(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】金属イオン電池用電気活性材料
(51)【国際特許分類】
H01M 4/38 20060101AFI20240131BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240131BHJP
H01M 4/587 20100101ALI20240131BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240131BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240131BHJP
C01B 32/05 20170101ALI20240131BHJP
【FI】
H01M4/38 Z
H01M4/36 A
H01M4/587
H01M4/36 E
H01M4/62 Z
H01M4/134
C01B32/05
(21)【出願番号】P 2021535940
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 GB2019053640
(87)【国際公開番号】W WO2020128495
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-07-12
(32)【優先日】2018-12-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(32)【優先日】2019-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-09-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】517050282
【氏名又は名称】ネクシオン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】メイソン チャールズ エー.
(72)【発明者】
【氏名】テイラー リチャード グレゴリー
(72)【発明者】
【氏名】フレンド クリストファー マイケル
【審査官】結城 佐織
(56)【参考文献】
【文献】特表2022-506881(JP,A)
【文献】特表2018-534720(JP,A)
【文献】特表2020-514231(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/38
H01M 4/36
H01M 4/587
H01M 4/62
H01M 4/134
C01B 32/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の複合粒子を含む粒子状材料であって、該複合粒子が、
(a)ミクロ細孔及びメソ細孔を含む多孔質炭素骨格であって、
(i)該ミクロ細孔及びメソ細孔は、ガス吸着により測定した全細孔容積がP
1cm
3/gであり、ここで、P
1は、少なくとも0.6の値を有し、
(ii)ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率(φ
a)が、0.1~0.9の範囲であり、
(iii)ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する20nm以下の細孔径を有する細孔の容積率(φ
20)が、少なくとも0.75であり、かつ、
(iv)該多孔質炭素骨格が、20μm未満のD
50粒子径を有する、多孔質炭素骨格と、
(b)前記多孔質炭素骨格の前記ミクロ細孔及び/又はメソ細孔内に位置する複数のナノスケール元素シリコンドメインと、
を含み、
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1×P
1~2.2×P
1]:1の範囲である、粒子状材料。
【請求項2】
P
1が、少なくとも0.65の値を有する、請求項1に記載の粒子状材料。
【請求項3】
P
1が、2以下の値を有する、請求項1又は2に記載の粒子状材料。
【請求項4】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率(φ
a)が、0.15~0.85の範囲の範囲である、請求項1~3のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項5】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率(φ
a)が、0.45~0.85の範囲である、請求項4に記載の粒子状材料。
【請求項6】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率(φ
a)が、0.2~0.5の範囲である、請求項4に記載の粒子状材料。
【請求項7】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φ
b+0.75]×P
1で与えられる値であり、ここで、φ
bは、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するメソ細孔の容積率を表す、請求項1~6のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項8】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φ
b+1]×P
1で与えられる値である、請求項7に記載の粒子状材料。
【請求項9】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φ
b+1.1]×P
1で与えられる値である、請求項8に記載の粒子状材料。
【請求項10】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[φ
b+1.6]×P
1で与えられる値以下である、請求項1~9のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項11】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[φ
b+1.5]×P
1で与えられる値以下である、請求項1~10のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項12】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも1.1×P
1である、請求項4~6のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項13】
前記複合粒子における、前記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも1.45×P
1である、請求項6に記載の粒子状材料。
【請求項14】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する20nm以下の細孔径を有する細孔の容積率(φ
20)が、少なくとも0.8である、請求項1~13のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項15】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する10nm以下の細孔径を有する細孔の容積率(φ
10)が、少なくとも0.70である、請求項1~14のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項16】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する5nm以下の細孔径を有する細孔の容積率(φ
5)が、少なくとも0.7である、請求項1~15のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項17】
前記多孔質炭素骨格が、単峰性の細孔径分布を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項18】
前記多孔質炭素骨格が、二峰性又は多峰性の細孔径分布を有する、請求項1~16のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項19】
前記多孔質炭素骨格が、50nm超~100nmの範囲の直径を有し、水銀圧入法により測定した全容積がP
2cm
3/gであるマクロ細孔を含み、ここで、P
2は、0.2×P
1以下である、請求項1~18のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項20】
前記複合粒子が、少なくとも0.5μmのD
50粒子径を有する、請求項1~19のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項21】
前記複合粒子が、18μm以下のD
50粒子径を有する、請求項1~20のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項22】
前記複合粒子が、少なくとも0.2μmのD
10粒子径を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項23】
前記複合粒子が、40μm以下のD
90粒子径を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項24】
前記複合粒子が、5以下の粒度分布スパンを有する、請求項1~23のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項25】
前記複合粒子が、150m
2/g以下のBET表面積を有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項26】
前記複合粒子が、少なくとも0.1m
2/gのBET表面積を有する、請求項1~25のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項27】
リチウム化した際の比容量が、1200mAh/g~2340mAh/gである、請求項1~26のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項28】
前記複合粒子におけるシリコン質量の少なくとも90重量%が、前記多孔質炭素骨格の内部細孔容積中に位置する、請求項1~27のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項29】
粒子状材料を、空気中において10℃/分の温度上昇速度でTGAにより分析する場合に、該粒子状材料のシリコン含有量の10%以下が800℃で未酸化である、請求項1~28のいずれか一項に記載の粒子状材料。
【請求項30】
請求項1~29のいずれか一項に記載の粒子状材料と、少なくとも1つの他の成分とを含む組成物。
【請求項31】
請求項1~29のいずれか一項に記載の粒子状材料と、(i)バインダー、(ii)導電性添加剤、及び(iii)追加の粒子状電気活性材料から選択される少なくとも1つの他の成分とを含む、請求項30に記載の組成物。
【請求項32】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を含む、請求項31に記載の組成物。
【請求項33】
組成物の総乾燥重量に対して、請求項1~29のいずれか一項に記載の粒子状材料を、1重量%~20重量%含む、請求項32に記載の組成物。
【請求項34】
組成物の総乾燥重量に対して、前記少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を、10重量%~98重量%含む、請求項32又は33に記載の組成物。
【請求項35】
前記少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のリチウム化した際の比容量が、100mAh/g~600mAh/gの範囲である、請求項32~34のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項36】
前記少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料が、黒鉛及び硬質炭素から選択される、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
バインダーを含む、請求項31~36のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項38】
1つ以上の導電性添加剤を含む、請求項31~37のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項39】
集電体と電気的に接触した請求項1~29のいずれか一項に記載の粒子状材料を含む電極。
【請求項40】
前記粒子状材料が、請求項30~38のいずれか一項に記載の組成物の形態を有する、請求項39に記載の電極。
【請求項41】
(i)請求項39又は40に記載の電極を含むアノードと、
(ii)金属イオンを放出及び再吸収することができるカソード活物質を含むカソードと、
(iii)前記アノードと前記カソードとの間の電解質と、
を含む充電式金属イオン電池。
【請求項42】
アノード活物質としての、請求項1~29のいずれか一項に記載の粒子状材料の使用。
【請求項43】
前記粒子状材料が、請求項30~38のいずれか一項に記載の組成物の形態を有する、請求項42に記載の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概して、充電式金属イオン電池用電極における使用に好適な電気活性材料に関し、より詳細には、充電式金属イオン電池におけるアノード活物質としての使用に好適な高電気化学容量を有する粒子状材料に関する。本発明の粒子状電気活性材料は、2つ以上の異なる電気活性材料を含むハイブリッドアノードにおいて特に有用である。
【背景技術】
【0002】
充電式金属イオン電池は、携帯電話及びノート型パソコン等の携帯型電子機器において広く使用されており、電気自動車又はハイブリッド車における適用が増加している。充電式金属イオン電池は、一般的に、アノード層、カソード層、アノード層とカソード層との間で金属イオンを輸送する電解質、及びアノードとカソードとの間に配置された電気絶縁性多孔質セパレータを含む。カソードは、典型的には、金属酸化物系複合材料を含有する金属イオンの層を備えた金属集電体を含み、アノードは、典型的には、本明細書で、電池の充電中及び放電中に金属イオンの挿入及び放出が可能な材料として定義される電気活性材料の層を備えた金属集電体を含む。誤解を避けるために、本明細書では、「カソード」及び「アノード」という用語は、カソードが正極となり、アノードが負極となるように、電池に負荷がかけられるという意味で使用される。金属イオン電池を充電すると、金属イオンは金属イオン含有カソード層から電解質を介してアノードに輸送され、アノード材料に挿入される。本明細書では、「電池」という用語は、単一のアノード及び単一のカソードを含有するデバイス、並びに複数のアノード及び/又は複数のカソードを含有するデバイスの両方を指して使用される。
【0003】
充電式金属イオン電池の重量容量及び/又は体積容量を改善することに対して関心がある。リチウムイオン電池の使用により、他の電池技術と比較して、既にかなりの改善がもたらされたが、更なる開発の余地がある。これまで、市販のリチウムイオン電池は、主に、アノード活物質としての黒鉛の使用に限定されてきた。黒鉛アノードを充電すると、リチウムが黒鉛層間に挿入され、実験式LixC6(ここで、xは、0超、かつ、1以下)の材料を形成する。その結果、黒鉛は、リチウムイオン電池において、372mAh/gの最大理論容量を有し、実用上の容量はそれよりもやや低くなる(約340mAh/g~360mAh/g)。シリコン、スズ、及びゲルマニウム等の他の材料は、黒鉛よりも大幅に高い容量でリチウムを挿入することができるが、多数回の充放電サイクルにわたって十分な容量を維持することが難しいため、まだ広く商業的には使用されていない。
【0004】
特に、シリコンは、リチウムに対する容量が非常に高いため、高い重量容量及び体積容量を有する充電式金属イオン電池の製造において、黒鉛の有望な代替物として認識されてきた(例えば、非特許文献1を参照)。シリコンは、室温で、リチウムイオン電池における理論上の最大比容量が約3600mAh/g(Li15Si4に基づく)である。しかしながら、充電及び放電の際の体積変化が大きいため、アノード材料としてのシリコンの使用は、複雑である。
【0005】
リチウムがバルクシリコンに挿入されると、シリコン材料の体積が大幅に増加し、シリコンがその最大容量までリチウム化されると、元の体積の400%にまで増加する。そして、充放電サイクルが繰り返されると、シリコン材料に大きな機械的応力が発生し、シリコンアノード材料の破壊と層間剥離をもたらす。脱リチウム化の際のシリコン粒子の体積の収縮は、アノード材料と集電体との間の電気的接触の損失をもたらす可能性がある。更に困難なのは、シリコン表面に形成される固体電解質界面(SEI)層が、シリコンの膨張及び収縮に適応するのに十分な機械的耐久性を有さないことである。その結果、新たに露出したシリコン表面によって、電解質が更に分解し、SEI層の厚さが増加し、かつ、リチウムが不可逆的に消費されることになる。これらの欠陥メカニズムは集合的に、連続した充放電サイクルにわたる許容できない電気化学容量の損失をもたらす。
【0006】
シリコン含有アノードを充電する際に観察される体積変化と関連する問題を克服するために、数多くの取り組みが提案されてきた。シリコン含有アノードの不可逆容量損失に対処するための最も普及している取り組みは、何らかの形態で微細構造化されたシリコンを電気活性材料として使用することである。シリコン膜及びシリコンナノ粒子等の、断面が約150nm未満の微細シリコン構造体は、ミクロンサイズの範囲のシリコン粒子と比較して、充電及び放電の際の体積変化に対してより耐久性があることが報告されてきた。しかしながら、これらはいずれも、形態を変更せずに商業規模で適用するには特に適していない。ナノスケールの粒子は製造及び取り扱いが難しく、シリコン膜は十分なバルク容量を提供しない。例えば、ナノスケールの粒子は、凝集体を形成する傾向があり、それにより、アノード材料マトリックス内で粒子を有効に分散させることが困難となる。また、ナノスケールの粒子の凝集体の形成は、繰り返しの充放電サイクルにおいて許容できない容量損失をもたらす。
【0007】
Oharaら(非特許文献2)は、ニッケル箔集電体上にシリコンを薄膜として蒸着させること、及びこの構造体をリチウムイオン電池のアノードとして使用することを記載した。この取り組みによると、良好な容量保持率が得られるが、薄膜構造体は単位面積当たりの容量が有用な量ではなく、膜厚が増加すると、いかなる改善も排除されてしまう。
【0008】
特許文献1には、アスペクト比、すなわち、粒子の最小寸法に対する最大寸法の比が高いシリコン粒子を使用することによって、容量保持率が改善され得ることが開示されている。
【0009】
シリコン等の電気活性材料が、活性炭材料等の多孔質担体材料の細孔内に堆積され得ることも一般的に知られている。これらの複合材料は、ナノ粒子の取り扱いの難しさを回避しながら、ナノスケールのシリコン粒子の有益な充放電特性の幾つかを提供する。例えば、Guoら(非特許文献3)は、多孔質炭素基材が、基材の細孔構造内に均一に分布して堆積したシリコンナノ粒子を備えた導電性骨格を提供するシリコン-炭素複合材料を開示している。初回の充電サイクルでのSEIの形成は、残りのシリコンが後続の充電サイクルで電解質に露出しないように、残りの細孔容積に限局している。この複合材料によって、複数回の充電サイクルにわたる容量保持率が改善したが、複合材料のmAh/gでの初期容量は、シリコンナノ粒子に対する容量よりも大幅に低いことが示されている。
【0010】
特許文献2には、少数のより大きな細孔から分岐した小さな細孔を有する炭素系スキャホールド(scaffold)を含む活物質が開示されている。電気活性材料(例えば、シリコン)は、大きな細孔及び小さな細孔の両方の壁、並びに炭素系スキャホールドの外表面に無作為に位置している。
【0011】
これまでの努力にもかかわらず、リチウムイオン電池の電気化学的貯蔵容量の改善に対する継続的な必要性がある。1つの長期的な目的は、電気活性材料としてシリコンを高い割合で含有する電極を開発することであるが、電池製造会社の別の目的は、少量のシリコンを使用して、黒鉛アノードの容量を補う方法を特定することである。したがって、現在の焦点は、黒鉛アノードからシリコンアノードへの大規模な移行ではなく、黒鉛とSi系電気活性材料との組合せを含む「ハイブリッド」電極を使用して、既存の金属イオン電池技術を段階的に改善することにある。
【0012】
ハイブリッド電極の使用自体が課題を有する。あらゆる追加の電気活性材料は、金属イオン電池で従来使用されている黒鉛の粒子状形状と適合性のある形態で提供しなければならない。例えば、追加の電気活性材料を黒鉛粒子のマトリックス全体に分散させることが可能でなければならず、追加の電気活性材料の粒子は、黒鉛粒子との配合、並びに、例えば圧縮、乾燥、及びカレンダリング処理等の工程を介した、後続の電極層の形成に耐えるのに十分な構造的一体性を有していなければならない。
【0013】
さらに、ハイブリッドアノードを開発する際には、黒鉛と他の電気活性材料のメタル化特性の違いを考慮する必要がある。例えば、黒鉛が電気活性材料の少なくとも50重量%を構成するシリコン-黒鉛ハイブリッドアノードのリチウム化では、全ての電気活性材料から容量の利点を得るには、シリコンを最大容量までリチウム化する必要がある。一方、非ハイブリッドシリコン電極では、シリコン材料に過剰な機械的応力がかかり、その結果セルの全体的な体積容量が低下するのを避けるために、シリコン材料を充放電の際に最大重量容量の約25%~60%に制限するのが一般的であるが、この選択はハイブリッド電極では利用できない。結果的に、シリコン材料は、繰り返しの充放電サイクルにわたって、非常に高いレベルの機械的応力に耐えることができなければならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】国際公開第2007/083155号
【文献】特開第2003-100284号
【非特許文献】
【0015】
【文献】Insertion Electrode Materials for Rechargeable Lithium Batteries, Winter, M. et al. in Adv. Mater. 1998, 10, No. 10
【文献】Journal of Power Sources 136 (2004) 303-306
【文献】Journal of Materials Chemistry A, 2013, pp. 14075-14079
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
したがって、当該技術分野では、高いリチウム化容量と、複数回の充放電サイクルにわたる十分な容量保持率及び構造安定性とを組み合わせたシリコン含有電気活性材料が必要とされている。特に、黒鉛等の従来の電気活性材料を補うために使用される材料は、その最大容量まで繰り返しリチウム化されたときに、容量及び構造安定性を維持する必要がある。本発明は、多孔質炭素骨格と、多孔質炭素骨格の細孔内に位置する複数の元素シリコンのナノスケールドメインとを含む粒子状材料を提供することによって、この問題に対処する。特に、ハイブリッド電極に必要とされる厳しい基準の下で、最適な性能を得るために、多孔質炭素骨格の細孔構造、及び多孔質炭素骨格の有効細孔容積に対するシリコンの比の各々を慎重に制御する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第1の態様において、本発明は、複数の複合粒子を含む粒子状材料であって、該複合粒子が、
(a)ミクロ細孔及びメソ細孔を含む多孔質炭素骨格であって、
(i)該ミクロ細孔及びメソ細孔は、ガス吸着により測定した全細孔容積がP1cm3/gであり、ここで、P1は、少なくとも0.6の値を有し、
(ii)ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率(φa)が、0.1~0.9の範囲であり、
(iii)ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する20nm以下の細孔径を有する細孔の容積率(φ20)が、少なくとも0.75であり、かつ、
(iv)該多孔質炭素骨格が、20μm未満のD50粒子径を有する、多孔質炭素骨格と、
(b)上記多孔質炭素骨格の上記ミクロ細孔及び/又はメソ細孔内に位置する複数の元素シリコンのナノスケールドメインと、
を含み、
上記複合粒子における、上記多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1×P1~2.2×P1]:1の範囲である、粒子状材料を提供する。
【0018】
したがって、本発明は、多孔質炭素骨格がミクロ細孔及びメソ細孔の両方を含み、最小全容積が少なくとも0.6cm3/gである、粒子状材料に関する。本明細書では、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積はP1cm3/gと表される。P1自体は、少なくとも0.6の値を有する無次元の量であり、有効細孔容積と、粒子状材料におけるシリコンの重量比とを相関させるためにも使用される。
【0019】
従来のIUPAC用語に従うと、本明細書では、「ミクロ細孔」という用語は、直径2nm未満の細孔を指して使用され、本明細書では、「メソ細孔」という用語は、直径2nm~50nmの細孔を指して使用され、「マクロ細孔」という用語は、直径50nm超の細孔を指して使用される。
【0020】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するミクロ細孔の容積率が、0.1~0.9の範囲となるように、細孔容積はミクロ細孔とメソ細孔との間に分布している。本明細書では、(ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する)ミクロ細孔の容積率は符号φaで表され、(ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する)メソ細孔の容積率は符号φbで表されるため、φa+φb=1であることが理解されるだろう。
【0021】
多孔質炭素骨格は、全ミクロ細孔及びメソ細孔容積のうち最小でも75%が、20nm以下の直径を有する細孔の形態を有するような、より小さな細孔に向かって実質的に歪みを有する細孔容積によっても規定される。本明細書では、(ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対する)20nm以下の直径を有する細孔の容積率は符号φ20で表され、符号φ10及び符号φ5は、各々、10nm以下及び5nm以下の直径を有する細孔に対応する容積率を規定するのに使用される。
【0022】
さらに、多孔質炭素骨格は、20μm未満のD50粒子径によって規定される。
【0023】
誤解を避けるために、本明細書で使用されるP1は、単独で、すなわち、多孔質炭素骨格の細孔を占めるシリコン又は他の材料の不存在下で測定した場合の多孔質炭素骨格の細孔容積に関する。同様に、本明細書での多孔質炭素骨格におけるミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔の容積に関する言及、並びに多孔質炭素骨格内の細孔容積の分布に関するいかなる言及も、単独での(すなわち、細孔容積を占めるシリコン又は他の材料の不存在下での)多孔質炭素骨格の内部細孔容積について言及している。
【0024】
複合粒子における、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、[1×P1~2.2×P1]:1の範囲である。したがって、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、多孔質炭素骨格における有効細孔容積に比例するため、[1×P1]:1の重量比は、シリコンの密度が約2.3g/cm3であるとして、シリコンによる多孔質炭素骨格の細孔の占有率が約43v/v%であることに対応している。上記重量比の上限[2.2×P1]:1は、シリコンによる多孔質炭素骨格の細孔の占有率が約95v/v%であることに対応している。これらの比は、典型的には、純粋な炭素及び純粋なシリコンに基づいて計算される。
【0025】
元素シリコンは、複数のナノスケールシリコンドメインの形態で、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔に位置している。本明細書で使用される「ナノスケールシリコンドメイン」という用語は、多孔質炭素骨格の細孔内に位置するシリコンのナノスケール体を指す。ナノスケールシリコンドメインの最大寸法は、シリコンが位置する細孔の細孔径によって規定される。
【0026】
したがって、本発明は、概して、小さなメソ細孔(直径20nm以下)とミクロ細孔との両方に分布した細孔容積を有する多孔質炭素骨格において、その細孔容積のかなりの部分をシリコンのナノスケールドメインが占有した粒子状材料に関する。この粒子構造により、リチウム化した際の重量容量及び体積容量が非常に高く、複数回の充放電サイクルにわたって高い可逆容量保持率を有する電気活性材料が提供されることが分かった。
【0027】
理論に縛られるものではないが、ナノスケールシリコンドメインが小さなメソ細孔及び/又はミクロ細孔内に位置することによって、第一に、過剰な構造的ストレスなくリチウム化及び脱リチウム化することができる微細なシリコン構造体が提供されると考えられる。これらの非常に微細なシリコンドメインは、より大きなシリコン構造体よりも、弾性変形に対する抵抗が低く、破壊抵抗が高いと考えられる。細孔容積が比較的高い割合でシリコンによって占有されるようにすることで、本発明の粒子状材料は高い容量を有する。さらに、上述のように、ナノスケールシリコンドメインが小さなメソ細孔及び/又はミクロ細孔内に位置することにより、シリコン表面の小面積のみが電解質にアクセス可能となるため、SEIの形成が制限される。
【0028】
本発明者らは、高い容量及び高い可逆容量保持率を得るという2つの目的が、細孔径の分布を慎重に制御することに依存することを見出した。ミクロ細孔内の非常に微細なシリコン構造体は、最も効果的に可逆的にリチウム化すると予想されるが、過剰なミクロ細孔率を有する多孔質炭素骨格は、最適な量よりも少ない量のシリコンを収容する可能性があり、その結果、その材料の体積容量が低くなることが分かった。理論に縛られるものではないが、超高ミクロ細孔性の炭素骨格にシリコンを堆積させると、未占有の細孔容積へのアクセスを阻害するシリコン構造体(蓋又は壁等)の形成につながり、これにより、達成可能なシリコン充填量が制限されると考えられる。
【0029】
しかしながら、メソ細孔性の程度が非常に高い炭素骨格にシリコンを堆積させると、シリコンナノ構造体が不必要に大きくなり、炭素壁の厚さが増加する。その結果、より高い体積容量を達成することができるが、電気活性材料として黒鉛も含むハイブリッドアノードの場合のように、リチウム化、特に最大容量までリチウム化すると、シリコンナノ構造体及び多孔質炭素骨格の両方に過剰な構造的歪みが起こる。この過剰な構造的歪みは、シリコンナノ構造体及び多孔質炭素骨格の破損につながる可能性がある。後続の充放電サイクルにおいて、破損した表面からシリコンが電解質に追加的に露出すると、SEIの形成が、容量損失につながる重大な欠陥メカニズムとなる可能性がある。ミクロ細孔及びメソ細孔の相対的な容積率を制御し、かつ、メソ細孔容積を、主に、20nm未満の細孔に限定することにより、本発明の粒子状材料は、多孔質炭素骨格の細孔容積内にシリコンを比較的高い割合で収容しつつ、これらの欠陥メカニズムを回避し、かつ、複数回の充放電サイクルにわたって高い可逆容量を維持する。これは、例えばGuoによって開示された材料の特徴である過剰で制約のないSEIの形成とは明らかに対照的である(上記を参照)。
【0030】
シリコンのリチウム化は、複合材料全体の外部膨張を或る程度引き起こす可能性があるが、ミクロ細孔及びメソ細孔の容積率を慎重に制御し、かつ、メソ細孔容積率の細孔径分布をより小さな細孔径に向かって慎重に制御することにより、粒子状材料は、複数回の充放電サイクルにわたって破損することなく、可逆変形することができるようになる。したがって、炭素骨格及びシリコン材料への応力は、実質的な容量損失なく、多数回の充放電サイクルにわたって許容されるレベルに制御される。
【0031】
本発明の複合材料の独自の粒子構造の結果として、本発明の粒子状材料中のシリコンは、微細なシリコンナノ粒子の性能に匹敵する電気化学的性能を有するが、ばらばらのシリコンナノ粒子を商業的使用のための電極材料として実現できないものにする過剰なSEIの形成及び低分散性の不利点は有さない。粒子状材料のシリコンの体積含有量が比較的高いため、ハイブリッドアノードの部品としての使用に特に好適である。
【0032】
多孔質炭素骨格は、好適には、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔、及び任意で少量のマクロ細孔の組合せを含む3次元的に相互接続した開孔ネットワークを含む。多孔質炭素骨格は、ミクロ細孔及び/又はメソ細孔の形態での高い細孔容積を特徴とする。本明細書では、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積(すなわち、0nm~50nmの範囲の全細孔容積)は、P1cm3/gと称され、ここで、P1は、少なくとも0.6の値を有する無次元の自然数を表す。P1の値は、上述のように、多孔質炭素骨格における有効細孔容積と、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比とを相関させるためにも使用される。
【0033】
好ましくは、P1の値は、少なくとも0.65、又は少なくとも0.7、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85、又は少なくとも0.9、又は少なくとも0.95、又は少なくとも1である。より好ましくは、P1の値は、少なくとも0.7、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85である。任意で、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積は、1cm3/g超とすることができ、例えば、P1は、少なくとも1.05、又は少なくとも1.1、又は少なくとも1.15、又は少なくとも1.2とすることができる。
【0034】
高空隙率の炭素骨格の使用は、より多量のシリコンを細孔構造内に収容することを可能にするため有利であり、その細孔容積が主にミクロ細孔及びより小さなメソ細孔の形態である高空隙率の炭素骨格は、多孔質炭素骨格が破壊又はそうでなければ劣化することなく、シリコンの体積膨張に適応するのに十分な強度を有していることが分かった。
【0035】
多孔質炭素骨格の内部細孔容積は、多孔質炭素骨格の脆弱性の増加が、より多量のシリコンを収容する細孔容積の増加の利点を上回る値で制限される。通常、P1の値は、2.2以下とすることができる。しかしながら、好ましくは、P1の値は、2以下、又は1.8以下、又は1.6以下、又は1.5以下、又は1.4以下、又は1.3以下、又は1.2以下、又は1.1以下、又は1.0以下、又は0.9以下とすることができる。より好ましくは、P1の値は、1.2以下、又は1.1以下、又は1.0以下、又は0.9以下である。
【0036】
本発明によれば、P1の値は、例えば、0.6~2の範囲(すなわち、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積が、0.6cm3/g~2cm3/g)とすることができる。例えば、P1は、0.6~1.8の範囲、又は0.65~1.8の範囲、又は0.7~1.8の範囲、又は0.75~1.8の範囲、又は0.8~1.8の範囲、又は0.85~1.8の範囲、又は0.9~1.8の範囲、又は0.65~1.7の範囲、又は0.7~1.7の範囲、又は0.75~1.7の範囲、又は0.8~1.7の範囲、又は0.85~1.7の範囲、又は0.9~1.7の範囲、又は0.95~1.7の範囲、又は0.7~1.6の範囲、又は0.75~1.6の範囲、又は0.8~1.6の範囲、又は0.85~1.6の範囲、又は0.9~1.6の範囲、又は0.95~1.6の範囲、又は1~1.6の範囲、又は0.75~1.5の範囲、又は0.8~1.5の範囲、又は0.85~1.5の範囲、又は0.9~1.5の範囲、又は0.95~1.5の範囲、又は1~1.5の範囲、又は0.8~1.4の範囲、又は0.85~1.4の範囲、又は0.9~1.4の範囲、又は0.95~1.4の範囲、又は1~1.4の範囲とすることができる。
【0037】
好ましくは、P1の値は、例えば、0.6~1.4の範囲、又は0.65~1.4の範囲、又は0.7~1.4の範囲、又は0.75~1.4の範囲、又は0.6~1.3の範囲、又は0.65~1.3の範囲、又は0.7~1.3の範囲、又は0.75~1.3の範囲、又は0.6~1.2の範囲、又は0.65~1.2の範囲、又は0.7~1.2の範囲、又は0.75~1.2の範囲、又は0.6~1の範囲、又は0.65~1の範囲、又は0.7~1の範囲、又は0.75~1の範囲、又は0.6~0.9の範囲、又は0.65~0.9の範囲、又は0.7~0.9の範囲、又は0.75~0.9の範囲とすることができる。
【0038】
ミクロ細孔の容積率(φa)は、好ましくは0.15~0.85の範囲、より好ましくは0.2~0.8の範囲である。
【0039】
ミクロ細孔内に位置する非常に微細なシリコンナノ構造体による高い容量保持率を特に利用するためには、φaは、好ましくは0.45~0.85の範囲、より好ましくは0.5~0.8の範囲、より好ましくは0.5~0.75の範囲、より好ましくは0.5~0.7の範囲である。例えば、φaは、0.55~0.8の範囲、又は0.6~0.8の範囲、又は0.6~0.75の範囲とすることができる。
【0040】
代替的には、高いシリコン充填量の機会を特に利用するためには、φaは、0.2~0.5の範囲、より好ましくは0.3~0.5の範囲とすることができる。
【0041】
上述のように、多孔質炭素骨格の全ミクロ細孔及びメソ細孔容積のうち最小でも75%が、20nm以下の直径を有する細孔の形態を有するように、細孔容積はより小さな細孔に向かって実質的に歪みを有する。より好ましくは、φ20は、少なくとも0.8、より好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.9である。
【0042】
好ましくは、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するφ10は、少なくとも0.70、又は少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85である。より好ましくは、ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積に対するφ5は、少なくとも0.75、又は少なくとも0.8、又は少なくとも0.85である。よって、好ましい実施の形態においては、多孔質炭素骨格の全ミクロ細孔及びメソ細孔容積の少なくとも75%が、10nm以下、より好ましくは5nm以下の直径を有する細孔の形態を有する。
【0043】
より大きなメソ細孔の範囲の直径を有する細孔画分は、シリコンドメインへの電解質のアクセスを容易にするため、有利となり得る。したがって、10nm~50nmの範囲の直径を有する細孔(すなわち、より大きなメソ細孔)は、任意で、多孔質炭素骨格の全ミクロ細孔及びメソ細孔容積の1%以下、又は2%以下、又は5%以下、又は10%以下を構成することができる。
【0044】
多孔質炭素骨格におけるメソ細孔に対するミクロ細孔の体積比は、原則として、100:0~0:100の範囲とすることができる。好ましくは、メソ細孔に対するミクロ細孔の体積比は、90:10~55:45、又は90:10~60:40、又は85:15~65:35である。
【0045】
多孔質炭素骨格の細孔径分布は、単峰性、二峰性、又は多峰性とすることができる。本明細書で使用される「細孔径分布」という用語は、多孔質炭素骨格の累積全内部細孔容積に対する細孔径の分布に関する。最小の細孔と、より大きい直径の細孔との近接性によって、多孔質ネットワークを介してイオンがシリコンへと効率的に輸送されるという利点が提供されるため、二峰性又は多峰性の細孔径分布が好ましい場合がある。したがって、粒子状材料は高いイオン拡散性を有するため、レート性能が改善される。
【0046】
好適には、二峰性又は多峰性の細孔径分布は、互いに5倍~20倍、より好ましくは約10倍異なる、ミクロ細孔の範囲のピーク細孔径と、メソ細孔径の範囲のピーク細孔径とを含む。例えば、多孔質炭素骨格は、細孔径1.5nmにピークを有し、かつ、細孔径15nmにピークを有する二峰性の細孔径分布を有することができる。
【0047】
ミクロ細孔及びメソ細孔の全容積、並びにミクロ細孔及びメソ細孔の細孔径分布は、ISO 15901-2及びISO 15901-3に規定された標準的な方法論に従って、急冷固体密度汎関数法(QSDFT)を使用して、77Kで10-6の相対圧力p/p0までの窒素ガス吸着を使用して決定する。窒素ガス吸着は、ガスを固体の細孔内で凝縮させることにより、材料の空隙率及び細孔径分布を特徴付ける手法である。圧力を上昇させると、ガスは、最初は最小の直径を有する細孔内で凝縮し、全ての細孔が液体で満たされる飽和点に達するまで圧力を上昇させる。次いで、窒素ガス圧力を段階的に下げて、液体を系から蒸発させる。吸着等温線及び脱着等温線、並びにそれらの間のヒステリシスの分析により、細孔容積及び細孔径分布を決定することができる。窒素ガス吸着による細孔容積及び細孔径分布の測定に好適な装置としては、米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能なTriStar II空隙率分析装置及びTriStar II Plus空隙率分析装置、並びにQuantachrome Instrumentsから入手可能なAutosorb IQ空隙率分析装置が挙げられる。
【0048】
窒素ガス吸着は、最大50nmの直径を有する細孔の細孔容積及び細孔径分布の測定に効果的だが、はるかに大きな直径の細孔に対しては信頼性が低くなる。したがって、本発明の目的のために、最大50nm以下の直径を有する細孔のみの細孔容積及び細孔径分布を決定するために窒素吸着を使用する。上述のように、P1の値は、最大50nm以下の直径の細孔のみ(すなわち、ミクロ細孔及びメソ細孔のみ)を考慮して決定され、同様に、φa、φb、φ20、φ10、及びφ5の値は、ミクロ細孔及びメソ細孔のみの全容積に対して決定される。
【0049】
利用可能な分析手法の限界に鑑みると、単一の手法を使用して、ミクロ細孔、メソ細孔、及びマクロ細孔の全範囲にわたる細孔容積及び細孔径分布を測定することは不可能である。多孔質炭素骨格がマクロ細孔を含む場合、50nm超、かつ、最大100nmの範囲の細孔の容積は、本明細書ではP2cm3/gの値で特定され、水銀圧入法により測定される。上述のように、P2の値は、単独で、すなわち、多孔質炭素骨格の細孔を占めるシリコン又は他の材料の不存在下で測定した場合の多孔質炭素骨格の細孔容積に関する。
【0050】
誤解を避けるために、P2の値は、50nm超、最大100nm以下の直径を有する細孔のみを考慮する。すなわち、P2の値は、最大100nmの直径のマクロ細孔の容積のみを含む。水銀圧入法によって50nm以下の細孔径で測定されたいかなる細孔容積も、P2の値を決定する目的では無視する(上述のように、メソ細孔及びミクロ細孔を特徴付けるために窒素吸着を使用する)。水銀圧入法によって100nm超で測定された細孔容積は、本発明の目的のために粒子間空隙率であると想定され、P2の値を決定する際にはこの細孔容積も考慮しない。
【0051】
水銀圧入法は、水銀に浸漬した材料の試料に対して、様々なレベルの圧力をかけることにより、材料の空隙率及び細孔径分布を特徴付ける手法である。試料の細孔に水銀を侵入させるのに必要な圧力は、細孔径に反比例する。本明細書で報告する水銀圧入法によって得られる値は、室温での水銀の表面張力γを480mN/m、接触角φを140°として、ASTM UOP578-11に従って得られたものである。室温での水銀の密度は、13.5462g/cm3とする。米国のMicromeritics Instrument Corporationから入手可能な自動水銀圧入計AutoPore IVシリーズ等、多くの高精度水銀圧入装置が市販されている。水銀圧入法の完全な報告についてP.A. Webb及びC. Orrによる「Analytical Methods in Fine Particle Technology, 1997, Micromeritics Instrument Corporation」(ISBN 0-9656783-0)を参照することができる。
【0052】
マクロ細孔の容積(すなわち、P2の値)は、好ましくは、ミクロ細孔及びメソ細孔の容積(すなわち、P1の値)と比較して小さい。マクロ細孔の一部は、細孔ネットワークへの電解質のアクセスを容易にするのに有用である可能性があるが、本発明の利点は、実質的に、ミクロ細孔及びより小さなメソ細孔にシリコンを収容することによって得られる。
【0053】
よって、本発明によれば、多孔質炭素骨格におけるマクロ細孔の全容積は、水銀圧入法により測定するP2cm3/gであり、ここで、P2は、好ましくは、0.2×P1以下、又は0.1×P1以下、又は0.05×P1以下、又は0.02×P1以下、又は0.01×P1以下、又は0.005×P1以下の値を有する。
【0054】
好ましい実施の形態においては、P2は、0.3以下、又は0.25以下、又は0.20以下、又は0.15以下、又は0.1以下、又は0.05以下の値を有する。より大きなメソ細孔に関連して上で論じたように、マクロ細孔の範囲の小細孔容積率は、シリコンへの電解質のアクセスを容易にするのに有利である可能性がある。
【0055】
開孔ネットワークは、任意で、階層的細孔構造、すなわち、より小さな細孔がより大きな細孔から分岐し、細孔径が或る程度の順序を有する細孔構造を含む。
【0056】
ガス吸着及び水銀圧入法等の侵入手法は、多孔質炭素骨格の外部から窒素又は水銀がアクセス可能な細孔の細孔容積を決定するためだけに有効であることが理解されるだろう。本明細書で規定する空隙率の値(P1及びP2)は、開孔、すなわち、多孔質炭素骨格の外部から流体がアクセス可能な細孔の容積を指すものとして理解されるべきである。窒素吸着又は水銀圧入法によって特定することができない完全に包囲された細孔は、本明細書では空隙率の値を規定する際に考慮しないものとする。同様に、窒素吸着による検出限界を下回るほど小さい細孔内に位置するいかなる細孔容積も、P1の値の決定において考慮しない。
【0057】
多孔質炭素骨格は、結晶質炭素若しくは非晶質炭素、又は非晶質炭素及び結晶質炭素の混合物を含むことができる。多孔質炭素骨格は、硬質炭素骨格又は軟質炭素骨格のいずれであってもよく、好適には、ポリマー又は有機物の熱分解を含む既知の手順によって得ることができる。
【0058】
多孔質炭素骨格は、好ましくは、少なくとも750m2/g、又は少なくとも1000m2/g、又は少なくとも1250m2/g、又は少なくとも1500m2/gのBET表面積を有する。本明細書で使用される「BET表面積」という用語は、ISO 9277に従ってブルナウアー・エメット・テラー理論を用いた、固体表面上へのガス分子の物理吸着の測定から計算された単位質量当たりの表面積を指すと解釈されるべきである。好ましくは、導電性多孔質粒子骨格のBET表面積は、4000m2/g以下、又は3500m2/g以下、又は3250m2/g以下、又は3000m2/g以下である。
【0059】
本明細書で使用される「硬質炭素」という用語は、炭素原子が、主に、ナノスケールの多環芳香族ドメインでsp2混成状態(三方結合)をとる無秩序な炭素マトリックスを指す。この多環芳香族ドメインは、化学結合、例えば、C-O-C結合によって架橋している。多環芳香族ドメイン同士が化学的に架橋しているため、高温において、硬質炭素は黒鉛に変換することはできない。ラマンスペクトルにおける高Gバンド(約1600cm-1)によって明らかなように、硬質炭素は黒鉛のような特性を有している。しかしながら、ラマンスペクトルにおける高Dバンド(約1350cm-1)によって明らかなように、炭素は完全に黒鉛のようではない。
【0060】
本明細書で使用される「軟質炭素」という用語も、炭素原子が、主に、5nm~200nmの範囲の寸法を有する多環芳香族ドメインでsp2混成状態(三方結合)をとる無秩序な炭素マトリックスを指す。硬質炭素とは対照的に、軟質炭素中の多環芳香族ドメインは、化学結合によって架橋せずに、分子間力によって結合している。すなわち、高温において、軟質炭素は黒鉛化し得る。多孔質炭素骨格は、好ましくは、XPSにより測定した場合に、少なくとも50%のsp2混成炭素を含む。例えば、多孔質炭素骨格は、好適には、50%~98%のsp2混成炭素、55%~95%のsp2混成炭素、60%~90%のsp2混成炭素、又は70%~85%のsp2混成炭素を含むことができる。
【0061】
好適な多孔質炭素骨格を作製するために、様々な異なる材料を使用することができる。使用することができる有機材料の例としては、リグノセルロース系材料(ココナッツ殻、籾殻、木材等)を含む植物バイオマス、及び石炭等の化石炭素源が挙げられる。熱分解により多孔質炭素骨格を形成する高分子材料の例としては、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、ピッチ、メラミン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、並びにアクリレート、スチレン、α-オレフィン、ビニルピロリドン、及び他のエチレン性不飽和モノマーのモノマー単位を含む様々なコポリマーが挙げられる。出発物質及び熱分解プロセスの条件に応じて、様々な異なる硬質炭素材料が当該技術分野で利用可能である。
【0062】
メソ細孔及びミクロ細孔の容積を増加させるために、多孔質炭素骨格に対して化学的活性化プロセス又はガス活性化プロセスを行うことができる。好適な活性化プロセスは、熱分解した炭素を、600℃~1000℃の範囲の温度で、酸素、スチーム、CO、CO2、及びKOHの1つ以上と接触させることを含む。
【0063】
メソ細孔は、熱分解又は活性化後に熱的手段又は化学的手段によって除去することができる、MgO及び他のコロイド状テンプレート又はポリマーテンプレート等の抽出可能な細孔形成剤を使用する既知のテンプレートプロセス(templating processes)によっても得ることができる。
【0064】
多孔質炭素骨格は、0.5μm~20μmの範囲のD50粒子径を有することができる。好ましくは、D50粒子径は、少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも2μm、例えば、少なくとも3μm、又は少なくとも4μm、又は少なくとも5μmである。好ましくは、粒子状材料のD50粒子径は、18μm以下、より好ましくは16μm以下、より好ましくは14μm以下、より好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、例えば、9μm以下、又は8μm以下である。より好ましくは、D50粒子径は、10μm以下、又は9μm以下、又は8μm以下、又は7μm以下、又は6μm以下、又は5μm以下である。
【0065】
例えば、多孔質炭素骨格は、1μm~12μm、又は1μm~10μm、又は2μm~10μm、又は2μm~8μm、又は2μm~6μm、又は3μm~10μm、又は3μm~8μm、又は3μm~7μm、又は3μm~6μm、又は3μm~5μmの範囲のD50粒子径を有することができる。
【0066】
多孔質炭素骨格中のシリコンの量は、複合粒子における多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が[1×P1~2.2×P1]:1の範囲であるという要件によって、有効細孔容積と相関する。この関係では、シリコンの密度及び多孔質炭素骨格の細孔容積を考慮して、多孔質炭素骨格の内部細孔容積(P1cm3/g)の約43v/v%~95v/v%が(未充電状態の)シリコンによって占有されるシリコンの重量比を規定する。
【0067】
好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、少なくとも1.1×P1、より好ましくは少なくとも1.15×P1、より好ましくは少なくとも1.2×P1、より好ましくは少なくとも1.25×P1、より好ましくは少なくとも1.3×P1、より好ましくは少なくとも1.35×P1、より好ましくは少なくとも1.4×P1である。
【0068】
多孔質炭素骨格が、ミクロ細孔に対するメソ細孔の比が相対的に高い場合(例えば、φaが0.2~0.5の範囲、又は0.3~0.5の範囲である場合)、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、更に高くすることができ、例えば、少なくとも1.45×P1、より好ましくは少なくとも1.5×P1、より好ましくは少なくとも1.55×P1、より好ましくは少なくとも1.6×P1、より好ましくは少なくとも1.65×P1、より好ましくは少なくとも1.7×P1とすることができる。
【0069】
多孔質炭素骨格に対するシリコンの最小重量比は、複合粒子における多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも1×P1であるという要件によって、メソ細孔率(φb)及び全細孔容積の両方と相関している。より好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、少なくとも[φb+0.75]×P1で与えられる値、より好ましくは少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値、より好ましくは少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値、より好ましくは少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値、より好ましくは少なくとも[φb+1.1]×P1で与えられる値を有する(ただし、この値は少なくとも1×P1である)。よって、メソ細孔率(φb)がより高い値を有する場合、複合粒子におけるシリコンの最小量も大きくなる。このメソ細孔率と、多孔質炭素骨格に対するシリコンの最小重量比との相関性によって、より高いメソ細孔率を有する多孔質炭素骨格がより高い程度でシリコンによって占有されることになり、これにより、粒子状材料の体積容量が最適化される。より高いメソ細孔率を有する多孔質炭素骨格において、シリコンの最小充填量がより大きくなることによって、より大きなミクロ細孔が部分的にシリコンによって占有される可能性も低減し、これにより、電解質に露出するシリコン表面積が低減することによって、望ましくないSEIの形成が制限される。
【0070】
多孔質炭素骨格に対するシリコンの最大重量比も、複合粒子における多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、1.9×P1で与えられる値以下であるという要件によって、メソ細孔率(φb)及び全細孔容積の両方と相関している。より好ましくは、多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、[φb+1.6]×P1で与えられる値以下、より好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である(ただし、この値は1.9×P1以下である)。このメソ細孔率と、多孔質炭素骨格の最大重量比との相関性によって、より高いミクロ細孔率を有する多孔質炭素骨格がシリコンによって過剰に充填されなくなる。上述のように、多孔質炭素骨格がより高ミクロ細孔性である場合には、占有された細孔容積を囲む壁又は蓋が形成される可能性があるため、非常に高い比のシリコンを達成することがより困難となる場合がある。また、多孔質炭素骨格がより高ミクロ細孔性である場合、非常に微細なシリコン構造体を介したリチウムの拡散はレート制限されるようになり、粒子状材料のレート容量が低減する。したがって、シリコンの比の上限を制御することにより、多孔質炭素骨格の内部細孔容積への電解質のアクセスの程度が保証され、シリコンドメインへのリチウムイオンの輸送が容易になる。
【0071】
複合粒子におけるシリコン質量は、実質的又は完全に、上述のナノスケールシリコンドメインの形態で多孔質炭素骨格の細孔内に存在することが好ましい。例えば、複合粒子の外表面上に位置するシリコンがないか又はほとんどないように、複合粒子におけるシリコン質量の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%が、多孔質炭素骨格の内部細孔容積内に位置することが好ましい。
【0072】
本発明の粒子状材料は、空気中での熱重量分析(TGA)による性能によって更に特徴付けることができる。粒子状材料を、空気中において10℃/分の温度上昇速度でTGAにより測定する場合に、800℃で粒子状材料に含まれるシリコンの10%以下が未酸化であることが好ましい。粒子状材料を、空気中において10℃/分の温度上昇速度でTGAにより測定する場合に、800℃で粒子状材料に含まれるシリコンの5%以下又は2%以下が未酸化であることがより好ましい。
【0073】
未酸化シリコンの量は、これらの材料特有のTGAトレースからの導出により決定される。約300℃~500℃での質量増加は、シリコンのSiO2への初期酸化に対応し、それに続いて、炭素がCO2ガスに酸化されるため、約500℃~600℃で質量が減少する。約600℃超では、シリコンのSiO2への継続的な変換に対応する更なる質量増加があり、シリコンの酸化が完了するにつれて、1000℃超で漸近値に向かって増加する。
【0074】
この分析の目的のために、800℃超でのいかなる質量増加も、シリコンのSiO2への酸化に対応しており、酸化完了時の総質量はSiO2であると想定される。これにより、800℃での未酸化シリコンの割合を、シリコンの総量に対する割合として、以下の式に従って決定することができる:
Z=1.875×[(Mf-M800)/Mf]×100%
(式中、Zは、800℃での未酸化シリコンの割合であり、Mfは、酸化完了時の試料の質量であり、M800は、800℃での試料の質量である)。
【0075】
理論に縛られるものではないが、酸化物層を通る酸素原子の拡散は熱的に活性化されるため、シリコンがTGA下で酸化される温度は、シリコン上での酸化物被膜の長さスケールに概ね対応することが理解される。シリコンナノ構造体のサイズとその位置によって、酸化物被膜厚さの長さスケールが制限される。したがって、ミクロ細孔及びメソ細孔に堆積したシリコンは、これらの構造体上に存在する酸化物被膜が必然的により薄くなるため、粒子表面上のシリコン堆積物よりも低い温度で酸化することが理解される。したがって、本発明による好ましい材料は、ミクロ細孔及びより小さなメソ細孔に位置するシリコンナノ構造体が小さな長さスケールを有することと一致して、低温でシリコンの実質的に完全な酸化を示す。本発明の目的のために、800℃でのシリコンの酸化は、多孔質炭素骨格の外表面上のシリコンであると想定される。本明細書では、これを「粗シリコン」とも称する。
【0076】
シリコンは、好ましくは非晶質シリコンである。非晶質シリコンは、電気活性材料としてより良好な性能を有すると考えられる。シリコンの形態は、X線回折(XRD)を使用した既知の手順によって決定することができる。
【0077】
窒素ガス吸着により測定した、複合粒子中の(すなわち、シリコンの存在下での)ミクロ細孔及びメソ細孔の容積は、好ましくは、0.15×P1以下、又は0.10×P1以下、又は0.05×P1以下、又は0.02×P1以下である。
【0078】
多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比は、元素分析によって決定することができる。元素分析は、複合粒子中のシリコン及び炭素の両方の重量割合を決定するために使用される。任意で、水素、窒素、及び酸素の量も、元素分析によって決定することができる。好ましくは、元素分析は、多孔質炭素骨格のみにおける炭素(並びに任意で、水素、窒素、及び酸素)の重量割合を決定するためにも使用される。多孔質炭素骨格のみにおける炭素の重量割合を決定することによって、この多孔質炭素骨格がその分子骨格内に少量のヘテロ原子を含む可能性を考慮する。両方の測定を一緒に行うことで、多孔質炭素骨格全体に対するシリコンの重量割合を確実に決定することができる。
【0079】
シリコンの含有量は、好ましくは、ICP-OES(誘導結合プラズマ発光分光分析)によって決定される。ThermoFisher Scientificから入手可能なICP-OES分析装置のiCAP(商標)7000シリーズ等、多くのICP-OES装置が市販されている。複合粒子及び多孔質炭素骨格のみにおける炭素の含有量(並びに必要に応じて、水素、窒素、及び酸素の含有量)は、好ましくは、IR吸収によって決定される。炭素、水素、窒素、及び酸素の含有量を決定するのに好適な装置は、Leco Corporationから入手可能なTruSpec(商標)Micro元素分析装置である。
【0080】
複合粒子は、好ましくは、酸素の総含有量が低い。酸素は、複合粒子において、例えば、多孔質炭素骨格の一部として、又は任意の露出したシリコン表面上の酸化物層として存在し得る。複合粒子の酸素の総含有量は、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満、例えば、2重量%未満、又は1重量%未満、又は0.5重量%未満である。
【0081】
シリコンは、任意で、1つ以上のドーパントを少量含むことができる。好適なドーパントには、ホウ素及びリン、他のn型若しくはp型ドーパント、窒素、又はゲルマニウムが含まれる。好ましくは、ドーパントは、シリコン及びドーパント(複数の場合もある)の総量に対して、2重量%以下の総量で存在する。
【0082】
誤解を避けるために、本明細書で使用される「粒子径」という用語は、球相当径(esd)、すなわち、或る粒子と同じ体積を有する球の直径を指し、ここで、粒子の体積は、粒子内の細孔の体積を含むと理解される。本明細書で使用される「D50」及び「D50粒子径」という用語は、体積ベースでの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の50体積%が存在する直径を指す。本明細書で使用される「D10」及び「D10粒子径」という用語は、体積ベースの10パーセンタイルの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の10体積%が存在する直径を指す。本明細書で使用される「D90」及び「D90粒子径」という用語は、体積ベースの90パーセンタイルの中央粒子径、すなわち、その粒子径未満に、粒子集団の90体積%が存在する直径を指す。
【0083】
粒子径及び粒度分布は、ISO 13320:2009に従って、通常のレーザー回折手法によって決定することができる。レーザー回折は、粒子が、粒子のサイズに応じて変化する角度で光を散乱し、粒子の集まりが、粒度分布に相関し得る強度及び角度によって規定される散乱光パターンを生成するという原理に基づいている。粒度分布を迅速かつ確実に決定するために、多くのレーザー回折装置が市販されている。特に明記しない限り、本明細書で規定又は報告する粒度分布測定値は、Malvern Instruments製の従来のMalvern Mastersizer(商標)3000粒度分析装置により測定されたものである。このMalvern Mastersizer(商標)3000粒度分析装置は、水溶液に懸濁した対象粒子を含有する透明セルを通してヘリウムネオンガスレーザービームを投射することによって動作する。粒子に当たる光線は、粒子径に反比例する角度で散乱され、光検出器アレイによって、所定の幾つかの角度で光の強度を測定し、様々な角度で測定した強度を、標準的な理論原理を使用してコンピューターによって処理し、粒度分布を決定する。本明細書で報告されるレーザー回折値は、蒸留水中の粒子の湿式分散体を使用して得られる。粒子の屈折率は3.50であり、かつ、分散剤の屈折率は1.330であるとする。粒度分布は、ミー散乱モデルを使用して計算する。
【0084】
複合粒子は、0.5μm~20μmの範囲のD50粒子径を有することができる。好ましくは、D50粒子径は、少なくとも1μm、より好ましくは少なくとも2μm、例えば、少なくとも3μm、又は少なくとも4μm、又は少なくとも5μmである。好ましくは、粒子状材料のD50粒子径は、18μm以下、より好ましくは16μm以下、より好ましくは14μm以下、より好ましくは12μm以下、より好ましくは10μm以下、例えば、9μm以下、又は8μm以下である。
【0085】
例えば、複合粒子は、1μm~12μm、又は1μm~10μm、又は2μm~10μm、又は3μm~10μm、又は3μm~8μmの範囲のD50粒子径を有することができる。これらのサイズ範囲内であり、本明細書に記載の空隙率及び細孔径分布を有する粒子は、スラリー中で分散性を有し、構造的堅牢性を有し、繰り返しの充放電サイクルにわたって容量保持し、かつ、金属イオン電池の電極で使用される従来の黒鉛粒子間の粒子間空隙を占有する能力を有するため、金属イオン電池用ハイブリッドアノードにおける使用に理想的に適している。
【0086】
複合粒子のD10粒子径は、好ましくは、少なくとも0.2μm、又は少なくとも0.5μm、又は少なくとも0.8μm、又は少なくとも1μm、又は少なくとも1.5μm、又は少なくとも2μmである。D10粒子径を0.2μm以上に維持することによって、サブミクロンサイズの粒子の望ましくない凝集の可能性が低下して、粒子状材料の分散性が改善され、容量保持率が改善される。
【0087】
複合粒子のD90粒子径は、好ましくは、40μm以下、又は30μm以下、又は20μm以下、又は15μm以下、又は12μm以下、又は10μm以下である。非常に大きな粒子の存在は、電極活性層において粒子が不均一に成形充填されることにつながるため、緻密な電極層、特に20μm~50μmの従来の範囲の厚さを有する電極層の形成が妨害される。したがって、D90粒子径は20μm以下であることが好ましく、更に小さいことがより好ましい。
【0088】
複合粒子は、好ましくは、狭い粒度分布スパンを有する。例えば、粒度分布スパン((D90-D10)/D50として規定される)は、好ましくは5以下、より好ましくは4以下、より好ましくは3以下、より好ましくは2以下、最も好ましくは1.5以下である。狭い粒度分布スパンを維持することによって、緻密な電極層への粒子の効率的な充填をより容易に達成することができる。
【0089】
複合粒子は、回転楕円状(spheroidal)の形状を有することができる。本明細書で規定する回転楕円状粒子は、球状粒子及び楕円状粒子の両方を含むことができ、本発明の複合粒子の形状は、好適には、本発明の粒子の球形度及びアスペクト比を参照することによって規定することができる。回転楕円状粒子は、凝集体を形成することなく、スラリーへの分散に特に適していることが分かった。また、多孔質回転楕円状粒子の使用は、驚くべきことに、不規則な形状の多孔質粒子及び多孔質粒子フラグメントと比較した場合に、強度の更なる向上を提供することが分かった。
【0090】
物体の球形度は、従来、この物体の表面積に対する球の表面積の比として定義され、ここで、物体と球とは同じ体積を有する。しかしながら、実用上は、ミクロンスケールの個々の粒子の表面積及び体積を測定することは困難である。しかしながら、走査型電子顕微鏡法(SEM)、及び粒子によって投影された影を、デジタルカメラを使用して記録する動的画像分析によって、ミクロンスケールの粒子の高精度な2次元投影像を得ることができる。本明細書で使用される「球形度」という用語は、円の面積に対する粒子投影像の面積の比として理解されるものとし、ここで、粒子投影像と円とは同一の円周を有する。よって、個々の粒子に対して、球形度Sは以下のように定義される:
【数1】
(式中、A
mは、粒子投影像に対して測定した面積であり、C
mは、粒子投影像に対して測定した円周である)。本明細書で使用される粒子集団の平均球形度S
avは以下のように定義される:
【数2】
(式中、nは集団中の粒子の数を表す)。
【0091】
本明細書で、本発明の複合粒子に適用して使用される「回転楕円状」という用語は、少なくとも0.70の平均球形度を有する材料を指すと理解されるものとする。本発明の多孔質回転楕円状粒子は、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.92、より好ましくは少なくとも0.93、より好ましくは少なくとも0.94、より好ましくは少なくとも0.95の平均球形度を有する。多孔質回転楕円状粒子は、任意で、少なくとも0.96、又は少なくとも0.97、又は少なくとも0.98、又は少なくとも0.99の平均球形度を有することができる。
【0092】
2次元粒子投影像の円周及び面積は、完全に回転楕円状ではない任意の粒子の場合、粒子の配向に依存することが理解されるだろう。しかしながら、粒子配向の影響は、球形度及びアスペクト比を、ランダム配向を有する複数の粒子から得られた平均値として報告することによって相殺することができる。多くのSEM装置及び動的画像分析装置が市販されており、粒子状材料の球形度及びアスペクト比を迅速かつ確実に決定することができる。特に明記しない限り、本明細書で規定又は報告する球形度の値は、Retsch Technology GmbH製のCamSizer XT粒子分析装置により測定されたものである。このCamSizer XTは、100mg~100gの試料体積の粒子状材料のサイズ及び形状の高精度な分布を得ることができる動的画像分析装置であり、平均球形度及びアスペクト比等の特性をこの装置で直接計算することができる。
【0093】
複合粒子は、好ましくは、150m2/g以下、又は100m2/g以下、又は80m2/g以下、又は60m2/g以下、又は40m2/g以下、又は30m2/g以下、又は25m2/g以下、又は20m2/g以下、又は15m2/g以下、又は10m2/g以下のBET表面積を有する。通常、本発明の粒子状材料を含むアノードの初回の充放電サイクル中に、複合粒子の表面における固体電解質界面(SEI)層の形成を最小限にするために、BET表面積は小さいことが好ましい。しかしながら、BET表面積が過剰に小さいと、周囲の電解質中の金属イオンが電気活性材料の大部分にアクセスできなくなるために、許容できないほど低い充電レート及び容量につながる。例えば、BET表面積は、好ましくは、少なくとも0.1m2/g、又は少なくとも1m2/g、又は少なくとも2m2/g、又は少なくとも5m2/gである。例えば、BET表面積は、1m2/g~25m2/gの範囲、より好ましくは2m2/g~15m2/gの範囲とすることができる。
【0094】
本発明の粒子状材料は、典型的には、初回のリチウム化の際に、1200mAh/g~2340mAh/gの比充電容量を有する。好ましくは、本発明の粒子状材料は、初回のリチウム化の際に、少なくとも1400mAh/gの比充電容量を有する。
【0095】
本発明の複合粒子は、好適には、多孔質炭素骨格の細孔構造へのシリコン含有前駆体の化学気相浸透(CVI)によって作製する。本明細書で使用されるCVIは、ガス状のシリコン含有前駆体が表面上で熱分解されて、表面に元素状シリコン及びガス状の副生成物が形成されるプロセスを指す。
【0096】
好適なガス状のシリコン含有前駆体としては、シラン(SiH4)、シラン誘導体(例えば、ジシラン、トリシラン、及びテトラシラン)、及びトリクロロシラン(SiHCl3)が挙げられる。シリコン含有前駆体は、純粋な形態で、又はより一般的には、窒素若しくはアルゴン等の不活性キャリアガスとの希釈混合物として使用することができる。例えば、シリコン含有前駆体は、このシリコン含有前駆体と不活性キャリアガスとの総体積に対して、0.5体積%~20体積%、又は1体積%~10体積%、又は1体積%~5体積%の範囲の量で使用することができる。CVIプロセスは、好適には、全圧101.3kPa(すなわち、1atm)で、シリコン前駆体の分圧を低くして行い、残りの分圧は、水素、窒素、又はアルゴン等の不活性パディングガス(padding gas)を使用して大気圧になる。400℃~700℃、例えば、400℃~550℃、又は400℃~500℃、又は400℃~450℃、又は450℃~500℃の範囲の堆積温度を使用する。CVIプロセスは、好適には、固定床反応器、流動床反応器(噴流床反応器を含む)、又はロータリーキルンで行うことができる。
【0097】
本発明の特に有利な点は、多孔質炭素骨格が、細孔径が非常に小さいため、外表面積に対する内表面積の比が非常に高いことである。その結果、多孔質炭素骨格の内表面へのシリコンの堆積は、運動学的に有利である。したがって、本発明の複合粒子におけるシリコンのうち非常に高い割合(例えば、上述のように、複合粒子におけるシリコン質量の少なくとも90重量%、より好ましくは少なくとも95重量%、より好ましくは少なくとも98重量%、より好ましくは少なくとも99重量%)が、多孔質炭素骨格のミクロ細孔及び/又はメソ細孔内に位置するナノスケール元素シリコンドメインの形態を有する。
【0098】
対照的に、多孔質炭素骨格の外表面でのシリコン堆積物の形成は、大幅に遅い速度で起こり、その結果、複合粒子は、典型的には、多孔質炭素骨格の外表面上に非常に少量の外部シリコンを含有する。理論に縛られるものではないが、多孔質炭素骨格の外表面上のシリコンの寸法がより大きいことは、この外部シリコン(本明細書では「粗シリコン」と称する)が可逆的にサイクルする能力がより低く、それに比例して、酸化シリコンの量とSEIの形成がより多くなることを意味し、その結果、外部シリコンの量が多い複合粒子は、複数回の充放電サイクルにわたる容量保持率がより低くなると考えられる。
【0099】
本発明の粒子状材料は、任意で、導電性炭素被膜を含むことができる。好適には、導電性炭素被膜は、化学蒸着(CVD)法によって得ることができる。CVDは当該技術分野において既知の方法論であり、粒子状材料の表面での揮発性炭素含有ガス(例えば、エチレン)の熱分解を含む。代替的には、炭素被膜は、炭素含有化合物の溶液を粒子状材料の表面に堆積させ、続いて熱分解することによって形成することができる。導電性炭素被膜は、複合粒子のレート性能を低下させないように、過剰な抵抗なく、複合粒子の内部にリチウムがアクセスするのに十分な透過性を有する。例えば、炭素被膜の厚さは、好適には、2nm~30nmの範囲とすることができる。炭素被膜は、任意で、多孔質であってもよく、及び/又は、複合粒子の表面を部分的にのみ覆ってもよい。
【0100】
炭素被膜は、任意の表面欠陥を滑らかにし、表面の残りの微細構造(microporosity)を埋めることによって、粒子状材料のBET表面積を更に小さくし、それにより、初回のサイクル損失を更に低減するという利点を有する。また、炭素被膜は、複合粒子の表面の導電性を改善して、電極組成物における導電性添加剤の必要性を減らし、また、安定したSEI層の形成に最適な表面を形成して、サイクル時の容量保持率を改善する。
【0101】
本発明の第1の態様によれば、以下の態様1-1~態様1-41による粒子状材料が更に提供される。
【0102】
態様1-1:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0103】
態様1-2:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0104】
態様1-3:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0105】
態様1-4:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0106】
態様1-5:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0107】
態様1-6:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0108】
態様1-7:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0109】
態様1-8:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0110】
態様1-9:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0111】
態様1-10:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0112】
態様1-11:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0113】
態様1-12:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0114】
態様1-13:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0115】
態様1-14:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0116】
態様1-15:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0117】
態様1-16:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0118】
態様1-17:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.8]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.6]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0119】
態様1-18:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0120】
態様1-19:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0121】
態様1-20:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0122】
態様1-21:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0123】
態様1-22:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0124】
態様1-23:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+0.9]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0125】
態様1-24:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0126】
態様1-25:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0127】
態様1-26:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0128】
態様1-27:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0129】
態様1-28:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0130】
態様1-29:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、少なくとも[φb+1]×P1で与えられる値であり、好ましくは[φb+1.5]×P1で与えられる値以下である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0131】
態様1-30:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0132】
態様1-31:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0133】
態様1-32:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲である、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0134】
態様1-33:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0135】
態様1-34:
(i)P1が0.7~1.4の範囲であり、
(ii)φaが0.5~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0136】
態様1-35:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.8×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0137】
態様1-36:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ20が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~18μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0138】
態様1-37:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が1μm~12μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0139】
態様1-38:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ10が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0140】
態様1-39:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.8であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0141】
態様1-40:
(i)P1が0.8~1.2の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が2μm~8μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0142】
態様1-41:
(i)P1が0.7~0.9の範囲であり、
(ii)φaが0.6~0.8の範囲であり、
(iii)φ5が少なくとも0.75であり、
(iv)多孔質炭素骨格のD50粒子径が3μm~6μmの範囲であり、
(v)多孔質炭素骨格に対するシリコンの重量比が、[1.2×P1~1.6×P1]:1の範囲である、
本発明の第1の態様による粒子状材料。
【0143】
本発明によれば、上述の態様1-1~態様1-41の範囲内にある、本発明の第1の態様に関して本明細書で開示した好ましい/任意の特徴は、態様1-1~態様1-41の好ましい/任意の特徴でもあるとみなされるべきであるということが理解されるべきである。同様に、上述の態様1-1~態様1-41の範囲内にある従属項のいかなる特徴も、それらの請求項が態様1-1~態様1-41に従属しているように解釈されるべきである。
【0144】
本発明の第2の態様では、本発明の第1の態様による粒子状材料と、少なくとも1つの他の成分とを含む組成物が提供される。好ましくは、本発明の第2の態様による組成物は、電極の活性層を形成するために使用することができる。本明細書では、このような組成物を「電極組成物」と称する場合がある。本発明の第2の態様の組成物を作製するために使用される粒子状材料は、本発明の第1の態様に関して好ましい又は任意であると記載された特徴のいずれかを有することができ、態様1-1~態様1-41のいずれかによる粒子状材料とすることができる。
【0145】
よって、本発明の第1の態様による粒子状材料と、(i)バインダー、(ii)導電性添加剤、及び(iii)追加の粒子状電気活性材料から選択される少なくとも1つの他の成分とを含む組成物が提供される。
【0146】
上記組成物は、好ましくは、本発明の第1の態様による粒子状材料と、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料とを含むハイブリッド電極組成物である。
【0147】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは、リチウム化した際の比容量が100mAh/g~600mAh/g、又は200mAh/g~500mAh/gの範囲である。追加の粒子状電気活性材料の例としては、黒鉛、硬質炭素、シリコン、スズ、ゲルマニウム、ガリウム、アルミニウム、及び鉛が挙げられる。少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは、黒鉛及び硬質炭素から選択される。少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、最も好ましくは、黒鉛である。
【0148】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、好ましくは10μm~50μm、好ましくは10μm~40μm、より好ましくは10μm~30μm、最も好ましくは10μm~25μm、例えば15μm~25μmの範囲のD50粒子径を有する。
【0149】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD10粒子径は、好ましくは少なくとも5μm、より好ましくは少なくとも6μm、より好ましくは少なくとも7μm、より好ましくは少なくとも8μm、より好ましくは少なくとも9μm、更に好ましくは少なくとも10μmである。
【0150】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料のD90粒子径は、好ましくは100μm以下、より好ましくは80μm以下、より好ましくは60μm以下、より好ましくは50μm以下、最も好ましくは40μm以下である。
【0151】
好ましい実施の形態では、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、10μm~50μmの範囲のD50粒子径を有する黒鉛粒子及び硬質炭素粒子から選択される。更に好ましくは、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は黒鉛粒子から選択され、ここで、黒鉛粒子は、10μm~50μmの範囲のD50粒子径を有する。
【0152】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、少なくとも0.70、好ましくは少なくとも0.85、より好ましくは少なくとも0.90、より好ましくは少なくとも0.92、より好ましくは少なくとも0.93、より好ましくは少なくとも0.94、最も好ましくは少なくとも0.95の平均球形度を有する回転楕円状粒子の形態を有することが好ましい。
【0153】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料は、3:1未満、好ましくは2.5:1以下、より好ましくは2:1以下、より好ましくは1.8:1以下、より好ましくは1.6:1以下、より好ましくは1.4:1以下、最も好ましくは1.2:1以下の平均アスペクト比を有することが好ましい。
【0154】
本発明の粒子状材料は、組成物における電気活性材料の総乾燥重量の0.5重量%~80重量%を構成することができる。例えば、本発明の粒子状材料は、組成物における電気活性材料の総乾燥重量の2重量%~70重量%、又は4重量%~60重量%、又は5重量%~50重量%を構成することができる。
【0155】
上述のとおり、上記組成物が、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を含むハイブリッド電極組成物である場合、この電極組成物は、該組成物の総乾燥重量に対して、本発明の粒子状材料を、好ましくは、1重量%~20重量%、又は2重量%~15重量%、又は2重量%~10重量%、又は2重量%~5重量%含む。
【0156】
さらに、上記組成物がハイブリッド電極組成物である場合、この電極組成物は、該組成物の総乾燥重量に対して、少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料を、好ましくは、10重量%~98重量%、又は15重量%~97重量%、又は20重量%~97重量%、又は25重量%~97重量%含む。
【0157】
本発明の粒子状材料に対する少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料の比は、好適には、重量基準で50:50~99:1、より好ましくは重量基準で60:40~98:2、より好ましくは重量基準で70:30~97:3、より好ましくは重量基準で80:20~96:4、最も好ましくは重量基準で85:15~95:5の範囲である。
【0158】
少なくとも1つの追加の粒子状電気活性材料及び本発明の粒子状材料は、共に、組成物の総重量の少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、より好ましくは少なくとも70重量%、最も好ましくは少なくとも80重量%、例えば、少なくとも85重量%、少なくとも90重量%、又は少なくとも95重量%を構成することが好ましい。
【0159】
上記組成物は、任意で、バインダーを含むことができる。バインダーは、上記組成物を集電体に接着させ、かつ、上記組成物の一体性を維持するように機能する。本発明に従って使用することができるバインダーの例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、カルボキシメチルセルロース(CMC)、変性カルボキシメチルセルロース(mCMC)、ナトリウムカルボキシメチルセルロース(Na-CMC)、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩及びそのアルカリ金属塩、スチレン-ブタジエンゴム(SBR)、並びにポリイミドが挙げられる。上記組成物は、バインダーの混合物を含むことができる。好ましくは、バインダーは、ポリアクリル酸(PAA)及びそのアルカリ金属塩、並びに変性ポリアクリル酸(mPAA)及びそのアルカリ金属塩、SBR、並びにCMCから選択されるポリマーを含む。
【0160】
バインダーは、好適には、上記組成物の総乾燥重量に対して、0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、最も好ましくは2重量%~10重量%の量で存在することができる。
【0161】
バインダーは、任意で、架橋促進剤、カップリング剤、及び/又は接着促進剤等、バインダーの特性を変更する1つ以上の添加剤と組み合わせて存在することができる。
【0162】
上記組成物は、任意で、1つ以上の導電性添加剤を含むことができる。好ましい導電性添加剤は、電極組成物の電気活性成分間、及び電極組成物の電気活性成分と集電体との間の導電性を改善するように含まれる非電気活性材料である。導電性添加剤は、好適には、カーボンブラック、カーボンファイバー、カーボンナノチューブ、グラフェン、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、金属繊維、金属粉末、及び導電性金属酸化物から選択することができる。好ましい導電性添加剤としては、カーボンブラック及びカーボンナノチューブが挙げられる。
【0163】
1つ以上の導電性添加剤は、好適には、電極組成物の総乾燥重量に対して、0.5重量%~20重量%、好ましくは1重量%~15重量%、最も好ましくは2重量%~10重量%の総量で存在することができる。
【0164】
第3の態様では、本発明は、集電体と電気的に接触した、本発明の第1の態様を参照して規定された粒子状材料を含む電極を提供する。本発明の第3の態様の電極を作製するのに使用される粒子状材料は、本発明の第1の態様に関して好ましい又は任意であると記載された特徴のいずれかを有することができ、態様1-1~態様1-41のいずれかによる粒子状材料とすることができる。
【0165】
本明細書で使用される集電体という用語は、電極組成物中の電気活性粒子へと、又は該電気活性粒子から電流を流すことができる任意の導電性基板を指す。集電体として使用することができる材料の例としては、銅、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、及び焼結炭素が挙げられる。銅が好ましい材料である。集電体は、典型的には、3μm~500μmの厚さを有する箔又はメッシュの形態を有する。本発明の粒子状材料は、集電体の片面又は両面に、好ましくは10μm~1mm、例えば、20μm~500μm、又は50μm~200μmの範囲の厚さで適用することができる。
【0166】
好ましくは、電極は、集電体と電気的に接触した、本発明の第2の態様を参照して規定された電極組成物を含む。電極組成物は、本発明の第2の態様に関して好ましい又は任意であると記載された特徴のいずれかを有することができる。
【0167】
本発明の第3の態様の電極は、好適には、本発明の粒子状材料(任意で、本発明の電極組成物の形態を有する)を、溶媒及び任意で1つ以上の粘度調整添加剤と組み合わせてスラリーを形成することによって作製することができる。次いで、スラリーを集電体の表面にキャストし、溶媒を除去することによって、集電体の表面に電極層を形成する。任意のバインダーを硬化させる熱処理及び/又は電極層のカレンダリング処理等の更なる工程を、適宜、行うことができる。電極層は、好適には、20μm~2mm、好ましくは20μm~1mm、好ましくは20μm~500μm、好ましくは20μm~200μm、好ましくは20μm~100μm、好ましくは20μm~50μmの範囲の厚さを有する。
【0168】
代替的には、例えば、スラリーを好適なキャストテンプレートにキャストし、溶媒を除去し、次いでキャストテンプレートを除去することによって、スラリーを本発明の粒子状材料を含む自立型フィルム又はマットに成形することができる。得られたフィルム又はマットは、自立型凝集塊の形態を有しており、次いで、既知の方法によって集電体に接着することができる。
【0169】
本発明の第3の態様の電極は、金属イオン電池のアノードとして使用することができる。よって、第4の態様では、本発明は、上述のような電極を含むアノードと、金属イオンを放出及び再吸収することができるカソード活物質を含むカソードと、アノードとカソードとの間の電解質とを含む充電式金属イオン電池を提供する。本発明の第4の態様の電池を作製するのに使用される粒子状材料は、本発明の第1の態様に関して好ましい又は任意であると記載された特徴のいずれかを有することができ、態様1-1~態様1-41のいずれかによる粒子状材料とすることができる。
【0170】
金属イオンは、好ましくはリチウムイオンである。より好ましくは、本発明の充電式金属イオン電池はリチウムイオン電池であり、カソード活物質はリチウムイオンを放出することができる。
【0171】
カソード活物質は、好ましくは金属酸化物系複合材料である。好適なカソード活物質の例としては、LiCoO2、LiCo0.99Al0.01O2、LiNiO2、LiMnO2、LiCo0.5Ni0.5O2、LiCo0.7Ni0.3O2、LiCo0.8Ni0.2O2、LiCo0.82Ni0.18O2、LiCo0.8Ni0.15Al0.05O2、LiNi0.4Co0.3Mn0.3O2、及びLiNi0.33Co0.33Mn0.34O2が挙げられる。カソード集電体は、通常、3μm~500μmの厚さを有する。カソード集電体として使用することができる材料の例としては、アルミニウム、ステンレス鋼、ニッケル、チタン、及び焼結炭素が挙げられる。
【0172】
電解質は、好適には、金属塩、例えばリチウム塩を含有する非水性電解質であり、非水性電解液、固体電解質、及び無機固体電解質を含むことができるが、これらに限定されるものではない。使用することができる非水性電解液の例としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ブチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ガンマブチロラクトン、1,2-ジメトキシエタン、2-メチルテトラヒドロフラン、ジメチルスルホキシド、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、スルホラン、メチルスルホラン、及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン等の非プロトン性有機溶媒が挙げられる。
【0173】
有機固体電解質の例としては、ポリエチレン誘導体、ポリエチレンオキサイド誘導体、ポリプロピレンオキサイド誘導体、リン酸エステルポリマー、ポリエステルスルフィド、ポリビニルアルコール、ポリフッ化ビニリデン、及びイオン性解離基を含有するポリマーが挙げられる。
【0174】
無機固体電解質の例としては、Li5NI2、Li3N、LiI、LiSiO4、Li2SiS3、Li4SiO4、LiOH、及びLi3PO4等のリチウム塩の窒化物、ハロゲン化物、及び硫化物が挙げられる。
【0175】
リチウム塩は、好適には、選択した溶媒又は溶媒の混合物に可溶である。好適なリチウム塩の例としては、LiCl、LiBr、LiI、LiClO4、LiBF4、LiBC4O8、LiPF6、LiCF3SO3、LiAsF6、LiSbF6、LiAlCl4、CH3SO3Li、及びCF3SO3Liが挙げられる。
【0176】
電解質が非水性有機溶液である場合、金属イオン電池は、好ましくは、アノードとカソードとの間に挿入されたセパレータを備える。セパレータは、典型的には、高いイオン透過性及び高い機械的強度を有する絶縁材料で形成されている。セパレータは、典型的には、0.01μm~100μmの細孔径を有し、5μm~300μmの厚さを有する。好適な電極セパレータの例としては、マイクロポーラスポリエチレンフィルムが挙げられる。
【0177】
セパレータは、高分子電解質材料で置き換えることができ、そのような場合、高分子電解質材料は、複合アノード層及び複合カソード層の両方中に存在する。高分子電解質材料は、固体高分子電解質又はゲル型高分子電解質とすることができる。
【0178】
第5の態様では、本発明は、本発明の第1の態様を参照して規定された粒子状材料のアノード活物質としての使用を提供する。好ましくは、粒子状材料は、本発明の第2の態様を参照して規定される電極組成物の形態を有し、最も好ましくは、電極組成物は、上記で規定される1つ以上の追加の粒子状電気活性材料を含む。本発明の第5の態様に従って使用される粒子状材料は、本発明の第1の態様に関して好ましい又は任意であると記載された特徴のいずれかを有することができ、態様1-1~態様1-41のいずれかによる粒子状材料とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0179】
【
図1】実施例の、複数回のサイクルにわたる容量保持率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【実施例】
【0180】
以下の例で使用した多孔質炭素骨格C1~C3は、表1に示す特性を有する。
【0181】
【0182】
実施例1-固定床反応器における複合粒子の作製
表1に示す特性を有する粒子状多孔質骨格1.8gを、ステンレス鋼プレート上に、その長さに沿って1mmの一定厚さで配置することによって、シリコン-炭素複合粒子を作製した。次いで、プレートを外径60mmのステンレス鋼管の内部に配置し、ガスの入口ライン及び出口ラインをレトルト炉のホットゾーンに配置した。炉管を室温で30分間、窒素ガスでパージした後、試料温度を450℃~500℃に上昇させた。窒素ガスの流量を、炉管内で少なくとも90秒のガス滞留時間が確保されるように調節し、その速度で30分間維持する。次いで、ガス供給を窒素から、濃度1.25体積%の窒素中のモノシランの混合物に切り替える。モノシランの投入を、反応器圧力を101.3kPa(1atm)に維持して、5時間にわたって行う。投入が完了した後、窒素を使用してシランを炉からパージする間、ガス流量を一定に保つ。炉を窒素下で30分間パージした後、数時間かけて室温まで冷却する。次いで、ガス流を窒素から圧縮空気供給からの空気に切り替えることにより、雰囲気を2時間かけて徐々に空気に切り替える。
【0183】
実施例1に従って作製した複合体は、下記表2に示す特性を有する。
【0184】
実施例2-流動床反応器における複合粒子の作製
シリコン-炭素複合粒子は、内径83mmのステンレス鋼円筒形容器を備えた縦型気泡流動床反応器で作製した。表1に示す特性を有する炭素骨格粒子の粉末を250gの量で反応器に入れる。不活性ガス(窒素)を低流量で反応器に注入して、酸素を除去する。次いで、反応器を400℃~500℃の反応温度に加熱し、窒素で希釈した4v/v%のモノシランガスを、炭素骨格粒子を流動化するのに十分な流量で、目標質量のシリコンを堆積させるのに十分な長さの時間、反応器の底部に供給する。反応器を窒素下で30分間パージした後、数時間かけて室温まで冷却する。次いで、ガス流を窒素から圧縮空気供給からの空気に切り替えることにより、雰囲気を2時間かけて徐々に空気に切り替える。
【0185】
実施例2に従って作製した複合体は、下記表2に示す特性を有する。
【0186】
実施例3-ロータリーチューブ炉反応器における複合粒子の作製
表1に示す特性を有する粒子状多孔質骨格5gを、球状部を備えた石英管(長さ11.4cm)に配置することにより、シリコン-炭素複合粒子を作製した。次いで、石英管を、約15cm×20cm(L×D)の加熱ゾーンを備えたロータリーチューブ炉反応器の内部に配置し、ガスの入口ライン及び出口ラインを炉のホットゾーンから約29cm離れたところに配置する。炉内の石英管は、時計回り、次いで反時計回りに約315°回転し、これにより、多孔質炭素を連続的に移動/回転させる。炉管を室温で30分間、窒素ガスでパージした後、試料温度を450℃~500℃に上昇させた。窒素ガスの流量を、炉管内で少なくとも90秒のガス滞留時間が確保されるように調節し、その速度で30分間維持する。次いで、ガス供給を窒素から、濃度1.25体積%の窒素中のモノシランの混合物に切り替える。モノシランの投入を、反応器圧力を101.3kPa(1atm)に維持して、5時間にわたって行う。投入が完了した後、窒素を使用してシランを炉からパージする間、ガス流量を一定に保つ。炉を窒素下で30分間パージした後、数時間かけて室温まで冷却する。次いで、ガス流を窒素から圧縮空気供給からの空気に切り替えることにより、雰囲気を2時間かけて徐々に空気に切り替える。
【0187】
実施例3に従って作製した複合体は、下記表2に示す特性を有する。
【0188】
【0189】
実施例4-電極の作製
以下の方法を用いて、表1に示す試料及び比較試料の材料から負極被膜(アノード)を作製した。
【0190】
テストコインセルを、上述のように作製したシリコン系複合材料を含む負極を用いて作製した。カーボンブラックSuper P(商標)(導電性炭素)のCMCバインダー分散液をThinky(商標)ミキサーで混合した。この混合物にSi-C複合材料を添加し、Thinky(商標)ミキサーで30分間混合した。次いで、SBRバインダーを添加してCMC:SBR比を1:1とし、Si-C複合材料:CMC/SBR:カーボンブラックの重量比が70%:16%:14%であるスラリーを得た。スラリーをThinky(商標)ミキサーで更に30分間混合し、次いで、厚さ10μmの銅基板(集電体)に被覆させ、50℃で10分間乾燥させた後、110℃で12時間更に乾燥させることにより、負極を形成した。
【0191】
実施例5-フルセルの製造
フルコインセルを、多孔質ポリエチレンセパレータ及びニッケルマンガンコバルト(NMC532)正極と共に、実施例4の電極から切り出した半径0.8cmの円形負極を使用して作製した。正極及び負極は、負極に対する正極の容量比が0.9となるように、バランスの良いペアを形成するように設計した。次いで、3重量%のビニレンカーボネートを含有する7:3のEMC/FEC(エチレンメチルカーボネート/フルオロエチレンカーボネート)溶液中に、1MのLiPF6を含む電解質を、密封前にセルに添加した。
【0192】
フルコインセルを、以下のようにサイクルさせた。4.3Vのカットオフ電圧でC/25のレートで定電流を印加してアノードをリチウム化した。カットオフ電圧に達したら、C/100のカットオフ電流に達するまで、4.3Vの定電圧を印加する。次いで、セルをリチウム化状態で10分間休止させた。次いで、2.75Vのカットオフ電圧で、C/25の定電流でアノードを脱リチウム化する。次いで、セルを10分間休止させた。この初回のサイクルの後、4.3Vのカットオフ電圧でC/2の定電流を印加してアノードをリチウム化し、続いて、C/40のカットオフ電流で4.3Vの定電圧を印加し、休止時間5分とした。次いで、2.75Vのカットオフ電圧でC/2の定電流でアノードを脱リチウム化した。次いで、これを所望のサイクル回数繰り返した。各試料について、充放電容量を1000回目のサイクルまで追跡し、100回目及び300回目のサイクルにおける容量保持率(CR100及びCR300)を求めた。S1、S2、及びS3の場合には、CR500及びCR1000も求めた。このデータを、各試料の初回リチウム化容量、初回脱リチウム化容量、及び初回サイクル損失(FCL)と共に表3に示す。複数回のサイクルにわたる容量保持率は、
図1にグラフでも示す。
【0193】
各サイクルの充電(リチウム化)容量及び放電(脱リチウム)容量を、シリコン-炭素複合材料の単位質量当たりで計算し、容量保持値を、2回目のサイクルの放電容量に対するパーセントとして、各放電容量に対して計算する。初回のサイクル損失(FCL)は、(1-(初回の脱リチウム化容量/初回のリチウム化容量))×100%である。各試料に対して3つのコインセルで平均した値を表3に示す。
【0194】