IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ クボタ環境サ−ビス株式会社の特許一覧

特許7429178アルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】アルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/42 20230101AFI20240131BHJP
   B01J 49/53 20170101ALI20240131BHJP
   B01J 49/60 20170101ALI20240131BHJP
【FI】
C02F1/42 A
B01J49/53
B01J49/60
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020171960
(22)【出願日】2020-10-12
(65)【公開番号】P2022063615
(43)【公開日】2022-04-22
【審査請求日】2023-06-22
(73)【特許権者】
【識別番号】595011238
【氏名又は名称】クボタ環境エンジニアリング株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸男
(72)【発明者】
【氏名】藤原 裕司
(72)【発明者】
【氏名】関 昭広
(72)【発明者】
【氏名】張本 崇良
【審査官】石岡 隆
(56)【参考文献】
【文献】特開平4-103782(JP,A)
【文献】特開昭57-192300(JP,A)
【文献】特開昭52-035704(JP,A)
【文献】特開昭55-034168(JP,A)
【文献】特開2008-101247(JP,A)
【文献】国際公開第2020/013070(WO,A1)
【文献】韓国公開特許第2006-0011699(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J39/00-49/90
C02F1/42
C23F1/00-4/04
C25F1/00-7/02
B41N1/00-99/00
H01G9/00-9/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、前記陽イオン交換体にアルミニウムイオンを捕捉させるアルミ捕捉工程と、
前記陽イオン交換体を第1酸溶液と接触させて、前記陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第1処理液を得る第1再生工程と、
前記陽イオン交換体を第2酸溶液と接触させて、前記陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第2処理液を得る第2再生工程とをこの順番で繰り返し行うアルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法であって、
前記第2酸溶液として、塩酸、硫酸またはこれらの混酸を用い、
前記第1酸溶液として、前記第2処理液を用いることを特徴とする処理方法。
【請求項2】
前記第2再生工程の後に、前記陽イオン交換体を第2処理液と固液分離する脱液工程を設け、
前記脱液工程の後に、前記アルミ捕捉工程を行う請求項1に記載の処理方法。
【請求項3】
前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液が、アルミニウムのエッチング廃液である請求項1または2に記載の処理方法。
【請求項4】
前記アルミ捕捉工程で、前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液を前記陽イオン交換体と接触させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られ、
前記硝酸再生溶液をアルミニウムのエッチング液に用いる請求項3に記載の処理方法。
【請求項5】
前記陽イオン交換体はイオン交換塔に充填されており、前記陽イオン交換体が前記イオン交換塔に充填された状態で前記各工程を行う請求項1~4のいずれか一項に記載の処理方法。
【請求項6】
前記アルミ捕捉工程は、第1アルミ捕捉工程とそれに続いて行われる第2アルミ捕捉工程を含み、
前記第1アルミ捕捉工程では、前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液を前記イオン交換塔に1回のみ通液して、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液を得て、
前記第2アルミ捕捉工程では、前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液を前記イオン交換塔に循環供給して、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液を得る請求項5に記載の処理方法。
【請求項7】
前記第1アルミ捕捉工程と前記第2アルミ捕捉工程と前記第1再生工程と前記第2再生工程とをこの順番でn回(ただしnは2以上の整数を表す)繰り返し行い、
k回目(ただしkは1以上n-1以下の整数を表す)の第1アルミ捕捉工程において、前記イオン交換塔に導入する前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ1とし、
k回目の第2アルミ捕捉工程において、前記イオン交換塔に導入する前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ2としたとき、
k+1回目の第1アルミ捕捉工程において、前記イオン交換塔に導入する前記アルミニウムイオン含有硝酸溶液の量Q1k+1を式:Q1k+1=(Q1+Q2)×A(ただしAは0.5~0.8の間の数を表す)に基づき設定する請求項6に記載の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法に関し、詳細には、陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させるアルミ捕捉工程と、アルミ捕捉工程で使用した陽イオン交換体を酸溶液と接触させる再生工程とを有する処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、アルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法として、アルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換樹脂と接触させて当該硝酸溶液中に含まれるアルミニウムイオンを陽イオン交換樹脂に捕捉させる処理方法が知られている(例えば、特許文献1、2)。アルミニウムイオンを捕捉した陽イオン交換樹脂は、塩酸や硫酸等の酸溶液と接触させることにより、イオン交換樹脂からアルミニウムイオンが脱離し、陽イオン交換樹脂の再生を行うことができる。これにより、陽イオン交換樹脂を繰り返し使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平4-103782号公報
【文献】特開昭57-192300号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換樹脂等の陽イオン交換体と接触させて処理する場合、上記のように陽イオン交換体の再生を行うことにより陽イオン交換体を繰り返し使用でき、効率的な処理が可能となる。この際、陽イオン交換体の再生処理に用いる酸溶液の使用量を減らすことで、再生処理にかかるコストを低減することができる。また、再生後の陽イオン交換体にアルミニウムイオンができるだけ残存しないようにすることで、陽イオン交換体のアルミニウムイオン捕捉能を高め、アルミニウムイオン含有硝酸溶液の効率的な処理が可能となる。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、陽イオン交換体を繰り返し使用しながらアルミニウムイオン含有硝酸溶液を処理する方法であって、陽イオン交換体の再生処理にかかる酸溶液の使用量を低減することができるとともに、陽イオン交換体からより多くのアルミニウムイオンを脱離させることができる処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決することができた本発明のアルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法とは、陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、陽イオン交換体にアルミニウムイオンを捕捉させるアルミ捕捉工程と、前記陽イオン交換体を第1酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第1処理液を得る第1再生工程と、前記陽イオン交換体を第2酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第2処理液を得る第2再生工程とをこの順番で繰り返し行うアルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法であって、第2酸溶液として、塩酸、硫酸またはこれらの混酸を用い、第1酸溶液として、第2処理液を用いるところに特徴を有する。
【0007】
本発明のアルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法によれば、アルミ捕捉工程で使用した陽イオン交換体を酸溶液で再生する際、陽イオン交換体の再生を第1再生工程と第2再生工程の2段階で行うことにより、陽イオン交換体の再生処理に用いる酸溶液により多くのアルミニウムイオンを含有させることができる。そのため、陽イオン交換体の再生処理にかかる酸溶液の使用量を低減することができる。また、陽イオン交換体からより多くのアルミニウムイオンを脱離させることができるため、このようにして得られた陽イオン交換体を再びアルミ捕捉工程で使用することにより、より多くのアルミニウムイオンを捕捉することが可能となる。
【0008】
本発明の処理方法は、第2再生工程の後に、陽イオン交換体を第2処理液と固液分離する脱液工程を設け、脱液工程の後にアルミ捕捉工程を行うことが好ましい。脱液工程を設けることにより、第2再生工程で得られる第2処理液を、不純物の少ない状態でより多くの量得ることができる。また、その後に行うアルミ捕捉工程で得られる処理液を、塩酸や硫酸等の混入が少ない状態で得ることができる。
【0009】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液としては、アルミニウムイオンと硝酸を高濃度で含む点から、アルミニウムのエッチング廃液を好適に用いることができる。例えば、コンデンサ用アルミニウム箔を製造する際に、アルミニウム箔を硝酸エッチングすることにより発生するエッチング廃液を好適に用いることができる。この場合、アルミ捕捉工程でアルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換体と接触させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られ、当該硝酸再生溶液をアルミニウムのエッチング液に用いることが好ましい。
【0010】
陽イオン交換体はイオン交換塔に充填されており、陽イオン交換体がイオン交換塔に充填された状態で各工程を行うことが好ましい。これにより、各工程を連続的に行うことができ、効率的な処理が可能となる。
【0011】
上記のようにイオン交換塔を用いて各工程を行う場合、アルミ捕捉工程は、第1アルミ捕捉工程とそれに続いて行われる第2アルミ捕捉工程を含み、第1アルミ捕捉工程では、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に1回のみ通液して、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液を得て、第2アルミ捕捉工程では、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給して、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液を得ることが好ましい。このようにアルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に導入することにより、陽イオン交換体にアルミニウムイオンをより多く捕捉させることができるとともに、アルミニウムイオンが低減された硝酸再生溶液をより多くの量得ることができる。
【0012】
上記の場合、本発明の処理方法は、第1アルミ捕捉工程と第2アルミ捕捉工程と第1再生工程と第2再生工程とをこの順番でn回(ただしnは2以上の整数を表す)繰り返し行うものとなるが、この際、第1アルミ捕捉工程では、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量を、次のようにして設定することができる。すなわち、k回目(ただしkは1以上n-1以下の整数を表す)の第1アルミ捕捉工程において、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ1とし、k回目の第2アルミ捕捉工程において、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ2としたとき、k+1回目の第1アルミ捕捉工程において、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量Q1k+1を式:Q1k+1=(Q1+Q2)×A(ただしAは0.5~0.8の間の数を表す)に基づき設定することができる。これにより、第1アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量を、アルミニウムイオン含有硝酸溶液のアルミニウムイオン濃度や硝酸濃度の変動に対して自動修正することが可能となる。その結果、アルミ捕捉工程に要する時間の短縮化を図ることができるとともに、得られる硝酸再生溶液の純度を高めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のアルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法によれば、陽イオン交換体の再生処理に用いる酸溶液により多くのアルミニウムイオンを含有させることができるため、再生処理にかかる酸溶液の使用量を低減することができる。また、陽イオン交換体からより多くのアルミニウムイオンを脱離させることができるため、このようにして得られた陽イオン交換体を再びアルミ捕捉工程で使用することにより、より多くのアルミニウムイオンを捕捉することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、アルミニウムイオン含有硝酸溶液の処理方法に関し、詳細には、陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、陽イオン交換体にアルミニウムイオンを捕捉させるアルミ捕捉工程と、前記陽イオン交換体を酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させる再生工程とを有し、アルミ捕捉工程と再生工程とを繰り返し行う処理方法に関するものである。本発明の処理方法では、このようにアルミ捕捉工程と再生工程を行うことで、陽イオン交換体を繰り返し使用し、アルミニウムイオン含有硝酸溶液を効率的に処理することができる。
【0015】
例えばコンデンサ用アルミニウム箔の製造では、表面積を増やするために酸エッチングが行われ、この際に使用するエッチング液として硝酸が用いられる場合がある。アルミニウム箔を酸エッチングすることによりアルミニウム箔の表面に多数の孔が形成され、アルミニウム箔の表面積を増やすことができる。アルミニウムを硝酸エッチングするとアルミニウムイオンを含有する硝酸廃液が発生するが、硝酸廃液は窒素成分を多量に含んでいるため、単に中和しただけでは下水や環境中に排出することはできず、生物学的脱窒処理などの窒素除去処理が必要となる。そのため、硝酸廃液は、塩酸や硫酸等の他の酸廃液と比べて、処理コストが高くなる傾向がある。一方、アルミニウムイオンを含有する硝酸廃液からアルミニウムイオンを除去すれば、再び酸エッチングに使用することができ、処理コストの低下に繋がる。
【0016】
本発明の処理方法は、このようなアルミニウムのエッチング廃液の処理に好適に適用することができる。すなわち、アルミニウムのエッチング廃液であるアルミニウムイオンを含有する硝酸廃液を本発明におけるアルミニウムイオン含有硝酸溶液として使用し、陽イオン交換体と接触させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られ、得られた硝酸再生溶液をアルミニウムのエッチング液として使用することができる。その結果、アルミニウムの酸エッチングにかかるコストを下げることができる。一方、アルミニウムイオンを捕捉した陽イオン交換体は、硝酸以外の酸溶液、具体的には塩酸、硫酸またはこれらの混酸と接触させることにより、陽イオン交換体からアルミニウムイオンが脱離し、陽イオン交換体の再生を行うことができる。再生に用いた酸溶液はアルミニウムイオンを含有し、中和処理等を行うことにより、下水や環境中に排出することができる。以下、本発明の処理方法について詳しく説明する。
【0017】
アルミ捕捉工程では、陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、陽イオン交換体にアルミニウムイオンを捕捉させる。アルミ捕捉工程でアルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換体と接触させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られる。
【0018】
陽イオン交換体は、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基等の酸基を交換基として有するものであれば、特に制限なく用いることができる。なお、陽イオン交換体は強酸性陽イオン交換体であることが好ましく、例えばスルホン酸基を有する陽イオン交換体が好ましく用いられる。
【0019】
陽イオン交換体は固体であることが好ましく。陽イオン交換体の母材としては、樹脂や繊維等の高分子材料を用いればよい。そのような母材から形成された陽イオン交換体としては、陽イオン交換樹脂、陽イオン交換膜、陽イオン交換繊維等が挙げられる。母材となる樹脂としては、ポリスチレン樹脂(例えば、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体)、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アクリル樹脂、レゾルシン樹脂、塩化ビニル樹脂等が挙げられ、これらの形状は、球状、柱状、リング状、鞍状、ハニカム状等、特に限定されない。また、樹脂を膜状に形成して陽イオン交換膜としたり、繊維状に形成して陽イオン交換繊維としてもよい。繊維は、天然繊維、再生繊維、半合成繊維を用いてもよい。陽イオン交換樹脂、陽イオン交換膜、陽イオン交換繊維は公知のものを用いることができ、例えば特開平7-324221号公報や特開平9-227601号公報に開示される陽イオン交換繊維を用いることもできる。
【0020】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液は、少なくともアルミニウムイオンと硝酸イオンを含有する酸溶液であれば特に限定されない。アルミニウムイオン含有硝酸溶液はアルミニウムイオン以外の陽イオンが含まれていてもよく、硝酸イオン以外の陰イオン(例えば、塩化物イオン、硫酸イオン、リン酸イオン等)が含まれていてもよいが、金属イオンとしてアルミニウムイオンが最も多く含まれることが好ましく、酸(プロトン)の対イオンとなる陰イオンとして硝酸イオンが最も多く含まれることが好ましい。
【0021】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液のアルミニウムイオン濃度は、陽イオン交換体による除去が必要な濃度として、例えば0.5g/L以上が好ましく、1g/L以上がより好ましく、3g/L以上がさらに好ましい。アルミニウムイオン含有硝酸溶液のアルミニウムイオン濃度の上限は特に限定されず、例えば25g/L以下、20g/L以下、または15g/L以下であってもよい。
【0022】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液の硝酸イオン濃度は、例えば10g/L以上が好ましく、30g/L以上がより好ましく、50g/L以上がさらに好ましく、また500g/L以下が好ましく、400g/L以下がより好ましく、300g/L以下がさらに好ましい。
【0023】
アルミニウムイオン含有硝酸溶液のpHは、例えば3.0以下であることが好ましく、2.0以下がより好ましく、1.5以下がさらに好ましい。これにより、陽イオン交換体によるアルミニウムイオンの捕捉能を高めることができる。アルミニウムイオン含有硝酸溶液のpHの下限は特に限定されず、例えば-0.5以上、-0.3以上、または0.0以上であってもよい。
【0024】
アルミ捕捉工程は、バッチ処理で行ってもよく、連続処理で行ってもよい。陽イオン交換体をバッチ処理でアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させる場合は、槽中に保持されたアルミニウムイオン含有硝酸溶液に陽イオン交換体を添加すればよい。この際、陽イオン交換体は、そのままの姿でアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させてもよいし、陽イオン交換体を入れた通液可能な袋をアルミニウムイオン含有硝酸溶液に浸したり、陽イオン交換体を一体的に取り扱えるように所定の形状に成形したものをアルミニウムイオン含有硝酸溶液に浸したりしてもよい。
【0025】
陽イオン交換体をバッチ処理でアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させる際の陽イオン交換体の添加量は、例えば、アルミニウムイオン含有硝酸溶液1Lに対して、1g/L~100g/Lの範囲で適宜調整すればよい。陽イオン交換体とアルミニウムイオン含有硝酸溶液との接触時間は特に限定されず、例えば5分~48時間(好ましくは10分~24時間)の間で適宜設定すればよい。陽イオン交換体とアルミニウムイオン含有硝酸溶液との接触は、撹拌しながら行うことが好ましい。
【0026】
陽イオン交換体を連続処理でアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させる場合は、例えば陽イオン交換体をイオン交換塔に充填し、そこにアルミニウムイオン含有硝酸溶液を導入すればよい。アルミニウムイオン含有硝酸溶液は、イオン交換塔を上向流で通液させてもよく、下向流で通液させてもよく、また横向流で通液させてもよい。このときの通液速度は、陽イオン交換体の処理性能に応じて適宜設定すればよいが、空間速度(SV)として、例えば0.1hr-1~60hr-1の範囲(好ましくは0.5hr-1~30hr-1の範囲)で適宜調整すればよい。
【0027】
アルミ捕捉工程では、陽イオン交換体を繰り返しアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、アルミニウムイオン含有硝酸溶液からアルミニウムイオンを除去してもよい。例えばバッチ処理では、陽イオン交換体を交換せずに、複数回のバッチ処理を行ってもよい。連続処理では、陽イオン交換体を交換せずに、例えば通液倍率が3以上、5以上、または8以上でアルミニウムイオン含有硝酸溶液を処理してもよい。また、アルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換体が充填されたイオン交換塔に循環供給、すなわちイオン交換塔から排出された排出液を再びイオン交換塔に導入してもよく、これによりアルミニウムイオン含有硝酸溶液からより多くのアルミニウムイオンを除去することができ、アルミニウムイオン濃度がより低減された硝酸再生溶液を得ることができる。
【0028】
アルミ捕捉工程におけるアルミニウムイオン含有硝酸溶液からのアルミニウムイオンの除去率は、アルミ捕捉工程で得られる硝酸再生溶液の所望されるアルミニウムイオン濃度に応じて適宜設定すればよい。アルミ捕捉工程で得られる硝酸再生溶液のアルミニウムイオン濃度は、例えば0.5g/L未満が好ましく、0.1g/L以下がより好ましく、0.05g/L以下がさらに好ましい。
【0029】
再生工程では、アルミ捕捉工程で使用した陽イオン交換体を酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させる。この際、本発明では、再生工程を第1再生工程と第2再生工程の2段階で行う。具体的には、陽イオン交換体を第1酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第1処理液を得る第1再生工程と、陽イオン交換体を第2酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第2処理液を得る第2再生工程をこの順番で行い、第2酸溶液として塩酸、硫酸またはこれらの混酸を用い、第1酸溶液として第2処理液を用いる。このように再生工程を行うことにより、陽イオン交換体の再生処理に使用する酸溶液、すなわち塩酸、硫酸またはこれらの混酸は、第2再生工程と第1再生工程の2段階で陽イオン交換体と接触することとなる。そのため、陽イオン交換体の再生処理に用いた酸溶液により多くのアルミニウムイオンを含有させることができる。陽イオン交換体は、第1再生工程と第2再生工程の2段階で酸溶液と接触され、第2再生工程では第1再生工程よりも純度の高い酸溶液が使用されるため、陽イオン交換体からより多くのアルミニウムイオンを脱離させることができる。
【0030】
第1再生工程では、それより前に行った第2再生工程で得られた第2処理液、すなわち塩酸、硫酸またはこれらの混酸を陽イオン交換体と接触させて得られた酸溶液を第1酸溶液として用い、これを陽イオン交換体と接触させて第1処理液を得る。第2処理液には、陽イオン交換体から脱離したアルミニウムイオンがある程度の濃度で含まれているため、これをさらに第1再生工程で陽イオン交換体と接触させることにより、第1再生工程で得られる第1処理液にさらに高濃度にアルミニウムイオンを含ませることができる。そのため、第1再生工程で得られる第1処理液には、より多くの量のアルミニウムイオンが含有され、陽イオン交換体の再生処理にかかる酸溶液の使用量を低減することができる。第2処理液は、必要に応じて塩酸、硫酸またはこれらの混酸を加えて、第1酸溶液に用いてもよい。
【0031】
一方、第2再生工程では、第1再生工程である程度アルミニウムイオンが脱離した陽イオン交換体を、酸溶液(第2酸溶液)としてフレッシュな塩酸、硫酸またはこれらの混酸と接触させることにより、陽イオン交換体からより完全にアルミニウムイオンを脱離させることができる。すなわち、第1再生工程と第2再生工程を経た陽イオン交換体は、アルミニウムイオン含有量がより少ないものとなる。そのため、このようにして得られた陽イオン交換体を再びアルミ捕捉工程で使用することにより、より多くのアルミニウムイオンを捕捉することが可能となる。
【0032】
第1酸溶液と第2酸溶液のpHは、例えば2.0以下であることが好ましく、1.5以下がより好ましく、1.0以下がさらに好ましい。これにより、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを効率的に脱離させることができる。第1酸溶液と第2酸溶液のpHの下限は特に限定されず、例えば第2酸溶液は濃塩酸や濃硫酸を使用してもよい。第1酸溶液と第2酸溶液のpHは互いに同じであっても異なっていてもよいが、第2酸溶液のpHは第1酸溶液のpHよりも低いことが好ましい。これにより陽イオン交換体からより効率的にアルミニウムイオンを脱離させることができる。すなわち、第1再生工程と第2再生工程を経て得られた陽イオン交換体は、アルミニウムイオンがより完全に脱離されたものとすることができる。
【0033】
第1再生工程と第2再生工程は、バッチ処理で行ってもよく、連続処理で行ってもよい。これらの詳細は、アルミ捕捉工程におけるバッチ処理と連続処理の説明が参照される。第1再生工程と第2再生工程を連続処理で行う場合は、イオン交換塔の通液速度から、第1酸溶液に対応した第1処理液と第2酸溶液に対応した第2処理液を定めることができる。
【0034】
再生工程では、陽イオン交換体を繰り返し酸溶液と接触させて、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させてもよい。例えばバッチ処理では、陽イオン交換体を交換せずに複数回のバッチ処理を行ってもよい。連続処理では、陽イオン交換体を交換せずに、例えば通液倍率が5以上、10以上、または20以上で酸溶液と接触させてもよい。第1再生工程では、第1酸溶液を陽イオン交換体が充填されたイオン交換塔に循環供給、すなわちイオン交換塔から排出された排出液を再びイオン交換塔に導入してもよく、これにより循環供給後に得られた第1処理液のアルミニウムイオン濃度を高めることができる。
【0035】
第1再生工程で得られた第1処理液はアルミニウムイオンを高濃度で含有し、例えば中和処理等を行うことにより、下水や環境中に排出することができる。あるいは、第1処理液に含まれるアルミニウムイオンを不溶化して、アルミニウムを固形物として回収してもよい。
【0036】
本発明の処理方法では、第2再生工程を行った後、再びアルミ捕捉工程を行う。第2再生工程で得られた第2処理液は、再び行うアルミ捕捉工程の後に行われる第1再生工程で第1酸溶液として使用することができる。
【0037】
第2再生工程の後、アルミ捕捉工程を行う前に、陽イオン交換体を第2処理液と固液分離する脱液工程を行うことが好ましい。このように脱液工程を設けることにより、第2処理液を、不純物の少ない状態でより多くの量得ることができる。また、その後に行うアルミ捕捉工程において、硝酸再生溶液を塩酸や硫酸等の混入が少ない状態で得ることができる。脱液工程は、デカンテーションや液切り等により行うことが簡便である。陽イオン交換体がイオン交換塔に充填されている場合は、イオン交換塔の下部から自然流下やエアブロー等により第2処理液を排出することで、脱液工程を行うことができる。脱液工程では、固液分離後の陽イオン交換体に第2処理液が付着していてもよく、少なくとも粗く固液分離されていればよい。
【0038】
第2再生工程の後、あるいは脱液工程を行う場合は脱液工程の後、アルミ捕捉工程を行う前に、陽イオン交換体を硝酸溶液と接触させる硝酸置換工程を設けることが好ましい。硝酸置換工程を設けることにより、次に行うアルミ捕捉工程において、陽イオン交換体とアルミニウムイオン含有硝酸溶液との固液接触効率を高め、陽イオン交換体によるアルミニウムの除去率を高めることができる。また、その後に行うアルミ捕捉工程において、硝酸再生溶液を塩酸や硫酸等の混入が少ない状態で得ることができる。硝酸置換工程で使用する硝酸溶液としては、それより前に行ったアルミ捕捉工程で得られた硝酸再生溶液を用いることが経済的である。
【0039】
本発明の処理方法では、次工程に移る前に、陽イオン交換体の水洗工程を適宜設けてもよい。例えば、アルミ捕捉工程の後、第1再生工程の前に水洗工程を設けたり、第2再生工程の後、次のアルミ捕捉工程の前に水洗工程を設けることができる。脱液工程を行う場合は、第2再生工程の後、脱液工程の前に水洗工程を設けてもよく、脱液工程の後、次のアルミ捕捉工程の前に水洗工程を設けてもよく、その両方に水洗工程を設けてもよい。また、次工程に移る前に、陽イオン交換体と任意の液体とを固液分離する脱液工程を適宜設けてもよい。
【0040】
陽イオン交換体はイオン交換塔に充填されており、陽イオン交換体がイオン交換塔に充填された状態で各工程を行うことが好ましい。これにより、各工程を連続的に行うことができ、効率的な処理が可能となる。アルミ捕捉工程では、陽イオン交換体が充填されたイオン交換塔にアルミニウムイオン含有硝酸溶液を導入し、陽イオン交換体をアルミニウムイオン含有硝酸溶液と接触させて、陽イオン交換体にアルミニウムイオンを捕捉させることが好ましい。イオン交換塔からは、アルミニウムイオン含有硝酸溶液からアルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られる。第1再生工程では、陽イオン交換体が充填されたイオン交換塔に第1酸溶液(すなわち第2処理液)を導入して、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第1処理液を得ることが好ましい。第2再生工程では、陽イオン交換体が充填されたイオン交換塔に第2酸溶液(すなわち塩酸、硫酸またはこれらの混酸)を導入して、陽イオン交換体からアルミニウムイオンを脱離させ、第2処理液を得ることが好ましい。第2再生工程の後に脱液工程を行う場合は、第2再生工程の後、イオン交換塔から第2処理液を排出し、陽イオン交換体を第2処理液と固液分離することが好ましい。
【0041】
上記のようにイオン交換塔を用いて連続処理を行う場合、アルミ捕捉工程は、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に1回のみ通液して硝酸再生溶液を得る第1アルミ捕捉工程と、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給して硝酸再生溶液を得る第2アルミ捕捉工程を含むものであってもよい。第2アルミ捕捉工程は第1アルミ捕捉工程に続いて行われ、イオン交換塔から排出された排出液を再びイオン交換塔に導入することにより、アルミニウムイオン含有硝酸溶液がイオン交換塔に複数回通液されることとなる。このようにアルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に導入することにより、陽イオン交換体にアルミニウムイオンをより多く捕捉させることができるとともに、アルミニウムイオンが低減された硝酸再生溶液をより多くの量得ることができる。
【0042】
アルミ捕捉工程の初期は、陽イオン交換体によるアルミニウムイオンの捕捉能が高く、アルミニウムイオン含有硝酸溶液に含まれるアルミニウムイオンを陽イオン交換体によってより効率的に除去することができる。そのため、第1アルミ捕捉工程では、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に1回のみ通液することで、イオン交換塔から排出される排出液はアルミニウムイオン濃度が十分に低減され、これを硝酸再生溶液として得ることができる。一方、アルミ捕捉工程を継続していくと、陽イオン交換体によるアルミニウムイオンの捕捉能が徐々に低下し、イオン交換塔から排出される排出液のアルミニウムイオン濃度が高くなる傾向を示す。そのため第2アルミ捕捉工程では、イオン交換塔から排出される排出液を再びイオン交換塔に導入し、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給する。これにより、イオン交換塔から排出される排出液のアルミニウムイオン濃度を低減させることができ、これを硝酸再生溶液として得ることができる。また、このようにアルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給することで、陽イオン交換体により多くのアルミニウムイオンを捕捉させることができる。そのため、再生工程(第1再生工程と第2再生工程)を行う頻度を減らして、陽イオン交換体の長寿命化を図ることができる。
【0043】
第2アルミ捕捉工程では、イオン交換塔から排出された排出液をそのままイオン交換塔に再び導入してもよく、アルミニウムイオン含有硝酸溶液と混合して、その混合液をイオン交換塔に導入してもよい。前者の場合、例えば、イオン交換塔からの排出液を貯留槽に貯め、この貯留槽から当該排出液をイオン交換塔に導入することにより、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給することができる。後者の場合、例えば、アルミニウムイオン含有硝酸溶液を原液槽に貯め、原液槽からイオン交換塔にアルミニウムイオン含有硝酸溶液を供給するとともに、イオン交換塔からの排出液を原液槽に返送し、その後、原液槽からアルミニウムイオン含有硝酸溶液とイオン交換塔からの排出液の混合液をイオン交換塔に導入することにより、アルミニウムイオン含有硝酸溶液をイオン交換塔に循環供給することができる。
【0044】
第1アルミ捕捉工程を終了するタイミング、あるいは第2アルミ捕捉工程を終了するタイミングは、イオン交換塔からの排出液のアルミニウムイオン濃度を観測することにより決定することができる。例えば、第1アルミ捕捉工程では、イオン交換塔からの排出液のアルミニウムイオン濃度が所定値以上になったところで、第1アルミ捕捉工程を終了して第2アルミ捕捉工程に移ることができる。第2アルミ捕捉工程では、イオン交換塔からの排出液のアルミニウムイオン濃度が所定値以下となったところで、第2アルミ捕捉工程を終了することができる。第2アルミ捕捉工程では、イオン交換塔への導入液とイオン交換塔からの排出液の両方のアルミニウムイオン濃度を観測し、その濃度差が所定値以下となったところで、第2アルミ捕捉工程を終了するようにしてもよい。この場合は、イオン交換塔に充填された陽イオン交換体の捕捉能が十分に飽和に達したことを検知することができる。アルミニウムイオン濃度の観測は、アルミニウムイオン濃度を原子吸光分析装置やICP(高周波誘導結合プラズマ)発光分析装置等により測定することにより行ってもよく、アルミニウムイオン濃度との相関が取れる他の分析手段(例えば電気伝導率計)により行ってもよい。
【0045】
第1アルミ捕捉工程では、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量を事前に設定してもよい。アルミ捕捉工程が第1アルミ捕捉工程と第2アルミ捕捉工程を含む場合、本発明の処理方法は、第1アルミ捕捉工程と第2アルミ捕捉工程と第1再生工程と第2再生工程をこの順番でn回(ただしnは2以上の整数を表す)繰り返し行うものとなるが、k回目(ただしkは1以上n-1以下の整数を表す)の第1アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入したアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量とk回目の第2アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入したアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量から、k+1回目の第1アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量を設定してもよい。この場合、k回目の第1アルミ捕捉工程においてイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ1とし、k回目の第2アルミ捕捉工程においてイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量をQ2としたときに、k+1回目の第1アルミ捕捉工程において、イオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量Q1k+1を式:Q1k+1=(Q1+Q2)×A(ただしAは0.5~0.8の間の数を表す)に基づき設定することが好ましい。実際の処理では、Q1とQ2を例えば電磁気的記録媒体に記録し、演算手段により上記式を計算させてQ1k+1を自動的に算出することが好ましい。ここで、k回目の第2アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量Q2は、イオン交換塔からの排出液を再びイオン交換塔に循環供給する量を含み、Aの具体的な値は経験に基づき設定される。これにより、第1アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量を、アルミニウムイオン含有硝酸溶液のアルミニウムイオン濃度や硝酸濃度の変動に対して自動修正することが可能となる。その結果、アルミ捕捉工程に要する時間の短縮化を図ることができるとともに、得られる硝酸再生溶液の純度を高めることができる。なお、1回目の第1アルミ捕捉工程でイオン交換塔に導入するアルミニウムイオン含有硝酸溶液の量Q1は、イオン交換塔に充填される陽イオン交換体のイオン交換容量と、アルミニウムイオン含有硝酸溶液のアルミニウムイオン濃度から計算される液量に、係数Aを乗ずることにより設定することができる。
【0046】
本発明の処理方法は、アルミニウムのエッチング廃液の処理に好適に適用することができる。この場合、アルミニウムのエッチング廃液をアルミニウムイオン含有硝酸溶液として用い、アルミ捕捉工程と第1再生工程と第2再生工程を行う。アルミ捕捉工程では、アルミニウムイオン含有硝酸溶液を陽イオン交換体と接触させることにより、アルミニウムイオンの少なくとも一部が除去された硝酸再生溶液が得られ、当該硝酸再生溶液をアルミニウムのエッチング液に用いることが好ましい。これによりアルミニウムのエッチングにかかるコストを下げることができる。アルミニウムのエッチングは、単に酸による腐食作用を利用したエッチングであってもよく、電解エッチングであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、アルミニウムイオンを含有する硝酸溶液の処理に好適に用いることができ、例えば、コンデンサ用アルミニウム箔の製造やアルミニウム板の表面処理の際に発生した廃水の処理に用いることができる。