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特許7429211半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/336 20060101AFI20240131BHJP
   H01L 29/78 20060101ALI20240131BHJP
   H01L 21/8234 20060101ALI20240131BHJP
   H01L 27/088 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
H01L29/78 301S
H01L27/088 B
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021150748
(22)【出願日】2021-09-16
(65)【公開番号】P2023043244
(43)【公開日】2023-03-29
【審査請求日】2021-09-16
(73)【特許権者】
【識別番号】519009105
【氏名又は名称】合肥晶合集成電路股▲ふん▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石田 浩
【審査官】上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-008430(JP,A)
【文献】特開2005-116975(JP,A)
【文献】特開平11-340453(JP,A)
【文献】特開平11-297987(JP,A)
【文献】特開平05-343674(JP,A)
【文献】特開2013-179323(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0286757(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/336、21/8234、
27/088、27/10、
29/78
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
半導体デバイスであって、
基板の表面領域に形成されたトランジスタを含み、前記トランジスタのゲート絶縁層と前記基板との界面に対してリセス領域と、
前記基板において前記リセス領域に対応する領域に、前記トランジスタのチャネル領域に向けて延設されたLDD領域と、を有し、
前記リセス領域の深さは、前記ゲート絶縁層の底面から10nm以上30nm以下であり、
前記リセス領域は、前記基板から垂直に立ち上がり、前記ゲート絶縁層の側面と同一平面内にあるサイドウォールを備え
前記リセス領域が設けられたトランジスタに対して膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタが前記基板の表面領域に形成されており、
前記リセス領域が設けられたトランジスタは、I/O用トランジスタであり、
前記膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタは、コア用トランジスタであり、リセス領域が設けられていないことを特徴とする半導体デバイス。
【請求項2】
請求項1に記載の半導体デバイスであって、
前記リセス領域は、前記基板の面内において前記トランジスタのゲート電極の端部からオフセットが無く設けられていることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の半導体デバイスであって、
前記リセス領域に前記トランジスタのソース領域及びドレイン領域の少なくとも1つが形成されていることを特徴とする半導体デバイス。
【請求項4】
半導体デバイスの製造方法であって、
基板の表面領域にトランジスタを形成し、
前記基板を10nm以上30nm以下の深さにエッチングして前記トランジスタのゲート絶縁層と前記基板との界面に対してリセス領域を形成し、
前記基板において前記リセス領域に対応する領域に、前記トランジスタのチャネル領域に向けて延設されたLDD領域を形成し、
前記リセス領域が設けられたトランジスタに対して膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタを前記基板の表面領域に形成し、
前記リセス領域の深さは、前記ゲート絶縁層の底面から10nm以上30nm以下であり、
前記リセス領域は、前記基板から垂直に立ち上がり、前記ゲート絶縁層の側面と同一平面内にあるサイドウォールを備え
前記リセス領域が設けられたトランジスタは、I/O用トランジスタであり、
前記膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタは、コア用トランジスタであり、リセス領域が設けられていないことを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項5】
請求項に記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記リセス領域は、前記基板の面内において前記トランジスタのゲート電極の端部からオフセットが無く設けられることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記トランジスタのゲート上に堆積されたレジスト層をマスクとして使用して前記基板をエッチングすることにより前記リセス領域が形成されることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項7】
請求項に記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記リセス領域が形成された後、前記レジスト層をマスクとして使用してイオンを注入することによって、前記基板内の前記リセス領域に対応する位置に前記LDD領域を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項8】
請求項に記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記リセス領域が形成された後、前記レジスト層を除去し、前記トランジスタのゲートをマスクとして使用してイオンを注入することによって、前記基板内の前記リセス領域に対応する位置に前記LDD領域を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項9】
請求項又はに記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記リセス領域に前記トランジスタのソース領域及びドレイン領域の少なくとも1つを形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項10】
請求項又はに記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記LDD領域は、前記基板の表面の法線方向に対して鋭角を形成する方向にイオンを注入することによって形成されることを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【請求項11】
請求項又は5に記載の半導体デバイスの製造方法であって、
前記トランジスタのゲート電極の上にシリコン窒化膜を形成し、前記シリコン窒化膜をマスクとして利用して前記基板をエッチングすることで前記リセス領域を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
短チャネル効果を低減した半導体デバイスが開示されている(特許文献1)。当該先行技術文献の図5に示されているように、フィンの上部には第2方向に延びるダミーゲートスタック構造が形成される。また、図6に示されるように、第1のゲートスペーサーがデバイス全体に形成され、図7に示されるように、フィンは選択的にエッチングされ、ソース/ドレイントレンチは、第1の方向に沿ってダミーゲートスタック構造の両側のフィン内に形成される。さらに、図8に示されるように、第1のゲートスペーサー層及びダミーゲートスタック構造をマスクとして使用して、ソース/ドレイントレンチにおいて露出されるフィンに軽くドープされたイオン注入を実行する。そして、図9に示されるように、ソース/ドレイントレンチ内にソース領域及びドレイン領域をエピタキシャル成長させ、ソース領域及びドレイン領域の上にそれぞれ高濃度ドープされたソース領域及びドレイン領域がエピタキシャル成長される。
【0003】
また、ゲート絶縁膜が薄いトランジスタにおいて、ゲート電極の空乏を抑えることができる半導体デバイスが開示されている(特許文献2)。該先行技術文献では、複数のタイプのMOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)が基板上に形成される。コアとなるMOSFETのゲート絶縁膜は、入出力(I/O)用のMOSFETのゲート絶縁膜よりも薄く、コアとなるMOSFETのゲート電極用のポリシリコンは、I/O用のMOSFETのゲート電極用のポリシリコンよりも低く設けられる。
【0004】
また、歪みの高いキャリア移動領域における寄生抵抗及びエネルギー障壁を小さくするための半導体装置が開示されている(特許文献3)。当該半導体装置では、半導体基板上にゲート絶縁膜を介して形成されたゲート電極と、半導体基板のうちゲート電極の下方に形成されるチャネル領域と、チャネル領域の両側方に形成され、第1炭素濃度で炭素を含み、第1リン濃度でリンを含む第1の炭化シリコン層と、第1の炭化シリコン層上にチャネル領域に接合して形成され、第1リン濃度より多い第2リン濃度でリンを含み、第1炭素濃度以下の第2炭素濃度で炭素を含む第2の炭化シリコン層とを有する。このとき、図1Iに示されるように異なるゲートスタックが基板上に形成され、図1Jに示されるように、窒化ケイ素層が基板及びゲートスタックの表面に沿って形成されている。さらに、図1Kに示されるように、窒化ケイ素層がエッチングされて側壁スペーサーを形成され、図1Lに示されるように、側壁スペーサー、窒化ケイ素層及びSTIをマスクとして使用してnウェル及びpウェルの基板表面部分がエッチングされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】中国特許公開第105470135号公報
【文献】特開2002-217307号公報
【文献】米国特許公開第2013/280897号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
シリコン基板上に複数種類のMOSFETを形成した半導体デバイスの場合、コアと入出力(I/O)用のMOSFETのゲート絶縁体の厚さが異なる。例えば、55nmノードではゲート電極の膜厚は約100nmとする必要がある。しかしながら、I/O用のMOSFETのLDDを形成する際、ゲート電極がマスクとして使用されてイオン注入によりLDDが形成される。この場合、LDDは基板に浸透し、HCI(ホットキャリア不安定性)を改善するために深く形成することはできない。
【0007】
上記の問題を解決するために、特許文献2では、I/O用のMOSFETのゲート電極の膜厚をコアのMOSFETのゲート電極の膜厚よりも厚くしている。これにより、I/O用のMOSFETにおいて深いLDDを形成する方法を提案している。
【0008】
しかしながら、異なる膜厚のゲート電極を形成するために2つの追加のマスクが必要であり、それが製造コストを増加させるという技術的な課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の1つの態様は、半導体デバイスであって、基板の表面領域に形成されたトランジスタを含み、前記トランジスタのゲート絶縁層と前記基板との界面に対してリセス領域を有することを特徴とする半導体デバイスである。
【0010】
ここで、前記リセス領域は、前記基板の面内において前記トランジスタのゲート電極の端部からオフセットが無く設けられていることが好適である。
【0011】
また、前記リセス領域の深さは、前記ゲート絶縁層の底面から10nm以上40nm以下であることが好適である。
【0012】
また、前記リセス領域が設けられたトランジスタに対して膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタが前記基板の表面領域に形成されていることが好適である。
【0013】
また、前記リセス領域に前記トランジスタのソース領域及びドレイン領域の少なくとも1つが形成されていることが好適である。
【0014】
本発明の別の態様は、半導体デバイスの製造方法であって、基板の表面領域にトランジスタを形成し、前記トランジスタのゲート電極プロセスにおいて、前記基板をエッチングして前記トランジスタのゲート絶縁層と前記基板との界面に対してリセス領域を形成することを特徴とする半導体デバイスの製造方法である。
【0015】
ここで、前記リセス領域は、前記基板の面内において前記トランジスタのゲート電極の端部からオフセットが無く設けられることが好適である。
【0016】
また、前記基板を10nm以上40nm以下の深さにエッチングして前記リセス領域を形成することが好適である。
【0017】
また、前記リセス領域が設けられたトランジスタに対して膜厚が異なるゲート絶縁層を有するトランジスタを前記基板の表面領域に形成することが好適である。
【0018】
また、前記リセス領域に前記トランジスタのソース領域及びドレイン領域の少なくとも1つを形成するが好適である。
【0019】
また、前記トランジスタの前記ゲート電極及び前記ゲート絶縁層の上にシリコン窒化膜を形成し、前記シリコン窒化膜をマスクとして利用して前記基板をエッチングすることで前記リセス領域を形成することが好適である。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、適切なLDD領域を形成するために異なる膜厚のゲート電極を形成する必要がない半導体デバイス及び半導体デバイスの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】第1の実施の形態における半導体デバイスの基本構成を示す断面模式図である。
図2】第1の実施の形態における半導体デバイスの基本構成の製造方法を示す図である。
図3】本発明の実施の形態における半導体デバイスの特性を示す図である。
図4】本発明の実施の形態における半導体デバイスの特性を示す図である。
図5】第2の実施の形態における半導体デバイスの基本構成を示す断面模式図である。
図6】第2の実施の形態における半導体デバイスの基本構成の製造方法を示す図である。
図7】第3の実施の形態における半導体デバイスの基本構成の製造方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1の実施の形態]
図1は、本発明の実施の形態における半導体デバイス100の基本構成の断面模式図を示す。半導体デバイス100は、MOS型電界効果トランジスタ(MOSFET)の基本構成の断面模式図を示す。本実施の形態における半導体デバイス100の利用目的は、特に限定されるものではないが、入出力(I/O)用のMOSFETとして利用することができる。
【0023】
なお、図1は半導体デバイス100の基本構成を説明するための模式図であり、各構成要素を強調して示しており、各部の寸法は実際の比を示していない場合がある。また、説明を明確にするためにデバイスの一部を除外して記載している。
【0024】
半導体デバイス100は、半導体基板10、ウェル領域12、分離領域14、ソース領域16、ドレイン領域18、LDD領域20、ゲート絶縁層22、ゲート電極24及びサイドウォール26を含んで構成される。
【0025】
以下、半導体デバイス100に含まれるMOSFETは、nチャネル型として説明する。この場合、以下の説明において、第1導電型はp型であり、第1導電型の反対の第2導電型はn型である。ただし、半導体デバイス100に含まれるMOSFETは、nチャネル型に限定されるものではなく、pチャネル型のMOSFESとしてもよい。この場合、第1導電型はn型であり、第1導電型の反対の第2導電型はp型として読み替えればよい。
【0026】
半導体基板10は、半導体デバイス100が表面領域に形成される基板である。半導体基板10は、例えばシリコン基板することができる。半導体基板10は、第1導電型とする。半導体基板10は、例えばp型とすることができる。ウェル領域12は、半導体基板10の表面領域に形成される。ウェル領域12は、半導体基板10よりドーパント濃度が高い領域である。ウェル領域12は、第1導電型とする。ウェル領域12は、例えばp型のボロン(B)をドーパントとして添加する。ウェル領域12のドーパント濃度は、1×1016/cm以上5×1017/cm以下とすることが好適である。
【0027】
分離領域14は、隣り合う素子間を絶縁するための絶縁領域である。分離領域14は、ソース領域16、ドレイン領域18、LDD領域20、ゲート絶縁層22及びゲート電極24を取り囲むように設けられる。分離領域14は、シャロートレンチアイソレーション(STI:Shallow Trench Isolation)領域又はLOCOS領域とすることができる。
【0028】
ソース領域16は、半導体デバイス100のMOSFETのソースとして機能する領域である。ドレイン領域18は、半導体デバイス100のMOSFETのドレインとして機能する領域である。ソース領域16及びドレイン領域18は、第1導電型と反対の第2導電型とする。ソース領域16及びドレイン領域18は、例えばn型の燐(P)や砒素(As)をドーパントとして添加する。ソース領域16及びドレイン領域18のドーパント濃度は、1×1019/cm以上1×1021/cm以下とすることが好適である。ただし、ソース領域16及びドレイン領域18のドーパント濃度は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0029】
LDD領域20は、ソース領域16及びドレイン領域18と同じ導電型、すなわち第2導電型とする。LDD領域20は、ソース領域16とゲート絶縁層22下のチャネル領域とを繋ぐ領域、及び、ドレイン領域18とゲート絶縁層22下のチャネル領域とを繋ぐ領域に形成される。LDD領域20は、第2導電型とする。LDD領域20は、例えばn型の燐(P)をドーパントとして添加する。LDD領域20のドーパント濃度は、1×1018/cm以上1×1019/cm以下とすることが好適である。ただし、LDD領域20のドーパント濃度は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0030】
なお、半導体デバイス100では、ソース領域16、ドレイン領域18及びLDD領域20は、半導体基板10の表面領域を表面から所定の深さまで掘り込んだリセス領域に形成される。
【0031】
ゲート絶縁層22は、半導体デバイス100のMOSFETのゲートを構成する絶縁層である。ゲート絶縁層22は、半導体基板10の表面領域においてソース領域16側のLDD領域20とドレイン領域18側のLDD領域20との間に跨がるように設けられる。ゲート絶縁層22は、シリコン酸化層(SiO)、シリコン窒化層(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)とすることができる。半導体デバイス100では、ゲート絶縁層22の膜厚は、10nm以上100nm以下とすることが好適である。ただし、ゲート絶縁層22の膜厚は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0032】
ゲート電極24は、半導体デバイス100のゲートに電圧を印加するための電極である。ゲート電極24は、ゲート絶縁層22上に形成される。ゲート電極24は、例えば、多結晶シリコン層、金属層、シリサイド又はこれらの積層構造とすることができる。半導体デバイス100では、ゲート電極24の膜厚は、100nm以上200nm以下とすることが好適である。ただし、ゲート電極24の膜厚は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。サイドウォール26は、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の側面を覆うように形成される。サイドウォール26は、シリコン酸化層(SiO)、シリコン窒化層(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)とすることができる。サイドウォール26の幅は、例えば50nm程度とすればよい。
【0033】
ゲート絶縁層22上のゲート電極24にゲート電圧を印加することによって、ソース領域16とドレイン領域18との間のウェル領域12にチャネルが形成される。このとき、ソース領域16とドレイン領域18との間に電圧を印加することによってソース-ドレイン電流が流れる。すなわち、ゲート電極24に印加するゲート電圧を調整することによって、ソース-ドレイン電流を制御することができる。
【0034】
半導体デバイス100は、半導体基板10の表面領域上に形成され、異なる厚さのゲート絶縁層を有する複数のMOSFETを含むことができる。入出力(I/O)用のMOSFETに加えて、1つ又は複数のコアとなるMOSFETを半導体基板10の表面領域に形成することもできる。コアとなるMOSFETと入出力(I/O)用のMOSFEはどちらも、図1に示す基本構造を持つことができる。LDD領域20は、陥没領域に形成され、ゲート電極24を貫通できない低エネルギーイオン注入が使用されたとしても入出力(I/O)用のMOSFEが形成されたLDD領域20は依然として十分に低減された電界を有することができる。入出力(I/O)用のMOSFEのゲート厚がコアとなるMOSFETのゲート厚よりも大きくなければならないという制限はない。例えば、半導体基板10の表面積上に形成された複数のMOSFETのゲート厚さは等しくてもよい。
【0035】
[製造方法]
以下、図2を参照して、半導体デバイス100の製造方法について説明する。図2は半導体デバイス100の製造方法を示す断面模式図であり、半導体デバイス100を構成する各部を強調して示しており、各部の平面方向の寸法及び厚さ方向の寸法は実際の比を示していない場合がある。
【0036】
半導体基板10は、第1導電型としてp型にドーピングされたシリコン基板として説明する。
【0037】
ステップS10では、ウェル領域12及び分離領域14が形成される。分離領域14は、マスクを利用した既存のLOCOSプロセス又はSTIプロセスによって形成することができる。LOCOSプロセスでは、シリコン酸化膜(SiO)やシリコン窒化膜(SiN)をマスクとして、酸素(O)を供給しつつ半導体基板10を加熱することによって半導体基板10の表面においてマスクの開口領域を熱酸化することによって分離領域14を形成することができる。また、STIプロセスでは、開口領域をトレンチエッチングし、その溝内に高密度プラズマCVD等を用いて絶縁膜を埋め込んだ後、当該領域を化学機械研磨法(CMP)で平坦化することで分離領域14を形成することができる。
【0038】
ウェル領域12は、p型ドーパント(ボロンB又は二フッ化ボロンBF)を半導体基板10の表面にイオン注入して形成する。例えば、半導体基板10に対してボロン(B)を180keVで2.0×1013/cm、100keVで8.0×1012/cm及び30keVで2.6×1012/cmで多段階注入する。ただし、イオン注入されるドーパントの密度、注入深さ等は半導体デバイス100のサイズや特性に応じて適宜設定すればよい。イオン注入後、イオン拡散処理が行われる。ウェル領域12へドーパントを注入した後、半導体基板10を1050℃で30秒のアニール処理を適用することによってウェル領域12を形成することができる。ただし、加熱温度及び時間は、半導体デバイス100のサイズや特性に応じて適宜設定すればよい。
【0039】
ステップS12では、ゲート絶縁層22及びゲート電極24が形成される。ゲート絶縁層22は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長法(CVD)により形成することができる。また、ゲート絶縁層22は、酸素(O)等の酸素含有ガスや窒素(N)等の窒素含有ガスを用いた熱酸化法により形成してもよい。半導体基板10の表面においてソース領域16側のLDD領域20及びドレイン領域18側のLDD領域20となる表面領域に跨がるようにゲート絶縁層22が形成される。ゲート絶縁層22の膜厚は10nm以上100nm以下とすることが好適である。MOSFETの動作電圧範囲を5V~8V程度とする場合、ゲート絶縁層22の膜厚は10nm~20nm程度とすることが好適である。また、例えば、MOSFETの動作電圧範囲を1.2V~1.5V程度とする場合、ゲート絶縁層22の厚さは4nm以下とすることが好適である。
【0040】
例えば、半導体基板10を1050℃の温度に加熱した状態で酸化ガスを供給することによって14.6nm程度の膜厚のゲート絶縁層22を形成する。
【0041】
ゲート絶縁層22上にゲート電極24が形成される。ゲート電極24の形成方法は、特に限定されるものではないが、多結晶シリコン層とする場合にはシラン(SiH)等のシリコン含有ガスを用いた化学気相成長法(CVD法)とすることができる。ゲート電極24を金属層とする場合、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)等を適用することができる。ゲート電極24の膜厚は、100nm以上200nm以下とすることが好適である。例えば、ゲート電極24の膜厚は100nmとする。
【0042】
ゲート絶縁層22及びゲート電極24は、従来のフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を適用して、半導体デバイス100の必要な領域にパターニングされる。すなわち、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の上にレジスト層Rを形成し、フォトリソグラフィ技術によってレジスト層Rをパターニングし、レジスト層Rをマスクとして不要な領域のゲート絶縁層22及びゲート電極24をエッチング技術にて除去することによって領域のゲート絶縁層22及びゲート電極24をパターニングすることができる。
【0043】
ステップS14では、リセス領域Xが形成される。ゲート電極24上に形成したレジスト層Rをマスクとして、ゲート絶縁層22の縁から分離領域14の縁までの領域に亘る半導体基板10の表面をエッチングすることによってリセス領域Xが形成される。エッチングには、例えば、従来の異方性エッチング技術を適用することができる。これによって、半導体基板10の面内方向においてゲート絶縁層22及びゲート電極24の端部に対して位置的なずれ(オフセット)がないリセス領域Xを形成することができる。また、リセス領域Xの深さは、10nm以上40nm以下とすることが好適である。
【0044】
ステップS16では、LDD領域20が形成される。第2導電型がn型である場合、n型ドーパント(燐P又は砒素As)を半導体基板10の表面にイオン注入する。イオン注入では、燐(P)を10keV以上100keV以下のイオン注入エネルギーで1.0×1013/cm以上1.0×1014/cm以下の密度となるようにイオン注入することが好適である。イオン注入は、半導体基板10の表面に垂直な方向に対して角度を付けて複数回行うことが好適である。半導体基板10の表面に垂直な方向に対して角度を付けてイオン注入を行うことによって、図1及び図2に示すように、ゲート絶縁層22の端部に対して位置的なずれ(オフセット)がなく形成されたリセス領域Xからゲート絶縁層22下の領域に亘って、ゲート絶縁層22の端部より内側(チャネル領域側)に膨らんだ形状を有するLDD領域20を形成することができる。ただし、イオン注入されるドーパントの密度、注入深さ、注入角度及び注入回数等は半導体デバイス100のサイズや特性に応じて適宜設定すればよい。
【0045】
例えば、燐(P)を半導体基板10の表面に垂直な方向に対して45°の角度において35keVのイオン注入エネルギーで2.0×1013/cmだけ4回注入する。イオン注入を行った後、レジスト層Rを除去する。一実施形態では、レジスト層Rは、イオン注入の前に除去することもできる。その結果、入出力(I/O)用のMOSFETのゲート及びコアとなるMOSFETのゲートはイオン注入中にマスクとして使用される。
【0046】
このように、リセス領域Xを形成した後にLDD領域20を形成することによって、多結晶シリコン等からなるゲート電極24を通過しない低エネルギーのイオン注入であってもチャネル領域の電界を充分に緩和できるLDD領域20を形成することができる。
【0047】
さらに、半導体基板10の表面に垂直な方向に対してイオン注入の角度を傾けることによって、ゲート絶縁層22下のウェル領域12にも延伸されたLDD領域20を形成することができる。すなわち、ゲート絶縁層22と充分にオーバーラップしたLDD領域20を形成することができる。
【0048】
ステップS18では、サイドウォール26並びにソース領域16及びドレイン領域18が形成される。ゲート電極24の上面からリセス領域Xの底部に亘ってゲート絶縁層22及びゲート電極24の側面並びにリセス領域Xの半導体基板10の側面を覆うようにサイドウォール26が形成される。サイドウォール26は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長法(CVD)により形成することができる。また、サイドウォール26は、酸素(O)等の酸素含有ガスや窒素(N)等の窒素含有ガスを用いた化学気相成長法(CVD)により形成してもよい。フォトリソグラフィ技術を利用したエッチングを適用して、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の側面並びにリセス領域Xの半導体基板10の側面にサイドウォール26が残るように処理される。サイドウォール26は、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の端部から50nm程度の幅で設けることが好適である。
【0049】
サイドウォール26を形成した後、ソース領域16及びドレイン領域18が形成される。ソース領域16及びドレイン領域18は、ドーパントのイオン注入処理及びアニールによる拡散処理によって形成される。
【0050】
第2導電型がn型である場合、分離領域14、ゲート絶縁層22、ゲート電極24及びサイドウォール26をマスクとしてn型ドーパント(燐P又は砒素As)を半導体基板10の表面にイオン注入する。イオン注入は、多段階注入とすることが好適である。具体的には、n型ドーパントを5keV以上50keV以下のイオン注入エネルギーで1×1013/cm以上5×1015/cm以下の密度となるように多段階注入することが好適である。ただし、イオン注入されるドーパントの密度、注入深さ等は半導体デバイス100のソース領域16及びドレイン領域18として必要な特性に応じて適宜設定すればよい。
【0051】
例えば、燐Pを26keVのイオン注入エネルギーで2.0×1013/cmの密度、砒素Asを23keVのイオン注入エネルギーで4.0×1015/cmの密度及び、燐Pを6keVのイオン注入エネルギーで8.0×1014/cmの密度となるように多段階でイオン注入する。その後、高温でスパイクアニール(加熱)することによって半導体基板10内のドーパントを活性化させる。例えば、1055℃のスパイクアニールを行う。これによって、ソース領域16及びドレイン領域18が形成される。
【0052】
[半導体デバイスの特性]
以下、半導体デバイス100の特性についてシミュレーションによって解析した結果を示す。
【0053】
図3(a)は、ドレイン電圧Vd=6Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0~40nmまで変化させたときの最大基板電流Isubの変化率ΔIsubを示す。ここでは、リセス領域Xが0のときの最大基板電流Isubを基準として最大基板電流Isubの変化率ΔIsubを示している。図3(a)に示されるように、リセス領域Xの深さが深くなるにつれて最大基板電流Isubは小さくなり、リセス領域Xが40nmのときに35%程度に抑制できた。
【0054】
図3(b)は、ドレイン電圧Vd=6V及びゲート電圧Vg=-0.5Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0~40nmまで変化させたときのゲート誘導ドレインリーク電流Ioff(GIDL)の変化値dIoffを示す。ここでは、リセス領域Xが0のときのゲート誘導ドレインリーク電流Ioffを100%として規格化したゲート誘導ドレインリーク電流Ioffの変化値dIoffを示している。図3(b)に示されるように、リセス領域Xの深さが5nmではゲート誘導ドレインリーク電流Ioffの変化値dIoffは大きくなったが、リセス領域Xの深さが10nm以上になるとゲート誘導ドレインリーク電流Ioffの変化値dIoffは急激に減少し、リセス領域Xの深さが10nmにおいて3桁程度も低減された。
【0055】
図3(c)は、ドレイン電圧Vd=0.1Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0~40nmまで変化させたときのゲート閾値電圧Vthの変化率ΔVthを示す。ここでは、リセス領域Xが0のときのゲート閾値電圧Vthを基準としてゲート閾値電圧Vthの変化率ΔVthを示している。図3(c)に示されるように、リセス領域Xの深さが0~40nmにおいてゲート閾値電圧Vthには大きな変動は示さなかった。
【0056】
図3(d)は、ドレイン電圧Vd=6V及びゲート電圧Vg=6Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0~40nmまで変化させたときのソース-ドレイン電流Idsの変化率ΔIdsを示す。ここでは、リセス領域Xが0のときのソース-ドレイン電流Idsを基準としてソース-ドレイン電流Idsの変化率ΔIdsを示している。図3(d)に示されるように、リセス領域Xの深さが0~40nmにおいてソース-ドレイン電流Idsには大きな変動は示さなかった。
【0057】
例えば、リセス領域Xが30nmのとき、リセス領域Xが0の場合に対して最大基板電流Isubは-26%、ゲート誘導ドレインリーク電流Ioffは3桁減、ゲート閾値電圧Vthは+3mV、ソース-ドレイン電流Idsは+0.8%の変化を示した。
【0058】
これらの結果は、リセス領域Xの深さが0から4nmに変化すると、半導体デバイス100においてホットキャリアの生成が抑制され、リーク電流(GIDL)が小さくなったことに起因すると推察される。
【0059】
図4は、半導体デバイス100のゲート絶縁層22とLDD領域20及びドレイン領域18との境界付近の特性を示す。図4(a)は、半導体デバイス100のゲート絶縁層22とLDD領域20及びドレイン領域18との境界付近の拡大断面図を示す。
【0060】
図4(b)は、ドレイン電圧Vd=6V及びゲート電圧Vg=6Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0又は40nmとしたときの半導体デバイス100の深さ方向における電界の強さを示す。図4(c)は、ドレイン電圧Vd=6V及びゲート電圧Vg=6Vの条件下においてリセス領域Xの深さを0又は40nmとしたときの半導体デバイス100の深さ方向における衝突電離化の強さを示す。図4(d)は、ドレイン電圧Vd=6V及びゲート電圧Vg=0の条件下においてリセス領域Xの深さを0又は40nmとしたときのエネルギーバンド間のトンネル電流の大きさを示す。図4(b)~図4(d)は、いずれも図4(a)の一点破線に沿ってゲート絶縁層22下のLDD領域20内の特性をシミュレーションした結果を示している。
【0061】
図4(b)に示すように、ゲート絶縁層22とLDD領域20及びドレイン領域18との境界付近におけるゲート絶縁層22直下の電界は、深さ0.15μm付近までの領域においてリセス領域Xが0の場合に比べて40nmの場合において著しく低減された。また、図4(c)に示すように、ゲート絶縁層22とLDD領域20及びドレイン領域18との境界付近におけるゲート絶縁層22直下の衝突電離の強さは、深さ0.04μm付近までの領域においてリセス領域Xが0の場合に比べて40nmの場合において低減された。また、図4(d)に示すように、ゲート絶縁層22とLDD領域20及びドレイン領域18との境界付近におけるゲート絶縁層22直下のトンネル電流の大きさは、深さ0.03μm付近までの領域においてリセス領域Xが0の場合に比べて40nmの場合において低減された。
【0062】
これらの結果は、図3(a)及び図3(b)に示したように、半導体デバイス100においてリセス領域Xを設けることによって最大基板電流Isub及びゲート誘導ドレインリーク電流Ioffが低減された要因と考えられる。
【0063】
[第2の実施の形態]
図2に示した半導体デバイス100の製造方法は、ゲート絶縁層22及びゲート電極24をエッチングするためのマスクを利用してリセス領域Xを形成した。この場合、例えば入出力(I/O)用のMOSFETにリセス領域Xを設けた構造にしようとすると、それ以外のコア用のMOSFET等にも同様にリセス領域Xが形成されてしまう。
【0064】
図5は、第2の実施の形態における半導体デバイス200の構造を示す断面模式図である。なお、図5は半導体デバイス200の構造を示す断面模式図であり、半導体デバイス200を構成する各部を強調して示しており、各部の平面方向の寸法及び厚さ方向の寸法は実際の比を示していない場合がある。
【0065】
半導体デバイス200は、リセス領域Xを設けた入出力(I/O)用MOSFETとリセス領域Xを設けていないコア用MOSFETとの両方を備える。入出力(I/O)用MOSFETは、半導体デバイス100と同様の構成であるので説明を省略する。
【0066】
コア用MOSFETは、ソース領域30、ドレイン領域32、LDD領域34、ゲート絶縁層36、ゲート電極38及びサイドウォール40を含んで構成される。なお、半導体基板10、ウェル領域12及び分離領域14は、半導体デバイス100と共通に設けられる。
【0067】
以下、コア用MOSFETは、nチャネル型として説明する。この場合、以下の説明において、第1導電型はp型であり、第1導電型の反対の第2導電型はn型である。ただし、コア用MOSFETは、nチャネル型に限定されるものではなく、pチャネル型のMOSFESとしてもよい。この場合、第1導電型はn型であり、第1導電型の反対の第2導電型はp型として読み替えればよい。
【0068】
ソース領域30は、コア用MOSFETのソースとして機能する領域である。ドレイン領域32は、コア用MOSFETのドレインとして機能する領域である。ソース領域30及びドレイン領域32は、第1導電型と反対の第2導電型とする。ソース領域30及びドレイン領域32は、例えば、燐Pを26keVのイオン注入エネルギーで2.0×1013/cmの密度、砒素Asを23keVのイオン注入エネルギーで4.0×1015/cmの密度及び、燐Pを6keVのイオン注入エネルギーで8.0×1014/cmの密度となるように多段階でイオン注入する。ソース領域30及びドレイン領域32のドーパント濃度は、1×1019/cm以上1×1021/cm以下とすることが好適である。ただし、ソース領域30及びドレイン領域32のドーパント濃度は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0069】
LDD領域34は、ソース領域30及びドレイン領域32と同じ導電型、すなわち第2導電型とする。LDD領域34は、ソース領域30とゲート絶縁層36下のチャネル領域とを繋ぐ領域、及び、ドレイン領域32とゲート絶縁層36下のチャネル領域とを繋ぐ領域に形成される。LDD領域34は、第2導電型とする。LDD領域34は、例えばn型の燐(P)又は砒素(As)をドーパントとして添加する。同時に、短チャネル効果の防止用のために、第1導電型のインジウム(In)やボロン(B)、さらにはゲルマニウム(Ge)を添加してもよい。LDD領域34のドーパント濃度は、1×1018/cm以上1×1020/cm以下とすることが好適である。ただし、LDD領域34のドーパント濃度は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0070】
ゲート絶縁層36は、コア用MOSFETのゲートを構成する絶縁層である。ゲート絶縁層36は、半導体基板10の表面領域においてソース領域30側のLDD領域34とドレイン領域32側のLDD領域34との間に跨がるように設けられる。ゲート絶縁層36は、シリコン酸化層(SiO)、シリコン窒化層(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)とすることができる。ゲート絶縁層36の膜厚は、2nm以上100nm以下とすることが好適である。ただし、ゲート絶縁層36の膜厚は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。
【0071】
ゲート電極38は、コア用MOSFETのゲートに電圧を印加するための電極である。ゲート電極38は、ゲート絶縁層36上に形成される。ゲート電極38は、例えば、多結晶シリコン層、金属層、シリサイド又はこれらの積層構造とすることができる。半導体デバイス100では、ゲート電極38の膜厚は、100nm以上200nm以下とすることが好適である。ただし、ゲート電極38の膜厚は、半導体デバイス100に必要とされる特性に応じて設定すればよい。サイドウォール40は、ゲート絶縁層36及びゲート電極38の側面を覆うように形成される。サイドウォール40は、シリコン酸化層(SiO)、シリコン窒化層(SiN)、シリコン酸窒化膜(SiOxNy)とすることができる。
【0072】
ゲート絶縁層36上のゲート電極38にゲート電圧を印加することによって、ソース領域30とドレイン領域32との間のウェル領域12にチャネルが形成される。このとき、ソース領域30とドレイン領域32との間に電圧を印加することによってソース-ドレイン電流が流れる。すなわち、ゲート電極38に印加するゲート電圧を調整することによって、ソース-ドレイン電流を制御することができる。
【0073】
以下、図6を参照しつつ、半導体デバイス200の製造方法について説明する。図6は半導体デバイス200の製造方法を示す断面模式図であり、半導体デバイス200を構成する各部を強調して示しており、各部の平面方向の寸法及び厚さ方向の寸法は実際の比を示していない場合がある。
【0074】
半導体基板10は、第1導電型としてp型にドーピングされたシリコン基板として説明する。また、半導体デバイス100は、リセス領域Xを設けた入出力(I/O)用のMOSFETとリセス領域Xを設けないコア用のMOSFETを備える構成を例とする。
【0075】
ステップS20では、ウェル領域12及び分離領域14が形成される。当該ステップは、上記ステップS10と同様であるので説明を省略する。
【0076】
ステップS22では、入出力(I/O)用MOSFETのゲート絶縁層22及びゲート電極24並びにコア用MOSFETのゲート絶縁層36及びゲート電極38が形成される。ゲート絶縁層22及びゲート絶縁層36は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長法(CVD)により形成することができる。また、ゲート絶縁層22及びゲート絶縁層36は、酸素(O)等の酸素含有ガスや窒素(N)等の窒素含有ガスを用いた熱酸化法により形成してもよい。
【0077】
ゲート絶縁層22及びゲート絶縁層36上にそれぞれゲート電極24及びゲート電極38が形成される。ゲート電極24及びゲート電極38の形成方法は、特に限定されるものではないが、多結晶シリコン層とする場合にはシラン(SiH)等のシリコン含有ガスを用いた化学気相成長法(CVD法)とすることができる。ゲート電極24及びゲート電極38を金属層とする場合、蒸着法、スパッタリング法、化学気相成長法(CVD法)等を適用することができる。ゲート電極24及びゲート電極38は、同じ堆積及びエッチングプロセスによって形成することができる。その結果、ゲート電極24及びゲート電極38は、同じ厚さを有することができる。
【0078】
具体的には、まず、半導体基板10の表面においてソース領域16側のLDD領域20及びドレイン領域18側のLDD領域20となる表面領域に跨がるようにゲート絶縁層22が形成される。例えば、半導体基板10を1050℃の温度に加熱した状態で酸化ガスを供給することによって14nm程度の膜厚のゲート絶縁層22を形成することができる。続いて、ゲート絶縁層22上にゲート電極24が形成される。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を適用して、ゲート絶縁層22及びゲート電極24を半導体デバイス100の必要な領域にパターニングする。ゲート絶縁層22及びゲート電極24の形成方法は、半導体デバイス100と同様である。
【0079】
次に、半導体基板10の表面においてソース領域30側のLDD領域34及びドレイン領域32側のLDD領域34となる表面領域に跨がるようにゲート絶縁層36が形成される。ゲート絶縁層36の膜厚は2nm以上100nm以下とすることが好適である。MOSFETの動作電圧範囲を5V~8V程度とする場合、ゲート絶縁層36の膜厚は10nm~20nm程度とすることが好適である。また、例えば、MOSFETの動作電圧範囲を1.2V~1.5V程度とする場合、ゲート絶縁層36の厚さは4nm以下とすることが好適である。例えば、半導体基板10を1080℃の温度に加熱した状態で酸化ガスを供給することによって1.35nm程度の膜厚のゲート絶縁層36を形成する。続いて、ゲート絶縁層36上にゲート電極38が形成される。ゲート電極38の膜厚は、100nm以上200nm以下とすることが好適である。例えば、ゲート電極38の膜厚は100nmとする。そして、フォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を適用して、ゲート絶縁層36及びゲート電極38を半導体デバイス100の必要な領域にパターニングする。
【0080】
ステップS24では、入出力(I/O)用MOSFETのリセス領域X及びLDD領域20が形成される。ゲート電極24及びコア用MOSFETの領域に形成したレジスト層Rをマスクとして、ゲート絶縁層22の縁から分離領域14の縁までの領域に亘る半導体基板10の表面をエッチングすることによってリセス領域Xが形成される。エッチングには、例えば、従来の異方性エッチング技術を適用することができる。これによって、半導体基板10の面内方向においてゲート絶縁層22及びゲート電極24の端部に対して位置的なずれ(オフセット)がないリセス領域Xを形成することができる。また、リセス領域Xの深さは、10nm以上40nm以下とすることが好適である。
【0081】
さらに、LDD領域20が形成される。第2導電型がn型である場合、n型ドーパント(燐P又は砒素As)を半導体基板10の表面にイオン注入する。LDD領域20の形成方法は、半導体デバイス100と同様に行うことができる。例えば、燐(P)を半導体基板10の表面に垂直な方向に対して30°の角度において90keVのイオン注入エネルギーで2.0×1013/cmだけ4回注入する。イオン注入を行った後、レジスト層Rを除去する。
【0082】
ステップS26では、コア用のMOSFETのLDD領域34が形成される。ゲート電極38及び入出力(I/O)用MOSFETの領域上に形成したレジスト層Rをマスクとして、ゲート絶縁層36の縁から分離領域14の縁までの領域に亘る半導体基板10の表面にイオン注入を行う。第2導電型がn型である場合、n型ドーパント(燐P又は砒素As)を半導体基板10の表面にイオン注入する。LDD領域34は、イオン注入では、砒素(As)を2keV以上100keV以下のイオン注入エネルギーで1.0×1013/cm以上1.0×1015/cm以下の密度となるようにイオン注入することが好適である。
【0083】
例えば、砒素(As)を半導体基板10の表面に対して垂直に2keVのイオン注入エネルギーで9.0×1014/cmだけ4回注入する。同時に、短チャネル効果の防止用に第1導電型のインジウム(In)を半導体基板10の表面に対して35°の角度において50keVのイオン注入エネルギーで1.0×1013/cmだけ4回注入する。また、ボロン(B)を半導体基板10の表面に対して30°の角度において6keVのイオン注入エネルギーで3.5×1013/cmだけ4回注入する。さらにはゲルマニウム(Ge)を半導体基板10の表面に対して垂直に16keVのイオン注入エネルギーで4.0×1014/cmだけ4回注入する。
【0084】
ステップS28では、サイドウォール26及びサイドウォール40並びにソース領域16、ドレイン領域18、ソース領域30及びドレイン領域32が形成される。ゲート電極24の上面からリセス領域Xの底部に亘ってゲート絶縁層22及びゲート電極24の側面並びにリセス領域Xの半導体基板10の側面を覆うようにサイドウォール26が形成される。また、ゲート電極38の上面からゲート絶縁層36の底部に亘ってサイドウォール40が形成される。サイドウォール26及びサイドウォール40は、テトラエトキシシラン(TEOS)を用いた化学気相成長法(CVD)により形成することができる。また、サイドウォール26及びサイドウォール40は、酸素(O)等の酸素含有ガスや窒素(N)等の窒素含有ガスを用いた化学気相成長法(CVD)により形成してもよい。エッチングを適用して、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の側面並びにリセス領域Xの半導体基板10の側面にサイドウォール26が残り、ゲート絶縁層36及びゲート電極38の側面にサイドウォール40が残るように処理される。サイドウォール26は、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の端部から50nm程度の幅で設けることが好適である。また、サイドウォール40は、ゲート絶縁層36及びゲート電極38の端部から50nm程度の幅で設けることが好適である。
【0085】
サイドウォール26及びサイドウォール40を形成した後、ソース領域16及びドレイン領域18並びにソース領域30及びドレイン領域32が形成される。ソース領域16及びドレイン領域18並びにソース領域30及びドレイン領域32は、ドーパントのイオン注入処理及びアニールによる拡散処理によって形成される。
【0086】
分離領域14、ゲート絶縁層22、ゲート電極24及びサイドウォール26並びにゲート絶縁層36、ゲート電極38及びサイドウォール40をマスクとして半導体基板10の表面にイオン注入する。イオン注入は、多段階注入とすることが好適である。例えば、燐Pを26keVのイオン注入エネルギーで2.0×1013/cmの密度、砒素Asを23keVのイオン注入エネルギーで4.0×1015/cmの密度及び、燐Pを6keVのイオン注入エネルギーで8.0×1014/cmの密度となるように多段階でイオン注入する。
【0087】
その後、高温でスパイクアニール(加熱)することによって半導体基板10内のドーパントを活性化させる。例えば、1055℃のスパイクアニールを行う。これによって、ソース領域16及びドレイン領域18並びにソース領域30及びドレイン領域32が形成される。
【0088】
以上のように、追加のマスクを必要とせず、リセス領域Xを設けた入出力(I/O)用MOSFETとリセス領域Xを設けていないコア用MOSFETとの両方を備えた半導体デバイス200を製造することができる。
【0089】
なお、半導体デバイス200におけるリセス領域Xを設けた入出力(I/O)用MOSFETは、半導体デバイス100と同様の特性を有する。すなわち、半導体デバイス200に入出力(I/O)用MOSFETでは、ホットキャリアの生成が抑制され、リーク電流を小さくすることができる。
【0090】
[第3の実施の形態]
図7は、半導体デバイス200の別の製造方法を示す。図7は半導体デバイス200の製造方法を示す断面模式図であり、半導体デバイス200を構成する各部を強調して示しており、各部の平面方向の寸法及び厚さ方向の寸法は実際の比を示していない場合がある。
【0091】
第3の実施の形態では、ゲート絶縁層22及びゲート電極24並びにゲート絶縁層36及びゲート電極38にシリコン窒化層(SiN)42を積層してマスクとして利用する点で第2の実施の形態と異なる。すなわち、リセス領域Xを形成する際にレジスト層Rの代わりにシリコン窒化層42を利用する。
【0092】
ステップS30では、ウェル領域12及び分離領域14が形成される。当該ステップは、上記ステップS20と同様であるので説明を省略する。
【0093】
ステップS32では、入出力(I/O)用MOSFETのゲート絶縁層22及びゲート電極24並びにコア用MOSFETのゲート絶縁層36及びゲート電極38が形成される。当該処理は、上記ステップS20と同様であるので説明を省略する。さらに、ゲート電極24及びゲート電極38上にシリコン窒化層42が形成される。例えば、シリコン窒化層42は、半導体基板10を750℃に加熱した状態において窒化ガスを供給することによって形成することができる。シリコン窒化層42の膜厚は、例えば120nmとする。そして、レジスト層Rを用いてフォトリソグラフィ技術及びエッチング技術を適用して、ゲート絶縁層36、ゲート電極38及びシリコン窒化層42並びゲート絶縁層36、ゲート電極38並びにシリコン窒化層42を半導体デバイス100の必要な領域にパターニングする。パターニング後、レジスト層Rを除去する。
【0094】
ステップS34では、入出力(I/O)用MOSFETのリセス領域X及びLDD領域20が形成される。入出力(I/O)用MOSFETのシリコン窒化層42及びコア用MOSFETの領域に形成したレジスト層Rをマスクとして、ゲート絶縁層22の縁から分離領域14の縁までの領域に亘る半導体基板10の表面をエッチングすることによってリセス領域Xが形成される。エッチングには、例えば、従来の異方性エッチング技術を適用することができる。本実施の形態では、シリコン窒化層42をマスクとして利用することによって、レジスト層Rを用いたリソグラフィにおけるオーバーレイを生じさせることなく、ゲート絶縁層22及びゲート電極24の端部に対して位置的なずれ(オフセット)がないリセス領域Xを形成することができる。リセス領域Xの深さは、10nm以上40nm以下とすることが好適である。
【0095】
さらに、LDD領域20が形成される。第2導電型がn型である場合、n型ドーパント(燐P又は砒素As)を半導体基板10の表面にイオン注入する。LDD領域20の形成方法は、上記ステップS24と同様に行うことができる。
【0096】
ステップS36では、コア用のMOSFETのLDD領域34が形成される。入出力(I/O)用のMOSFETのレジスト層Rと、コアとなるMOSFET領域に形成されたシリコン窒化層42とゲート電極38をマスクとして、ゲート絶縁層36の縁から分離領域14の縁までの領域に亘る半導体基板10の表面にイオン注入を行う。イオン注入は、上記ステップS26と同様に行うことができる。イオン注入を行った後、レジスト層Rを除去する。さらに、エッチング処理によってシリコン窒化層42を除去する。
【0097】
ステップS38では、サイドウォール26及びサイドウォール40並びにソース領域16、ドレイン領域18、ソース領域30及びドレイン領域32が形成される。当該ステップは、上記ステップS28と同様に行うことができる。
【0098】
以上のように、レジスト層Rの代わりにシリコン窒化層42をマスクとして利用することで、リセス領域Xを形成する際のアライメントの精度を高めることができる。なお、本実施の形態の製造方法にて形成された半導体デバイス200におけるリセス領域Xを設けた入出力(I/O)用MOSFETは、半導体デバイス100と同様の特性を有する。すなわち、半導体デバイス200に入出力(I/O)用MOSFETでは、ホットキャリアの生成が抑制され、リーク電流を小さくすることができる。
【0099】
上記第1~第3の実施の形態によれば、同一の半導体基板10に入出力(I/O)用MOSFETとコア用MOSFETを形成する際にそれぞれに対して異なる厚さのゲートを形成するために2つのマスクを必要としない。また、上記第1~第3の実施の形態によれば、コストを増大させることなく、ホットキャリアに対して高い抵抗及び低い漏れ電流特性を有するMOSFETを提供することができる。したがって、高電圧駆動デバイスの高い信頼性に対応する最適な設計を実行することが可能である。
【符号の説明】
【0100】
10 半導体基板、12 ウェル領域、14 分離領域、16 ソース領域、18 ドレイン領域、20 LDD領域、22 ゲート絶縁層、24 ゲート電極、26 サイドウォール、30 ソース領域、32 ドレイン領域、34 LDD領域、36 ゲート絶縁層、38 ゲート電極、40 サイドウォール、42 シリコン窒化層、100 半導体デバイス、200 半導体デバイス。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7