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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】耐摩耗性の層
(51)【国際特許分類】
   B22F 1/00 20220101AFI20240131BHJP
   B22F 1/052 20220101ALI20240131BHJP
   B22F 7/00 20060101ALI20240131BHJP
   B22F 7/04 20060101ALI20240131BHJP
   C22C 1/051 20230101ALI20240131BHJP
   C23C 4/06 20160101ALI20240131BHJP
   C23C 4/10 20160101ALI20240131BHJP
【FI】
B22F1/00 Q
B22F1/052
B22F7/00 G
B22F7/04 Z
C22C1/051 H
C23C4/06
C23C4/10
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020521400
(86)(22)【出願日】2018-10-31
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-14
(86)【国際出願番号】 IB2018058540
(87)【国際公開番号】W WO2019087097
(87)【国際公開日】2019-05-09
【審査請求日】2021-10-19
(31)【優先権主張番号】62/579,778
(32)【優先日】2017-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515195347
【氏名又は名称】エリコン メテコ(ユーエス)インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リュー、ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ワン、チョンミン
(72)【発明者】
【氏名】ベル、アンドリュー
【審査官】祢屋 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-220571(JP,A)
【文献】特開平02-006097(JP,A)
【文献】特開2003-277875(JP,A)
【文献】特開昭53-139613(JP,A)
【文献】特公昭49-023985(JP,B1)
【文献】実公昭47-038563(JP,Y1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0093282(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0193148(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/276209(US,A1)
【文献】国際公開第2017/100733(WO,A1)
【文献】特表2004-512181(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(13)上に耐摩耗性の層(10、20、22、60、102)を形成するための混合物であって、該混合物は、
第1の耐摩耗性粒子タイプ(12)の粒子および第2の耐摩耗性粒子タイプ(14)の粒子と、
前記耐摩耗性の層(10、20、22、60、102)の形成時に、前記第1および第2の耐摩耗性粒子を結合するための、金属結合材料を含む耐摩耗性層結合剤(13)と
を含み、
前記第1の耐摩耗性粒子タイプ(12)および前記第2の耐摩耗性粒子タイプ(14)の耐摩耗性粒子の粒径分布は、それぞれ第1のモード径、第2のモード径を有し、前記第1の粒子タイプ(12)は前記第1のモード径に関連し、前記第2の粒子タイプ(14)は前記第2のモード径に関連し、前記第1のモード径に関連する第1の耐摩耗性粒子の数Nは、前記第2のモード径に関連する第2の耐摩耗性粒子の数Nよりも多く、前記第2のモード径は前記第1のモード径よりも大きく、前記第2の耐摩耗性粒子は鋳造タングステンカーバイドを含
前記混合物は、前記第1の耐摩耗性粒子および前記第2の耐摩耗性粒子を35~60重量%、前記耐摩耗性層結合剤を40~65重量%含有する、混合物。
【請求項2】
前記混合物は粉末(71)の形態である、請求項1に記載の混合物。
【請求項3】
前記第2のモード径に関連する前記第2の粒子の数Nは、耐摩耗性粒子の総数N+Nの30%未満であり、前記第1のモード径に関連する第1の粒子の数Nは、耐摩耗性粒子の総数N+Nの70%を超える、請求項1または2に記載の混合物。
【請求項4】
前記第2のモード径は第1のモード径の2倍よりも大きい、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
前記第2の耐摩耗性粒子(D50)のメジアン径D50Lは、前記第1の耐摩耗性粒子のメジアン径D50Sの2倍よりも大きい、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
前記第1および第2の耐摩耗性粒子は、10μm~1.2mmの範囲の粒径を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
前記第1の耐摩耗性粒子は、タングステンカーバイド、ジタングステンカーバイド(WC)とタングステンカーバイド(WC)の共融混合物、天然ダイヤモンド、カプセル化されたダイヤモンドグリット、粉砕した多結晶ダイヤモンドコンパクト、炭化物、窒化物、遷移金属の酸化物、丸形鋳造炭化物、角形鋳造炭化物、固められたタングステンカーバイドのペレット、固められたタングステンカーバイド、鋳造タングステンカーバイド、およびモノタングステンカーバイドのうちの少なくとも1つを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項8】
前記金属結合材料は、銅、スズ、銀、コバルト、ニッケル、ホウ素、カドミウム、マンガン、亜鉛、鉄、クロム、ビスマス、シリコン、またはそれらの合金の少なくとも1つを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項9】
前記混合物は、35重量%~50重量%の前記第1および第2の耐摩耗性粒子と、50重量%~65重量%の耐摩耗性層結合剤とを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項10】
前記混合物は、30重量%~50重量%の耐摩耗性層結合剤(13)と、10重量%~30重量%の第1の粒径範囲内の鋳造タングステン粉末と、30重量%~50重量%の第2の粒径範囲内のタングステンカーバイド粉末とを含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項11】
基板上の耐摩耗性の層であって、前記耐摩耗性の層(10、20、22、60、102)は、
金属結合材料を含む耐摩耗性層結合剤(13)によって結合された第1の耐摩耗性粒子タイプ(12)および第2の耐摩耗性粒子タイプ(14)を含み、前記第1の耐摩耗性粒子タイプ(12)および前記第2の耐摩耗性粒子タイプ(14)の耐摩耗性粒子の粒径分布は、それぞれ第1のモード径、第2のモード径を有し、前記第1の粒子タイプ(12)は前記第1のモード径に関連し、前記第2の粒子タイプ(14)は前記第2のモード径に関連し、前記第1のタイプ(12)の耐摩耗性粒子の数Nは、前記第2のタイプ(14)の耐摩耗性粒子の数Nよりも多く、前記第2のモード径は前記第1のモード径よりも大きく、前記第2の耐摩耗性粒子は鋳造タングステンカーバイドを含
前記混合物は、前記第1の耐摩耗性粒子および前記第2の耐摩耗性粒子を35~60重量%、前記耐摩耗性層結合剤を40~65重量%含有する、耐摩耗性の層。
【請求項12】
前記耐摩耗性の層(10、20、22、60、102)は、請求項1~10の前記混合物を含む、請求項11に記載の耐摩耗性の層。
【請求項13】
請求項1~10の前記混合物を用いて基板(50、72)上に耐摩耗性の層(10、20、22、60、102)を形成する方法であって、
前記混合物を前記基板(50、72)に付着させるステップと、
前記耐摩耗性の層を形成するための前記第1および第2の耐摩耗性粒子と前記耐摩耗性層結合剤(13)との前記混合物を加熱するステップとを含む方法。
【請求項14】
前記方法は、金属結合材料のモノリシックマトリックスを形成するために前記金属結合材料を溶融するステップを含み、前記方法は、前記金属結合材料を溶融させて、前記第1および/または第2の耐摩耗性粒子に前記金属結合材料を浸透させるようするステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記混合物を加熱するステップ、したがって前記第1および第2の耐摩耗性粒子と、前記耐摩耗性層結合剤(13)とを加熱するステップをさらに含む、請求項13または14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される発明は、広く言えば、基板上に耐摩耗性の層を形成するための粉末、基板上の耐摩耗性の層、および基板上に耐摩耗性の層を形成する方法に関するが、これらに限定されない。
【背景技術】
【0002】
工具の固有の経済的寿命に比べて交換時期が早い場合は特に、工具の表面の摩耗により工具の交換が必要になる場合がある。摩耗は、構造物によって工具の表面を直接こすった結果(2体摩耗)、または構造物と工具の表面の間で少なくとも1つの粒子によって工具の表面をこすった結果(3体摩耗)であり得る。工具表面はまた、流体、例えば、油井およびガス井のボーリングで使用される掘削流体によって運ばれる粒子によって摩耗され得る。
【0003】
ハードコーティング(例えば、0.1mm厚)または表面硬化(例えば、5mm厚未満)の形態の耐摩耗性の層を工具の表面に堆積させて、表面の摩耗特性を改善するか、または表面を修復することができる。現在、表面硬化は、産業用工具、土工用工具、および、例えば掘削ビット、ドリルストリング、その他のダウンホールツールを含む掘削ツールに関連して使用されている。摩耗はまた、紙、自動車、ガラス製造、その他の業界の工具でも経験され得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、比較的容易に形成することができ、より良好で、より硬く、より一貫した耐摩耗性の層が必要であると長い間考えられてきた。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書では、基板上に耐摩耗性の層を形成するための混合物が開示される。混合物は、第1の耐摩耗性粒子タイプの粒子と、第2の耐摩耗性粒子タイプの粒子と、層が形成されたときに耐摩耗性の層内の第1および第2の耐摩耗性粒子を結合するための耐摩耗性層結合剤とを含む。なお、第1および第2の耐摩耗性粒子タイプの耐摩耗性粒子の粒径分布は、第1のモード径および第2のモード径を有する。第1の粒子タイプは第1のモード径に関連し、第2の粒子タイプは第2のモード径に関連する。さらに、第1のモード径に関連する第1の耐摩耗性粒子の数Nは、第2のモード径に関連する第2の耐摩耗性粒子の数Nよりも多い。さらに、第2のモード径は第1のモード径よりも大きい。
【0006】
本発明に関連して、モード径は、粒子の粒径の頻度分布のピークである。したがって、モード径は、粒子分布で見られる最高のピークとして視覚化できる。モード径は、分布内で最も一般的に見出される粒径(または粒径範囲)を表す。モード径は、粒子分布内に複数のピークがある場合に特に使用され、粒子分布に記述されている異なるモード径が、異なるピークの中点を説明するのに役立つ。メジアン値は、母集団の半分がこの点より上にあり、半分がこの点より下にある値として定義される。粒径分布の場合、メジアンは、D50と呼ばれる。一般的に、粒子分布のピークは、対称的または非対称的であり得る。関連するモードのピークが対称的である場合、メジアンはモード径に等しい。関連するモードのピークが非対称的である場合、メジアンとモード径は(粒径の)異なる値である。粒径という用語は、とりわけ、体積、表面、直径、および粒径を説明するために当該技術で知られている他の大きさに関連し得る。粒径の分析と粒径分布の表現に関する追加情報は、とりわけ、ISO 9276-1、ISO 9276-2、ISO 13320-1、ISO 13320-1、ISO 13322-2、ISO 11277、およびISO 13317から取得できる。
【0007】
本明細書に開示される混合物は、第1および第2の耐摩耗性粒子タイプを開示する。第1および第2の耐摩耗性粒子タイプは、異なるモード径(同じ粒子分布のピーク)に関連しているという点で異なる。つまり、第1のモード径と関連する第1の耐摩耗性粒子(第1の粒子タイプ)と、第2のモード径と関連する第2の耐摩耗性粒子(第2の粒子タイプ)が存在する。第1および第2の粒子は異なるモード径に関連しているため、それらの粒径は異なるが、その組成は異なっている必要はない。本発明によれば、本方法で使用される耐摩耗性の層内において、より小さな粒子タイプは、より多くの数の粒子を有し、より大きな粒子タイプは、より少ない数の粒子を有する。
【0008】
本発明によれば、第1および第2の耐摩耗性粒子タイプという用語は、少なくとも2つの異なる粒子タイプに関する。本発明によれば、(第1および第2の耐摩耗性粒子に相当する)複数の耐摩耗性粒子が存在可能であり、複数の耐摩耗性粒子の耐摩耗性粒子の粒径分布は複数のモード径を有する。複数の粒子タイプに関して、以下があてはまる。粒子タイプが小さいほど(つまり、それぞれのモード径が小さいほど)、混合物/耐摩耗性の層内の/方法内で使用される対応する粒子の数が多くなるはずである。
【0009】
基板上に耐摩耗性の層を形成するための混合物は、本明細書に記載されるような耐摩耗性の層を形成するために、本発明に係る方法において使用され得る。
【0010】
本発明の特別な実施形態では、混合物は粉末の形態であることができる。
【0011】
一実施形態では、第2のモード径に関連する第2の粒子の数Nは、耐摩耗性粒子の総数N+Nの30%未満、特に5%~30%の間、好ましくは15%~30%の間、特に15%~25%の間である。第1のモード径に関連する第1の粒子の数Nは、耐摩耗性粒子の総数N+Nの70%よりも多い、特に70%~95%の間、好ましくは70%~85%の間、特に75%~85%とすることができる。
【0012】
一実施形態では、第2のモード径のmは、第1のモード径のmの2倍よりも大きく(m>2m)、特に第1のモード径のmのそれよりも3倍大きい(mL>3m)、特に4倍大きい(m>2m)。より大きなものは、特に、モード径に関連する粒子の体積、またはモード径の粒子の別の大きさに関係する。
【0013】
一実施形態では、第1のモード径D50に関連する耐摩耗性粒子のメジアン径(D50)は、第2のモード径D50のそれの2倍よりも大きい(D50>2D50)、特に3倍大きい(D50>3D50)、特に、第2のモード径の第2の粒子のメジアン径よりも4倍大きい(D50>4D50)。
【0014】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプのそれぞれは、10μm~1.2mmの範囲内のサイズを有する。
【0015】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプのそれぞれは、10μm~420μmの範囲内の粒径を有する。
【0016】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプは、多峰性の粒径分布を有する。
【0017】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子は、タングステンカーバイド、ジタングステンカーバイド(WC)とタングステンカーバイド(WC)の共融混合物、天然ダイヤモンド、カプセル化されたダイヤモンドグリット、粉砕した多結晶ダイヤモンドコンパクト、炭化物、窒化物、遷移金属の酸化物、球状鋳造炭化物、角形鋳造炭化物、固められたタングステンカーバイドのペレット、固められたタングステンカーバイド、鋳造タングステンカーバイド、およびモノタングステンカーバイドのうちの少なくとも1つを含む。
【0018】
一実施形態では、耐摩耗性層結合剤は、金属結合材料を含む。
【0019】
一実施形態では、金属結合材料は、銅、スズ、銀、コバルト、ニッケル、ホウ素、カドミウム、マンガン、亜鉛、鉄、クロム、ビスマス、シリコン、またはそれらの合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0020】
一実施形態は、30重量%~50重量%の耐摩耗性層結合剤と、10重量%~30重量%の第1の粒径の鋳造タングステン粉末と、第2の粒径の30重量%~50重量%のタングステンカーバイド粉末とを含む。
【0021】
一実施形態では、第1の粒子の粒径範囲は-40/60 ASTM標準メッシュであり、第2の粒径範囲は-100/325 ASTM標準メッシュである。
【0022】
粒子の総数N+Nは、本発明の意味の範囲内であり、複数の耐摩耗性粒子の数の合計、特に、第1のモード径に関連する第1の耐摩耗性粒子の数Nと第2のモード径に関連する第2の耐摩耗性粒子の数Nとの合計である。
【0023】
複数の耐摩耗性粒子が与えられると、通常、多峰性の粒径分布が存在する。多峰性の粒径分布は、複数の(つまり、1つよりも多いモード径/少なくとも第1および第2の)モード径、したがって、粒子分布に見られる複数の最高ピーク(または少なくとも認識可能なピーク)を有する粒径分布である。多峰性の粒子分布は、連続的および/または非連続的であり得る。粒子分布が接続されたピークを含む場合、多峰性の粒子分布は連続的であり、粒子分布が接続されていないピークを含む場合、多峰性の粒子分布は非連続的である。一般的に、非連続的な粒子分布の粒径、より正確には異なるモード径の粒径は、連続的な粒径分布の場合よりも大きく異なる。
【0024】
基板上の耐摩耗性の層が開示される。耐摩耗性の層は、耐摩耗性層結合剤によって共に結合された第1の耐摩耗性粒子タイプおよび第2の耐摩耗性粒子タイプを含む。さらに、第1、第2の耐摩耗性粒子タイプそれぞれの耐摩耗性粒子の粒径分布は、第1のモード径および第2のモード径を有する。したがって、第1の粒子タイプは第1のモード径に関連し、第2の粒子タイプは第2のモード径に関連する。さらに、第1のタイプの耐摩耗性粒子の数Nは、第2のタイプの耐摩耗性粒子の数Nよりも多く、第2のモード径は、第1のモード径よりも大きい。
【0025】
耐摩耗性の層は、上記のように本発明に係る方法を用いて基板上に堆積させることができる。
【0026】
一実施形態では、第2のモード径に関連する第2の粒子Nの数は、耐摩耗性粒子の総数N+Nの30%未満、特に5%~30%の間、好ましくは15%~30%の間、特に15%~25%の間である。第1のモード径に関連する第1の粒子NSの数は、耐摩耗性粒子の総数の70%より多く、特に70%~95%の間、好ましくは70%~85%の間、特に75%~85%の間とすることができる。
【0027】
一実施形態では、第2のモード径は、第1のモード径の2倍よりも大きく、特に、第1のモード径のそれよりも3倍、特に4倍大きい。
【0028】
一実施形態では、第1のモード径に関連する耐摩耗性粒子(D50)のメジアン径D50は、第2のモード径のメジアン径D50の2倍よりも大きく(D50>2D50)、特に第2モード径の第2粒子のサイズのメジアン径よりも3倍大きい(D50>3D50)、特に4倍大きい(D50>4D50)。
【0029】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子のそれぞれは、10μm~1.2mmの範囲内の粒径、または10μm~1mmの範囲内の粒径、または10μm~420μmの範囲内の粒径、特に10μm~350μmの範囲内の粒径、好ましくは10μm~200μmの範囲内の粒径、特に10μm~50μmの範囲内の粒径を有する。複数の耐摩耗性粒子は、10μm~420μmの範囲内の粒径を有することができる。
【0030】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子は、多峰性の粒径分布を有する。
【0031】
一実施形態では、混合物は、35重量%~75重量%、特に50重量%~70重量%、好ましくは35重量%~60重量%、特に35重量%~50重量%の複数の耐摩耗性粒子と、25重量%~65重量%、特に30重量%~50重量%、好ましくは40重量%~65重量%、特に50重量%~65重量%の耐摩耗性層結合剤とを含む。
【0032】
一実施形態では、混合物は、30重量%~50重量%の耐摩耗性層結合剤と、10重量%~30重量%の第1の粒径の鋳造タングステン粉末と、30重量%~50重量%の第2の粒径範囲のタングステンカーバイド粉末とを含む。
【0033】
一実施形態では、第1の粒径範囲は-40/60 ASTM標準メッシュであり、第2の粒径範囲は-100/325 ASTM標準メッシュである。
【0034】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子は、タングステンカーバイド、ジタングステンカーバイド(WC)とタングステンカーバイド(WC)の共融混合物、天然ダイヤモンド、カプセル化されたダイヤモンドグリット、粉砕した多結晶ダイヤモンドコンパクト、炭化物、窒化物、遷移金属の酸化物、球状鋳造炭化物、角形鋳造炭化物、固められたタングステンカーバイドのペレット、固められたタングステンカーバイド、鋳造タングステンカーバイド、およびモノタングステンカーバイドのうちの少なくとも1つを含む。
【0035】
一実施形態では、耐摩耗性層結合剤は、金属結合材料のモノリシックマトリックスを含む。
【0036】
本明細書に開示されるのは、基板上に耐摩耗性の層を形成する方法である。本方法は、混合物を基板に付着させるステップと、耐摩耗性の層を形成するために第1および第2の耐摩耗性粒子と耐摩耗性層結合剤との混合物を加熱するステップとを含む。
【0037】
本方法は、第1の耐摩耗性粒子タイプを基板に付着させるステップと、第2の耐摩耗性粒子タイプを基板に付着させるステップとを含むことができ、第1および第2の耐摩耗性粒子タイプの耐摩耗性粒子の粒径分布は、第1のモード径、第2のモード径をそれぞれ有する。したがって、第1の粒子タイプは第1のモード径に関連し、第2の粒子タイプは第2のモード径に関連する。また、第1のタイプの耐摩耗性粒子の数Nは、第2のタイプの耐摩耗性粒子の数Nよりも多い。さらに、第2のモード径は第1のモード径よりも大きい。本方法は、耐摩耗性層結合剤を基板に付着させるステップをさらに含む。さらに、本方法はまた、第1および第2の耐摩耗性粒子と耐摩耗性層結合剤とを加熱するステップも含む。
【0038】
一実施形態では、第2のモード径に関連する第2の粒子Nの数は、耐摩耗性粒子の総数N+Nの30%未満、特に5%~30%の間、好ましくは15%~30%の間、特に15%~25%の間である。第1のモード径に関連する第1の粒子の数Nは、耐摩耗性粒子の総数N+Nの70%よりも多く、特に70%~95%の間、好ましくは70%~85%の間、特に75%~85%の間とすることができる。
【0039】
一実施形態では、第2のモード径mは、第1のモード径mの2倍よりも大きく(m>2m)、特に第1のモード径mのそれよりも3倍大きい(m>3m)、特に4倍大きい(m>2m)。モード径が別のモード径よりも大きいということは、それぞれのモード径での粒径がより大きいことを意味する。
【0040】
一実施形態では、第1のモード径に関連する耐摩耗性粒子(D50)の粒径メジアン径D50は、第2のモード径に関連する耐摩耗性粒子(D50)のメジアン径D50の2倍よりも大きい(D50>2D50)、特に第2のモード径の第2の粒子のメジアン径よりも3倍大きい(D50>3D50)、特に4倍大きい(D50>4D50)。
【0041】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプのそれぞれは、10μm~1.2mmの範囲内の粒径、または10μm~1mmの範囲内の粒径、または10μm~420μmの範囲内の粒径、特に10μm~350μmの範囲内の粒径、好ましくは10μm~200μmの範囲内の粒径、特に10μm~50μmの範囲内の粒径を有することができる。
【0042】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子のそれぞれは、10μm~420μmの範囲内の粒径を有する。
【0043】
一実施形態では、複数(すなわち、第1および/または第2のタイプ)の耐摩耗性粒子は、多峰性の粒径分布を有する。本明細書に関連して、「多峰性の分布」には2つ以上のモード径がある。
【0044】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子は、タングステンカーバイド、ジタングステンカーバイド(WC)とタングステンカーバイド(WC)の共融混合物、天然ダイヤモンド、カプセル化されたダイヤモンドグリット、粉砕した多結晶ダイヤモンドコンパクト、炭化物、窒化物、遷移金属の酸化物、丸形鋳造炭化物、角形鋳造炭化物、固められたタングステンカーバイドのペレット、固められたタングステンカーバイド、鋳造タングステンカーバイド、およびモノタングステンカーバイドのうちの少なくとも1つを含む。
【0045】
一実施形態では、耐摩耗性層結合剤は金属結合材料を含み、金属結合材料は溶融されて金属結合材料のモノリシックマトリックスを形成する。
【0046】
一実施形態では、本方法は、そのように溶融された金属結合材料が複数の耐摩耗性粒子に浸透するステップを含む。通常、金属結合材料を溶融して、第1および/または第2の耐摩耗性粒子が金属材料によって浸透されるようにするステップを、本方法がさらに含む場合、第1および/または第2の耐摩耗性粒子は、例えば、第1および/または第2の耐摩耗性粒子内の空孔率または空洞が、金属材料によって少なくとも部分的に充填される程度に金属材料によって浸透される。耐摩耗性層結合剤は、靭性に寄与し、耐摩耗性粒子を共に保持するが、簡単に摩耗除去してしまう可能性がある。耐摩耗性粒子は耐摩耗性を提供するが、それ自体は脆すぎて衝撃荷重に耐えることができない。耐摩耗性層結合剤による第1および/または第2の粒子の浸透は、脆弱性を打ち消すことができる。
【0047】
一実施形態では、金属結合材料は、銅、スズ、銀、コバルト、ニッケル、ホウ素、カドミウム、マンガン、亜鉛、鉄、クロム、ビスマス、シリコン、またはそれらの合金のうちの少なくとも1つを含む。
【0048】
本方法の一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤を含む混合物を基板に付着させるステップを含む。
【0049】
一実施形態は、混合物を含む粉末を基板に付着させるステップを含む。
【0050】
一実施形態では、混合物は、35重量%~75重量%、特に50重量%~70重量%、好ましくは35重量%~60重量%、特に35重量%~50重量%の複数の耐摩耗性粒子と、25重量%~65重量%、特に30重量%~50重量%、好ましくは40重量%~65重量%、特に50重量%~65重量%の耐摩耗性層結合剤とを含む。
【0051】
一実施形態では、混合物は、30重量%~50重量%の耐摩耗性層結合剤と、10重量%~30重量%の第1の粒径の鋳造タングステン粉末と、30重量%~50重量%の第2の粒径範囲のタングステンカーバイド粉末とを含む。
【0052】
一実施形態では、第1の粒径範囲は-40/60 ASTM標準メッシュであり、第2の粒径範囲は-100/325 ASTM標準メッシュである。
【0053】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤を加熱するステップは、基板接着温度より上で混合物を加熱するステップを含む。
【0054】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤を加熱するステップは、耐摩耗性層結合剤を、耐摩耗性層結合剤軟化温度および耐摩耗性層結合剤溶融温度のうちの少なくとも1つよりも高い温度に加熱するステップを含む。
【0055】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤を加熱するステップは、基板に付着させた複数の耐摩耗性粒子および基板に付着させた耐摩耗性層結合剤を加熱するステップを含む。
【0056】
一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子を基板に向けられた火炎に導入するステップを含み、火炎は複数の耐摩耗性粒子を加熱する。
【0057】
一実施形態は、耐摩耗性層結合剤を火炎に導入するステップを含み、火炎は耐摩耗性層結合剤を加熱する。
【0058】
一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤を含む混合物を基板に向けられた火炎に導入するステップを含み、火炎は混合物を加熱する。
【0059】
一実施形態では、火炎は混合物を基板接着温度よりも高く加熱する。
【0060】
一実施形態では、火炎は、耐摩耗性層結合剤を、耐摩耗性層結合剤軟化温度および耐摩耗性層結合剤溶融温度のうちの少なくとも1つよりも高い温度に加熱する。
【0061】
一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤を基板に向けられたプラズマ流に導入するステップを含み、プラズマ流は複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤を加熱する。
【0062】
一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤を含む混合物をプラズマ流に導入するステップを含む。
【0063】
一実施形態では、プラズマ流は、耐摩耗性層結合剤を、耐摩耗性層結合剤軟化温度および耐摩耗性層結合剤溶融温度のうちの少なくとも1つよりも高い温度に加熱する。
【0064】
一実施形態は、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤を別々にプラズマ流に導入するステップを含む。
【0065】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤は、溶融部分を加熱したプラズマ流の外側の基板の溶融部分上に堆積され、基板の溶融部分は複数の丸形粒子と耐摩耗性層結合剤を加熱する。
【0066】
一実施形態では、基板の溶融部分は、耐摩耗性層結合剤を、耐摩耗性層結合剤軟化温度および耐摩耗性層結合剤溶融温度のうちの少なくとも1つよりも高い温度に加熱する。
【0067】
一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子タイプおよび耐摩耗性層結合剤は、セパレータによってプラズマ流から分離される。
【0068】
一実施形態では、セパレータは分離構造を含む。分離構造は、分離壁を含み得る。
【0069】
一実施形態は、基板の表面および複数の耐摩耗性粒子タイプの供給源を横切ってプラズマ流を移動させるステップを含み、耐摩耗性層結合剤の供給源は、プラズマ流に続く。
【0070】
一実施形態は、プラズマ流の周りにシールドガスを送出するステップを含む。
【0071】
一実施形態では、耐摩耗性層結合剤は、複数の金属粒子を含む。
【0072】
一実施形態では、複数の金属粒子は、ろう付け金属を含む。
【0073】
上記の開示のそれぞれの様々な構成のいずれか、および以下に記載される実施形態の様々な構成のいずれかは、適切かつ要望通りに組み合わせることができる。
【0074】
実施形態は、添付の図面を参照して、例としてのみ説明される。
【図面の簡単な説明】
【0075】
図1】耐摩耗性の層の各実施形態の断面。
図2】耐摩耗性の層の各実施形態の断面。
図3】耐摩耗性の層の各実施形態の断面。
図4】耐摩耗性の層の実施形態および耐摩耗性の層を形成するための粉末の実施形態の粒径ヒストグラム。
図5】耐摩耗性の層の実施形態および耐摩耗性の層を形成するための粉末の実施形態の粒径ヒストグラム。
図6】耐摩耗性の層の実施形態および耐摩耗性の層を形成するための粉末の実施形態の粒径ヒストグラム。
図7】耐摩耗性の層を形成する方法の一実施形態のフローチャート。
図8】耐摩耗性の層の実施形態を形成するための粉末の実施形態を付着させるために使用され得る酸素燃料トーチのヘッドの一例。
図9】耐摩耗性の層の一実施形態を形成するために使用され得るプラズマトランスファーアーク(PTA)トーチの例。
図10】耐摩耗性の層の一実施形態を形成するために使用され得るプラズマトランスファーアーク(PTA)トーチの例。
図11】HVOFトーチの一例。
図12】走査型電子顕微鏡写真。
図13】走査型電子顕微鏡写真。
図14】走査型電子顕微鏡写真。
図15】走査型電子顕微鏡写真。
図16】走査型電子顕微鏡写真。
図17】走査型電子顕微鏡写真。
図18】使用中のトーチの出口ノズルを通る断面図。
図19】使用中のトーチの出口ノズルを通る断面図。
図20】使用中のトーチの出口ノズルを通る断面図。
【発明を実施するための形態】
【0076】
図1は、基板上に形成され、概して数字10によって示される、表面硬化の形態の耐摩耗性の層の一実施形態の断面を示す。耐摩耗性の層10は、複数の耐摩耗性粒子、すなわち第1の耐摩耗性粒子タイプ12および第2の耐摩耗性粒子タイプ14を含む。耐摩耗性の層10はまた、形成時に耐摩耗性の層内の複数の耐摩耗性粒子12、14を結合するための耐摩耗性層結合剤13を含む。複数の耐摩耗性粒子の耐摩耗性粒子の粒径分布は、複数のモード径を有し、複数のモード径のうちの第1のモード径に関連する耐摩耗性粒子の数は、複数のモード径のうちの第2のモード径に関連する耐摩耗性粒子の数よりも多く、第2のモード径は第1のモード径よりも大きい。
【0077】
この実施形態では、第1および第2の耐摩耗性粒子12、14は、(球状の耐摩耗性粒子の形態の)複数の丸形の耐摩耗性粒子を含む。図2および図3は、角形の耐摩耗性粒子16、18を有する耐摩耗性の層20、22の代替の実施形態の断面を示す。
【0078】
第2のモード径に関連する粒子の数Nは、複数の耐摩耗性粒子の30%未満である。第1のモード径に関連する粒子の数Nは、複数の耐摩耗性粒子の70%を超えるが、2つを超えるモード径を有する実施形態では、これはより少ない場合がある。
【0079】
第2のモード径は、第1のモード径よりも大きい。この実施形態では、第2のモード径に関連する耐摩耗性粒子のメジアン径(D50)は、第2のモード径のそれの2倍よりも大きい。
【0080】
複数の耐摩耗性粒子12、14は、10μm~1.2mmの範囲内の粒径を有してもよく、この実施形態では、10μm~420μmの範囲内の粒径を有する。しかしながら、他の実施形態は、これらの範囲外の粒径を有し得る。粒径は、それらが耐摩耗性の層アプリケータートーチのノズルを通過できるように選択することができる。
【0081】
図4は、耐摩耗性の層の別の一実施形態における複数の耐摩耗性粒子の粒径と、耐摩耗性外層を形成するために付着させた粉末のヒストグラムを示す。複数の耐摩耗性粒子は、多峰性の粒径分布を有する。この実施形態では、ヒストグラムは複数の接続されていないピークを含む、すなわち、分布は非連続的である。図5は、耐摩耗性の層および粉末の他の実施形態の複数の耐摩耗性要素の粒径のヒストグラムを示し、多峰性分布は連続的である。図6は、耐摩耗性の層および粉末のさらに別の一実施形態に関する複数の耐摩耗性粒子の多峰性ヒストグラムを示す。図6のヒストグラムには、異なる平均粒径a、b、c、dを有する4つの重複しないピークがあり、耐摩耗性粒子の粒径の範囲はa1~a2、b1~b2、c1~c2、d1~d2である。図6に示すよりも多いまたは少ないピークがあってもよい。粒径の寸法には次の関係がある。
a<b<c<d<……
b1/a2>1.1;c1/b2>1.1;d1/c2>1.1……
b/a>1.5;c/b>1.5;d/c>1.5……………
【0082】
上記の関係の値は異なってもよい。複数の耐摩耗性粒子は、タングステンカーバイド、ジタングステンカーバイド(WC)とタングステンカーバイド(WC)の共融混合物(「鋳造タングステンカーバイド」)、天然ダイヤモンド、カプセル化されたダイヤモンドグリット、粉砕した多結晶ダイヤモンドコンパクト、炭化物(例えば、タングステンカーバイド)、タングステン、アルミナ、窒化物(例えば、窒化ケイ素)、遷移金属の酸化物、球状鋳造炭化物、角形鋳造炭化物、固められたタングステンカーバイドのペレット、固められたタングステンカーバイド、鋳造タングステンカーバイド、およびモノタングステンカーバイドのうちの少なくとも1つを含む。複数の耐摩耗性粒子のそれぞれの硬度は、1000HV0.1よりも大きくすることができる。
【0083】
層10は、35%~75%の複数の耐摩耗性粒子と、25重量%~65重量%の耐摩耗性層結合剤とを含む。層10は、ニッケル含有ろう付け粒子の形態の40重量%の耐摩耗性結合剤と、60重量%の丸形鋳造タングステンカーバイドとを含む。耐摩耗性層結合剤は、靭性に寄与し、耐摩耗性粒子を共に保持するが、簡単に摩耗除去される。耐摩耗性粒子は耐摩耗性を提供するが、それだけでは脆すぎて衝撃荷重に耐えることができない。
【0084】
粒径および粒径分布は、例えば、ふるい分析、顕微鏡計数、コンピュータ顕微鏡写真分析、または概して広く任意の適切な方法を使用して決定され得る。粒径の1つの尺度は、粒子が通過するメッシュと粒子が通過しない別のメッシュを指定することである。粒径は、例えば、ASTMインターナショナル(ASTM)準拠のふるい、または一般的に異なるメッシュサイズを有する任意の適切な複数のふるいを使用して決定され得る。メッシュサイズの異なる2つのふるいを積み重ね、粒子を下側のふるいよりも大きな穴のある上側のふるいに入れる。積み重ねたものを攪拌した後、下側のふるいに保持された粒子は、第1のふるいを通過できるが、第2のふるいは通過できない範囲のサイズを有することが分かる。保持は、メッシュサイズの前に「+」記号を追加することで表される。通過は、メッシュサイズの前に「-」記号を追加することで表される。例えば、サイズ-40/+60のATSMメッシュの粒子は、ASTM No.40ふるいを通過するが、ASTM No.60ふるいを通過できない。2つを超えるふるいの積み重ねは、例えば、粒子サイズ分布を決定するために使用することができる。
【0085】
耐摩耗性の層の一実施形態を形成するための粉末の一実施形態は、鋳造タングステンカーバイドの形態の20重量%で-40/60 ATSM標準メッシュの耐摩耗性粒子と、鋳造タングステンカーバイドの形態の40重量%で-100/200 ASTM標準メッシュの耐摩耗性粒子と、したがって40重量%の層結合剤とを含むが、これらのパーセンテージは変わってもよい。粉末から形成された耐摩耗性の層は同じ組成を有する。他の炭化物が使用されてもよい。
【0086】
耐摩耗性の層の一実施形態を形成するための粉末の別の一実施形態は、30重量%の鉄結合剤と、70重量%の耐摩耗性粒子とを含む。より具体的には、粉末は、20重量%で-16/20 ASTM標準メッシュの超高密度に固められたタングステンカーバイドのペレットと、10重量%で-30/50 ASTM標準メッシュの超高密度に固められたタングステンカーバイドのペレットと、40重量%で-100/200 ASTM標準メッシュの丸形鋳造タングステンカーバイドとを含む。粉末から形成された耐摩耗性の層は同じ組成を有する。
【0087】
耐摩耗性の層の一実施形態を形成するための粉末の一実施形態は、30重量%~50重量%の耐摩耗性層結合剤と、10重量%~30重量%の第1粒径の鋳造タングステン粉末と、30重量%~50重量%の第2粒径のタングステンカーバイド粉末とを含む。第1の粒径は、この実施形態では-40/60 ASTM標準メッシュであり、第2の粒径は、この実施形態では-100/325 ASTM標準メッシュである。粉末から形成された耐摩耗性の層は同じ組成を有する。
【0088】
耐摩耗性層結合剤は、ろう付け金属の形態の金属結合材料を含み、金属結合材料は、金属結合材料のモノリシックマトリックスを形成するために溶融される。金属結合材料は、例えば、任意の適切なろう付け金属を含むことができる複数の金属粒子を含み、その例には、銅、スズ、銀、コバルト、ニッケル、ホウ素、カドミウム、マンガン、亜鉛、鉄、クロム、ビスマス、シリコン、またはそれらの合金が含まれる。金属粒子はまた、溶融粉末の固化時に形成される合金を硬化させるクロムを含み得る。耐摩耗性層結合剤はまた、フラックスおよび堆積特性を助長するために、シリコンおよび/またはホウ素粉末を含み得る。本実施形態では、複数の金属粒子は、ニッケル、クロム、ホウ素、およびシリコンを含む。ニッケルは88重量%~95重量%を構成することができ、クロムは0%~12%を構成することができ、ホウ素は0%~1%を構成することができ、シリコンは0%~1%を構成することができる。耐摩耗性の層の硬度は、800HV0.1未満とすることができる。
【0089】
混合物を形成するために、複数の耐摩耗性粒子タイプ、耐摩耗性層結合剤、および使用される他の粒子を、工業用ブレードミキサーで混合するか、タンブルミキサーでタンブルするか、または概して任意の適切な混合法を使用して混合することができる。混合物は、ドライ(すなわち、粉末)またはウェット(すなわち、ペースト)とすることができる。
【0090】
図7は、複数のステップを含む、基板50上に耐摩耗性の層60を形成するための方法30の一実施形態のフローチャートを示し、以下で説明する。ステップ1(符号32)は、複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18を基板60に付着させることを含む。複数の耐摩耗性粒子の耐摩耗性粒子の粒径分布は、複数のモード径を有し、複数のモード径のうちの第1のモード径に関連する耐摩耗性粒子の数Nは、複数のモード径のうちの第2のモード径に関連する耐摩耗性粒子の数Nよりも多く、第2のモード径は第1のモード径よりも大きい。ステップ2(符号34)は、耐摩耗性層結合剤を基板に付着させることを含む。ステップ3(符号36)は、基板50に付着させた複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18と、基板に付着させた耐摩耗性層結合剤13とを加熱することを含む。
【0091】
図8は、方法30の実施形態に従って、複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18および耐摩耗性層結合剤13を含む粉末を基板50に付着させるために使用できる酸素燃料トーチ52のヘッドの一例を示す。基板50の表面66は、任意選択で、研磨機を適用することによって清浄化される。あるいはまた、化学清浄化剤、または概して任意の適切な清浄化プロセスを使用してもよい。基板50は、鋼または一般的に方法30の実施形態が適切である任意の基板とすることができる。この例では、気体燃料はアセチレンである。オキシアセチレントーチ52のポート54に導入されたアセチレンは、導管51を下って移動し、気体導管開口部53でトーチヘッド52を出て、そこでポート64に導入された酸素と燃焼して、オキシアセチレン火炎62の形態の火炎を形成する。概して任意の適切な燃料を使用することができ、その例には、プロパン、水素、およびメタンが含まれる。代替の実施形態では、酸素がポート54を介して導入されてもよく、アセチレンがポート64を介して導入されてもよい。次いで、任意選択で火炎62を基板50にあてて、それを予熱する。次に、粉末供給ポート56および58のいずれか1つを介して導管51内のアセチレンガスの流れに粉末を導入することができる。あるいはまた、ポート56を介して複数の耐摩耗性粒子を導入してもよく、ポート58を介して耐摩耗性層結合剤を導入してもよい。これは、耐摩耗性の層の品質を低下させる可能性のある、粉末内の分離に関する潜在的または実際の問題を克服することができる。粉末は、アセチレンによって導管51に沿って基板50に向けられた火炎62内に運ばれ、複数の耐摩耗性粒子12、14、16、17および耐摩耗性層結合剤13が、基板50に付着させてグリーン層、またはいくつかの代替実施形態では耐摩耗性の層60を形成するときに基板50に接着するように、複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18および耐摩耗性層結合剤を基板の接着閾値温度以上に加熱する。一般的に、基板接着温度は、粉末の組成によって異なる。基板接着温度は、例えば、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃、および1000℃のうちの少なくとも1つよりも高くすることができる。その後、粉末の流れを止めてもよい。次に、火炎62をグリーン層に(この実施形態においてであり、必ずしもすべての実施形態においてではないが)アセチレン流中のさらなる粉末と共に適用して、グリーン層を耐摩耗性層結合剤の溶融温度より高い温度に加熱する。その結果、耐摩耗性層結合剤は溶融して、粉末溶融物の形態の流体を形成する。流体およびその中の粒子は、基板50の表面上を流れる。その後、火炎が基板50から除去される。流体は、冷却時に固化して、耐摩耗性層結合剤13内に分布し、耐摩耗性層結合剤13によって境界付けられた複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18を含む耐摩耗性の層60を形成する。拡散により、耐摩耗性の層60は、基板50の表面66に原子的に結合される。耐摩耗性の層60は、代替の一実施形態では、異なる方法で(例えば、化学的に)結合されてもよい。
【0092】
本方法の他の実施形態を使用して、耐摩耗性の層60を基板上に形成してもよい。例えば、プラズマトランスファーアーク(PTA)表面処理プロセスを使用することができる。耐摩耗性の層102を形成するために使用され得るPTAトーチ68の例は、図9に示される。ガス(「プラズマガス」)が、プラズマガス入口ポート90を介して、PTAトーチ68のノズル76内の電極チャンバ88に注入される。電極チャンバ88内には、タングステン電極の形態の電極78が配置される。プラズマガスは、電極78の先端92を通過して流れ、そこで電流がプラズマガスを通って流れて、ノズル出口94を介して出るプラズマ流70を形成する。プラズマ流70は、この例では摂氏15,000度~25,000度の間の温度を有するが、必ずしもすべての例においてではない。プラズマ流70は、基板72の表面74に向けられる。電流は、基板72と電極78に電位差75を印加することによって生成される。追加的または代替的に、電極78とノズル76の間に別の電位差73が印加されてもよい。電位差73、75は電源によって生成される。電位差73、75のうちの一方が印加されなくてもよい。例えば、必ずしもすべての実施形態ではないがいくつかの実施形態では、狭窄されたプラズマ流70の確立後に消失され得るパイロットアーク79を形成するために電位差75が使用されてもよい。複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤を含む混合物の形態の粉末71は、基板72に向けられたプラズマ流70に供給され得る。一般的に、本明細書に開示されている任意の適切な粉末が使用され得る。粉末71は、例えば、アルゴンの形態の粉末キャリアガスの流れと共に、粉末フィーダ82によってノズル76のポート84に導入または供給され、ノズル出口94に隣接する粉末出口114へと通路に沿って連通する。粉末出口114は、形成時に粉末71をプラズマ流70に導入するために配置される。プラズマ流70にそのように導入された粉末71は、プラズマ流70によって加熱され、基板72の表面74に送出されて、耐摩耗性の層102を形成する。ノズル76はまた、形成時にプラズマ流70の周りに任意選択任意選択で遮蔽ガスを送達するように配置された任意の遮蔽ガス入口98および遮蔽ガス出口100を有する。遮蔽ガスは、表面74、耐摩耗性の層102、またはトーチ73を酸化する可能性のある酸素に作動ゾーンが曝されるのを防ぐことができる。
【0093】
ノズル76は、一般的に、ノズル76に形成された液体チャンバ80を通って流れる水(あるいは空気または任意の一般的に適切な液体)の形態の流体によって流体冷却されるが、必ずしもそうである必要はない。
【0094】
図10は、耐摩耗性の層102を形成するために使用され得るPTAトーチ110の別の一例を示す。PTAトーチ110は、図9のPTAトーチ68と同様の形態および機能であり、同様または同一の形態および/または機能の部品は同様に番号付けされている。しかしながら、図10のPTAトーチ110は、電力71がそのように形成されたプラズマ流70に導入されないように構成される。粉末71は、例えば、アルゴンの形態の粉末キャリアガスの流れと共に、粉末フィーダ82によってノズル76のポート112に導入または供給され、そのように形成されたときに粉末71を表面74上でプラズマ流70の外側に堆積させるために配置された粉末出口114へと通路に沿って連通する。粉末出口114は、粉末の供給源である。粉末は、他の実施形態では、トーチ110から分離した別の供給源によって、または概して任意の適切な供給源によって加えられてもよい。分離した供給源は、PTAトーチ110にストラップで固定されるか、または別の方法で固定されることができるが、必ずしもそうである必要はない。この実施形態においてであり、必ずしもすべての実施形態においてではないが、粉末出口114は、分離構造(この実施形態では分離壁116)の形態のセパレータによってプラズマ流ノズル出口94から分離される。使用中、PTAトーチ110は、粉末出口114がノズル出口94に続くように表面を横切って移動される。その結果、粉末71は、表面74のプラズマ溶融部分の上に堆積して、耐摩耗性の層を形成する。これは、粉末が曝される温度を低下させることができ、そうでなければプラズマ流からの熱によって劣化する可能性がある粉末の使用を可能にし得る。複数の耐摩耗性粒子および耐摩耗性層結合剤のための分離した出口があってもよい。
【0095】
プラズマ流70は、耐摩耗性層結合剤および複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18を、耐摩耗性層結合剤軟化温度および耐摩耗性層結合剤溶融温度のうちの少なくとも1つよりも高い温度に加熱する。耐摩耗性層結合剤は、冷却および硬化して、複数の耐摩耗性粒子12、14を結合する。
【0096】
上述のPTA表面処理プロセスの1つによる粉末71の付着の前に、基板72の表面74は、研磨機の適用により任意選択で清浄化されてもよい。あるいはまた、化学清浄化剤、または概して任意の適切な清浄化プロセスを使用してもよい。基板72は、鋼または一般的に方法30が適切である任意の基板とすることができる。表面は、PTA表面処理プロセスの前に、抵抗ヒーターまたは誘導ヒーターによって摂氏90~650度に予熱され得る。例えば、炭素鋼および/または空気焼入れ鋼は、PTA表面処理後に徐冷され得る。
【0097】
別の一実施形態では、複数の耐摩耗性粒子12、14、16、18および耐摩耗性層結合剤を、基板72に向けられたプラズマ流に別々に供給することができる。例えば、耐摩耗性層結合剤をポート84に、複数の耐摩耗性粒子をポート99に導入することができる。
【0098】
耐摩耗性の層は、例えば、高速酸素燃料堆積(HVOF)を使用して形成することができる。HVOFトーチ(そうでなければ、HVOFガンとしても知られる)210の一例が図11に示されている。トーチ210は、混合チャンバ214と、混合チャンバと連通している燃焼チャンバ216とを有する本体212を有する。トーチ210は、複数の混合チャンバポート220、222、および224を有する。トーチ210は、燃焼チャンバ216に通じる高速ジェット通路218を有する。酸素ガス、オキシアセチレン(または代替的に、水素、メタン、プロパン、プロピレン、天然ガス、灯油、概して任意の適切な燃料、またはこれらの混合物)の形態の燃料、および粉末が、ポート220、222、および224を介して混合チャンバに導入され、混合物を形成する。粉末は、燃焼チャンバ216に入り、そこで酸素と燃料が燃焼して、粉末を高速ジェット通路218に沿って運ぶ高速火炎の形態の高速ガスジェットを形成する。この実施形態では、高速火炎の速度は1000m/秒よりも大きい。高速ジェット通路の遠位端には出口があり、そこから高速ガスジェットおよびその中の粉末がトーチ210を出る。高速ガスジェットは、上に粉末が付着されるす基板に向けられ、耐摩耗性の層が形成される。
【0099】
レーザークラッディングは、耐摩耗性の層を堆積させる別の方法である。レーザークラッディングは熱源として高エネルギーレーザービームを使用する。処理中、粉末はレーザービームの焦点に供給され、部分的または完全に溶融してから、基板との冶金学的結合を備えた耐摩耗性の層として固化する。材料は、粉末、コールドワイヤー、およびホットワイヤーを含み得る。粉末は、処理前に基板上に事前に配置され得る。粉末は、レーザービームの軸に沿って供給されるレーザーヘッドに取り付けられた粉末供給ラインによって供給され得る。同軸粉末供給は、堆積の寸法精度を支援することができ、高品質の耐摩耗性の層を生成することができる。
【0100】
粉末は、フレームスプレー、プラズマトランスファーアーク(PTA)、複合ロッド、チューブロッド、およびロープを含む、概して任意の適切な技術によって堆積させることができる。耐摩耗性層結合剤は金属結合材料を含み、金属結合材料は溶融されて金属結合材料のモノリシックマトリックスを形成する。
【0101】
実施例
耐摩耗性の層の一例は、多峰性の耐摩耗性粒子の粒径分布を有する複数の耐摩耗性粒子を含み、小さい粒径の耐摩耗性粒子は、耐摩耗性粒子12、14、16、18の総重量に基づいて、50重量パーセントを超える。
【0102】
表1は、3つの耐摩耗性の層サンプルの組成を示している。3つの耐摩耗性の層の前駆体を同様に調製し、火炎スプレーを使用して付着させた。組成A中の複数の耐摩耗性粒子の粒径ヒストグラムは、単一モード径であり、すべて単一の範囲内にある。図12は、組成Aを有する耐摩耗性の層のパノラマ走査電子顕微鏡画像を示す。組成Bは、大部分が大きな粒径の耐摩耗性粒子であり、少数が小さな粒径の耐摩耗性粒子である。図13は、組成Bを有する耐摩耗性の層のパノラマ走査電子顕微鏡画像を示す。組成Cは、大部分が小さな粒径の耐摩耗性粒子を有し、少数が大きな粒径の耐摩耗性粒子を有する。サンプルCの複数の耐摩耗性粒子の粒径分布を表2に示す。大きな粒径の粒子のメディアン(D50)は、小さな粒径の粒子のメジアンよりも少なくとも2倍大きい。表2の分布は二峰性であり、大きな粒子は少数である。図14は、組成Cを有する耐摩耗性の層のパノラマ走査電子顕微鏡画像を示す。耐摩耗性粒子の体積分率は、耐摩耗性の層のSEM画像を処理するための画像処理ソフトウェアによって決定された。
【0103】
断面SEM画像が、図15(組成A)、図16(組成B)、および図17(組成C)に示されている。
【0104】
組成Cは、最低の摩耗損失および浸食体積損失を有し、これは、BおよびCのいずれか1つよりも優れている可能性があることを示す。サンプルAおよびBは、より少ない単位体積当たりの耐摩耗粒子(それぞれ30体積%および18体積%)およびより小さな平均自由工程を有する。
【表1】
【0105】
平均自由行程は、炭化物粒子間の耐摩耗性層結合剤の平均厚さの尺度である。平均自由行程λは、方程式λ=(1-f)/NLで与えられる。ここで、fはSEMソフトウェアによって計算される炭化物粒子の体積分率であり、NLはSEM写真から計算され得るランダムなライン上で交差する単位長さあたりの炭化物粒子の数である。
【0106】
平均自由行程が浸食性または摩耗性粒子よりも小さい場合、耐摩耗性層結合剤はほとんど保護され、耐摩耗性層結合剤の優先的除去は主な摩耗機構ではない。したがって、平均自由行程を小さくすることが望ましい可能性がある。より大きな粒子は、耐摩耗性層結合剤内の保持時間が長くなり、より小さい粒子を摩耗から保護する。したがって、両方を協調させることが望ましい。
【表2】
【0107】
サンプルの表面硬化の耐摩耗性をテストするために、ASTM G65手順Aのパラメーターと設定(6000回転で130N)に従って摩耗テストを実施した。
【0108】
堆積物のスラリー耐浸食性は、アブレーシブウォータージェット(AWJ)を使用して決定された。平均粒径が108μmのバートンガーネットHPX#220粒子の流れを小径ウォータージェットに導入し、ウォータージェットの運動量が部分的に砥粒に伝達されるようにした。ガーネット粒子は高速に加速され、その後、浸食試験のためにワークピースに向けられる。小さな衝突角度(30度未満)では、浸食されたサンプルの材料除去は主に切削またはプラウイングによるものであり、軟質金属合金が優先的に除去され、主な耐摩耗性粒子が表面に露出したままになる。大きな衝突角度では、衝撃力が材料の除去を支配し、多くの耐摩耗性粒子の破壊を引き起こす。
【0109】
図18図19、および図20は、3つの異なる粉末であるフレームスプレートーチ出口ノズルの断面を示す。小さい粒子と大きい粒子の組み合わせを含む粉末は、大きい粒子のみを含む粉末よりもノズルをブロックする可能性が低くなる。したがって、組み合わされた粉末は、より均一な流れをもたらすことができ、耐摩耗性の層におけるより大きな充填密度をもたらすことができる。
【0110】
利用分野
基板は、一般的に、任意の適切な基板とすることができ、その例には、鉱業または他の産業で使用されるドリルビット、他のダウンホール機器、掘削機用バケットの歯、チゼル、およびブレードが含まれるが、これらに限定されない。
【0111】
粉末は、任意の適切な基板上に耐摩耗性の層を形成するために使用することができる。次に、いくつかの提案された用途についてさらに説明するが、耐摩耗性の層には多くの用途があることが理解される。
【0112】
スタビライザーは、石油およびガスの探査および生産に使用される。それらの機能は、ドリルビットに安定性を提供し、穴の寸法制御を維持することである。スタビライザーの大部分は、穴または鋼製ケーシングの壁に直接接触している。ドリルストリングの回転とプログレッシブドリリングにより、保護粒子と表面硬化は摩耗しやすくなり、最終的に修理、寿命末期、または寸法的に許容できない直径になる可能性がある。本明細書に記載される耐摩耗性の層が適用されたスタビライザーは、これらの問題を低減または排除することができる。
【0113】
回転バイコーンおよびトリコーンドリルビットは、親鋼から機械加工される突起または「歯」を用いて製造される。本明細書に記載される耐摩耗性の層が適用されたドリルビットは、寿命を延ばし、「歯」の摩耗を減少させることができ、それにより、掘削性能および生産性を向上させることができる。
【0114】
岩石の機械的掘削および除去中、掘削機の歯およびバケットに著しい摩耗が見られる場合がある。本明細書に記載された耐摩耗性の層が適用された掘削機の歯およびバケットは、寿命を延ばすことができ、その結果、交換費用を削減することができる。
【0115】
多結晶ダイヤモンドドリルビットの外径は、滑り摩耗を受ける。本明細書に記載された耐摩耗性の層が適用された多結晶ドリルビットは、耐用年数を長くすることができる。
【0116】
多結晶ダイヤモンドドリルビットの寿命の間、切削構造を支持するビットの本体およびブレードは、寿命を制限する摩耗を受ける可能性がある。本明細書に記載される耐摩耗性の層が適用された本体およびブレードは、浸食摩耗を低減することができ、それにより工具寿命を延ばし、コストを削減することができる。
【0117】
ピックは、岩石の機械的掘削および路面の表面ドレッシング中に使用される。ピックは、一般的に2ピース:本体とインサートで製造される。本体は、従来は鋼製であり、インサートは、一般的に超硬合金である。状況によっては、ダイヤモンド含有インサートが使用される。本体の寿命は通常、過度の摩耗や「洗浄」によって制限される。本明細書に記載されるような耐摩耗性の層を有し、インサートに近接する本体は、寿命を延ばし、摩耗したピックを交換するために必要なダウンタイムを短縮することができる。
【0118】
破砕機の歯は、砂を含む油からの油の機械的な抽出を含む様々な用途で使用され得る。粉砕機の歯は回転ドラムの周りに配置され、岩、砂、および油と機械的に相互作用する可能性がある。摩耗は大きい可能性がある。本明細書に記載されるような耐摩耗性の層が適用された破砕機の歯は、寿命が延び得る。
【0119】
ガスおよび石油掘削に関連して、泥駆動モータはビットの回転およびトルクを駆動する。モータには、対向するベアリングまたは転動する粒子と滑り接触しているラジアルベアリングとアキシャルベアリングの両方が含まれ得る。本明細書に記載の耐摩耗性の層が適用されたベアリングは、ベアリングの寿命を大幅に延ばし、ベアリングの長さを短縮し、より多くのベアリングの組に対して、石油とガスの掘削時のビット重量と生産性が向上する能力を提供することができる。
【0120】
実施形態が説明されたので、いくつかの実施形態は、以下の利点のいくつかを有することが理解されるであろう。
・炭化物が単峰性の粒径分布を持つ従来の組成物と比較して、実施形態は、耐摩耗性の層における耐摩耗性粒子の充填密度と体積分率を改善し、それにより平均自由行程が減少し、亀裂に対する耐性を犠牲にすることなく、摩耗と浸食に対する耐性が増加する。
・耐摩耗性の層組成物は、固い粒子の質量密度がより少ない従来技術の耐摩耗コーティング層よりも優れた性能を得ることができ、より高い耐亀裂性を有することができる。
【0121】
本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、記載された実施形態に変更および/または修正を加えることができる。丸形耐摩耗性要素は、球状の耐摩耗性要素であってもよい。例えば、上記に開示された基板は鋼であるが、実施形態は、他の基板材料、例えば、アルミニウム、超硬合金、または概して任意の適切な基板材料などの別の金属上で使用されてもよいことが理解される。粉末は、基板上に注がれるか、さもなければ付着させてもよい。粉末は、基板およびその上の粉末を炉内で加熱することによって溶融してもよい。耐摩耗性の層は、コーティングまたは表面硬化であってもよい。記載された耐摩耗性の層は耐摩耗性外層であるが、それらは外層でなくてもよく、その上に追加の層があってもよい。したがって、本実施形態は、あらゆる点で例示的であり、限定的ではないと見なされるべきである。本明細書で開示される構成への言及は、すべての実施形態がその構成を含まなければならないことを意味するものではない。
【0122】
本明細書に記載されている先行技術は、存在する場合でも、先行技術が法域の共通の一般知識の一部を形成していることを認めるものとして解釈されるべきではない。
【0123】
以下の特許請求の範囲および本発明の前述の説明では、文脈が明白な言語または必要な含意のために他に必要とする場合を除いて、単語「含む(comprise)」または「含む(comprises)」または「含む(comprising)」などの変形が包括的意味で使用され、つまり、述べられた構成の存在を特定するが、本発明の様々な実施形態におけるさらなる構成の存在または追加を排除するものではない。
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