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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】ガラスセラミックおよびガラス
(51)【国際特許分類】
   C03C 10/04 20060101AFI20240131BHJP
【FI】
C03C10/04
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020522710
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-01-07
(86)【国際出願番号】 US2018057009
(87)【国際公開番号】W WO2019083937
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-25
(31)【優先権主張番号】62/575,763
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】15/840,040
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】デイネカ,マシュー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】コール,ジェシー
【審査官】酒井 英夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-241035(JP,A)
【文献】米国特許第03293052(US,A)
【文献】特開2007-238353(JP,A)
【文献】米国特許第03582370(US,A)
【文献】特開昭63-242946(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C03C 1/00-14/00,
INTERGLAD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラスセラミックにおいて、
ケイ酸塩ガラス、および
前記ケイ酸塩ガラス内に均一に分布した結晶であって、非化学量論的タングステンおよび/またはモリブデン亜酸化物であって、タングステンおよび/またはモリブデンブロンズであるものを含み、ドーパント陽イオンが挿入された、結晶、
を含み、
前記ドーパント陽イオンが、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Ce、または、Auを含み、
400nmから700nmの範囲の波長において、1%/mm以上の透過率を有し、370nm以下の波長を有する光に対して1%/mm未満の透過率を有する、ガラスセラミック。
【請求項2】
前記ガラスセラミックが、400nmから700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り5%/mm以上の透過率を有する、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項3】
前記結晶が棒状形態を有する、請求項1記載のガラスセラミック。
【請求項4】
請求項1に記載のガラスセラミックを形成する方法であって、
(1)束縛アルカリ、(2)SiO、および(3)タングステンおよび/またはモリブデンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程、
前記ガラス溶融物をガラスに固化させる工程、および
前記ガラス内に結晶相を析出させて、前記ガラスセラミックを形成する工程、
を有してなる方法。
【請求項5】
前記ガラスが、単一の均一相である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記結晶相が、タングステンおよび/またはモリブデンを含む、請求項4または5記載の方法。
【請求項7】
前記束縛アルカリが、(A)長石、(B)霞石、(C)ホウ酸ナトリウム、(D)スポジュメン、(E)曹長石、(F)カリ長石、(G)アルカリアルミノケイ酸塩、(H)アルカリケイ酸塩、および/または(I)(I-i)アルミナ、(I-ii)ボリアおよび/または(I-iii)シリカに結合したアルカリを含む、請求項4から6いずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は、2017年10月23日に出願された米国仮特許出願第62/575763号に優先権を主張するものであり、2017年12月13日に出願された米国特許出願第15/840040号の一部継続出願であり、その両方の出願の内容がここに全て引用される。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、ガラスおよび/またはガラスセラミックを含む物品に関し、より詳しくは、そのような物品を形成するための組成物および方法に関する。
【背景技術】
【0003】
金属紫外線(「UV」)および近赤外線(「NIR」)吸収性アルカリ含有ケイ酸塩ガラスセラミックは、そのガラスセラミックに入射する光の波長に依存する光学的性質を示す部類のガラスセラミックである。従来のUV/IR遮断ガラス(可視透過率が低いか高い)は、網状構造と結合する特定の陽イオン種(例えば、NIR波長を吸収するためのFe2+およびUV波長を吸収するためのFe23+、並びに可視透過率を変えるためのCo、Ni、およびSeなどの他のドーパント)を導入することによって、形成される。昔から、これらのガラスセラミックは、成分を一緒に溶融してガラスを形成し、その後、ガラスセラミックを形成するための形成後熱処理によるサブミクロン析出物(precipitates)のその場形成が行われることによって製造された。これらのサブミクロン析出物(例えば、タングステン酸塩およびモリブデン酸塩含有結晶)は、光のある波長域を吸収し、そのガラスセラミックに光学的性質を与える。そのような従来のガラスセラミックは、透明形態、並びに乳白色形態の両方で製造することができた。
【0004】
従来のタングステンおよびモリブデン・アルカリ含有ケイ酸塩ガラスは、可視波長で透明なガラスおよびガラスセラミックを製造するために、特定の狭い組成範囲に束縛されると考えられていた。この考えられた組成範囲は、過アルカリガラス内の酸化タングステンの認識された溶解限度に基づいていた。例えば、酸化タングステンは、従来の様式でバッチ配合され溶融されると、バッチ中のアルカリ金属酸化物と反応して、溶融炉に入れられた直後の溶融の初期段階中に低温で緻密なタングステン酸アルカリ液体を形成し得る(例えば、その反応は約500℃で生じる)。この相は、高密度であるために、坩堝の底で急速に偏析する。ケイ酸塩成分は、著しい高温(例えば、約1000℃を超える)では、溶融し始め、その成分の密度がより低いので、タングステン酸アルカリ液体の上にあるままである。それらの成分の密度の差により、異なる液体の層化が生じ、これにより、当業者にとって、互いに非混和性の外観が与えられる。この効果は、特に、RO(例えば、LiO、NaO、KO、RbO、CsO)からAlを引いた値が0モル%以上であるときに観察された。溶融温度で現れた明白な液体非混和性は、冷めたときに、タングステンの豊富な相の偏析と結晶化をもたらし、これは、乳白色の不透明結晶として現れた。この問題は、モリブデン含有溶融物にも存在した。
【0005】
当業者は、ケイ酸塩の豊富な相とは別のタングステンおよび/またはモリブデンの豊富な相を観察し、ケイ酸塩の豊富な相内のタングステンおよび/またはモリブデンの溶解限度(例えば、約2.5モル%)を認識した。認識された溶解限度は、ガラスが、酸化タングステンまたはモリブデンで過飽和になるのを常に妨げ、それによって、どちらの成分も、これらの元素を含む結晶相を有するガラスセラミックを製造するための形成後熱処理により、制御可能に析出するが妨げられた。それゆえ、認識された溶解度は、その後の熱処理により、タングステンおよび/またはモリブデン含有波長依存性サブミクロン結晶の形成を可能にするのに十分な量の溶解タングステンおよび/またはモリブデンを達成するガラスセラミック組成物の開発を阻んだ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
これらの制限に鑑みて、近赤外線および紫外線遮断の改善(例えば、タングステンおよびモリブデンのより高い溶解度により)を促進する新たな組成物、およびその製造方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
ここに記載されたような「束縛(bound)」アルカリの使用により、均一な単一相WまたはMo含有過アルカリ溶融物が得られる可能性があることが見出された。束縛アルカリの例としては、長石、霞石、ホウ砂、スポジュメン、他の曹長石またはカリ長石、アルカリアルミノケイ酸塩および/またはアルカリと1つ以上のアルミニウムおよび/またはケイ素原子を含有する他の自然発生のおよび人工的に生成された鉱物が挙げられるであろう。アルカリを束縛形態で導入することにより、そのアルカリは、溶融物中に存在するWまたはMoと反応して、緻密なタングステン酸アルカリおよび/またはモリブデン酸アルカリ液体を形成しないであろう。さらに、バッチ材料中のこの変更により、どのようなタングステン酸アルカリおよび/またはモリブデン酸アルカリの第二相も形成せずに、強過アルカリ組成物(例えば、RO-Al=約2.0モル%以上)の溶融が可能になるであろう。これにより、溶融温度および混合方法も変えることができ、それでも、単一相均一ガラスが製造される。
【0008】
本開示の態様によれば、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラス相および結晶相を含み、その結晶相は、空孔がドーパント陽イオンに占められている、「ブロンズ」タイプの固体欠陥構造を形成する、タングステンおよび/またはモリブデン、あるいはチタンの非化学量論的亜酸化物を含む。
【0009】
いくつかの実施の形態において、ガラスセラミックは、非晶相および式MWOおよび/またはMMoOの複数の析出物を含む結晶相を含み、式中、0<x<1であり、Mはドーパント陽イオンである。そのような実施の形態のいくつかにおいて、その析出物は、電子顕微鏡法で測定して、約1nmから約200nmの長さを有する。その結晶相の析出物は、このガラスセラミック内に実質的に均一に分布していることがある。
【0010】
さらに、ガラスセラミックは、非晶相および式MTiOの複数の析出物を含む結晶相を含み、式中、0<x<1であり、Mはドーパント陽イオンである。そのような実施の形態のいくつかにおいて、その析出物は、電子顕微鏡法で測定して、約1nmから約200nm、または約1nmから約300nm、または約1nmから約500nmの長さを有する。その結晶相の析出物は、このガラスセラミック内に実質的に均一に分布していることがある。
【0011】
いくつかの実施の形態において、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラスと、そのケイ酸塩含有ガラス内に均一に分布したドーパント陽イオンが挿入された非化学量論的タングステンおよび/またはモリブデン亜酸化物の結晶とを含む。このガラスセラミックは、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約5%毎mm以上の透過率を有することがある。ドーパント陽イオンは、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、U、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Bi、および/またはCeであってよい。そのような実施の形態のいくつかにおいて、結晶の少なくともいくらかは、そのガラスセラミックの外面から約10μm超の深さにある。その結晶は、棒状形態を有することがある。
【0012】
いくつかの実施の形態において、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラス相と、正孔がドーパント陽イオンで占められた固体欠陥構造を形成する、タングステンおよび/またはモリブデンの亜酸化物を含む結晶相とを含む。そのガラスセラミック中の結晶相の体積分率は、約0.001%から約20%であることがある。
【0013】
他の実施の形態において、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラスと、そのケイ酸塩含有ガラス内に均一に分布したドーパント陽イオンが挿入された非化学量論的亜酸化チタンの結晶;および/またはケイ酸塩含有ガラス相と、正孔がドーパント陽イオンに占められた固体欠陥構造を形成するチタンの亜酸化物を含む結晶相とを含む。
【0014】
いくつかの実施の形態において、物品は、少なくとも1つの非晶相および1つの結晶相を含み、その物品は、バッチ成分として、約1モル%から約95モル%のSiOを含む。その結晶相は、(i)W、(ii)Mo、(iii)Vとアルカリ金属陽イオン、および(iv)Tiとアルカリ金属陽イオン:の内の少なくとも1つの、この結晶相の約0.1モル%から約100モル%の酸化物を含む。その物品は、CdおよびSeを実質的に含まないことがある。
【0015】
さらに他の実施の形態において、ガラスセラミックのガラス前駆体などのガラスは、バッチ成分中に、約25モル%から約99モル%のSiO、約0モル%から約50モル%のAl、約0.35モル%から約30モル%のWO+MoO、および約0.1モル%から約50モル%のROを含み、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの1つ以上であり、RO-Alは、約-35モル%から約7モル%である。そのような実施の形態のいくつかにおいて、(i)ROは、約0.02モル%から約50モル%の範囲内にある、および(ii)SnOは、約0.01モル%から約5モル%である、の少なくとも一方であり、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上である。そのような実施の形態のいくつかにおいて、WOが約1モル%から約30モル%である場合、ひいては、そのガラスは、約0.9モル%以下のFeを含むか、またはひいては、SiOは約60モル%から約99モル%である。WOが約0.35モル%から約1モル%である場合、ひいては、そのガラスは、約0.01モル%から約5.0モル%のSnOを含むことがある。MoOが約1モル%から約30モル%である場合、ひいては、SiOは、約61モル%から約99モル%に及ぶことがある、またはひいては、Feは、約0.4モル%以下であることがあり、ROはROより多い。MoOが約0.9モル%から約30モル%であり、SiOが、約30モル%から約99モル%である場合、ひいては、そのガラスは、約0.01モル%から約5モル%のSnOをさらに含むことがある。
【0016】
いくつかの実施の形態において、ガラスセラミックを形成する方法は、(1)束縛アルカリ、(2)シリカ、および(3)タングステンおよび/またはモリブデンを一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程;そのガラス溶融物をガラスに固化させる工程;およびそのガラス内に結晶相を析出させて、ガラスセラミック物品を形成する工程を有してなる。そのガラスは、単一の均一固相であることがある。その結晶相は、タングステンおよび/またはモリブデンを含むことがある。さらに、そのような実施の形態のいくつかにおいて、その束縛アルカリは、(A)長石、(B)霞石、(C)ホウ酸ナトリウム、(D)スポジュメン、(E)曹長石、(F)カリ長石、(G)アルカリアルミノケイ酸塩、(H)アルカリケイ酸塩、および/または(I)(I-i)アルミナ、(I-ii)ボリアおよび/または(I-iii)シリカに結合したアルカリを含む。
【0017】
他の実施の形態において、ガラスセラミックを形成する方法は、シリカおよびタングステンおよび/またはモリブデンを一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程、そのガラス溶融物を固化して、ガラスを形成する工程、およびそのガラス内に、タングステンおよび/またはモリブデンを含むブロンズタイプの結晶を析出させる工程を有してなる。その結晶相を析出させる工程は、そのガラスを熱加工する工程を含むことがある。そのような実施の形態の少なくともいくつかにおいて、その方法は、結晶相の析出物を、少なくとも約1nmかつ約500nm以下の長さに成長させる工程をさらに含む。
【0018】
他の実施の形態において、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラス相と、チタンの亜酸化物を含む結晶相とを含み、そのチタンの亜酸化物は、正孔がドーパント陽イオンに占められている、固体欠陥構造を含む。
【0019】
他の実施の形態において、ガラスセラミックは、非晶相と、式MTiOの複数の析出物を含む結晶相とを含み、式中、0<x<1であり、Mはドーパント陽イオンである。
【0020】
他の実施の形態において、ガラスセラミックは、ケイ酸塩含有ガラスと、そのケイ酸塩含有ガラス内に均一に分布した複数の結晶とを含み、ここで、その結晶は、非化学量論的亜酸化チタンを含み、さらにその結晶にドーパント陽イオンが挿入されている。
【0021】
他の実施の形態において、ガラスセラミック物品は、少なくとも1つの非晶相と結晶相、および約1モル%から約95モル%のSiOを含み、ここで、その結晶相は、結晶相の約0.1モル%から約100モル%の非化学量論的亜酸化チタンを含み、その亜酸化物は、(i)Ti、(ii)Vおよびアルカリ金属陽イオンの内の少なくとも1つを含む。
【0022】
他の実施の形態において、ガラスセラミックを形成する方法は、シリカおよびチタンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程;そのガラス溶融物を固化させて、第1の平均近赤外吸光度を有するガラスを形成する工程;およびそのガラス内に結晶相を析出させて、(a)第2の平均近赤外吸光度、および(b)約1.69以下のmm当たりの平均光学密度を有するガラスセラミックを形成する工程であって、第1の平均近赤外吸光度に対する第2の平均近赤外吸光度の比率が約1.5以上である工程を有してなる。
【0023】
他の実施の形態において、ガラスは、バッチ成分中に、約1モル%から約90モル%のSiO、約0モル%から約30モル%のAl、約0.25モル%から約30モル%のTiO、約0.25モル%から約30モル%の金属硫化物、約0モル%から約50モル%のRO、および約0モル%から約50モル%のROを含み、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの1つ以上であり、ROは、BeO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上であり、このガラスはCdを実質的に含まない。
【0024】
本開示のこれらと他の特徴、利点、および目的は、以下の明細書、特許請求の範囲、および添付図面を参照することによって、当業者によりさらに理解され、認識されるであろう。
【0025】
添付図面は、さらなる理解を与えるために含まれ、本明細書に包含され、その一部を構成する。図面の図は、1つ以上の実施の形態を示しており、詳細な説明と共に、様々な実施の形態の原理および作動を説明する働きをする。それゆえ、本開示は、添付図面と共に解釈したときに、以下の詳細な説明からより十分に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本開示の少なくとも1つの例による、ガラスセラミック組成物から作られた基板を備えた物品の断面図
図2A】本開示の少なくとも1つの例による、比較のCdSeガラスおよび熱処理されたガラスセラミックの波長に対する透過率のプロット
図2B】比較のCdSeガラスおよび熱処理されたガラスセラミックの試料のカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図2Aのプロット
図3A】本開示の例による、比較のCdSeガラスおよび様々な条件にしたがって525℃から700℃で熱処理されたガラスセラミックの試料の波長に対する透過率のプロット
図3B】比較のCdSeガラスおよび様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミックの試料のカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図3Aのプロット
図4A】本開示の例による、比較のCdSeガラスおよび様々な条件にしたがって700℃および800℃で熱処理されたガラスセラミックの試料の波長に対する透過率のプロット
図4B】比較のCdSeガラスおよび様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミックの試料のカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図4Aのプロット
図4C】比較のCuInSeおよびCuInSガラス試料の波長に対する透過率と共に、比較のCdSeガラス試料、様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミック試料、並びにCuInSeおよびCuInS試料のカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図4Aのプロット
図5】本開示の少なくとも1つの例による、熱処理されたガラスセラミックのX線回折(「XRD」)プロット
図6A】本開示の例による、スプラット急冷されたガラスセラミック試料のラマン分光法のプロット
図6B】本開示の例による、スプラット急冷されたガラスセラミック試料および様々な条件にしたがって650℃で熱処理されたガラスセラミック試料のそれぞれのラマン分光法のプロット
図6C】本開示の例による、スプラット急冷されたガラスセラミック試料および様々な条件にしたがって700℃で熱処理されたガラスセラミック試料のそれぞれのラマン分光法のプロット
図7A】本開示の例による、様々な条件にしたがって650℃で熱処理されたガラスセラミック試料と、スプラット急冷されたままのガラスセラミック試料のラマン分光法のプロット
図7B】本開示の例による、様々な条件にしたがって700℃で熱処理されたガラスセラミック試料と、スプラット急冷されたままのガラスセラミック試料のラマン分光法のプロット
図8】本開示の例による、2つのそれぞれのイオン交換過程条件から生じた圧縮応力領域を有する2つのガラスセラミック試料の基板の深さに対する残留応力のプロット
図9】例示の実施の形態によるガラスセラミックの走査型電子顕微鏡(SEM)写真
図10A】別の例示の実施の形態によるガラスセラミックのSEM写真
図10B】別の例示の実施の形態によるガラスセラミックの透過型電子顕微鏡(TEM)写真
図11A】さらに別の例示の実施の形態によるガラスセラミックのSEM写真
図11B】さらに別の例示の実施の形態によるガラスセラミックのTEM写真
図12A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(600℃、1時間)の組成物889FLZの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図12B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(600℃、1時間)の組成物889FLZの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図13A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(700℃、1時間)の組成物889FMBの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図13B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(700℃、1時間)の組成物889FMBの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図14A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(500℃、1時間および600℃、1時間)の組成物889FMCの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図14B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(500℃、1時間および600℃、1時間)の組成物889FMCの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図15A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(500℃、1時間および600℃、1時間)の組成物889FMDの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図15B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(500℃、1時間および600℃、1時間)の組成物889FMDの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図16A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(600℃、1時間および700℃、1時間)の組成物889FMEの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図16B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(600℃、1時間および700℃、1時間)の組成物889FMEの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図17A】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(700℃、1時間および700℃、2時間)の組成物889FMGの0.5mmの研磨平面の透過率スペクトル
図17B】製造されたままの未徐冷状態および熱処理条件(700℃、1時間および700℃、2時間)の組成物889FMGの0.5mmの研磨平面のOD/mmで表された吸光度スペクトル
図18A】1時間に亘り700℃で熱処理した組成物889FMCの熱処理試料内のチタン含有結晶のある倍率のTEM写真
図18B】1時間に亘り700℃で熱処理した組成物889FMCの熱処理試料内のチタン含有結晶の別の倍率のTEM写真
図18C】1時間に亘り700℃で熱処理した組成物889FMCの熱処理試料内のチタン含有結晶のまた別の倍率のTEM写真
図18D】1時間に亘り700℃で熱処理した組成物889FMCの熱処理試料内のチタン含有結晶のさらに別の倍率のTEM写真
図19A】1時間に亘り700℃で熱処理した組成物889FMCの熱処理試料内のチタン含有結晶のTEM写真
図19B図19AのTEM写真のチタンの電子分散型分光法(EDS)元素マップ
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の詳細な説明および例示の実施の形態を詳細に示す図面に取りかかる前に、本発明の技術は、詳細な説明に述べられた、または図面に示された詳細または方法論に限定されないことを理解すべきである。例えば、図面の内の1つに示された実施の形態に関連する、または実施の形態の内の1つに関連する文章に記載された特徴および属性は、図面の別のものに示された、または文章の他のところに記載された他の実施の形態にも同様に適用してよいことが、当業者により理解されるであろう。
【0028】
ここに用いられているように、「および/または」という用語は、2つ以上の項目のリストに使用されている場合、列挙された項目のいずれか1つを、それ自体で使用できること、または列挙された項目の2つ以上の任意の組合せを使用できることを意味する。例えば、組成物が、成分A、B、および/またはCを含有すると記載されている場合、その組成物は、Aのみ;Bのみ;Cのみ;AとBの組合せ;AとCの組合せ;BとCの組合せ;もしくはA、B、およびCの組合せを含有し得る。
【0029】
この文献において、第1と第2、上部と底部などの関係語は、ある実体または作用を、別の実体または作用から区別するためだけに用いられ、そのような実体または作用の間のどの実際のそのような関係または順序も必ずしも必要とするまたは暗示することはない。
【0030】
本開示の改変が、当業者および本開示を利用する者に想起されるであろう。したがって、図面に示され、先に記載された実施の形態は、均等論を含む特許法の原則にしたがって解釈されるように、説明目的のためだけであり、本開示の範囲を限定する意図はなく、本開示の範囲は、以下の特許請求の範囲により定義されることが理解されよう。
【0031】
記載された開示の構成、および他の成分は、どの特定の材料にも限定されないことが、当業者に理解されよう。ここに開示された開示の他の例示の実施の形態は、特に明記のない限り、幅広い様々な材料から形成されてもよい。
【0032】
本開示の目的に関して、「結合された」という用語(その形態の全てで:結合する、結合している、結合されたなど)は、広く、互いに直接的または間接的な2つの成分の連結(電気的または機械的)を意味する。そのような連結は、事実上静止していても、事実上可動であってもよい。そのような連結は、互いに単一体として一体成形されたその2つの成分(電気的または機械的)と任意の追加の中間部材により、またはその2つの成分により、行われてもよい。特に明記のない限り、そのような連結は、事実上永久的であっても、事実上取り外し可能または解放可能であってもよい。
【0033】
ここに用いられているように、「約」という用語は、量、サイズ、配合、パラメータ、および他の数量と特徴が、正確ではなく、正確である必要ないが、許容範囲、変換係数、丸め、測定誤差など、および当業者に公知の他の要因を反映して、要望通りに、近似および/またはより大きいかより小さいことがあることを意味する。値または範囲の端点を記載する上で、「約」という用語が使用されている場合、その開示は、言及されているその特定の値または端点を含むと理解すべきである。明細書における数値または範囲の端点に「約」が付いていようとなかろうと、その数値または範囲の端点は、以下の2つの実施の形態:「約」で修飾されているもの、および「約」で修飾されていないものを含むことが意図されている。それらの範囲の各々の端点は、他方の端点に関してと、他方の端点に関係なくの両方で有意であることがさらに理解されよう。
【0034】
ここに用いられているような、「実質的」、「実質的に」などの用語、およびその変種は、記載された特徴が、ある値または記載と等しいまたはほぼ等しいことを指摘する意図がある。例えば、「実質的に平らな」表面は、平らまたはほぼ平らである表面を意味する意図がある。さらに、「実質的に」は、2つの値が等しいまたはほぼ等しいことを意味する意図がある。いくつかの実施の形態において、「実質的に」は、互いの約5%以内、または互いの約2%以内など、互いの約10%以内の値を意味することがある。
【0035】
ここに用いられているような方向を示す用語-例えば、上、下、右、左、前、後ろ、上部、底部-は、描かれた図面に関してのみ使用され、絶対的な向きを暗示する意図はない。
【0036】
ここに用いられているように、名詞は、「少なくとも1つの」対象を指し、明確に反対であると示されていない限り、「たった1つ」の対象に限定されるべきではない。それゆえ、例えば、「成分」への言及は、文脈が明らかに別なふうに示していない限り、そのような成分を2つ以上有する実施の形態を含む。
【0037】
特に明記のない限り、全ての組成物は、バッチ配合されたままのモルパーセント(モル%)で表されている。当業者に理解されるであろうように、様々な溶融物の成分(例えば、フッ素、アルカリ金属、ホウ素など)が、成分の溶融中に異なるレベルの揮発(例えば、蒸気圧、溶融時間および/または溶融温度の関数として)に曝されることがある。このように、そのような成分に関する「約」という用語は、ここに与えられるバッチ配合されたままの組成物と比べて、最終物品を測定したときに、約0.2モル%以内の値を包含する意図がある。上述したことを念頭に置いて、最終物品とバッチ配合されたままの組成物との間に実質的な組成の同等性が予測される。
【0038】
本開示の目的に関して、「バルク」、「バルク組成」および/または「全体組成」という用語は、全物品の全体組成を含む意図があり、これは、結晶相および/またはセラミック相の形成によるバルク組成と異なることがある「局所組成」または「局在組成」と区別されることがある。
【0039】
またここに用いられているように、「物品」、「ガラス物品」、「セラミック物品」、「ガラスセラミック」、「ガラス要素」、および「ガラスセラミック物品」という用語は、交換可能に、最も広い意味で、ガラスおよび/またはガラスセラミック材料から全体が製造されたまたはそれから部分的に製造されたどの物体も含むように、使用されることがある。
【0040】
ここに用いられているように、「ガラス状態」は、結晶化せずに剛性状態に冷却された溶融の生成物である、本開示の物品内の無機非晶相材料を称する。ここに用いられているように、「ガラスセラミック状態」は、ここに記載されたような、ガラス状態と、「結晶相」および/または「結晶質析出物」との両方を含む、本開示の物品内の無機材料を称する。
【0041】
熱膨張係数(CTE)は、10-7/℃で表され、特に明記のない限り、約0℃から約300℃の温度範囲に亘り測定された値を表す。
【0042】
ここに用いられているように、「透過」および「透過率」は、吸収、散乱および反射を考慮に入れた、外部透過または透過率を称する。フレネル反射は、ここに報告される透過および透過率値から除かれていない。
【0043】
ここに用いられているように、「光学密度単位」、「OD」および「OD単位」は、Iが試料に入射する光の強度であり、Iが試料を透過した光の強度である、OD=-log(I/I)により与えられる、分光計で測定される、試験される材料の吸光度の尺度として一般に理解されるように、光学密度単位を称するために、本開示において交換可能に使用されている。さらに、本開示に使用される「OD/mm」または「OD/cm」という用語は、試料の厚さ(例えば、ミリメートルまたはセンチメートルの単位)で光学密度単位(すなわち、光学分光計で測定して)を割ることによって決定される、吸光度の正規化された尺度である。それに加え、特定の波長範囲に亘り参照されるどの光学密度単位(例えば、280nmから380nmのUV波長における3.3OD/mmから24.0OD/mm)も、規定の波長範囲に亘る光学密度単位の平均値として与えられる。
【0044】
ここに用いられているように、「ヘイズ」という用語は、ASTM手順D1003にしたがって測定される、約1mmの透過経路を有する試料において±2.5°の角度の円錐の外に散乱する透過光の百分率を称する。
【0045】
またここに用いられているように、「[成分]を含まない[ガラスまたはガラスセラミック]」(例えば、「カドミウムおよびセレンを含まないガラスセラミック」)という用語は、列挙された成分を完全に含まず、または実質的に含まず(すなわち、<500ppm)、列挙された成分が能動的に、意図的に、または目的を持ってそのガラスまたはガラスセラミックに添加またはバッチ配合されないように調製されたガラスまたはガラスセラミックを表す。
【0046】
本開示のガラスセラミック並びにガラスセラミック材料および物品に関するように、圧縮応力および圧縮深さ(「DOC」)は、特に明記のない限り、GlasStress,Ltd.(エストニア国、タリン所在)により製造されている散乱光偏光器SCALP220および付随のソフトウェア・バージョン5、または有限会社折原製作所(日本国、東京都所在)により製造されているFSM-6000などの市販の装置を使用して表面応力を評価することによって測定される。両方の装置は、試験されている材料の応力光学係数(「SOC」)により応力に変換しなければならない光学的遅延を測定する。このように、応力測定は、ガラスの複屈折に関係するSOCの精密測定に依存する。次に、SOCは、手順Cの改良版にしたがって測定され、これは、その内容がここに全て引用される、「Standard Test Method for Measurement of Glass Stress-Optical Coefficient」と題するASTM標準C770-98(2013)(「改良手順C」)に記載されている。この改良手順Cは、5から10mmの厚さおよび12.7mmの直径を有する試験片としてガラスまたはガラスセラミックディスクを使用する工程を含む。このディスクは、等方性かつ均一であり、芯に穴が開けられ、両面は研磨され平行である。この改良手順Cは、ディスクに印加すべき最大力Fmaxを計算する工程も含む。この力は、少なくとも20MPaの圧縮応力を生じるのに十分であるべきである。Fmaxは、式:
Fmax=7.854
を使用して計算され、式中、Fmaxは最大力(N)であり、Dはディスクの直径(mm)であり、hは、光路の厚さ(mm)である。印加された各力について、応力は、式:
σ(MPa)=8F/(πh)
を使用して計算され、式中、Fは力(N)であり、Dはディスクの直径(mm)であり、hは光路の厚さ(mm)である。
【0047】
またここに用いられているように、「急なカットオフ波長」および「カットオフ波長」という用語は、交換可能に使用され、約350nmから800nmの範囲のカットオフ波長であって、ガラスセラミックが、そのカットオフ波長(λc)より下での透過率と比べて実質的に高い、カットオフ波長(λc)より上での透過率を有する、カットオフ波長を称する。カットオフ波長(λc)は、ガラスセラミックの所定のスペクトルにおける「吸収限界波長」と「高透過率限界波長」との間の中点での波長である。「吸収限界波長」は、透過率が5%である波長と指定され、「高透過率限界波長」は、透過率が72%である波長と定義される。ここに用いられる「急なUVカットオフ」は、電磁スペクトルの紫外バンド内で生じる、上述したようなカットオフ波長の急なカットオフ波長である可能性があることが理解されよう。
【0048】
本開示の物品は、ここに概説された組成の内の1つを有するガラスおよび/またはガラスセラミックからなる。その物品は、いくつの用途にも使用することができる。例えば、物品は、いくつの光学関連および/または審美的用途における、基板、素子、レンズ、カバーおよび/または他の要素の形態で利用しても差し支えない。
【0049】
この物品は、バッチ配合された組成物から形成され、ガラス状態で注型される。その物品は、後で、徐冷および/または熱加工(例えば、熱処理)されて、複数のセラミックまたは結晶状粒子を有するガラスセラミック状態を形成することがある。利用する注型技術に応じて、その物品は、追加の熱処理を必要とせずに容易に結晶化し、ガラスセラミックになる(例えば、基本的に、ガラスセラミック状態に注型される)であろうことが理解されよう。形成後熱加工が用いられる例において、その物品の一部、大半、実質的に全てまたは全てが、ガラス状態からガラスセラミック状態に転換されることがある。このように、物品の組成が、ガラス状態および/またはガラスセラミック状態に関して記載されることがあるが、物品のバルク組成は、物品の局在部分が異なる組成を有する(すなわち、セラミックまたは結晶質析出物の形成のために)にもかかわらず、ガラス状態とガラスセラミック状態との間で転換されたときに、実質的に変わらないままであることがある。
【0050】
様々な例によれば、前記物品は、Al、SiO、B、WO、MO、RO、RO、および多数のドーパントを含んでもよく、式中、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの内の1つ以上であり、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの内の1つ以上である。ここに与えられた教示から逸脱せずに、多数の他の成分(例えば、F、As、Sb、Ti、P、Ce、Eu、La、Cl、Brなど)が理解されよう。
【0051】
第1の例によれば、物品は、約58.8モル%から約77.58モル%のSiO、約0.66モル%から約13.69モル%のAl、約4.42モル%から約27モル%のB、約0モル%から約13.84モル%のRO、約0モル%から約0.98モル%のRO、約1.0モル%から約13.24モル%のWO、および約0モル%から約0.4モル%のSnOを含むことがある。物品のそのような例は、概して、表1の例1~109に関連するであろう。
【0052】
第2の例によれば、物品は、約65.43モル%から約66.7モル%のSiO、約9.6モル%から約9.98モル%のAl、約9.41モル%から約10.56モル%のB、約6.47モル%から約9.51モル%のRO、約0.96モル%から約3.85モル%のRO、約1.92モル%から約3.85モル%のWO、約0モル%から約1.92モル%のMoO、および約0モル%から約0.1モル%のSnOを含むことがある。物品のそのような例は、概して、表2の例110~122に関連するであろう。
【0053】
第3の例によれば、物品は、約60.15モル%から約67.29モル%のSiO、約9.0モル%から約13.96モル%のAl、約4.69モル%から約20モル%のB、約2.99モル%から約12.15モル%のRO、約0.00モル%から約0.14モル%のRO、約0モル%から約7.03モル%のWO、約0モル%から約8.18モル%のMoO、約0.05モル%から約0.15モル%のSnO、および約0モル%から約0.34モル%のVを含むことがある。物品のそのような例は、概して、表3の例123~157に関連するであろう。
【0054】
第4の例によれば、物品は、約54.01モル%から約67.66モル%のSiO、約9.55モル%から約11.42モル%のAl、約9.36モル%から約15.34モル%のB、約9.79モル%から約13.72モル%のRO、約0.00モル%から約0.22モル%のRO、約1.74モル%から約4.48モル%のWO、約0モル%から約1.91モル%のMoO、約0.0モル%から約0.21モル%のSnO、約0モル%から約0.03モル%のV、約0モル%から約0.48モル%のAg、および約0モル%から約0.01モル%のAuを含むことがある。物品のそのような例は、概して、表4の例158~311に関連するであろう。
【0055】
第5の例によれば、物品は、約60.01モル%から約77.94モル%のSiO、約0.3モル%から約10.00モル%のAl、約10モル%から約20モル%のB、約0.66モル%から約10モル%のRO、約1.0モル%から約6.6モル%のWO、および約0.0モル%から約0.1モル%のSnOを含むことがある。物品のそのような例は、概して、表5の例312~328に関連するであろう。
【0056】
物品は、約1モル%から約99モル%のSiO、または約1モル%から約95モル%のSiO、または約45モル%から約80モル%のSiO、または約60モル%から約99モル%のSiO、または約61モル%から約99モル%のSiO、または約30モル%から約99モル%のSiO、または約58モル%から約78モル%のSiO、または約55モル%から約75モル%のSiO、または約50モル%から約75モル%のSiO、または約54モル%から約68モル%のSiO、または約60モル%から約78モル%のSiO、または約65モル%から約67モル%のSiO、または約60モル%から約68モル%のSiO、または約65モル%から約72モル%のSiO、または約60モル%から約70モル%のSiOを有することがある。SiOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。SiOは、主要なガラス形成酸化物の機能を果たし、物品の安定性、耐失透性および/または粘度に影響することがある。
【0057】
物品は、約0モル%から約50モル%のAl、または約0.5モル%から約20モル%のAl、または約0.5モル%から約15モル%のAl、または約7モル%から約15モル%のAl、または約0.6モル%から約17モル%のAl、または約0.6モル%から約14モル%のAl、または約7モル%から約14モル%のAl、または約9.5モル%から約10モル%のAl、または約9モル%から約14モル%のAl、または約9.5モル%から約11.5モル%のAl、または約0.3モル%から約10モル%のAl、または約0.3モル%から約15モル%のAl、または約2モル%から約16モル%のAl、または約5モル%から約12モル%のAl、または約8モル%から約12モル%のAl、または約5モル%から約10モル%のAlを含むことがある。Alの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。Alは、従来の網状構造形成材として機能することがあり、低CTEを有する安定な物品、物品の剛性、および溶融および/または成形の促進に寄与する。
【0058】
物品は、WOおよび/またはMoOを含むことがある。例えば、WOとMoOの合計は、約0.35モル%から約30モル%であることがある。MoOは約0モル%であることがあり、WOは約1.0モル%から約20モル%であり、またはMoOは約0モル%であることがあり、WOは約1.0モル%から約14モル%であり、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約16モル%であり、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約9モル%であり、またはMoOは約1.9モル%から約12.1モル%であり、WOは約1.7モル%から約12モル%であり、またはMoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約7.1モル%であり、またはMoOは約1.9モル%から約12.1モル%であり、WOは約1.7モル%から約4.5モル%であり、またはMoOは約0モル%であり、WOは約1.0モル%から約7.0モル%である。MoOに関して、前記ガラス組成は、約0.35モル%から約30モル%のMoO、または約1モル%から約30モル%のMoO、または約0.9モル%から約30モル%のMoO、または約0.9モル%から約20モル%のMoO、または約0モル%から約1.0モル%のMoO、または約0モル%から約0.2モル%のMoOを有することがある。WOに関して、前記ガラス組成は、約0.35モル%から約30モル%のWO、または約1モル%から約30モル%のWO、または約1モル%から約17モル%のWO、または約1.9モル%から約10モル%のWO、または約0.35モル%から約1モル%のWO、または約1.9モル%から約3.9モル%のWO、または約2モル%から約15モル%のWO、または約4モル%から約10モル%のWO、または約5モル%から約7モル%のWOを有することがある。WOおよび/またはMoOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。
【0059】
物品は、約2モル%から約40モル%のB、または約4モル%から約40モル%のB、または約4.0モル%から約35モル%のB、または約4.0モル%から約27モル%のB、または約5.0モル%から約25モル%のB、または約9.4モル%から約10.6モル%のB、または約5モル%から約20モル%のB、または約4.6モル%から約20モル%のB、または約9.3モル%から約15.5モル%のB、または約10モル%から約20モル%のB、または約10モル%から約25モル%のBを含むことがある。Bの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。Bは、CTE、密度、および粘度を減少させ、物品を低温で溶融し、形成するのを容易にするために使用されるガラス形成酸化物であることがある。
【0060】
物品は、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含むことがある。そのアルカリ金属酸化物は、化学式ROで表されることがあり、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbO、CsOおよび/またはその組合せの内の1つ以上である。物品は、約0.1モル%から約50モル%のRO、または約0モル%から約14モル%のRO、または約3モル%から約14モル%のRO、または約5モル%から約14モル%のRO、または約6.4モル%から約9.6モル%のRO、または約2.9モル%から約12.2モル%のRO、または約9.7モル%から約12.8モル%のRO、または約0.6モル%から約10モル%のRO、または約0モル%から約15モル%のRO、または約3モル%から約12モル%のRO、または約7モル%から約10モル%のROのアルカリ金属酸化物組成を有することがある。ROの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。アルカリ金属酸化物(例えば、LiO、NaO、KO、RbO、およびCsO)は、(i)溶融温度を減少させること、(ii)成形性を増すこと、(iii)イオン交換により化学強化をできるようにすること、および/または(iv)特定の晶子に関与するための主として:を含む多数の理由のために、物品中に含まれることがある。
【0061】
様々な例によれば、ROからAlを引いた値は、約-35モル%から約7モル%、または約-12モル%から約2.5モル%、または約-6モル%から約0.25モル%、または約-3.0モル%から約0モル%に及ぶ。ROからAlを引いた値の上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。
【0062】
物品は、少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むことがある。そのアルカリ土類金属酸化物は、化学式ROで表されることがあり、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaO、およびZnOの内の1つ以上である。その物品は、約0.02モル%から約50モル%のRO、または約0.01モル%から約5モル%のRO、または約0.02モル%から約5モル%のRO、または約0.05モル%から約10モル%のRO、または約0.10モル%から約5モル%のRO、または約0.15モル%から約5モル%のRO、または約0.05モル%から約1モル%のRO、または約0.5モル%から約4.5モル%のRO、または約0モル%から約1モル%のRO、または約0.96モル%から約3.9モル%のRO、または約0.2モル%から約2モル%のRO、または約0.01モル%から約0.5モル%のRO、または約0.02モル%から約0.22モル%のROを含むことがある。ROの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。様々な例によれば、ROは、ROより多いことがある。さらに、その物品は、ROを含まないことがある。アルカリ土類金属酸化物(例えば、MgO、CaO、SrO、およびBaO)およびZnOなどの他の二価酸化物は、物品の溶融挙動を改善することがあり、物品のCTE、ヤング率、および剪断率を増加させる働きもすることができる。
【0063】
物品は、約0.01モル%から約5モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.5モル%のSnO、または約0.05モル%から約0.5モル%のSnO、または約0.05モル%から約2モル%のSnO、または約0.04モル%から約0.4モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.4モル%のSnO、または約0.04モル%から約0.16モル%のSnO、または約0.01モル%から約0.21モル%のSnO、または約0モル%から約0.2モル%のSnO、または約0モル%から約0.1モル%のSnOを含むことがある。SnOの上述した範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。その物品は、溶融中のガス状含有物の除去に役立つように、少濃度で清澄剤(例えば、他の清澄剤としては、CeO、As、Sb、Cl、Fなど)としてもSnOを含むことがある。特定の清澄剤は、レドックス対、色中心、および/または物品中に形成された晶子に入り込むおよび/または核形成する種として働くこともある。
【0064】
物品の特定の成分の組成は、他の成分の存在および/または組成に依存することがある。例えば、WOが約1モル%から約30モル%である場合、その物品は、約0.9モル%以下のFeさらに含む、またはSiOが約60モル%から約99モル%である。別の例において、WOが約0.35モル%から約1モル%である場合、その物品は、約0.01モル%から約5.0モル%のSnOを含む。別の例において、MoOが約1モル%から約30モル%である場合、SiOは約61モル%から約99モル%である、またはFeは約0.4モル%以下であり、ROはROより多い。別の例において、MoOが約0.9モル%から約30モル%であり、SiOが約30モル%から約99モル%である場合、その物品は、約0.01モル%から約5モル%のSnOを含む。
【0065】
前記物品は、カドミウムを実質的に含まず、セレンを実質的に含まないことがある。様々な例によれば、その物品は、紫外、可視、色および/または近赤外吸光度を変えるために、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pb、Pd、Au、Cd、Se、Ta、Bi、Ag、Ce、Pr、Nd、およびErからなる群より選択される少なくとも1種類のドーパントをさらに含み得る。そのドーパントは、その物品内に約0.0001モル%から約1.0モル%の濃度を有することがある。例えば、その物品は、約0.01モル%から約0.48モル%のAg、約0.01モル%から約0.13モル%のAu、約0.01モル%から約0.03モル%のV、約0モル%から約0.2モル%のFe、および約0.01モル%から約0.48モル%のCuOの内の少なくとも1つを含むことがある。別の例によれば、その物品は、約0.01モル%から約0.75モル%のAg、約0.01モル%から約0.5モル%のAu、約0.01モル%から約0.03モル%のV、および約0.01モル%から約0.75モル%のCuOの内の少なくとも1つを含むことがある。その物品は、前記ガラスを軟化させるために、約0モル%から約5モル%の範囲のフッ素を含むことがある。その物品は、その物品の物理的性質をさらに改善し、結晶成長を調節するために、約0モル%から約5モル%でリンを含むことがある。その物品は、その物品の物理的および光学的(例えば、屈折率)性質をさらに改善するために、Ga、In、およびGeOを含むことがある。以下の微量不純物が、紫外、可視(例えば、390nmから約700nmまで)、および近赤外(例えば、約700nmから約2500nmまで)吸光度をさらに改善する、および/またはその物品に蛍光を発せさせるために、約0.001モル%から約0.5モル%の範囲で存在することがある:Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Se、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、Te、Ta、Re、Os、Ir、Pt、Au、Ti、Pb、Bi、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、およびLu。さらに、その物品の物理的性質および粘度をさらに改善するために、特定の組成物にPが少量添加されることがある。
【0066】
ここに概説した物品の他の成分のどの他の組成および/または組成範囲に、SiO、Al、WO、MoO、WOとMoO、B、RO、RO、V、Ag、Au、CuO、SnO、およびドーパントの上述した組成および組成範囲を使用してもよいことが理解されよう。
【0067】
先に説明したように、タングステン、モリブデン、またはタングステンとモリブデンの混合物を含有するアルカリガラスの従来の形成は、溶融過程中の溶融成分の分離により阻まれてきた。この溶融過程中のガラス成分の分離により、溶融ガラス内の、したがって、そのような溶融物から注型された物品のタングステン酸アルカリの溶解限度が認識された。従来、タングステン、モリブデン、またはタングステンとモリブデンの混合物の溶融物がわずかに過アルカリ(例えば、RO-Al=約0.25モル%以上)である場合でさえ、溶融されたホウケイ酸ガラスは、ガラスと、緻密な液体の第二相の両方を形成した。このタングステン酸アルカリの第二相の濃度は、完全な混合、高温での溶融、および小さいバッチサイズ(1000gまで)の利用によって減少させることができたが、その第二相は完全にはなくすことはできず、有害な第二結晶相の形成をもたらした。このタングステン酸アルカリ相の形成は、酸化タングステンおよび/またはモリブデンが「遊離」または「非束縛」アルカリ炭酸塩と反応する、溶融の初期段階で生じると考えられる。形成されるホウケイ酸ガラスに対してタングステン酸アルカリおよび/またはモリブデン酸アルカリの高い密度のために、それらは、急速に偏析および/または層化し、坩堝の底に溜まり、著しい密度の差のために、ガラス中で急速には可溶化しない。RO成分はガラス組成物に有益な性質を与えるであろうから、溶融物内のRO成分の存在を単に減少させることは望ましくないであろう。
【0068】
本開示の発明者等により、「束縛」アルカリの使用により、均一な単一相WまたはMo含有過アルカリ溶融物が得られる可能性があることが判明した。本開示の目的に関して、「束縛」アルカリは、アルミナ、ボリア、および/またはシリカに結合したアルカリ元素であるのに対し、「遊離」または「非束縛」アルカリは、アルカリがシリカ、ボリアまたはアルミナに結合していないアルカリ炭酸塩、アルカリ硝酸塩および/またはアルカリ硫酸塩である。例示の束縛アルカリとしては、長石、霞石、ホウ砂、スポジュメン、他の曹長石またはカリ長石、アルカリアルミノケイ酸塩、アルカリケイ酸塩、および/またはアルカリと1つ以上のアルミニウム、ホウ素および/またはケイ素原子を含有する他の自然発生のおよび人工的に生成された鉱物が挙げられるであろう。束縛形態のアルカリを導入することによって、アルカリは、溶融物中に存在するWまたはMoと反応して、緻密なタングステン酸アルカリおよび/またはモリブデン酸アルカリ液体を形成しないであろう。さらに、バッチ材料をこのように変更すると、どのようなタングステン酸アルカリおよび/またはモリブデン酸アルカリ第二相も形成せずに、強過アルカリ組成物(例えば、RO-Al=約2.0モル%以上)を溶融することができるであろう。これにより、溶融温度および混合方法を変えることもでき、それでも、単一相均一ガラスを製造できる。タングステン酸アルカリ相およびホウケイ酸ガラスは完全には非混和性ではないので、長期間の撹拌により、それらの二相を混合して、単一相物品を注型することもできることが理解されよう。
【0069】
ガラス溶融物が一旦注型され、ガラス状態物品に固化したら、その物品を徐冷、熱処理または他のやり方で熱加工して、その物品内に結晶相を形成することができる。したがって、その物品は、ガラス状態からガラスセラミック状態に転換されることがある。そのガラスセラミック状態の結晶相は、様々な形態をとることがある。様々な例によれば、結晶相は、物品の熱処理領域内の複数の析出物として形成される。このように析出物は、概して結晶質の構造を有することがある。
【0070】
ここに用いられているように、「結晶相」は、三次元で周期的であるパターンで配列された原子、イオンまたは分子からなる固体である、本開示の物品内の無機材料を称する。さらに、本開示で言及されるような「結晶相」は、特に明記のない限り、以下の方法を使用して存在すると決定される。最初に、結晶質析出物の存在を検出するために、粉末X線回折(「XRD」)が用いられる。第二に、XRDがうまくいかない場合(例えば、析出物のサイズ、量および/または化学的性質のために)、結晶質析出物の存在を検出するために、ラマン分光法(「ラマン」)が用いられる。必要に応じて、XRDおよび/またはラマン技術により得られた結晶質析出物の決定を目視で確認するまたは他のやり方で立証するために、透過型電子顕微鏡法(「TEM」)が用いられる。特定の状況において、析出物の量および/またはサイズは、析出物の目視による確認が特に困難であると分かるほど十分に小さいことがある。このように、XRDおよびラマンのより大きいサンプルサイズは、析出物の存在を決定するために、多量の材料をサンプリングする上で都合よいであろう。
【0071】
結晶質析出物は、略棒状または針状形態を有することがある。その析出物は、約1nmから約500nm、または約1nmから約400nm、または約1nmから約300nm、または約1nmから約250nm、または約1nmから約200nm、または約1nmから約100nm、または約1nmから約75nm、または約1nmから約50nm、または約1nmから約25nm、または約1nmから約20nm、または約1nmから約10nmの最長寸法を有することがある。析出物のサイズは、電子顕微鏡法を使用して測定されることがある。本開示の目的に関して、「電子顕微鏡法」という用語は、最初に、走査型電子顕微鏡を使用し、析出物を解像できない場合、次に、透過型電子顕微鏡を使用することによって析出物の最長長さを目視で測定することを意味する。結晶質析出物は、一般に、棒状または針状形態を有するであろうから、その析出物は、約2nmから約30nm、または約2nmから約10nm、または約2nmから約7nmの幅を有することがある。析出物のサイズおよび/または形態は、均一、実質的に均一であっても、または様々であってもよいことが理解されよう。一般に、前記物品の過アルミニウム(peraluminous)組成物は、約100nmから約250nmの長さおよび約5nmから約30nmの幅を有する針状形状を有する析出物を生じることがある。その物品の過アルカリ組成物は、約10nmから約30nmの長さおよび約2nmから約7nmの幅を有する針状析出物を生じることがある。その物品のAg、Auおよび/またはCu含有例は、約2nmから約20nmの長さおよび約2nmから約10nmの幅または直径を有する棒状析出物を生じることがある。その物品中の結晶相の体積分率は、約0.001%から約20%、または約0.001%から約15%、または約0.001%から約10%、または約0.001%から約5、または約0.001%から約1%に及ぶことがある。
【0072】
前記析出物の比較的小さいサイズは、析出物により散乱する光の量を減少させ、ガラスセラミック状態にあるときに物品の高い光学的透明度をもたらす上で都合よいであろう。下記により詳しく説明されるように、析出物のサイズおよび/または量は、物品の異なる部分が異なる光学的性質を有するように、物品に亘り変えられることがある。例えば、析出物が存在する物品の部分は、異なる析出物(サイズおよび/または量)が存在するおよび/または析出物が存在しない物品の部分と比べて、吸光度、色、光の反射率および/または透過率、並びに屈折率の変化をもたらすことがある。
【0073】
析出物は、酸化タングステンおよび/または酸化モリブデンからなることがある。結晶相は、(i)W、(ii)Mo、(iii)Vとアルカリ金属陽イオン、および(iv)Tiとアルカリ金属陽イオン:の内の少なくとも1つの、結晶相の約0.1モル%から約100モル%の酸化物を含む。理論で束縛する意図はないが、物品の熱加工(例えば、熱処理)中、タングステンおよび/またはモリブデンの陽イオンが凝集して、結晶質析出物を形成し、それによって、ガラス状態をガラスセラミック状態に転換させると考えられる。析出物中に存在するモリブデンおよび/またはタングステンは、還元または部分的に還元されているであろう。例えば、析出物内のモリブデンおよび/またはタングステンは、0と約+6との間の酸化状態を有することがある。様々な例によれば、モリブデンおよび/またはタングステンは、+6の酸化状態を有することがある。例えば、析出物は、WOおよび/またはMoOの一般化学構造を有することがある。しかしながら、+5の酸化状態にあるタングステンおよび/またはモリブデンも相当な分率であり得、その析出物は、非化学量論的亜酸化タングステン、非化学量論的亜酸化モリブデン、「モリブデンブロンズ」、および/または「タングステンブロンズ」として知られることもある。上述したアルカリ金属および/またはドーパントの内の1つ以上が、WまたはMoへの+5の電荷を補うために、析出物内に存在することがある。タングステンおよび/またはモリブデンブロンズは、MWOまたはMMoOの一般化学形態をとる非化学量論的亜酸化タングステンおよび/またはモリブデンの群であり、式中、M=H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、および/またはUの1つ以上であり、0<x<1である。構造MWOまたはMMoOは、還元されたWOまたはMoO網状構造における正孔(すなわち、結晶格子の空孔またはチャンネル)がM原子により無作為に占められ、これが、M+陽イオンと遊離電子に解離する、固体欠陥構造であると考えられる。「M」の濃度に応じて、材料特性は、金属から半導体に及び得、それによって、多種多様な光吸収および電子特性を調整することができる。5+WまたはMoが多いほど、補うのにより多くのM+が必要であろうし、xの値が大きくなる。
【0074】
タングステンブロンズは、概して式MWOの非化学量論的化合物であり、式中、Mは、いくつかの他の金属、最も一般的にアルカリなどの陽イオンドーパントであり、xは1未満の変数である。明確にするために、「ブロンズ」と称されるが、これらの化合物は、銅とスズの合金である金属ブロンズとは構造的または化学的に関係していない。タングステンブロンズは、均一性がxの関数として変動する固相の範囲である。ドーパントMおよび対応する濃度xに応じて、タングステンブロンズの材料特性は、金属から半導体に及び、調整可能な光吸収を示すことがある。これらのブロンズの構造は、M’陽イオンが二元酸化物ホストの正孔またはチャンネルに挿入され、M+陽イオンと遊離電子に解離する固体欠陥構造である。
【0075】
明確にするために、MWOは、六方晶、正方晶、立方晶、またはパイロクロアであり得る様々な結晶構造を有し、式中、Mが周期表の特定の元素の内の1つまたは組合せであり得、xが0<x<1で変動し、ブロンズ形成種(この場合、W)の酸化状態が、最高酸化状態にある種(W6+)と最低酸化状態にある種(例えば、W5+)の混合物であり、WOにおける数値の三(「3」)は、2と3の間であることがある酸素陰イオンの数を表す、非化学量論的または「半化学量論的」化合物の複合系の命名法である。したがって、MWOは、代わりに、化学形態MWOとして表されることがあり、式中、0<x<1、2<z<3、または化学形態MWO3-zとして表されることがあり、式中、0<x<1、0<z<1である。しかしながら、簡潔さのために、この群の非化学量論的結晶に、MWOが利用される。同様に、「ブロンズ」は、一般に、式M’M”の三元金属酸化物に適用され、式中、(i)M”は遷移金属であり、(ii)M”はその最高二元酸化物であり、(iii)M’はいくつかの他の金属であり、(iv)xは0<x<1の範囲に入る変数である。
【0076】
前記物品の一部、大半、実質的に全てまたは全てが、析出物を形成するために、熱加工されることがある。熱加工技術としては、以下に限られないが、炉(例えば、熱処理炉)、マイクロ波、レーザおよび/または物品の局所および/またはバルク加熱の他の技術が挙げられるであろう。結晶質析出物は、熱加工を受けている間に、均一な様式で物品内で内部核形成し、ここで、その物品は、熱加工されて、ガラス状態からガラスセラミック状態に転換する。このように、いくつかの例において、物品は、ガラス状態とガラスセラミック状態の両方を含むことがある。物品がバルクで熱加工される(例えば、物品全体が炉に入れられる)例において、物品全体に亘り析出物が均一に形成することがある。言い換えると、析出物は、物品の外面から、物品の大部分(すなわち、表面から約10μm超)に亘り存在することがある。物品が局所的に(例えば、レーザにより)熱加工される例において、析出物は、熱加工が十分な温度に到達するところ(例えば、物品の表面と、熱源に近接した内部)のみに存在することがある。物品は、析出物を生じるために、複数の熱加工を経ることがあることが理解されよう。それに加え、またはそれに代えて、既に形成された(例えば、先の熱加工の結果として)析出物を除去するおよび/または変更するために、熱加工が用いられることがある。例えば、熱加工により、析出物が分解することがある。
【0077】
様々な例によれば、前記物品は、析出物が存在するところと、析出物が存在しないところの両方(すなわち、ガラス状態またはガラスセラミック状態にある部分)で、電磁スペクトルの可視領域(すなわち、約400nmから約700nm)で光学的に透明であることがある。ここに用いられているように、「光学的に透明」という用語は、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り1mmの経路長で約1%(例えば、%/mmの単位)超の透過率を称する。いくつかの例において、その物品は、全て、そのスペクトルの可視領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り、約5%/mm以上、約10%/mm以上、約15%/mm以上、約20%/mm以上、約25%/mm以上、約30%/mm以上、約40%/mm以上、約50%/mm以上、約60%/mm以上、約70%/mm以上、約80%/mm以上、およびこれらの値の間の全ての下限より大きい透過率を有する。
【0078】
様々な例によれば、物品のガラスセラミック状態は、追加のコーティングまたは膜を使用せずに、析出物の存在に基づいて、紫外(「UV」)領域の光(すなわち、約400nm未満の波長)を吸収する。いくつかの実施において、物品のガラスセラミック状態は、スペクトルのUV領域(例えば、約200nmから約400nmまで)の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、10%/mm未満、9%/mm未満、8%/mm未満、7%/mm未満、6%/mm未満、5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、およびさらに1%/mm未満の透過率によって特徴付けられる。いくつかの例において、そのガラスセラミック状態は、そのスペクトルのUV領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、または少なくとも99%/mmさえ吸収する、またはその吸光度を有する。そのガラスセラミック状態は、約320nmから約420nmの急なUVカットオフ波長を有することがある。例えば、そのガラスセラミック状態は、約320nm、約330nm、約340nm、約350nm、約360nm、約370nm、約380nm、約390nm、約400nm、約410nm、約420nm、約430nm、またはそれらの間の任意の値での急なUVカットオフを有することがある。
【0079】
いくつかの例において、前記物品のガラスセラミック状態は、全て、スペクトルの近赤外(NIR)領域(例えば、約700nmから約2700nmまで)の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り、約5%/mm超、約10%/mm超、約15%/mm超、約20%/mm超、約25%/mm超、約30%/mm超、約40%/mm超、約50%/mm超、約60%/mm超、約70%/mm超、約80%/mm超、約90%/mm超、およびこれらの値の間の全ての下限より大きい透過率を有する。さらに他の例において、その物品のガラスセラミック状態は、全て、スペクトルのNIR領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り、約90%/mm未満、約80%/mm未満、約70%/mm未満、約60%/mm未満、約50%/mm未満、約40%/mm未満、約30%/mm未満、約25%/mm未満、約20%/mm未満、約15%/mm未満、約10%/mm未満、約5%/mm未満、約4%/mm未満、約3%/mm未満、約2%/mm未満、約1%/mm未満、および約0.1%/mm未満でさえ、並びにこれらの値の間の全ての上限より小さい透過率を有する。他の例において、その物品のガラスセラミック状態は、スペクトルのNIR領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、または少なくとも99%/mm、もしくは少なくとも99.9%/mmでさえを吸収する、またはその吸光度を有する。
【0080】
本開示の様々な例は、多種多様な性質および利点を与えるであろう。特定の性質および利点が特定の組成物に関連して開示されることがあるが、開示された様々な性質および利点が、他の組成物にも等しく適用されるであろうことが理解されよう。
【0081】
下記の表1および5の組成物に関して、開示された組成物から製造された物品は、低い熱膨張係数(「CTE」)を示すことがある。例えば、その物品は、約0℃から約300℃の温度範囲に亘り約10×10-7/℃から約60×10-7/℃の熱膨張係数を有することがある。そのような低いCTEにより、その物品が温度の大きく急な変動に耐えることができ、そのような物品が苛酷な環境で作動するのに適したものになるであろう。光学的性質に関して、その物品は、約368nm以下の波長での1%未満の透過率、可視領域(例えば、約500nmから約700nmまで)における光透過性、およびNIR波長(例えば、約700nmから約1700nmまで)の強力な減衰(例えば、遮断)を示すことがある。そのような物品は、その物品がコーティングまたは膜(例えば、機械的に壊れやすく、紫外線および水分に敏感であることがある)を用いないという点で、従来のNIR運営方法を上回って都合よいであろう。その物品は、酸素、水分、および紫外波長の影響を受けにくい(すなわち、ガラスまたはガラスセラミックの性質により)ので、NIR吸収析出物は、苛酷な環境条件(例えば、水分、腐食酸、塩基およびガス)および急激な温度変化から保護されるであろう。さらに、その物品のガラスセラミック状態のUVカットオフ波長および屈折率変化は、形成後の熱処理によって調整可能であろう。その物品のガラスセラミック状態は、結晶質析出物の結果として、屈折率の変化またはUVカットオフを示すことがある。その物品のガラス状態は、約1.505と約1.508の間の屈折率を有することがあり、一方で、その物品のガラスセラミック状態は、約1.520から約1.522の屈折率を有することがある。熱調節可能なUVカットオフおよび屈折率は、物品の形成後の熱加工条件を変えることによって、1つのガラス槽を、オンザフライで、多数のUVカットオフガラス仕様に合わせられるであろう。熱調節された屈折率は、大きい屈折率差分(10-2)を生じることができる。紫外吸光度を調節するために必要な熱処理は、高粘度(例えば、10および1012ポアズの間)で行われるので、完成物品は、表面を損なわずに、または変形を生じずに、熱加工することができる。
【0082】
表1および2の組成物に関して、これらの組成物から製造された物品は、急で調整可能なカットオフ波長で光減衰を示す、非毒性の、カドミウムとセレンを含まない物品の新規の群を提示するであろう。Seを含有する、CdSeフィルタガラスに対する無Cd代替物と異なり、これらの物品は、資源保護回復法(「RCRA」)に関与する金属または他の有害物を含有しない。それに加え、その物品は、インジウムおよび/またはガリウムを含有する、無Cd代替物と異なり、より低コストの元素からなることがある。光学的性質に関して、これらの組成物から製造された物品は、NIRから2.7マイクロメートルに亘り高い透明度(例えば、約90%超)を提示することがある。さらに、その物品は、約320nmから525nmに及ぶ急な可視カットオフ波長を示し、これは、熱加工条件(例えば、時間および温度)、および組成によって調整可能である。
【0083】
表3の組成物に関して、これらの例示の組成物の物品は、タングステンの代わりにモリブデンを使用することがあり、このことは、モリブデンは一般にタングステンより費用がかからないという点で都合よいであろう。それに加え、これらの組成物から製造された物品は、ガラスセラミック状態に熱加工されることがあり、その状態は、多種多様な光学的性質を提示するであろう。例えば、そのような組成の物品の透過率は、約0.5mmの厚さで、可視スペクトル(例えば、約400nmから約700nmまで)において約4%から約30%に及び、NIR(例えば、約700nmから約1500nmまで)において約5%から約15%に及び、約370nm未満の波長で約1%以下の、または約370nmから約390nmの波長で約5%以下の紫外線透過率を示し得る。いくつかの例によれば、その物品のモリブデンとタングステンの混合物の例は、太陽のスペクトルの92.3%を吸収することができる。そのような光学的性質は、物品への色合いとして視覚的に知覚されるであろう。他の組成物と同様に、その光学的性質は、析出物の成長により生じ、それゆえ、その色合いは、熱加工に基づいて物品に亘り変わることがある。この熱的に可変の色合いは、物品のフロントガラスまたはムーンルーフ用途における陰影エッジまたは縁の形成などの、物品内な色合いの勾配を生じるために使用することができる。そのような特徴は、従来のフロントガラスまたはムーンルーフの表面で焼かれるフリットをなくすのに都合よいであろう。この熱的に調整可能な色合いは、物品に亘る勾配吸収を作るためにも使用できる。それに加え、これの組成物から作られた物品は、レーザ(例えば、355nm、810nm、および10.6μmの波長で作動する)で脱色可能かつパターン形成可能である。物品の露光領域は、これらの波長にレーザ露光された際に、UVおよびNIR吸収析出物の熱分解のために、青色または灰色(例えば、その色は析出物のためである)から、無色透明または薄黄色に変わる。物品の表面に沿ってレーザを走査して、所望の領域を選択的に脱色することによって、物品内にパターンを形成することができる。物品が脱色されたときに、結果として生じたガラス状態は、脱色過程が自己制御式であるようにNIRにおいて、もはや吸収性ではない(すなわち、NIR吸収析出物が分解したので)。さらに、選択的なレーザ露光は、パターンだけでなく、物品に亘り可変のUVおよびNIR吸光度も生じることがある。さらに他の例によれば、その物品は、十分に小さいサイズに粉砕され、癌治療のための光熱サセプタ剤(すなわち、NIR吸収性の光学的性質のために)として使用されるように官能化されることがある。
【0084】
表4の組成物に関して、これらの組成物から製造された物品は、光学的吸収を変調し、かつ1つの組成物から広い範囲の色を生じるために、成形後に熱処理される(例えば、ガラスセラミック状態を形成するために)ことができることがある。さらに、そのような例は、フュージョン成形および/またはイオン交換が可能なことがある。Ag、Auおよび/またはCuを利用する従来の着色ガラス組成物は、一般に、色を生じるために、ナノスケールの金属析出物の形成に依存する。本開示の発明者等に発見されたように、Ag1+陽イオンは、タングステンとモリブデンの酸化物の間に入り込み、銀タングステンブロンズおよび/または銀モリブデンブロンズを形成することができ、これが、物品に多色性を与えることがある。意外なことに、この物品の組成物へのMWOまたはMMoOに少濃度のAgOまたはAgNOを添加すると、その物品を異なる温度および時間で熱加工することによって、様々な色(例えば、赤、オレンジ、黄、緑、青、様々な茶および/またはその組合せ)が生じることがある。Auおよび/またはCuを同様の様式で利用してもよいことが理解されよう。分析により、色調整性は、結晶相(例えば、MWOまたはMMoO)の上で型にはまる金属ナノ粒子の集合体の形成によるものではないことが実証されている。そうではなく、これらの多色性物品における色調整性の起源は、析出物中に入り込んで、純粋なアルカリ、純粋な金属および/または様々な化学量論の混合アルカリ金属のタングステンおよび/またはモリブデンブロンズを形成する、アルカリ陽イオンおよびAg1+、Auおよび/またはCu陽イオンの集中によって生じる、ドープされた酸化タングステンおよび/またはモリブデン析出物のバンドギャップエネルギーの変化のためであると考えられる。析出物のバンドギャップエネルギーの変化は、その化学量論のためであり、転じて、析出物のサイズおよび/または形状には概して関係ない。したがって、ドープされたMWOまたはMMoO析出物は、同じサイズおよび/または形状のままであり得、それでも、ドーパント「M」の固有性および濃度「x」に応じて、多くの異なる色を生じることができるであろう。そのような物品を熱処理すると、1つの物品内にほぼ完全な虹色を生じることがある。さらに、物品に印加されている温度勾配によって、ある物理的距離に亘り、色のグラデーションを広げるまたは圧縮することができる。さらに他の例において、物品にレーザでパターン形成して、物品の色を局所的に変えることができる。そのような物品は、ガラスセラミックからなることがあり、審美的に着色されることがある、着色サングラス用レンズブランク、電話および/またはタブレットカバーおよび/または他の製品の製造に都合よいであろう。そのガラスセラミック内に析出物が位置付けられるので、着色を与えるために施される従来の金属および高分子着色層よりも、耐引掻性および環境耐久性が大きい。物品の色は熱処理に基づいて変えられるであろうから、1槽のガラス溶融物を使用して、顧客の要望により決まる特定の色に熱処理できるブランクが連続的に製造されるであろう。それに加え、これらのガラス組成物から製造される物品は、ここに開示された他の組成物と同様に、紫外線および/または赤外線を吸収するであろう。
【0085】
本開示の様々な例によれば、前記物品は、様々なフュージョン成形過程に適しているであろう。例えば、本開示の様々な組成物は、積層物品を形成するために、基板の周りのクラッド材料として、透明なタングステン、モリブデン、混合タングステン・モリブデン、および/またはチタンガラスが用いられる単一または二重フュージョン積層板に用いられることがある。ガラス状態クラッドは、クラッドとして施された後、ガラスセラミック状態に転換されることがある。フュージョン積層物品のガラスセラミック状態クラッドは、約50μmから約200μmの厚さを有することがあり、平均可視透過率が高い(例えば、自動車用フロントガラスおよび/または建築用板ガラスについて、約75%から約85%まで)状態で強力なUVおよびIR減衰、可視透過率が低い(例えば、自動車用サイドウィンドウ、自動車用サンルーフ、およびプライバシー板ガラスについて、約5%から約30%まで)状態で強力なUVおよびIR減衰、および/または可視および赤外吸光度が勾配炉内の処理、局所加熱および/または局所脱色により変調できる積層板を有することがある。それに加え、物品を形成するためのクラッドとしてその組成物を使用すると、調整可能な光学的性質を十分に活用すると同時に、強化されたモノリスガラス層を製造する新たな過程が与えられる。
【0086】
様々な例によれば、本開示の組成物から製造される物品は、粉末化または粒状化され、様々な材料に添加されることがある。例えば、その粉末物品は、塗料、結合剤、高分子材料(例えば、ポリビニルブチラール)、ゾルゲル、および/またはその組合せに添加されることがある。そのような特徴は、上述した材料にこの物品の特徴の1つ以上を与える上で都合よいであろう。
【0087】
様々な例によれば、前記物品はTiOを含むことがある。その物品は、約0.25モル%、または約0.50モル%、または約0.75モル%、または約1.0モル%、または約2.0モル%、または約3.0モル%、または約4.0モル%、または約5.0モル%、または約6.0モル%、または約7.0モル%、または約8.0モル%、または約9.0モル%、または約10.0モル%、または約11.0モル%、または約12.0モル%、または約13.0モル%、または約14.0モル%、または約15.0モル%、または約16.0モル%、または約17.0モル%、または約18.0モル%、または約19.0モル%、または約20.0モル%、または約21.0モル%、または約22.0モル%、または約23.0モル%、または約24.0モル%、または約25.0モル%、または約26.0モル%、または約27.0モル%、または約28.0モル%、または約29.0モル%、または約30.0モル%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲の濃度でTiOを含むことがある。例えば、その物品は、約0.25モル%から約30モル%のTiO、または約1モル%から約30モル%のTiO、または約1.0モル%から約15モル%のTiO、または約2.0モル%から約15モル%のTiO、または約2.0モル%から約15.0モル%のTiOの濃度でTiOを含むことがある。TiOの先に述べた範囲の間の任意と全ての値および範囲が考えられることが理解されよう。
【0088】
様々な例によれば、前記物品は、1種類以上の金属硫化物を含むことがある。例えば、金属硫化物としては、MgS、NaS、および/またはZnSが挙げられるであろう。様々な例によれば、その物品は、1種類以上の金属硫化物を含むことがある。例えば、金属硫化物としては、MgS、NaS、および/またはZnSが挙げられるであろう。その物品は、約0.25モル%、または約0.50モル%、または約0.75モル%、または約1.0モル%、または約2.0モル%、または約3.0モル%、または約4.0モル%、または約5.0モル%、または約6.0モル%、または約7.0モル%、または約8.0モル%、または約9.0モル%、または約10.0モル%、または約11.0モル%、または約12.0モル%、または約13.0モル%、または約14.0モル%、または約15.0モル%、または約16.0モル%、または約17.0モル%、または約18.0モル%、または約19.0モル%、または約20.0モル%、または約21.0モル%、または約22.0モル%、または約23.0モル%、または約24.0モル%、または約25.0モル%、または約26.0モル%、または約27.0モル%、または約28.0モル%、または約29.0モル%、または約30.0モル%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲の濃度で金属硫化物を含むことがある。例えば、その物品は、約0.25モル%から約30モル%、または約1.0モル%から約15モル%、または約1.5モル%から約5モル%の濃度で金属硫化物を含むことがある。
【0089】
先に強調された酸化タングステンおよびモリブデンと同様に、チタンを含む物品の例も、酸化チタンの析出物からなる結晶相を生じることがある。その結晶相は、Tiおよびアルカリ金属陽イオンの、結晶相の約0.1モル%から約100モル%の酸化物を含む。理論で束縛されないが、物品の熱加工(例えば、熱処理)中、チタン陽イオンが凝集して、金属硫化物の近くおよび/またはその上で結晶質析出物を形成し、それによって、ガラス状態をガラスセラミック状態に転換させると考えられる。その金属硫化物は、核形成剤(すなわち、金属硫化物は、溶融物より高い溶融温度を有し、それによって、チタンがその上に凝集するであろう種晶として働くことがある)および還元剤(すなわち、金属硫化物は、高還元剤であり、それゆえ、凝集したチタンは、3+状態に還元されるであろう)の両方として機能する二元的役割を果たすことがある。このように、析出物中に存在するチタンは、金属硫化物のために、還元されている、または部分的に還元されていることがある。例えば、析出物内のチタンは、0と約+4の間の酸化状態を有することがある。例えば、析出物は、TiOの一般化学構造を有することがある。しかしながら、相当な比率のチタンが+3の酸化状態にもあり得、ある場合には、これらのTi3+陽イオンは、チタニア結晶格子内のチャンネル中に挿入される種によって電荷安定化され、非化学量論的亜酸化チタン、「チタンブロンズ」または「ブロンズタイプ」チタン結晶として知られる化合物を形成することがある。上述したアルカリ金属および/またはドーパントの1つ以上が、Ti上の+3の電荷を補うために、析出物内に存在することがある。チタンブロンズは、MTiOの一般化学形態をとる非化学量論的亜酸化チタンの群であり、式中、M=H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、U、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Bi、およびCeの1つ以上のドーパント陽イオンであり、0<x<1である。構造MTiOは、還元されたTiO網状構造における正孔(すなわち、結晶格子内の空孔またはチャンネル)が、M原子で無作為に占められた固体欠陥構造であると考えられ、このM原子は、M+陽イオンおよび遊離電子に解離される。「M」の濃度に応じて、材料特性は、金属から半導体に及び得、それによって、多種多様な光吸収および電子特性を調整することができる。3+Tiが多いほど、補うのにより多くのM+が必要であろうし、xの値が大きくなる。
【0090】
上記開示に一貫して、チタンブロンズは、概して式MTiOの非化学量論的化合物であり、式中、Mは、いくつかの他の金属、最も一般的にアルカリなどの陽イオンドーパントであり、xは1未満の変数である。明確にするために、「ブロンズ」と称されるが、これらの化合物は、銅とスズの合金である金属ブロンズとは構造的または化学的に関係していない。チタンブロンズは、均一性がxの関数として変動する固相の範囲である。ドーパントMおよび対応する濃度xに応じて、チタンブロンズの材料特性は、金属から半導体に及び、調整可能な光吸収を示すことがある。これらのブロンズの構造は、M’ドーパント陽イオンが二元酸化物ホストの正孔またはチャンネルに挿入され(すなわち、それを占め)、M+陽イオンと遊離電子に解離する固体欠陥構造である。
【0091】
明確にするために、MTiOは、単斜晶、六方晶、正方晶、立方晶、またはパイロクロアであり得る様々な結晶構造を有し、式中、Mが周期表の特定の元素の内の1つまたは組合せであり得、xが0<x<1で変動し、ブロンズ形成種(この場合、Ti)の酸化状態が、最高酸化状態にある種(Ti4+)と最低酸化状態にある種(例えば、Ti3+)の混合物であり、TiOにおける数値の二(「2」)は、1と2の間であることがある酸素陰イオンの数を表す、非化学量論的または「半化学量論的」化合物の複合系の命名法である。したがって、MTiOは、代わりに、化学形態MTiOとして表されることがあり、式中、0<x<1、1<z<2、または化学形態MTiO2-zとして表されることがあり、式中、0<x<1、0<z<1である。しかしながら、簡潔さのために、この群の非化学量論的結晶に、MTiOが利用される。同様に、「ブロンズ」は、一般に、式M’M”の三元金属酸化物に適用され、式中、(i)M”は遷移金属であり、(ii)M”はその最高二元酸化物であり、(iii)M’はいくつかの他の金属であり、(iv)xは0<x<1の範囲に入る変数である。
【0092】
様々な例によれば、チタンを含むガラスセラミック物品は、W、Mo、および希土類元素を実質的に含まないことがある。先に強調されたように、チタンがそれ自体の亜酸化物を形成する能力により、タングステンおよびモリブデンの必要がなくなることがあり、亜酸化チタンには、希土類元素が必要ないことがある。
【0093】
様々な例によれば、前記ガラスセラミック物品は、低濃度の鉄を有するまたは鉄を含まないことがある。例えば、その物品は、約1モル%以下のFe、または約0.5モル%以下のFe、または約0.1モル%以下のFe、または0.0モル%のFe、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲のFeを含むことがある。
【0094】
様々な例によれば、前記ガラスセラミック物品は、低濃度のリチウムを有するまたはリチウムを含まないことがある。例えば、その物品は、約1モル%以下のLi、または約0.5モル%以下のLi、または約0.1モル%以下のLi、または0.0モル%のLi、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲のLiを含むことがある。
【0095】
様々な例によれば、前記ガラスセラミック物品は、低濃度のジルコニウムを有するまたはジルコニウムを含まないことがある。例えば、その物品は、約1モル%以下のZr、または約0.5モル%以下のZr、または約0.1モル%以下のZr、または0.0モル%のZr、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲のZrを含むことがある。
【0096】
タングステンまたはモリブデン含有物品の形成と同様に、チタンを含む物品は、シリカおよびチタンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程;そのガラス溶融物を固化させて、ガラスを形成する工程;およびそのガラス内に、チタンを含むブロンズタイプの結晶を析出させて、ガラスセラミックを形成する工程を含む方法によって形成されることがある。様々な例によれば、そのブロンズタイプの結晶を析出させる工程は、1つ以上の熱処理によって行われることがある。チタンブロンズタイプの結晶の熱処理は、約400℃から約900℃、または約450℃から約850℃、または約500℃から約800℃、または約500℃から約750℃、または約500℃から約700℃、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲の温度で行われることがある。言い換えると、ブロンズタイプの結晶を析出させる工程は、約450℃から約850℃の温度で行われる、またはブロンズタイプの結晶を析出させる工程は、約500℃から約700℃の温度で行われる。その熱処理は、約15分から約240分、または約15分から約180分、または約15分から約120分、または約15分から約90分、または約30分から約90分、または約60分から約90分、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲の期間に亘り行われることがある。言い換えると、ブロンズタイプの結晶を析出させる工程は、約15分から約240分の期間に亘り行われる、またはブロンズタイプの結晶を析出させる工程は、約60から約90分の期間に亘り行われる。その熱処理は、周囲空気中、不活性雰囲気中、または真空中で行われることがある。
【0097】
前記物品のチタン含有例における亜酸化チタンの形成により、光の異なる波長域の吸収および透過率に差が生じることがある。光の紫外(UV)帯(例えば、約200nmから約400nm)において、ガラス状態にある物品は、亜酸化チタンの析出前に、約18%から約30%の平均UV透過率を有することがある。例えば、ガラス状態にある物品の平均UV透過率は、約18%、または約19%、または約20%、または約21%、または約22%、または約23%、または約24%、または約25%、または約26%、または約27%、または約28%、または約29%、または約30%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。亜酸化チタンの形成または析出後、ガラスセラミック状態にある物品は、約0.4%から約18%の平均UV透過率を有することがある。例えば、ガラスセラミック状態にある物品の平均UV透過率は、約0.4%、または約0.5%、または約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約5%、または約6%、または約7%、または約8%、または約9%、または約10%、または約11%、または約12%、または約13%、または約14%、または約15%、または約16%、または約17%、または約18%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。上述した透過率の値は、約0.4mmから約1.25mmの厚さまたは光の経路長を有する物品に存在することがあることが理解されよう。
【0098】
光の可視帯(例えば、約400nmから約750nmまで)において、ガラス状態にある物品は、亜酸化チタンの析出前に、約60%から約85%の平均可視透過率を有することがある。例えば、ガラス状態にある物品の平均可視透過率は、約60%、または約61%、または約62%、または約63%、または約64%、または約65%、または約66%、または約67%、または約68%、または約69%、約70%、または約71%、または約72%、または約73%、または約74%、または約75%、または約76%、または約77%、または約78%、または約79%、約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。亜酸化チタンの形成または析出後、ガラスセラミック状態にある物品は、約4%から約85%の平均可視透過率を有することがある。例えば、ガラスセラミック状態にある物品の平均可視透過率は、約4%、または約5%、または約10%、または約20%、または約30%、または約40%、または約50%、または約60%、または約70%、または約80%、または約85%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。上述した透過率の値は、約0.4mmから約1.25mmの厚さまたは光の経路長を有する物品に存在することがあることが理解されよう。
【0099】
光の赤外(NIR)帯(例えば、約750nmから約1500nmまで)において、ガラス状態にある物品は、亜酸化チタンの析出前に、約80%から約90%の平均NIR透過率を有することがある。例えば、ガラス状態にある物品の平均NIR透過率は、約80%、または約81%、または約82%、または約83%、または約84%、または約85%、または約86%、または約87%、または約88%、または約89%、または約90%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。亜酸化チタンの形成または析出後、ガラスセラミック状態にある物品は、約0.1%から約10%の平均NIR透過率を有することがある。例えば、ガラスセラミック状態にある物品の平均NIR透過率は、約1%、または約2%、または約3%、または約4%、または約5%、または約6%、または約7%、または約8%、または約9%、または約10%、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあることがある。上述した透過率の値は、約0.4mmから約1.25mmの厚さまたは光の経路長を有する物品に存在することがあることが理解されよう。
【0100】
光のNIR帯において、亜酸化チタンを含まない、ガラス状態にある物品は、約0.4以下、または約0.35以下、または約0.3以下、または約0.25以下、または約0.2以下、または約0.15以下、または約0.1以下、または約0.05以下、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあるmm当たりの平均光学密度(すなわち、第1の近赤外吸光度)を有することがある。亜酸化チタンの析出後、亜酸化チタンを含む、ガラスセラミック状態にある物品は、約6.0以下、または約5.5以下、または約5.0以下、または約4.5以下、または約4.0以下、または約3.5以下、または約3.0以下、または約2.5以下、または約2.0以下、または約1.5以下、または約1.0以下、または約0.5以下、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲にあるmm当たりの平均光学密度(すなわち、第2の近赤外吸光度)を有することがある。このように、ある場合には、第1の平均近赤外吸光度に対する第2の平均近赤外吸光度の比は、約1.5以上、または約2.0以上、または約2.5以上、または約3.0以上、または約5.0以上、または約10.0以上であることがある。そのような例において、亜酸化チタンを含む、ガラスセラミック状態にある物品の可視波長でのmm当たりの平均光学密度は、1.69以下であることがある。
【0101】
様々な例によれば、前記物品は、低ヘイズを示すことがある。例えば、その物品は、約20%以下、または約15%以下、または約12%以下、または約11%以下、または約10.5%以下、または約10%以下、または約9.5%以下、または約9%以下、または約8.5%以下、または約8%以下、または約7.5%以下、または約7%以下、または約6.5%以下、または約6%以下、または約5.5%以下、または約5%以下、または約4.5%以下、または約4%以下、または約3.5%以下、または約3%以下、または約2.5%以下、または約2%以下、または約1.5%以下、または約1%以下、または約0.5%以下、または約0.4%以下、または約0.3%以下、または約0.2%以下、または約0.1%以下、またはそれらの間の任意と全ての値および範囲のヘイズを示すことがある。その物品のヘイズは、1mm厚の試料について、ヘイズ測定に関して先に概説された手法にしたがって測定される。様々な例によれば、その物品のヘイズは、特定のガラスセラミックに大抵存在するが、ヘイズを増加させる傾向にあるベータ石英(すなわち、バージライト(Virgilite))の不在のために、従来のガラスセラミックよりも低いことがある。言い換えると、そのガラスセラミック物品は、ベータ石英結晶相を含まないことがある。さらに、その物品のヘイズは、光を散乱させる傾向にある大きい晶子が少量しかない、またはないためであろう(例えば、約100nm未満、または約60nm未満、または約40nm未満)。
【0102】
亜酸化チタンを含む物品を使用すると、一般式MTiOを有する結晶または非化学量論的チタンブロンズは、多数の利点を与えるであろう。
【0103】
第一に、亜酸化チタンを生じるための熱加工時間は、他のガラスセラミックの製造よりも短いことがある。さらに、熱加工温度は、その物品の軟化点よりも低いことがある。そのような特徴は、製造の複雑さおよび製造費を減少させる上で都合よいであろう。
【0104】
第二に、イオン交換能力を有するものを含む、幅広い溶融組成物に、カラーパッケージ(例えば、TiO+ZnS)を導入することができる。それに加え、比較的低い濃度のカラーパッケージが必要とされるので、そのようなカラーパッケージの添加は、物品の化学的耐久性および他の関連特性にそれほど影響しないであろう。
【0105】
第三に、亜酸化チタンを含有するガラスセラミックを使用すると、放射トラッピングによる溶融の難点を持たないであろう紫外線および/または赤外線遮断材料のための、フュージョン成形可能であり、化学強化可能な材料が提供されるであろう。例えば、亜酸化チタンを含む物品は、溶融状態または注型された状態(すなわち、熱処理前の未加工状態)にあるときに、溶融されたときでさえ近赤外で強力に吸収する、Fe2+ドープガラスと異なり、可視およびNIR波長で極めて透明である。
【実施例
【0106】
以下の実施例は、本開示の物品の組成物の特定の非限定例を表す。
【0107】
ここで表1を参照すると、前記物品は、約58.8モル%から約77.58モル%のSiO、約0.66モル%から約13.69モル%のAl、約4.42モル%から約27モル%のB、約0モル%から約13.84モル%のRO、約0モル%から約0.98モル%のRO、約1.0モル%から約13.24モル%のWO、および約0モル%から約0.4モル%のSnOを有することがある。表1の例示の組成物のいずれも、約0モル%から約0.2モル%のMnO、約0モル%から約0.1モル%のFe、約0モル%から約0.01モル%のTiO、約0モル%から約0.17モル%のAs、および/または約0モル%から約0.1モル%のEuを含むことがあることが理解されよう。表1の組成物は、坩堝内のバッチ配合された状態で与えられている。
【0108】
【表1-1】
【0109】
【表1-2】
【0110】
【表1-3】
【0111】
ここで表2を参照すると、前記物品は、約65.43モル%から約66.7モル%のSiO、約9.6モル%から約9.98モル%のAl、約9.41モル%から約10.56モル%のB、約6.47モル%から約9.51モル%のRO、約0.96モル%から約3.85モル%のRO、約1.92モル%から約3.85モル%のWO、約0モル%から約1.92モル%のMoO、および約0モル%から約0.1モル%のSnOを有することがある。表2の組成物は、坩堝内のバッチ配合された状態で与えられている。
【0112】
【表2】
【0113】
ここで表3を参照すると、前記物品は、約60.15モル%から約67.29モル%のSiO、約9.0モル%から約13.96モル%のAl、約4.69モル%から約20モル%のB、約2.99モル%から約12.15モル%のRO、約0.00モル%から約0.14モル%のRO、約0モル%から約7.03モル%のWO、約0モル%から約8.18モル%のMoO、約0.05モル%から約0.15モル%のSnO、および約0モル%から約0.34モル%のVを有することがある。表3の例示の組成物のいずれも、約0モル%から約0.0025モル%のFeを含むことがあることが理解されよう。表3の組成物は、坩堝内のバッチ配合された状態で与えられている。
【0114】
【表3】
【0115】
ここで表4を参照すると、前記物品は、約54.01モル%から約67.66モル%のSiO、約9.55モル%から約11.42モル%のAl、約9.36モル%から約15.34モル%のB、約9.79モル%から約13.72モル%のRO、約0.00モル%から約0.22モル%のRO、約1.74モル%から約4.48モル%のWO、約0モル%から約1.91モル%のMoO、約0.0モル%から約0.21モル%のSnO、約0モル%から約0.03モル%のV、約0モル%から約0.48モル%のAg、および約0モル%から約0.01モル%のAuを有することがある。表4の例示の組成物のいずれも、約0モル%から約0.19モル%のCeO、約0モル%から約0.48モル%のCuO、約0モル%から約0.52モル%のBr、約0モル%から約0.2モル%のCl、約0モル%から約0.96モル%のTiO、および/または約0モル%から約0.29モル%のSbを含むことがあることが理解されよう。表4の組成物は、坩堝内のバッチ配合された状態で与えられている。
【0116】
【表4-1】
【0117】
【表4-2】
【0118】
【表4-3】
【0119】
【表4-4】
【0120】
ここで表5を参照すると、前記物品は、約60.01モル%から約77.94モル%のSiO、約0.3モル%から約10.00モル%のAl、約10モル%から約20モル%のB、約0.66モル%から約10モル%のRO、約1.0モル%から約6.6モル%のWO、および約0.0モル%から約0.1モル%のSnOを有することがある。表5の例示の組成物のいずれも、約0モル%から約0.09モル%のSbを含むことがあることが理解されよう。表5の組成物は、坩堝内のバッチ配合された状態で与えられている。
【0121】
【表5】
【0122】
ここで表6を参照すると、束縛アルカリ(例えば、霞石)の代わりに、非束縛アルカリバッチ材料(例えば、アルカリ炭酸塩)を使用して溶融したときに、溶融過程中に分離する液体タングステン酸アルカリを形成する比較の例示のガラス組成物のリストが与えられている。先に説明したように、第2の液体のタングステン酸アルカリ相が別の結晶として固化することがあり、その結晶は、それから製造された基板を乳白色にすることがある。
【0123】
【表6】
【0124】
例示の用途
背景に関して言えば、カドミウムおよびセレンを含有するガラス(「CdSeガラス」)は、かなりの量のカドミウムおよびセレンを有するので、その毒性により特徴付けられることがある。CdSeガラスの非毒性または毒性の低い代替品を開発するために、ある労力が払われてきた。例えば、従来の代替物に、無Cdガラス組成物がある。それにもかかわらず、これらの組成物はまだ、セレンと、インジウムおよびガリウムなどの他の高価なドーパントとを含有している。さらに、従来の無Cdのセレン含有ガラスは、CdSeガラスに対して劣ったカットオフ波長および/または視角依存性により特徴付けられてきた。したがって、出願人等は、従来のCdSeガラスに対して匹敵するまたは改善された光学的性質を有する、カドミウムおよびセレンを含まない材料が必要とされていると考えている。これらの材料が、CdSeガラスの非毒性代替物として、調整可能なバンドギャップおよび急なカットオフを有することが好ましい。これらの材料の目的とする用途に鑑みて、低い熱膨張係数(CTE)、耐久性、熱応力抵抗性および/または比較的簡単かつ低コストの製造および加工要件により特徴付けられる非毒性のCdSeガラス代替物も必要とされている。
【0125】
本開示のいくつかの態様によれば、アルミノホウケイ酸塩ガラス;約0.7から約15モル%のWO;約0.2から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物;および約0.1から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むガラスセラミックが提供される。
【0126】
本開示のいくつかの態様によれば、アルミノホウケイ酸塩ガラス;約0.7から約15モル%のWO;約0.2から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物;および約0.1から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むガラスセラミックが提供される。さらに、そのガラスセラミックは、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長を有する。
【0127】
本開示のいくつかの態様によれば、アルミノホウケイ酸塩ガラス;約0.7から約15モル%のWO;約0.2から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物;および約0.1から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むガラスセラミックが提供される。さらに、そのガラスセラミックは、アルカリ土類、アルカリおよび混合アルカリ土類・アルカリのタングステン酸塩の結晶相の内の少なくとも1つを含み、その結晶相は化学量論的または非化学量論的形態にある。
【0128】
ガラスセラミックの先の態様のいくつかの実施において、前記アルミノホウケイ酸塩ガラスは、約55から約80モル%のSiO、約2から約20モル%のAl、および約5から約40モル%のB、または68から72モル%のSiO、8から12モル%のAl、および5から20モル%のBを含む。さらに、少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物は、0.1から5モル%のMgOを含み得る。少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物は、5から15モル%のNaOを含み得る。それに加え、このアルミノホウケイ酸塩ガラス中の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物とAlの量の差は、-6モル%から+2モル%に及び得る。
【0129】
ガラスセラミックの先の態様の追加の実施において、前記ガラスセラミックは、カドミウムを実質的に含まず、セレンを実質的に含まないことがあり得る。さらに、そのガラスセラミックは、F、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Sb、TeおよびBiからなる群より選択される少なくとも1種類のドーパントをさらに含み得る。ガラスセラミックの先の態様のさらなる実施において、前記ガラスセラミックは、そのガラスセラミック中に存在するWOの0%から約50%のMoOをさらに含み得る。
【0130】
本開示の追加の態様によれば、主面と、アルミノホウケイ酸塩ガラス;約0.7から約15モル%のWO;約0.2から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物;および約0.1から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むガラスセラミック組成とを有する基板を備えた物品が提供される。さらに、この態様のいくつかの実施において、その基板は、圧縮応力領域をさらに含み、その圧縮応力領域は、前記主面からその基板の第1の選択深さまで延在し、イオン交換過程により生じる。また、この態様のいくつかの実施の形態において、その基板は、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長を有する。
【0131】
本開示のさらなる態様によれば、ガラスセラミックを製造する方法であって、アルミノホウケイ酸塩ガラス、約0.7から約15モル%のWO、約0.2から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、および約0.1から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含むバッチを混合する工程;そのバッチを約1500℃と約1700℃の間で溶融して、溶融物を形成する工程;その溶融物を約500℃と約600℃の間で徐冷して、徐冷溶融物を規定する工程;およびその徐冷溶融物を約5分から約48時間に亘り約500℃と約1000℃の間で熱処理して、ガラスセラミックを形成する工程を有してなる方法が提供される。
【0132】
ガラスセラミックを製造する先の方法のいくつかの実施において、熱処理する工程は、その徐冷溶融物を約5分から約24時間に亘り約600℃と約800℃の間で熱処理して、ガラスセラミックを形成する工程を含む。さらに、その熱処理する工程は、徐冷溶融物を約45分から約3時間に亘り約650℃と約725℃の間で熱処理して、ガラスセラミックを形成する工程を含み得る。その方法のいくつかの実施の形態において、そのガラスセラミックは、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長を有する。
【0133】
本開示に詳述されているように、従来のCdSeガラスに対して匹敵するまたは改善された光学的性質を有する、カドミウムおよびセレンを含まないガラスセラミック材料が提供される。実施の形態において、これらの材料は、CdSeガラスに対する非毒性代替物として、調整可能なバンドギャップおよび急なカットオフを有する。これらの材料の実施の形態は、低い熱膨張係数(CTE)、耐久性、熱応力抵抗性および/または比較的簡単かつ低コストの製造および加工要件により特徴付けることもできる。
【0134】
より一般に、ここに開示されたガラスセラミック材料、およびそれを含有する物品は、残りのアルミノホウケイ酸塩ガラス、酸化タングステン、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、および少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含む。これらのガラスセラミック材料は、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長により特徴付けることができる。さらに、これらの材料は、例えば、ガラスセラミックの形成後の特定の熱処理条件によって、発生したままの、少なくとも1種類のアルカリ土類タングステン酸塩結晶相を含み得る。それに加え、これらのガラスセラミック材料の実施の形態は、特定の熱処理条件の選択によって調整可能なカットオフにより特徴付けられる。このように、これらのガラスセラミック材料は、従来のCdSeガラスに対する代替物として、非毒性であり、カドミウムおよびセレンを含まないガラスセラミックを提示する。
【0135】
本開示のガラスセラミック材料の様々な実施の形態は、以下の用途:赤外線照明のための可視光を抑制するように作られた保安および監視フィルタ;空港の滑走路ランプ;レーザ用の眼の保護レンズ;電気機械における運動制御用光バリア;バーコード・リーダー;原子間力顕微鏡;ナノ圧子;レーザ干渉計計測学ソリューション;レーザを使用する動的較正システム;集積回路製造のためのリソグラフィー・ソリューション;光ビット誤り率試験ソリューション;フォトニック・デジタル通信分析機;フォトニック・ジッター生成および分析システム;光変調分析機;光強度測定器;光アッテネータ;光源;光波成分分析機;ガスクロマトグラフ;分光計;蛍光顕微鏡;交通監視カメラ;環境廃棄物、水および排ガス監視装置;写真用カメラのスペクトルフィルタ;放射温度計;結像輝度測色計;産業用画像処理;偽札検出に用いられる波長制御光源;カラー画像をデジタル化するためのスキャナ;天文フィルタ;医療診断装置におけるハンフリー視野計;および超短パルスレーザ用光学フィルタ:のいずれかにおける基板、要素、カバーおよび他の要素の形態で利用することができる。これらのガラスセラミック材料の実施の形態は、ガラス吹き工、火炎作業者(flameworker)、ステンドグラスの芸術家などの、着色ガラス、ガラスセラミックおよびセラミックを利用する様々な芸術的試みおよび用途にも好適である。
【0136】
前記ガラスセラミック材料、およびそれを含有する物品は、CdSeガラスを含む、同じ分野の従来のガラス、ガラスセラミックおよびセラミック材料を上回る、様々な利点を提示する。先に述べたように、本開示のガラスセラミック材料は、オレンジ色の従来のCdSeフィルタガラスと類似の鋭い可視減衰を提示しつつ、カドミウムおよびセレンを含まない。本開示のガラスセラミック材料は、CdSeガラスに対する従来の代替物である半導体ドープガラスと比較して、より鋭い可視減衰も提示する。さらに、本開示のガラスセラミック材料は、インジウム、ガリウム、および/または他の高コスト金属および成分を用いる、CdSeガラスに対する従来の代替物と比較して、より低コストの材料で配合される。これらのガラスセラミック材料の別の利点は、熱処理温度および時間条件の選択により調整可能なカットオフ波長により特徴付けられることである。これらのガラスセラミック材料のさらなる利点は、CdSeガラスと対照的に、900から1100nmの波長で透過率の減少を示さず、近赤外(「NIR」)スペクトルにおいて透明であることである。それに加え、これらのガラスセラミック材料は、追加の半導体合成およびフライス加工工程を必要とする、インジウムおよびガリウムを含有する半導体ドープガラスなどの、他の従来のCdSeガラスの代替物と異なり、従来の溶融物急冷過程で製造できる。
【0137】
ここで図1を参照すると、本開示によるガラスセラミック組成物から作られた基板10を含む物品100が示されている。これらの物品は、先に概説した用途(例えば、光学フィルタ、空港の滑走路用ランプ、バーコード・リーダーなど)のいずれに用いることもできる。したがって、基板10は、いくつかの実施の形態において、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長により特徴付けることができる。基板10は、一対の互いに反対の主面12、14を有する。物品100のいくつかの実施の形態において、基板10は、圧縮応力領域50を含む。図1に示されるように、物品100の圧縮応力領域50は、例示であり、主面12から基板中の第1の選択深さ52まで延在する。物品100のいくつかの実施の形態(図示せず)は、主面14から第2の選択深さまで延在する追加の同程度の圧縮応力領域50(図示せず)を含む。さらに、物品100のいくつかの実施の形態(図示せず)は、基板10の主面12、14から延在する多数の圧縮応力領域50を含む。さらにまた、物品100のいくつかの実施の形態(図示せず)は、それぞれの主面12、14から延在する多数の圧縮応力領域50、および基板10の短いエッジ(すなわち、主面12、14に対して垂直なエッジ)からも延在する圧縮応力領域を含む。本開示の分野の当業者に理解されるように、これらの圧縮応力領域50を生成するために用いられる加工条件(例えば、溶融塩イオン交換浴中の基板10の完全な浸漬、溶融塩イオン交換浴中の基板10の部分的浸漬、特定のエッジおよび/または表面をマスキングした、基板10の全浸漬など)に応じて、物品100内に、圧縮応力領域50の様々な組合せを組み込むことができる。
【0138】
ここに用いられているように、「選択深さ」(例えば、選択深さ52)、「圧縮深さ」および「DOC」は、ここに記載されたような、基板10における応力が、圧縮から引張に変わる深さを定義するために、交換可能に使用される。DOCは、イオン交換処理に応じて、FSM-6000、または散乱光偏光器(SCALP)などの表面応力計によって測定されることがある。ガラスまたはガラスセラミック組成を有する基板10における応力が、ガラス基板中にカリウムイオンを交換することによって生じる場合、DOCを測定するために、表面応力計が使用される。応力が、ガラス物品中にナトリウムイオンを交換することによって生じる場合、DOCを測定するために、SCALPが使用される。ガラスまたはガラスセラミック組成を有する基板10における応力が、ガラス基板中にカリウムイオンとナトリウムイオンの両方を交換することによって生じる場合、DOCはSCALPにより測定される。何故ならば、ナトリウムイオンの交換深さがDOCを表し、カリウムイオンの交換深さが、圧縮応力の大きさの変化(しかし、圧縮から引張への応力の変化ではない)を表すと考えられるからである;そのようなガラス基板におけるカリウムイオンの交換深さは、表面応力計で測定される。またここに用いられているように、「最大圧縮応力」は、基板10中の圧縮応力領域50内の最大圧縮応力と定義される。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力は、圧縮応力領域50を画成する1つ以上の主面12、14で、またはそこに近接して得られる。他の実施の形態において、最大圧縮応力は、1つ以上の主面12、14と、圧縮応力領域50の選択深さ52との間で得られる。
【0139】
再び図1を参照すると、物品100の基板10は、ガラスセラミック組成により特徴付けることができる。実施の形態において、基板10のガラスセラミック組成は、0.7から15モル%のWO、0.2から15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、0.1から5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、および残りのケイ酸塩含有ガラスにより与えられる。これらのケイ酸塩含有ガラスとしては、アルミノホウケイ酸塩ガラス、ホウケイ酸ガラス、アルミノケイ酸塩ガラス、ソーダ石灰ガラス、およびこれらのケイ酸塩含有ガラスの化学強化されたものが挙げられる。
【0140】
さらに、図1に示された物品100の実施の形態において、基板10は、表面積を規定するために、選択された長さと幅、または直径を有することがある。基板10は、その長さと幅、または直径により画成された基板10の主面12、14の間の少なくとも1つのエッジを有することがある。基板10は、選択された厚さも有することがある。いくつかの実施の形態において、基板は、約0.2mmから約1.5mm、約0.2mmから約1.3mm、および約0.2mmから約1.0mmの厚さを有する。他の実施の形態において、基板は、約0.1mmから約1.5mm、約0.1mmから約1.3mm、および約0.1mmから約1.0mmの厚さを有する。
【0141】
図1に例示形態で示されたような、物品100のいくつかの実施の形態において、基板10は、化学強化されたアルミノホウケイ酸塩ガラスから選択される。例えば、基板10は、10μm超の第1の選択深さ52まで延在し、150MPa超の最大圧縮応力を持つ圧縮応力領域50を有する化学強化されたアルミノホウケイ酸塩ガラスから選択することができる。さらなる実施の形態において、基板10は、25μm超の第1の選択深さ52まで延在し、400MPa超の最大圧縮応力を持つ圧縮応力領域50を有する化学強化されたアルミノホウケイ酸塩ガラスから選択される。物品100の基板10は、約150MPa超、約200MPa超、約250MPa超、約300MPa超、約350MPa超、約400MPa超、約450MPa超、約500MPa超、約550MPa超、約600MPa超、約650MPa超、約700MPa超、約750MPa超、約800MPa超、約850MPa超、約900MPa超、約950MPa超、約1000MPa超、およびこれらの値の間の全ての最大圧縮応力レベルの最大圧縮応力を有する、主面12、14の1つ以上から(複数の)選択深さ52まで延在する1つ以上の圧縮応力領域50も含むことがある。いくつかの実施の形態において、最大圧縮応力は、2000MPa以下である。それに加え、圧縮深さ(DOC)または第1の選択深さ52は、基板10の厚さ、および圧縮応力領域50の生成に関連する加工条件に応じて、10μm以上、15μm以上、20μm以上、25μm以上、30μm以上、35μm以上、およびさらに大きい深さまでに設定することができる。いくつかの実施の形態において、DOCは、基板10の厚さ(t)の0.3倍以下、例えば、0.3t、0.28t、0.26t、0.25t、0.24t、0.23t、0.22t、0.21t、0.20t、0.19t、0.18t、0.15t、または0.1tである。
【0142】
先に概説したように、物品100に用いられる基板(図1参照)を含む、本開示のガラスセラミック材料は、以下のガラスセラミック組成:0.7から15モル%のWO、0.2から15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、0.1から5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物、および残りのケイ酸塩含有ガラス、例えば、アルミノホウケイ酸塩ガラスにより特徴付けられる。実施の形態において、そのガラスセラミック材料は、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長により特徴付けることができる。いくつかの実施において、そのガラスセラミック材料は、少なくとも1種類のアルカリ土類タングステン酸塩結晶相および/または少なくとも1種類のアルカリ金属タングステン酸塩結晶相の存在によりさらに特徴付けることができる。例えば、そのアルカリ土類タングステン酸塩結晶相は、MWOにより得られることができ、式中、Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびRaの内の少なくとも1つであり、0<x<1である。本開示のガラスセラミックのある実施の形態において、少なくとも1種類のアルカリ土類金属タングステン酸塩結晶相は、MgWO結晶相(例えば、図5およびその対応する記載を参照のこと)およびMgW結晶相(例えば、図6A~6C、7Aおよび7B、並びにその対応する記載を参照のこと)の内の一方または両方である。別の例として、タングステン酸アルカリ結晶相は、MWOにより与えられ、式中、Mは、Li、Na、K、Cs、Rbの内の少なくとも1つであり、0<x<1である。さらなる例として、タングステン酸塩結晶相は、MWOにより与えることができ、式中、Mは、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、およびRaからなる群より選択されるアルカリ土類金属と、Li、Na、K、Cs、Rbからなる群より選択されるアルカリ金属との組合せであり、0<x<1である。
【0143】
実施の形態において、本開示のガラスセラミックは、スペクトルの可視領域(すなわち、約400nmから約700nmまで)において光学的に透明である。ここに用いられているように、「光学的に透明」という用語は、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り1mmの経路長で約1%(例えば、%/mmの単位で)超の透過率を称する。いくつかの実施の形態において、そのガラスセラミックは、全て、そのスペクトルの可視領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り、約5%/mm超、約10%/mm超、約15%/mm超、約20%/mm超、約25%/mm超、約30%/mm超、約40%/mm超、約50%/mm超、約60%/mm超、約70%/mm超、およびこれらの値の間の全ての下限より大きい透過率を有する。
【0144】
本開示のガラスセラミックの実施の形態は、追加のコーティングまたは膜を使用せずに、そのスペクトルの紫外(「UV」)領域(すなわち、約370nm未満の波長)および/または近赤外(「NIR」)領域(すなわち、約700nmから約1700nmまで)の光を吸収する。いくつかの実施において、そのガラスセラミックは、そのスペクトルのUV領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、10%/mm未満、9%/mm未満、8%/mm未満、7%/mm未満、6%/mm未満、5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、およびさらに1%/mm未満の透過率によって特徴付けられる。いくつかの実施の形態において、そのガラスセラミックは、そのスペクトルのUV領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、または少なくとも99%/mmさえ吸収する、またはその吸光度を有する。他の実施において、そのガラスセラミックは、スペクトルのNIR領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘る光について、10%/mm未満、9%/mm未満、8%/mm未満、7%/mm未満、6%/mm未満、5%/mm未満、4%/mm未満、3%/mm未満、2%/mm未満、および1%/mm未満の透過率により特徴付けられる。他の実施の形態において、そのガラスセラミックは、スペクトルのNIR領域の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域の光について、少なくとも90%/mm、少なくとも91%/mm、少なくとも92%/mm、少なくとも93%/mm、少なくとも94%/mm、少なくとも95%/mm、少なくとも96%/mm、少なくとも97%/mm、少なくとも98%/mm、または少なくとも99%/mmさえを吸収する、またはその吸光度を有する。
【0145】
本開示のガラスセラミック材料の実施の形態は、アルミノホウケイ酸塩ガラス(例えば、SiO、Al、およびBを含有する)、WO、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物、および少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含む。いくつかの実施の形態において、そのアルミノホウケイ酸塩ガラスは、約55モル%から約80モル%のSiO、約60モル%から約74モル%のSiO、または約64モル%から約70モル%のSiOを含む。さらに、前記ガラスセラミックのアルミノホウケイ酸塩ガラスは、約2モル%から約40モル%のB、約5モル%から約16モル%のB、または約6モル%から約12モル%のBを含み得る。それに加え、そのガラスセラミックのアルミノホウケイ酸塩ガラスは、約0.5モル%から約16モル%のAl、約2モル%から約20モル%のAl、または約6モル%から約14モル%のAlを含み得る。
【0146】
本開示のガラスセラミック材料は、約0.7モル%から約15モル%のWOを含む。いくつかの実施の形態において、そのガラスセラミック材料は、約1モル%から約6モル%のWO、または約1.5モル%から約5モル%のWOを含む。いくつかの実施において、そのガラスセラミックは、組成物中に存在するWOの約0%から約50%のMoO(すなわち、約0モル%から5モル%のMoO)をさらに含み得る。いくつかの実施の形態において、そのガラスセラミックは、約0モル%から約3モル%、または約0モル%から約2モル%のMoOをさらに含む。
【0147】
本開示のガラスセラミック材料は、少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含む。実施の形態において、そのガラスセラミック材料は、約0.2モル%から約15モル%の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物を含む。その少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物は、LiO、NaO、KO、RbO、およびCsOを含む群から選択することができる。いくつかの実施において、アルミノホウケイ酸塩ガラス中の少なくとも1種類のアルカリ金属酸化物とAlの量の差は、-6モル%から+2モル%に及ぶ。
【0148】
本開示のガラスセラミック材料は、少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物も含む。実施の形態において、そのガラスセラミックは、約0.1モル%から約5モル%の少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物を含む。その少なくとも1種類のアルカリ土類金属酸化物は、MgO、SrOおよびBaOを含む群から選択することができる。追加の実施の形態において、本開示のガラスセラミック材料は、約0モル%から約0.5モル%、約0モル%から約0.25モル%、または約0モル%から約0.15モル%のSnOを含む。
【0149】
好ましい実施による、本開示のガラスセラミック材料は、カドミウムを実質的に含まず、セレンを実質的に含まない。実施の形態において、そのガラスセラミックは、F、P、S、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、Sb、TeおよびBiからなる群より選択される少なくとも1種類のドーパントをさらに含み得る。いくつかの実施の形態において、その少なくとも1種類のドーパントは、酸化物として約0モル%から約0.5モル%でガラスセラミック中に存在する。
【0150】
本開示の原理によるガラスセラミックの非限定的組成物が、表1A(質量パーセントで報告されている)および1B(モル%で報告されている)で下記に列挙されている。
【0151】
【表7A-1】
【0152】
【表7A-2】
【0153】
【表7B-1】
【0154】
【表7B-2】
【0155】
実施の形態によれば、本開示のガラスセラミック材料は、溶融急冷過程(melt quench process)を用いることによって製造することができる。適切な比率の成分を、乱流混合および/またはボールミル粉砕によって、混合し、ブレンドすることがある。バッチ材料としては、以下に限られないが、砂、スポジュメン、葉長石、霞石、閃長岩、アルミナ、ホウ砂、ホウ酸、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩と硝酸鉛、酸化タングステンおよびタングステン酸アンモニウムが挙げられる。次に、バッチ配合した材料を、所定の時間に亘り約1500℃から約1700℃に及ぶ温度で溶融する。いくつかの実施において、所定の時間は、約6から約12時間に及び、その後、本開示の分野の当業者に理解されるように、得られた溶融物を、注型または成形し、次いで、徐冷することができる。いくつかの実施の形態において、その溶融物は、徐冷溶融物を規定するために、約500℃と約600℃の間で徐冷することができる。
【0156】
方法のこの段階で、徐冷溶融物は、約5分から約48時間に亘り約500℃から約1000℃で熱処理されて、ガラスセラミックを形成する。実施の形態において、その熱処理工程は、ガラスセラミックの徐冷点またはそれよりわずかに高く、かつその軟化点より低い温度で行われて、1つ以上のタングステン酸塩結晶相を発生させる。
【0157】
いくつかの実施の形態において、徐冷溶融物は、約5分から約24時間に亘り約600℃から約800℃で熱処理されて、ガラスセラミックを形成する。いくつかの実施の形態によれば、徐冷溶融物は、約45分から約3時間に亘り約650℃から約725℃で熱処理されて、ガラスセラミックを形成する。別の実施において、徐冷溶融物は、特定の光学的性質、例えば、700nmから3000nmまでの少なくとも90%の光透過率、および約320nmから約525nmの急なカットオフ波長を得るための温度および時間にしたがって熱処理される。さらに、実施例において下記に概説されるように、ガラスセラミック材料を得るために、追加の熱処理の温度と時間を利用しても差し支えない。
【0158】
例示の用途のための実施例
以下の実施例は、本開示のガラスセラミック材料および物品の、それらを製造する方法を含む特定の非限定例を示す。
【0159】
ここで図2Aおよび2Bを参照すると、比較のCdSeガラス(「比較例1」)および熱処理されたガラスセラミック(「実施例1」)の透過率対波長のプロットが与えられている。図2Bは、比較のCdSeガラスおよび熱処理されたガラスセラミックのカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図2Aのプロットであることに留意のこと。この実施例において、比較のCdSeガラスの比較例1は、以下による従来のCdSeガラス組成を有する:40~60%のSiO、5~20%のB、0~8%のP、1.5~6%のAl、4~8%のNaO、6~14%のKO、4~12%のZnO、0~6%のBaO、0.2~2.0%のCdO、0.2~1%のS、および0~1%のSe;熱処理されたガラスセラミックは、実施例1の試料について表1Aおよび1Bに示されたのと同じ組成を有する。さらに、図2Aおよび2Bに示されたガラスセラミックは、約1時間に亘る700℃での徐冷溶融物の加熱を含む、熱処理工程を含む、本開示において先に述べたような、ガラスセラミック材料を製造する方法にしたがって調製された。それに加え、図2Aおよび2Bに示された両方の試料は、4mmの正規化経路長を有する。これらの図面から明らかなように、1時間に亘り700℃で熱処理されたガラスセラミック試料(実施例1)は、CdSeガラス試料(比較例1)とほぼ同じ波長範囲および急激さで急なカットオフを示す。
【0160】
ここで図3Aおよび3Bを参照すると、比較のCdSeガラス(「比較例1」)および熱処理されたガラスセラミック(「実施例1A~1K」)の透過率対波長のプロットが与えられている。図3Bは、比較のCdSeガラスおよび熱処理されたガラスセラミックのカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図3Aのプロットであることに留意のこと。この実施例において、比較のCdSeガラスの比較例1は、以下による従来のCdSeガラス組成を有する:40~60%のSiO、5~20%のB、0~8%のP、1.5~6%のAl、4~8%のNaO、6~14%のKO、4~12%のZnO、0~6%のBaO、0.2~2.0%のCdO、0.2~1%のS、および0~1%のSe;熱処理されたガラスセラミック試料の各々は、実施例1の試料について表1Aおよび1Bに示されたのと同じ組成を有する。さらに、図3Aおよび3Bに示されたガラスセラミックの各々は、徐冷後に以下の熱処理工程を含む、本開示において先に述べたような、ガラスセラミック材料を製造する方法にしたがって調製された:1時間40分に亘る525℃(実施例1A)、10時間39分に亘る525℃(実施例1B)、3時間10分に亘る550℃(実施例1C)、6時間24分に亘る600℃(実施例1D)、15時間20分に亘る600℃(実施例1E)、2時間に亘る650℃(実施例1F)、3時間に亘る650℃(実施例1G)、5時間35分に亘る650℃(実施例1H)、23時間10分に亘る650℃(実施例1I)、1時間に亘る700℃(実施例1J)、および2時間に亘る700℃(実施例1K)。それに加え、図3Aおよび3Bに示された試料の全ては、4mmの正規化経路長を有する。これらの図面から明らかなように、様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミック試料の全て(実施例1A~1K)は、CdSeガラス試料(比較例1)とほぼ同じ波長範囲および急激さで急なカットオフを示す。さらに、これらの図面から、約320nmから約525nmの範囲内でカットオフ波長およびその急激さを変更および調整するために、様々な熱処理温度および時間の条件を利用できることが明らかである。
【0161】
別の例によれば、比較のCdSeガラス試料、および様々な条件にしたがって700℃および800℃で熱処理されたガラスセラミック試料を調製し、その光学的性質について評価した。図4Aは、比較のCdSeガラス試料(「比較例1」)、および様々な条件にしたがって700℃および800℃で熱処理されたガラスセラミック試料(実施例1Kおよび2A)の透過率対波長のプロットである。図4Bは、比較のCdSeガラス試料および様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミック試料のカットオフ波長を示すために縮尺が変えられた、図4Aのプロットであることに留意のこと。この実施例において、比較のCdSeガラスの比較例1は、以下による従来のCdSeガラス組成を有する:40~60%のSiO、5~20%のB、0~8%のP、1.5~6%のAl、4~8%のNaO、6~14%のKO、4~12%のZnO、0~6%のBaO、0.2~2.0%のCdO、0.2~1%のS、および0~1%のSe;熱処理されたガラスセラミックの実施例1Kは、実施例1の試料について表1Aおよび1Bに示されたのと同じ組成を有し;熱処理されたガラスセラミックの実施例2Aは、実施例2の試料について表1Aおよび1Bに示されたのと同じ組成を有する。さらに、図4Aおよび4Bに示されたガラスセラミックの各々は、徐冷後に以下の熱処理工程を含む、本開示において先に述べたような、ガラスセラミック材料を製造する方法にしたがって調製された:2時間に亘る700℃(実施例1K)、および1時間4分に亘る800℃(実施例2A)。それに加え、図4Aおよび4Bに示された試料の全ては、4mmの正規化経路長を有する。これらの図面から明らかなように、様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミック試料の全て(実施例1Kおよび2A)は、CdSeガラス試料(比較例1)とほぼ同じ波長範囲および急激さで急なカットオフを示す。さらに、これらの図面およびこれらのガラスセラミックのそれぞれの組成(表1Aおよび1B参照)から、約320nmから約525nmの範囲内でカットオフ波長およびその急激さを変更および調整するために、特定の熱処理条件と共に、これらのマグネシウム・タングステン・ガラスセラミック組成物を利用できることが明らかである。実施例1Kのガラスセラミックのマグネシウム含有量(約0.95モル%)と比べて、実施例2Aのガラスセラミックの高いマグネシウム含有量(約3.84モル%)は、より低いカットオフ波長およびおそらく、NIR範囲における高い透過率に寄与する可能性があることも明白である。したがって、理論で束縛されないが、様々な熱処理条件と共に、これらのガラスセラミック組成中のマグネシウム含有量を変えることには、そのガラスセラミックのスペクトルおよびカットオフ波長を変える効果があり得る。
【0162】
ここで図4Cを参照すると、比較のCuInSeおよびCuInSガラス試料(それぞれ、「比較例2」および「比較例3」)の透過率対波長のプロットとともに、図4Aのプロットが再び与えられている。比較例2および比較例3のスペクトルのプロットは、2015年3月26日にOko-Institut e.V.に提出された「Exemption Renewal Request 13(b)」、Spectaris e.V.から得た。さらに、図4Cは、比較のCdSeガラスの比較例1、様々な条件にしたがって熱処理されたガラスセラミック試料(実施例1Kおよび実施例2A)、および比較のCuInSeおよびCuInS試料(比較例2および比較例3)のカットオフ波長を示すために拡大されている。図4Cから、本開示によるガラスセラミック材料の実施例1Kおよび実施例2Aは、比較のCdSeガラスのカットオフ波長を近似するという観点で、比較のCuInSeおよびCuInSガラスを凌いでいることが明らかである。すなわち、これらのガラスセラミックは、他の半導体ドープガラス代替物であるCuInSeおよびCuInSと比べて、CdSeガラスのものをより良く近似した光学的性質を有する。
【0163】
ここで図5を参照すると、熱処理されたガラスセラミックの実施例1L(表1Aおよび1B参照)のX線回折(「XRD」)プロットが、本開示の少なくとも1つの実施例にしたがって提供されている。この試料は、17時間16分に亘り700℃で熱処理された。列挙されたd間隔(例えば、d=3.6127、d=3.2193など)でのピークから明らかと思われるように、実施例1Lのガラスセラミックは、MgWO結晶タングステン酸化物相を含み得る。理論で束縛されないが、図5のXRDプロットは、そのガラスセラミックは、MWO結晶と記載できる、非化学量論的MgWO相または混合アルカリMgWO相を含むことも示唆し、ここで、M=MgまたはM=MgおよびLi、Na、K、RbおよびCdからなるアルカリ金属の群の1つ以上であり、0<x<1である。
【0164】
ここで図6A~6Cを参照すると、本開示の実施例にしたがって、スプラット急冷されたガラスセラミック試料(すなわち、図6A、実施例1、徐冷後に熱処理なし)および5時間35分に亘り650℃で、および17時間16分に亘り700℃で熱処理されたガラスセラミック試料(それぞれ、図6Bおよび6Cに示されたような、実施例1Hおよび実施例1L)のラマン分光法のプロットが提供されている。先の実施例におけるように、ラマン分光法試験を行ったガラスセラミック材料の全ては、表1Aおよび1Bにおける実施例1によるガラスセラミック組成を有した。図6Bおよび6Cのデータ群に関連する特定の番号指定(例えば、「#1」、「#2-オレンジ」、「2#-灰色」など)は、ラマン分光法試験を行った試料上の特定の評価位置(それらの位置での試料の色を含む)に対応する。図6Aは、さらに熱処理を行わなかったスプラット急冷された試料(実施例1)が、非結晶相を示す様々な増加した強度レベル(例えば、470cm-1での網状構造の曲げSi-O、Al-OおよびB-O)を示すことを実証している。対照的に、図6Bおよび6Cは、熱処理された試料(実施例1Hおよび1L)は、スプラット急冷された試料(実施例1)に観察された低い強度レベルに関連する同じラマンシフト位置で相当高い強度レベルを有し、その位置は、結晶相(例えば、846および868cm-1でのMgWに関連するW-O-W)の存在を示すことを実証している。このように、以下に限られないが、345、376、404、464、718、846および868cm-1を含むラマンシフト位置での信号ピークの存在でも分かるように、熱処理条件により、結晶タングステン酸化物相、例えば、MgWの発生がもたらされることが明白なように思われる。図6Bおよび6Cは、熱処理条件により、結晶タングステン酸化物相(すなわち、先に概説したMxWO結晶相)との組合せで、またはその代わりに、結晶タングステン亜酸化物相(すなわち、非化学量論的相)の発生がもたらされることも示唆している。
【0165】
ここで図7Aおよび7Bを参照すると、本開示の実施例にしたがって、5時間35分に亘り650℃で、および17時間16分に亘り700℃で熱処理されたガラスセラミック試料(それぞれ、実施例1Hおよび実施例1L)、およびスプラット急冷されたままのガラスセラミック試料(すなわち、実施例1、徐冷後に熱処理なし)のラマン分光法のプロットが提供されている。先の実施例におけるように、ラマン分光法試験が行われたガラスセラミック材料の全ては、表1Aおよび1Bにおける実施例1によるガラスセラミック組成を有した。これらの図面におけるデータ群に関連する特定の番号指定(例えば、「#1」、「#2-オレンジ」など)は、ラマン分光法試験を行った試料上の特定の評価位置(それらの位置での試料の色を含む)に対応する。最初に、図7Aおよび7Bは、スプラット急冷された試料(実施例1)が、特定の熱処理条件に施された試料(実施例1Hおよび1L)に観察された高い強度レベルに関連する同じラマンシフト位置で実質的により低い強度レベルを有することを示している。このように、熱処理条件により、結晶タングステン酸化物相(例えば、図7Aおよび7Bの両方に示されたようなMgW)および/または結晶タングステン亜酸化物相(すなわち、非化学量論的相)の発生をもたらし得ることが明白である。
【0166】
ここで図8を参照すると、2つのそれぞれのイオン交換過程条件に由来する圧縮応力領域を有する2つのガラスセラミック試料(実施例10-IOXAおよび実施例10-IOXB)に関する残留応力(MPa)対基板の深さ(mm)のプロットが与えられている。図8において、y軸は基板内の残留応力であり、正の値は引張残留応力を称し、負の値は圧縮残留応力を称する。また図8において、x軸は、基板の各々における深さであり、0mmおよび1.1mmでの値は、基板の主面を表す(例えば、図1に示されるような、基板10の主面12および14)。この実施例におけるガラスセラミック試料の各々である、実施例10-IOXAおよび実施例10-IOXBは、実施例10の試料に関して表1Aおよび1Bに示されたのと同じ組成を有する。さらに、それらの試料の各々を、本開示の先に概説した方法に一貫するように、溶融し、スチールテーブル上に注いで、光学的パテを形成した。次に、各試料を1時間に亘り570℃で徐冷し、次いで、炉の冷める速度で周囲温度まで冷ませた。次に、25mm×25mm×約1.1mmの寸法を有する試料を研削し、研磨して、徐冷した光学的パテを形成した。最後に、実施例10-IOXAの試料を8時間に亘り390℃の100%のNaNO溶融塩浴中に浸して、圧縮応力領域を形成した。同様に、実施例10-IOXBの試料を16時間に亘り390℃の100%のNaNO溶融塩浴中に浸して、圧縮応力領域を形成した。実施例10-IOXAおよび実施例10-IOXBの試料の実際の厚さは、それぞれ、1,10mmおよび1.06mmと測定されたことに留意のこと。
【0167】
図8から明らかなように、より長いイオン交換期間が、最大圧縮応力を減少させつつ、ガラスセラミックのDOC、貯蔵歪みエネルギーおよびピーク張力の大きさ(すなわち、中央張力領域における最大引張応力)を増加させる傾向にある。詳しくは、イオン交換期間がより短いガラスセラミック試料である実施例10-IOXAは、136.7μmの圧縮深さ(DOC)の圧縮応力領域、約-320MPaの最大圧縮応力、57MPaのピーク張力により与えられた中央張力(CT)領域、および16.6J/mの貯蔵歪みエネルギーを示す。対照的に、イオン交換期間がより長いガラスセラミック試料である実施例10-IOXBは、168.0μmのDOC、約-270MPaの最大圧縮応力、72MPaのピーク張力により与えられたCT領域、および25J/mの貯蔵歪みエネルギーを示す。それゆえ、実施例10-IOXBのより長いイオン交換期間によって、より短いイオン交換期間を有する実施例10-IOXAと比べて、より大きいDOC、より低い最大圧縮応力、より大きいピーク張力により与えられたCT領域、およびより大きい貯蔵歪みエネルギーがもたらされる。
【0168】
図8に示された先のガラスセラミック試料が、100%のNaNOの溶融塩浴中の浸漬から生じた圧縮応力領域を示したのが明白であるが、本開示内で他の手法も考えられる。例えば、そのガラスセラミックは、基板の表面の、またはその近くの圧縮応力レベルを増加させるために、溶融KNO、またはNaNOとKNOの混合物の浴内でイオン交換しても、もしくは最初にNaNO浴内で、次にKNO浴内で連続的にイオン交換しても差し支えない。したがって、イオン交換を行う金属イオン(例えば、Na、Kなど)の硫酸塩、塩化物、および他の塩も、これらの浴に使用することができる。さらに、イオン交換温度は約350℃から約550℃まで様々であり得るが、塩の分解および応力緩和を避けるために、約370℃から約450℃に及ぶことが好ましい。
【0169】
広く図9から11Bを参照すると、上述したタングステンブロンズおよび多色タングステンブロンズガラスセラミックに、結晶の明白なサイズ領域が発見された。結晶サイズは、基礎ガラス組成に依存したが、熱処理時間と温度によってもわずかに調整できた。それに加え、結晶化速度は、酸化カルシウム(CaO)の少量の添加によって著しく増加し、これは、酸化タングステンと反応して、灰重石のナノ結晶、または核形成部位の機能を果たせるであろう非化学量論的灰重石様構造を形成すると考えられる。
【0170】
ここで図9を参照すると、先に記載され、図9に示された高度に過アルミニウムのタングステンブロンズ溶融物(例えば、MWOガラスセラミック)中に比較的大きい結晶が見られた。これらの結晶は、形状が針状であり、長さが100~250nmであり、幅が5~30nmであった。急冷されたままの状態において、これらのガラスセラミック材料は、2枚の鉄プレートの間で急冷(すなわち、スプラット急冷)された後、X線非晶質であり、走査型電子顕微鏡(SEM)分析により、析出物(結晶、晶子)が存在しないことが判明した。30分以上に亘る700℃での急冷ガラスの熱処理および室温まで毎分10℃での冷却後、タングステンブロンズ析出物が、アルミナの豊富な針に沿って形成された。1時間40分に亘る700℃での熱処理および室温まで毎分10℃の冷却後など、熱処理時間と温度を増加させると、析出物の濃度が増加した。熱処理後に形成された晶子のX線エネルギー分散型X線分光分析(EDS)マップは、それらが、タングステン、酸素、およびカリウムからなることを示す。
【0171】
図10Aおよび10Bを参照すると、少なくともいくつかの過アルカリタングステンブロンズ溶融物(RO-Al>0)について、晶子サイズは、過アルミニウム溶融物(図9)中のものより小さく、アルミナの豊富な針は形成されなかった。過アルミニウム溶融物のように、この過アルカリ材料は、2枚の鉄プレートの間で急冷(すなわち、スプラット急冷)されたときに、X線非晶質であった。顕微鏡写真は、熱処理前にその材料中に晶子は存在しないことを示す。15時間と30時間の間の期間に亘る550℃でのスプラット急冷の熱処理、その後、1℃/分での475℃への冷却、次いで、炉の冷める速度での室温までの冷却後、TEM分析により、図10Aから10Bに示されるような、高アスペクト比の針状タングステンブロンズ晶子の形成が判明した。結果として生じたほとんどの針は、直径が2nmと7nmの間であり、長さが10nmと30nmの間であった。熱処理されたスプラット急冷試料のX線EDSは、晶子がタングステンを含むことを示した。
【0172】
図11Aおよび11Bを参照すると、銀タングステンブロンズガラスセラミックは、2と4の間のアスペクト比、大抵は約2~20nmの長さ、大抵は約2~10nmの直径の略棒状の形状であり、材料のガラスセラミックの約11から14.8体積パーセントである晶子が含まれた。図11Aおよび11Bに示された試料は、4時間に亘り550℃で熱処理され、1℃/分で475℃に冷却され、次いで、炉の冷める速度で室温に冷却された。次に、このケインは、ケインの一端が室温のままであり、ケインの他端が650℃であるように、5分間に亘り勾配炉内に入れられた。各端部の間の領域は、25℃と650℃の間の温度のほぼ均一な勾配に曝された。温度が約575℃より高い領域において、色が、青から、緑、黄、オレンジ、最終的に赤にシフトし始めた。全ての色の透明性が高かった。
【0173】
先に開示されたように、いくつかの例示の実施の形態によるガラスセラミックは、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約5%/mm以上の透過率を有する。しかしながら、他の実施の形態において、不透明なものなどのガラスセラミックは、それより低い透過率を有する。そのような実施の形態の少なくともいくつかによれば、これらのガラスセラミックは、光を強烈に吸収するが、散乱させず、非常に低いヘイズを有するという点で、独特である。様々なそのような実施の形態によれば、そのガラスセラミックは、200~400nmの波長を持つ光の少なくともいくらか(例えば、ほとんど、>90%)について少なくとも0.07の光学密度毎ミリメートル(OD/mm)、同じ波長の多くとも25OD/mm、および/または10%未満のヘイズを有し、ここで、光学密度は、分光光度計で行われる、光学的吸収の測定から計算され、ヘイズは、ヘイズメーター広角散乱試験で測定される。様々なそのような実施の形態によれば、そのガラスセラミックは、400~750nmの波長を持つ光の少なくともいくらか(例えば、ほとんど、>90%)について少なくとも0.022の光学密度毎ミリメートル(OD/mm)、同じ波長の多くとも10OD/mm、および/または10%未満のヘイズを有する。様々なそのような実施の形態によれば、そのガラスセラミックは、750~2000nmの波長を持つ光の少なくともいくらか(例えば、ほとんど、>90%)について少なくとも0.04の光学密度毎ミリメートル(OD/mm)、同じ波長の多くとも15OD/mm、および/または10%未満のヘイズを有する。
【0174】
チタンを含む実施例
ここで図8Aおよび8Bを参照すると、チタンを含む物品の例示のガラスセラミック組成物のリストが与えられている。
【0175】
【表8A】
【0176】
【表8B】
【0177】
ここで表8Cおよび図12A~17Bを参照すると、表8Aおよび8Bからの組成物の試料に関する光学データが与えられている。
【0178】
【表8C】
【0179】
表8Cおよび図12A~17Bの様々な組成物は、バッチ成分を秤量し、そのバッチ成分を、シェーカー・ミキサーまたはボールミルで混合し、溶融シリカ製坩堝内において1300℃~1650℃の温度で4~32時間に亘り溶融することによって、調製した。ガラスを金属テーブル上に注いで、0.5mm厚のガラスパテを製造した。いくらかの溶融物は、スチールテーブル上に注ぎ、次いで、スチールローラを使用して、シートに圧延した。光の透過と吸収を生じさせ、制御するために、周囲空気の電気オーブン内において425~850℃に及ぶ温度で5~500分に及ぶ時間に亘り、試料を熱処理した。次いで、試料のパテを、0.5mmの厚さに研磨し、試験した。
【0180】
表8Cおよび図12A~17Bのデータから明らかなように、チタン含有ガラスの製造されたままの状態は、NIR領域において高度に透明であり、可視波長でおおむね透明である。約500℃から約700℃に及ぶ温度での熱処理の際に、結晶相(すなわち、亜酸化チタン)が析出し、これらの試料の光透過率が低下し、いくつかは、NIRにおいて強力に吸収性になる。
【0181】
粉末X線回折が、表8Cの組成物の各々に行われ、全ての組成物が、製造されたままと徐冷されていない状態において、X線非晶質であった。熱処理された試料は、アナターゼ(889FLY)およびルチル(889FMCおよび889FMD)を含む、いくつかのチタン担持結晶相の証拠を示した。その試料は、低いヘイズ(すなわち、約10%以下、または約5%以下、または約1%以下、または約0.1%以下)を示した。理論で束縛されるものではないが、製造されたままの状態と熱処理後の状態でこれらの組成物が示した低いヘイズは、晶子が極めて小さく(すなわち、約100nm以下)、少量(すなわち、TiOが約2モル%しか導入されていないという事実のために)であるという事実のためである。したがって、これらの材料中に形成する種は、従来の粉末XRDの検出限界(サイズと存在度)未満であると考えられる。この仮説は、TEM顕微鏡法で確認された。
【0182】
ここで図18A~Dを参照すると、1時間に亘り700℃で熱処理されたガラスコード889FMCの試料内のチタニア含有結晶の4つの異なる倍率のTEM顕微鏡写真が与えられている。これらの結晶は、外観が棒状であり、約5nmの平均幅および約25nmの平均長さを有する。
【0183】
ここで図19Aおよび19Bを参照すると、ガラスコード889FMCの熱処理された試料のTEM顕微鏡写真(図19A)および対応するEDS元素マップ(図19B)が与えられている。図19Aから分かるように、試料は複数の晶子を含む。EDSマップは、チタンを検出するように設定された。チタンのEDSマッピングの結果は、晶子と密接に一致し、晶子にチタンが豊富なことを示すのが分かる。このマップにおいて、明るいまたは「白い」領域は、Tiの存在を示す。
【0184】
ここで表9Aを参照すると、チタンを含まない例示のガラス組成物が与えられている。
【0185】
【表9A】
【0186】
表9Bは、様々なガラスの太陽光性能評価指標を与えている。表9Bにおいて、組成物196KGAは、二重融合積層体のクラッド層として組み込まれており(すなわち、クラッドとガラスセラミックの全厚=0.2mm)、その積層体のコア組成物は、Corning Incorported(登録商標)からの化学強化されたGorilla(登録商標)ガラスであった。組成物196KGAは、1mm厚であり、30分に亘り550℃で熱処理され、毎分1℃で475℃に冷却された。889FMD試料は、5mm厚であり、1時間に亘り600℃で熱加工された。889FMG試料は、0.5mm厚であり、2時間に亘り700℃で熱加工された。VG10試料は、Saint-Gobain(登録商標)により商標名SGG VENUS(VG10)で販売されているガラスを称し、厚さが互いに異なる。
【0187】
【表9B】
【0188】
表9Bにおいて、T_Lは、全可視光透過率(380nmから780nmの波長範囲で板ガラスを通る光の加重平均透過率であり、ISO9050 Section3.3にしたがい試験される)である。T_TSは全透過太陽光(太陽因子(「SF」)または全太陽熱透過(「TSHT」)とも称され、これは、ISO13837-2008 Annex BおよびISO9050-2003 section3.5により測定される、板ガラスにより吸収され、次いで、車室に再放射される太陽エネルギーの分率に加えた、T_DS(全直接太陽光)の合計である)。この場合、T_TSは、4m/s(14km/hr)%の風速での停車中の車の条件で計算され、T_TSは、(%T_DS)+0.276(%太陽吸収)と等しい。T_DSは全直接太陽光透過率(「太陽光透過率」(「Ts」)または「エネルギー移動」とも称され、ISO13837 section6.3.2により測定される、300nmから2500nmの波長範囲で板ガラスを通る光の加重平均透過率である)である。R_DSは反射太陽光成分(すなわち、公称4%のフレネル反射を含む)である。T_Eは太陽光直接透過率である。T_UVは、ISO9050およびISO13837Aで測定される、UV透過率である。T_IRは、Volkswagen基準TL957で測定される赤外線透過率である。
【0189】
表9Bのデータから自明であるように、ガラスコード196KGAは、最良の光学性能を有し、非常に短い経路長(0.2mm)で最低のUV、VIS、およびNIR透過率を生じることができる。0.5mmの厚さでのチタン含有組成物889FMDおよび889FMGは、3.85mmまたはそれより短い経路長でVG10ガラスより優れた光学性能を生じる。言い換えると、チタン含有組成物889FMDおよび889FMGは、より短い経路長を有するにもかかわらず、VG10より優れた性能を有した。
【0190】
ここに開示されたまたは考えられる少なくともいくつかのガラスセラミックをさらに参照すると、そのガラスセラミックは、非晶相と結晶相を含み、その結晶相は、ここに開示されたような、式MTiO、MWO等の析出物などの、ここに開示されたようなブロンズ構造を含む(例えば、含有する、である、ほとんどである)。結晶相の体積分率は、約0.001%から約20%、または約1%から約20%、または約5%から約20%、または約10%から約20%、または約10%から約30%、または約0.001%から約%50に及ぶことがある。他の実施の形態において、結晶相の体積分率は、約0.001%から約20%、または約0.001%から約15%、または約0.001%から約10%、または約0.001%から約5%、または約0.001%から約1%に及ぶことがある。他の考えられる実施の形態において、そのガラスセラミック中の結晶相の体積分率は、50%超であることがある。
【0191】
ここに開示されたまたは考えられる少なくともいくつかのガラスセラミックをさらに参照すると、そのガラスセラミックは、非晶相と結晶相を含み、その結晶相は、ここに開示されたような、式MTiO、MWO等の析出物などの、ここに開示されたようなブロンズ構造を含み(例えば、含有し、であり、ほとんどであり)、Mは、ここに開示されたようなドーパント陽イオンを表し、析出物(例えば、結晶)は、亜酸化物であり、式中、0<x<1、0<x<0.9、0<x<0.75、0<x<0.5、0<x<0.2などの0<x<1、および/または0.01<x<1、0.1<x<1、0.2<x<1、0.5<x<1などの0.01<x<1、および/または0.01<x<0.99、0.1<x<0.9、0.2<x<0.9、0.1<x<0.8などの0.001<x<0.999である。
【0192】
様々な例示の実施の形態に示されるような、方法および製品の構造および配列は、一例にすぎない。本開示において、ほんのいくつかの実施の形態を詳しく記載してきたが、ここに記載された主題の新規の教示および利点から実質的に逸脱せずに、多くの改変(例えば、サイズ、寸法、構造、形状、および様々な要素の比率、パラメータの値、取り付け方法、材料の使用、色、向きの変化)が可能である。一体成形されたように示されたいくつかの要素は、多数の部品または要素から構成されてもよく、要素の位置は、逆または他に変えられてもよく、個々の要素または位置の性質または数は、変えられても様々であってもよい。どの過程、論理アルゴリズム、または方法の工程の順序または配列が、代わりの実施の形態にしたがって変えられても、または再配列されてもよい。本発明の技術の範囲から逸脱せずに、様々な例示の実施の形態の設計、作動条件および配列に、他の置換、改良、変更および省略も行ってよい。
【0193】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0194】
実施形態1
ガラスセラミックにおいて、
非晶相、および
式MWOおよび/またはMMoOを有する複数の析出物を含む結晶相であって、式中、0<x<1であり、Mはドーパント陽イオンである、結晶相、
を含むガラスセラミック。
【0195】
実施形態2
前記析出物が、電子顕微鏡法で測定して、約1nmから約200nmの長さを有する、実施形態1に記載のガラスセラミック。
【0196】
実施形態3
前記結晶相の析出物が、前記ガラスセラミック内に実質的に均一に分布している、実施形態1または2に記載のガラスセラミック。
【0197】
実施形態4
ガラスセラミックにおいて、
ケイ酸塩ガラス、および
前記ケイ酸塩ガラス内に均一に分布した結晶であって、非化学量論的タングステンおよび/またはモリブデン亜酸化物を含み、 ドーパント陽イオンが挿入された結晶、
を含むガラスセラミック。
【0198】
実施形態5
前記ガラスセラミックが、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約5%/mm以上の透過率を有する、実施形態4に記載のガラスセラミック。
【0199】
実施形態6
前記ドーパント陽イオンが、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、U、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Bi、およびCeの少なくとも1つを含む、実施形態4に記載のガラスセラミック。
【0200】
実施形態7
前記結晶が棒状形態を有する、実施形態4に記載のガラスセラミック。
【0201】
実施形態8
前記結晶の一部が、前記ガラスセラミックの外面から約10μm超の深さにある、実施形態4に記載のガラスセラミック。
【0202】
実施形態9
ガラスセラミックにおいて、
ガラス相、および
タングステンおよび/またはモリブデンの亜酸化物を含む結晶相であって、該タングステンおよび/またはモリブデンの亜酸化物が、正孔がドーパント陽イオンで占められた固体欠陥構造を有する、結晶相、
を含むガラスセラミック。
【0203】
実施形態10
前記結晶相が、約0.001%から約20%の前記ガラスセラミック中の体積分率を有する、実施形態9に記載のガラスセラミック。
【0204】
実施形態11
物品において、
少なくとも1つの非晶相および1つの結晶相と、
約1モル%から約95モル%のSiOと、
を含み、
前記結晶相は、該結晶相の約0.1モル%から約100モル%の酸化物を含み、該酸化物は、(i)W、(ii)Mo、(iii)Vとアルカリ金属陽イオン、および(iv)Tiとアルカリ金属陽イオン:の内の少なくとも1つを含む、物品。
【0205】
実施形態12
前記結晶相が、複数の析出物として、前記物品内に実質的に均一に分布している、実施形態11に記載の物品。
【0206】
実施形態13
前記析出物の少なくとも一部が、前記物品の外面から約10μm超の深さに位置している、実施形態12に記載の物品。
【0207】
実施形態14
前記結晶相が、電子顕微鏡法で測定して、約1nmから約500nmの長さを有する複数の析出物を含む、実施形態11に記載の物品。
【0208】
実施形態15
前記物品が、CdおよびSeを実質的に含まない、実施形態11に記載の物品。
【0209】
実施形態16
ガラスであって、バッチ成分中に、
約25モル%から約99モル%のSiO
約0モル%から約50モル%のAl
約0.35モル%から約30モル%のWO+MoO
約0.1モル%から約50モル%のRO、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの1つ以上であり、RO-Alは、約-35モル%から約7モル%である、および
(i)約0.02モル%から約50モル%のRO、および(ii)約0.01モル%から約5モル%のSnO、の少なくとも一方であり、ここで、ROは、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上である、
を含み、
WOが約1モル%から約30モル%である場合、ひいては、前記ガラスは、約0.9モル%以下のFeを含むか、またはひいては、SiOは約60モル%から約99モル%であり、
WOが約0.35モル%から約1モル%である場合、ひいては、前記ガラスは、約0.01モル%から約5.0モル%のSnOを含み、
MoOが約1モル%から約30モル%である場合、ひいては、SiOは、約61モル%から約99モル%であるか、またはひいては、Feは、約0.4モル%以下であり、ROはROより多く、
MoOが約0.9モル%から約30モル%であり、SiOが、約30モル%から約99モル%である場合、ひいては、前記ガラスは、約0.01モル%から約5モル%のSnOをさらに含む、ガラス。
【0210】
実施形態17
約2.0モル%から約40モル%のBをさらに含み、SiOは約45モル%から約80モル%であり、Alは約0.5モル%から約15モル%であり、ROは、約0モル%から約14モル%であり、ROは約0モル%から約1モル%であり、並びに(1)MoOは約0モル%であり、かつWOは約1.0モル%から約17モル%である、(2)SnOは約0.01モル%から約0.4モル%である、および/または(3)Feは約0モル%から約0.2モル%である、の少なくともひとつである、実施形態16に記載のガラス。
【0211】
実施形態18
約5モル%から約20モル%のBをさらに含み、SiOは約55モル%から約75モル%であり、Alは約8モル%から約12モル%であり、ROは、約3モル%から約14モル%であり、ROは約0.5モル%から約4.5モル%であり、WOは約1.9モル%から約10モル%であり、MoOは約0モル%から約1.0モル%である、実施形態16に記載のガラス。
【0212】
実施形態19
約4モル%から約35モル%のBをさらに含み、SiOは約55モル%から約75モル%であり、Alは約9モル%から約14モル%であり、ROは、約2.9モル%から約12.2モル%であり、ROは約0.01モル%から約0.5モル%であり、MoOは約0モル%から約8.2モル%であり、WOは約0モル%から約9モル%であり、並びに(1)SnOは約0.04モル%から約0.4モル%である、(2)Feは約0モル%から約0.2モル%である、および/または(3)Vは約0モル%から約0.4モル%である、の少なくともひとつである、実施形態16に記載のガラス。
【0213】
実施形態20
約5モル%から約25モル%のBをさらに含み、SiOは約50モル%から約75モル%であり、Alは約7モル%から約14モル%であり、ROは、約5モル%から約14モル%であり、ROは約0.02モル%から約0.5モル%であり、MoOは約1.9モル%から約12.1モル%であり、WOは約1.7モル%から約12モル%であり、並びに(1)前記ガラスは、約0.01モル%から約0.75モル%のAg、約0.01モル%から約0.5モル%のAu、約0.01モル%から約0.03モル%のV、および約0.01モル%から約0.75モル%のCuOの少なくとも1つをさらに含む、および/または(2)SnOは約0.01モル%から約0.5モル%である、の少なくともひとつである、実施形態16に記載のガラス。
【0214】
実施形態21
約10モル%から約20モル%のBをさらに含み、SiOは約60モル%から約78モル%であり、Alは約0.3モル%から約10モル%であり、ROは、約0.6モル%から約10モル%であり、ROは約0.02モル%であり、MoOは約0モル%であり、WOは約1.0モル%から約7.0モル%である、実施形態16に記載のガラス。
【0215】
実施形態22
ガラスセラミック物品を形成する方法において、
(1)束縛アルカリ、(2)SiO、および(3)タングステンおよび/またはモリブデンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程、
前記ガラス溶融物をガラスに固化させる工程、および
前記ガラス内に結晶相を析出させて、前記ガラスセラミック物品を形成する工程、
を有してなる方法。
【0216】
実施形態23
前記ガラスが、単一の均一相である、実施形態22に記載の方法。
【0217】
実施形態24
前記結晶相が、タングステンおよび/またはモリブデンを含む、実施形態22または23に記載の方法。
【0218】
実施形態25
前記束縛アルカリが、(A)長石、(B)霞石、(C)ホウ酸ナトリウム、(D)スポジュメン、(E)曹長石、(F)カリ長石、(G)アルカリアルミノケイ酸塩、(H)アルカリケイ酸塩、および/または(I)(I-i)アルミナ、(I-ii)ボリアおよび/または(I-iii)シリカに結合したアルカリを含む、実施形態22から24のいずれか1つに記載の方法。
【0219】
実施形態26
ガラスセラミックを形成する方法において、
シリカおよびタングステンおよび/またはモリブデンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程、
前記ガラス溶融物を固化して、ガラスを形成する工程、および
前記ガラス内に、タングステンおよび/またはモリブデンを含む複数のブロンズタイプの結晶を析出させる工程、
を有してなる方法。
【0220】
実施形態27
前記複数のブロンズタイプの結晶を析出させる工程が、前記ガラスを熱加工する工程を含む、実施形態26に記載の方法。
【0221】
実施形態28
複数のブロンズタイプの結晶を、少なくとも約1nmかつ約500nm以下の長さに成長させる工程をさらに含む、実施形態26または27に記載の方法。
【0222】
実施形態29
ガラスセラミックにおいて、
非晶相、および
式MTiOの析出物を含む結晶相であって、式中、0<x<1であり、Mはドーパント陽イオンである、結晶相、
を含むガラスセラミック。
【0223】
実施形態30
前記ガラスセラミックが、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約1%/mm以上の透過率を示す、実施形態29に記載のガラスセラミック。
【0224】
実施形態31
前記析出物の少なくともいくらかが、少なくとも1nm長かつ300nm長以下である、実施形態29に記載のガラスセラミック。
【0225】
実施形態32
前記結晶相の析出物が、前記ガラスセラミック内に均一に分布している、実施形態31に記載のガラスセラミック。
【0226】
実施形態33
式MTiOの析出物が、前記ガラスセラミック中に少なくとも0.001%かつ20%以下の体積分率で含まれる、実施形態31に記載のガラスセラミック。
【0227】
実施形態34
式MTiOの析出物が、前記ガラスセラミック中に少なくとも5%の体積分率で含まれる、実施形態33に記載のガラスセラミック。
【0228】
実施形態35
前記ドーパント陽イオンが、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、U、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Bi、および/またはCeを含む、実施形態34に記載のガラスセラミック。
【0229】
実施形態36
ガラスセラミックにおいて、
ケイ酸塩ガラス、および
前記ケイ酸塩ガラス内に均一に分布した結晶であって、ドーパント陽イオンが挿入された亜酸化チタンを含む結晶、
を含むガラスセラミック。
【0230】
実施形態37
前記ガラスセラミックが、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約1%/mm以上の透過率を示す、実施形態36に記載のガラスセラミック。
【0231】
実施形態38
前記結晶が、少なくとも1nm長かつ300nm長以下である、実施形態36に記載のガラスセラミック。
【0232】
実施形態39
前記結晶が、前記ガラスセラミック内に均一に分布している、実施形態38に記載のガラスセラミック。
【0233】
実施形態40
前記結晶が、前記ガラスセラミック中に少なくとも0.001%かつ20%以下の体積分率で含まれる、実施形態38に記載のガラスセラミック。
【0234】
実施形態41
前記結晶が、前記ガラスセラミック中に少なくとも5%の体積分率で含まれる、実施形態40に記載のガラスセラミック。
【0235】
実施形態42
前記ドーパント陽イオンが、H、Li、Na、K、Rb、Cs、Ca、Sr、Ba、Zn、Ag、Au、Cu、Sn、Cd、In、Tl、Pb、Bi、Th、La、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、U、V、Cr、Mn、Fe、Ni、Cu、Pd、Se、Ta、Bi、および/またはCeを含む、実施形態41に記載のガラスセラミック。
【0236】
実施形態43
ガラスセラミックにおいて、
ガラス相、および
正孔がドーパント陽イオンで占められた固体欠陥構造を形成する、チタンの亜酸化物を含む結晶相、
を含むガラスセラミック。
【0237】
実施形態44
前記ガラスセラミックが、約400nmから約700nmの範囲の光の少なくとも1つの50nm幅の波長域に亘り約1%/mm以上の透過率を示す、実施形態43に記載のガラスセラミック。
【0238】
実施形態45
ガラスセラミック物品において、
少なくとも1つの非晶相および1つの結晶相と、
約1モル%から約95モル%のSiOと、
を含み、
前記結晶相は、該結晶相の約0.1モル%から約100モル%の非化学量論的亜酸化チタンを含み、該亜酸化物は、(i)Ti、(ii)Vとアルカリ金属陽イオン:の内の少なくとも1つを含む、ガラスセラミック物品。
【0239】
実施形態46
前記結晶相が、複数の析出物として、前記ガラスセラミック物品内に実質的に均一に分布している、実施形態45に記載のガラスセラミック物品。
【0240】
実施形態47
前記析出物の少なくともいくらかが、前記物品の外面から約10μm超の深さに位置している、実施形態46に記載の物品。
【0241】
実施形態48
前記結晶相が、電子顕微鏡法で測定して、約1nmから約500nmの長さを有する複数の析出物を含む、実施形態45に記載の物品。
【0242】
実施形態49
前記物品が、CdおよびSeを実質的に含まない、実施形態45に記載のガラスセラミック物品。
【0243】
実施形態50
ガラスセラミックを形成する方法において、
シリカおよびチタンを含む成分を一緒に溶融して、ガラス溶融物を形成する工程、
前記ガラス溶融物を固化して、ガラスを形成する工程であって、該ガラスが第1の平均近赤外吸光度を含む、工程、および
前記ガラス内に、結晶相を析出させて、前記ガラスセラミックを形成する工程であって、該ガラスセラミックが、(a)第2の平均赤外吸光度、および(b)約1.69以下の平均光学密度毎mmを含み、前記第1の平均赤外吸光度に対する該第2の平均赤外吸光度の比が約1.5以上である、工程、
を有してなる方法。
【0244】
実施形態51
前記結晶相を析出させる工程が、約450℃から約850℃の温度で行われる、実施形態50に記載の方法。
【0245】
実施形態52
前記結晶相を析出させる工程が、約500℃から約700℃の温度で行われる、実施形態50に記載の方法。
【0246】
実施形態53
前記結晶相を析出させる工程が、約15分から約240分の期間に亘り行われる、実施形態50に記載の方法。
【0247】
実施形態54
前記結晶相を析出させる工程が、約60分から約90分の期間に亘り行われる、実施形態50に記載の方法。
【0248】
実施形態55
ガラスにおいて、バッチ成分中に、
約1モル%から約90モル%のSiO
約0モル%から約30モル%のAl
約0.25モル%から約30モル%のTiO
約0.25モル%から約30モル%の金属硫化物、
約0モル%から約50モル%のRO、および
約0モル%から約50モル%のRO、
を含み、ここで、ROは、LiO、NaO、KO、RbOおよびCsOの1つ以上であり、ROは、BeO、MgO、CaO、SrO、BaOおよびZnOの1つ以上であり、該ガラスはCdを実質的に含まない、ガラス。
【0249】
実施形態56
TiOが約1.0モル%から約15モル%である、実施形態55に記載のガラス。
【0250】
実施形態57
TiOが約2.0モル%から約10モル%である、実施形態55に記載のガラス。
【0251】
実施形態58
前記金属硫化物が約1.0モル%から約15モル%である、実施形態55に記載のガラス。
【0252】
実施形態59
前記金属硫化物が約1.5モル%から約5モル%である、実施形態58に記載のガラス。
【0253】
実施形態60
前記金属硫化物が、MgS、NaS、およびZnSの内の少なくとも1つを含む、実施形態55から59のいずれか1つに記載のガラス。
【0254】
実施形態61
前記ガラスがLiを実質的に含まない、実施形態55に記載のガラス。
【0255】
実施形態62
前記ガラスがZrを実質的に含まない、実施形態55に記載のガラス。
【符号の説明】
【0256】
10 基板
12、14 主面
50 圧縮応力領域
52 第1の選択深さ
100 物品
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5
図6A
図6B
図6C
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
図17A
図17B
図18A
図18B
図18C
図18D
図19A
図19B