(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】蓄電装置
(51)【国際特許分類】
H01M 10/6554 20140101AFI20240131BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240131BHJP
H01M 10/647 20140101ALI20240131BHJP
H01M 10/653 20140101ALI20240131BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20240131BHJP
【FI】
H01M10/6554
H01M10/613
H01M10/647
H01M10/653
H01M10/6556
(21)【出願番号】P 2021139888
(22)【出願日】2021-08-30
【審査請求日】2022-09-14
(73)【特許権者】
【識別番号】520184767
【氏名又は名称】プライムプラネットエナジー&ソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】植村 恭明
【審査官】早川 卓哉
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094312(JP,A)
【文献】特表2019-508846(JP,A)
【文献】特開2021-044122(JP,A)
【文献】特開2015-225765(JP,A)
【文献】特表2019-503040(JP,A)
【文献】特開2020-053148(JP,A)
【文献】特開2020-123467(JP,A)
【文献】特開2014-149929(JP,A)
【文献】国際公開第2021/024776(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M10/52-10/667
H01M50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
底面を有する略直方体形状のケースを各々含み、第1方向に沿って積層された複数の蓄電セルと、
前記複数の蓄電セルにおける前記ケースの前記底面
に対向して設けられた冷却プレートと、
前記ケースの前記底面と前記冷却プレートとの間に設けられた伝熱部材を備え、前記冷却プレートは、前記第1方向に直交する第2方向において、前記ケースの前記底面の変形に沿う凹部を有する、蓄電装置。
【請求項2】
前記第2方向において、前記冷却プレートの前記凹部の縁端と前記伝熱部材の縁端とが略一致する、請求項1に記載の蓄電装置。
【請求項3】
前記ケースが変形していない状態において、前記底面は、前記第2方向の中央側に位置する平面部と、前記第2方向の両端側に位置する曲面部とを含み、
前記第2方向において、前記平面部の縁端と前記伝熱部材の縁端とが略一致する、請求項1または請求項2に記載の蓄電装置。
【請求項4】
前記第2方向において前記凹部の外側に位置する前記冷却プレートが平坦面を有する、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項5】
前記冷却プレートは、前記ケースの前記底面の理想ラインよりも下側に位置する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項6】
前記冷却プレートは
、前記第2方向における前記冷却プレートの両端に設けられ、前記ケースの前記底面の理想ラインよりも上側に突出する突出部を有し、前記伝熱部材は、前記第2方向において前記突出部よりも外側に達する、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項7】
前記第2方向において、前記凹部は円弧形状を含む、請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項8】
前記ケースの前記底面と前記伝熱部材との間に設けられ、摩擦係数が相対的に小さい低摩擦層をさらに備えた、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【請求項9】
前記冷却プレートと前記伝熱部材との間に設けられ、前記冷却プレートと前記伝熱部材との摩擦抵抗を増大させるグリップ部をさらに備えた、請求項1から請求項8のいずれか1項に記載の蓄電装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本技術は、蓄電装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特表2019-503040号公報(特許文献1)には、冷却プレートに各セルに対応する溝を設けて電池セルと冷却プレートとの接触面積を増大させることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の構造においては、電池セルを冷却プレート上に設置した状態で電池セルの積層体を圧縮することができない。したがって、組電池の製造コストが増大し得る。
【0005】
本技術の目的は、製造コスト低減と冷却性能の向上を両立させた蓄電装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本技術に係る蓄電装置は、底面を有する略直方体形状のケースを各々含み、第1方向に沿って積層された複数の蓄電セルと、複数の蓄電セルにおけるケースの底面上に設けられた冷却プレートと、電池ケースの底面と冷却プレートとの間に設けられた伝熱部材とを備える。冷却プレートは、第1方向に直交する第2方向において、ケースの底面の変形に沿う凹部を有する。
【発明の効果】
【0007】
本技術によれば、製造コスト低減と冷却性能の向上を両立させた蓄電装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】
図1に示す組電池における電池セルおよびエンドプレートを示す図である。
【
図3】
図1に示す組電池における電池セルを示す図である。
【
図4】1つの実施の形態に係る冷却プレートの形状を示す図である。
【
図5】比較例に係る冷却プレートの形状を示す図である。
【
図6】変形例に係る冷却プレートの形状を示す図である。
【
図7】1つの実施例に係る電池セルを模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下に、本技術の実施の形態について説明する。なお、同一または相当する部分に同一の参照符号を付し、その説明を繰返さない場合がある。
【0010】
なお、以下に説明する実施の形態において、個数、量などに言及する場合、特に記載がある場合を除き、本技術の範囲は必ずしもその個数、量などに限定されない。また、以下の実施の形態において、各々の構成要素は、特に記載がある場合を除き、本技術にとって必ずしも必須のものではない。また、本技術は、本実施の形態において言及する作用効果を必ずしもすべて奏するものに限定されない。
【0011】
なお、本明細書において、「備える(comprise)」および「含む(include)」、「有する(have)」の記載は、オープンエンド形式である。すなわち、ある構成を含む場合に、当該構成以外の他の構成を含んでもよいし、含まなくてもよい。
【0012】
また、本明細書において幾何学的な文言および位置・方向関係を表す文言、たとえば「平行」、「直交」、「斜め45°」、「同軸」、「沿って」などの文言が用いられる場合、それらの文言は、製造誤差ないし若干の変動を許容する。本明細書において「上側」、「下側」などの相対的な位置関係を表す文言が用いられる場合、それらの文言は、1つの状態における相対的な位置関係を示すものとして用いられるものであり、各機構の設置方向(たとえば機構全体を上下反転させる等)により、相対的な位置関係は反転ないし任意の角度に回動し得る。
【0013】
本明細書において、「電池」は、リチウムイオン電池に限定されず、ニッケル水素電池など他の電池を含み得る。本明細書において、「電極」は正極および負極を総称し得る。また、「電極板」は正極板および負極板を総称し得る。
【0014】
本明細書において、「蓄電セル」ないし「蓄電装置」なる用語が用いられる場合、「蓄電セル」ないし「蓄電装置」は電池セルないし電池モジュールに限定されず、たとえばキャパシタを含み得る。
【0015】
図1は、組電池1の基本的構成を示す図である。
図2は、組電池1に含まれる電池セル100とエンドプレート200とを示す図である。
図3は、組電池1における電池セル100を示す図である。
【0016】
図1,
図2に示すように、「蓄電モジュール」の一例としての組電池1は、電池セル100と、エンドプレート200と、拘束部材300と、冷却プレート400を備える。
【0017】
複数の電池セル100は、Y軸方向(第1方向)に並ぶように設けられる。電池セル100は、電極端子110を含む。複数の電池セル100の間には、図示しないセパレータが介装されている。2つのエンドプレート200に挟持された複数の電池セル100は、エンドプレート200によって押圧され、2つのエンドプレート200の間で拘束されている。
【0018】
エンドプレート200は、Y軸方向において組電池1の両端に配置されている。エンドプレート200は、組電池1を収納するケースなどの基台に固定される。エンドプレート200のX軸方向の両端には、段差部210が形成される。段差部210は、Z軸方向に延びるように形成される。X軸方向、Y軸方向、およびZ軸方向は、互いに直交する。
【0019】
エンドプレート200は、たとえばアルミニウムまたは鋳鉄からなる。エンドプレート200を構成する素材は、これらに限定されない。
【0020】
拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに接続する。拘束部材300は、2つのエンドプレート200に各々形成された段差部210に取り付けられる。
【0021】
複数の電池セル100およびエンドプレート200の積層体に対してY軸方向の圧縮力を作用させた状態で拘束部材300を段差部210に係合させ、その後に圧縮力を解放することにより、2つのエンドプレート200を接続する拘束部材300に引張力が働く。その反作用として、拘束部材300は、2つのエンドプレート200を互いに近づける方向に押圧する。
【0022】
拘束部材300は、たとえばアルミニウム、鉄またはステンレスからなる。拘束部材300を構成する素材は、これらに限定されない。
【0023】
冷却プレート400は、複数の電池セル100の底面上に設けられる。冷却プレート400は、伝熱性に優れた金属などから構成される。一例として、冷却プレート400は、アルミニウム製の押出材から形成される。冷却プレート400により、電池セル100からの放熱が促進される。冷却プレート400の内部に流路を設け、流路内に冷却媒体を流して冷却性能をさらに高めてもよい。
【0024】
図3に示すように、電池セル100は、平坦面状の略直方体形状に形成されている。電極端子110は、正極端子111と、負極端子112とを含む。正極端子111と負極端子112とは、X軸方向(第2方向)に並ぶ。電極端子110は、角型の筐体120(ケース)の上面に設けられている。筐体120の上面および底面は、X軸方向が長辺方向、Y軸方向が短辺方向となるような略長方形形状を有する。筐体120には、電極体および電解液が収容されている。
【0025】
組電池1を製造する際は、まず、複数の電池セル100をY軸方向に沿って積層する。次に、積層された複数の電池セル100の両端にエンドプレート200が設けられる。そして、複数の電池セル100およびエンドプレート200が、拘束部材300によってY軸方向に拘束される。冷却プレート400は、複数の電池セル100が拘束される前に組み付けられてもよいし、複数の電池セル100が拘束された後に組み付けられてもよい。
【0026】
図4は、本実施の形態に係る冷却プレート400の形状を示す図である。
図4に示すように、電池セル100の筐体120の底面は、理想ライン121と変形ライン122とを有する。理想ライン121とは、筐体120が電極体および電解液を収容していない状態(または、筐体120が電極体および電解液を収容しているが、ガスなどにより筐体120の底面が膨出していない状態)において筐体120の底面が維持する平坦面のラインを意味する。変形ライン122は、筐体120が電極体および電解液を収容し、ガスなどにより筐体120の底面が膨出している状態における筐体120の底面のラインを意味する。
【0027】
筐体120の底面と冷却プレート400との間には伝熱部材500が設けられる。伝熱部材500としては、たとえばシリコーン系の放熱シート、もしくは放熱ジェルなどが用いられる。放熱ジェルは充填タイプや塗布タイプのものが用いられる。
【0028】
冷却プレート400は、X軸方向において、筐体120の底面の変形ライン122に沿う凹部410を有する。X軸方向において、冷却プレート400の凹部410の縁端と伝熱部材500の縁端とは略一致している。このように、凹部410の縁端にまで伝熱部材500を延在させることにより、電池セル100の放熱効率を向上させることができる。
【0029】
冷却プレート400は、X軸方向において凹部410の外側に位置する平坦面420を有する。冷却プレート400は、筐体120の底面の理想ライン121よりも下側に位置している。凹部410の外側において冷却プレート400に平坦面420を形成し、冷却プレート400を筐体120の底面の理想ライン121よりも下側に位置させることにより、冷却プレート400の厚みが過度に増大することを抑制し、組電池1の軽量化を図ることができる。
【0030】
凹部410の形状は、適宜変更することが可能である。一例として、凹部410は円弧形状を含む。
【0031】
図5は、比較例に係る冷却プレート400Aの形状を示す図である。
図5に示すように、比較例に係る冷却プレート400Aは、その上面全体が平坦に形成される。したがって、電池セル100の筐体120の膨出量(
図5中の理想ライン121と変形ライン122と差)を伝熱部材500の変形により吸収する必要がある。この結果、
図4の例と比較して、伝熱部材500の厚みを増大させる必要が生じる。
【0032】
これに対し、本実施の形態に係る冷却プレート400においては、筐体120の底面の変形ライン122に沿う凹部410が形成されているため、筐体120の膨出量を伝熱部材500の変形により吸収する必要がなく、その分、伝熱部材500を薄く形成することが可能である。この結果、電池セル100の放熱効率を向上させるとともに、組電池1の軽量化、および組電池1の製造コストの低減を図ることができる。
【0033】
凹部410上に伝熱部材500を載置した状態で電池セル100の筐体120が冷却プレート400上に設置される。このとき、伝熱部材500の位置ずれを抑制することが求められる。
【0034】
筐体120の底面と伝熱部材500との間に摩擦係数が相対的に小さい低摩擦層を設けてもよい。低摩擦層は、たとえばPET樹脂層などから構成される。また、冷却プレート400と伝熱部材500との摩擦抵抗を増大させるための凹凸部など(グリップ部)を冷却プレート400と伝熱部材500との間に設けてもよい。これらの構成によって、伝熱部材500の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0035】
図6は、変形例に係る冷却プレート400の形状を示す図である。
図6に示すように、変形例に係る冷却プレート400は、筐体120の底面の理想ライン121よりも上側に突出する突出部430を有する。伝熱部材500は、X軸方向において突出部430よりも外側に達する。このようにすることで、伝熱部材500の位置ずれを効果的に抑制することができる。
【0036】
図7は、実施例に係る電池セル100を模式的に示す図である。
図7に示すように、筐体120の底面の理想ライン121は、X軸方向の中央側に位置する平面部121Aと、X軸方向の両端側に位置する曲面部121B(R部)とを含む。伝熱部材500は、X軸方向に平面部121Aの幅Aを有するように、すなわち、伝熱部材500の縁端と平面部121Aの縁端とが略一致するように設けられる。
【0037】
一例として、X軸方向における平面部121Aの幅(
図7中のA)は144mmであり、両端に位置する曲面部121Bの幅は各々2mmである。また、筐体120の底面の膨出量(
図7中のH)は、0.5mm程度である。変形ライン122は、幅Aと膨出量Hとから決定される円弧形状を有する。平面部121Aの幅(A)は、たとえば140mm以上146mm以下程度の範囲内において、適宜変更される。このとき、膨出量(H)は、たとえば0.3mm以上1.0mm以下程度である。
【0038】
伝熱部材500の幅が広いほど、電池セル100からの放熱量を大きくすることができる。他方、伝熱部材500の幅を過度に広くすることは、組電池1の軽量化および組電池1の製造コストの低減を阻害し得る。
【0039】
筐体120に収容された電極体130からの熱は、筐体120の底面から放出される。電極体130は、筐体120のX軸方向の幅全体にわたって設けられるが、電極体130と筐体120の底面とが安定して接触するのは、曲面部121Bを除いた平面部121Aの範囲である。本実施例においては、伝熱部材500の縁端と平面部121Aの縁端とが略一致するように伝熱部材500が設けられるため、伝熱部材500幅を過度に広くすることなく、放熱効率を効果的に向上させることができる。
【0040】
以上、本技術の実施の形態について説明したが、今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本技術の範囲は特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0041】
1 組電池、100 電池セル、110 電極端子、111 正極端子、112 負極端子、120 筐体、121 理想ライン、121A 平面部、121B 曲面部、122 変形ライン、130 電極体、200 エンドプレート、210 段差部、300 拘束部材、400,400A 冷却プレート、410 凹部、420 平坦面、430 突出部、500 伝熱部材。