(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】エレベーター
(51)【国際特許分類】
B66B 1/34 20060101AFI20240131BHJP
B66B 11/02 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
B66B1/34 A
B66B11/02 Z
(21)【出願番号】P 2021541826
(86)(22)【出願日】2019-08-26
(86)【国際出願番号】 JP2019033392
(87)【国際公開番号】W WO2021038701
(87)【国際公開日】2021-03-04
【審査請求日】2022-02-25
【審判番号】
【審判請求日】2023-05-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502250178
【氏名又は名称】ジャパンエレベーターサービスホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104190
【氏名又は名称】酒井 昭徳
(72)【発明者】
【氏名】石田 克史
(72)【発明者】
【氏名】関根 忍
【合議体】
【審判長】平城 俊雅
【審判官】内田 博之
【審判官】吉田 昌弘
(56)【参考文献】
【文献】特許第6480645(JP,B1)
【文献】特開2012-165632(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103803361(CN,A)
【文献】特開2012-28141(JP,A)
【文献】特開2014-236634(JP,A)
【文献】特開平7-153577(JP,A)
【文献】特開2011-97770(JP,A)
【文献】特開2015-77021(JP,A)
【文献】特許第5280506(JP,B2)
【文献】特開2014-142896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-1/52, B66B 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降路内を移動するカゴと、
前記カゴ内に設けられた、広告を含む画像を表示するディスプレイを備えたタブレット型端末装置と、
前記カゴの外側に設けられ、電源と前記タブレット型端末装置とを電気的に接続する電路に設けられた電気回路を備えた基板と、
前記電気回路に接続され、前記カゴの天井付近の内壁面の外側に設けられた伝送部材を介して、前記タブレット型端末装置に対してワイヤレス電力伝送をおこなう電力伝送ユニットと、
を備え、
前記伝送部材は、前記カゴの内壁面を構成する壁部材に対して当該カゴの外側から当該内壁面の外側に固定され、
前記タブレット型端末装置は、前記内壁面における前記伝送部材が設けられた位置と重なる位置に、前記ディスプレイが設けられた面とは反対の面が当該内壁面と対向するように取り付けられ、前記伝送部材からの電力供給を受けることを特徴とするエレベーター。
【請求項2】
昇降路内を移動するカゴと、
前記カゴ内に設けられた、広告を含む画像を表示するディスプレイを備えたタブレット型端末装置と、
前記カゴの外側に設けられ、電源と前記タブレット型端末装置とを電気的に接続する電路に設けられた電気回路を備えた基板と、
前記電気回路に接続され、前記カゴの天井付近の内壁面の
凹部と当該内壁面
の凹部を覆う内装部材との間に設けられた伝送部材を介して、前記タブレット型端末装置に対してワイヤレス電力伝送をおこなう電力伝送ユニットと、
を備え、
前記伝送部材は、前記カゴの内壁面を構成する壁部材に対して当該カゴの内側から当該内壁面の
凹部に収容した状態で固定され、
前記タブレット型端末装置は、前記内壁面における前記伝送部材が設けられた位置と重なる位置に、前記ディスプレイが設けられた面とは反対の面が当該内壁面と対向するように取り付けられ、前記伝送部材からの電力供給を受けることを特徴とするエレベーター。
【請求項3】
前記タブレット型端末装置は、前記伝送部材から給電された電力を受電する受電部材と、前記受電部材が受電した電力を蓄電する蓄電部材と、を備え、前記伝送部材からの給電を受けて前記蓄電部材に蓄電された電力を用いて動作することを特徴とする請求項1または2に記載のエレベーター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、設置後に、給電を要する電気機器をカゴ内に取り付けることができるエレベーターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、設置時に空調装置が取り付けられていないエレベーターのカゴ内に、あらたに空調装置を取り付けるためには、カゴに孔を空け、当該孔にケーブルを通して、当該空調装置に給電していた。また、近年、エレベーターにおいては、カゴが動作していない待機時に、空調装置や照明などのように、給電を要するカゴ内の電気機器の動作を停止するなどして、省電力化を図るようにしたものがあった。
【0003】
関連する技術として、具体的には、従来、たとえば、エレベーターが所定時間戸閉状態である場合に、前記かご内電気機器の運転を停止させ、前記エレベーターが目的階に到着した後に前記かご内電気機器の運転を開始させるようにした技術があった(たとえば、下記特許文献1を参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した従来の技術は、カゴに接続されたテールコードを利用して後付けした電気機器に対して給電をおこなう場合、エレベーターが動作していない待機状態であっても、エレベーターの動作状態にかかわらず常時給電されるため、後付けした電気機器の省電力化が難しいという問題があった。
【0006】
一方、この対策として、後付けした電気機器に、たとえば、エレベーターが待機状態にある場合に省電力モードに切り替えるように動作させる場合、給電のための配線に加えて、エレベーターの制御盤と当該電気機器との通信を確立するための配線を施したり、あるいは、エレベーターの状態を検出するセンサの出力を当該電気機器に入力する配線を施すとともに、当該センサの検出結果に応じて省電力モードに切り替える制御を電気機器におこなわせるプログラムを組み込むなどの対応が別途必要になり、煩雑であるという問題があった。
【0007】
このように、上述した従来の技術は、エレベーターの設置後にカゴ内に取り付けた給電を要する電気機器への給電状態の制御を容易におこなうことが難しいという問題があった。
【0008】
また、上述した従来の技術は、エレベーターの設置後に、監視カメラなどの電気機器をカゴ内に取り付ける場合、カゴに給電用のケーブルを通すための孔を空けなくてはならず、作業が煩雑であって時間がかかるという問題があった。さらに、上述した従来の技術は、エレベーターの設置後にカゴ内に取り付けた電気機器を撤去した場合、ケーブルを通すためにカゴに空けた孔が露出した状態となることで美観を損ねるなどの不具合を回避するため、当該孔を塞ぐ補修作業をおこなわなくてはならず、作業が煩雑であって時間がかかるという問題があった。
【0009】
また、従来、広告などを表示するディスプレイが設置時に取り付けられていないエレベーターにおいてディスプレイを用いた広告をおこなう場合、カゴ内の操作盤を改修する大がかりな作業をおこなったり、カゴ内にディスプレイを後付けするとともに当該ディスプレイに給電するためにカゴに孔を空けたりしなくてはならないため、上記と同様の問題があった。
【0010】
この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置後にカゴ内に取り付けた給電を要する電気機器への給電状態の制御を容易に実現することができるエレベーターを提供することを目的とする。
【0011】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置後に給電を要する電気機器をカゴ内に取り付ける場合の作業時間の短縮および作業者の負担軽減を図ることができるエレベーターを提供することを目的とする。
【0012】
また、この発明は、上述した従来技術による問題点を解消するため、設置後に給電を要する電気機器をカゴ内に取り付ける場合のエレベーターの利用者の利便性を確保することができるエレベーターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決し、目的を達成するため、この発明にかかるエレベーターは、昇降路内を移動するカゴと、前記カゴの外側に設けられ、電源と前記カゴに設けられた負荷とを電気的に接続する電路に設けられた継電器を備えた基板と、前記継電器が設けられた前記電路における当該継電器よりも負荷側に接続され、前記カゴに設けられた伝送部材を介してワイヤレス電力伝送をおこなう電力伝送ユニットと、を備えたことを特徴とする。
【0014】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、前記カゴが所定時間継続して待機状態になった場合に、前記電路を開放する前記継電器よりも負荷側に接続されていることを特徴とする。
【0015】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、電磁誘導方式によるワイヤレス電力伝送をおこなうことを特徴とする。
【0016】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、磁気共鳴方式によるワイヤレス電力伝送をおこなうことを特徴とする。
【0017】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、電界結合方式によるワイヤレス電力伝送をおこなうことを特徴とする。
【0018】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、電波受信方式によるワイヤレス電力伝送をおこなうことを特徴とする。
【0019】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記電力伝送ユニットが、前記電源から供給される電圧を調整するアダプタと、当該アダプタを介して通電される前記伝送部材と、当該伝送部材への通電を制御する制御装置と、を備え、少なくとも前記伝送部材が、前記ACアダプタおよび前記制御装置と別体に設けられていることを特徴とする。
【0020】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記伝送部材が、前記カゴの内装面よりも前記カゴの外側に設けられていることを特徴とする。
【0021】
また、この発明にかかるエレベーターは、上記の発明において、前記伝送部材が、前記カゴの内側に露出していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
この発明にかかるエレベーターによれば、設置後にカゴ内に取り付けた給電を要する電気機器への給電状態の制御を容易に実現することができるという効果を奏する。
【0023】
この発明にかかるエレベーターによれば、設置後に給電を要する電気機器をカゴ内に取り付ける場合の作業時間の短縮および作業者の負担軽減を図ることができるという効果を奏する。
【0024】
また、この発明にかかるエレベーターによれば、設置後に給電を要する電気機器をカゴ内に取り付ける場合のエレベーターの利用者の利便性を確保することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、この発明にかかる実施の形態のエレベーターの構成を示す説明図である。
【
図2】
図2は、カゴおよびカゴに設けられた各部の一例を示す説明図である。
【
図3】
図3は、基板の電気回路の構成を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、伝送コイルの利用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に添付図面を参照して、この発明にかかるエレベーターの好適な実施の形態を詳細に説明する。
【0027】
(エレベーターの構成)
まず、この発明にかかる実施の形態のエレベーターの構成について説明する。
図1は、この発明にかかる実施の形態のエレベーターの構成を示す説明図である。
【0028】
図1において、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、たとえば、ロープ式(トラクション式)のエレベーター100によって実現することができる。エレベーター100は、たとえば、複数階建てのビルなどの建物内に設置される。
【0029】
エレベーター100が備える各部は、制御盤101によって駆動制御される。制御盤101は、エレベーター100が備える各部と接続されており、たとえば、制御盤101からエレベーター100が備える各部に対する信号、いわゆる「下り信号」を出力する。また、制御盤101は、たとえば、エレベーター100が備える各部から制御盤101に対する信号、いわゆる「上り信号」を受け付ける。
【0030】
さらに、制御盤101は、インターネットなどのネットワークを介して、管理サーバコンピュータ150に接続されている。管理サーバコンピュータ150は、監視対象となるエレベーター100が設置されている場所とは異なる、当該エレベーター100が設置されている場所から離れた遠隔地に設置されている。管理サーバコンピュータ150は、たとえば、エレベーター100の保守管理を担う保守管理会社などに設置することができる。
【0031】
制御盤101は、たとえば、管理サーバコンピュータ150に対して、発報用の信号を送信する。制御盤101は、たとえば、エレベーター100において障害を検知した場合や、エレベーター100の運転モードが変化した場合などに、発報用の信号を出力する。また、制御盤101は、管理サーバコンピュータ150から送信される診断動作の実行指示などの各種指示を受信し、受信した指示に応じた下り信号を、エレベーター100が備える各部に対して出力する。
【0032】
診断動作は、制御盤101からエレベーター100が備える各部に対して、当該各部を所定の順序で動作させる信号を出力し、出力した信号にしたがって当該各部が正常に動作したか否かを示す信号を制御盤101から管理サーバコンピュータ150に対して出力することによって実現される。管理サーバコンピュータ150は、たとえば、定期的(たとえば、月の末日が到来するごと)に診断動作の実行指示を出力する。
【0033】
制御盤101と管理サーバコンピュータ150とを、電話回線などの公衆音声網ではなくインターネットを介して接続することにより、地震などの天災発生時などの緊急時に電話回線がパンクすることに起因して、エレベーター100の状況把握が遅延することを回避することができる。これにより、管理サーバコンピュータ150を用いてエレベーター100を遠隔監視する状況において、当該エレベーター100の動作に不具合が生じた場合に迅速な対応をとることができる。
【0034】
制御盤101は、さらに、公衆音声網に接続されていてもよい。公衆音声網は、固定電話網(公衆交換電話網)および携帯電話網を含む。公衆音声網は、電話線を収容する加入者線交換機、加入者線交換機を束ねる中継交換機、ほかの事業者の電話網と接続する関門交換機など、図示を省略する複数の交換機によって構成されている。公衆音声網については、公知の技術であるため説明を省略する。制御盤101を公衆音声網に接続することにより、インターフォンの端末装置(
図2を参照)と管理センターとの音声通信を実現することができる。
【0035】
エレベーター100は、建物における各階床を、鉛直方向に沿って貫通する昇降路(図示を省略する)を備えている。昇降路は、1台のエレベーター100に1つずつ設けられている。昇降路内には、人や物品を搭載するカゴ(乗りカゴ)102が設けられている。カゴ102は、1台のエレベーター100、すなわち、1つの昇降路に1つずつ設けられており、昇降路の方向すなわち鉛直方向に沿って昇降移動する。カゴ102は、図示を省略するカゴ枠によって支持されており、当該枠とともに昇降移動する。
【0036】
昇降路の側面には、カゴ102(カゴ枠)の昇降位置をガイドするガイドレール(図示を省略する)が設けられている。昇降路の底部には、万一、カゴ102が落下して底面に衝突したときの衝撃を和らげる緩衝器103が設けられている。緩衝器103は、バネの弾性力を利用して衝撃を和らげるバネ式の緩衝器であってもよく、油圧抵抗を利用して衝撃を和らげる油入式の緩衝器であってもよい。緩衝器103は、昇降路の天井面にも設けられていてもよい。
【0037】
昇降路における各階床に対応した位置(乗り場)104には、それぞれ扉104aが設けられている。乗り場104に設けられた扉104aは、図示を省略するインターロックなどと称される装置で施錠されている。インターロックは、カゴ102が停止階に到着した状態でカゴ102の扉102aを開閉させるモーターを駆動した場合にのみ、カゴ102の扉102aの開閉機構とかみ合って施錠を解放する。これにより、カゴ102が位置する階床における乗り場104に設けられた扉104aのみを連動して開閉することができる。
【0038】
各乗り場104には、それぞれ、操作盤105が設置されている。操作盤105は、それぞれ、乗り場呼びボタン105a、カゴ102が位置する階床などを表示する表示器105bなどを備えている。また、操作盤105は、それぞれ、操作盤105用の制御基板105cを備えている。各操作盤105は、それぞれが備える制御基板105cを介して制御盤101に接続されている。
【0039】
カゴ102は、ロープ106の一端に連結されている。ロープ106は、つるべ式に滑車(図示を省略する)および巻上機(トラクションマシン)107に架けられ、他端がカウンタウエイト108に連結されている。ロープ106は、具体的には、たとえば、鋼鉄製のワイヤーによって実現することができる。
【0040】
ロープ式のエレベーター100における巻上機107は、たとえば、エレベーター100の最上部に設けられた機械室に設置される。巻上機107は、機械室の有無にかかわらず、エレベーター100における最上部に設けることができる。あるいは、エレベーター100が、機械室がないタイプである場合、巻上機107は、エレベーター100における下部に設けられるものであってもよい。
【0041】
巻上機107は、たとえば、インバーターを介して制御盤101に接続されており、カゴ102を停止させる階床において回転を停止するように制御盤101によって駆動制御される。ロープ式のエレベーター100においては、巻上機107を駆動することによって発生する、ロープ106と滑車との間の摩擦力(トラクション)を利用して、カゴ102を昇降させる。
【0042】
巻上機107は、図示を省略するエンコーダを備えており、制御盤101はエンコーダからの出力信号に基づいて、巻上機107の回転速度や回転位置を判断することができる。エンコーダは、たとえば、アブソリュートエンコーダを用いてもよく、インクリメンタルエンコーダを用いてもよい。
【0043】
カゴ102の底部には、カウンタウエイト108の底部に一端が連結された重量バランス調整用のワイヤーロープ(あるいは、鎖)の他端が連結されている(図示を省略する)。これにより、たとえば、高層建築物に設置されるエレベーター100において、ロープ106の重量に起因して、最上階や最下階の近辺においてカゴ102側とカウンタウエイト108側との重量のバランスの不均衡が生じてロープ106が巻上機107のシーブから滑り落ちてしまうことを確実に防止することができる。
【0044】
また、エレベーター100は、電磁ブレーキ109、調速機(ガバナマシン)110、リミットスイッチ111などを備えている。電磁ブレーキ109は、コイルを備え、制御盤101によって駆動制御されて当該コイルに通電することにより発生する電磁力を利用して、巻上機107の回転を停止する。電磁ブレーキ109は、巻上機107の回転を停止した状態を保持することができる。
【0045】
電磁ブレーキ109は、停電などによって電源の供給が停止した場合に、巻上機107の回転を制止する。電磁ブレーキ109は、具体的には、たとえば、停電時などコイルへの通電が切れたときにスプリングの力で動作して巻上機107の回転を制止する無励磁作動型の電磁ブレーキ109を用いることができる。
【0046】
調速機110は、カゴ102の速度超過を検出する。調速機110は、たとえば、ガバナロープ110a、ガバナプーリー110b、回転錘(図示を省略する)などを備えた遠心調速機によって実現することができる。このような調速機110において、ガバナロープ110aは、カゴ102の動作と連動する。ガバナプーリー110bは、ガバナロープ110aの動作に連動して回転する。
【0047】
回転錘は、ガバナプーリー110bの回転速度、すなわち、ガバナプーリー110bの回転に起因する遠心力の大きさに応じて動作する。具体的に、回転錘は、ガバナプーリー110bの回転速度が速い場合にガバナプーリー110bの外周側に開くように動作し、ガバナプーリー110bの回転速度が遅い場合にガバナプーリー110bの内周側に閉じるように動作する。
【0048】
リミットスイッチ111は、巻上機107に対する電源の供給/遮断を切り替えるスイッチレバー(図示を省略する)を備えている。スイッチレバーは、平時は巻上機107に対して電源を供給する位置に位置付けられており、調速機110の回転錘に付勢された場合に、巻上機107に対する電源の供給を遮断する位置に変位する。
【0049】
調速機110の回転錘は、カゴ102の昇降速度が、定格速度に対して一定速以上の速度になった場合に、スイッチレバーが巻上機107に対する電源の供給を遮断する位置に変位するように、スイッチレバーを付勢する。これにより、カゴ102に速度超過が発生したときに、巻上機107の動作を停止し、カゴ102を停止させることができる。
【0050】
さらに、エレベーター100は、図示を省略する非常停止装置を備えていてもよい。非常停止装置は、カゴ102の動作とガバナロープ110aの動作とが異なる場合、すなわち、ガバナロープ110aが停止しているにもかかわらずカゴ102が動作している場合に、カゴ102の動作を強制的に停止させる。非常停止装置は、公知の各種の技術を用いて容易に実現することができるため、説明を省略する。
【0051】
カゴ102には、操作盤102bが設けられている。操作盤102bは、各種の操作ボタン201や、カゴ102が位置する階床などを表示する表示器を備えている(
図2を参照)。また、カゴ102には、扉102aを開閉させるモーター、扉開閉センサ、障害物検出装置、荷重センサなどの各種のセンサ(
図3を参照)やブザー(図示を省略する)などが設けられている。
【0052】
カゴ102の上部には、カゴ上ボックス112が設けられている。カゴ上ボックス112は、たとえば、カゴ102の天井板の上、すなわち、カゴ102の外側に設けられる。カゴ上ボックス112には、電源回路や制御回路などを備えた電気回路を構成する基板が収容されている(
図3を参照)。
【0053】
操作盤102b、扉102aを開閉させるモーター、扉開閉センサ、障害物検出装置、荷重センサなどの各種のセンサやブザーなど、カゴ102に設けられた各種の負荷は、カゴ上ボックス112が収容する基板の電気回路に電気的に接続されている。具体的には、カゴ102に設けられた各種の負荷は、たとえば、一端が当該負荷に接続された電線の他端を、電気回路が備える端子に接続することによって、電気回路に電気的に接続されている。カゴ102に設けられた各種の負荷と、電気回路との間には、リレーや変圧器が介在していてもよい。電気回路については、説明を後述する(
図3を参照)。
【0054】
扉102aを開閉させるモーターは、正逆方向に回転可能であって、たとえば、扉102aを開く際に正方向に回転し、扉102aを閉める際に逆方向に回転する。扉102aを開閉させるモーターは、たとえば、カゴ102の天井板の上に設けられている。扉開閉センサは、扉102aの開閉状態を検出する。扉開閉センサは、たとえば、扉102aや扉104aが開状態にあるか閉状態にあるかに応じて出力が変化するマイクロスイッチや光電センサなどによって実現することができる。
【0055】
障害物検出装置は、対をなす扉102aの間における人などの物体の挟まりを検知する。具体的に、障害物検出装置は、たとえば、対をなす扉102aの間に設けられて、扉102aの開き方向に突出するように付勢されたセーフティーシューや、当該セーフティーシューが扉102aの内側に押し込まれた場合に、対をなす扉102aの間における物体の挟まりを検知したことを示す信号を出力するマイクロスイッチなどによって構成することができる。
【0056】
荷重センサは、カゴ102における積載荷重を検出する。具体的に、荷重センサは、たとえば、ロードセルによって実現することができる。ロードセルは、たとえば、カゴ102の底部とカゴ枠との間に設けられる。ブザーは、荷重センサの検出結果に応じてブザー音を出力する。ブザーは、カゴ102における積載荷重(質量)が、当該カゴ102にかかる定格積載荷重(質量)などの所定の質量を超過した場合にブザー音を出力する。
【0057】
(カゴ102およびカゴ102に設けられた各部の一例)
つぎに、カゴ102およびカゴ102に設けられた各部の一例について説明する。
図2は、カゴ102およびカゴ102に設けられた各部の一例を示す説明図である。
【0058】
図2において、カゴ102に設けられた操作盤102bは、上記のように、カゴ102の行先階を指定する行先階ボタンや、扉102aの開閉を指示する扉開閉ボタンなどを含む操作ボタン201を備えている。また、操作盤102bは、カゴ102が位置する階床などを表示する表示器202を備えている。操作盤102bは、たとえば、カゴ102の内側の壁面であって、カゴ102の扉102aの近傍に設けられている。
【0059】
操作盤102bは、操作盤102b用の制御基板(
図3を参照)を備えている。操作盤102b用の制御基板は、たとえば、操作盤102bにおいて、エレベーター100の利用者などによる操作ボタン201に対する入力操作を受け付けるごとに、当該入力操作に応じた呼び信号を生成し、生成した呼び信号を出力する。また、操作盤102b用の制御基板は、表示器202を制御して、カゴ102が位置する階床を表示したり、移動方向を表示したりする。
【0060】
カゴ102には、インターフォンの端末装置203が設けられている。インターフォンの端末装置203は、呼出ボタンとマイクとスピーカーとを備えている(いずれも図示を省略する)。インターフォンの端末装置203におけるマイクやスピーカーは、
図2に示すように、操作盤102bに一体的に組み込まれていてもよい。インターフォンの端末装置203は、たとえば、カゴ上ボックス112が収容する基板の電気回路を介して制御盤101に接続されている。
【0061】
また、カゴ102には、カゴ102の内部の空間を照明する照明器具204や換気装置(図示を省略する)が設けられている。照明器具204は、たとえば、カゴ102の天井に設けることができ、具体的には、電球(白熱灯)や、蛍光灯、LED(Light Emitting Diode)など公知の各種の光源を用いることができる。
【0062】
換気装置は、カゴ102に設けられて、カゴ102の内部と外部とを連通するスリット(図示を省略する)を介して、カゴ102内の空気を換気するファン(図示を省略する)を備えている。照明器具204や換気装置などの負荷も、カゴ102に設けられた各種の負荷と同様に、カゴ上ボックス112が収容する基板の電気回路に接続されている。
【0063】
さらに、カゴ102には、ワイヤレス電力伝送(Wireless Power Transfer、Contactless Power Transmission)における伝送コイル205が設けられている。伝送コイル205は、この発明にかかる実施の形態の伝送部材を実現する。ワイヤレス給電は、電気機器(
図4を参照)に対して、コネクタや金属の接点を介することなく電力を伝送(送電)する技術であって、非接触電力送電あるいは無線給電などとも称される。
【0064】
伝送コイル205は、カゴ102の内装面よりもカゴ102の外側に設けられている。具体的に、伝送コイル205は、たとえば、カゴ102の一部を構成する壁部材や天板に、カゴ102の外側から固定される。伝送コイル205は、たとえば、カゴ102の一部を構成する壁部材や天板の一部に凹部を設け、当該凹部内に収容した状態で固定してもよい。
【0065】
伝送コイル205を収容する凹部は、カゴ102の一部を構成する壁部材や天板に対して、カゴ102の外側に開口するように設けてもよく、カゴ102の内側に開口するように設けてもよい。カゴ102の内側に開口する凹部内に伝送コイル205を収容することにより、カゴ102を構成する金属板の影響を受けることなく、伝送コイル205による給電をおこなうことができる。
【0066】
カゴ102の内側に開口する凹部内に伝送コイル205を収容する場合、カゴ102の内側から凹部を覆うようにして化粧フィルムを設ける。これにより、伝送コイル205に通電するための貫通孔をカゴ102に設ける場合にも、伝送コイル205とともに当該貫通孔が化粧フィルムによって覆われるため、伝送コイル205の位置を目立ちにくくして、カゴ102内の美観を損なうことを防止できる。
【0067】
(基板の電気回路の構成)
つぎに、基板の電気回路の構成について説明する。
図3は、基板の電気回路の構成を示すブロック図である。
図3において、基板の電気回路300は、AC電源(商用電源)に接続されている。AC電源は、たとえば、単相変圧器の中性点から引き出される中性線と2本の電圧線とを合わせた3線を用いて単相交流電力を送る単相3線式により、送電網から変電所を通して引込線に接続された引込線取付点から供給される。3線のうち中性線といずれか一方の電圧線との電圧差は100V、2本の電圧線の電圧差は200Vであるため、エレベーター100において100Vおよび200Vを利用することができる。
【0068】
電気回路300は、基板301に搭載された電源回路310や制御回路320を備えている。電源回路310は、変圧器311、整流回路312、平滑回路313、定電圧回路314を備えている。変圧器311は、AC電源から入力されるAC電圧を、所定のAC電圧に変換する。変圧器311は、AC電源から入力されるAC電圧を、あらかじめ設定された所定のAC電圧に変換する。整流回路312は、変圧器311によって変圧されたAC電圧をDC電圧に変換する。
【0069】
平滑回路(フィルタ)313は、整流回路312によって変換された、電圧に振幅のあるDC電源を直線的に平滑化する。平滑回路313は、このような、整流回路312によって変換されたDC電源が含むAC成分(リップル)による波形の歪みを平滑化する。定電圧回路314は、平滑回路313から出力されるDC電源を監視して、当該DC電源と基準となる電圧とを比較して差が生じる場合に、トランジスタの出力電圧を制御する。これにより、平滑回路313から出力されるDC電源が、電源回路310に接続される負荷や環境に応じて変化するという不安定な要素を緩和することができ、出力するDC電源の電圧を一定に保つことができる。
【0070】
カゴ102に設けられた各負荷は、直接、あるいは、リレー(継電器)331、インバーター332、整流回路333、変圧器334などを介して、それぞれAC電源に接続されている。リレー331は、電磁石とスイッチ(接点機構)とを備え、電磁石のコイルに通電することにより生じる電磁吸引力を利用してスイッチの開閉をおこなう。インバーター332は、コンバーター回路332aと、コンデンサ332bと、インバーター回路332cと、を備えている。これにより、AC電源を直接、あるいは、リレー331、インバーター332などを介して各負荷に供給することができる。あるいは、整流回路333によって変換したDC電源を、各負荷に供給してもよい。
【0071】
電気回路300が備える複数のリレー331は、一部あるいは全部が、カゴ102が所定時間継続して待機状態になった場合に、電路を開放するように動作する。具体的に、このような動作をおこなうリレー331には、たとえば、照明装置204や換気装置などのように、カゴ102内に利用者がいない場合は不要な構成部が接続される。
【0072】
エレベーター100においては、たとえば、カゴ102が移動していない状態によって待機状態を実現することができる。この場合、リレー331は、カゴ102がいずれかの階床に停止した後、所定時間移動しない場合に、電路を開放するように動作する。所定時間の計時の起算点は、カゴ102がいずれかの階床に停止した後に、開いた扉102aを閉じた時点としてもよい。
【0073】
なお、エレベーター100においては、扉102aを閉じてから規定時間、乗り場呼びボタン105aや操作ボタン201に対する入力操作がない場合に、あらかじめ設定された所定の階床にカゴ102を移動させるものがある。リレー331は、このような、乗り場呼びボタン105aや操作ボタン201に対する入力操作に応じた移動ではなくても、カゴ102が所定の階床に移動してから所定時間移動しない場合に、電路を開放するように動作する。
【0074】
リレー331は、電路を開放した状態において、乗り場呼びボタン105aや操作ボタン201に対する入力操作を受け付けた場合に、当該電路を閉じるように動作する。これにより、照明装置204や換気装置が動作を再開し、カゴ102は入力操作に応じた階床に移動する。
【0075】
AC電源、あるいは、AC電源を変圧したDC電源からの電源供給を受ける負荷は、具体的には、たとえば、扉102aを開閉させるモーター340、扉開閉センサ・障害物検出装置・荷重センサなどの各種のセンサ341やブザーなどの負荷によって実現することができる。また、AC電源、あるいは、AC電源を変圧したDC電源からの電源供給を受ける負荷は、リレー331やインバーター332を含んでいてもよい。
【0076】
制御回路320は、制御盤101やカゴ102に設けられた各負荷と接続されている。制御回路320は、制御盤101から出力される下り信号に応じてカゴ102に設けられた各負荷を駆動制御したり、カゴ102に設けられた各負荷からの出力信号に応じた上り信号を、制御盤101に出力したりする。具体的に、制御回路320は、それぞれバスによって接続される入力端子321と、出力端子322と、CPU(Central Processing Unit)323と、メモリ324と、通信I/F(InterFace)325と、によって構成することができる。
【0077】
入力端子321は、制御回路320に接続される各負荷とCPU323とを接続するハードウエアインターフェースであって、制御回路320に接続された各負荷から出力される信号の入力を受け付け、入力を受け付けた信号をCPU323に出力する。また、入力端子321は、制御盤101と接続されている。
【0078】
具体的に、入力端子321は、たとえば、操作盤102b用の制御基板301から出力される呼び信号や、扉開閉センサなどの各種のセンサ341から出力される信号など、上り信号の入力を受け付ける。また、具体的に、入力端子321は、制御盤101から出力される下り信号の入力を受け付け、入力を受け付けた信号をCPU323に出力する。
【0079】
出力端子322は、制御回路320に接続された各負荷とCPU323とを接続するハードウエアインターフェースであって、CPU323から出力される信号を制御回路320に接続された各負荷に出力する。また、出力端子322は、制御盤101と接続されており、各負荷から出力された信号に基づいてCPU323から出力される信号を、制御盤101に出力する。
【0080】
具体的に、出力端子322は、たとえば、制御盤101から出力された制御用の下り信号に基づいてCPU323から出力された信号を、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aを開閉させるモーター340に対して出力する。カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aを開閉させるモーター340は、インバーター332を介して、制御回路320に接続されていてもよい。これにより、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aを滑らかに開閉させることができる。
【0081】
また、具体的に、出力端子322は、たとえば、扉開閉センサなどの各種のセンサ341から出力される信号に基づいてCPU323から出力された信号を、制御盤101に対して出力する。また、具体的に、出力端子322は、たとえば、リレー331やインバーター332を介して、照明器具204と接続されている。
【0082】
CPU323は、カゴ102に設けられて、制御回路320に接続された各負荷を制御する。メモリ324は、制御盤101との通信や、カゴ102に設けられた各負荷の制御に用いるプログラムやデータなどを記憶している。CPU323は、たとえば、入力端子321を介して入力された信号に基づいて、メモリ324に記憶されたプログラムやデータなどを用いた演算処理をおこなう。また、CPU323は、たとえば、演算処理の結果に基づく信号を、出力端子322を介して、制御盤101やカゴ102に設けられた各負荷に出力する。
【0083】
具体的に、CPU323は、たとえば、制御盤101から出力され入力端子321を介して受け付けた下り信号に基づいて、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aを開閉させるモーター340を制御する制御信号を出力端子322を介して出力することにより、当該モーター340を制御する。これにより、モーター340を駆動して、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aを開閉させることができる。
【0084】
また、具体的に、CPU323は、たとえば、制御盤101から出力され入力端子321を介して入力を受け付けた信号に基づいて、カゴ102が位置する階床やカゴ102の走行方向(上昇中か下降中か)を表示器202において表示させる信号を生成し、生成した信号を、出力端子322を介して、操作盤102b用の制御基板301に対して出力する。これにより、表示器202において、カゴ102が位置する階床やカゴ102の走行方向を表示させることができる。
【0085】
また、具体的に、CPU323は、たとえば、扉開閉センサから出力され入力端子321を介して入力を受け付けた信号に基づいて、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aの開閉状態を示す信号を生成し、生成した信号を、出力端子322を介して制御盤101に対して出力する。これにより、制御盤101において、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aの開閉状態を認識することができ、カゴ102の扉102aや乗り場104の扉104aの開閉状態が確実に閉まっている状態で巻上機107を駆動することができる。
【0086】
また、具体的に、CPU323は、たとえば、インバーター332への出力信号に基づくモーター340の動作状態に基づいて、カゴ102が所定時間継続して動作していない状態を待機状態とし、待機状態が所定時間継続したと判断した場合、出力端子322を介してリレー331やインバーター332に対して制御信号を出力し、操作盤102b、照明器具204、換気装置への電力の供給を停止して、節電状態とする。
【0087】
エレベーター100が待機状態であるか否かは、たとえば、扉開閉センサから出力され入力端子321を介して入力を受け付けた信号に基づいて判断してもよい。あるいは、モーター340の動作状態および扉開閉センサから出力される信号に基づいて、エレベーター100が待機状態であるか否かを判断してもよい。
【0088】
通信I/F325は、CPU323と制御盤101とのインターフェースをつかさどり、CPU323と制御盤101との間におけるデータの入出力を制御する。通信I/F325は、たとえば、制御盤101から出力される下り信号をCPU327に出力したり、CPU327から出力される信号を上り信号として制御盤101に出力したりする。
【0089】
電気回路300における電路には、複数の端子302が設けられている。複数の端子302のうちの1つには、電力伝送ユニット303が接続されている。電力伝送ユニット303は、電気回路300において、AC電源をカゴ102に設けられた負荷に供給する電路のうちのリレー331が設けられた電路において、リレー331よりも負荷側に接続されている。電力伝送ユニット303は、リレー331が設けられた電路において、リレー331を間にして、AC電源とは反対側に接続されている。
【0090】
より具体的に、電力伝送ユニット303は、待機状態が所定時間継続した場合に該当する電路を開放するように動作するリレー331よりも負荷側に接続されている。これにより、待機状態が所定時間継続した場合は、電力伝送ユニット303を介した給電が停止される。
【0091】
電力伝送ユニット303は、伝送コイル205と、ACアダプタ304と、制御装置305と、を備えている。ACアダプタ304は、AC電源から供給される電圧を調整する。制御装置305は、伝送コイル205への通電を制御する。伝送コイル205は、通電されることによって磁束を発生させる。
【0092】
電力伝送ユニット303において、ACアダプタ304および制御装置305は、伝送コイル205と一体に設けられていてもよく、それぞれが配線によって接続された別体であってもよい。ACアダプタ304および制御装置305と、伝送コイル205とを別体とすることにより、カゴ102の内側に開口する凹部内に伝送コイル205を収容する場合に、カゴ102の内側に確保する凹部の大きさを小さくすることができ、カゴ102内の美観を損なうことを防止できる。
【0093】
電力伝送ユニット303は、たとえば、伝送コイル205と受電側の電気機器が備える受電コイルとの間で発生する誘導磁束を利用する、電磁誘導方式によってワイヤレス電力伝送をおこなう。あるいは、電力伝送ユニット303は、たとえば、磁気共鳴方式、電界結合方式、電波受信方式などの方式によってワイヤレス電力伝送をおこなうものであってもよい。
【0094】
磁気共鳴方式の電力伝送ユニット303は、伝送コイル205(伝送部材)と受電コイルとを共振器として利用し、伝送コイル205への通電により発生した磁場の振動と同じ周波数で受電コイルを共振(磁界共鳴)させることによってワイヤレス電力伝送をおこなう。電界結合方式の電力伝送ユニット303は、送電側の電極(伝送部材)と受電側の電極とを対面させてキャパシタを形成し、送電側の電極に高周波数の電気を流して高調波電流を発生させることによってワイヤレス電力伝送をおこなう。電波受信方式の電力伝送ユニット303は、送電機(伝送部材)によって電磁波に変換して出力した電流を、受電側においてアンテナを介して電磁波を受信し、整流回路で直流電流に変換する、いわゆる電磁界を利用してワイヤレス電力伝送をおこなう。
【0095】
電力伝送ユニット303は、該当するリレー331が設けられた電路の端子302に直接結線されているものに限らず、当該リレー331よりも負荷側において当該電路から分岐する電力線に接続されていてもよい。このような電力線に電力伝送ユニット303を接続する場合、当該電力線に分岐用のコネクタを設け、当該コネクタに電力伝送ユニット303を接続することができる。
【0096】
(伝送コイル205の利用例)
つぎに、伝送コイル205の利用例について説明する。
図4は、伝送コイル205の利用例を示す説明図である。伝送コイル205は、電力によって動作する電気機器に対して給電をおこなう。この実施の形態において、電気機器は、電気機器が設置されていない状態であってもエレベーター100の動作に影響を与えない機器によって実現することができる。
【0097】
具体的に、電気機器は、伝送コイル205から給電された電力を受電する受電コイル、および、受電コイルが受信した電力を充電する二次電池を備え、伝送コイル205からの給電を受けて二次電池に充電された電力を用いて動作する。あるいは、電気機器は、伝送コイル205から給電された電力を即時動作に供するものであってもよい。
【0098】
図4に示すように、電気機器401は、広告などを表示するディスプレイを備えたタブレット端末によって実現することができる。エレベーター100の設置時に、伝送コイル205をカゴ102に配置しておくことにより、エレベーター100の設置後に、電気機器401を容易に設置することができる。
【0099】
電気機器401は、タブレット端末などディスプレイを備えているものに限らず、たとえば、カゴ102の内側を監視する監視カメラや、カゴ102内の空気を換気する後付けのファンによって実現してもよい。監視カメラは、タブレット端末が備えるレンズ401aおよび撮像機能を利用してもよい。近年、防犯上の観点から各階床の乗り場104に監視カメラを設置しているエレベーター100が存在している。このようなエレベーター100においては、カゴ102が停止する予定の階床の画像を、カゴ102内のタブレット端末に表示することができる。
【0100】
電気機器401は、さらに、マイクやスピーカーを備えていてもよい。これにより、電気機器401を設置するだけで、ディスプレイにおける画像の表示にあわせて音声を出力したり、画像や音声を出力しながらカゴ102内の音声を取得することができる。このような電気機器401は、ディスプレイの表示面側にタッチパッドが積層されたタッチパネルを備えていてもよい。
【0101】
このように構成することにより、たとえば、地震などに起因してカゴ102が停止した場合に、保守管理会社が管理サーバコンピュータ150を介してカゴ102内の状況を把握することができる。また、管理サーバコンピュータ150から制御盤101に対して保守管理会社のオペレーターの画像や音声などの情報を送信し、ディスプレイを備えた端末装置を介して当該オペレーターの画像や音声を出力することができる。これにより、カゴ102内に閉じ込められた利用者を安心させることができる。
【0102】
あるいは、電気機器401は、後付けの照明装置によって実現してもよい。これにより、カゴ102内の照度を設置時の照度よりも高くしたり、異なる照明装置を取り付けてカゴ102内の印象を変えたりすることが容易に実現できる。
【0103】
上記のように、電力伝送ユニット303は、カゴ102が所定時間継続して待機状態になった場合に電路を開放するリレー331よりも負荷側に接続されているため、エレベーター100が待機状態に移行すると同時に、電気機器401への給電を停止することができる。また、待機状態から復帰すると同時に、電気機器401への給電を再開することができる。電気機器401は、たとえば、電源スイッチを常時ON状態としておくことで、給電状態に応じて動作させることができる。
【0104】
これにより、電気機器401への給電状態を制御する回路などをあらたに用意することなく、エレベーター100の設置後にカゴ102内に設置した電気機器401への給電状態を、照明器具204や換気装置などの既設の負荷と同様に制御することができ、エレベーター100の設置後に電気機器401をカゴ102内に設置する場合にも、エレベーター100における待機時の省電力化を容易かつ確実に実現することができる。
【0105】
なお、上述した実施の形態においては、カゴ102の内側に開口する凹部内に伝送コイル205を収容する場合、カゴ102の内側から凹部を覆うようにして化粧フィルムを設ける例について説明したが、これに限るものではない。カゴ102の内側に開口する凹部内に伝送コイル205を収容する場合、凹部を開放可能に閉塞するカバーを設けてもよい。これにより、伝送コイル205に対する悪戯を防止することができる。
【0106】
また、カバーの開閉をおこなうことによって、メンテナンスなどの伝送コイル205に対する作業を容易かつ確実におこなうことができる。これによって、伝送コイル205に対する作業をおこなう作業者の負担軽減を図ることができる。
【0107】
凹部を開放可能に閉塞するカバーを設ける場合、さらに、当該カバーを解錠可能に施錠するロック機構を設けることが好ましい。ロック機構は、鍵を差し込むことによって解錠/施錠する構成であってもよく、CPU323の制御によって解錠/施錠する構成であってもよい。CPU323の制御によってカバーを解錠/施錠するロック機構は、具体的には、たとえば、ソレノイドロックによって実現することができる。
【0108】
CPU323によりロック機構を制御することによってカバーを解錠/施錠する構成においては、所定の条件が整った場合にのみ、ロック機構によるカバーの施錠を解除(解錠)するようにしてもよい。具体的に、たとえば、ソレノイドロックにおいては、所定の条件が整った場合にのみ、ソレノイドロックが備えるソレノイドへの通電のON/OFFを切り替えることにより、所定の条件が整った場合にのみロック機構によるカバーの施錠を解除(解錠)することができる。
【0109】
より具体的には、CPU323は、たとえば、操作盤102bに対して所定の操作がおこなわれた場合や、エレベーター100の状態や管理サーバコンピュータ150から所定の指示に応じて制御盤101からロック解除を指示する下り信号を受け付けた場合にのみ、ソレノイドへの通電のON/OFFを切り替えて、ロック機構によるカバーの施錠を解除することができる。
【0110】
また、カバーにロック機構を設ける場合、カバーを開く方向に付勢するバネなどの付勢部材をさらに設け、ロック機構によるロックの解除に応じてカバーが開くようにしてもよい。これにより、伝送コイル205に対する作業が可能な状態であることを、容易かつ確実に知らせることができる。
【0111】
このように、CPU323の制御によって施錠/解錠するロック機構をカバーに設けることにより、伝送コイル205をエレベーター100の利用者の手が容易に届く高さに設ける場合にも、伝送コイル205に対する悪戯などを防止することができる。利用者の手が容易に届く高さに伝送コイル205を設けることにより、たとえば、地震に起因して、利用者がカゴ102内にいる状態でエレベーター100の動作が停止した際などの非常時に、利用者の携行するスマートフォンやタブレット端末などの電気機器401に給電することができる。これにより、利用者は安心して救助を待つことができ、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0112】
また、上述した実施の形態においては、カゴの内装面よりもカゴ102の外側に伝送コイル205を配置するようにしたが、これに限るものではない。伝送コイル205は、たとえば、カゴ102の内壁面と同一面内に位置するように配置されていてもよく、カゴ102の内側に突出するようにして配置してもよい。また、伝送コイル205は、カゴ102の内側に露出していてもよい。
【0113】
伝送コイル205は、カゴ102の内側に露出した状態で設ける場合、
図2に示すように、カゴ102内の高い位置に配置することが好ましい。このように、カゴ102内に露出した伝送コイル205をカゴ102内の高い位置に配置することにより、カゴ102の搭乗者が携行する長物(たとえば、傘やスキー板など)がぶつかるなどして伝送コイル205が損傷することを防止でき、また、子供などによる悪戯をしにくくすることができる。
【0114】
また、上述した実施の形態においては、1つのカゴ102に1つの伝送コイル205が設けられている例について説明したが、これに限るものではない。伝送コイル205は、1つのカゴ102に複数設けられていてもよい。1つのカゴ102に複数の伝送コイル205を設ける場合、当該複数の伝送コイル205は、伝送コイル205の給電範囲などに応じて、複数箇所に分散して配置することが好ましい。
【0115】
これにより、複数の利用者が同時に、各自の携行するスマートフォンやタブレット端末などの電気機器401に給電することができる。これにより、複数の利用者がカゴ102内にいる状態でエレベーター100の動作が停止した際などの非常時にも、各利用者を安心させ、救助を待たせることができ、利用者の利便性の向上を図ることができる。
【0116】
以上説明したように、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、昇降路内を移動するカゴ102と、カゴ102の外側に設けられ、AC電源とカゴ102に設けられた負荷とを電気的に接続する電路に設けられたリレー331を備えた基板301と、リレー331が設けられた電路におけるリレー331よりも負荷側に接続され、カゴ102に設けられた伝送コイル205を介してワイヤレス電力伝送をおこなう電力伝送ユニット303と、を備えたことを特徴としている。
【0117】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、ワイヤレス給電をおこなう電力伝送ユニット303を備え、当該電力伝送ユニット303における伝送コイル205がカゴ102に設けられているため、エレベーター100の設置後に、カゴ102に給電用のケーブルを挿通するための孔を別途空けることなく電気機器401に対して給電することができる。
【0118】
これにより、たとえば、ディスプレイに動画を含む広告を表示するタブレット端末や、常時稼動させておくことが好ましい防犯カメラなどのように、電池では電力が不足してしまう電気機器401を、エレベーターの設置後であっても、カゴ102内の美観を損なうことなく、容易かつ速やかに設置することができ、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。
【0119】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電気機器401をカゴ102内に設置する作業をおこなった後は、電源を確保するための格別な作業をおこなうことなく、電気機器401を使用することができる。これにより、エレベーター100の設置後に、給電を要する電気機器401を取り付ける場合の作業時間の短縮を図り、エレベーター100の利用者、作業者の負担軽減を図ることができる。
【0120】
そして、作業時間の短縮を図ることにより、作業のためにエレベーター100が使用できない時間を短くすることができる。これにより、エレベーター100の利用者の利便性が低下することを抑制して、利用者の利便性を確保することができる。
【0121】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、カゴ102に給電用のケーブルを挿通するための貫通孔を別途空けることがないため、電気機器401を撤去する際に、電気機器401を撤去した後のカゴ102内の美観を確保することができる。
【0122】
また、ワイヤレス給電により電気機器401に対して給電することにより、金属製の接点をなくすことができるので、防水性能を確保しやすくなり、エレベーター100の利用者の安全性を確保するとともに、雨天時などにおけるカゴ102内の湿度にかかわらず、安定した給電をおこなうことができる。
【0123】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電力伝送ユニット303が、リレー331が設けられた電路における当該リレー331よりも負荷側に接続されているため、電気機器401への給電状態を制御する回路などをあらたに用意することなく、既設のリレー331を制御することによって、カゴ102内に設置した電気機器401への給電状態を制御することができる。これにより、エレベーター100の設置後にカゴ102内に取り付けた給電を要する電気機器401への給電状態の制御を容易に実現することができる。
【0124】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、電力伝送ユニット303が、カゴ102が所定時間継続して待機状態になった場合に、電路を開放するリレー331よりも負荷側に接続されていることを特徴としている。
【0125】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電力伝送ユニット303が、カゴ102が所定時間継続して待機状態になった場合に電路を開放するリレー331よりも負荷側に接続されているため、照明器具204や換気装置に給電するリレー331などに対する制御と同様の制御をおこなうことによって、カゴ102内に設置した電気機器401への給電状態を制御することができる。
【0126】
これにより、電気機器401への給電状態を制御する回路などをあらたに用意することなく、エレベーター100の設置後にカゴ102内に設置した電気機器401への給電状態を、照明器具204や換気装置などの既設の負荷と同様に制御することができ、エレベーター100の設置後に電気機器401をカゴ102内に設置する場合にも、エレベーター100における待機時の省電力化を容易かつ確実に実現することができる。
【0127】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、電力伝送ユニット303が、電磁誘導方式によるワイヤレス電力伝送をおこなうことを特徴としている。
【0128】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電力伝送ユニット303が電磁誘導方式により給電することで、エレベーター100の設置後にカゴ内に設置した電気機器401に対して、簡素な構成によって容易に給電することができる。また、構成が簡素な電磁誘導方式により給電することで、給電にかかる設備の設置にかかるコストを抑えることができる。
【0129】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電力伝送ユニット303が電磁誘導方式により給電することで、電力伝送ユニット303による給電可能な範囲を容易に制限することができる。これにより、エレベーター100の管理者などによって正規に設置された電気機器401以外の電気機器がカゴ内において不正に給電を受けることを、容易かつ確実に防止することができる。具体的には、たとえば、小型カメラなどの電気機器を不正に設置して盗撮したり、個人用のスマートフォンに給電を受けたりすることを、容易かつ確実に防止することができる。
【0130】
この発明のエレベーター100においては、電力伝送ユニット303が、磁気共鳴方式(磁界共鳴方式)により給電するものであってもよい。
【0131】
エレベーター100において、電力伝送ユニット303が磁気共鳴方式によって給電することにより、伝送コイル205と電気機器401側の受電コイルとの対向距離を大きくとることができるので、伝送コイル205からの給電が可能な範囲を広く確保することができる。これにより、カゴ102内における電気機器401の設置位置の自由度を確保することができる。
【0132】
また、エレベーター100において、電力伝送ユニット303が磁気共鳴方式によって給電することにより、伝送コイル205の中心位置と受電コイルとの中心位置とが多少ずれても給電を実現することができるので、これによってもカゴ102内における電気機器401の設置位置の自由度を確保することができる。
【0133】
また、エレベーター100において、電力伝送ユニット303が磁気共鳴方式によって給電することにより、高い伝送効率を確保することができ、これによってもカゴ102内における電気機器401の設置位置の自由度を確保することができる。
【0134】
このように、エレベーター100において、電力伝送ユニット303が磁気共鳴方式によって給電することにより、カゴ102内における電気機器401の設置位置の自由度を確保し、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。
【0135】
また、この発明のエレベーター100においては、電力伝送ユニット303が、電界結合方式により給電するものであってもよい。
【0136】
エレベーター100において、電力伝送ユニット303が、位置ずれの影響を受けにくく、高い伝送効率を確保することができる電解結合方式によって給電することにより、伝送コイル205に対する電気機器401の設置位置の自由度を確保することができる。これにより、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。
【0137】
また、エレベーター100において、伝送コイル205が、発熱が少ない電解結合方式によって給電することにより、伝送コイル205の発熱に起因して、カゴ102の天井や側壁などの内装面が劣化することを抑制することができる。これにより、エレベーター100設置後のカゴ102内への電気機器401の設置の有無にかかわらず、カゴ102内の美観を確保することができる。
【0138】
また、エレベーター100において、伝送コイル205が、電界結合方式により給電することにより、1つの伝送コイル205に対して複数の電気機器401に給電することが可能になる。これにより、伝送コイル205の数より多い台数の電気機器401をカゴ102内に設置する場合にも、カゴに給電用のケーブルを挿通するための孔を別途空けることなく、ワイヤレス給電における伝送コイル205を介して電気機器401に対して給電することができる。
【0139】
これにより、エレベーター100の設置後であっても、カゴ102内の美観を損なうことなく、容易かつ速やかに設置することができ、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。また、エレベーター100の設置後に設置した電気機器401の台数にかかわらず、電気機器401を撤去した後のカゴ102内の美観を確保することができる。
【0140】
また、この発明のエレベーター100においては、伝送コイル205が、電波受信方式により給電するものであってもよい。
【0141】
エレベーター100において、伝送コイル205が、電力の伝送距離が長く、電波が壁面で反射する電波受信方式によって給電することにより、伝送コイル205からの給電が可能な範囲を広く確保することができる。また、伝送コイル205と電気機器401側の受電コイルとの位置関係の制限をなくし、カゴ内における電気機器401の設置位置の自由度を確保することができる。これにより、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。
【0142】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、電力伝送ユニット303が、AC電源から供給される電圧を調整するACアダプタ304と、当該ACアダプタ304を介して通電される伝送コイル205と、伝送コイル205への通電を制御する制御装置305と、を備え、少なくとも伝送コイル205がACアダプタ304および制御装置305と別体に設けられていることを特徴としている。
【0143】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、電力伝送ユニット303における伝送コイル205をACアダプタ304および制御装置305と別体に設けることにより、電力伝送ユニット303の設置にかかる自由度を高めることができる。すなわち、カゴ102の形状や大きさ、エレベーター100の規模などに応じて、電力の伝送に適しカゴ102に近接する位置に伝送コイル205を配置し、ACアダプタ304および制御装置305を基板301の近傍あるいは基板301に組み込んだりすることができる。
【0144】
これにより、伝送コイル205に比べて点検や交換などのメンテナンスの機会が多いことが想定されるACアダプタ304および制御装置305を容易に取り扱うことができ、メンテナンスにかかる作業者の負担軽減を図ることができる。また、ACアダプタ304および制御装置305のメンテナンスを、基板301のメンテナンスと同時におこなうことができる。
【0145】
また、この発明にかかる実施の形態のエレベーター100は、伝送コイル205が、カゴの内装面よりもカゴ102の外側に設けられていることを特徴としている。
【0146】
この発明にかかる実施の形態のエレベーター100によれば、カゴ102の内装面よりもカゴの外側に伝送コイル205を設けることにより、たとえば、カゴ102の搭乗者が携行する長物がぶつかるなどして伝送コイル205が損傷することを防止できる。
【0147】
また、カゴ102の内装面よりもカゴ102の外側に伝送コイル205を設けることにより、伝送コイル205の位置を目立ちにくくすることができる。これにより、エレベーター設置後のカゴ102内への電気機器401の設置の有無にかかわらず、カゴ内の美観を確保することができる。
【0148】
また、この発明のエレベーター100においては、伝送コイル205が、カゴ102の内側に露出していてもよい。
【0149】
エレベーター100において、カゴ102の内側において伝送コイル205を露出させることにより、伝送コイル205の位置を分かりやすく案内することができ、電気設備の設置位置を迅速に決定することができる。これにより、エレベーター100の設置後に、給電を要する電気機器401をカゴ102内に容易かつ速やかに設置することができ、電気機器401を設置する作業者の負担軽減を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0150】
以上のように、この発明にかかるエレベーターは、給電を要する電気機器を設置することができるエレベーターに有用であり、特に、エレベーターの設置後に給電を要する電気機器を設置することができるエレベーターに適している。
【符号の説明】
【0151】
100 エレベーター
102 カゴ
112 カゴ上ボックス
205 伝送コイル
300 電気回路
301 基板
302 端子
303 電力伝送ユニット
304 ACアダプタ
305 制御装置
331 リレー
401 電気機器