部63にも形成されている点である。なお、傾斜部63には形成されなくてもよい。
【0078】
本第2の実施形態では、第2収容部61内に圧力センサ6が収容される。又、圧力センサ6は、例えば、ECU(Electronic Control Unit)等に接続される端子部分と接続するジャック部71が展開部65の上方空間に配置されている。
【0079】
第2収容部61は、上記の第1収容部60と同様に上面部51が上方に突出して形成されている。第2収容部61は、1つのほぼ垂直な側面に収容部開口部62が形成され、収容部開口部62に対向する面は、上面部51に対して鋭角に形成された傾斜部63が形成されている。
【0080】
又、収容部開口部62の前側の上面部51には、図7に示すように、略H字形状の切り欠き部64が形成されている。図8に示すように、切り欠き部64に形成される展開部65は、展開部65以外の上面部51に比較して薄く形成されており、展開部65は、切り欠き部64により上下方向に開閉可能になっている。
【0081】
さらに、溝部59は、上面部51と、第2収容部61の収容部上面部68及び傾斜部63に直線状に形成されている。その結果、上方に突出した第2収容部61を形成した場合であっても溝部59によってカバー部材5の変形が可能となる。
【0082】
次に、燃料タンク1への蓋2の取付け、カバー部材5の着脱について説明する。燃料タンク1に燃料ポンプ等が取付けられた蓋2を取付けるには、上記の第1の実施形態と同様に、まず、燃料タンク1の開口部11の上面に形成されたシール溝14にOリング15を挿入する。そして、蓋2を燃料タンク1の開口部11の開口縁部12の上面に載置する。その後、ロックリング4によって、蓋2を燃料タンク1の開口部11に固定する。
【0083】
次に、エンジン側からのホース9をカバー部材5の端部開口部69から挿入し、蓋2に形成された燃料供給部23にホース9を接続する。そして、蓋2のコネクタ部24、燃料供給部23及びホース9の位置にカバー部材5の貫通孔66と第1収容部60の位置を合わせて載置する。
【0084】
そして、第2収容部61を下方に押し付けると、蓋2に搭載されている圧力センサ6のジャック部71によって、展開部65が上方に開くことにより、圧力センサ6のジャック部71が、カバー部材5の展開部65を通過することができる。又、展開部65は、図8に示すように、上面部51に比較して薄く形成されているので、展開部65の先端が上方になる弧状に撓むことができ、ジャック部71を容易に通過する。
【0085】
次に、凹部57又は取手部58を押すと、カバー部材5の係合部54は、爪部56の傾斜面67によって外側に力が働き、それに伴い突出部55が外側に少し撓む。カバー部材5は上から押されているので、爪部56は、係止リング3の外周縁部31を上方から下方に通過する。そして、通過後に、外側に働いていた力が解放され、突出部55の撓みは解除される。その結果、係合部54を係止リング3の外周縁部31に固定することができる。この動作は、カバー部材5に形成された3箇所の係合部54全てに対して行われる。
【0086】
このとき、展開部65は、ジャック部71の通過が終了し、元の形状に戻ることにより、ジャック部71の下方の蓋2のフランジ部22の表面を覆う。その結果、熱気又は液体との接触による蓋2の劣化を抑制することができる。最後に、圧力センサ6のジャック部71にECUに接続される端子部分を接続する。
【0087】
一方、カバー部材5を取り外すときは、圧力センサ6のジャック部71からECUに接続される端子部分を外す。そして、取手部58を指で挟み、外側方向斜め下方に押し、係合部54の爪部56を係止リング3の外周縁部31の外側に移動させ、その後に、取手部58を持ち持ち上げる。その結果、係合部54の爪部56を係止リング3の外周縁部31の下方から上方に通過させることができ、カバー部材5を係止リング3から外すことができる。
【0088】
このとき、展開部65は、展開部65の先端が下方なる弧状に撓むことにより、ジャック部71を容易に通過する。そして、第2収容部61を持ち上げると、ジャック部71が展開部65を通過する。
【0089】
上記のカバー部材5の着脱において、溝部59を同時に押しながら行うと、着脱をより容易に行うことができる。
【0090】
本発明の実施にあたっては、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。
【0091】
例えば、上記の第1及び第2の実施形態では、燃料タンク1に埋設した係止リング3への蓋2の取付けをロックリング4によって行ったが、他の方法によって行ってもよい。
【符号の説明】
【0092】
1 燃料タンク
2 蓋
3 係止リング
4 ロックリング
5 カバー部材
11 開口部
12 開口縁部
31 外周縁部
51 上面部
52 側面部
53 鍔部
54 係合部
55 突出部
56 爪部
57 凹部
58 取手部
59 溝部
60 第1収容部
61 第2収容部
62 収容部開口部
63 傾斜部
64 切り欠き部
65 展開部
67 傾斜面
68 収容部上面部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10