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特許7429180インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
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  • 特許-インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 図1
  • 特許-インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 図2
  • 特許-インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 図3
  • 特許-インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 図4
  • 特許-インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法 図5
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20240131BHJP
   B41J 2/025 20060101ALI20240131BHJP
   B41J 2/08 20060101ALI20240131BHJP
   B41J 2/09 20060101ALI20240131BHJP
   B41J 2/085 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B41J2/01 203
B41J2/01 451
B41J2/01 305
B41J2/025
B41J2/08
B41J2/09
B41J2/085
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020173879
(22)【出願日】2020-10-15
(65)【公開番号】P2022065358
(43)【公開日】2022-04-27
【審査請求日】2022-11-24
(73)【特許権者】
【識別番号】502129933
【氏名又は名称】株式会社日立産機システム
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】邱 安
(72)【発明者】
【氏名】河野 貴
(72)【発明者】
【氏名】高橋 貴弘
【審査官】牧島 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-024294(JP,A)
【文献】特開2013-208727(JP,A)
【文献】特開2015-033821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01 - 2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成させるノズルと、前記インク粒子に帯電させる帯電電極と、帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極とを備え、被印字物に対し前記インク粒子による印字を行うようにしたインクジェット記録装置であって、
前記被印字物の移動速度に応じた周期的なパルス信号を発生するロータリーエンコーダと、
該パルス信号を入力する入力回路と、
前記入力回路から入力された前記パルス信号のパルス周期から前記被印字物の移動速度を計算する移動速度計測回路と、
前記移動速度から前記被印字物の加減速度を求め、前記移動速度および前記加減速度を考慮して、前記帯電電極内の前記インク粒子に印加するタイミングを調整するよう制御する制御部と、を有し、
前記被印字物を検出するとセンサ信号を出力するセンサを設け、
前記移動速度計測回路は、前記センサ信号を出力している期間中の異なる時間帯における2つの前記パルス信号を入力し、2つの時間帯における2つの移動速度を計算し、前記制御部は、前記2つの移動速度の差に基づいて前記加減速度を求め、前記加減速度を考慮して前記被印字物に対する印字書出し位置を調整することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項2】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
前記センサは、前記被印字物の先端が所定位置に搬送されたことを検出し、前記移動速度計測回路は、前記被印字物が前記所定位置に到達したことにより、前記パルス信号による周期計測を開始し、前記移動速度を計算することを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項3】
請求項1に記載されたインクジェット記録装置において、
書出しのタイミングを調節するためのカウント値を記憶する書出しタイマを備え、前記書出しタイマに、前記移動速度および前記加減速度が考慮された前記カウント値を記憶し、
前記パルス信号を入力する毎に前記カウント値をカウントダウンし、前記カウント値が0になったタイミングでタイムアップ指令を出力し前記タイミングを調整することを特徴としたインクジェット記録装置。
【請求項4】
ノズルから噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成させるノズルと、前記インク粒子に帯電させる帯電電極と、帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極とを備え、前記インク粒子に電荷を付与し、偏向電界中を飛行させ垂直偏向させ、被印字物に印字するインクジェット記録装置の制御方法であって、
前記被印字物の移動速度に応じた周期的なパルス信号を発生するロータリーエンコーダを設け、
前記パルス信号を入力し、前記パルス信号のパルス周期に基づいて移動速度を計算し、前記移動速度から前記被印字物の加減速度を求め、前記移動速度および前記加減速度を考慮して、前記帯電電極内の前記インク粒子に印加するタイミングを調整するよう制御し、
前記被印字物を検出するとセンサ信号を出力するセンサを設け、
前記センサ信号を出力している期間中の異なる時間帯における2つの前記パルス信号を入力し、2つの時間帯における2つの移動速度を計算し、前記2つの移動速度の差に基づいて前記加減速度を求め、前記加減速度を考慮して前記被印字物に対する印字書出し位置を調整することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項5】
請求項におけるインクジェット記録装置の制御方法において、
前記センサは、前記被印字物の先端が所定位置に搬送されたことを検出し、前記被印字物が前記所定位置に到達したことにより、前記パルス信号による周期計測を開始し、前記移動速度を計算することを特徴とするインクジェット記録装置の制御方法。
【請求項6】
請求項におけるインクジェット記録装置の制御方法において、書出しのタイミングを調節するためのカウント値を記憶する書出しタイマを備え、前記書出しタイマに、前記移動速度および前記加減速度が考慮された前記カウント値を記憶し、前記パルス信号を入力する毎に前記カウント値をカウントダウンし、前記カウント値が0になったタイミングでタイムアップ指令を出力し前記タイミングを調整することを特徴としたインクジェット記録装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本技術分野の従来技術として、特開2013-208727号公報(特許文献1)に記載された技術が知られている。
特許文献1には、印字対象物に印字をするためのインクを収容するインク容器と、前記インク容器に接続され、インクを吐出するノズルと、前記ノズルから吐出されて印字に使用されるインクを帯電する帯電電極と、前記帯電電極で帯電されたインクを偏向する偏向電極と、印字に使用されないインクを回収するガターと、を備えたインクジェット記録装置において、被印字物の移動速度が加減速している場合においても、書出し位置差を低減させ、印字品質が向上する技術を開示している。この技術では、あらかじめ設定入力しておく被印字物の長さと、被印字物が被印字物検出センサを通過する遮光時間から移動速度と加速度を計算し、移動速度と加速度に応じて書出し位置の調整を行うようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-208727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
コンベアライン等の搬送装置に載置された被印字物に印字する場合に、被印字物の移動速度が変化することによる課題の一つとして、印字書出し位置のずれがある。例えば、移動速度が遅いときに比べて、速いときは印字書出し位置が後ろにずれてしまうという問題がある。
【0005】
このような問題に対して、特許文献1の技術では、被印字物がセンサを通過するときに、計測された遮光時間から被印字物の2つの移動速度を算出し、その2つの移動速度から加減速度を求めて印字位置における移動速度を予測制御する機構を設け、被印字物の移動速度が遅いときは、時間が経過し印字物が所定位置(書出し位置)に移動するのを待ってから、印字書出し位置に合うように印字する。これにより、被印字物の移動速度が加減速している場合においても印字書出し位置を合わせるようにしている。
【0006】
しかし、電線やケーブルのような長尺の被印字物に印字する場合には、電線やケーブルが被印字物検出センサを通過する遮光時間が長くなり、遮光時間を移動速度の計算に使用することができず、移動速度を利用して加減速度を算出することができない場合がある。そのため、電線やケーブルなど長い被印字物の印字に際して、被印字物が加減速している場合に、書出し位置が調整できなくなり、印字品質が低下するという課題を残している。
【0007】
そこで、本発明は、長尺の被印字物に印字する場合であっても、印字品質の低下を少なくしたインクジェット記録装置およびインクジェット記録装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、その一例を挙げると、ノズルから噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成させるノズルと、前記インク粒子に帯電させる帯電電極と、帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極とを備え、被印字物に対し前記インク粒子による印字を行うようにしたインクジェット記録装置であって、被印字物の移動速度に応じた周期的なパルス信号を発生するロータリーエンコーダと、該パルス信号を入力する入力回路と、前記入力回路から入力された前記パルス信号のパルス周期から前記被印字物の移動速度を計算する移動速度計測回路と、前記移動速度から前記被印字物の加減速度を求め、前記移動速度および前記加減速度を考慮して、前記帯電電極内の前記インク粒子に印加するタイミングを調整するよう制御する制御部と、を有するインクジェット記録装置である。
【0009】
また、本発明の他の例を挙げるならば、ノズルから噴射するインクに振動を与えてインク粒子を生成させるノズルと、前記インク粒子に帯電させる帯電電極と、帯電した前記インク粒子を偏向させる偏向電極とを備え、前記インク粒子に電荷を付与し、偏向電界中を飛行させ垂直偏向させ、被印字物に印字するインクジェット記録装置の制御方法であって、被印字物の移動速度に応じた周期的なパルス信号を発生するロータリーエンコーダを設け、前記パルス信号を入力し、前記パルス信号のパルス周期に基づいて移動速度を計算し、前記移動速度から前記被印字物の加減速度を求め、前記移動速度および前記加減速度を考慮して、前記帯電電極内の前記インク粒子に印加するタイミングを調整するよう制御するインクジェット記録装置の制御方法である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、長い被印字物に対してセンサ通過中に印字を行う場合において、被印字物の移動速度が変化する場合であっても、印字書出し位置のずれを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の実施例に係るインクジェット記録装置の構成図である。
図2】従来技術を説明するための図である。
図3】本発明を説明するための図である。
図4】従来技術を説明するための図である。
図5】本発明を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体的な実施例に基づき詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施例に限定されるものではない。
【0013】
図1に本発明の実施例におけるインクジェット記録装置の構成を示す。インクジェット記録装置は、印字を行う本体部と、その本体部を制御する制御部とで構成される。
【0014】
この実施例における本体部は、図1に示すように、インク容器11と、供給ポンプ12と、印字ヘッド20と、回収ポンプ17で構成される。印字ヘッド20は、ノズル13と、帯電電極14と、偏向電極15と、ガター16とで構成される。
【0015】
インク容器11は印字用のインクを収容する。供給ポンプ12は、インク容器11内のインクをノズル13に向け供給する。ノズル13は、供給ポンプ12から供給されたインクに振動を与え粒子化して噴出する。帯電電極14は、制御部による制御により、ノズル13より噴出し飛翔中のインク粒子に対し、印字文字に対応した電荷を加える。偏向電極15は、帯電したインク粒子を偏向する。ガター16は、印字に使用しないインク(非帯電インク粒子)を捕捉する。回収ポンプ17は、ガター16が捕捉したインクをインク容器11に回収する。
【0016】
この実施例における制御部は、図1に示すように、MPU(マイクロプロセッシングユニット)101、RAM(ランダムアクセスメモリ)102、ROM(リードオンリーメモリ)103、表示装置104、パネル105、書出しタイマ106、印字制御回路107、被印字物検知回路108、移動速度計測回路109、文字信号発生回路110、センサ117、ロータリーエンコーダ120、入力回路121などから構成される。
【0017】
MPU101は、RAM102に保存(記憶)されたデータおよびROM103に記憶された制御プログラムに従って、インクジェット記録装置全体を制御する。RAM102は、インクジェット記録装置の制御に必要なデータを一時的に記憶しておくものである。ROM103は、書出し位置を計算するソフトウェアおよびデータを含むプログラム等を記憶する。表示装置104は、入力されたデータおよび印字内容等を表示する。パネル105は、印字間隔、印字内容およびエンコーダ信号1パルスの幅等を入力するために設けられる。
【0018】
書出しタイマ106は、カウンターで構成され、書出しのタイミングを調節するためのカウント値を記憶し、被印字物の移動に伴って発生するパルスを入力する毎にカウント値をカウントダウンし、カウント値が0になったタイミングでトリガ信号(タイムアップ指令)を出力するタイマである。
【0019】
印字制御回路107は、インクジェット記録装置の印字動作を制御する。被印字物検出回路108は、センサ117の検知信号により、被印字物を検出する。移動速度計測回路109は、ロータリーエンコーダ120が発生するパルス信号を入力回路121を介して取込み、エンコーダ信号の2つの周期計算実行期間における2つの周期から移動速度を計測(演算)する。文字信号発生回路110は、MPU101からの指示により印字内容を文字信号にして帯電電極14に出力する。バスライン111は、データ等を送るための信号線である。117は、被印字物を検出するセンサであり、センサ出力により被印字物検知回路108が所定位置(センサ117の設置位置)に被印字物118が到達したことを検知する。偏向電極15により偏向されたインク粒子は、被印字物に着弾し印字が施される。
【0020】
コンベア119は、被印字物118を搬送する。ロータリーエンコーダ120は、移動速度(搬送速度)に応じた周期的なパルス信号(エンコーダ信号)を発生する。入力回路121は、パスル信号を移動速度計測回路109に入力するために設けられる。
【0021】
ここからは、従来技術(特許文献1に記載された技術)と本発明の違いを比較しながら、本発明の実施例の内容について説明する。
【0022】
最初に、図2に示すようにセンサ117の遮光時間を計測することによる被印字物118の移動速度を検出する方法、つまり図4に示すタイミングで印字開始を行う従来技術について述べる。図2において、(a)はエンコーダ信号、(b)はセンサ信号、(c)はコンベア上の被印字物118とセンサとの配置状態を示す。
【0023】
まず、印字内容データ、印字フォーマットと、非印字物の長さを含む印字内容は、パネル105によって入力することができ、その印字内容はRAM102に保存する。また、パネル105より設定された印字文字列の幅から横ドット間距離(ラインクロック信号1パルスあたりの移動距離)を決定し、RAM102に保存する。RAM102に保存された印字内容、印字フォーマットと横ドット間距離に基づいて、ROM103に記憶されている移動速度計算プログラムにより最高移動速度を計算する。この最高移動速度によって生成されたラインクロック信号から決定した書出し位置を基準にして、実際の移動速度に見合って書出し位置が合うように制御する。また、センサ117から書出しまでの距離を、記憶された横ドット間距離で割り、書出しまでのラインクロックパルス数(P1)を算出する。
【0024】
また、文字信号発生から書出し粒子着弾までの移動量を、RAM102に保存された印字距離から求めた飛行粒子時間と計測した移動速度から算出する。その移動量を横ドット間距離で割ってラインクロックパルス数(P2)を算出する。パルス数(P1)とパルス数(P2)の合計を、書出しタイマ106でパルス数を数える際のカウンター値とする。
【0025】
書出しタイマ106はラインクロック信号のパルス1つにつき1つずつカウンター値からカウントダウンを始めて、カウンター値が0になった時にトリガ信号を出力する。このトリガ信号により、ノズル13より噴出され帯電電極14内で粒子化したインク粒子は、印字情報に応じた帯電電圧を印加開始し、さらに偏向電極15により偏向されて印字物にインク粒子が着弾して印字が開始される。
【0026】
従来技術の場合、図2(b)に示すように、被印字物118の移動速度は、センサ117が被印字物118を検知している時間(遮光時間)から求められ、前後の2つの被印字物(118a,118b)から得られる2つの遮光時間により、2つの移動速度を求めている。この方法は被印字物118の搬送方向の長さが比較的短い場合には機能する。
【0027】
しかし、図3に示すように、被印字物118が長いと、遮光時間が長くなり、書出し位置が到着したにもかかわらず、その時点で遮光が継続しているため被印字物118の移動速度の計算をすることができない場合がある。したがって、移動速度の計算が遅れるため、被印字物118の移動速度が加減速している場合の書出し位置の調整には対応できない。
【0028】
本発明では、この問題を解決し、長尺の被印字物118であっても、被印字物118の移動速度が加減速している場合の書出し位置の調整を可能にする。
【0029】
次に、図3に示すように被印字物118が長尺である場合において、図5に示す本発明の実施例における書出し位置の調整方法について述べる。図3において、(a)はエンコーダ信号、(b)は印字物検出センサ信号、(c)はコンベア119上を搬送される長尺の被印字物118を示す。
【0030】
本発明の実施例では、被印字物の移動速度を、センサ遮光時間ではなく、エンコーダ信号(パルス信号)の周期より被印字物118の移動速度を計算する。そして、計算した2つの移動速度から求めた加速度を考慮して書出し位置を調整する。この制御により被印字物が長尺の場合に、移動速度が加減速している場合においても印字書出し位置のずれを低減させることができる。
【0031】
まず、印字内容データ、印字フォーマットを含む印字内容は、パネル105の操作によって入力され、RAM102に保存出する。また、パネル105により設定された印字文字列の幅から横ドット間距離(エンコーダ信号1パルス当たりの移動距離)を決定し、RAM102に保存する。
【0032】
また、パネル105により設定され、RAM102に保存された印字間隔と、記憶された横ドット間距離から、(1)式により次の印字の書出し位置に到達するパルス数(P1)が計算できる。この、パルス数(P1)は、RAM102に保存する。
次の印字の書出し位置に到達するパルス数(P1)=印字間隔(mm)/1パルスの幅(mm)
………………(1)
【0033】
図5に示すように、被印字物118が移動してエンコーダ周期計測タイミングになると、次に示す(2)式、(2)’式によりロータリーエンコーダ120から予め決められたロータリーエンコーダのパルス数および横ドット間距離から、異なる時間における2つの周期計測時の移動距離を計算する。
周期計測(T1)の移動距離=(P1)のパルス数×横ドット間距離 ………… (2)
周期計測(T2)の移動距離=(P2)のパルス数×横ドット間距離 ………… (2)’
【0034】
ここで、本発明の移動速度計算に関して使用するエンコーダ信号の2つの周期計測タイミングは、図5に示すように、1つ目の周期計測(1)の実行後、2つ目の周期計測(T2)を実行する。1つ目の周期計測(T1)を実行するタイミングのトリガは、例えば、被印字物の先端が、センサの設置位置に達し、センサが被印字物118を検知し始めたタイミングを利用し、その後の適切なタイミングで実行する。そして、2つ目の周期計測(T2)の計測タイミングは、1つ目の周期計測(T1)の計測タイミングより後のタイミングで周期計測を実行する。
【0035】
また、被印字物118が加減速時に、次の(3)式、(3)’式により移動距離と周期計測時間から平均周期(TA1)と平均周期(TA2)を計算する。
平均周期(TA1)=移動距離/周期計測(T1)の実行時間 ………… (3)
平均周期(TA2)=移動距離/周期計測(T2)の実行時間 ………… (3)’
【0036】
その計算した2つの平均周期から次の(4)式、(4)’式により移動速度V(1)と移動速度V(2)が計算できる。
移動速度V(1)=移動距離/平均周期(TA1)×パルス数(P1) ………… (4)
移動速度V(2)=移動距離/平均周期(TA2)×パルス数(P2) ………… (4)’
【0037】
被印字物118の移動速度V(1)とV(2)から計測された速度差に基づいて、(5)式により、その速度差とロータリーエンコーダ120の周期計測時間から被印字物118の加速度αが計算することができる。
加速度α=(V(2)-V(1))/(平均周期(TA1)+平均周期(TA2))×パルス数……(5)
【0038】
被印字物118の加減速度αと前記計測された周期(T2)の速度V(2)およびノズル13に到達する5印字準備時間tから(6)式により被印字物118が印字ヘッド20を通過する時の速度V′が計算できる。
V’=V(2)+α×t ………………………… (6)
【0039】
また、文字信号発生から書出し粒子着弾までの移動量をパネル105によって入力された印字距離から求めた飛行粒子時間と計測した移動速度から算出する。その移動量を横ドット間距離で割ってパルス数(P2)を算出する。そして、(P1)と(P2)の合計を、書出しタイマ106でパルス数を数える際のカウンター値とする。
【0040】
書出しタイマ106はエンコーダ信号のパルス1つにつき1つずつカウンター値からカウントダウンを始める。カウンター値が0になった時に、書出しタイマ106からトリガ信号(タイムアップの指令)がMPU101へ届く。MPU101は、このトリガ信号を受けて印字開始タイミングの指令を発生させると共に、MPU101はRAM102に記憶している印字内容を、バスライン111を介して文字信号発生回路110へ送る。これにより、文字信号発生回路110はノズル13より噴出されたインク粒子に帯電電極14内で文字信号に応じた帯電電圧を印加する。
【0041】
印字制御回路107はバスライン111を介して、上記帯電電圧の印加制御を行うための帯電信号を帯電電極14へ送出するタイミングをコントロールする。この制御によって帯電したインク粒子は偏向電極15により偏向され、コンベア119によって搬送され被印字物118へ向かって飛翔し、付着して印字される。印字に使用されなかったインク粒子はガター16に捕捉され、回収ポンプ17によりインク容器11に回収される。
【0042】
以上説明した実施例によれば、電線やケーブルのように長尺の被印字物に印字する場合であっても、被印字物の加減速に対応した適切なタイミングで印字を実行することができる。すなわち、加減速が有る場合でも書出しのずれを抑制することができ、品質の高い印字を実現することができる。
【0043】
なお、本発明は、上述した実施例に限らず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲内において、様々な変形例が含まれる。上記の実施例は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の構成に置き換えたり、ある実施例の構成に他の構成を加えることも可能である。
【符号の説明】
【0044】
11…インク容器、12…供給ポンプ、13…ノズル、14…帯電電極、15…偏向電極、16…ガター、17…回収ポンプ、20…印字ヘッド、101…MPU、102…RAM、103…ROM、104…表示装置、105…パネル、106…書出しタイマ、107…印字制御回路、108…被印字物検出回路、109…移動速度計測回路、110…文字信号発生回路、111…バスライン、117…センサ、118…被印字物、119…コンベア、120…ロータリーエンコーダ、121…入力回路
図1
図2
図3
図4
図5