(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】添加剤製造方法を使用して部品を製造する製造方法及び部品
(51)【国際特許分類】
C04B 35/577 20060101AFI20240131BHJP
C04B 35/52 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C04B35/577
C04B35/52
(21)【出願番号】P 2021509921
(86)(22)【出願日】2019-08-14
(86)【国際出願番号】 EP2019071817
(87)【国際公開番号】W WO2020038799
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-04-14
(32)【優先日】2018-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521069928
【氏名又は名称】キョウセラ ファインセラミックス プレシジョン ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110000408
【氏名又は名称】弁理士法人高橋・林アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】カトシキス,ニコラオス
(72)【発明者】
【氏名】ディーナー,ザラ
(72)【発明者】
【氏名】ルスナー,カルステン
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/032842(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0087134(US,A1)
【文献】特開平10-006222(JP,A)
【文献】特表2001-515836(JP,A)
【文献】特開2015-168263(JP,A)
【文献】特開2016-161945(JP,A)
【文献】特表2018-532673(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/577
C04B 35/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤製造方法を使用して部品を
製造する
製造方法であって、前記部品は、炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれたダイヤモンド粒子を有し、前記製造方法は、炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第1の材料の第1の層が堆積されるステップと、前記炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第2の材料の第2の層が堆積される異なるステップと、を含み、炭化ケイ素をベースとする前記材料の少なくとも一つは、
ナノダイヤモンド粒子
及びマイクロダイヤモンド粒子の混合物を含み、前記ナノダイヤモンド粒子の粒径が40nm~160nmであり、前記マイクロダイヤモンド粒子の粒径が3μm~300μmである、それぞれレーザー回折法によって測定されることを特徴とする、添加剤製造方法を使用して部品を
製造する製造方法。
【請求項2】
添加剤製造方法は、ステレオリソグラフィ(SL)、材料ジェッティング/ダイレクトインクプリンティング(DIP)、ダイレクトインクライティング(DIW)、ロボキャスティング(FDM)、バインダージェッティング(3DP)、選択的レーザー焼結、およびそれら方法の組み合わせからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記炭化ケイ素をベースとする第1の材料と、前記炭化ケイ素をベースとする第2の材料とが、同一または異なるものであることを特徴とする、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記ナノダイヤモンド粒子は
、50
nm~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は
、4μm~100μmの粒径を有し、それぞれレーザー回折法によって測定される、請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記製造方法が以下のステップを含み、
a)炭化ケイ素をベースとする第1の材料を堆積させ、
b)後の部品の所望の形状に従ってバインダーを堆積させ、
c)任意にバインダーを乾燥させ、
d)炭化ケイ素をベースとする第2の材料を堆積させ、
e)後の部品の所望の形状に従ってバインダーを堆積させ、
f)バインダーを任意に乾燥させ、
g)所望の部品が得られるまで、ステップa)~f)を繰り返し、
炭化ケイ素をベースとする2つの材料のうちの少なくとも一つは、ダイヤモンド粒子を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記少なくとも前記第1の材料および/または前記少なくとも前記第2の材料は、粉末の形態で堆積されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
前記少なくとも前記第1の材料および/または前記少なくとも前記第2の材料は、スリップとして堆積されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
炭化ケイ素マトリックスに埋め込まれたダイヤモンド粒子を有し、内部層から表面に近い層にわたって前記ダイヤモンド粒子の濃度が高くな
り、前記ダイヤモンド粒子の粒径は、前記表面に近い層から前記内部層にわたって連続的に増大し、前記ダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子及びマイクロダイヤモンドの混合物を含み、前記ナノダイヤモンド粒子は、40nm~160nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、3μm~300μmの粒径を有し、それぞれレーザー回折法によって測定されることを特徴とする、部品。
【請求項9】
前記ダイヤモンド粒子の濃度は、前記部品の総体積を基準にして30
体積%~80体積
%であることを特徴とする、請求項8に記載の部品。
【請求項10】
前記ナノダイヤモンド粒子は
、50
nm~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は
、4μm~100μmの粒径を有し、それぞれレーザー回折法によって測定されることを特徴とする、請求項8
又は9に記載の部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炭化ケイ素マトリックスにダイヤモンド粒子が埋め込まれた部品の製造方法、およびこの製造方法によって得ることができる部品に関する。
【0002】
近年、機械工学から半導体製造、航空宇宙技術に至るまで、多くの分野で、製品および、例えば、フライス加工、研削、ホーニング加工、穴あけ加工、または添加剤製造などの技術の両方において、ますます精密さ、小型化、および生態学的最適化の傾向がある。このように、電子部品又は機械部品に対する継続的に増大する性能要求に対処するために、高い位置精度及び寸法精度を可能にする製造方法が必要とされている。
【0003】
材料である炭化ケイ素(SiC)は、高硬度・高剛性に加えて、低密度・低熱膨張性であることから、特に半導体産業の分野において、部品用の人気のある材料として確立された。炭化ケイ素からなるこのような製品の摩耗抵抗及び温度性能を高めるために炭化ケイ素に、ダイヤモンド粒子を混合させることができる。これは、摩耗抵抗に関して利点を有し、これはフライス加工、ホーニン加工、穴あけ加工、または研磨工具などの工具、またはスライドリング、ノズル、コーティング、またはピンなどの摩耗防止部品などの他の用途においても要求される。さらに、冷却チャネルが同時に実装される場合、温度性能、ひいては熱拡散、および工具寿命、または製造パラメータを最適化することができる。バイオニクスのように、重量または用途に関して最適化された形状も可能である。
【0004】
シリコン浸透炭化ケイ素(SiSiC)、焼結炭化ケイ素(SSiC)またはガラスセラミックなどの従来の材料とは対照的に、ダイヤモンド充填炭化ケイ素(DiaSiC)は、部品を製造するためにそれから調製されたツール、およびDiaSiCから作製された部品の両方において必要とされる材料特性を改善する。しかしながら、スリップキャスティングまたはプレスのようなDiaSiCのための従来の製造方法は、要求の厳しい用途に必要とされる複雑な形状の一体化を制限する。これは特に、ダイヤモンド充填炭化ケイ素についての限られた処理の可能性が限られており、セラミック化されていない部品は、高い工具摩耗を示すため、得られたミリングダストはダイヤモンドの観点から再利用が困難であり、ダイヤモンドと金属シリコンとの間の硬質-軟質遷移のため、特にシリコンを浸透させたDiaSiCの場合、硬質製造の可能性はかなり限定されている。このように、上記の欠点を克服したダイヤモンド充填炭化ケイ素を製造する方法が必要とされている。
【0005】
国際公開第99/12866号は、ダイヤモンド粒子からダイヤモンド炭化ケイ素複合材料を製造する方法を記載しており、ダイヤモンド粒子の黒鉛化により一定の所望量の黒鉛が生成されるように、空隙率が25~60体積%のワークピースを形成し、ワークピースを加熱し、加熱温度及び加熱時間を制御することにより、黒鉛化により生成される黒鉛の量がダイヤモンド量の1~50重量%である中間体を生成し、シリコンを中間体に浸透させる工程を含む。
【0006】
米国特許第8,474,362号明細書は、炭化ケイ素をベースとするダイヤモンド強化セラミック複合材料を記載している。ダイヤモンドの添加は、材料の硬度およびヤング率を高め、それによって、それは装甲材料としての使用に特に適している。複合材料は、沈降鋳造によって調製される。
【0007】
国際公開第2004/108630号には、微結晶ダイヤモンド粉末と結晶シリコン粉末との混合物をボールミルで粉砕し、次いで得られた混合物を5GPa~8GPaの圧力、および1400K~2300Kの温度で焼結することを含む、完全に緻密なダイヤモンド-シリコンカーバイド複合体を調製するための方法が記載されている。
【0008】
国際公開第2015/112574号は、ダイヤモンドおよび炭化ケイ素の粒子を含む複合層と、複合層上に化学蒸着法(CVD)によって成長させたダイヤモンド層と、を含む多層基板を記載している。
【0009】
欧州特許第2915663号明細書には、セラミック粉末とプレセラミックポリマーの層を交互に堆積させることを含む方法が記載されており、プレセラミックポリマー層は、対象物の断面に対応する形状に堆積される。プレセラミックポリマーは、好ましくはポリ(ヒドリドカルビン)である。このようにして、デトネーションナノダイヤモンドおよびポリ(ヒドリドカルビン)から作製された多結晶ダイヤモンドを得ることができる。
【0010】
米国特許第9,402,322号明細書は、3Dプリンタを使用して光導波路を形成する方法を記載しており、この方法では、ポリ(ヒドリドカルビン)の複数の層が光導波路のためのクラッドの形状に堆積され、ポリ(メチルシリン)の複数の層が光導波路のコアの形状に堆積され、次いで、これらの層を加熱し、光導波路は多結晶ダイヤモンドによって囲まれた多結晶炭化ケイ素のコアから形成される。
【0011】
米国特許出願公開第2018/0087134号明細書は、複数のサブレイヤを形成することによって、熱膨張係数の勾配を有する勾配界面層を形成し、少なくとも2つは、熱膨張係数が異なり、熱的に安定なダイヤモンドテーブル(TSP)とベースとの間に取り付けることを含む、多結晶ダイヤモンドコンパクト(PDC)を形成する方法に関する。勾配界面層の勾配は、ベースの熱膨張係数と、熱的に安定なダイヤモンドテーブルの熱膨張係数と、の間のどこかにある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】国際公開第99/12866号
【文献】米国特許第8,474,362号明細書
【文献】国際公開第2004/108630号
【文献】国際公開第2015/112574号
【文献】欧州特許第2915663号明細書
【文献】米国特許第9,402,322号明細書
【文献】米国特許出願公開第2018/0087134号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、先行技術に記載された方法は、たとえあったとしても、複雑な部品は、非常に高い費用でしか調製することができないという欠点を有する。従って、本発明の目的は、ダイヤモンド粒子で強化された炭化ケイ素をベースとする部品の製造を高い構造分解能で製造することができる製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
驚くべきことに、添加剤製造方法を使用することによって、ダイヤモンド粒子で強化された炭化ケイ素からも、相応に高い構造分解能を有する部品を製造することもできることが見出された。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】炭化ケイ素からなり、炭化ケイ素マトリクス内に埋め込まれたダイヤモンド粒子の粒径の勾配を有する本発明による部品の例示的な構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
したがって、本発明はまず、添加剤製造方法を使用して部品を調製する製造方法に関し、部品は、炭化ケイ素マトリクスに埋め込まれたダイヤモンド粒子を有し、前記製造方法は炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第1の材料の第1の層が堆積される工程と、炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第2の材料の第2の層が堆積される異なる工程と、を含み、炭化ケイ素をベースとする前記材料の少なくとも一つは、ダイヤモンド粒子を含む。
【0017】
驚くべきことに、このようにして、複雑で繊細な構造体を高解像度で実現することもでき、これは、プレスなどの従来の製造方法を使用することによっては達成できないことが分かった。このようにして、例えば、簡単かつ複雑でない方法で、例えば、内部冷却チャネルの存在から生じる複雑な内部構造を有する部品を提供することができる。
【0018】
さらに驚くべきことに、炭化ケイ素一次粒子を有さない材料と比較して、炭化ケイ素をベースとする材料が使用される場合、改善されたモールド型安定性が、より大きなサイズの部品についても達成されることがわかっており、特に、部品のさらなる加工において有利であることが見出された。さらに、このようにして、後続の加工工程、例えば、シリコンの浸透において、シリコンによって攻撃されない材料からなる安定した本体が提供される。
【0019】
部品の生産が個々の層で行われたとき、最良の構造分解能と最高の寸法精度が達成された。したがって、部品の構築が層ごとに行われる、本発明による製造方法の実施形態が好ましい。好ましい実施形態では、部品の構築が少なくとも50層、好ましくは少なくとも70層から実施される。
【0020】
好ましい実施形態では、添加剤製造方法がステレオリソグラフィ(SL)、材料ジェット/ダイレクトインクプリンティング(DIP)、ダイレクトインクライティング(DIW)、ロボキャスティング(FDM)、バインダージェッティング(3DP)、選択的レーザー焼結、およびそれらの方法の組み合わせからなる群から選択される。
【0021】
これらの方法の共通の特徴は、製造プロセス中の部品の層ごとの構成である。したがって、本発明による製造方法は、炭化ケイ素をベースとする少なくとも第1の材料の第1の層が堆積される工程と、炭化ケイ素をベースとする少なくとも第2の材料の第2の層が堆積される別の工程とを含み、材料の少なくとも一つはダイヤモンド粒子を含む。好ましくは、ダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0022】
本発明の範囲内において、「ナノダイヤモンド粒子」とは、200nm以下の粒径を有するダイヤモンド粒子をいう。本発明の範囲内において、「マイクロダイヤモンド粒子」とは、少なくとも2μmの粒径を有するダイヤモンド粒子をいう。前記粒径は、例えば、レーザー回折法によって測定することができる。
【0023】
好ましい実施形態において、本発明による製造方法で使用されるナノダイヤモンド粒子は、40~160nm、好ましくは50~150nmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。本発明のさらなる好ましい実施形態では、本発明による製造方法で使用されるマイクロダイヤモンド粒子は、3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、とりわけ40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0024】
好ましい実施形態では、炭化ケイ素をベースとする第1の材料がその中に埋め込まれたマイクロダイヤモンド粒子を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μm、さらにより好ましくは30~300μm、とりわけ40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0025】
さらなる好ましい実施形態では、炭化ケイ素をベースとする第2の材料がその中に埋め込まれたナノダイヤモンド粒子を有し、前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、より好ましくは50~150nmの粒径を有する。さらなる好ましい実施形態では、炭化ケイ素をベースとする第1の材料がその中に埋め込まれたナノダイヤモンド粒子を有し、前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、より好ましくは50~150nmの粒径を有する。さらなる好ましい実施形態では、炭化ケイ素をベースとする第2の材料がその中に埋め込まれたマイクロダイヤモンド粒子を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μmの粒径を有する。それぞれのケースにおいて、粒径はレーザー回折法によって測定することができる。より好ましくは、マイクロダイヤモンド粒子は、3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、とりわけ40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0026】
好ましい実施形態では、ダイヤモンド粒子は、ダイヤモンド粒子の混合物であり、前記混合物は、好ましくはナノダイヤモンド粒子およびマイクロダイヤモンド粒子を含み、前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0027】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による製造方法は、ダイヤモンド粒子を含まない炭化ケイ素をベースとする材料の層が堆積される工程をさらに含む。この工程は、本発明による製造プロセス中のいつでも、好ましくは第1の層が堆積される前に、または第1の層と第2の層との堆積の間に、または第1の層および/または第2の層が堆積された後に実行することができる。
【0028】
さらなる好ましい実施形態では、使用されるダイヤモンド粒子は、コーティングを有する。
【0029】
驚くべきことに、本発明による製造方法は、例えば、ダイヤモンド粒子の量、粒子形状または粒子サイズに関して組成が、部品の体積にわたって変化する組成物の製造を可能にすることが見出された。このような変化量は、特に、炭化ケイ素をベースとする異なる材料を使用することによって達成することができる。好ましくは、炭化ケイ素をベースとする第1の材料と炭化ケイ素をベースとする第2の材料とは同一又は異なっている。
【0030】
好ましい実施形態では、前記少なくとも第1および/または前記少なくとも第2の材料が粉末の形態で堆積される。炭化ケイ素をベースとする前記材料に加えて、粉末は、好ましくはダイヤモンド粒子、グラファイト、カーボンブラック、および有機化合物からなるリストから選択されるさらなる成分を含む。
【0031】
代替的に好ましい実施形態では、前記少なくとも第1および/または前記少なくとも第2の材料がスリップの形態で堆積される。炭化ケイ素をベースとする前記材料に加えて、スリップは、ダイヤモンド粒子、グラファイト、カーボンブラック、および有機化合物からなるリストから選択されるさらなる成分を含む。好ましくは、前記スリップが液体成分をさらに含む。好ましくは、前記液体成分が水、有機溶媒、およびそれらの混合物からなる群から選択される成分である。
【0032】
好ましい実施形態では、本発明による製造方法は、バインダーの堆積をさらに含み、前記バインダーは好ましくは製造される部品の断面に従って堆積される。バインダーは、好ましくは、樹脂、多糖類、ポリ(ビニルアルコール)、セルロース、およびセルロース誘導体、リグニンスルホネート、ポリエチレングリコール、ポリビニル誘導体、ポリアクリレート、およびそれらの混合物からなる群から選択される一つ以上の有機化合物を含む。
【0033】
炭化ケイ素マトリクス中に埋め込まれたダイヤモンド粒子を有する部品を製造するための添加剤製造方法は、好ましくはダイレクトインクライティングの方法に由来する。したがって、好ましい実施形態では、本発明による製造方法が以下の工程を含む:
a)炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第1の材料を堆積させることであって、前記材料は、第1の層を得るために、後の部品の所望の幾何学的形状に対応するビーズの形態で堆積される;
b)第1の層の少なくとも一部の上に炭化ケイ素をベースとする少なくとも一つの第2の材料を堆積させ、前記材料は、第2の層を得るために、後の部品の所望の幾何学的形状に対応するビーズの形態で堆積される;
c)所望の成分が得られるまで工程a)およびb)を繰り返す;
ここで、炭化ケイ素をベースとする2つの材料のうちの少なくとも一つは、ダイヤモンド粒子、好ましくはナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μm、さらにより好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0034】
この代替物の好ましい実施形態において、本発明による製造方法は、一つ以上の乾燥工程をさらに含む。前記乾燥は、好ましくは第1および/または第2の材料の堆積後にそれぞれ行われる。さらに好ましくは、前記第1の材料および/または前記第2の材料が同一または異なる。
【0035】
さらなる好ましい代替実施形態では、本発明による製造方法が以下の工程を含む:
a)第1の層を得るために炭化ケイ素を含む第1スリップを堆積させ;
b)後の部品の所望の幾何学的形状に従って、第1の層の少なくとも一部を硬化させ;
c)第2の層を得るための炭化ケイ素を含む第2スリップを堆積させ;
d)後の部品の所望の幾何学的形状に従って、第2の層の少なくとも一部を、硬化させ;
e)所望の部品が得られるまで工程a)~d)を繰り返す;
ここで、前記スリップの少なくとも一つは、ダイヤモンド粒子、好ましくはナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものをさらに含む。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μm、さらにより好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0036】
好ましい実施形態では、前記第1および/または第2スリップ光は、活性ポリマーをさらに含む。これらのポリマーは、好ましくは、樹脂系のアクリレートまたは水性のアクリルアミド、エネルギー変換のための染料、多糖類、デキストラン、ヒアルロナン、またはコンドロイチン硫酸塩をベースとするグリコサミノグリカン誘導体からなる群から選択される。さらに、前記第1および/または第2スリップは、好ましくはさらなる炭素源、好ましくはグラファイトまたはカーボンブラック、他の有機成分、および液相を含む。例えば、前記液相は、水、有機溶媒、またはそれらの混合物であってもよい。好ましい実施形態では、第1および第2のスリップは、同一または異なる。
【0037】
本発明による製造方法が記載された代替法の工程b)およびd)における硬化は、好ましくはレーザーによって行われる。
【0038】
さらなる好ましい代替において、本発明による製造方法は、以下の工程を含む:
a)炭化ケイ素をベースとする第1の材料を堆積させ;
b)後の部品の所望の幾何学的形状に従って、バインダーを堆積させ;
c)任意にバインダーを乾燥させ;
d)炭化ケイ素をベースとする第2の材料を堆積させ;
e)後の部品の所望の幾何学的形状に従って、バインダーを堆積させ;
f)任意にバインダーを乾燥させ;および
g)所望の成分が得られるまで、工程a)~f)を繰り返す;
ここで、炭化ケイ素をベースとする2つの材料のうちの少なくとも一つは、ダイヤモンド粒子、好ましくはナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものを含む。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μm、さらにより好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0039】
代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0040】
この代替案の好ましい実施形態では、前記第1の材料および/または前記第2の材料が同一または異なる。
【0041】
第1および第2の材料は、異なる形態で堆積させることができる。好ましい実施形態では、堆積は、粉末またはスリップの形態で行われる。第1および第2の材料がスリップの携帯で堆積される場合、本発明による製造方法は、好ましくはスリップによって堆積された層が乾燥される工程をさらに含む。
【0042】
好ましい実施形態では、本発明による製造方法は、所望の部品を得るための離型工程をさらに含む。この工程では、製造プロセス中に蓄積された余分な材料が除去される。この離型工程では、通常、従来の製造方法は、モールド型の安定性が不足するため、部品が損傷するリスクがある。本発明の範囲内で、驚くべきことに、あるタイプの製造方法について、部品に悪影響を及ぼすことなく、洗浄によって離型を容易に行うことができることが見出された。したがって、離型工程が成分を液体媒体で洗浄することを含む実施形態が好ましく、前記液体媒体は、好ましくは水、有機溶媒、またはそれらの混合物である。
【0043】
本発明による製造方法のさらなる好ましい実施形態において、部品は、脱バインダー処理にさらに供される。バインダーの除去は、好ましくは、部品を加熱することによって熱的に行われる。
【0044】
さらなる好ましい実施形態では、本発明による製造方法は、得られた部品の焼結をさらに含む。この焼結は、部品に更なる強度を与えることができる。焼結は、好ましくは追加の圧力なしに、すなわち、周囲の圧力(常圧)以下に対応する圧力で行われる。「常圧」とは、地表の大気圧の平均値である100kPa~102kPa(1~1.02bar)に相当する圧力を意味する。「無加圧」焼結は、製造プロセス中に形成された繊細な構造体や内部構造体であっても、焼結中および焼結後に維持されるという長所がある。
【0045】
本発明による製造方法の範囲内で、部品のセラミック化は、好ましくは浸透工程によって行われる。本発明による製造方法によって得られる部品の特性は、部品にケイ素を浸透させることによって改善することができることが見出された。したがって、本発明による製造方法が、得られた成分をさらにケイ素での浸透処理に供する処理をさらに含む実施形態が好ましい。このために、当業者に公知の方法、例えば、液体溶融ケイ素への浸漬、部品およびケイ素の共通溶融(ここで、ケイ素は、パッキング、ケーキまたはスリップとして、ウィックまたは中間プレートを介して直接的または間接的に供給される)が使用され得る。
【0046】
本発明は、さらに、炭化ケイ素マトリックス中に埋め込まれたダイヤモンド粒子、好ましくはナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものを有する部品に関する。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0047】
好ましくは、本発明による部品は、本発明による製造方法によって得ることができる。驚くべきことに、このような部品は、高い構造分解能と高い寸法精度を有することが見出された。したがって、部品が複雑な幾何学的形状を有する部品である実施形態が好ましい。好ましくは、本部品は、少なくとも一つの巨視的に構造化された表面を有し、前記構造化された表面は、例えば、突出部および/または肩部、および/またはチャネルなどの内部構造体を有する。
【0048】
さらに驚くべきことに、部品中のダイヤモンド粒子の割合は、従来の製造方法よりも大幅に増加させることができることが見出された。したがって、部品は、部品の総体積を基準にして、それぞれ30~80体積%、好ましくは40~70体積%のダイヤモンド粒子の濃度を有する実施形態が好ましい。
【0049】
本発明による製造方法は、炭化ケイ素をベースとする異なる材料を使用することによって、特性をそれぞれの要求に個別に適合させることができる部品を製造することを可能にする。このようにして、例えば、部品中のダイヤモンド粒子の濃度、サイズおよび形状を、その総体積にわたって変化させることができる。このようにして、対応する勾配を有する成分を得ることができる。
【0050】
したがって、ダイヤモンド粒子の濃度は、部品の総体積にわたって変化する実施形態が好ましい。したがって、例えば、より多くの内部層と比較して、表面に近い層においてより高い濃度のダイヤモンド粒子を有する部品を提供することができる。
【0051】
好ましい実施形態では、本発明による部品は、ナノダイヤモンド粒子およびマイクロダイヤモンド粒子を含むダイヤモンド粒子の混合物を含む。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有する。前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、好ましくは4~100μmの粒径を有する。粒径は、例えば、レーザー回折法によって測定することができる。部品に含まれるマイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、とりわけ40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0052】
部品は、ダイヤモンド粒子の粒径に対して勾配を有する場合に有利であることが見いだされた。このようにして、ナノダイヤモンド粒子およびマイクロダイヤモンド粒子の特性を有利な方法で組み合わせることができる。ナノダイヤモンド粒子は、構造体の成型または均質性に関して大きな利点を有し、それは、特に、部品または工具の周辺領域において非常に望ましい。対照的に、マイクロダイヤモンドは、経済的および技術的観点から、より単純にセラミックマトリクス中に埋め込むことができ、同時に、高い熱伝導率、高い弾性率、または高い破壊靭性などの望ましい特性を満たす。したがって、ダイヤモンド粒子の粒径は、部品の全容積にわたって変化する、本発明による部品の実施形態が好ましい。特に、ダイヤモンド粒子は、部品の表面からその中心までサイズが増大することにつれて連続的に分布する実施形態が好ましい。本発明による部品が、いくつかの層、特にダイヤモンド粒子を含まないベース層、マイクロダイヤモンド粒子を含む中間層、およびナノダイヤモンド粒子を含む最上層を含む実施形態が特に好ましい。
【0053】
好ましい実施形態では、ダイヤモンド粒子の形状は、部品の総体積にわたって変化する。
【0054】
さらなる好ましい実施形態では、部品の組成は、その総体積にわたって変化する。これは、例えば、部品の調製に使用される炭化ケイ素をベースとする材料に加えて、様々な添加剤を添加することによって達成することができる。
【0055】
本発明は、さらに、添加剤製造方法における炭化ケイ素マトリクス中に埋め込まれたダイヤモンド粒子の使用に関する。好ましくは、ダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子、マイクロダイヤモンド粒子、およびそれらの混合物からなる群から選択されるものである。前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、より好ましくは4~100μm、さらにより好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。
【0056】
特に好ましい実施形態では、ダイヤモンド粒子は、ナノダイヤモンド粒子とマイクロダイヤモンド粒子との混合物であり、前記ナノダイヤモンド粒子は、好ましくは40~160nm、特に50~150nmの粒径を有し、前記マイクロダイヤモンド粒子は、好ましくは3~300μm、好ましくは4~100μm、より好ましくは30~300μm、特に40~100μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。代替的に好ましい実施形態では、マイクロダイヤモンド粒子は、3~10μmおよび/または25~45μmの粒径を有し、レーザー回折法によってそれぞれ測定される。