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特許7429272アスファルト混合物用フィラー及びその製造方法、アスファルト混合物及びその製造方法、動的安定性改質剤及び動的安定性改質方法、並びに、耐水性改質剤及び耐水性改質方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-30
(45)【発行日】2024-02-07
(54)【発明の名称】アスファルト混合物用フィラー及びその製造方法、アスファルト混合物及びその製造方法、動的安定性改質剤及び動的安定性改質方法、並びに、耐水性改質剤及び耐水性改質方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 26/26 20060101AFI20240131BHJP
   C04B 18/16 20230101ALI20240131BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240131BHJP
   C08K 3/34 20060101ALI20240131BHJP
   C08L 95/00 20060101ALI20240131BHJP
   E01C 7/18 20060101ALI20240131BHJP
【FI】
C04B26/26 Z
C04B18/16
C08K3/013
C08K3/34
C08L95/00
E01C7/18
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2022157224
(22)【出願日】2022-09-30
【審査請求日】2022-09-30
【審判番号】
【審判請求日】2023-04-18
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000000240
【氏名又は名称】太平洋セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】兵頭 彦次
(72)【発明者】
【氏名】桐野 裕介
(72)【発明者】
【氏名】山崎 学
(72)【発明者】
【氏名】福田 康昭
(72)【発明者】
【氏名】小須田 和貴
(72)【発明者】
【氏名】野中 涼太郎
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】瀧澤 佳世
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-251521(JP,A)
【文献】特開2001-18000(JP,A)
【文献】特開平11-171632(JP,A)
【文献】特開2005-35258(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スファルト混合物用フィラーの製造方法であって、
コンクリートの混練後から前記コンクリート由来のコンクリートスラッジが乾燥されるまで24時間以上の期間を経た前記コンクリートスラッジを乾燥する工程(1)、
前記工程(1)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上の期間、大気雰囲気下に静置する工程(2)、及び、
前記工程(2)で得られた含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を、石灰石粉末及び/又は火成岩の鉱物質粉末と混合する工程(3)を含む、
製造方法。
【請求項2】
前記工程(1)において、前記期間は、24時間以上、2週間以内である、請求項に記載の製造方法。
【請求項3】
前記工程(2)において、前記期間は、24時間以上、1カ月以下である、請求項又はに記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、動的安定性と耐水性に優れるアスファルトコンクリートを提供可能なアスファルト混合物用フィラー及びその製造方法、それを用いたアスファルト混合物及びその製造方法、アスファルト混合物用動的安定性改質剤及び動的安定性改質方法、並びに、アスファルト混合物用耐水性改質剤及び耐水性改質方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
これまでに、道路舗装に用いられるアスファルトコンクリート(以後、本明細書中、「アスコン」と略す場合もある。)には、動的安定度(ホイールトラッキング試験値)に優れて轍掘れの少ない動的安定性に優れるものや、良好な残留安定度(水浸マーシャル安定度試験値)を有して耐水性に優れるものが望まれてきた。しかしながら、地球温暖化による平均気温の上昇や降水量の増加に伴って、アスコンの動的安定性や耐水性にはさらなる向上が望まれている。
【0003】
アスコンの動的安定性を高める技術としては、例えば、特定のナフテン系減圧残油と特定のプロパン脱歴アスファルトとを配合して、動的安定度が500回/mm以上、マーシャル安定度が4.9kN以上であるアスファルト組成物が提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、アスコンの耐水性を高める技術としては、例えば、特定のポリエステル樹脂からなる、カルボン酸及びアルコール成分由来の構成単位からなるアスファルト改質剤が記載されている(たとえば、特許文献2参照)。
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2の方法では、特定の材料や薬剤を用いるものであり、コストや汎用性の観点からも依然改良の余地がある。
【0006】
一方、建設現場等で打設される生コンクリートは、通常、生コンクリート工場からアジテータ車によって建設現場まで搬送される。搬送された生コンクリートは建設現場で全量を使い切ることが理想であるが、必要量よりも若干の余裕を持って発注量が設定されるなどの事情もあって、打設されないままの生コンクリートが定常的に発生してしまう。戻りコン又は残コンと称されるこの打設されない生コンクリートは、一般に、生コンクリート工場に戻されるが、その量は生コンクリート工場において製造される生コンクリート全体の1体積%~3体積%に達する。
【0007】
戻りコン又は残コンは、篩選別や比重選別で骨材の分離回収が行われ、主としてセメントペースト及び細骨材の微粒分からなるコンクリートスラッジとなる。また、アジテータ車や、プラントミキサー、ホッパーなどの生コンクリート工場の設備清掃作業からもコンクリートスラッジは発生する。さらに、コンクリート製品工場などのコンクリートを使用するその他の現場から発生する分をも含めると、コンクリートスラッジの発生量は全国で約130万トン(乾燥重量)/年と見積もられている。
【0008】
コンクリートスラッジは、産業廃棄物上は汚泥に分類され、強アルカリ性のために管理型処分場での最終処分が必要とされるが、その処理にかかるコストも大きく、埋立処分場の延命の観点からも、その有効利用が求められている。
【0009】
産業廃棄物であるコンクリートスラッジのアスコン分野への利用技術として、乾燥した生コンスラッジを粉砕、分級して、アスファルト混合物用フィラーとする技術が知られている。例えば、生コンスラッジを乾燥後に0.075mmふるいを通過させて微粉末状乾燥スラッジを、乾燥スラッジ:フィラー=1:4の割合でフィラー(0.075mmふるいを通過する石灰石又は火成岩の鉱物質粉末)と配合して用いたアスファルト混合物が提案されている(たとえば、特許文献3参照)。また、例えば、天日乾燥又は強制乾燥若しくはその併用によって水分含有率を1%以下とした生コンスラッジを、粒度200メッシュ以下に粉砕、分級して、アスファルト混合物用フィラーとする技術が提案されている(たとえば、特許文献4参照)。ただし、特許文献4には、かかるアスファルト混合物用フィラーを用いたアスコンの品質に関する具体的なデータは記載されていない。
【0010】
特許文献3及び4の方法は、コンクリートスラッジの有効利用を主目的とするものであり、得られるアスファルト混合物を用いたアスコンの品質は、コンクリートスラッジを含まない従来品と同等レベルである。
【0011】
また、マーシャル安定度で良好な品質を示した特許文献3のアスコンは、生コンスラッジの乾燥物をフィラーとして使用しているが、その量はフィラー全体の2割であり、コンクリートスラッジのリサイクル推進の観点からは使用量に関する改善が望まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2014-237754号公報
【文献】特開2022-093064号公報
【文献】特開平10-251521号公報
【文献】特開2005-035258号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、このような事情に照らし、コンクリートスラッジを多量に使用しつつも、動的安定性と耐水性に優れたアスファルト混合物、及びそれに用いるアスファルト混合物用フィラーを提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、アスファルト混合物の製造方法、及びアスファルト混合物用フィラーの製造方法を提供することを目的とする。
【0015】
また、本発明は、アスファルト混合物用動的安定性改質剤、及びそれを用いたアスファルト混合物の動的安定性改質方法を提供することを目的とする。
【0016】
また、本発明は、アスファルト混合物用耐水性改質剤、及びそれを用いたアスファルト混合物の耐水性改質方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、鋭意検討の結果、以下に示すアスファルト混合物用フィラー等を新規に見出し、上記各方法により上記目的を達成できることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0018】
すなわち、本発明は以下のアスファルト混合物用フィラーを提供する。
【0019】
[1]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む、アスファルト混合物用フィラー。
【0020】
本発明によれば、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含むことにより、コンクリートスラッジをアスファルト混合物用フィラーとしてリサイクルしつつも、動的安定性と耐水性に優れたアスコンを提供することができる。
【0021】
[2]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を34質量%以上含む、アスファルト混合物用フィラー。
【0022】
本発明によれば、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉をアスファルト混合物用フィラーとして、アスファルト混合物に2質量%以上含ませることにより、動的安定性と耐水性に優れたアスコンを提供することができる。
【0023】
また、本発明は以下のアスファルト混合物を提供する。
【0024】
[3]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を2質量%以上含む、アスファルト混合物。
【0025】
本発明によれば、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を2質量%以上含むことにより、動的安定性と耐水性に優れるアスコンを得ることが可能となる。
【0026】
[4]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を5質量%以上含む、アスファルト混合物。
【0027】
本発明によれば、アスファルト混合物中のフィラーの全量を含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉とすることができるため、コンクリートスラッジの有効利用が促進され、最終処分場の延命に寄与することが可能となる。
【0028】
また、本発明は以下のアスファルト混合物用フィラーの製造方法を提供する。
【0029】
[5]
[1]に記載のアスファルト混合物用フィラーの製造方法であって、
コンクリートの混練後から前記コンクリート由来のコンクリートスラッジが乾燥されるまで24時間以上の期間を経た前記コンクリートスラッジを乾燥する工程(1)、
前記工程(1)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上の期間、大気雰囲気下に静置する工程(2)、及び、
前記工程(2)で得られた含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を、石灰石粉末及び/又は火成岩の鉱物質粉末と混合する工程(3)を含む、
製造方法。
【0030】
本発明によれば、アスファルト混合物用フィラーとして要求される粉体性状やハンドリング性状等が付与される程度において、用いる乾燥処理の方法及び条件、並びに、用いる粉砕・分級処理の方法及び条件を限定することなく、含水率が5質量%~15質量%であるコンクリートスラッジ乾燥粉を簡便に得ることが可能であり、そのコンクリートスラッジ乾燥粉を通常のフィラー材料と混合することにより、上述のアスファルト混合物用フィラーを簡便に得ることが可能となる。
【0031】
[6]
前記工程(1)において、前記期間は、24時間以上、2週間以内である、[5]に記載の製造方法。
【0032】
本発明によれば、上記構成を有することにより、保管されたコンクリートスラッジケーキ等の乾燥や炭酸化によるセメント粒子の細孔構造の変化を避けることが可能となる。
【0033】
[7]
前記工程(2)において、前記期間は、24時間以上、1カ月以下である、[5]又は[6]に記載の製造方法。
【0034】
本発明によれば、上記構成を有することにより、長期に静置すると炭酸化反応が進行してコンクリートスラッジ乾燥粉の比表面積の変化を避けることが可能となる。
【0035】
また、本発明は以下のアスファルト混合物の製造方法を提供する。
【0036】
[8]
[1]又は[2]に記載のアスファルト混合物フィラーを、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(4)を含む、
[3]又は[4]に記載のアスファルト混合物の製造方法。
【0037】
本発明によれば、動的安定性と耐水性に優れたアスファルト混合物を簡便に得ることが可能となる。
【0038】
また、本発明は以下のアスファルト混合物用動的安定性改質剤を提供する。
【0039】
[9]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む、アスファルト混合物用動的安定性改質剤。
【0040】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の動的安定性改質剤として、例えば、アスファルト混合物の動的安定性を向上させることが可能となる。
【0041】
また、本発明は以下のアスファルト混合物の動的安定性改質方法を提供する。
【0042】
[10]
[9]に記載の動的安定性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(5)を含む、
アスファルト混合物の動的安定性改質方法。
【0043】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物の動的安定性改質を簡便に行うことが可能となり、例えば、アスファルト混合物の動的安定性を向上させることが可能となる。
【0044】
また、本発明は以下のアスファルト混合物用耐水性改質剤を提供する。
【0045】
[11]
含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む、アスファルト混合物用耐水性改質剤。
【0046】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の耐水性改質剤として、例えば、アスファルト混合物の耐水性を向上させることが可能となる。
【0047】
また、本発明は以下のアスファルト混合物の耐水性改質方法を提供する。
【0048】
[12]
[11]に記載の耐水性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(6)を含む、
アスファルト混合物の耐水性改質方法。
【0049】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物の耐水性改質を簡便に行うことが可能となり、例えば、アスファルト混合物の耐水性を向上させることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0050】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明するが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではない。
【0051】
<アスファルト混合物用フィラー>
本発明のアスファルト混合物用フィラーは、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む。
【0052】
本発明のアスファルト混合物用フィラーは、上記構成を有することにより、コンクリートスラッジをアスファルト混合物用フィラーとしてリサイクルしつつも、動的安定性と耐水性に優れたアスコンを提供することができる。
【0053】
上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率は、目的や用途等に応じて、例えば、下限値は、5質量%、5.5質量%、6質量%、6.5質量%、7質量%、8質量%、又は、9質量%等であってもよい。また、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率は、目的や用途等に応じて、例えば、上限値は、15質量%、14.5質量%、14質量%、13.5質量%、13質量%、12質量%、11質量%、又は、10質量%等であってもよい。上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率が5質量%未満では、動的安定性と耐水性に優れたアスコンを得ることができなくなる。また、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率が15質量%よりも多い場合、ダマが生じ易くなる等によってアスファルト混合物用フィラーのハンドリング性状が低下するため、アスコンの安定製造が困難になる。
【0054】
ここで、本明細書における、コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率とは、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」の方法に準じ、コンクリートスラッジ乾燥粉の105~110℃で恒量させた質量を、乾燥処理前のコンクリートスラッジ乾燥粉の質量で除した値をいう。
【0055】
アスファルト混合物用フィラーは、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含むが、上記フィラー中、上記コンクリートスラッジ乾燥粉は34質量%~100質量%とすることができ、例えば、目的や用途等に応じて、上記コンクリートスラッジ乾燥粉は、40質量%~100質量%、又は、50質量%~100質量%であってもよい。
【0056】
また、本発明のアスファルト混合物用フィラーの含水率は、上記コンクリートスラッジ乾燥粉と併用するその他フィラーの含水率及び混合割合に応じて、例えば、下限値は、2質量%、3質量%、4質量%、5質量%、6質量%、7質量%、8質量%、又は、9質量%等であってもよい。また、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率は、目的や用途等に応じて、例えば、上限値は、15質量%、14質量%、13質量%、12質量%、11質量%、又は、10質量%等であってもよい。上記アスファルト混合物用フィラーの含水率が2質量%未満では、動的安定性と耐水性に優れたアスコンを得ることができなくなる。また、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率が15質量%よりも多い場合、ダマが生じ易くなる等によってアスファルト混合物用フィラーのハンドリング性状が低下するため、アスコンの安定製造が困難になる。
【0057】
また、本明細書における、アスファルト混合物用フィラーの含水率とは、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」の方法に準じ、アスファルト混合物用フィラーの105~110℃で恒量させた質量を、乾燥処理前のアスファルト混合物用フィラーの質量で除した値をいう。
【0058】
また、本発明のアスファルト混合物用フィラーは、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥紛のみからなる場合、上記コンクリートスラッジ乾燥紛の含水率がアスファルト混合物用フィラーの含水率にもなる。
【0059】
本発明のアスファルト混合物用フィラーは、例えば、後述のアスファルト混合物用フィラーの製造方法により、簡便に製造することが可能である。
【0060】
例えば、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の含水率を5質量%~15質量%するために、コンクリートの混練からコンクリートスラッジが乾燥されるまでの時間が24時間以上のコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上大気雰囲気下に静置することでなし得る。
【0061】
<アスファルト混合物用フィラーの製造方法>
本発明のアスファルト混合物用フィラーの製造方法は、
コンクリートの混練後から前記コンクリート由来のコンクリートスラッジが乾燥されるまで24時間以上の期間を経た前記コンクリートスラッジを乾燥する工程(1)、
前記工程(1)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上の期間、大気雰囲気下に静置する工程(2)、及び、
前記工程(2)で得られた含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を、石灰石粉末及び/又は火成岩の鉱物質粉末を混合する工程(3)を含む。
【0062】
本発明によれば、アスファルト混合物用フィラーとして要求される粉体性状やハンドリング性状等が付与される程度において、用いる乾燥処理の方法及び条件、並びに、用いる粉砕・分級処理の方法及び条件を特に限定することなく、含水率が5質量%~15質量%である上述のコンクリートスラッジ乾燥粉を簡便に得ることが可能であり、そのコンクリートスラッジ乾燥粉を通常のフィラー材料と混合することにより、上述のアスファルト混合物用フィラーを簡便に得ることが可能となる。
【0063】
上記方法では、コンクリートの混練後から前記コンクリート由来のコンクリートスラッジが乾燥されるまで24時間以上の期間を経た前記コンクリートスラッジを乾燥する工程(1)、を含む。
【0064】
以下、上記工程(1)における、コンクリートの混練後から前記コンクリート由来のコンクリートスラッジが乾燥されるまでの時間を24時間以上とする理由(24時間以上の期間を経る理由)を説明するが、下記メカニズムの場合にのみに権利範囲を限定するものではない。
【0065】
コンクリートスラッジ乾燥粉が水分を5質量%~15質量%含有するためには、比表面積を大きくする必要があるところ、コンクリートスラッジに含まれているセメント粒子の水和反応を進行させることによって、セメント粒子にナノメートル-マイクロメートルサイズの細孔構造が発達することによると推察している。
【0066】
そして、このように発達した細孔構造を有して比表面積が増大したセメント粒子を含むコンクリートスラッジ乾燥粉には、水分が吸着しやすくなり、多量の水分を含有することができる。
【0067】
ここで、本発明では、セメント粒子の細孔構造を適度に発達させるために、セメント粒子の水和反応時間で調整する方法を見出したものである。
【0068】
例えば、後述するコンクリートスラッジ乾燥粉への吸湿工程をも経たコンクリートスラッジ乾燥粉の含水率を5質量%~15質量%とするには、原料となるコンクリートスラッジ中のセメント粒子を24時間以上水和反応させることで可能となることを見出した。
【0069】
コンクリートスラッジの処理方法や管理方法は、生コン工場やコンクリート製品工場が備える戻りコン・残コン処理-工場排水処理の設備構成等で異なるが、分級処理されて骨材が除かれたコンクリートスラッジをフィルタープレス等で脱水処理して、例えば、含水率が40質量%~60質量%のスラッジケーキとするのが一般的である。
【0070】
上記スラッジケーキに含まれるセメント粒子は、水と接触するコンクリートの混練時から水和反応が始まり、スラッジケーキ内においてもケーキに含まれる水分によって水和反応は継続していると解される。
【0071】
一方、コンクリートスラッジ中のセメント粒子の水和反応を停止させるには、コンクリートスラッジに含まれている水分を除去すればよく、コンクリートスラッジ乾燥粉を得るための乾燥処理が、水和反応を停止させる操作に相当しうる。すなわち、コンクリートスラッジ中のセメント粒子を24時間以上水和反応させるには、コンクリートスラッジの元となるコンクリートの混練からコンクリートスラッジの乾燥処理までの時間(期間)を24時間以上にすればよい。
【0072】
より具体的には、一般的なコンクリートスラッジの排出工程等によると、例えば、コンクリートスラッジの乾燥処理をスラッジケーキが得られた翌日以降に行えば、コンクリートスラッジ中のセメント粒子の水和反応時間を24時間以上にすることができる。
【0073】
コンクリートスラッジ中のセメント粒子の水和反応時間の上限は、保管されたコンクリートスラッジケーキ等の乾燥や炭酸化によるセメント粒子の細孔構造の変化を避けるために、上記期間は、例えば2週間以内、好ましくは1週間以内であることが好ましい。
【0074】
また、コンクリートスラッジの元となるコンクリートの調配合によって、セメント粒子の水和反応の進行度は異なり、また、コンクリートスラッジ乾燥粉の製造には粉砕・分級工程を含むので、得られるコンクリートスラッジ乾燥粉の水分吸着に関与する表面構造に係る比表面積は、コンクリートスラッジ中のセメント粒子の水和反応時間で一義的に制御できるものではないが、アスファルト混合物用フィラーの含水率への水和反応時間の寄与は大きいと推察される。
【0075】
また、上記方法では、前記工程(1)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上の期間、大気雰囲気下に静置する工程(2)を含む。
【0076】
以下、上記工程(2)における、前記工程(1)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上の期間、大気雰囲気下に静置する理由を説明するが、下記メカニズムの場合にのみに権利範囲を限定するものではない。
【0077】
上述のように、コンクリートの混練からコンクリートスラッジが乾燥されるまでの時間(期間)を24時間以上としたコンクリートスラッジ乾燥粉は、含有するセメント粒子が適当に水分吸着に有効な細孔構造を有するために水分の吸着が生じやすい。したがって、このコンクリートスラッジ乾燥粉を大気雰囲気下に静置することで、特に特殊な操作等を要することなく、大気中の湿分が吸着され、含有される。
【0078】
また、上記コンクリートスラッジ乾燥粉の静置状態において、大気からの水分供給が飽和して、水分含有量が安定するには24時間あればよい。
【0079】
ここで、大気雰囲気下での静置する工程における時間(期間)とは、乾燥処理によるコンクリートスラッジ乾燥粉の確保からアスファルト混合物用フィラーとしてアスコン製造工場に提供されるまでの時間である。
【0080】
コンクリートスラッジ乾燥粉の大気雰囲気下での静置時間の上限に特に制限はないが、長期に静置するとセメント水和反応物等の炭酸化反応が進行してコンクリートスラッジ乾燥粉の比表面積が変化するため、上記期間は、例えば、好ましくは1か月以内、より好ましくは3週間以内である。
【0081】
以上より、コンクリートの混練からコンクリートスラッジが乾燥されるまでの時間(期間)が24時間以上のコンクリートスラッジ乾燥粉を、水濡れしない状態で24時間以上大気雰囲気下に静置することで、得られるアスファルト混合物用フィラーの含水率を5質量%~15質量%することができる。
【0082】
さらに本発明の製造方法に関する優れた特徴として、アスファルト混合物用フィラーとして要求される粉体性状やハンドリング性状等が、得られるコンクリートスラッジ乾燥粉に付与される程度において、コンクリートスラッジ乾燥粉を得るための乾燥処理の方法及び条件、並びに、得られたコンクリートスラッジ乾燥粉への粉砕・分級処理の方法及び条件は限定する必要が無く、コンクリートスラッジの乾燥処理及び粉砕・分級処理に一般的に用いられるいずれの方法を使用してもよいことが挙げられる。
【0083】
さらに、上記方法では、前記工程(2)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を、
通常のフィラー材料と混合する工程(3)を含む。
【0084】
上述のように、前記工程(2)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉を通常のフィラー材料と混合して、本発明のアスファルト混合物用フィラー得る。
【0085】
なお、前記工程(3)は省略してもよい。その場合、本発明のアスファルト混合物用フィラーは、前記工程(2)で得られたコンクリートスラッジ乾燥粉から成る。
【0086】
本発明のアスファルト混合物用フィラーにおいて、上記コンクリートスラッジ乾燥粉と混合する通常のフィラー材料は、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」の「2.品質」に規定される石灰石粉のほか、石灰岩以外の岩石を粉砕した石粉、消石灰、セメント、回収ダスト及びフライアッシュなどを用いることができる。それら通常のフィラー材料の水分量は、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」の2.3項に準拠して、1.0質量%以下ものが使用される。
【0087】
本発明のアスファルト混合物用フィラーの製造において、コンクリートスラッジ乾燥粉と通常のフィラー材料の混合方法は、特に限定されるものでなく、汎用の混合装置を用いたり、粉砕・分級装置を用いてコンクリートスラッジ乾燥粉と通常のフィラー材料の粉砕・分級を行いながら混合すればよい。
【0088】
また、後述する本発明のアスファルト混合物を製造する際、アスファルトや骨材と一緒に、コンクリートスラッジ乾燥粉と通常のフィラー材料を直接に混合することもできる。
【0089】
上記のとおり、本発明のアスファルト混合物用フィラーの製造において、コンクリートスラッジ乾燥粉と通常のフィラー材料の混合割合は、上記アスファルト混合物用フィラー中、コンクリートスラッジ乾燥粉は34質量%~100質量%とすることができ、例えば、目的や用途等に応じて、コンクリートスラッジ乾燥粉は、40質量%~100質量%、又は、50質量%~100質量%であってもよい。
【0090】
<アスファルト混合物>
本発明のアスファルト混合物は、上記アスファルト混合物用フィラーを含む。
【0091】
本発明のアスファルト混合物は、前記アスファルト混合物用フィラーを、例えば、2質量%以上含むことにより、動的安定性と耐水性に優れるアスコンを得ることが可能となる。
【0092】
本発明のアスファルト混合物は、上記コンクリートスラッジ乾燥粉を2質量%以上含むことが好ましく、使用目的や用途に応じて、例えば、2.5質量%以上、3質量%以上、3.5質量%以上、4質量%以上、4.5質量%以上、5質量%以上、5.5質量%以上、6質量%以上、6.5質量%以上、7質量%以上、7.5質量%以上、8質量%以上等であってもよい。
【0093】
上記コンクリートスラッジ乾燥粉は、上記アスファルト混合物に2質量%以上含有させることでアスコンの動的安定性と耐水性を向上させることが可能であり、含有量を増加させる程さらに動的安定性と耐水性を向上させる。
【0094】
本発明のアスファルト混合物への本発明のアスファルトフィラーの使用量は、アスファルト混合物中のコンクリートスラッジ乾燥粉の使用量が上記となるようにする。
【0095】
また、後述のとおり、一般的に、アスファルト混合物中のフィラー量は5質量%前後とされる中、アスファルト混合物用フィラーの全量(ないしほぼ全量)を上記コンクリートスラッジ乾燥粉とすることで、コンクリートスラッジの有効利用が促進され、最終処分場の延命に寄与することが可能となる。
【0096】
以下、アスコン(アスファルトコンクリート)を説明する。アスコンは、温度が高い状態で骨材とアスファルトを混ぜ合わせ接合させたものであり、一般には、90質量%程度を粗骨材と細骨材が、5質量%程度をフィラー(石粉)が、残りの5質量%程度をアスファルトが占める。
【0097】
また、本発明のアスファルト混合物用フィラーを用いたアスコンは、アスファルトの配合量を減じる程、動的安定性と耐水性が向上する。
【0098】
そして、フィラーの全量を本発明のアスファルト混合物用フィラーとした場合、その使用量はアスコンの5質量%以上となる。これによってコンクリートスラッジのリサイクルを推進することができる。
【0099】
ここで、アスコンの動的安定性とは、アスファルト混合物の流動に対する抵抗性であって、動的安定性が低いとアスファルト舗装での轍掘れ等が生じやすくなる。指標値には、通常、公益社団法人日本道路協会「舗装試験法便覧」の「ホイールトラッキング試験方法」に準じて得られる、供試体の轍掘れ変形量1mmあたりの試験輪の通過回数(回/mm)を示す、動的安定度が用いられる。
【0100】
一般的に、轍掘れを生じさせないためには動的安定度は500回/mm以上が好ましいとされるところ、本発明のアスファルト混合物用フィラーを用いることで、600回/mm以上の動的安定度を有するアスコンを提供することができる。また、使用目的や用途に応じて、動的安定度は700回/mm以上、800回/mm以上にもし得る。
【0101】
次に、アスコンの耐水性について説明する。アスコンは、水に濡れた状態で繰り返し荷重を受けると、アスコン中の骨材粒子表面のアスファルト被膜の剥がれが生じるために耐久性が大きく低下する。
【0102】
アスファルト混合物の耐水性に関する評価試験として、水浸マーシャル安定度試験が用いられており、60℃のお湯に48時間の水浸前後のマーシャル安定度から求められる残留安定度が一般的に用いられている。公益社団法人日本道路協会編舗装施工便覧には、残留安定度の望ましい値として75%以上と記されているところ、本発明のアスファルト混合物用フィラーを用いたアスコンは、60℃のお湯への浸漬時間を168時間に延長した厳しい試験条件であっても80%以上の優れた残留安定度を得ることができる。
【0103】
<アスファルト混合物の製造方法>
本発明のアスファルト混合物の製造方法は、
上記アスファルト混合物フィラーを、アスファルトの汎用材料、すなわち、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(4)を含む。
【0104】
本発明によれば、動的安定性と耐水性に優れたアスファルト混合物を簡便に得ることが可能となる。
【0105】
上記アスファルト混合物フィラーを、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(4)は、公知の手法を適宜用いて行うことができる。例えば、各材料を順次又は同時に混合させる手法を用いることができる。
【0106】
上記骨材は、例えば、粗骨材、細骨材等が含まれる。上記骨材は、公知のものを適宜用いることができる。上記骨材として、例えば、粗骨材では砕石、玉砂利、砂利、鉄鋼スラグ、再生骨材等を、細骨材では天然砂、砕砂、人工砂、スクリーニングス等をあげることができる。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0107】
上記骨材は、上記アスファルト混合物中、使用目的や用途に応じて、例えば、80質量%以上含まれ、82質量%~95質量%、85質量%~95質量%、87質量%~95質量%、89質量%~95質量%等であってもよい。
【0108】
上記アスファルトは、特に限定するものではないが、道路舗装で汎用されている、ストレートアスファルト、及び、ポリマー改質アスファルトやセミブローンアスファルトなどの改質アスファルトである。これらは単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0109】
上記アスファルトは、上記アスファルト混合物中、使用目的や用途に応じて、例えば、10質量%以下含まれ、1~9質量%、2~8質量%、3~7質量%、4~6質量%等であってもよい。
【0110】
<アスファルト混合物用動的安定性改質剤>
本発明のアスファルト混合物用動的安定性改質剤は、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む。
【0111】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の動的安定性改質剤として、例えば、アスファルト混合物の動的安定性の向上させることが可能となる。
【0112】
また、上述のアスファルト混合物用フィラーの欄の記載は、アスファルト混合物用動的安定性改質剤においても適宜準用する。
【0113】
なお、アスファルト混合物用動的安定性改質剤とは、アスファルト混合物の動的安定性の向上や低下抑制、性能維持期間の向上や低下抑制等の作用を有する剤を含む。
【0114】
<アスファルト混合物用の動的安定性改質方法>
本発明のアスファルト混合物の動的安定性改質方法は、
上記動的安定性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(5)を含む。
【0115】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の動的安定性改質を簡便に行うことが可能となり、例えば、アスファルト混合物の動的安定性を向上させることが可能となる。
【0116】
上記動的安定性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(5)は、公知の手法を適宜用いて行うことができる。例えば、各材料を順次又は同時に混合させる手法を用いることができる。
【0117】
なお、アスファルト混合物の動的安定性改質とは、アスファルト混合物の動的安定性の向上や低下抑制、性能維持期間の向上や低下抑制等を含む。
【0118】
<アスファルト混合物用耐水性改質剤>
本発明のアスファルト混合物用耐水性改質剤は、含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む。
【0119】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の耐水性改質剤として、例えば、アスファルト混合物の耐水性を向上させることが可能となる。
【0120】
また、上述のアスファルト混合物用フィラーの欄の記載は、アスファルト混合物用耐水性改質剤においても適宜準用する。
【0121】
なお、アスファルト混合物用耐水性改質剤とは、アスファルト混合物の耐水性の向上や低下抑制、性能維持期間の向上や低下抑制等の作用を有する剤を含む。
【0122】
<アスファルト混合物の耐水性改質方法>
本発明のアスファルト混合物の耐水性改質方法は、
上記耐水性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(6)を含む。
【0123】
本発明によれば、上記構成を有することにより、アスファルト混合物用の耐水性改質を簡便に行うことが可能となり、例えば、アスファルト混合物の耐水性を向上させることが可能となる。
【0124】
上記耐水性改質剤を、骨材、及び、アスファルトと混合させる工程(6)は、公知の手法を適宜用いて行うことができる。例えば、各材料を順次又は同時に混合させる手法を用いることができる。
【0125】
なお、アスファルト混合物用の耐水性改質とは、アスファルト混合物の耐水性の向上や低下抑制、性能維持期間の向上や低下抑制等を含む。
【実施例
【0126】
本発明について、以下に実施例をあげて説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されない。
【0127】
〔実施例1〕
アスファルト混合物用フィラーとして、表1に示すコンクリートスラッジ乾燥粉由来の試料(S-A~S-D)4種類と石粉(石灰石微粉末)を1種類準備した。
【0128】
表1に、上記アスファルト混合物用フィラーの粒度分布(篩分け試験)、粉末度(ブレーン比表面積)、及び、含水率の値を示した。篩分け試験と含水率は、JIS A 5008「舗装用石灰石粉」に、ブレーン比表面積試験はJIS R 5201「セメントの物理試験方法」に、それぞれ規定された方法に準じて行なった。なお、コンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラーについては、篩分け試験値とブレーン比表面積は、後述する粉砕・分級処理後の測定値であり、含水率は24時間の吸湿工程後の測定値である。
【0129】
表1に示す4種類のコンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラーは、残コン処理で得られた同一のコンクリートスラッジケーキを用いて、表2に示す水和時間となるように回転円筒型乾燥機で含水率が0.3質量%以下まで乾燥処理した後、600μm篩を全通、且つ、ブレーン比表面積が6400±300cm/gとなるようにボールミルと網篩を用いた粉砕・分級処理を行った。その後、同じ倉庫内に7日~9日間静置して大気中の湿分を吸湿させた後、アスコンの材料として使用した。
【0130】
なお、アスコン製造前に確認したコンクリートスラッジ乾燥粉由来のフィラー4種の含水率は、24時間後の測定値とほぼ同じであった。
【0131】
【表1】
【0132】
【表2】
【0133】
上記のコンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラー(S-A~S-D)と石粉を用いて、以下の6種類のアスファルト混合物用フィラーを評価した。
水準1:S-A単味
水準2:S-B単味
水準3:S-C単味
水準4:S-D単味
水準5:石粉単味(ブランク)
水準6:S-D:石粉=46:54(質量比)
【0134】
アスコンの試製において、道路舗装の表層用混合物として一般的に使用される最大粒径13mmの密粒度アスファルト混合物をベースとした。コンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラー(S-A~S-D)の配合量は、石粉を使用した配合をもとに同量置き換えた。なお、コンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラーと石粉の密度に差があるため、密度補正を行い同一容積になるように配合調整した。
【0135】
配合調整後のコンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラー(S-A~S-D)の配合量は、5.0質量%~6.0質量%の範囲であった。
【0136】
アスファルト量は、4.5質量%~6.5質量%を0.5質量%刻みの5水準とした。
【0137】
得られるアスファルトの試験項目は、動的安定性についてはホイールトラッキング試験(アスファルト量は6.0質量%のみ)による動的安定度を、耐水性については60℃のお湯への浸漬時間を168時間とした水浸マーシャル安定度試験による残留安定度を、それぞれ評価した。両試験共に、日本道路協会編「舗装調査・試験法便覧」の方法に準じて行なった。
【0138】
上記試験結果を表3~表6に示す。
【0139】
【表3】
【0140】
表3から明らかなように、含水率が5質量%~15質量%に属するS-B、S-C、S-Dの3種類のコンクリートスラッジ乾燥粉由来のアスファルト混合物用フィラーを用いた場合(実施例1-1~1-3)、残留安定度は石粉を用いた場合の73%に対して80%以上であり、さらに動的安定度は石粉を用いた場合の480回/mmに対して700回/mm以上であるなど、動的安定性と耐水性の両特性を同時に高度に満足するアスコンが得られることが分かる。
【0141】
〔実施例2〕
【0142】
【表4】
【0143】
〔比較例1〕
【0144】
【表5】
【0145】
表4(実施例2)と表5(比較例3)の比較から明らかなように、上記の特性はアスファルト量が変更されてアスコン中のフィラー使用量が変わっても、一般的なアスコン配合の範疇では優れた性能を維持し、その性能はアスファルト量が減じて相対的にフィラーの配合量が多くなる程良好になることが分かった。
【0146】
〔実施例3〕
【0147】
【表6】
【0148】
表6(実施例3)から分かるように、例えば、コンクリートスラッジ乾燥粉由来のフィラーと石粉を混合した水準6のフィラーを用いた場合、アスコン中のフィラーの配合量は最小で2質量%程度となるが、表6から明らかなように、上記の優れた性能は水準6のフィラーを用いて得ることができる。
【要約】      (修正有)
【課題】コンクリートスラッジを多量に使用しつつも、動的安定性と耐水性に優れたアスファルト混合物及びそれに用いるアスファルト混合物用フィラー等を提供する。
【解決手段】含水率が5質量%~15質量%のコンクリートスラッジ乾燥粉を含む、アスファルト混合物用フィラー。
【選択図】なし