(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ToF型距離センサ及び電子機器
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240131BHJP
G01S 17/88 20060101ALI20240131BHJP
G01C 3/06 20060101ALI20240131BHJP
G01F 23/292 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
G01S7/481 A
G01S17/88
G01C3/06 120Q
G01F23/292 B
(21)【出願番号】P 2020095305
(22)【出願日】2020-06-01
【審査請求日】2023-03-22
(73)【特許権者】
【識別番号】319006047
【氏名又は名称】シャープセミコンダクターイノベーション株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】岡田 教和
(72)【発明者】
【氏名】岩森 光司
(72)【発明者】
【氏名】高田 敏幸
【審査官】藤田 都志行
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2019-0110231(KR,A)
【文献】特開2019-132640(JP,A)
【文献】国際公開第2016/079870(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/064794(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51
G01S 17/00-17/95
G01C 3/00- 3/32
G01B 11/00-11/30
G01F 23/292
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パルス光を発する発光素子と、
前記発光素子から発せられた前記パルス光を集光する第1集光部と、
受光素子と、
前記第1集光部により集光された前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、を備え、
前記第1領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域であ
り、
前記カバーの前記第1領域と前記第2領域との間に、分離窓が形成されていることを特徴とする、ToF型距離センサ。
【請求項2】
前記受光素子に向けて入射した前記パルス光を集光する第2集光部を備えることを特徴とする、請求項1に記載のToF型距離センサ。
【請求項3】
パルス光を発する発光素子と、
受光素子と、
前記発光素子から発せられた前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、
前記受光素子に向けて入射した前記パルス光を集光する第2集光部と、を備え、
前記第2領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域であることを特徴とする、ToF型距離センサ。
【請求項4】
前記発光素子から発せられ前記第1領域に至る前記パルス光を集光する、第1集光部を備えることを特徴とする、請求項3に記載のToF型距離センサ。
【請求項5】
前記カバーの前記第1領域と前記第2領域との間に、分離窓が形成されていることを特徴とする、請求項
3または4に記載のToF型距離センサ。
【請求項6】
前記カバーの前記第1領域と前記第2領域との間に、遮光領域が設けられていることを特徴とする、請求項
3または4に記載のToF型距離センサ。
【請求項7】
前記発光素子は、垂直共振器型面発光レーザであることを特徴とする、請求項1から6のいずれか1項に記載のToF型距離センサ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載のToF型距離センサを備えることを特徴とする、電子機器。
【請求項9】
前記ToF型距離センサで液面の位置を検知することを特徴とする、請求項8に記載の電子機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ToF(Time of Flight)を用いて測距を行うToF型距離センサ及びこれを備える電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液面を検知するToF型距離センサと、これを備える電子機器としての空気調和器が提案されている(特許文献1参照)。このToF型距離センサは、カバーが、発光部を覆う透過領域と、測定光受光部を覆う散乱領域とを有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の従来技術を、例えば、浄水器に適用しようとした場合、次のような未だ解決できない課題があることが発見された。浄水器は、貯水容器に液体が追加的に勢いよく注がれる場合がある。液体が勢いよく注がれ測定対象物の液面が変動すると、測距の際に精度及び安定性よく推移を検出ことができないときがあった。
【0005】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができるToF型距離センサ、及びこれを備える電子機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る、ToF型距離センサは、パルス光を発する発光素子と、前記発光素子から発せられた前記パルス光を集光する第1集光部と、受光素子と、前記第1集光部により集光された前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、を備え、前記第1領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域である構成を備える。
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明の別の一態様に係る、ToF型距離センサは、パルス光を発する発光素子と、受光素子と、前記発光素子から発せられた前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、前記受光素子に向けて入射した前記パルス光を集光する第2集光部と、を備え、前記第2領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域である構成を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施形態1の浄水器の一例を示す説明図である。
【
図2】実施形態1におけるToF型距離センサを示す斜視図である。
【
図3】
図2のToF型距離センサからカバーを取り外した状態の外形を示す斜視図である。
【
図5】発光素子から発せられたパルス光と、受光素子に向けて入射したパルス光を模式的に示す説明断面図である。
【
図6】実施形態1の浄水器の水注ぎの際の測定時間とToF型距離センサの出力距離変動を示すグラフである。
【
図7】実施形態2のToF型距離センサと、発光素子から発せられたパルス光を模式的に示す説明断面図である。
【
図8】実施形態3のToF型距離センサのカバーを示す斜視図である。
【
図9】
図8のカバーの変形例を採用したToF型距離センサと、発光素子から発せられたパルス光を模式的に示す説明断面図である。
【
図10】実施形態3のToF型距離センサと、発光素子から発せられたパルス光を模式的に示す説明断面図である。
【
図11】実施形態5のToF型距離センサと、発光素子から発せられたパルス光を模式的に示す説明断面図である。
【
図12】実施形態6のToF型距離センサを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しつつ、詳細に説明する。なお、本発明は以下の実施形態に何ら限定されない。
【0011】
〔実施形態1〕
以下、本発明の実施形態1について、
図1~
図6を参照しつつ、詳細に説明する。実施形態1では、本発明の一態様であるToF型距離センサ100、及び、ToF型距離センサ100を用いた本発明の電子機器の一態様である浄水器110が示される。
【0012】
(浄水器110の構成)
浄水器110は、
図1に示すように、前ろ過部101と、活性炭処理部102と、逆浸透膜処理部103と、注ぎ口104と、貯水器105と、ToF型距離センサ100とを備えている。逆浸透膜はRO(Reverse Osmosis)膜ともいい、逆浸透膜処理部103は、RO膜処理部ともいう。浄水器110では、原水が、前ろ過部101、活性炭処理部102及び逆浸透膜処理部103をこの順に通る。逆浸透膜処理部103を通った後の液体が、浄水又はろ過した水として、注ぎ口104を介して貯水器105に注がれ、直接取り外し式の貯水器105に蓄えられる。
【0013】
浄水器110は、貯水器105が浄水器110から取り外し可能な構成とされているため、ろ過した水が貯水器105の上方から注がれる構成を採っている。また、浄水器110は、満水までの時間を短縮するため、注ぎ口104から放出される液体の流量を可能な限り多くしている。
【0014】
このため、浄水器110においては、貯水器105内に貯留された水の液面の変動が、例えば加湿器といったような貯水部を持つ他の一般的な電子機器より大きい。
図1では、貯水器105内に貯留された水が、ToF型距離センサ100の測定対象物106である。浄水器110では、その液面位置を検出するために、注ぎ口104とほぼ同じ高さにToF型距離センサ100が設置されている。
【0015】
(ToF型距離センサ100の構成)
ToF型距離センサ100は、飛行時間(Time of Flight)方式により距離を検出するセンサである。実施形態1におけるToF型距離センサ100は、発光素子10と、第1集光部20と、受光素子30と、カバー40と、第2集光部50とを備えている(
図4及び5参照)。ToF型距離センサ100の外形を
図2に示す。
【0016】
ToF型距離センサ100は、
図2に示すように、カバー40に、パルス光が通過する第1領域41及び第2領域42を有する。さらに、カバー40において、少なくとも第1領域41と第2領域42の間にパルス光の透過を遮蔽する遮蔽部45を有する。カバー40を取り外した状態のToF型距離センサ100を
図3に示す。
【0017】
ToF型距離センサ100は、
図3に示すように、基板1の上に遮光性材料を有する不透明樹脂2が覆う構成を採っている。また、ToF型距離センサ100は、不透明樹脂2に、出射開口3と受光開口4を有する。出射開口3と受光開口4は、不透明樹脂2を貫通する貫通孔で構成されている。
【0018】
また、出射開口3の開口径は、受光開口4の開口径より大きい。カバー40を取り外した状態のToF型距離センサ100の外形サイズは、厚み0.3mm以上3mm以下程度である。その長辺は2mm以上10mm以下程度であり、短辺は1mm以上5mm以下程度である。
図2のA-A線における断面図を
図4に示す。ToF型距離センサ100は、不透明樹脂2と基板1の間に透明樹脂8が充填されている。透明樹脂8が充填されたToF型距離センサ100の内部には、発光素子10を有する。
【0019】
(発光素子10の構成)
発光素子10は、超高速変調が可能な垂直共振器型面発光レーザ(Vertical Cavity Surface Emitting Laser:VCSEL)であることが好ましい。発光素子10は、発光波長として、例えば940nm帯の赤外光を選択することができる。発光素子10にVCSELを用いた場合、発光素子10から発せられたパルス光は、発光素子10の光軸から広がる。例えば、そのパルス光は、半値半角で15度の指向性を有する。この場合のパルス光をレーザ光ともいう。
【0020】
以下、発光素子10から発せられたパルス光が測定対象物106(
図1参照)に達するまでのものを「発光パルス」という。発光パルスには、ToF型距離センサ100の内部におけるパルス光と、ToF型距離センサ100の外部におけるパルス光を含む。また、測定対象物106(
図1参照)で反射されたパルス光を「反射光」という。さらに、受光素子30に向けて入射したパルス光を「受光パルス」という。
【0021】
(第1集光部20の構成)
第1集光部20は、発光素子10から発せられたパルス光をToF型距離センサ100の内部において集光するものである。具体的に、第1集光部20は、発光素子10側から出射開口3側へ突出する凸レンズである。
【0022】
第1集光部20は、透明樹脂8と同様のエポキシ等の透光性を有する材料からなる。第1集光部20は、出射開口3の下部に接しており、透明樹脂8と一体的に構成されている。しかし、第1集光部20は、透明樹脂8とは別の部材で構成されていてもよい。そして、出射開口3の中心軸上に第1集光部20の最凸部が位置している。さらに、第1集光部20の焦点に発光素子10の中心が位置している。発光素子10と受光素子30は、所定間隔を存して基板1上にダイボンドされている。
【0023】
(受光素子30の構成)
受光素子30は、パルス光を受光する半導体チップである。受光素子30には受光部として、微弱な光を超高速で検出可能な単一格子アバランシェダイオード(Single Photon Avalanche Photo Diode:SPAD)のアレイが設けられていることが好ましい。受光素子30の受光部上には、基準光フィルタ5と測定光フィルタ6でなる2つのフィルタが設けられている。基準光フィルタ5の直下が基準光の受光部であり、測定光フィルタ6の直下が測定光の受光部である。
【0024】
基準光フィルタ5と測定光フィルタ6は、可視光カットのガラスフィルタである。また、基準光フィルタ5には、表面に、発光素子10の発光波長を選択的に透過するバンドパスフィルタが設けられることが好ましい。基準光フィルタ5は、発光素子10の近くに配置されている。
【0025】
基準光フィルタ5と測定光フィルタ6の間には、パルス光を遮光する遮光部7が設けられている。また、基準光フィルタ5と発光素子10の間には、透明樹脂8が充填されており、パルス光の経路を形成している。以下、この経路を、「基準光経路」という。受光素子30は、基準光経路を介して基準光の受光部で、発光素子10から発せられたパルス光を受光する。一方、受光素子30は、測定光の受光部で受光パルスを受光する。
【0026】
(カバー40の構成)
カバー40は、ToF型距離センサ100の保護のために設けられているものである。カバー40は、不透明樹脂2の上面との間に所定距離を存して設けられている。また、カバー40は、ToF型距離センサ100の水濡れを防止しつつ、不透明樹脂2及び基板1の両側面にそれぞれ適宜の2つの連結部材9を設けて固定されている。
【0027】
カバー40と不透明樹脂2との所定距離は、0mmを超え5mm以下の範囲内から選択し得る。またカバー40の厚みは0.5以上3mm以下の範囲内から選択し得る。典型的には、その距離が0.7mmであり、その厚みが1mmである。
【0028】
カバー40においては、出射開口3に対応する第1領域41と、受光開口4に対応する第2領域42とで、パルス光を透過するよう材料や厚みを調整してある。
図4では、カバー40の表裏両面のうち一方の面に第1領域41を有し、第1領域41を有する面とは反対の他の面に第1凹部43を設けて厚みを調整している。
【0029】
第1凹部43は、内部側に位置する他方の面に設けられている。第1領域41は、出射開口3と発光素子10を覆う。また、カバー40の表裏両面のうち一方の面に第2領域42を有し、第2領域42を有する面と反対の他の面に第2凹部44を設けて厚みを調整している。第2領域42は、受光開口4と測定光の受光部及びその近傍を覆う。
【0030】
(実施形態1の第1領域の構成)
カバー40において、第1領域41は、パルス光を散乱させる散乱領域である。散乱領域である第1領域41では、パルス光がカバー40を透過するだけでなく、散乱される。ここで、散乱領域である第1領域41は、一方の面に凹凸が設けられて構成される。具体的に、第1領域41は、外部側に位置する一方の面にシボを取り付けて散乱領域の凹凸が形成されている。
【0031】
第2領域42は、単にパルス光を透過する透過領域である。透過領域である第2領域42におけるカバー40の表裏両面は平面で構成されている。具体的に、第2領域42は、カバー40の外部側に位置する一方の面に設けられている。他方、第2凹部44は、カバー40の内部側に位置する他方の面に設けられている。
【0032】
(第2集光部の構成)
第2集光部50は、受光パルスを集光するものである。具体的に、第2集光部50は、受光素子30側から受光開口4側へ突出する凸型集光レンズである。第2集光部50は、透明樹脂8と同様のエポキシ等の透光性を有する材料からなる。第2集光部50は、
図4の縦断面視において受光開口4より大径で、かつ、透明樹脂8から受光開口4の上下高さの略半分程度の高さを有する。
【0033】
第2集光部50は、受光開口4に接し、透明樹脂8と一体的に構成されている。しかし、第2集光部50は、透明樹脂8とは別の部材で構成されていてもよい。そして、第2集光部50の焦点に測定光の受光部が位置している。ただし、第2集光部50の最凸部は受光開口4の中心軸から遮光部7側へずれて配置されている。また、遮光部7の上方に対応する第2集光部50の一部に不透明樹脂2が覆いかぶさっている。
【0034】
(実施形態1の発光側の光学的関係)
ToF型距離センサ100は、発光パルスの光路において、発光素子10に次いで第1集光部20が存在し、出射開口3と第1凹部43を通過し、第1集光部20の次に散乱領域である第1領域41が存在する。換言すれば、発光側の光学的関係は、発光素子10、第1集光部20、散乱領域である第1領域41の順となっている。
【0035】
(実施形態1の受光側の光学的関係)
また、ToF型距離センサ100は、受光パルスの光路において、透過領域である第2領域42に次いで第2集光部50が存在する。そして、第2集光部50の次に測定光フィルタ6、受光素子30の測定光の受光部の順で存在する。
【0036】
(水位検知動作)
以下に、ToF型距離センサ100を用いた水位検知動作について、
図1及び
図5を参照しつつ詳細に説明する。水位検知動作は、ToF型距離センサ100で測定対象物106(
図1参照)の液面の位置を検知する動作である。
【0037】
発光素子10は、短パルス光(パルス光)を外部に向けて放出する。発光素子10から発せられてその光軸から広がったパルス光は、
図5に示すように、第1集光部20を通ることで、出射開口3を通過する光エネルギーが発光素子10の光軸と平行方向に集光される。
【0038】
そして、この集光された発光パルスfは、第1凹部43を通過し、第1領域41を通じ、散乱しつつ外部に出射される。カバー40を通じて、発光パルスfが測定対象物106(
図1参照)に照射される。なお、図示しないが、そのパルス光の一部は、ToF型距離センサ100の内部で、基準光経路を通じ、受光素子30で基準光として受光される。
【0039】
第1集光部20と第1領域41を通じて、ToF型距離センサ100の外部に放出された発光パルスfは、測定対象物106(
図1参照)の測定面で反射する。貯水器105(
図1参照)の液面等の測定面での反射光が、ToF型距離センサ100に戻る。反射光の一部は、測定光として第2領域42を通り、第2集光部50、測定光フィルタ6、受光素子30の測定光の受光部の順に入射し、受光される。これが受光パルスiである。
【0040】
受光パルスiは、具体的に、第2領域42を通じ、受光素子30に向けて入射する。第2領域42から入射した受光パルスiは、第2凹部44と受光開口4を通過し、第2集光部50により、測定光の受光部へ集められる。集められた受光パルスiは、受光素子30が検出する。このとき、基準光の受光部と測定光の受光部を介した受光素子30の検出に基づき、測定対象物106(
図1参照)の液面の位置を検知する水位検知動作が行われる。
【0041】
水位検知動作において、ToF型距離センサ100から測定面が離れると、光の往復に要する時間(飛行時間)が長くなる。また、ToF型距離センサ100から測定面が離れると、受光素子30で基準光が検出されてから受光素子30で反射光が検出されるまでの時間が長くなる。
【0042】
ToF型距離センサ100は、多数の短パルス光について飛行時間を測定し統計処理することで、迷光の影響を抑制する。ToF型距離センサ100によれば、基準光が検出されるタイミングを基準として参照し、飛行時間を相対的に測定することで、精度の高い測距が可能となる。
【0043】
(発光側構成の変更テスト)
発光側構成は、発光側の光学的関係を構成し得るものをいう。実施形態1では、発光側構成は、発光素子10と、第1集光部20と、出射開口3と、第1凹部43と、第1領域41とを含む。実施形態1のToF型距離センサ100を製造する際に、発光側構成を種々変更し、ToF型距離センサ100による距離検出結果を調べた。
【0044】
図6に、浄水器110における水注ぎの際の測定時間とToF型距離センサ100の出力距離変動のグラフを示す。
図6の破線が理想変動である。即ち、空水状態のときは貯水器105(
図1参照)の底までの検出距離100mmを検出し、水が注がれるに従い、満水位置まで徐々に右下がりのカーブを描いている。
【0045】
(変更テストの方法と評価方法)
この変更テストでは、貯水器105(
図1参照)に水を注ぎながら、ToF型距離センサ100を用いて測距を行い、出力距離変動の評価を行った。評価方法は、次の通りである。出力距離変動が理想変動のようなカーブを描く場合、距離検出が正しく行われていると判断した。
【0046】
(実施形態1と比較例の発光側構成の内容)
この変更テストで用いた発光側構成は、次の通りである。
【0047】
(実施形態1)
発光側にレンズ有及び散乱領域有:即ち、実施形態1に係るToF型距離センサ100の同様の構成を備える。
【0048】
(比較例1)
散乱領域無及びレンズ無:比較例1は、実施形態1に係るToF型距離センサ100の第1領域41を透過領域に変更した。さらに、比較例1は、実施形態1に係る第1集光部20を設けないで出射開口3と透明樹脂8の間を平面に変更した。比較例1は、これらの変更の他は、ToF型距離センサ100と同様の構成を備える。
【0049】
(比較例2)
発光側に散乱領域有:比較例2は、実施形態1に係るToF型距離センサ100の第1集光部20を設けないで出射開口3と透明樹脂8の間を平面に変更した他は、ToF型距離センサ100と同様の構成を備える。
【0050】
(実施形態1に係るToF型距離センサ100の結果)
発光側にレンズ有及び散乱領域有とした実施形態1の場合、発光側構成に第1領域41と第1集光部20とを備えている。この場合、
図6に示すように、ToF型距離センサ100の出力は理想変動と同じ結果を示しており、正しく距離検出が正しく行われている。この実験事実から、実施形態1に係るToF型距離センサ100は、水が注がれて水位が急激に変動するような場合にあっても精度が良好であることが判明した。
【0051】
(比較例の結果)
散乱領域無及びレンズ無とした比較例1の場合、発光側構成に散乱領域の第1領域41がなく、かつ、第1集光部20が無い。この場合、
図6に示すように、ToF型距離センサ100の出力は変動が激しく、距離検出が正しく行われない。
【0052】
また、発光側に散乱領域有とした比較例2の場合、即ち、発光側構成に第1領域41に散乱領域を設けた場合、
図6に示すように、水位が低い場合は距離検出がほぼ正しく行われていた。しかし、水位が高くなるとToF型距離センサ100の出力は、変動が激しくなり、距離検出が正しく行われなかった。この実験事実から、比較例1と比較例2のToF型距離センサでは、距離検出が正しく行われない場合があり、精度は実施形態1よりよくなかった。
【0053】
比較例1のToF型距離センサは、発光側構成に散乱領域とレンズの構成を欠く。このように、発光側構成に散乱領域とされる第1領域41と第1集光部20の両構成を欠くと、最も精度が悪かった。また、比較例2のToF型距離センサは、発光側に構成にレンズの構成を欠く。このように、散乱領域とされる第1領域41を有するが、第1集光部20を欠いても、精度が悪かった。
【0054】
比較例1では、満水状態での液面の揺れが激しい上、貯水器105が鏡面反射で受光量が大きい為、検出信号比が逆転し、貯水器105の底面を検出している。これを改善するため比較例2のように、発光側に散乱領域を設け、液面への照射領域を増やしたとしても、液面検出信号が得られない理由は、次のように考察される。垂直共振器型面発光レーザ(VCSEL)は光軸から広がるにつれ、放射時間に遅れが生じ、広角成分が本来の液面への光の伝達時間に対して、放射遅れ時間が加算されて、液面検出信号として寄与していないためである。これにより、検出信号は、光軸成分のみの光線挙動の影響を大きく受け、発光散乱の効果が得られず、液面信号が得られない。この症状を改善するため、発光素子10と第1領域41に有するシボパネルの間に第1集光部20を設け、発光の放射時間ばらつきを平均化する。
【0055】
具体的には、t1,t2・・・を単位角度辺りの放射時間、nをレンズによる集光率として、単位角度毎に異なっていた放射時間を、式(t1+t2+・・・・・)/nのように平均化する。これによりシボで散乱された成分はそれぞれ放射時間が平均化されており、満水と貯水器105の底の伝達時間の差のみを取り出すことが出来るため、
図6に示すように更に特性が改善される。
【0056】
即ち、
図6に示すように、発光側にレンズ有及び散乱領域有の実施形態1の場合は、発光側に散乱領域有の比較例2の場合より、更に特性が改善される。
【0057】
具体的には、
図4及び
図5に示すように、発光素子10の中心を第1集光部20の焦点位置に配置する。この事により、発光素子10から発せられて発光素子10の光軸から広がったパルス光は平行光へと変換され、発光の放射時間ばらつきを平均化する。また、受光側の第2集光部50は、測定対象物106で反射して帰ってきた受光パルスを集光し、測定光の受光部を介して受光素子30へ集める効果を果たしている。
【0058】
上記のように、ToF型距離センサ100によれば、測定対象物106の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。また、浄水器110によれば、測定対象物106の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【0059】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、
図7を参照して、以下に説明する。なお、説明の便宜上、上記実施形態にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。
【0060】
実施形態2のToF型距離センサ200は、
図7に示すように、実施形態1のToF型距離センサ100とは、カバーの第1領域及び第2領域が異なる他は、同様の構成を備える。即ち、ToF型距離センサ200は、発光素子10と、第1集光部20と、受光素子30と、第2集光部50と、カバー240とを備えている。
【0061】
(カバー240の構成)
カバー240は、
図7に示すように、出射開口3と発光素子10を覆う第1領域241と、受光開口4と測定光の受光部及びその近傍を覆う第2領域242とを有する。カバー240において、第1領域241は、単にパルス光を透過する透過領域である。透過領域である第1領域241は、外部側に位置する一方の面を平面で構成すると共に、内部側に位置する他方の面に第1凹部243を設けて表裏両面とも平面で構成されている。
【0062】
第1凹部243は、実施形態の第1凹部43に対応する。他方、第2領域242は、パルス光を散乱させる散乱領域である。散乱領域である第2領域242は、実施形態1の第1領域41と同様、外部側に位置する一方の面に凹凸が設けられて構成されている。これにより、散乱の効果を奏する。なお、カバー240の内部側に位置する他方の面に第2凹部244が設けられている。第2凹部244は、実施形態1の第2凹部44に対応する。
【0063】
(実施形態2の発光側の光学的関係)
ToF型距離センサ200は、発光パルスfの光路において、発光素子10に次いで第1集光部20が存在し、第1集光部20の次に透過領域である第1領域241が存在する。換言すれば、発光側の光学的関係は、発光素子10、第1集光部20、透過領域である第1領域241の順となっている。
【0064】
(実施形態2の受光側の光学的関係)
また、ToF型距離センサ200は、受光パルスiの光路において、散乱領域である第2領域242に次いで第2集光部50が存在し、第2集光部50の次に測定光フィルタ6、受光素子30の測定光の受光部の順に存在する。
【0065】
カバー240の第2領域242が散乱領域であるので、カバー240へ到達するパルス光が分散される。換言すれば、パルス光が第2領域242で散乱されるため、受光部の一定箇所への受光量集中が抑制される。このため、測定対象物106(
図1参照)の液面の変動により乱反射した場合、その乱反射したパルス光の受光部への偏りや受光部外へ屈折する影響を防ぐことができる。これと共に、ToF型距離センサ200によれば、カバー240の第2領域242での反射を防ぐことができる。
【0066】
このようにして実施形態1より多くの第2領域242を通過した受光パルスiは、受光側の第2集光部50で集光され、受光素子30へ集められる。即ち、第2領域242では、第2集光部50へ到達するパルス光が透過領域を通過する場合より増加すると共に、第2集光部50で受光素子30への余分な方向からの雑多なパルス光の入射を防止し、感度をよくしている。このため、ToF型距離センサ200によれば、測定対象物106(
図1参照)の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【0067】
〔実施形態3〕
本発明の実施形態3について、
図8及び
図10を参照して、以下に説明する。実施形態3のToF型距離センサ300は、
図8及び10に示すように、実施形態1のToF型距離センサ100とは、カバー及び第1集光部が異なる他は、同様の構成を備える。即ち、実施形態3のToF型距離センサ300は、発光素子10と、第1集光部320と、受光素子30と、第2集光部50と、カバー340とを備えている。
【0068】
(カバー340の構成)
カバー340は、
図8に示すように、第1集光部320と、分離窓60とを有する。カバー340において、第1領域341は、実施形態1の第1領域41に対応する。第2領域342は、実施形態1の第2領域42と対応する。第1凹部343は、実施形態1の第1凹部43と対応する。第2凹部344は、実施形態1の第2凹部44と対応する。
【0069】
(実施形態3の第1集光部320の構成)
第1集光部320は、第1凹部343側から出射開口3側へ突出する凸レンズである。また、第1集光部320は、透明樹脂8と同様のエポキシ等の透光性を有する材料からなる。第1集光部320は、透明樹脂8とは別の部材である。第1集光部320は、第1凹部343に一体的に形成されている。しかし、第1集光部320は、第1凹部343とは別の部材で構成されていてもよい。
【0070】
実施形態3では、出射開口3及び透明樹脂8には第1集光部320は形成されていない。出射開口3の中心軸の延長線上に第1集光部320の最凸部が位置している。さらに、第1集光部320の焦点に発光素子10の中心が位置する。この事により、第1集光部320において、発光素子10の光軸から広がるレーザ光は平行光へと変換され、発光の放射時間ばらつきが平均化される。
【0071】
(分離窓60の構成)
分離窓60は、カバー340の内外を貫通する角形の貫通孔を有し、透光性材料からなる直方体で構成されている。分離窓60は、第1領域341と第2領域342との間に形成されており、カバー340から透明樹脂8までの高さを有する。分離窓60は、長手方向長さがカバー340を取り除いた状態のToF型距離センサ300の短手方向長さと一致する。また、分離窓60は、短手方向長さが第1領域341及び第2領域342の内側両端部間の長さと一致する。なお、ToF型距離センサ300は、分離窓60から内部へゴミや埃等が混入することを防止する構成が採られている。
【0072】
カバー340の変形例として、分離窓60を有しないカバー440を
図9に示す。変形例のToF型距離センサ400は、
図9に示すように、実施形態3のToF型距離センサ300とは、分離窓60が異なる他は、同様の構成を備える。即ち、カバー440を備えたToF型距離センサ400は、
図9に示すように、分離窓60を備えておらず、カバー440に遮蔽部45を備えている。ToF型距離センサ400では、実施形態1のような第1集光部20を有しないので、ToF型距離センサ400の内部における発光パルスfの一部が出射開口3からカバー440まで到達し、遮蔽部45で反射して受光素子30へ到達することがある。この場合には、クロストーク成分が発生する。
【0073】
具体的に、発光素子10がVCSELの場合、発光素子10から発せられて発光素子10の光軸から広がったパルス光のうち、例えば指向角で30度以上のパルス光は、出射開口3から第1集光部320を通過することなく、遮蔽部45で反射される。そして、ToF型距離センサ400の不透明樹脂2とカバー440との間を通過し、受光開口4から第2集光部50を経由して受光素子30に入射する。
【0074】
これに対して、分離窓60を有するカバー340の場合には、
図10に示すように、分離窓60により、発光パルスfがカバー340で反射することなく、分離窓60から抜ける。このため、実施形態3のToF型距離センサ300によれば、さらに、クロストーク成分を低減できる。
【0075】
〔実施形態5〕
本発明の実施形態5について、
図11を参照して、以下に説明する。実施形態5のToF型距離センサ500は、
図11に示すように、実施形態1のToF型距離センサ100とは、カバー及び第1領域が異なる他は、同様の構成を備える。即ち、実施形態5のToF型距離センサ500は、発光素子10と、第1集光部320と、受光素子30と、第2集光部50と、カバー540とを備えている。
【0076】
(カバー540の構成)
カバー540は、遮光領域70を備えている。遮光領域70は、遮光材料からなる直方体で構成されている。遮光領域70は、第1領域341と第2領域342の間に設けられており、カバー340から透明樹脂8までの高さを有する。遮光領域70は、長手方向長さがカバー540を取り除いた状態のToF型距離センサ500の短手方向長さと一致する。また、短手方向長さが第1領域341及び第2領域342内側両端部間の長さと一致する。
【0077】
実施形態5においても、実施形態3の変形例と同様、実施形態1のような第1集光部20を有しないので、発光素子10から発せられて発光素子10の光軸から広がったパルス光が生じる。しかし、実施形態5では、そのパルス光のうち、例えば指向角で30度以上のものは、出射開口3からカバー540まで到達する前に、遮光領域70で反射される。
【0078】
反射されたパルス光は、第1領域341を通過し、ToF型距離センサ500の外部へ発射される。このため、発光素子10から発せられて発光素子10の光軸から広がったパルス光を、遮光領域70により、ToF型距離センサ100の内部で受光側構成へ入射することを阻止する。このため、ToF型距離センサ500によれば、クロストーク成分を低減できる。
【0079】
〔実施形態6〕
本発明の実施形態6について、
図12を参照して、以下に説明する。実施形態6のToF型距離センサ600は、
図12に示すように、実施形態1のToF型距離センサ100とは、発光素子10の上に散乱性透明樹脂15をポッテングした構成を採っている点で異なる他は、同様の構成を備える。散乱性透明樹脂15は、シリコーン樹脂に散乱体が混入された樹脂である。発光素子10から上方に向かって出射されたパルス光は、散乱性透明樹脂15を通過して散乱される。
【0080】
実施形態6のように、散乱性透明樹脂15を用いる場合には、カバー40のうち散乱領域である第1領域41の表面のみに凹凸を設ける構造は、金型成形で製造することができる。また、カバー40の材質がガラスまたは光透過性樹脂である場合は、表面のエッチング処理などの化学的加工手法を用いて製造することができる。あるいは、第1領域41の散乱領域を、サンドブラストや研削などの物理的加工手法を用いて製造することができる。
【0081】
カバー40の材質がガラス又は光透過性樹脂の場合、散乱領域である第1領域41の表面のみに凹凸を形成することで製造することができる。さらには、散乱領域である第1領域41が、板材の表面に凹凸を設けることで構成されることに限らず、材料自体が光を散乱する材料、例えば屈折率の異なる物質が入り混じった材料からなることで得られるものであっても良い。散乱の程度を示す指標として、日本工業規格JISK7136で規定されるヘーズを用いることができる。実施形態6において適したヘーズは、10~95%である。典型的には、ヘーズを90%とすることができる。
【0082】
〔変形例〕
本発明のToF型距離センサは、実施形態1の浄水器110以外にも応用可能である。例えば、灯油等の燃料タンクの残量検知、加湿器の水位検知、コーヒーメーカーでの水位検知、医療機器(点滴等)の残量検知等に応用可能である。
【0083】
また、上記実施形態では、発光素子10は、垂直共振器型面発光レーザである場合を例示したが、何らこれに限定されるものではない。例えば、発光素子10は、端面発光レーザなど、他の光源であっても良い。この場合、実施形態で挙げた波長帯に限定されるものではなく、他の波長帯の赤外光や、赤外光に限らず可視光を用いることも可能である。
【0084】
さらに、第1集光部20、320は凸レンズの例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。第1集光部20、320は、発光素子から発せられたパルス光を集光するものであれば、どのような構成であってもよい。第1集光部20、320は、例えば、凸レンズ以外のレンズ、凹面鏡であってもよい。
【0085】
さらにまた、第1集光部20、320は、発光素子と第1領域の間に設けられておればよく、上記実施形態のように出射開口の下部や第1凹部に設けることに何ら限定されるものではない。この場合には、上記実施形態と同様、発光素子10から発せられて発光素子10の光軸から広がったパルス光に指向性を与え、エネルギーが測定対象物の方向に集中されるので、効率がよい。
【0086】
上記実施形態では、第2集光部50は凸型集光レンズの例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。第2集光部50は、受光素子に向けて入射したパルス光を集光するものであれば、どのような構成であってもよい。第2集光部50は、例えば、凸レンズ、凸レンズ以外のレンズ、凹面鏡であってもよい。
【0087】
また、第2集光部50は、受光素子と第2領域の間に設けられておればよく、上記実施形態のように受光開口の下部に何ら限定されるものではない。例えば、第2集光部は、受光開口の上部に設けてもよいし、第2凹部に設けてもよい。この場合には、上記実施形態と同様、受光パルスに指向性を与え、余分な方向から雑多なパルス光が入りにくく、感度がよくなる。
【0088】
さらに、上記実施形態では、第1領域41、241、341が散乱領域である場合、一方の面に凹凸を設ける一例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。散乱領域は、例えば、他方の面を含む両面に凹凸を設けてもよい。散乱の効果は、一方の面に凹凸を設けることで得られることに限られるものではなく、他方の面を含む両面に凹凸を設けることで得ても良いのである。
【0089】
同様にして、上記実施形態では、第2領域42、242、342が散乱領域である場合、一方の面に凹凸を設ける一例を挙げたが、何らこれに限定されるものではない。散乱領域は、例えば、他方の面を含む両面に凹凸を設けてもよい。散乱の効果は、一方の面に凹凸を設けることで得られることに限られるものではなく、他方の面を含む両面に凹凸を設けることで得ても良いのである。
【0090】
また、分離窓60及び遮光領域70は、第1領域と第2領域の間に設けられており、次の機能を発揮すれば、上記実施形態の形状、構造に何ら限定されるものではない。分離窓60は、発光素子からのパルス光がカバーで反射することなく、抜けるものであれば、どのような形状、構造であってもよい。遮光領域70は、発光素子からのパルス光が受光側構成へ入射することを阻止し、遮光するものであれば、どのような形状、構造であってもよい。
【0091】
〔まとめ〕
本発明の態様1に係るToF型距離センサは、パルス光を発する発光素子と、前記発光素子から発せられた前記パルス光を集光する第1集光部と、受光素子と、前記第1集光部により集光された前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、を備え、前記第1領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域である構成である。
【0092】
この場合、発光素子の光軸から広がるパルス光は、第1集光部で平行光へと変換され、発光の放射時間ばらつきを平均化する。平均化された発光パルスは測定対象物で反射し、反射光の一部が受光パルスとして受光素子で検知される。このため、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【0093】
本発明の態様2に係るToF型距離センサは、上記の態様1において、前記受光素子に向けて入射した前記パルス光を集光する第2集光部を備える構成としてもよい。
【0094】
この場合、受光側の第2集光部は、測定対象物で反射して帰ってきたパルス光を集光し、受光素子へ集める効果を果たす。このため、さらに、受光素子への余分な方向からの雑多なパルス光の入射を防止でき、感度がよくなる。
【0095】
本発明の態様3に係るToF型距離センサは、パルス光を発する発光素子と、受光素子と、前記発光素子から発せられた前記パルス光を外部に出射させる第1領域と、測定対象物で反射された前記パルス光を前記受光素子に向けて入射させる第2領域とが設けられたカバーと、前記受光素子に向けて入射した前記パルス光を集光する第2集光部と、を備え、前記第2領域は前記パルス光を散乱させる散乱領域である構成である。
【0096】
この場合、散乱領域である第2領域では、第2集光部へ到達するパルス光が透過領域を通過する場合より増加すると共に、第2集光部で受光素子への余分な方向からの雑多なパルス光の入射を防止し、感度をよくする。このため、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【0097】
本発明の態様4に係るToF型距離センサは、上記の態様3において、前記発光素子から発せられ前記第1領域に至る前記パルス光を集光する、第1集光部を備える構成としてもよい。
【0098】
この場合、発光素子の光軸から広がるレーザ光は、第1集光部で平行光へと変換され、発光の放射時間ばらつきを平均化する。このため、さらに、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【0099】
本発明の態様5に係るToF型距離センサは、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記カバーの前記第1領域と前記第2領域との間に、分離窓が形成されている構成としてもよい。
【0100】
この場合は、分離窓が形成されていることにより、発光素子からのパルス光が、カバーで反射することなく分離窓から抜ける。このため、さらに、クロストーク成分を低減できる。
【0101】
本発明の態様6に係るToF型距離センサは、上記の態様1から4のいずれかにおいて、前記カバーの前記第1領域と前記第2領域との間に、遮光領域が設けられている構成としてもよい。
【0102】
この場合は、遮光領域により、発光素子から発せられて発光素子の光軸から広がったパルス光のうち、例えば指向角で30度以上のパルス光が反射される。この反射成分は、遮光領域により、受光側構成へ入射することが阻止され、遮光される。このため、さらに、クロストーク成分を低減できる。
【0103】
本発明の態様7に係るToF型距離センサは、上記の態様1から6のいずれかにおいて、前記発光素子は、垂直共振器型面発光レーザである構成としてもよい。
【0104】
この場合は、垂直共振器型面発光レーザは、半導体基板に垂直に光出射し、既存のレーザに比べて低消費電力でアレイ集積が可能である。また、垂直共振器型面発光レーザは、光軸から広がるにつれ、放射時間に遅れが生じるため、軸成分の光線挙動の影響を大きく受ける。この場合においても、発光の放射時間ばらつきが平均化され、正しく距離検出を行うことができる。
【0105】
本発明の態様8に係るToF型距離センサを備えることを特徴とする、電子機器は、上記の態様1から7のいずれかにおいて、態様1から7のいずれか1項に記載のToF型距離センサを備える構成としてもよい。
【0106】
この場合は、ToF型距離センサを備えるので、精度及び安定性よく測距を行うことができる。
【0107】
本発明の態様9に係る電子機器は、上記の態様8において、前記ToF型距離センサで液面の位置を検知する構成としてもよい。
【0108】
この場合は、前記ToF型距離センサで液面の位置を検知するので、測定対象物の液面が変動した場合でも、精度及び安定性よく推移を検出することができる。
【符号の説明】
【0109】
6 測定光フィルタ
10 発光素子
15 散乱性透明樹脂
20、320 第1集光部
30 受光素子
40、240、340、440、540 カバー
41、241、341 第1領域
42、242、342 第2領域
50 第2集光部
60 分離窓
70 遮光領域
100、200、300、400、500、600 ToF型距離センサ
101 ろ過部
102 活性炭処理部
103 逆浸透膜処理部
105 貯水器
106 測定対象物
110 浄水器
f 発光パルス(発光素子から発せられたパルス光)
i 受光パルス(受光素子に向けて入射したパルス光)